シナリオ詳細
<グラオ・クローネ2021>恋ごころを咲かせ
オープニング
●貴方に幸福を
灰色の王冠(グラオ・クローネ)――それは深緑に伝わる御伽噺だ。
混沌世界風に言えばグラオ・クローネだが、再現性東京的に言えばSt. Valentine's day.
感謝を伝える日、大切な人に想いを伝える日。
乙女(乙男)にとってはその想いを愛しい人へと伝える日だ。
カレンダーを眺めて2/14が近づく中、準備を続ける。
愛しい人がチョコレートを手に取ったときに何というか。愛しい人にどうやってチョコレートを渡すか。
嗚呼、その時はどんな服装をしようか……。
彼は、彼女は、どんなチョコレートが好きだろうか。材料は? ラッピングは?
考えることは山ほど合って。
恋する乙女(乙男)にとっては難易度nightmareなのだ。
此れ一つで、全てが決まるわけではないけれど――好きな人にはよく思って欲しいから。
●グラオ・クローネ準備会
その日、ローレットの一室を看板娘から借り受けたイレギュラーズ達。
「此れはとっても素敵なチョコレートの材料なのです。ちょっぴり副作用はありますけれど」
にんまりと微笑んだ看板娘こと『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)。後半の言葉は些か気になるが気にしないように――出来るわけもなかった。
「副作用?」と問い掛けたのはエルス・ティーネ (p3p007325)。グラオ・クローネの為の準備を皆でするのだと部屋を借りた彼女はきょとんとした表情をユリーカへと向ける。
「はいなのです。このチョコレートは愛を込めて作るととっても美味しくなるのですが、作ってる最中にその愛情が具現化してくるという……」
「ど、どういう……?」
「例えば、レジーナさんがリーゼロッテさんへの想いを込めてチョコレートを作るとするのです。
すると、そのチョコレートの香りを嗅いだレジーナさんの妄想が具現化して現われるのですよ! 勿論、時間はとても短いのですが」
善と悪を敷く 天鍵の 女王 (p3p000665)はぱちくりと瞬いた。チョコレートを作るのは吝かではないけれど、チョコレートを作っている最中に『妄想のお嬢様』が具現化して、目の前で『妄想したシチュエーション』の儘動くというのは恐ろしい。
「ま、まあ、それが本人でないならば!? 妄想ならば!? 大丈夫だと思いますが!」
長耳をひくひくと動かしていたドラマ・ゲツク (p3p000172)。そう、妄想のレオン君ならば、其れが妄想だと分かっている内は安心だと彼女は言う(フラグ)。
「それって、回避する方法はない訳?」
若干嫌な予感を感じるリア・クォーツ (p3p004937)にユリーカは「此のチョコレートを使うなら回避は出来ないのです。けれど、去年ボクも食べたのですがとーっても美味しくって、色んなチョコレート専門店でも使われているのですよ」とおそるおそると言う。
「……ああ、もう!」
そう言われれば此のチョコレートを使わない選択肢はなかった。
さて、早速グラオ・クローネの準備に取りかかろう! 妄想が具現化しても本人に見られるわけではないのだから!
……その様子が録画されているのは、勿論秘密なのですよ(ないない)
- <グラオ・クローネ2021>恋ごころを咲かせ完了
- GM名夏あかね
- 種別リクエスト
- 難易度-
- 冒険終了日時2021年02月26日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談8日
- 参加費150RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●
「全くもう、ユリーカさんは事態をややこしく……まぁ、美味しいのなら良い、のですかね……」
拗ねたように唇を尖らせたのは『蒼剣の弟子』ドラマ・ゲツク(p3p000172)。美味しいと評判の『愛の実』ではあるが使用時には注意が必要なのだという。
「まったく妄想を具現化するなんて、劇薬の類いではないかしらっ」
恋は猛毒。頭の中に存在する気紛れな彼女との甘い一時が顕現してしまったならば。『レジーナ・カームバンクル』善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)は気を失ってしまうかもしれないのだ。それでもグラオ・クローネは乙女にとっての一大イベント。これをスルーすることは出来なのだ。
「チョコ作り! 今年は生チョコなるものに挑戦して見ようと思うの。
ラサでは熱気で溶けやすいチョコレイトだけれど……こんな日くらい盛り上がってもいいわよね?」
「はぁ、まったく、エルスってば本当に乙女よね。ま、そこが可愛らしい所なんだけど」
お酒好きの印象しか分からない彼の為に洋酒入りの生チョコレートを作るのだと数日前から案を練っていたのは『砂食む想い』エルス・ティーネ(p3p007325)。そんな彼女を微笑ましいと小さく笑ったのは『願いの先』リア・クォーツ(p3p004937)である。
「まあ、折角だからあたしもやる事はやっときましょう。乙女の戦場を戦い抜く為の『武器』を作るために」
「うむ! 実に良い」
大きく頷いたのは『金獅子』ベルフラウ・ヴァン・ローゼンイスタフ(p3p007867)である。傍らの紙袋から何かをごそごそと取り出して――それは布だ。エプロンであっただろうものである。
「そうだ、リア。この前の依頼で卿が着ていたエプロンを持って来たのだが……使うか?」
「使わねーよ!!!」
――確かに。破れきっていて衛生にも悪いか、とベルフラウは大きく頷いた。
「自らの愛しき者を思いその者に喜んで貰えるかどうかと一喜一憂しながら作る……まさに甘くも苦いチョコレートの様ではないか」
格好付けて言ったが先程まで裸エプロンで使用され居てたエプロンを握って居た女だ。
ベルフラウは準備の整えられてた厨房で薫るチョコレートに心地よいと目を細める。
「チョコレート! お菓子! お邪魔しますっ。皆さん気合入ってますね。私も……頑張りましょうかね。え? 渡す相手? ……友達かなあ」
皆の気合いをちら、と見遣ってから準備されている材料やメッセージカードをまじまじと眺める『月下美人の花言葉は』九重 縁(p3p008706)。
「のハートのメッセージカード、可愛いですね。カーネーションもいいですね! 白のカーネーションは『純粋な愛』、という意味があるらしいですよ」
「ほう」と小さく呟いた『海淵の祭司』クレマァダ=コン=モスカ(p3p008547)。彼女は真剣な顔を――そう、祭司長として祈祷をする時と同じような真面目な顔をしていたのだ。
「……」
縁が微笑ましそうな表情をしたことに気付いてクレマァダははっと顔を上げる。
「ええい馴れ合うなァ! 我はお主らとは違ってただ世話になっておる礼をしたいだけで……
そう、であるから見られても恥ずかしくない……はず。じゃからニヤニヤするでないわ貴様らぁ!!」
――そんなことを言って。なんだかちょっぴり恥ずかしくなる祭司長なのであった。
●
そんな少女(?)達の和気藹々とした様子を伺っていたのは『恋する乙女』オウェード=ランドマスター(p3p009184)である。
「ワシが……その……この部屋に入ってもいいのかね……?」
「うむ、卿も共に作るが良い」
手招いたベルフラウにオウェードはそろそろと室内へと入った。別のイレギュラーズに試食して貰ったチョコレートは評判は良かったが何かが足りないとコメントされた。ならば、と『愛の実』を目的にして彼は此処を訪れたのだろう。
「ワシはリーゼロッテ様からチョコを貰えないと思うのう……だからこそチョコを上げようと思うのじゃが……召喚が遅れてるし……地位は低いし……」
「甘いのと苦い? どっちが好きとか手紙を送ろうとしたのう……」ともじもじとしたオウェードとレジーナは対照的なようにも思えた。
本格的なチョコレートケーキで味は甘い物を用意したオウェードの傍らでレジーナはと言えばフォンダンショコラを作ろうとエプロンを身につける。
「外はサクサク、中はトロトロ。二つの食感が楽しめて一つで二度美味しいというものだわ」
微笑むレジーナのその余裕に嫉妬を隠しきれないオウェード。二人は恋敵――ではあるが、どちらかと言えばお嬢様しか見て居ないレジーナ・カームバンクルの方が上手のようではある。
「作るもの、ですか? 料理はさほど得意ではないですが……お菓子作りと言うのはレシピに従って、本の通りに材料の計量を行って、決められた手順で組み上げて行けばきっちり美味しいモノに成るので、料理という分野の中では比較的得意なのです」
ですから、とレシピブックに指を滑らせたドラマはどれにしようかと悩ましげに首を捻る。
「さて、去年はチョコレートマフィンを作りましたが、今年は何を作りましょう………同じモノでは芸が無いですね。
レオン君は柑橘類が大好きですし、ペースト状のオレンジをチョコレートで包んで少しオトナな味に……」
「へえ、良いじゃない。私はトリュフチョコにするわ。作るのそこまで難しくないしね。
それに、トリュフって、指でつまんで食べられるし。つまめるって事は、ほら、あーんとか、できるかも、知れないし」
リアのその言葉に何かを考えたのだろうかエルスの頬がぽっと赤くなる。ラッピング用品を先に集めておいたエルスの手元には赤色の箱が鎮座していて――
「赤って素敵ですよね。想いを伝えるって感じで」
「えっ。ま、まぁディルク様の色だから選んだのだけれど……!」
しどろもどろのエルスに縁はくすくすと笑う。ベルフラウはふと、傍らを見遣った。レシピブックと睨めっこをして険しい顔のクレマァダ。
「湯煎し、生クリームと混ぜて玉にしてココアパウダーをまぶしてトリュフチョコに。これなら、簡単なはず……あれえっ、固まらんぞ?!」
「計量を間違えたのだろう。どれ、私が手伝うか。だが、最後まで卿がやるのだぞ?」
「高貴な身分ゆえ、菓子作りなど初めてなのだ。それでも、大事な想いは手作りがいいはずと………感謝じゃがな!」
――そっぽを向いたクレマァダにそれも愛い事だと笑ったベルフラウはふと、甘い香りを感じて辺りを見回した。
●『暗殺令嬢』
「リリリリリリ、リーゼロッテ様!?」
それはオウェードの叫びだった。暗殺令嬢ことリーゼロッテ・アーベントロート(幻)が妄想の通りに実体を伴ったのだろう。
チョコレートケーキは彼女の好みそうなラッピングでしっかりと整えた。直ぐに渡さねばと慌てるオウェードの瞳を覗き込んだのは享楽的にも香り立った紅薔薇の眸。
「街角で私が好きと言ってたのは知っていましてよ? ……オウェードさん」
「知ってたのかね?」
「あら、まぁ……私を誰だとお思いなのかしら? 薔薇十字機関を甘く見ないで下さいまし。それ、いただけるのでしょう?」
小さな体躯であろうとも圧倒的な吸血種のオーラがオウェードを壁へと追い遣った。ああ、その眸に映っていると言うだけで美酒に酔うが如く意識が混濁してゆく。
「思えばマジックトリートでお姿を拝見して以来……ワシは一目惚れを……
ワシはもっと強くなり魔種や下着泥棒、ファンドなどからリーゼロッテ様を守りたい……そして添い遂げたい……だからワシだけを見――」
ぎゅう、と小さな少女がオウェードの体に抱きついた。腕が背に回りきることは無い。それでもぬくもりを感じるようで。
耳朶を伝う麗しい声音は這うように落ちて往く。「それはそれは……楽しみにしておりますわ。その時にはもっと『遊んで』差し上げても宜しくてよ?
互いの顔が近づいて――唇が、とオウェードがぎゅうと目を伏せたときに頬にぱちりと掌が添えられた。
「ふふ、まだその時ではありませんのよ」
――ああ、それは! なんと夢のようなのか!
「皆は渡し方とか考えてるの? 因みに我(わたし)は、超高層ビルの最上階にある高級レストランで、美しい夜景を見ながら渡せたら理想……なーんてプロポーズじゃあるまいしねっ」
レジーナは未だ気付いては居ない。最早妄想の中に居ると言うのに、それさえ知らぬとでも言うように準備を整え続ける。
「そんな気合い入れてやるものではないし……うん。お茶会のお茶菓子にどーですかーって渡すつもりよ。
渡せるだけ十分。その上で何かを期待するなんて、今の我に何が望めようものかしら?」
無償の愛なんて理想論で、いつだって期待しても彼女はいぢわるだから知っていれば尚更に振り向いてくれない。
「でも、ね。それでも『我を見て』って、我は言うわ。恋ってそういうものでしょ?」
「ええ、ええ、そうでしてよ」
その声音にレジーナは柘榴色の眸を剥いた。傍らで微笑み見上げてくる小さな彼女。いぢわるな笑み手元を見詰めている。
「此方にいらっしゃって」
――気付けば其処は蒼薔薇の庭園。
まるで恋する乙女のように、恥じらいに頬を赤く染めてチョコレートを差し出すリーゼロッテ(幻)は「レジーナさん」と名を呼んだ。
「高級レストランテではないし、豪華なパーティーホールでもありませんけれど、私、お渡ししたいものがありますのよ」
受け取って下さいますか、と愛を汲むように。囁くその声音にレジーナは劇毒だと唇を震わした。
困ったように笑ったレジーナはそれを受け取ることが出来ない。『報われる恋』が在る事を幻で知ってしまうなんて、なんて! 女王(わたし)にとっての『悲劇』だろうか!
気付けば幻は消え、一人涙を流し続けていた。
●『レオンくんとディルクさま』
「全く、イメージの具現化なんて要らないのですよ……。
妄想で形作られたレオン君が具現化して、妄想したシチュエーションの儘に動く。
そんなコトがあったって、本人にして貰わなきゃ何の意味もないのですから!」
ぷんすかしたドラマ。そうは言いながらも実態があると言うことは触れられるという事、触れあえるという事と気付いてしまっては愛の実を水に入られなかった。
「いや、別にこんなモノは要らないのですよ? でも要る要らないに関わらず、実体化してしまうと言うのなら、仕様がないのです。
……仕様がないですので、ちょーっと抱きついてみたり……!? わっ動き出……力強……っ……こ、これは本物じゃないこれは本物じゃないこれは本物じゃない……ッ!」
「本物じゃなかったらイイって? そんなツレない事言われちゃ、加減できなくなるな」
幻――こと、レオン・ドナーツ・バルトロメイがぎゅうときつく抱き締めてくる。ドラマは「ちょ、レオン君、待って! これは本物じゃ無い、これは違う、本物じゃ無いんだ!」と叫び続けた。
「……はぁ……はぁ……はぁ…………ま、全く、酷い目にあったのですよ
あんなに力強く、乱暴に抱きしめ……こほん、こほん! 何もなかった、何もなかったのです!! 他の方は大丈夫でしょうか……!」
慌てたドラマが視線を他所にして――
「いつも攻められてばかりだもの、たまには私から攻めたって良いでしょ? だってひえぇとか言ってばかりじゃ、いつまでも子供扱いだもの、あの方」
ぷんぷんとしていたエルスは「どうしたって?」と上から降った声に「え、うそ?! なん、なんんん??!!」と叫んでいた。
目の前にはディルク・レイス・エッフェンベルグ(幻)が立っているのだ。
(ハッ! これは本番の予習に最適なのでは……?? そ、そうよね? 使えるものはなんでも……ええ、ええ。
あのディルク様の事だもの……普通の事をしてもすぐ返されてしまうっ)
エルスはやる気を漲らせ――「こ、こほん!」と咳払いをしてから「えー、ディルク様?」と彼を覗き込んだ。此処までは完璧(エルス論)だ。
「これはあなたを思って作ったチョコレイト、です。う、うう……う受け取って下さいまふか……! ……噛んだ……死にたい」
「アンタが作ったのか? イイじゃねェか。ほら、くれよ」
あーん、と子供のように口を開けたディルクにエルスは「ぴえ」と声にならぬ叫びを発した。
(それにしてもこの妄想距離が近くない? ねぇ? ねぇ?? くっ……この程度で狼狽えてたら笑われるって事?!)
――ここまで全て彼女の妄想だとは、誰も触れることができなかった。
●『レオンハート兄妹』
「さて、卿はどの様な物が好きだ? リディア」
ベルフラウが振り向いたのはリディア・T・レオンハート(p3p008325)その人である。ズキュウウウウンな関係ではあるが今日も花は愛らしく微笑んで居る。
「愛しき我が花よ。何故まだ調理にも入って居ないのに妄想が具現化しているのか、だと?
――決まっているじゃないか、私は何時いかなる時でも我が腕に抱かれる花々の事を想っている。想いを込めると言う行為は私にとって、呼吸にも等しい事なのさ」
cv宮梨里愛。
ベルフラウはそっとリディアの顎を持ち上げて小さく笑った。
「こらこら、リディア。そんなに愛らしい顔でキスをせがむな。……皆が見ているぞ、ふふ。
……(意味深な間)、では一緒にフォンダンショコラでも作ろう。暖めれば蕩ける。二人の愛の様に甘く、甘く何処までも溶け合うようなものを」
「はい」と微笑んだリディアの物欲しげなかんばせにベルフラウはふ、と笑みを浮かべた。
「味見? 仕方のない奴だな……ほら、口を開けよ」
いつみても可愛らしい口だ。どんなチョコレートよりも甘く柔らかいと唇を指先でなぞってからベルフラウは微笑んだ。
「――しかし私の唇は妄想の為に在らず、愛しき花そのものの為にある。済まないな、イマジナリーリディア」
妄想をここまで受入れる者が居ただろうか。
対して、その兄たるフェルディン・T・レオンハート(p3p000215)の前に立ってもじもじとするのはクレマァダ。
「フェ、フェルディン。その、いつもありがとう。我のありのままの姿を見てくれるお主には、いつも感謝を……」
「ありがとう、クレマァダさん」
にんまり笑って頷いてくれるフェルディン。うん、妄想でも紳士で――彼はそのまま手の甲へと口づけた。
「クレマァダさん……貴女の美しさ。聡明さ。何よりそのお人柄を、私はもうそのままにはしておけません。
今この瞬間、その可憐なまなざしが、私一人の為に注がれるという栄光……感激に打ち震えております」
「なんでじゃなんで近付いて来るんじゃ! あと貴様なんかいつもと口調違くないか?! 手、両手取るなうわぁぁいい匂いがする!!」
「……どうか、私を貴女の一番お傍に……」
そんな王子様みたいな事をされたら――もう、祭司長はお手上げだと、ぎゅうっと目を瞑った。
「私と貴女で、モスカに繁栄を」
「そ、そういうのは日が沈んでから――!」
え、何を妄想したの。マァダちゃん、お母さんまだ赦しませんよ!!
●『恋人と、伯爵と』
「蓮さん!」
縁の呼び掛けに「ユカリかよ」と彼は振り向いた。ダイブ脳内で美化された『蓮さん』。ちなみに、愛の実のことは知っていてもスルーした。蓮さんに会いたかったのだ。
「作るのはウィスキーボンボン。中にお酒を仕込むのはちょっと苦戦しましたが、なんとか形になりました。どうでしょうか?」
「悪くないな」
「ほ、本当ですか!?」
一つ抓み取った蓮さんに縁がぱあ、と笑みを綻ばせる。ああ、其れだけでも嬉しいのに「ユカリも食べてみろよ」と口へとチョコレートが運ばれてくる。
「ええっ、蓮さん、そ、そんな――!」
口へと運ばれてくるチョコレートに縁の笑みが綻んだ。そんなイチャイチャ乙女ゲームナイズされた蓮さんとの甘い一時にご満悦だというようにうっとりと微笑んで。
「ガ、ガブリエル様……おひとついかがですか? はい、あーん……ひゃっ、ガブリエル様! 私の指ごと食べないでくださいっ」
「いけませんか?」
そうやって微笑んだガブリエルに「えっ!?」とリアは呟いた。
「が、ガブリエル様?」
「よければ、貴女の唇から――」
口から咥えたものを――!?
リアは身を捩った。目の前でいつも通りの優しい笑みのガブリエル。彼の眸が甘い気配を宿している。
「だ、駄目ですよガブリエル様っ! た、たしかにこの前はきききききす、しましたけど、しましたけど!
でも、そんな食べさせ方は恥ずかしすぎて、リアの心臓が止まってしまいます。……な、なんちゃってなんちゃって」
頬を染めてリアはそんなことあるわけないよねーーー! と叫んだ。
「きゃーやだ、もう! ガブリエル様、そんな! ふふ、ダメ、ダメですって! ……って、ん?」
その時、リアは気付いた。
「……ん!? あれ!? あああああ!?!? もしかして今の妄想が具現化してた!? 違う! 違うのよ!! 今のは違うの!!!」
口移しでチョコレートを下さいと囁くガブリエル・ロウ・バルツァーレクが実体を伴って具現化していたリア・クォーツは叫んだ。
「違うのぉーーー!!!!!」
――それが、録画されていることも知らずに……。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
リアさんのプレイングを茶零四SDにも共有したのです。
「伯爵もバレンタインのイベシナいけば良かった」って言ってました。
何が起こるというんだ!
MVPは妄想よりも強かったので是非差し上げます。
スペシャルゲストで兄妹がお揃いになったのに驚きました
(描写にてステータスシートの感情欄を確認しました。2021/02/26)
GMコメント
夏あかねです。グラオ・クローネの前日です。
●成功条件
チョコレートを作ろう!
●『愛の実』
グラオ・クローネではよく使用されるチョコレートです。想いを込めるとより美味しくなると言われています。
副作用は想いを込めすぎると妄想が具現化してきますが一時的な物です。
自身が想像した対象が目の前で愛を囁いてくれます。実在人物がその行動をとってるわけじゃないので大丈夫です。
妄想は大体同じタイミングで具現化しますので周囲のことを気にする余裕は無いかと思われます。
●チョコレート作り
明日(2/14グラオ・クローネ)の準備を整えながらチョコレートを作りましょう。
どんな服を着ていこうだとか、シチュエーションを語り合うのもOKです。恋する乙女&乙男の特権ですね。
愛の実を使ってチョコレートを作りましょう。チョコレート、チョコレートケーキ、フォンダンショコラ、何でもOKです。
何を作るかはご指定下さい。また、愛の実の特徴は濃厚な味わいですのでガトーショコラやチョコレートケーキによく用いられます。
材料類は揃っていますが持ち込みもOKです。
ラッピング用品も多数存在しています。お花などをセレクトする場合は購入してくることも可能です。
思い人のためのラッピングもこだわりたいですよね!
●妄想
愛の実で具現化する妄想です。具体的に『誰』なのかをご記載下さい。
PC同士の場合はステータスシートの感情欄で互いに感情が活性化されている場合のみOKです。NPCはお好きにどうぞ!
どんな妄想でもOKです。いちゃいちゃしたものでも、恋人同士みたいな物でも、殺伐としていても……。
ほのぼのとチョコレートを渡すだけでも良いですし、相手がチョコレートをくれた!でも可愛いと思います。
只、妄想なので相手がくれたと思ってもそれは虚無……。
実在の人物ですが、その本人じゃないのでやりたい放題オールオッケーです。
それでは、グラオ・クローネ当日への準備を頑張りましょう!
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