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シナリオ詳細

ぴざねこたちのぼうけん

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●『ぴざねこ』
 その日、『博愛声義』垂水 公直(p3n000021)は珍しく狼狽えていた。
 気力のない死んだ魚のような目は動揺に歪み、常にだらしない髪が3割増しでだらしなく見える。そんな表情を、彼はしていた。
「いや……嘘だろ?」
「っだらウソばこいだっでなんもとぐになんねべ? おめさはなしでもつうづねんだっだらべづのどこさいぐど」
 ……公直が対応しているのはひと目で田舎者とわかる若者。『ウソをついてもなんの得にもならないでしょう、あなたに話が通じないならローレットに依頼するのは諦めますよ』、と言っているらしい。そう彼が言っていた。
「いや、待ってくれよ。やる。やります。うちのイレギュラーズかき集めて請け負うから判断を急がないでくれ、頼むから……」
 公直がこれだけ訛りのきつい田舎者に固執するのは理由がある。
 ひとつ、他順に払いがいい。簡単な依頼で少なくない報酬。地方豪農のたぐいなのだろうが、それにしたって気前が良い。
 ふたつ、こちらのほうが重要なのだが‥‥彼が胸元で抱えている『それ』が理由だった。

「そりゃあ、まあ。ネクタイは俺の趣味だけど」
 ぴろぴろぴろぴろぴろ。
「こんなヤツが『混沌』に生息してるなんて今日の今日まで」
 ぴろぴろぴろぴろぴろ。
「知らなかっ‥‥ああもう足を止めろ足を!」
 ぴろぴろぴろぴ。
 ……ろぴろぴろ。

「なんだそれ」
 イレギュラーズの1人が指さした先には、ねこがいた。
 ……正確には『極めて短足で造形が雑で愛嬌というものが抜け落ちたような』ねこである。ちょうど、君達の目の前にいる情報屋のクソダサネクタイに鎮座ましますそいつである。
「『ぴざねこ』。幻想に居る猫で毛並みがよく毛の生え変わりが年に4回もあって脂肪は比熱が非常に低いので夏は大活躍しそうで、やっぱり毛のせいで活躍できない中途半端なネコ科だ」
 ちなみに毛は短いけどそれなり高級なファーとか織物に使われたりするらしい。
 滅茶苦茶自活能力が低草食寄りの雑食性。足が非常に短いので移動能力がとても低く、足を動かすと個性的な音がする。
 飼育するメリットは労力に見合わない。よほどの物好きでなければ無視するであろうネコ科……その野生の個体の棲息地が見つかったというのが話のキモである。
「依頼人は人と金払いが良くて義に篤いけど、言葉と感情表現と金の使いみちが不自由な人だ。なんでも、ぴざねこには子供の頃熱中症になりそうなところを助けてもらったとか、一度飼った時に可愛くてしょうがなかったけど逃げられたとか、思い出深いらしい」
 依頼人をボロカスに言う情報屋はともかくとして、縁深いぴざねこの棲息地をなんとか守りたいというのが依頼内容。
「どうやら悪性外来種がその辺を荒らし回ってるらしい。名前は……なんだこれ」
 あからさまにやる気を失った公直が告げた敵の名は『ダイコンブタクサ』。雑食性の食獣植物……らしい。人も食べる。
「うん、なんか色々大変そうだけど片付けてきてくれよ。暇だろ?」
 暇じゃねーし。仕事がないからローレットに足繁く通ってただけだし。
 そんな不満を口にしたイレギュラーズに、公直は手元のぴざねこを押し付けた。

GMコメント

 『クソダサネクタイ』っていう単語から巡り巡って混沌デビュー。こいつなんなんだ本当。
 本シナリオはkiyoponmaruILの協賛でお送りいたします。今協賛を取り付けました。ウソです。
●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●任務達成条件
 『ダイコンブタクサ』の討伐
 野良ぴざねこを棲息地に送り届ける

●ぴざねこ
 大体OPの通りのネコ科。
 公直のネクタイのにくいアンチクショウです。
 『幻想』奥地の棲息地に、公直が連れていた個体を送り届ける必要があります。
 当然ですが逃げ足が遅いので棲息地に入られるとアウト気味です。

●ダイコンブタクサ×20~
 食獣植物。植えていれば人だってペロリさ。
 根っこによる至近距離からの攻撃、種を飛ばすことによる超遠距離攻撃など多彩ですが個体性能は低く、コロコロ死にます。
 ですが初期ターンより5ターンほど経過すると残数4に対して5体増え、まあやたらめったら増えます。
 戦闘開始から10ターン経過すると中距離に毒胞子(無・HP/AP減少系バッドステータスランダム付与)を撒き散らします。
 数の暴力は伊達じゃないです。

●戦場
 『幻想』森林地帯~ぴざねこ棲息地。
 ぴざねこをアルカせて目的地に誘導しつつ、出てきたブタクサを狩っていきます。
 ところどころにコロニーがあるらしいので気をつけましょう。(戦闘外での上記ルールを適用しての増殖はありません。あったら無理ゲーどころではない)

 かわいいは正義でした。
 よろしくおねがいします。

  • ぴざねこたちのぼうけん完了
  • GM名三白累
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年06月10日 19時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)
安寧を願う者
セララ(p3p000273)
魔法騎士
デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)
共にあれ
祈祷 琴音(p3p001363)
特異運命座標
ヴィクター・ランバート(p3p002402)
殲機
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
錫蘭 ルフナ(p3p004350)
澱の森の仔
天宮 詩音(p3p005363)
エンド・モラトリアム

リプレイ

●初期接近遭遇
「愛嬌のあるお顔をしていらっしゃいます。……可愛い……!」
 『ほのあかり』クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)の口から、感嘆混じりの吐息が漏れた。
 目の前の怪生物『ぴざねこ』について、彼女の美的感覚は容易にそれを受け容れたようだった。珍しいケースではあるが、そういう趣味もいるだろう、程度の話である。別段不思議な話ではない。
「慣れてくると、可愛く見えなくもないな。足音も、なんかこう、良い。……これがキモかわいいというヤツか」
「ううん……これはぶさかわってヤツかなあ?」
 『千法万狩雪宗』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)と『魔法騎士』セララ(p3p000273)にとっても、多少なりその容姿は愛らしく見えたようであった。尤も、この2人の周囲にはパカダクラやらトビンガルーのような怪生物がうろついているので両者の美的感覚が若干『そういうもの』よりであることは間違いなさそうだが。
 ちなみに、当のぴざねこはといえば、『幻想抱く愚者』天宮 詩音(p3p005363)の腕の中で相変わらずもがいていた。足音が騒がしいだけで、振り切れるほどの力はないらしい。
「大丈夫、お前は俺が面倒見る。……いいよね?」
 詩音は自信ありげにぴざねこに宣言してから、伺うように仲間達を見る。経験乏しいこの若者の問いかけに対し、異論を挟むものはいなかった。
 そんなやり取りをはさみつつ、一同の足はぴざねこの群生地がある森へと近付きつつある。森の中には敵性外来種である『ダイコンブタクサ』が群れているという。それらの駆逐も彼らの任務なのだが、しかしまあ、思うところ多い話でもある。
「それにしても誰なの、外来種持ち込んだのは。馬鹿なの?」
 『猫派』錫蘭 ルフナ(p3p004350)の憤りはもっともだった。彼に限らず今回集まった面々は猫派が多いらしいが、そうでなくとも、外来種が大きな顔して現住生物に害をなすというのはいただけない。一刻も早く、ねこたちが安心して暮らせる森へと戻さねばならない。
「……ダイコンなら酒のつまみになるのかしらぁ?」
 『とにかく酒が飲みたい』祈祷 琴音(p3p001363)にとって重要なのは『つまみになるか否か』だった。ぴざねこはそもそも、愛玩用としては彼女のお眼鏡に適わなかったらしい。外来種を食用として狩る発想は、決して彼女の特権というわけでもないが。モチベーションに関わる話なので試すだけならセーフということになるだろう。多分。
(貴族というものは希少性に価値を見出す事があるという。この猫もそうだとして……依頼人の嗜好はどうでも構わないな)
 『殲機』ヴィクター・ランバート(p3p002402)は周囲に敵対者が居ないかを自信のギフトで警戒しつつ、あらためて詩音の腕に抱かれたぴざねこに目を向けた。
 やはり、可愛いとは思えなかった。個人の趣味の範疇ではあるが、この生物を守るためにローレットに大枚はたいた依頼主という存在を、彼は理解できなかった。
「いや、しかしよく見れば中々に愛嬌のありそうな顔をして……おらぬな、なんじゃこれは」
「ぴざねこだから『ぴーちゃん』かな?」
 『大いなる者』デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)の困惑の表情を知ってか知らずか、セララはすでにぴざねこに名前をつけていた。詩音の手から離れて音を立てながら歩くその姿を目で追うと、知らず微笑ましさと庇護欲が湧き上がってくる。これが猫の魔力か。
「それにしても誰なの、外来種持ち込んだのは。馬鹿なの?」
 ルフナの憤りはもっともである。敵性外来種をわざわざぴざねこの繁殖地に引き込むなど迷惑千万甚だしい。これからその群れを潰して回らねばならぬ彼らの手間を考えると、まあ、何と言うか。非常に大変だなあ、と思わなくもない。
「うん……うん、そっか。この先に変な植物が湧いてるんだね。多分、それがブタクサ……ダイコン? そういうのだよね」
 詩音は自らの作った式神から情報を聞き出すと、仲間達に向けて警戒を促す。情報量は勝敗を左右する要素である。彼は経験が少ないなりに、何が出来るのかを理解し、行動する程度の実力はあるようだった。駆け出しとしては悪くない素養であると言えよう。
「近くに群れている……か。それだけでもないかもしれんぞ。備えておこう」
 汰磨羈は手にした『仙鶴』を握ると、周囲に対し警戒を強めた。詩音が式神でカバーできない範囲は、偏に彼の経験不足ゆえ。多くの経験を経て観察眼を鍛えた彼女は、周囲に歪な足跡が残っているのを見抜いていたのだ。
「では、ぼちぼち戦闘態勢に移るとするかの。遠慮なく殲滅して……」
 デイジーが榊神楽を行使したのと、琴音が術式で離れた地面を打ったのとはほぼ同時であった。どこか狩人めいた視線を向けた琴音の視線の先には、地面から這い出した影……ダイコンブタクサの姿が見える。
「ぶさねこ! ……じゃなかった。えーと、でぶねこの平和はボクが守る!」
 セララの気合は十分なようだが、まあ……ぶさねこでもでぶねこでもなくぴざねこなのである。詩音がとっさに抱えた腕の中で、抗議するようにぴざねこの足が音を立てて動いた。

●紛らわしい相手に天誅を
 ヴィクターのN-A48型手榴弾が宙を舞い、落下地点の僅かに上で炸裂する。循環金属による破片の飛来は、ダイコンブタクサ達にはたまったものではないらしく、次々にしなびたように動きを鈍らせていく。だが、弱いなりに生命力はあるらしく、致命傷たり得ない。
「草、と名がつく食虫獣植物かと思えば、ずいぶんと活発なものだ。やはりモンスターの類か」
「植物でもモンスターでも、ぴざねこに危害を加える時点で同罪だよ。全部刈り取ろう」
 冷静に次の行動に移るヴィクターに、ルフナは殺意すら覚える口調で術式を叩きつける。ダイコンブタクサはしなびて地面に転がり、動かなくなった。
「キモいだけの害獣などはまっぴら御免だ。全て駆除あるのみ!」
 汰磨羈は、急激に伸びた髪を置き去りにする勢いで跳躍するとマナの勢いで急回転し、ダイコンブタクサに踵落としを叩き込む。直後の爆発と炎によってそれは燃え落ち、落下した彼女の容姿を怪しく照らした。
「お酒のつまみになるなら申し分なしよぉ。少しくらいは持ち帰ってもいいわよねぇ?」
 琴音は弱っているブタクサの間合いに踏み込み、テーブルの天板をしたたかに振り上げる。エグい打撃音で打ち上げられた敵はすでに抵抗する力を持たず、べちゃりと地面に落ちて息絶えた。
 琴音の足取りがどこか千鳥足めいているのは、おそらく敵の行動を撹乱させるためなのだろう。……そういうことにしておく。
「ぴざねこさんの棲息地までこんな感じだと、気が重くなりますね……最初に出てきただけでこの数とは」
 収束させた魔力をブタクサに叩き込み、クラリーチェは周囲の状況を改めて確認する。種による射撃で牽制されたり、接近戦でも多少の抵抗が見られたりと面倒な相手であるが、イレギュラーズの戦闘距離は、主に中遠距離からの牽制からの突撃がメイン。数の割には、味方側が受けた打撃はどうということもないようだ。
「行っくよー! すーぱーセララ斬りっ!」
 セララは生き残ったブタクサへ飛びかかり、あらん限りの力で聖剣を振り下ろす。正義の心あらば、悪にかける情けなど不要なのだ。多分。

 さしあたっての脅威を排除できたことを確認すると、詩音はぴざねこを地面に下ろす。凄まじい戦闘を見たにもかかわらず、ぴざねこは気にしたふうもなく足をせわしなく動かした。先程までよりはっきりと、目的地へ向けて移動する勢いが上がっている。速度は悲しいほどに遅いのだが。
「おうおう、あまり慌てるでない。危ないところに向かってもらっては困る」
 デイジーはぴざねこの鼻先に「ちゅるちゅる食べられるチューブ状のおやつ(徳用サイズ)」を差し出し、あらぬ方向に向かったぴざねこを誘導する。
 情報屋が何故か持っていたらしい。入手経路は不明であるが、効果は絶大らしい。ぴざねこはおやつにむけて驀進を始めた。
「ぴざねこの棲息地はもうちょっと先みたいだね。……ダイコンブタクサはかなりの量隠れてるみたいだけど」
 ルフナは猫の『こま』にまとわりつかれながら周囲の植物からイメージを引き出す。そのうえでぴざねこやダイコンブタクサがどの辺りに居るかをおおよその範囲で割り出していた。詩音がその曖昧さをカバーするべく式神を送り込み、詳しい情報を掴んでくることで一同が先手を取ってブタクサ達を掃討することに大いに貢献した。ぴざねこを守る以上、戦闘では積極的に動くことは難しい。その代わりと考えれば、十分すぎる働きであった。
 さらに、容赦のない行動に出ているのがヴィクターである。ブタクサ達の掃討が終えると、出現位置を掘り返して根が残っていないかを確認し、残っていれば全て燃やす……そんな勢い。
 わずかな痕跡すらも確実に消していくという決意がひしひしと伝わってくるようだ。
 かくして、一同は何度かの戦闘を経て、かなり順調なペースで森の奥へと踏み込んでいた。ブタクサの数はそれなりに多かったが、さりとて『数の暴力』を標榜するにはイレギュラーズが強すぎた、とも言えよう。すでに相当数を倒している事実は口にしてはいけない約束だ。

 そして、その変化は唐突に訪れた。
「に゛ぃぁ゛ぅ~」
 連れてきたぴざねこが、突如として名状しがたい鳴き声を放つ。不機嫌極まりない雰囲気を全面に押し出した鳴き声は、一同をして鳴き声であると気付くのに時間がかかるほど。
「これ、ぴーちゃんの鳴き声?」
「……そうみたい。瞳孔がすごく開いてる」
 驚いたように振り返ったセララに、詩音が頷く。先程までまっすぐ歩いていたぴざねこは足を出したり引っ込めたりを繰り返し、鳴き声をさらに上げる。
 少し間をおいてから、木々の間からゆっくりと現れたのはちょっとサイズがおおきめの……やはり、ぴざねこだった。
「な゛っ」
 ぽふんぽふんぽふん。
「んみ゛ぃ」
 ぴろぴろぴろぴろ。
「なんじゃあれは。……何なんじゃ、本当に」
「感動の再会、なんでしょうか。それにしてはお互いの声が剣呑ですけど」
 デイジーが戸惑うのも無理はない。しわがれたような声で鳴き合うぴざねこ達の雰囲気は贔屓目に見てもよろしくはない……クラリーチェも、どこかおっかなびっくり理解しようとしている様子ですらあった。
「皆、こっちに何か近付いてきてるって……もしかしたらブタクサが集まってるのかも」
 詩音はやや焦りを含んだ声で仲間達に警戒を促した。感動の再会はさておき、ここまできて水を差されるのも癪である。
「数が多いわねぇ。上手いこと隠れてたのかしらぁ……今夜のつまみには困らなさそうだし、頑張るわぁ」
 琴音の目に写った敵の数は2桁をくだらない。森の中に残っていたブタクサ共がまとめて襲いかかってくる格好になるわけだ。そして、背負うのはぴざねこの棲息地。
「知性が乏しいことを祈るしかなさそうだな……」
 ヴィクターは手榴弾を手に取ると、近づく敵の群れを見据える。この森の興亡如何は、大変申し訳無いことに……この瞬間、彼らの双肩にかかってくることとなった。

●ぴざねこたちのしゅくふく
 突っ込んでくるブタクサの群れに、N-A48型手榴が投げ込まれる。炸裂音と土煙を裂いて飛び出してきた連中に大しては、クラリーチェの生み出した毒霧が包み込んでその動きを完全に止めた。生命力がどの程度かは、ここまでの道程でおおむね把握できている。あとは相手を近づけさせず、一刻も早く全滅させてしまうしかない。
「ぶた……ぶさ……もういいや、ぴーちゃんに悪さするヤツはまとめて倒すよ!」
 セララ、数度名前を思い出せなくなったのでとうとう思い出すことを放棄した。しかし、だからといって剣の冴えが鈍るかといえばそうでもない。次々と放たれる猛攻を数の暴力で抜けてきたブタクサを、後の先の斬撃を以て一撃で仕留めたのだ。胴薙ぎ(胴の概念が行方不明だが)の一閃を放ち、残心した彼女の背後でブタクサはもんどり打って倒れた。
「数の暴力って言うけど、本当にその通りだね……種が、邪魔!」
 次々と飛来する種にどくづきながら、ルフナは仲間達の治療に回る。遠くから種を飛ばすことに終止し、敢えて近付こうとしないブタクサが見受けられるのは、最初の攻防によって一網打尽にされることを嫌った個体によるものだろう。小癪という他ないが、彼は不用意に前にでるわけにもいかない。前衛数名が切り込み、打開することを期待するほかないだろう。
「なるほど、悪性外来種と言われるわけだ。全くもって面倒な……!」
 汰磨羈は種の乱射をものともせず、離れたブタクサ達に突っ込んでいく。ひとかたまりになって動かない個体群……狙いは明白、長期戦からの繁殖で一気に押し込む気だ。
 当然、無視できるわけがない。地を蹴り、『鴻翼楔』で体制を崩したブタクサの動きを見ることなく、着地した足を軸に体重を前方に放り出し、『威踏み』へと繋ぐ。本来は単体相手に叩き込む連携は、しかしブタクサ2体を一気に葬る苛烈さを顕にした。残身した汰磨羈に襲いかからんとしたブタクサは、クラリーチェの放った魔力の矢により崩れ落ちる。
「多すぎても持ち帰れないし、胞子で食べられなくなるのも困るわねぇ……」
 琴音の言葉は、冗談か本気かいささか判別がつき難い。だが、汰磨羈の死角をカバーするように踏み込み、テーブルによる強打で弾き飛ばした判断力は間違いなく本物であろう。
 ほぼすべてのブタクサが命脈を絶たれ、消えようとしたまさにその時。死にかけた数体がぴざねこ達に向けて最期の抵抗とばかりに種を飛ばす。不意をつかれた一同が足を止めるが、種がぴざねこに届くことはなかった。詩音の胴に突き立ったからだ。膝を折って倒れた彼の頬を、大型のぴざねこが舐める。辛うじて息はあるし、深手というほどでもない。
「大丈夫……大丈夫だよ、ありがとう」
 一瞬とびかけた意識を意地で奮い立たせ、自らを癒やしながら詩音は立ち上がる。彼の挺身は正しくぴざねこ達を守り抜き、一同の奮戦によってダイコンブタクサは残さず討伐されるに至った。
 ……ちなみに、大型のぴざねこが出てきた穴を越えるとそこにはぴざねこの群れがわらわらとたむろしており、言い知れぬ迫力を醸し出していた。
 クラリーチェが手を差し伸べると、ぴざねこの一体がタックル気味に突っ込んでくる。彼女がもふもふする前に腹部に頭を擦り付けているのを見るに、彼女に染み付いた飼い猫の匂いに触発されたのだろうか。
 どこか誇らしげなはぐれのぴざねこは群れに突っ込んでいき……群れの中から現れた白黒茶のまだらのぴざねこが、詩音の足に前足をかけた。
「う゛な゛」
「ここでお別れかと思ったが、別のヤツが連れて行けと言うておるな。折角だし、よいのではないか?」
 まあ、汰磨羈がその意図を理解した通りで。
 ぴざねこが2体ほど、イレギュラーズについてくることになったのは……まあ何と言うか。数奇な顛末である。

 なお、セララがこの顛末をギフトにより漫画にして依頼主と公直に渡したわけだが、両者の反応が真逆であったことを付け加えておく。

成否

成功

MVP

クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)
安寧を願う者

状態異常

なし

あとがき

 お疲れ様でした。ぴざねこは安全に棲息地に戻ることが出来たようです。
 なんか依頼で連れ歩いたのとは違う個体がついてきていますが、気にしてはいけません。
 大事にしてください。
 依頼主もご満悦でした。いいことしたと思います。
 MVPは、今回は純粋に殲滅力と選択肢の多さを判断基準として、アナタに。
 レアカラーなぴざねこがそっち行きましたよ。

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