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シナリオ詳細

野盗の むれが あらわれた!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


●豊穣のとある村にて
「北の村が野盗にやられた……」
「南の村もだ……」
「次に狙われるのはおらたちの村だ……!」
「ヒイイ!」
 頭を抱えて恐慌に落ちいる村人たち、そこへたまたま同席していた彼女は呆れたようにつぶやいた。
「だからなに? そのクズ共を細切れにして家畜の餌にすればいいじゃない」
「……いやそこまでは」
「いちおー、わしらと同じ獄人(ゼノポルタ)じゃし」
「神使さまに頼みますよって」
「ああ、でも依頼の出し方がわからん!」
「だめじゃない」
 彼女はこめかみをもんだ。
「いいわ、私が代理でローレットまで行ってあげる」

●ローレットにて
 その日、ソニア・ウェスタ (p3p008193)はちょっと遠出したい気分だった。なのでひょこっと豊穣なんか来てみたりした。気分は一人旅。たまにはこんなのもいいなあと思いながら、現地のローレット支部を訪れると……薄紫のストレート、どこかでみた背中が、今まさに依頼書へ詳細を書き込んでいるところだった。
「姉さん! 姉さんじゃない!」
「うわ、見つかった……」
「探したのよ、急に家出して! どれだけ心配したか!」
「お家騒動なんてめんどくさいものに巻き込まれるのはまっぴら。ソニアもいいかげん姉離れしなさい」
「そんなあ……」
 まるで品定めするように彼女――ソラ・ウェスタ――は実の妹、ソニアを眺め回した。
「ソニアもなかなかがんばってるみたいじゃない。まあ、そのくらいしてくれないとお父様が泣くから、もっと精進しなさい。そうね、この依頼なんてぴったりじゃないかしら」
「ほへ?」

 標的:大量の野盗
 数に任せて真っ昼間から襲ってくるバカな連中
 その数100人

「100人!? 無理よ、姉さん!」
「そこをなんとかするのがソニアの仕事。とりあえずそのへんの頼りがいがありそうな人を探してお願いしてまわってきなさい」
「う、うん」
「駆け足!」
「はいっ!」
 うう、一人旅がなんでこんなことに。でも困ってる村人は確かに見過ごせないわ。ソニアは姉に言われたとおり走り出した。

 それを見ていたあなたは?

GMコメント


ご指名ありがとうございました。
どっかんどっかん景気良く参りましょう。

やること
1)エネミーの全撃破
2)エネミーの死亡者ゼロ

●エネミー
野盗のボス『黒田重蔵』
 イレギュラーズ3人分くらいの強さを誇るやなやつ
 【麻痺】【毒】【火炎】などのBSを所持
 基本的に後衛からチクチクやってくるやつです

野盗 19人
 イレギュラーズ0.5人分くらいの強さ
 回復から攻撃まで幅広い手段を持っています
 BSは所持していません

鉄砲玉
 つぶされた北と南の村人たちです
 R1攻撃のほか、かばう、ブロックをしてきます
 鉄砲玉というより肉壁
 野盗のボスへ仕方なく従っており、説得次第では無力化、うまくいけば仲間にすることも可能です

●戦場
中央の村広場
戦うには十分な広さです
ペナルティなし

●NPCソラ・ウェスタ
ソニアさんのおねーちゃん。ファザコン魔術師さん。めっちゃ強いのですが、今回は観戦してるだけです。がんばれ。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • 野盗の むれが あらわれた!完了
  • GM名赤白みどり
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年02月17日 21時55分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アクア・フィーリス(p3p006784)
妖怪奈落落とし
メリー・フローラ・アベル(p3p007440)
虚無堕ち魔法少女
ソニア・ウェスタ(p3p008193)
いつかの歌声
※参加確定済み※
箕島 つつじ(p3p008266)
砂原で咲う花
シガー・アッシュグレイ(p3p008560)
紫煙揺らし
瑞鬼(p3p008720)
幽世歩き
金枝 繁茂(p3p008917)
善悪の彼岸
レべリオ(p3p009385)
特異運命座標

リプレイ


「慈術ーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
 バリッ、バリバリッ! ちゅどーん!
 ドス黒いイカヅチが天を裂き地を割った。巻き込まれた鉄砲玉がまとめてふっとぶ。
「呪術?」
『特異運命座標』レべリオ(p3p009385)の問いに『汚い魔法少女』メリー・フローラ・アベル(p3p007440)は余韻の雷を身にまとわせたまま怒鳴りかえした。
「『慈術』よ、『慈』術! 慈悲の慈! ったく、人の話聞きなさいよ、あなたも鉄砲玉どもも!」
「慈悲……とてもそうには見えなかったんだが」
「わたしがそうだと言ったらそうなの! 心配なら脈はかってまわってみれば!?」
 レベリオは吹き飛ばされた鉄砲玉たちへざっと目を走らせた。地面に突っ伏したままの影がいくつか。そこからふらふらと立ち上がろうとする影がいくつか。おびえて弱腰になってる影が何十も。
「なるほど、わからん」
「なによもう、キーーー!」
 すかさず『幽世歩き』瑞鬼(p3p008720)がスチャッと手で日差しを作って戦場を眺める。
「うむ、たしかに直撃食らった者はプスプス言っておるが命に別状はないぞ」
「瑞鬼ちゃんの言うとおりよ! やさしいね、メリーちゃん!」
『祝福を授けし者』金枝 繁茂(p3p008917)が、ひまわりみたいに、にぱっと満開笑顔。メリーは意気揚々とレベリオに胸を張ってみせる。
「ほーら見なさい。わたしの言ったとおりだったじゃない、あとでお小遣いくれなきゃ許さないからね」
「小遣い? どのくらいだ」
「依頼報酬全額に決まってるわよ!」
「……断固拒否する」
「あらら、ギスギスしないで。メリーちゃん、レベリオちゃん」
 繁茂があいだへ割って入ったその時、ズドンと腹に響く音がした。同時に崩れ落ちる鉄砲玉がひとり。
「ああ、びびってんじゃねえぞこらあ! 明日の朝日が拝みたきゃ、そいつらをやっちまいな!」
 黒田が銃を手にがなりたてる。前門のイレギュラーズ、後門の黒田。恐慌寸前の鉄砲玉たちは足がすくんで動けない。
「しっかりして! 私が必ず助けるから!」
『いつかの歌声』ソニア・ウェスタ(p3p008193)が、黒田に撃たれた鉄砲玉へメガ・ヒールをかける。伸ばした手の先からこぼれ落ちた薄紫のオーラが鉄砲玉を取り巻いた。みるみるうちに傷跡がふさがり、鉄砲玉は失血で青ざめた顔のまま立ち上がった。だがその背をまた黒田が銃で撃つ。またも苦悶の声を上げて転がる鉄砲玉。意地になって癒やすソニア。黒田は青筋を立てて叫ぶ。
「おらぁ! いけやいけやぁ! おまえらの命なんざ屁より軽いわい、こうなりたくなけりゃ、とっとと突撃しろ!」
 その声を引き金に鉄砲玉の半数以上がイレギュラーズに向かってきた。頭数の多さに『闇と炎』アクア・フィーリス(p3p006784)は緑の目をまんまるにする。
「おお、人がいっぱい……あれ全部、敵なの? 面倒だから、まとめて殺し……」
「だめです! ぜったいだめっ!」
「……だめなんだ……」
 ソニアのセリフに何故か肩を落とすアクア。その背へソニアはあわてて声をかける。
「私が村人ともども回復しますから、ちゃんと責任もちますからぁ! だから安心して攻撃してください!」
「おーおー。ソニアも言うようになったじゃない。お父様も胸をなでおろしてる頃かもね」
「お姉さ……ああもう、姉さん! 見てるくらいなら手伝って!」
「いやあ、私、依頼人だし? 多少のサポートはしてあげるけども? いつまでも私を頼るのはやめたら?」
「ううっ」
 今度はソニアが、がっくりと肩を落とす番だった。
(姉さんの実力ならこんな依頼、自分で解決できちゃうじゃない……知ってるんだから。というか、まさかこちらに来ているなんて。教えてくれればよかったのに。……なんて、いつまでもこんなことを言っているから姉離れしなさいって言われてしまうんだわ)
 ソニアは、きっと顔を上げる。
「へえ、いい面構えになったじゃないか」
『スモーキングエルフ』シガー・アッシュグレイ(p3p008560)がくわえ煙草を燻らしながら口の端を上げた。黄龍の護符が服の合わせ目からちらりとのぞいた。
「その調子で頼むよ。村人(あいつら)の生死はソニアちゃんにかかってると言っても過言じゃないからな」
「わわっ。プレッシャーかけないでください」
「せやかて、そのとおりなんやし」
 飛んできた石を叩き落とし、『砂原で咲う花』箕島 つつじ(p3p008266)がソニアを振り返る。
「んじゃあとよろしく。ウチらもせいぜい不殺がんばるさかい。ほなド派手にいっくでー!」
「そんなあーーーー!!!」
 青空にソニアの嘆きが響き渡った。


(とはいったものの……ズバッとやるのはかんたん過ぎるし、依頼人の意向にも背くんよなあ)
 姿勢を低くしたつつじが鉄砲玉の群れへ走り込む。
「ぐわっ!」
「ぎゃっ!」
「あいてえ!」
 鞘に入れたままの風鷹剣『刹那』でもって、木琴でも奏でるようにむこうずねを叩き、鉄砲玉を地面へ転がしていく。その一人へ片足を乗せ、つつじは大音声で呼ばわった。
「ウチはなあ! できれば君らとは戦いたくないんや、むしろ助けたい! 用があるのは君らの後ろにいるやつらや! せやから味方やと思ってくれてかまわんねんで!」
「そうそう。野盗といいながら村人を使うとは……せこいやつらじゃと思わんか。そんなもんにへいこらするために生まれてきたんじゃなかろう? 故郷の風景を潰したのはどいつじゃったかいな?」
 するりとつつじの後を追っていた瑞鬼が言い添える。鉄砲玉たちの間に動揺が走った。
(黒田まで走り抜けられるか?)
(ううん、この人数は厳しい。前をふさがれる。村人だけでも黒田からひっぺがさなけりゃ)
 瑞鬼の囁きへ渋い顔で返すつつじ。あまりの頭数の多さ、密だ。密である。数は力で暴力だ。だがその暴力に正面から立ち向かう影あり。やわらかなウェーブロング、ソニアだった。
(これが姉離れできない妹の成長を促すための試練なら、いいえ試練を与える必要がないくらい成長できたところを見せることができれば……きっと並んで歩くことだって。それに……)
 ソニアは音を立てて肘を打った。右、左、そして勢いよく手を合わせる。柔らかなオーラがソニアのまわりに立ち上り、天使の羽が爽やかに歌い踊る。
「困ってる人がいるのは、事実ですし」
 念を込めた。光が放たれた。羽が舞い散った。地面へ転がっていた鉄砲玉が抱えていた脛から手を放す。呆然とした顔で。
「あ、あんたおれらを助けてくれるだか……?」
「何度も…そう、言ってる…」
 アクアは握りこんだ拳をいったん抑えて、足を止めた鉄砲玉たちの心を読んだ。その恐怖でいっぱいの心を、痛んだミカンのように変色してしまった心を。
「怖いんだね……。黒田が、野盗が、人質になってる…家族が、殺されるの、が……」
「人質がいるのか、どおりで、なぁ」
 アクアのつぶやきを聞いたシガーが鼻を鳴らす。同時に彼は鯉口を切った。鞘からゆっくりと炎があふれ、灼熱の刃をなしていく。おそれをなした鉄砲玉が数人、後ずさった。
「野盗討伐というだけなら、よくある依頼なんだがなぁ。潰した村の村人を従えての大所帯とは、いやいや……」
 すっと目を細め、シガーは熱砂の精霊刀をいまだ遠い黒田へ向けた。
「王様気分でも味わってるのか? 仁君賢君には、ほど遠いようだがな。たった8人相手に、10倍以上でないと怖くて攻撃もできないか」
「なんだと!」
「きさまあ!」
 いきり立つ野盗。だがそれも計算のうち。シガーはゆるく微笑んだ。
「どうやら図星のようだな。かかってきてもいいんだぞ? 手加減してやるから」
 レベリオも野盗を挑発する。間に村人をはさんで静かな攻防が幕を開けた。緊張の糸がみるみるうちに張り詰め、きりりと細くなっていく。その裏ではメリーが鉄砲玉へ裏工作を行っていた。
(いーい、あなたたち? 聞こえる人は聞きなさいよね。わたしたちに攻撃をしかけるフリをして、こっちに向かってきてそのまま素通りして走り去れば、わたしたちも野盗も相手にしなくて済むわよ。できれば健康な若い男は野盗の包囲に協力してほしいけど、無理にとは言わないわ)
 あえて引いてみせることで、メリーは鉄砲玉たちに考える猶予を与えた。
(話に乗ったふりをして本当に攻撃するのは無駄よ。ほら、ね?)
 ぞくりと鉄砲玉たちの背筋が寒くなった。蛇に睨まれた蛙のように。
「これが最後の機会よ!」
 繁茂が時は来たれりと片腕を掲げる。
「このまま野盗に従うなら野盗として処理しなければならない。しかし我らの協力をしてくれたならば、味方として報告できる。人質を取られていても絶対に助けよう! このまま奪われる側として野盗に従うのではなく、神威神楽を救った神使の仲間として、共に戦おうと奮い立つならば声を上げろーッ!!!」
 英雄を歌うかのような声音が鉄砲玉たちの脳を揺さぶる。それはまだ彼等の魂の奥底に眠っていた最後の勇気を奮い立たせた。
「「お、おおおおお!!!」」
 最初は二~三人、だがやがて津波のように、反撃の拳が上がる。繁茂はいつものゆるやかでふんわりとした雰囲気を投げ捨て、雄々しく指示を出す。
「手始めに野盗共にこれまでの礼を返そうじゃないか!! 男共は野盗を逃がさぬよう取り囲め! 女は子どもと年寄りを連れて我らの後方まで下がり守れ!!」
「なっ、おい、やめろ、この馬鹿どもが、のせられてんじゃねえ!」
 黒田が背後から銃を撃つも鉄砲玉、いや、村人たちは倒れない。傷はすかさずソニアが癒している。
「さっきからぁ、ちょろちょろとぉ、目ざわりなんじゃ、このアマアアアア!」
 銃口がソニアに向けられた。放たれた弾丸がソニアを襲う。その弾道は正確にソニアの額を狙っていた。当たればただでは済まない。ソニアは一瞬パンドラを覚悟した。
「おっとお!」
 寸前、巨体が割り込んだ。繁茂だった。突き刺さった弾丸は繁茂の心臓の位置、だがそれはかつんと地へ落ちた。癒すほどでもない痕だけが繁茂の胸へ残る。驚愕する黒田を尻目に繁茂は左前腕の裏側を爪で裂いた。獄人の血が香り、仲間の体が軽くなる。
「ソニアちゃんはハンモが守るからね、安心して!」
「ありがとう!」
(姉さんも……ありがとう)
 弾丸が繁茂の心臓を直撃する寸前に生じた薄紫の障壁。あれは、たしかに……。ちらりと目をやると姉は背を向けたまま手をひらひらと振っていた。がんばれ、というように。
「大人しく、寝てたら……殺さない、よ? ……哀しみ、痛み、凍え、ついて、深き、海の、底へ、堕ち、よ」
 前へ出たアクアが野盗へ嘆きの海の唄を叩きつける。だがしかし野盗たちの反撃がアクアを狙い打つ。いくつもの弾丸や魔法にさらされ、アクアはたたらを踏みながらぐっと奥歯をかみしめた。
 あああ、うう、あああああ!
 全身から吹き出していた漆黒の炎が勢いを増す。アクアは口を閉じているのに、炎は強烈な痛みを歌い上げていた。見開いたアクアの瞳も漆黒に染まっていく。
「手加減、しなきゃ……でも、したくない……だめ、だめ!」
 片腕が再び嘆きの唄を帯びて突き出された。ありもしない海の渦が生まれ膨れ上がっていく。アクアはそれを必死に逆の手で抑え込む。
「だめ、だめなの、だめ、だめえええ!」
 放出される魔力。一撃目とは比べ物にならない圧倒的な奔流が戦場を駆け抜けようとした刹那、嘆きの渦は二本の光刃により切り刻まれ霧散した。
 驚き固まるアクアの前に、シガーとレベリオが立っていた。
「ソニアのところまで下がれ。さっさと終わらせて戦後処理といこう」
「同感だ」
 レベリオの言葉にシガーが答える。弱った野盗を相手取り、ふたりは不殺の力で野盗を気絶させていく。有象無象の海が割れる、そこへ入り込む瑞鬼とつつじ。
「かっかっか、頭が後ろでふんぞり返って楽そうじゃのう。どれ、わしと遊んでくれるかの?」
 紫の燐光をまとい、雪月花が花開いた。抜刀されたそれは血を吸う喜びにわなないているようだった。したたる冷気が黒田を捉える。
 黒田の目が本気の光を放つ。うってかわって無口になった黒田は銃を乱射した。
「くっ、ぐううっ! かははっ! いいぞいいぞ、血がたぎるわ!」
 血まみれになった瑞鬼の瞳は凛と燃え立っていた。乱れた裾をはらい、かそけき月を呼び出す。背後に現れた漆黒の満月が煌々と輝き、瑞鬼の肌をなめらかなものへ戻していく。続けて弾ける銃弾。黒田は狙いを一点へ集中させた。
「がっ!」
 腕の付け根を重点的に狙撃され、利き腕がちぎれかける。
「かかっ! もういっちょう!」
 さらに黒い月を呼び出す瑞鬼、けれども覚悟した痛みは来なかった。怪訝に思った瑞鬼は、状況を把握して短く口笛を吹いた。
「やりおるのう、こわっぱ」
「狙いがわかってると妨害もしやすいんや」
 黒田の銃は銃身がすっぱりと半分に切り落とされていた。誰でもない、つつじの手によって。
「貴様ぁ、俺の虎の子ぉをを!」
 狂乱する黒田を前に小さくため息をつくつつじ。
「あーもーちまちま殴らなあかんのはめんどくさいなー、でも」
 右ストレートが黒田を襲った。
「殺してしまうのも後味悪いわ。殺さずに解決しろって言ってくれた依頼主にも感謝しときや!」
 からくもそれを回避した黒田が舌を打つ。切られた銃を逆手に持ち、つつじの頭頂部を殴りつけた。
「ぐぎっ!」
「つつじ!」
「つつじさん!」
 黒月が、大天使の祝福が乱れ飛ぶ。
「あかん、逃げられる!」
 しかし額がぱっくり割れたまま、つつじは黒田を追った。
(あほちゃうか、足速すぎやろ!)
 このままでは引き離されると、つつじは両足に力を込めた。大地を蹴る速度を上げ、どうにか前へ回り込み、黒田の胸ぐらをつかんで頭突きを入れる。
「おとなしゅうしや! もう勝負は決まってるやろ!」
「…そのとお、り」
 回復を受け、背後へ食らいついたアクアが黒田の背をげんこつで殴り抜ける。すさまじい痛みが黒田を襲った。
「ぬううん!」
 むりやり体をひねった黒田が銃をアクアの顔面へ……。
「そこまでじゃ」
 冷たい刃物が黒田の首筋へ当てられた。瑞鬼の雪月花が黒田を追い詰めていた。
「不殺でなぁ、延々と殴るっていう拷問があるんだが……試してみるか?」
 追いついたシガーが薄笑いを浮かべた。精霊刀の切っ先はもちろん黒田だ。その背景ではレベリオが手をはたいており、あれだけいたはずの野盗どもが転がっている。ここにきてやっと黒田は自分が孤立無援だと気づいたようだった。
「汗拭けや黒田。たいそう幸運なことに依頼主はおぬしのようなどうしようもない破落戸でも救ってくださるんじゃと。ゆえに吐くがいい。人質がどこにいるかをのう」
「言わなくても……読むけど、ね」
 アクアがぼそりとうそぶいた。


 人質は山麓の洞窟へ押し込められていた。縄をかけられ、ろくに食事も与えられていない様子だった。
 イレギュラーズは彼らを解放し、村人たちはなみだなみだの再会を果たした。
「神使さま! こらぁおらたちからの気持ちだべ、食べていっておくんなさい」
 たくさんの握り飯と美味しい漬物を振る舞われ、一息つく頃には夕方になっていた。黄金に染まったのどかな村を眺めながら、アクアは握り飯を一口かじる。
「……おいし、い」
 そのまま次々ぱくぱく食べ始めた。魔法使いはおなかがすくのだ。
「っていうか、礼がライスボールだけってことはないわよね?」
「もちろん報酬も用意させてもらってるだよ」
 ぎろりとにらみつけるメリーにシガーは苦笑した。
「そこは信用してやれよ」
 どうだか、とメリーがそっぽを向く。
「はっ、姉さん、姉さんは?」
 事後処理に追われてばたばたしているうちに、姉の姿は見えなくなっていた。どうやら既に旅立ったらしい。ソニアは村人から一通の手紙を受け取った。
『ソニアへ よくがんばったわね。まずは及第点というところかしら。お父様も喜んでいらっしゃるわ。これに慢心せずさらに精進を重ねること、いいわね?』
 ソニアは小さく笑った。
(姉さんらしいな……)
 いつか、隣を歩ける日が来るだろう。その日は確かな夢として、ソニアの心へ刻まれた。
「それでこれから君らどうするんや?」
 潰された村の若い衆相手に、つつじが水を向けた。
「慣れ親しんだ土地ですけえ、村を復興させたいと思っちょります」
「んだんだ、うちの女房もうすぐ子どもが生まれるだよ。知らない土地で苦労させたいないけえ」
「まあおめでた? それじゃ一日も早く日常を取り戻さないとね」
 繁茂がうらやましげに両手を頬へ添えた。
「ハンモの領地から資源提供するよ。木材とかあればあるだけいいよね?」
「おお、ありがてえ! 感謝するだよ」
 飛び上がって喜ぶ村人をチラ見して、瑞鬼はさきほど官警へ引き渡した野盗どもの顔を思い出していた。黒田はともかく、ほかはさっぱりした顔をしていた。やったことは許されないが、罪を償えばじゅうぶん実社会へ溶け込むことができるようになるだろう。
 瑞鬼はくはっとため息をついた。
(はぁ、わしも変わったのう……昔は人助けなんて考えたこともなかったが……いい変化だと思っておこう。今のわしも嫌いではない)
 酒でも飲みたい気分だった。登り始めた月を見つけ、瑞鬼は顔をほころばせた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

おつかれさまでしたー!
みなさんが不殺を徹底したおかげで実質被害は出ませんでした。お見事です。

またのご利用をお待ちしております。

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