海を渡る危うき闇に

オープニング

●海を渡る危うき闇に
　ネオフロンティア海洋王国、首都リッツパーク。
　目の前には広大な海、『静寂の青』が広がり、海上を様々な船が行き交う。
　そんな船の行き交う海路上には海賊船や、海獣……そして、狂王種などの、様々な者達がうごめく。
　しかし、そんな危険があろうとも、仕事とあれば……尻込みする訳にはいかない訳で。
「さて、と……今日も仕事かぁ……今日の目的地は……ああ、アクエリア島かい」
「そうっすねぇ……ま、頑張って行きまっしょういってなぁ」
　と、『海種』と『飛行種』の船員達が、声を掛け合いながら船を漕ぐ。
　上層部のいざこざなど何のその、船員である彼らにとっては『海の仲間』でしかない。
　船倉に大量の物資を積んだ通商船は、リッツパークの海をこぎ出す。
　……そして、数日の後。
　水平線にアクエリア島が見え始めた、その時。
『……ウォォォン……』
　聞こえてきたのは、悲鳴のような声。
　その声は海中から……。
「……んー？」
　と、水面をのぞき込むと、数多の手をわらわらと伸ばしていた、タコの様な生物と、イカの様な生物。
　二つの生き物は、とても巨大で……瞬く間に海上へと浮上。
　触腕を船へと巻き付かせ……船は抵抗する間もなく、海中へと沈んでいくのであった、

●
「イレギュラーズの皆さん、早速ですけど、説明させてもらうのですよ！」
　と『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は、集まってくれたイレギュラーズ達にニコッ、と笑顔を浮かべつつ、早速。
「今回ですけど、海洋の通商船に護衛として乗り込んでほしいのです！」
　通商船に護衛、という事に……海賊でもあらわれたのか、と首を傾げるイレギュラーズ。
「今回は海賊ではないのです！　どうやらアクエリア島の周りに隠れていた海魔達が、最近通商船を牙をむいている様なのですよ！　このまま放置しておくと、通商船の安全が脅かされる事になりますから、早々に対処してきてほしいのです！」
　そしてユリーカはさらに。
「ちなみになのですが、今回現れた海魔は巨大化したタコの様な風貌の『オックトバス』と、イカの様な風貌の『クライベル』の二匹なのです』
「『オックトバス』は、そのタコ足が特徴なのですが、タコ足の中に鋭い剣の様なものが仕組まれていて、吸い付いたらその剣で突き刺すという攻撃をしてくる様なのです。一方『クライベル』は、触手を船やら人やらに巻き付かせる事で拘束すると同時に、大量のイカスミを噴出して、目潰し攻撃をしてくる様なのです。どちらもかなり強力な海魔の様ですから、油断ならないのです！」
　そして、最後にユリーカは。
「海の安全が保たれないと、船乗りさん達も命がけなのです。少しでも安心できる海で仕事が出来るよう、イレギュラーズの皆さん、よろしく頼むのですよ！」
　と、こぶしを振り上げるのであった。

参加者 : 8 人

冒険が終了しました！　リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧（8人）

リプレイ

●海の魔物
　ネオフロンティア海洋王国、首都リッツパーク。
　海洋王国特有の特徴といえば、周りの島々との交易船が多く出ているという事……そして今回も、そんな交易船に襲い来る事件。
「いやぁ……良い風ですねぇ……」
　と、目を細めながら、船頭で風を感じている『遠い海からやってきたトド』北斗（p3p000484）。
　そんな北斗の後ろで、イレギュラーズ達の乗り込んだ船の乗組員達が。
『いやぁ……今日は皆さんが乗り込んでくれるという事で、本当に助かりましたよ……ありがとうございます』
　と、申し訳なさそうに頭を下げる。
　そんな船員達に対し、優しく微笑む『医術士』ココロ＝Bliss＝Solitude（p3p000323）と、『アイオンの瞳第四席』クラサフカ・ミハイロヴナ・コロリョワ（p3p000292）。
「いえ、海洋王国所属として、海の安全を守るのも、そして王国の皆を守るのも、どちらもわたしが自らに課した義務です」
「同胞の、そして航路の危機となれば、率先して切り込むのが私達の務めと言えましょう……とは言え、今回はイレギュラーズの一員としてきているのですから、船員の皆様はそう硬くならずとも良いのですよ？　一つの船に乗っている間は運命共同体、等しく海の仲間なのですから」
「ええ……折角ですから、皆さんとお話ししたくて。ほら、空は晴天、航路は穏やかですし、まだリッツパークから出て少しですし、ね？」
『そうですか……いやぁ、そう言ってもらえて本当良かったぁ。そんじゃ、改まった言葉はなしにさせてもらうぜ、いいな？』
「ふふ、勿論です」
　二人の言葉に安心した様に張った気を抜いて、自然な口調になる船員達に、クラサフカとココロもくすりと微笑む。
　そして会話を愉しむ二人を横目に、『黒蛇』物部 支佐手（p3p009422）は水平線を望みながら。
「こちらの海は素晴らしいもので溢れとると信じ込んどったんですが、こういうのも居るんですの？」
　と小首を傾げる。
　それに『お嬢様の恋人』奏多 リーフェ 星宮（p3p008061）が。
「ええ、私は船での依頼も久しぶりですし、今回は護衛という事。それが海魔の魔物となった訳ですが……海でそういったモノが出てくると領地運営にも関わって来ますから、早急に対処しておかないといけませんね」
　更に『物理型お嬢様』碧紗（p3p008350）、『雨宿りの』雨宮 利香（p3p001254）、『めいど・あ・ふぁいあ』クーア・ミューゼル（p3p003529）の三人が。
「イカとタコの巨大な海魔が二体も……幸い今回は、前回の様な幽霊では無く実態の様ですし、怖がらなくて済みそうですわね……？」
「そうねぇ……これは狂王種の生き残りですかねえ？　タコにイカだなんて、ああ、何てベタな事でしょう……ベタってのも嫌いじゃないですけど」
「そうなのです。この海、魚類より軟体生物の方が多い気がするのです……厄介なたこは、身内に一人で充分なのです」
「そうねえ……でもまぁ今回はそれ以上に厄介なタコだと思うのよね。あーあ、カナヅチに海で戦えだなんてひどい依頼ですよねえ……そんなわけでクーア、適当に指示頼んだわよ。かったるいしいーぐあいにやっとくわ」
「早々に依頼ぶん投げすぎなのですよ！？　まぁ……商船の危機は経済の危機。邪魔者たちには迅速に、こんがりとご退場願うのです」
　利香とクーアのやりとりに、たまらずくすりと笑ってしまう支佐手。
「まぁ、この商船の方々も気さくな方々ですし……絶対に守り切ってみせますわ」
　と碧紗も頷き、そしてイレギュラーズ達は船員達と共に、アクエリア島へと向かう航路を全速前進で進むのであった。

●海へ引く者
　そして、数夜の航海を経た後。
「うーん……」
　少し難しい顔をしているココロ。
『ん、どうしたんだい嬢ちゃん？』
　と、その表情を見て、心配そうに声を掛ける船員にココロが。
「わたし、あまり海温が高いと頭痛くなるんですよね……」
　とこぼす。
　でも、船員達が不安がらない様に、優しい笑顔を浮かべるココロ。
　ただ、海温が高いという事は、海の中の生物たちが活発に活動しやすい環境である、という事。
「……そろそろ出没海域ですね。私が船の周辺の警戒をさせていただきますね。船員さん、不用意に海面を覗かない様に注意して下さいね？」
　とクラサフカは船員達に注意喚起しつつ、彼女自身の飛行能力を発動して周域を飛行。
　そして……航路の先、水平線の辺りにはうっすらと、アクエリア島の島影が浮かび始めると。
『イレギュラーズの皆さん、あそこです、島の影が見えてきましたぜ！！』
　と、嬉しそうに声を揚げる船員達。
　それに支佐手が。
「さて……図体のでかい怪物との事じゃけえ､襲撃の前に必ず何か兆候があるはずです」
　と、その手に取り出したるは双眼鏡。
　その双眼鏡を見た船員達が。
『んー、なかなか高そうな双眼鏡だなぁ！　いいねえいいねえ！』
　と気分良く笑う船員達。
　そんな船員達の声を聞いてかは分からないが……海中を蠢く影。
「ああ、この双眼鏡ですか？　良いでしょう、この間、市場で安く売っとったのです……と、そうこう言っている内に何か来やしたよ！」
　と船員達に注意喚起。
　そして近づいてきた影が、ザバァァンと大きな波を立てる。
　海中から姿を現わす海魔二匹。
　突如現れた巨大な海魔の姿に、驚いている船員達……その一方で冷静に敵の姿を見つめた支佐手。
「成程……こりゃあ最初に豊穣に来た船が、あんだけボロボロになっとったわけですね」
　その言葉に碧紗も。
「そうですね……この寒い時期に水中へ呼び込んだ事を後悔させてあげますわ！」
「ええ。絶対に守り通しやしょう。折角できた大陸との窓口が、こねえな事で閉じちまっては癪ですからね」
　碧紗の言葉に支佐手も頷き、構える。
　そうしている間にも、巨大化タコ海魔『オックトバス』は、太く長い触腕を海上へ。
「船員さん！　海魔がでたっぽいのでちゃっちゃと倒しますよ！　えっと、回頭して大きく離れて下さい！」
　と、ココロが船員さんに指示を行う。
『わ、分かったぁ！！　イレギュラーズさん、ちゃんと捕まってなぁ！！』
　大声で反応し、タコの触腕が船体に巻き付かない様に回避操舵を行う。
　船が横転しない位の急旋回……完全に回避、というまでにはいかないが、船体を雁字搦めにされる寸前で回避する。
　とは言えオックトバスの触腕はいくつもあるので、更に連続して触腕が襲い掛かってくれば……避けきれない。
「仕方ないですね。ほらほら、海のもずくになりたくないのならとっとと散れですよ！」
　と利香は統率術を発揮し、船員にきびきびと指示を与え、戦闘に邪魔にならない安全な所へと避難指示。
　それに合わせるように奏多がこちらです、と手を上げて、船倉の中へと逃がしていく。
　船員達を避難させている間に碧紗がイカの『クライベル』の方へと向かい、クーアがタコの方へ。
「水中で行動できるのがあなた達だけとお思いでしたら、それは大間違いですわよ！」
　と碧紗が言うと共に、イカに向けて移動しながら、マイトポーションを発動し、自己強化し、対峙。
　そしてクーアもまた、タコの真っ正面に対峙して。
「闊達なるねこの足跡を、そう易々と縛れると思わないことなのです！」
　と力強く宣言。
　そんなクーアの言葉に触発されたタコはその顔を更に赤くし……その攻撃をこちらへと誘導しようとする。
　その攻撃を後方からファントムチェイサーで援護射撃する奏多、更に利香も船員達が避難し終わったのを確認してから。
「雷魔法の翼よし、万一ドボンの簡易魔法も良し。うし、始めますかっ！」
　と低空飛行を発動し、クーアと同じ所へと移動。
「さて、と。クーア、しっかり頼むわね？」
「あたりまえなのです！！」
　利香に触発される様、クーアはタコを利香に任せ、身を翻してターゲットをイカに変更。
　更に攻撃集中を踏まえながら、酔生夢死を発動。
「煙一つない洋上に、葬送の焔を立てるのです！」
　炎と雷の奔流に巻き込み、イカは少し苦しむ叫声を上げる。
　しかしイカは叫声を上げながらも、その口からイカスミをプシュウ、と吹き出して視界を暗闇に染める。
　イカの注意を惹きつけている間に、タコ側に対峙する利香、北斗、奏多の三人がタコ側へ正対。
「ほら、船よりリカちゃんと遊びましょ？　あー、でも触手プレイはNGですね？」
　とテンプテーションを発動し、敵を誘惑する事で自分に夢中にさせる。
　それを援護する様に北斗が喧嘩殺法で殴りかかり、奏多はアーリーデイズを自己に瞬間付与しつつ、ファントムチェイサーで狙い撃つ。
　三人が攻撃をしている中、海中に潜水するのはココロ。
　当然、海中に向かったココロに気付かずリカに向けて触手を伸ばすタコ。
　そんなタコに人知れず近づいて行き、神気閃光を、船底に張り付こうとしている脚に叩きつけ、触腕を切り刻む。
　……勿論タコからすれば、不意を打たれた一撃であり、目は海上にあるので、何故腕が切られたのかは理解出来ていない模様。
　一方でイカに向けては、先ほどのクーアの一撃に続き、碧紗はアロガンスレフトで防無の一閃、クラサフカはЦарь-пламяを叩き込み、彼女が怒りを付与することで自身へのヘイトコントロールを行う。
　そして、最後に支佐手がファントムチェイサーで追撃していく。
　そんなイレギュラーズ達の攻撃で、船は大きく揺れるものの、致命的な被害には至らずに一刻が経過。
　次の刻……と言ってもイカとタコの動きはさほど変わらない。
　船を沈める為に、イカもタコも船体にまた脚を絡みつかせようと触腕を伸ばす。
　そのイカの触腕が飛んでくるのを、支佐手とクーアが対処。
「ええい、無駄に丈夫な身体をしとるのう！　これでも喰らいんさい！」
「洋上と言えど、船の上は陸。陸で水生生物がねこに追いつける道理はきっと無いのです！！」
　と言い放ちながら、キルザライトとマエヴェリィブレイズで触腕切断。
　そして拘束を逃れた為、タコの攻撃は狙い済まして……という事にはならず、大振りの一撃で利香へ攻撃してくる。
　しかしそれに。
「おやおや、初めの連携はどうしましたぁ？　いひひっ！」
　と嘲笑うように妖艶に笑みをこぼしつつ、雷気集中でAPを回復しつつ、迎撃の炎月輪を放つ。
　そして奏多は攻撃重視で、更にクリスタルスキュアで呪殺効果を付与し、敵を苦しめるべく動く。
　更に海中からはココロの神気閃光を更に重ね掛けする事で、海中の方の手を更に傷付けて行く。
　刻一刻と時は過ぎ……イカとタコの触腕も、一つ、また一つ……と切り刻まれていく。
　そして……タコの触腕８本の内６本、イカの触腕が５本ほど斬りとられた時には、どちらの動きもかなり鈍くなる。
　イカ自身はイカスミを噴射することで、暗闇効果を付与する事が出来るのだが……タコはその触腕以外に攻撃手段が無い。
　……そしてタコは、起死回生とばかりに残る２本の触腕で、上下両面から通商船を挟み込む様に蠢く。
　でも、海中と船上でココロと利香が機敏に反応。
　それを嫌がる様に、タコ自身の身体が船へとのしかかろうとしてくるが、奏多が後方からファントムチェイサーを放つ事で、船体から弾き飛ばす。
　そして水中でココロがダンス・マカブルで切り刻み、利香も天衣無縫で一刀両断。
　全ての触腕を切り裂かれたタコはもはや水上に浮かぶのみ。
「そんじゃタコ刺しの時間といたしましょう！」
　と利香と奏多が船上から集中砲火し……そのまま海中へと沈んでいく。
　残るはイカのみ……仲間全員、イカの方へと移動。
「タコは終わった様ですね……では、後はイカのみ、と」
「その様なのです。それじゃ全力全開で行くのですよ！」
　とクーアはイカの周りに『ジ式・漁火』を発動。
　雷の奔流がイカにまとわりつくと、それを払いのけるように触腕をバラバラと揺らす敵。
　そんな敵の動きにクーアはぽつり。
「期せずして、本当に漁火っぽい使い方をっしているような気がするのです……少なくとも、私に呪縛は効かないのです」
　と零す。
　そしてそんな敵に対し、クラサフカがシャドウイグジスタンスで自己を強化しながらЦарь-пламяを重ね掛け。
　鬼道、痺れの効果で抵抗力がガクン、と下がった所に碧紗が。
「クラサフカ様、ありがとうございます」
　と一礼しながら、イカに極めて近接して、彼女が戦鬼暴風陣を発動。
　その一撃に、多くの触腕が千切れていく。
　そして、支佐手が。
「さぁ、そろそろ終わりじゃ」
　と、支佐手が弱点を突いたファントムチェイサー。
　その一閃がイカの身を討ち取り……イカは爆発四散し、海へと散らばっていった。

●平穏を求め
　そして……再び平穏を取り戻した海。
「……どうにか決着がついたようだね……？　皆、お疲れ様」
　と奏多がねぎらいの言葉を掛けつつ、船体を見て回る。
　敵が振るった触腕の結果、さすがに無傷で、という訳には行かない。
　ただ修理すれば可能な程度の損耗であり、修理すればアクエリア島にも順調に航海出来る事だろう。
「取りあえず、船員の方達へ無事終わったことを伝えて参りますね？　修理は皆様方と一緒にするのが良いと思いますし」
　と碧紗の言葉に皆も頷き、船員達の下へ。
　……大きく船が揺れた結果、少しではあるが擦り傷、打ち傷を負っている船員達。
『……こ、これくらい大丈夫だって！』
「駄目ですよ。ほら、見せて下さい」
　強がる船員達に、海洋王国式外科治療でせっせと手当をしていくココロ。
「島まであと少しです、頑張りましょう！」
　と怪我した人達へそう呼びかけ、クラサフカも。
「島に着いたら、無事にたどり着けた事を祝して祝勝会でもしましょう？　もう手配済ですから、ね……お酒も勿論用意してありますよ」
　くすりと微笑むクラサフカに、歓声を上げる船員達。
　そして破損した所をさっさと修復し……その日の夜前には、アクエリア島に船が到着。
　交易資材を降ろし、取りあえず一仕事を終えた船員達。
　クラサフカの用意した酒宴に歓声を上げ、思いっきり愉しむ船員達。
　そんな船員達へ支佐手が。
「いやあ、良かった良かった。無事に到着出来て何よりです。それで豊穣にはいつ頃向かう予定ですかの？　わしも皆も、次の船を長うして待っとりますけえ、絶対に来て下さいや！　旨い魚と鮭で歓迎させていただきますからの！」
『ああ、勿論だとも！　まぁ、豊穣に向かう仕事が来ればだけどなぁ……そん時は連絡させてもらうからよぉ！』
　船員達の言葉に支佐手も笑い……海の漢達の酒宴は、夜遅くまで続くのであった。

成否

成功

ＭＶＰ

なし

状態異常

なし

あとがき

海魔退治、皆様お疲れ様でした！
皆様のおかげで通商船も無事アクエリア島へと到達……通商の仕事も無事にこなせた様です。
皆様の力が無ければ、きっと無事には済まなかったこの仕事……本当にありがとうございました！