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シナリオ詳細

BARと汚職の微妙なカンケイ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●大体イレギュラーズのせい
 鉄帝、首都スチール・グラードには一件のバーがある。首都にあって異質な、店内の落ち着いた雰囲気。それでいて客は喧々諤々の喧騒を奏でるコントラストは鉄帝民の琴線に触れ、そこそこの人出を稼いでいる。……のだが。
 近頃、イレギュラーズがちょくちょく店に来る様になってからとみに評判がふるわなくなった。ここで飲んだ客が深夜に暴れた末に軍警と大捕物を繰り広げた挙げ句組織を潰してきただとか、ここに入り浸るさる組織のメンバーが嘱託テロ事件に巻き込まれた挙げ句苛立ち紛れに軍警を翻弄した末に組織を潰したとか。
 いや、犯罪組織を潰しているならいいのだろう。悪いことじゃない。
 だが、2度に亘って軍警とやりあう現場になったバーなんて、飲んでていつ軍警に包囲されるか分かったもんじゃない(尤も、それを待望する物好きの客が増えたとの噂もあるが)。
 結局のところ、次第にこのバーはいろいろな噂が尾ひれをつけて流れるようになり、軍警もそんな場所を何も見ぬままに放置しておこう……とは言えなくなってきたのである。
 ここまでが今回の話の前段。問題は、くだんのバーの店主が軍警察にしょっぴかれたことにある。
 なんでも、これまでに湧いてしまった悪評だの、軍関係者の立ち入り調査などで明らかに怪しい物資がいくつも発見された「との噂」で、先日ついに逮捕勾留に至ったのだという。
 マスターは弁護士の代わりにローレットの情報屋を呼ぶよう希望しており……。

●身から出た錆、誰かの皮算用
「ご要望に預かり馳せ参じました、日高と申します」
「こりゃご丁寧に。ああ、アンタ甘いものは食べるかい?」
 『ナーバス・フィルムズ』日高 三弦(p3n000097)の慇懃な一礼に、マスターは少したじろいでから饅頭を差し出した。見張りの看守は動かない。その程度はどうとでもなると考えているのだろう。
「は? ……はあ。頂戴しておきます。この度は私どものイレギュラーズの不手際で大変なご迷惑を――」
「いい。それはいいっこなしだ。アンタんとこも大変だろう、あんな飲兵衛共抱えて。俺の店はこのまま逮捕が確定したら潰されちまうかもしれねえ。ちょっと、酒を配ってやってくれねえか」
 三弦は饅頭を懐にしまうと頭を下げようとした。店主はそれを押し止めるとせめてもの願いだ、とばかりにそんなことを述べた。首をかしげる三弦。だが、数秒後にピンと来たような顔。
「……どの当たりの棚が喜びそうか、ご存知で?」
「さあなあ、『饅頭でも食えば分かるかもしれないなあ』」
「かしこまりました。では、遠慮なく」
「オウ、宜しく頼まァ」
 三弦はそう言って面会を切り上げると素早く面会室から出ていく。軍警の支部から出た彼女はポケットの饅頭を取り出すと、それを手で弄びながらバーへと向かった。
 
 ……果たして、饅頭に仕込まれた手紙通りに棚の瓶を動かすと隠し部屋への扉が開く。
 その中には権利書各種と、サインのない契約書――一方的なバーの権利譲渡契約を迫る書類が置いてあった。どうやら今回の逮捕劇は、この権利書を巡ってのことのようだ。
 そして、その契約書の『甲』にあたる名は。
「グロク・ヘッセン……ああ、あの支部長……」

GMコメント

●わかりにくいから3行で説明して
 バーの店主が捕まったけど軍警支部の独断
 支部長がバーの土地建物の権利を欲しがっているが、店主は隠し部屋にそれを隠した
 支部長の私邸にめっちゃ悪事の証拠の契約書とかあるからふんじばってしょっ引こうぜ!

●達成条件
 鉄帝軍警支部長グロク・ヘッセンの捕縛
 グロク邸から証拠の押収
 傭兵の最低1名の捕縛

●傭兵×15
 グロック邸に乗り込んで最初に戦う相手です。
 全員が銃で武装しており遠距離系です。一部魔術師も混じっています。
 基本銃による射撃を行い、混乱などのBSを付与してきます。
 近接に入れば無能ということはなく、銃床打撃や銃剣を駆使して戦います。
 彼らを邸宅突入と並行して倒していき、私室に踏み込めばグロク戦です。

●グロク・ヘッセン
 鉄帝の軍警、その支部を任されている男。鉄帝の例にもれずそこそこデキる男です。頭も、戦闘面も。
 基本装備はパワーアシスト機能を兼ねたミニガン(基本射程3、スプラッシュ(小))。
 すべての攻撃にスプラッシュ(小)を伴います。ミニガンの部位破壊は可能ですがHPが高いのでいっそ普通に攻撃したほうが早いです。HP5割を切るまで防御機構により抵抗がべらぼうに高いです。
・我に続け(PC使用と同仕様)
・ブーストタックル(物遠単:移、痺れ)
・乱射(物遠扇:流血・乱れ)
・焼夷乱射弾(物中範:火炎、致命)
・確殺接射(物至単・必殺、スプラッシュ(大)、呪殺)

●戦場
・グロク邸(外縁~内部)
 そこそこ広い。庭にいる時点で2階とかから容赦のない攻撃が飛んでくるぞ。
・グロク私室→中庭
 私邸に突入後、追い詰めたら中庭へと降り立ち応戦してきます。
 こちらはかなり広いですが、グロク自身素早いので注意。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • BARと汚職の微妙なカンケイ完了
  • GM名ふみの
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年02月20日 21時55分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)
レジーナ・カームバンクル
オリーブ・ローレル(p3p004352)
鋼鉄の冒険者
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
ゼファー(p3p007625)
祝福の風
ライ・リューゲ・マンソンジュ(p3p008702)
あいの為に
微睡 雷華(p3p009303)
雷刃白狐
Я・E・D(p3p009532)
赤い頭巾の魔砲狼
リト(p3p009576)

リプレイ

●鉄帝で悪事(わるさ)をすると
「酷い話だ……。店主の無実を晴らす為にも彼らの悪事を白日の下に晒さなければ!」
『雷はただ前へ』マリア・レイシス(p3p006685)はぶっちゃけ件の店主には大きな借りがあった。具体的に言うと嘱託テロ事件の犠牲者枠として店主共々居残り組として保護してもらった恩とか。知人各位の狼藉を流してもらってるとことか。
「悪徳軍警の始末……権力に任せて好きに動いてたみたいだけど、いよいよ年貢の納め時だね。依頼人にはイレギュラーズがそこそこ迷惑をかけてたみたいだし……」
 『折れた忠剣』微睡 雷華(p3p009303)はそんなマリアをチラ見しつつ装備を確認し、シンプルに相手を倒せばいいだけ、という状況には大歓迎といった様子。細かい細工をせずに戦えるのなら、まあ、楽なのは非常にわかる。
「土地を巡ってのいざこざは見慣れたものだけど、お偉い官憲様が欲をかいて首を突っ込むなんて世も末だね。鉄騎種にしては随分と狡っ辛いやり口だが……」
「まあ、或る意味此の国のいつも通りよねぇ。下手に知恵が回る奴が妙にセコいっていうか何て言うか……」
「嘆かわしい話ですがその通りです。ですがこのような汚職は逐次潰しておかないといくらでも増えるので」
 リト(p3p009576)は鴉の『ネヴァン』に目配せをしつつ、首をかしげ。そんな事例を多々見てきた『never miss you』ゼファー(p3p007625)の呆れたような、納得づくの言葉で返す。『鋼鉄の冒険者』オリーブ・ローレル(p3p004352)は2人の会話に頷き、頭を抑えてため息をついた。国のために剣をふるい続けて多くの相手と退治したが、悪の種は尽きまじということなのだろう。
「汚職だ汚職だと何を驚いているのでしょう……全くもって、何時も通りの普通の事でしょうに。ですが嘆かわしいのは間違いありません。神の威光を示しましょう」
「んーーとりあえずドッカンバッキン暴れれば良いんだよね?」
 『あいの為に』ライ・リューゲ・マンソンジュ(p3p008702)は神への敬虔な態度を崩すことなく、しかし人に対しては果てしなく冷徹であった。人の良心を信じていない、ともいう。『赤い頭巾の悪食狼』Я・E・D(p3p009532)はといえば、細かい事を考えることに向いていない……というか考えなくてもいいならそうしたい、という感情がありありと感じられた。汚職とか国について、は他人にまかせて暴力装置として立ち回ることこそが、その有り様なのである。
「ひとまず、なんでもいいから情報を集めたいわ。我(わたし)も情報集めはやるけど、そこまで信用できないけど」
「それじゃあ裏取りはオレとネヴァンにまかせてよ。先輩方が戦闘でバチバチにやる分、オレは小細工で援護するさ」
 『レジーナ・カームバンクル』善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)は独自の情報網を活用し、少しずつではあるが敵情を掴もうとしていた。が、それにも情報精度などの限界がついてまわる。それを聞いたリトはこれ幸いと自らが協力することをアピールしにいく。自分にできることを全力で、至らぬ点は全て『出来る事』で補う。不条理と戦う者の初歩を、リトはしっかり心得ている。
 ネヴァンによる偵察行為をするとなると、ひとまずグロク邸の周辺まで向かわねばならない。
 その間も、レジーナは様々なスジからの情報を集め続けた。……情報は多ければいいというものでもない。だが、膨大な量を組み合わせることで、その信憑性に序列をつけることは十分可能だ。
 ……他の面々が正真正銘の戦闘集団なので、2人が主導しないとどうにもならないというのは言わない約束である。

●鉄帝本気者(がちぜい)が来襲(く)る
 グロク・ヘッセンの邸宅は随分と物騒な雰囲気に包まれていた。
 先日『別件逮捕』を敢行したバーの店主が面会していた。それはいいだろう。問題は、それがローレットの情報屋であったという点だ。
 その面会を止められなかった担当者は酷い折檻を受けたのは当然ながら、しかしそれでも軍籍剥奪や職を辞させる権利などはグロクにはなかったが故に状況は厄介さを増す。
 鉄帝に於けるローレットの立場は現在も上がり続けている。軍内部の規律に踏み込む事はできまいが、なにかのきっかけで不正が明るみになればその限りではない。
 騒音。
「……まあ、構わんか。所詮は烏合の衆、俺を怪しむことはあっても無為につっかけてくる理由が……」
 足音、騒音。
「理由がな……何?」
 破砕音、戦闘音、そして悲鳴。
 今この館は、明らかに『何者か』の襲撃を受けている。
「あいつらめ、屋敷を傷つけるなと言っていただろうが……!」
 やり口こそ悪どく強引ではあるが、グロクは比較的『穏当』な方であるという自覚はある。だが、雇った連中が徒に家を壊して襲撃者を迎撃するというのは正直、余り許せるものではない。
 グロクはミニガンをマウントしたパワーアシストユニットに身を預けると、自ら戦場に参じようと決意し――。
「我々には正当性と根拠があり、抵抗すればより不利になる! グロク・ヘッセン、貴方はもう詰んでいるのですよ!」
「はろーはろー、ビビリの狡っ辛いヘタレ野郎の部屋はここかしら?」
 オリーブの長剣とゼファーの槍とが硬い扉をぶち破って居室に飛び込んできた。
「腰抜けの親玉にはお似合いの玩具ねぇ?」
「俺の屋敷に襲撃(カチコミ)をかけるとはいい度胸だな、玩具如きに圧し潰される痛みと屈辱を身に刻んで泣きながら逃げ帰るがいい!」
「一応言うけど、投降する気はあるかい?」
「皆無だな!」
 ゼファーの煽り文句に歯をむき出しにして返したグロクは、焼夷弾をばら撒きつつアシストユニットを後退させると、中庭へと身を躍らせる。マリアの言葉に即座に否定を返した彼は、地上へ降りようとする一同に向けてミニガンを照準した。

 ……時間はやや遡る。
 襲撃からグロク私室への突入までが早業であったかのように思われるが、決してそんなことはない。
 リトがネヴァンを経由して情報を引き出そうとした、その観点は悪くなかった。外観から概ねの間取りを割り出すことには成功したし、それは事実襲撃効率を大幅に引き上げた。だが、流石に傭兵達だってただ立って警らしているだけではない。日常会話感覚で内情を漏らすような無能を飼うほど、グロクは無警戒ではなかったのだ。
「……ってワケで、ネヴァンが集められたのは大体の間取りと外の警備の数くらいかな。全体的に隙がないから不意打ちよりは正面突破の方が」
「このメンバーで搦め手に頼る必要もないわね。賛成よ」
 リトが手持ちの情報を広げて説明を終えると、レジーナも即座にその提案に同意した。霊魂達との交信は上手くいかぬが、敵の数がわかっていれば問題ない。グロク本人が潜伏している場所のあたりがついているなら、もう小細工を弄するより早急に突入してしまったほうが遥かに早い。
「出来るだけ殺さないように立ち回りたいけど、本当に危ないなら遠慮はいらないね! 皆、無事に帰ろう!」
「モグモグして万が一死人が出てもしょうがない。なるほど」
「どこになるほどな要素があったのかな」
 マリアが握り拳を構え、極力平和に事態を収めようとしていたのに対し、Я・E・Dは何ひとつ理解している様子がなかった。その様子を見ていた雷華が首をひねったが、Я・E・Dが合わせて首を捻ったのでこれはもうどうしようもないのでは、と察した。Я・E・Dは混沌に来て日が浅い。この世界の、もっといえば社会構造上必要な倫理観が欠如している。「どこまでやるのか」はわからない。「やる」か「やらない」かが指標なフシがある。
「神の御心が皆さんの心へ届くように、真っ直ぐ伝えればいいのです。無為に殺す必要はありませんよ」
「必要ない場面で手を汚す必要はありません。それに、必要な人以外全員殺してしまっては捜索に支障が出ると困ります」
 ライは両手を胸元で組み、それらしいことをそれっぽく、敬虔な信者であるかのように告げる。それに呼応するようにオリーブも深く頷いたが、恐らく彼は横にいる女性の本心には気付いていまい。
「それじゃあわたしとオリーブで先陣を切るとしましょうか。合図に合わせて出たらできるだけ引きつけるから、後お願いね」
「わかりました。お任せ下さい」
 オリーブの返答もそこそこに、ゼファーはハンドサインでカウントを始めると、フィンガースナップに合わせて木陰から飛び出し、グロク邸の正門前に身を躍らせた。
「あらあら。安全な場所からしか撃てないのかしら。鉄帝の人間にあるまじき腰抜けっぷりを見せつけてくれるじゃない……脳筋国家に恥じない根性見せてみなさいな?」
「下らねえ口車に乗るんじゃねえ! そいつの話を無視してブッ飛ばせ!」
 ゼファーの巧妙な挑発に乗せられた数名の傭兵は、言葉に導かれるようにその間合いへと飛び込んでいく。傭兵のリーダー格の喝破で正気を取り戻した者も居たが、さりとて速度に優れる者はそれより早く彼女へと襲いかかり、丁寧に躱されるか、避け得ぬタイミングで振り下ろした銃剣、その連結部に槍の石突を打ち込まれるなどしていなされるかする有様。
「あの女よりも横の野郎を狙え! あいつは確か――」
 2階のバルコニーから一斉に魔術と銃とを構えていた傭兵達は、しかしうち1人が蒼光とともに宙を舞うのを見た。
「悪いことは言わない! 大人しくお縄につけ! 抵抗するなら加減はするが命の保証は出来ないよ!」
 マリアの雷吠絶華……リニアドライブによる空中機動からの飛び蹴りは魔術師の顔面を強かに蹴り込み、打ち上げたところに更に2、3発の蹴りを食らわせたのだ。一発の威力は重くはない。が、魔術師にとってその血液たりうる魔力を奪われた時の揺り返しは言わずもがな。
「遠距離戦は得意じゃないし、得意な人に任せていこう……近くにいる相手から制圧、だね」
「あのあたりにいる連中は面倒だね。よし倒そう」
 雷華はゼファーの周囲に居る者達をオリーブと連携しつつ掃討していく。コントラクターと蹴りによる複合攻撃で効率的に打撃を与え、動きがおぼつかない者がいれば殺さぬように。『疾風迅雷』、その名に恥じぬ勇猛さだ。
 Я・E・Dは仲間達の方針を知って尚遠慮するつもりはなかった。何故なら、加減をして勝てるなどとは思っていなかったからだ。魔砲を打ち込まれた術士は、事実としてその一撃を打ち払い、傷つきつつも立っている。後ひと押しで死ぬとは思えぬほどピンピンしているではないか。
「殺して終わりなど、神の御心に沿いません。
 決して貴方がたの命を無駄にはしませんとも。
 そして貴方がたは知るのです。これが神の慈悲であるということを。
 おもいやりを心にいだき、これを機に全て擲って神に頭を垂れなさい。
 かみのゆるしは平等に与えられるべきなのです」
 ライは神の代弁者として言葉を吐き出しながら、弾倉に『説得』を送り込む。相手の心臓(こころ)に届くように、しっかり構えられたロザリオは確かに殺さぬギリギリを打ち抜き、しかしそこに確かな敵意を以てえぐり取る。
「旦那はどうした?! まだ部屋か!」
「多分尻に火がついても出てきませんぜ! こいつら倒すったって――あぐッ!?」
「敵を前に会話だなんてのんきなものだわ。どうせ全員締め上げるのだから遅かれ早かれの話でしょう?」
 レジーナは多少の被弾を覚悟しつつ、一気に間合いを詰めると手近な相手に組み付いて動きの自由を奪っていく。
 リトはといえば、仲間達の動きについていくようにして右に左に駆け回り、弱っている敵を次々と殴り倒すことに終始する。前のめりな面々にリトをかばう余裕はない。自分の身は自分で守らねばならない。……そしてリトは、グロク邸の傭兵達を前にギリギリ倒れぬ程度には持ちこたえた。
 レジーナは倒れた者達の捕縛を使い魔に任せると、屋敷に飛び込みグロクの居室を探らんとする。2階から飛び込んだマリアはそのまま上から捜索を始め、一同が揃ったところで突入を敢行したのだ。


「この弾丸が当たるなら、それで貴方が傷つくなら、それが神の御心なのでありましょう」
「殺すつもりはないから、死なない程度に傷ついたら投降してほしいんだけど」
「生意気な……! 俺を簡単に倒してのけるなんて思ってるならその考えごとブチ抜いてやるよ!」
 ライとЯ・E・Dの攻撃を巧みに躱し、あるいは受け止めつつ、グロクは銃弾をばら撒き、あるいは突進してくる。成程、鉄帝軍人として言葉だけのそれではないらしい。
「余り長く遊んであげるつもりはないわ。一気にいくのだわ」
 が、レジーナの剣魔双撃による不意打ちまでは躱せない。いきおい、その身を襲った毒手(あんき)はグロクの身を毒で冒すが、彼は尚余裕を保っていた。
「玩具頼りで楽しいかしら? まだまだ遊び足りないみたいだけど」
「ほざけ! その余裕もそう続くまいよ!」
 ゼファーは槍を構え、ただ一直線にグロクに突きかかる。グロクはその動きに合わせ渾身の射撃を叩き込む――が、彼女の胸元からこぼれ落ちたタロットが射撃を何度かに亘って弾き、その猛攻のかなりの部分を無力化した。必然、一方的にグロクが被害を受ける展開となる。
「まだまだァっ!」
「――っ、と!」
 素早く銃口をリトへと差し向けたグロクだったが、打ち込まれた弾丸はリトではなく雷華の身を貫いていた。
 とっさの判断で彼女が身を挺してリトをかばったのだ。
「ちょっとおイタがすぎるね、グロク君! でもその余裕、いつまでもつかな?」
「吐かせ、クソアマ! お前の蹴りの精度は悪かねえが、その程度の……打撃、で――!?」
 空から降ってきたマリアの声に、グロクは思わず怒鳴り返そうとした。そして、言葉の途中で唐突に力が抜ける感覚に襲われ、膝をついた。膝が、動かない。ユニットごと膝を執拗に狙われたことで、破壊の種を撒かれていたのだ。
「勝負あり……といいたいところですが、まだ手は動きますね。このまま静かにしてもらいます」
「ッ、ふざけんな……!」
 跪いたグロクの前に身を躍らせたオリーブは、相手のミニガンを蹴り砕き、いきおい、その顔面に靴底を振り下ろした。驚くべき鮮やかさで決められた一連の動きは、最早攻撃というよりステップといったほうが正確なほどだったと仲間達は証言する。

「さぁ、不正の証拠と隠し場所、鍵があるならその解錠まで全て吐いて貰いましょうか」
「あ……ぐ……」
「秘密なんてゲロと同じです、お腹の中にあるより吐いてしまった方が楽ですよ」
 レジーナの魔眼にさらされ、ライの言いくるめ(脅迫)によって追い詰められたグロクに、何か気の利いた処世術を為すことは不可能に近かった。
 そして、雇い主が捕まったことで、傭兵達もまた彼を庇い立てする理由を失ったことになる。
「一つ思ったんだけど。支部長を捕まえたとしても、依頼人さんって無事に釈放されるのかなぁ?」
「そもそも彼が疑われている案件のいくつかはわたし達の仲間の不手際が原因だから、全員連れてこればいいんじゃない? この調子なら逮捕状とった証拠にも偽装があるかもしれないし」
「なんていうか……先輩方のやり口も大分エゲつないな」
 リトが先輩各位の酷い尋問を見て震える傍ら、Я・E・Dは首を捻って疑問を呈した。尤もな話である。あるのだが、雷華の言う通り彼の疑惑の多くがローレット絡みだ。マリアが当事者に一声かければ大体解決する……んだけど、多分マリアは仲間に声をかけたがらないだろう。マスターが恩赦を受ければいいのでは? までいいそうだ。そりゃ記念すべき108(ぼんのう)回目をそんなところで使いたくないやな。
 それでも多分呼び出しはかかるしちゃんと証言してごめんなさいしてマスターは無事に戻ってくるのだろう……また、イレギュラーズに店を荒らされることになろうとも。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 各々、やりたいことと準備とが『概ね』噛み合っていた為そこそこ上手く行ったように思います。
 あと一箇所だけななめ読みとかそういうのを仕込みました。探してみてね。

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