PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ルート14

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 例えば。
 貴方は一度くらいは『もし自分が死んだら?』と思ったことはないだろうか?
 
 そう、目の前の老人が呟いた。
 深くフードを被った老人は手にしたキューブを不器用な手付きで、或いは器用な手付きで、ぐるぐると回している。
 最初は色とりどりに出鱈目逆しまだった筈のキューブの模様がいつの間にか6面それぞれ同じ色に揃っている。
 
 さて、コレは死の小箱だ。

 老人の言葉に疑問符を投げかける。
 
 こうして、覗けば自分の死がみえる。
 病気で死んでしまうのかもしれない。愛しいものと結婚の結婚の約束をして戦場に向かって、望みあえなく死ぬのかもしれない。勇者として魔王と戦い死ぬのかもしれない。愛憎のはて、愛に狂った者に刺されて死ぬのかもしれない。ただ、なにもなく野垂れ死ぬのかもしれない。兄弟の、師弟の、親子の因縁の闘いの果て、死ぬのかもしれない。

 そんな、自分の死を少しだけ垣間見ては見たくはないかね?

 問われるは好奇心の毒。
 
 この死が未来のことか、はてさて異世界での出来事か。
 それがわかる日はくるのか、すべておまえさんしだいだ。

 ――手渡されたキューブの中央には14とだけ書かれていた。

GMコメント


 鉄瓶ぬめぬめです。
 皆様あっという間に5カ月です。死にたくはないけど自分が死んでしまったときのシチュエーションってなんとなく考えてはしまいませんか?
 というわけで、以前にも出したような雰囲気のドウ転んでも14にいけしてしまうRPシナリオです。
 ちなみに14にいけの意味は知ってる人に教えてもらってください。
 14は絶対なのです。

 あそびかた

 あなたは14と書かれたキューブを手渡されました。
 このキューブをひねると貴方が思う死の瞬間を垣間見ることができます。
 死んでしまった時点で自動的に生還して手の中にはもうキューブもありませんし老人もいません。
 不思議な経験をしたなーとだけ思うことになります。幻想は不思議なのです。
 
 あなたがこうなってしまった理由
 それに対して貴方はドウ抗ってドウ死ぬか。
 どれだけあらがっても死から逃れることはできません。だって14だから。

 そんなシーンを想定してプレイングをお書きくださいませ。

 変則的なRPシナリオですが楽しんでいただけましたら幸いです。
 基本相談することはないと思いますけど、かぶるとあれなのでふわっとこんな感じっていうのは相談し合ったほうが幸せになれるかもしれません。

  • ルート14完了
  • GM名鉄瓶ぬめぬめ
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2018年05月26日 21時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ティバン・イグニス(p3p000458)
色彩を取り戻す者
グドルフ・ボイデル(p3p000694)
ルネ・リエーヴル(p3p000726)
らびっとびーあんびしゃす
シュバルツ=リッケンハルト(p3p000837)
死を齎す黒刃
ゲンリー(p3p001310)
鋼鉄の谷の
シーヴァ・ケララ(p3p001557)
混紡
エスラ・イリエ(p3p002722)
牙付きの魔女
ヴィマラ(p3p005079)
ラスト・スカベンジャー

リプレイ


 その日の月はやけに大きかった。
 ぎぃ、と軋んだ音をたて廃墟の扉が開く。恐らく教会だったのであろう。割れたステンドガラスが建物の床に散らばって月光を反射している。
 ティバン・イグニス(p3p000458)はまるで引き寄せられるように廃墟の中に足を踏み入れた。
 なぜ自分はここにいるのか。思い出せない。
「――」
 声が聞こえた。
 そこには黒い人影。月の逆光が彼、若しくは彼女を浮かび上がらせる。なのに顔だけは全く見えない。
「真逆」
 ティバンは一歩下がる。
「――」
「違う、俺じゃない」
 何がそうなのかはわからない。けれどその声には否定しないといけなかったのだ。
 一歩一歩近づくその影が恐ろしかった。足は動かない。
「――」
 なぜだろう、その声は優しさすら感じるのだ。だからティバンは手を伸ばした。影の口元が下弦の月の弧を描く。
 ああ、許してくれたのか? そう思い安堵に泣き出したくなる。
 ――、瞬間。
 視界が朱に染まる。赤、朱、赫。遅れて目が焼けるような激痛が彼を襲う。
 たす、けてくれ。失われた眼球は光と影の造形を彼の脳に伝えない。けれど致命的な何かを感じた。
「――ッ!」
 赫から黒のグラデーションが、ティバンの意識を染めた。
 何も、動かない。男の遺骸をただ月光が照らし出していた。


 そりゃさ、ビッグになりたい。そう思ったさ。間違いない。
 けど、こういう事じゃないんだって!
 誰も本気にしてなかったし、自分でもそりゃ本当にできるとは思ってないとはいわないけど、こんなんじゃないはずだ。
 ぺたりとその場にしゃがみこんだ『らびっとびーあんびしゃす』ルネ・リエーヴル(p3p000726)の目線には、山の頂。
 ぺたりと座り込んだ衝撃で周囲には地震がおこる。彼女が動けばこうなるのだ。腕をふるえば台風が、涙を流せば水害が、彼女の一挙一動が小さな者たちに大きな被害を齎す。
 動く大災害。それが彼女。何もしていないと思っているのはルネだけだ。
 やがて人々は巨大な悪を討たんと立ち上がる。各国の指導者が立ち上がり、彼女を殺す手段を講じ始める。
 ルネはいまや人類の敵だ。
 そりゃ、気持ちもわかるが、はいそうですかで命を差し出せるほどルネは物分りは良くはない。
 対するは世界。あー、なんつうか本気でビッグになったもんだよ! 
 そして送られてくる最強の八人。明らかに今までとは違う八人。どうやら神の力をうけて云々とか言っているらしい。ああ、私はとうとう神すらも敵か。
 戦いは三日三晩に渡った。うそだろ? おい、こんなの聞いてない。戦うためにはエネルギーは必要だ。四日目ルネは『勇者達』の隙をみて逃げ出し、大地の力を得ようと寝転ぶ。少しだけのつもりだった。
 だけど人類はその隙を見逃さなかったのだ。巨人を殺す毒の剣が自らの首を穿っていたのに気づいたときには遅かった。もう、指先すらうごかせない。
 薄く開けた目の向こうで勇者達が勝利の雄叫びを上げていた。
 ビッグにはなりたかった。けどこういう結末なんて望んでいなかった。涙があふれる。
 その涙は洪水となって彼ら勇者を濁流にのみこんだ。ああ、いい気味だ。
 最後にそれだけ思った。


「けじめをつけにきたぜ」
 夕日に赤く染まる荒野。その向こうには一人の女がいる。
「――?」
 薄っすらと笑むその女はよく識っている女だ。だというのに、もはやかつての姿は無い。
 人影すらない荒野に二人、視線と視線が絡み合う。愛おしい思い。あったのかもしれない。懐かしいきもち。どうして? と思う気持ち。申し訳なさ。不甲斐なさ。狂おしさ。そんな一言では言い表すことのできない想いが『黒影』シュバルツ=リッケンハルト(p3p000837)の中で荒れ狂う。
 そう、目の前の彼女はシュバルツを救うため『原罪の呼び声』の影響を受けて魔種堕ちしたたったひとりの『■■■■』
「――」
 そうなることは必然であったのだ。
 どちらが先に駆け出したかはわからない。でも次の瞬間には剣と剣が交錯していた。
 金属音を打ち鳴らし、何度も、何度も交わされる剣戟。二人に言葉はない。その金属音自体が言葉であるのだから。
 打ち合う。何度も何度も何度も。ああよく識っている。この真っ直ぐな剣戟は彼女以外のだれも使うことはできない。誰よりも美しいと思っていたあの剣戟だ。
 なのになんという皮肉。こんなに美しい剣を使える彼女は誰よりも『美しくない』。
「は、はっ……」
 息が切れる。なんというスタミナだ。どれくらい斬り合っていたのか。お互いはもう満身創痍だ。
 ふと、彼女が構えを変えた。識っている。完璧である彼女の唯一の弱点。待っていたそれにシュバルツは目を細めた。
 思い出すは彼女の笑顔。失敗をごまかすときのあのすねた顔は子供みたいで可愛いとおもったこともあった。戦場をともにした横顔も覚えている。そして泣き顔だって覚えてる。走馬灯のように彼女の思い出が跳ねる。
「カハッ――」 
 唐突に訪れたその好機を見逃すはずはなかった。なのに記憶通りのその剣の筋は記憶とは違う剣閃をきいてシュバルツの心臓を正確に貫く。
 ぽた、ぽた鮮血が滴り落ちた。夕日の朱よりなお朱いそれは彼の命。
 一瞬のあとシュヴァルツはその場に崩れ落ちた。ああ、彼女が泣いている。笑う顔はあんなに違うと思ったのに泣き顔だけはあの時のままじゃねえか。
「馬鹿だな、俺」
 その変わらぬ泣き顔に会えたことが少しだけ嬉しかった。
 ああ、本当に馬鹿だ。そして意識は暗転する。冷たい場所へ不可逆に堕ちていく――。


 男の悪名は天井知らずだ。
 悪名を轟かせれば轟かせるほど、富が転がり込んでくる。飛び込んできた富は博打に費やした。博打で負けりゃ相手を殺すことだっあった。
 だから、その日がくるのは必然だったのかもしれない。男は裁きの日を迎える。
 男の名は――『山賊教官』グドルフ・ボイデル(p3p000694)。

 ――ハァハァッ……。
 逃げ続けた。一生分走ったとも思った。あの曲がり角さえ抜ければ。そう思って走ったその先は袋小路(ぜつぼう)。
「チクショウ、ここまでだってのかッ!」
 自分にはまだやることがある。こんなところで終われるかッ――!
「へ、へへ……待てよ、話せば分かる。なあ、おれ達は同じイレギュラーズじゃねえか──がああッ!」
 コンビネーションでクロスするように銃弾と魔弾がグドルフの足を貫いた。
 信じられないほどの激痛が彼を襲う。そして否応にも感じてしまう死の恐怖。
 グドルフを見る16の眼は無感情。
「頼むッ、見逃してくれ! 何でもする! 死にたくねえんだ、おれはッ!」
 グドルフは下卑た声で狩人である8人のイレギュラーズに命乞いをする。たしかあいつにはあったことがあるような気がする。あの時一緒に村を焼いたじゃねえか! 
 答えはなく、冷たい視線だけが返される。
「くそがぁ!!」
 叫ぶが状況は変わらない。体が震えている。喉がカラカラに乾いて声が嗄れる。
 終わりだ。ここで、何もできないまま、やることを残したまま、俺は死ぬ。
 やけに冷静に思った。
「やめろ、死にたくない、嫌だ、■■さま、お願いだ、助けて、俺を、助け」
 今、俺は何を思った? 何に助けを求めた? 何に縋った?
 それはかつて捨てた筈の信仰。自分が信じられなくなる。まさか? 俺が? ■■さまに?
 ヤツは信仰するかしないにもかかわらず、試練とうそぶき不幸や絶望を巻き散らかすものだ。
 だから棄てた。胡散臭いヤツの気まぐれに付き合ってなんかやる必要などないと。 
 だというのに、だというのに……。
 心臓が貫かれた。随分と殺しに慣れたイレギュラーズだと一言嫌味も言ってやりたかったが言葉はもうでない。
 てんにおわしますわれらが■■よ。なんともきょうもくそったれだ! みんなみんな、しんじまえ!



 『混紡』シーヴァ・ケララ(p3p001557)は走っていた。
 それは噂話。歌劇場に現れる薔薇の歌姫。オールドローズのドレスを身にまとい。淡桃の瞳。
 その歌声は蠱惑的で、まるでそう――魔種のよう。
 夜の帳が、演目『殺戮遊戯』の開幕を知らせる。
「――♪」
 透き通った声。夜の舞台の歌姫がバラードを唄う。
「今まで何処に、無事で良かった、なぜ姿を消した、如何して」
 薔薇の笑みの君に投げかける問いはとめどなくあふれる。そこで言葉を切ったシーヴァは一層優しい声で一番知りたい問いを彼女になげかけた。
「どうしてこちらにナイフをむけている?」
 シーヴァの黒絹の髪がはらりと堕ちた。それが、彼女の答え。
「そう」
 シーヴァは短く頷き、刃を構える。重ねる刃の剣戟。時が経てば経つほどにシーヴァの体には傷がふえていく。なのに彼女には傷一つつけることができない。なんて弱いのだろう。
 もしかして。一縷の望みを託し、彼女の手を引き寄せるがその願いの糸は鋭利な刃に絶ち切られる。
 もしかしたら彼女はよく似ているだけで別人なのかもしれない。そう思う。
「女の子はね、お砂糖とスパイスそれと素敵な何かで出来ているのよ」
 彼女の声が耳朶をうつ。ああ、ああ。シガレットホルダーに細い指を絡ませ、紫煙を燻らせた彼女が自分に向かって口癖のように呟いていた言葉。彼女に相違ない。
「随分とスパイスがききすぎてるようだけど」
 彼女に捧ぐための命なら惜しくは無かった。乞われれば敬虔な信徒のようにこの生命を差し出すだろう。
 だけれども。彼女はこの後どうなる? ローレットに追われ、そして自分ではない誰かに殺されてしまうのだろう。それだけは嫌だった。
 ならば、俺の手で――。
 薔薇の微笑みが失われた。喪失感に襲われる。たとえ自分の半身がなくなったとしてもコレほどまでの喪失感を覚えることはないだろう。
 それでも。
 シーヴァは艶やかに微笑む。微笑んで彼女を屠ったミゼリコルデを抱きしめ口付ける。シーヴァの唇を薔薇の赤が染める
 ――あの時は追いつけなかった。だけど、今なら追いつける。
 吸い込まれるように刃が自らの心臓を貫いた。その痛みさえも幸福だと感じた。

 キミがいない世界など、留まる意味もない
 彼女と重なるように倒れたシーヴァは穏やかな笑みを浮かべていた。


 目の前にたつのはまるで幼い頃の自分と鏡写し。
 銀の髪に朱い瞳の吸血鬼。――魔種。
 彼女は何度も見たことがある。執拗に自分の命を狙っている少女だ。
 月明かりさすその木立ちで彼女らが相対すれば起こることは決まっている。
 ――殺し合いだ。
 『牙付きの魔女』エスラ・イリエ(p3p002722)は依頼を終えて仲間と別れ帰路についていたところだった。満月の夜。予感はあった。
 あの自分によく似た子がくるのだろうなと。
 案の定彼女は目の前に現れたのだ。
「まったく……あなたなんて知らないって言ってるでしょ? 第一、そんなちんちくりんから母親だって言われても信じられるわけないじゃない」
 母親と名乗る魔種の少女。信じれるわけがなかった。そもそも、自分に母親などいたのだろうか? 自分には幼い頃の記憶はない。彼女のようなものの記憶はない。
「人のこと何度もつけ回して…いいわ、今日こそ決着をつけてあげる」
 いい加減何度も何度も追い回されてうんざりだった。
「最後にしましょう」
 少女は言った。望むところだ。魔導書を構えた瞬間。力の本流がエスラを襲う。
「!?」
 その力は今までとは比べ物にならないほどだ。木にうちつけられ、カハリ、と血を吐く。
「あの容姿にあの力、やっぱり魔種なんだろうけれど……一撃一撃が規格外過ぎるわ。長引くと危なそうね」
 よく似た鏡写しの吸血の少女たちの応戦は続く。周囲の木々は焼け果て、パチパチと生木が燃え、水分が爆ぜる音がする。
 これはもし勝てたとしても、焼け死ぬかもしれないわねとエスラは自嘲する。そもそも勝てるという算段すらない。おとなしくやられるつもりはない。けれど彼我の戦力差はどうにも残酷だ。
「流石に1人で相手にするのは無理があったかしら……でも、あなたみたいな危険な存在を野放しには出来ないわ」
 そう、だからといって彼女は投げ出すわけにはいかないのだ。
 刹那、腕が跳ね飛ぶ、足が千切れる。その場に倒れる。もう、動けない。ひたひたと母と嘯く少女が愛おしげにエスラの頬を撫でる。
 好機だった。エスラは最後の力を振り絞り、命をすべて魔力に変え眼の前の少女の顔を魔力弾で吹き飛ばすことに成功した。けれど、その代償は大きく彼女もまた命を落とすことになる。
 その時思い出したのだ。養父セルジュ・イリエと幼い自分、自分に似た金髪の女性が幸せそうに暮らすその記憶を。
「おかあ、さん」
 最後に呟いた言葉を聞いたものは誰もいない。炎がすべてを焼き尽くしていく。


 古龍のブレスが『鋼鉄の谷の』ゲンリー(p3p001310)を襲う。
 もうダメだと目を瞑った瞬間。不思議な神殿の前にいた。眼の前には怪しげなシスター。
 それが二度目の始まりだった。
 それから彼は同族を探して、元の世界との接点を探して旅をつづけた。
 それは只の口実。彼は贖罪を求めていた。
 自らの死に場所という、安息の地を。
 戦いの中で死ぬのは彼ら誇り高きドワーフにとっての生きる意味だ。彼はこの混沌に召喚されたことでその意味を、誇りを穢されてしまったのだ。
 そして、来るは竜種との戦い。この混沌の王者。この混沌を統べる存在。力の本流。
 仲間と力を合わせ、知恵を出し合い、全力をふるうその戦いはゲンリーにとって死に場所と定めるにはこれ以上ないものだろう。
 ともに戦う仲間が竜のブレスに灰すら残らず消滅した。この世に生きた形跡すら残さず。まだ自分は生きている。
 戦友は足だけ残った。まだ自分は生きている。
 死が彼らを取り巻いていく。だというのに未だ自分は生きている。仲間の死が重なるたびに重くなっていく重責。
 その重責はこころを蝕んでいく。じわじわと、絶望という言葉に変えて。
 戦って死ぬのは誉だ。間違いない。先程死んだ戦士と自分の違い。それは死ぬ順番が来たのが先程の戦士のほうが早かった。それだけだ。
 次は、次は。次は……!
 絶望のその戦場で、自分も死ぬだろう。斧が竜の爪を削った。それだけだ。
 それほどまでに彼我の戦力というものは段違いなのだ。
 戦いを挑むこと自体が間違いなのだ。だからこそ。
 ゲンリーは不敵に笑む。
 我が死に場所として、過不及なし! 
 漸くみつけたバルハラへの道程なのだ。此の戦いこそが我が生命の意味であるように。
 自慢の髭はもう焼け焦げて煤だらけだ。だがしかしそれこそが戦化粧だと。彼は思う。
 竜の頭を正面に捉えた。竜の喉元が煌々と燃え盛っているのがわかる。ブレスの前兆だ。
「うわっはっは、鋼鉄の谷がドワーフ! ゲンリー! いざ往かん!」
 絶望を笑いに変え、誇り高き戦士は前に進む。
 だが、ああ、だが願わくば。
 儂の死が、この世界で知り合った連中の為に役に立ったか……を知ることができるのならば。
 今やそれを識る術はない。たった一つの未練が。そう思うことができた仲間がいたことが彼には死よりも誇らしかった。


 死を共にして、死と踊り、死と歌い、死を食らう。
 それが『スカベンジャー』ヴィマラ(p3p005079)の価値観だ。
 その価値観はヴィマラにとっての生きる意味でもある。しかしそれを快く思わないものもまたいるのだ。
 彼は追われていた。制御不能の防風のようなゾンビの群れに。
 なぜそうなったのかはわからない。
 迫る妄執はただただヴィマラを襲う。真っ赤な真っ赤な歪の夜。朱い月に照らされたどり着くは枯れた里山。
 どうせ喰われるなら生きた人間が良かったなとは思うが、後の祭り。
 絶望するなら楽しもう。それがヴィマラの処世術でもあった。そう思うとこの逃走劇の舞台がこんな、まるでしつらえたような歪んだ夜なのは景気がいい。
 血と、肉と、死と、命と、歌と、踊りと、それと。
 あとはあいつがいるなら万々歳!
 ぱんぱんと手をたたいて踊るゾンビ劇場の始まり始まり。
 お代は見てのおかえりよ。死人が死ぬか、生者が死ぬか。さあさ、賭けるのであれば掛け金をこの帽子の中に!
 一世一代最初で最後の千秋楽!
 一層楽しくなってきたヴィマラは不可思議な踊りを踊り始める。
 ふと、まるで聖者が海を割るかのようにゾンビたちが道を開ける。
「え、まじかー、私のことそんなに嫌ってたの?」
 願い願った、寝床を共にして、共に踊り、共に歌い、共に食らったあいつがそこにいる。いやあ、もうほんとに最悪の瞬間に。
 だからわかってしまったのだ。この逃走劇の首謀者が。
 ヴィマラは動けない。まずは腕がゾンビにかじられた。そのあと足、胴体、太もも、首、ありとあらゆる部位がかじられた。
 ほんの一瞬の油断が生んだ、最悪。
 ああもう、ほんとにもう。痛い痛い。ほんとに痛い。
 だけど、ほんの少しだけそうかとだけ思った。なぜかと理由を聞く気にはなれなかった。
 だから愉快に、目の前の麗しの聖者に嘯く。
「理由はわかった、わかって体は爆散! これにてご破算!」
 最後の言葉はあいつに聞こえただろうか? あいつの顔はもうみえない。笑っていたのか、泣いていたのか。
 さあさ、スカベンジャー最後の興行、コレにて終了! 
 

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

きっちり7000文字。皆様の死を描写させていただきました!
これは起こる未来かもしれないし夢のあとさきかもしれません。
この未来が起きないように祈っております。

ご参加ありがとうございました!

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