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シナリオ詳細

クソザコ美少女とワーロックロック・ジャイアント

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ワーロックロック・ジャイアント
 激震。
 激震。
 高い要塞の壁が震える。
 石を積んだ強固な壁がひヒビがはしり、さほどせぬうちに粉砕された。
 轟音と共に歩み出たのは全長3メートルを超える巨人の影である。
 鉱石でできたボディは硬く、重く、当然のように力強い。
 これは古代錬金術によって作成されたという『魔術を行使するゴーレム』。
 名を、ワーロックロック・ジャイアント。

「みなさん! 今すぐ馬車にのって欲しいのです!」
 『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)が大きく手招きする馬車発着場。
 話は馬車の中でするのですとばかりに飛び乗った彼女とイレギュラーズたち。
 慌ただしく締まる扉の音。御者は鞭をふるい、馬が走り出す。
 ユリーカはスクロールを広げ、幻想北東部にある森の地図を見せた。森の中にはマークがひとつ。幻想の端にある村にもひとつ。
 その間を結ぶように、赤いラインが引かれていた。
「今この場所から村へ向かって魔物がまっすぐに進行しているのです。
 複数体へ編隊を組んで、脇目も振らずにまっすぐダッシュしているのです!
 途中地点で遭遇した少数の兵士が戦ったみたいですけど、人間をみるやいなやすぐに攻撃してきて手がつけられなかったみたいなのです。
 そんなわけで、ギルド・ローレットの出番なのです!」
 ユリーカはぐっと拳を握ってガッツポーズをした。

 ワーロックロック・ジャイアントはなにも初めて見る魔物ではない。
 岩を召喚して雨のように降らせる巨大なゴーレムとして知られ、幻想北部の村ではたまーに家畜が襲われる等の被害が出ていた。
 といってもたった一体がふらっとやってくる程度のレベルで、村人が一生懸命攻撃すればなんとか追い払える程度だったのだが……。
「今回はどうにもワケが違うのです。複数体で、しかも編隊を組んで連携しているのです。乳牛と闘牛くらいちがうのです!」
 モー! といって闘牛みをだすユリーカ。
 それを聞いてイレギュラーズたちはそれぞれらしい反応を示した。
 戦いにワクワクする者。ストイックに仕事内容を分析する者。マイペースにのんびりしている者。緊張でドキドキする者。馬車に早速酔って吐いている者。
「う゛ぉえええええ! はっ、はやく乗れっていうから乗ったのに、なんですのこ――う゛ぉおおえええええ!」
 『クソザコ美少女』ビューティフル・ビューティー(p3n000015)だった。顔が真っ青だが、馬車酔いばかりが原因では無いらしい。
「パーティーでもあるのかと思ったのに、なんで戦闘になりますの!? わたくし聞いてな――ハッ! これはわたくしの強さを示すチャンス!?」
 えーいやってやりますわ! ごーれむなんていちころですわ!
 と叫ぶ彼女の足はガックガクだった。
 やがて馬車は止まり、イレギュラーズたちはスタート地点へと展開する。
 岩の巨人たちが、走ってくる。

GMコメント

【オーダー】
 成功条件:ワーロックロックジャイアントを全て殲滅する
 オプション:クソザコ美少女を育成する

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

【チェイスバトル】
 殲滅対象であるワーロックロックジャイアント(略称『岩巨人』)は幻想へ向かって猛烈にダッシュし続けています。
 ボディが巨大であるため通せんぼ(マーク・ブロック)もできず、とにかく追いつきながら攻撃を仕掛け、破壊するしかありません。
 ①通過するであろう地点で待ち伏せて攻撃。
 ②走り抜けていくワーロックロックジャイアントに攻撃しながら追いかける。
 という流れになるでしょう。

●騎乗ルール
 今回のシナリオには騎乗ルールが設定されています。
 騎乗戦闘が可能な動物に乗っている場合、移動を動物に任せることができます。(副行動を別に別に選ぶことができます)
・騎乗ペナルティ
 通常だと命中・回避に-3のペナルティがかかります。
 騎乗スキルがあるとこれをほぼカットできます。
・馬車
 もし馬車を持っていたならこいつに4人まで乗せて戦闘が可能なものとします。乗員は騎乗と同じ扱いになります。
 ただし馬等の引っ張り力を2体以上接続して下さい。

【ワーロックロックジャイアント(コンバットタイプ)】
 全長3メートルの岩巨人。
 数は『5体』。
 あまり固まって動かず、広く展開して走るものと思われる。
 一体ずつ集中砲火で倒そうとすると(相手の高火力機関砲で)逆に集中砲火を受け瞬く間に味方戦力が欠落するので、最低でも2~3体分は引きつけておく別働隊が必要になる。

・能力特徴
 総合戦闘力:高い。
 長所:HP、攻撃力、特殊抵抗
 短所:反応、回避

・使用スキル
 武器格闘(物近単【飛】):槍や剣といった武器で戦います
 岩石機関砲(神超単【連】):腕を機関砲に変えて弾幕をはります。
 岩石迫撃砲(神超範):腕を迫撃砲に変え、爆発する弾を放ちます。

【クソザコ美少女】
 この依頼には何の因果か『クソザコ美少女』ビューティフル・ビューティー(p3n000015)が参加しています。普通にイレギュラーズのひとりとして依頼を受けています。
 戦闘力は低めですが、彼女は依頼での経験から成長する仕組みになっています。

★前回までのクソザコ美少女
『ファンブル低下』:慎重さを学びました。
『防技アップ』ハラパンに耐性がつきました。
『遠術』:前に出ない戦い方を覚えました。
『祈祷師/鼓舞』:応援団長を自負しています(タスキは宝物です)。
『料理(悪)』:雑草を沢山食べて味覚が崩壊しました。

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。

【オマケ解説】
 これはシナリオ攻略に関係ないオマケです。
 興味がわいたらご覧ください。

・関係依頼

ワーロックロック・ジャイアント
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/2
→今回の情報に出てきた『ふらっとやってくる弱いやつ』の話

エンシェント・プレートとレゾナンス砦
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/386
→岩巨人の亜種が沢山いた砦の話

  • クソザコ美少女とワーロックロック・ジャイアント完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年06月01日 21時05分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

シルヴィア・テスタメント(p3p000058)
Jaeger Maid
那木口・葵(p3p000514)
布合わせ
ウェール=ナイトボート(p3p000561)
永炎勇狼
アルテミア・フィルティス(p3p001981)
銀青の戦乙女
ルナール・グリムゲルデ(p3p002562)
片翼の守護者
藤野 蛍(p3p003861)
比翼連理・護
ルチアーノ・グレコ(p3p004260)
Calm Bringer
最上・C・狐耶(p3p004837)
狐狸霧中
アリス・フィン・アーデルハイド(p3p005015)
煌きのハイドランジア
エリーナ(p3p005250)
フェアリィフレンド

リプレイ

●馬上の決戦
 閉じる箱馬車の扉。離れていく馬の蹄。
 しばらくその場で足踏みしていた『狐狸霧中』最上・C・狐耶(p3p004837)が急にこっちを振り返った。
「マラソンはペースをキープするのが大事だと聞きました。これは全力疾走してますからマラソンじゃないですね、なんでしょうか。シャトルラン? いや、あれは短距離を高速で往復するものですから、なんなのでしょうねこれ。とりあえず疲れないのはずるいですね、レギュレーション違反です。違反にはペナルティです。死ぬがよい」
「急に何を?」
「脳内にあること全部言わなきゃ行けない気がして」
 器用に縄を編んでいた『布合わせ』那木口・葵(p3p000514)が眼鏡をあげると、狐耶が足踏みを止めた。
 ひひーんという声と共に、『Calm Bringer』ルチアーノ・グレコ(p3p004260)が馬上からウェスタンハットを上げて見せた。
「異世界で西部劇の真似事が出来るとはね。弾の準備しとかなきゃ」
 腰の鞄から取り出したショットガンの弾を、中折れ式のショットガンにさくさく入れていく。
 一方で、装備の点検を終えたエリーナ(p3p005250)が遠くの荒野に目を細めた。
「複数体で、しかも編隊を組んで連携してくるゴーレムとは厄介な相手ですね」
「アッチの時とは状況は違うけど、いつもやってた事だもん。うん、慣れてる。大丈夫」
 『魔法少女』アリス・フィン・アーデルハイド(p3p005015)はステッキをくるくるとやって、指定の位置に隔壁力場が生まれるかをチェックしている。
 似たような機能を持った端末で力場をかちかち切り替えながら、『Jaeger Maid』シルヴィア・テスタメント(p3p000058)は拳銃のセーフティを解除した。
「タダのデカブツならデカいだけの的なんだが、コイツが素早いってなると話が違ってくるんだよなぁ。質量かける速度の二乗ってヤツだな」

 『紅獣』ルナール・グルナディエ(p3p002562)は軍馬に跨がり、腰の剣をすぐに抜けるように手を添えている。
「物達の間で走るのが流行ってるのかね。どうなってるんだか」
「けど普段は単体行動をとるのよね? それが脇目も振らずにまっすぐダッシュしてくる……陰謀の匂いがするわね」
 『ペリドット・グリーンの決意』藤野 蛍(p3p003861)の眼鏡がきらりと光った。
「たとえこの世界の根源に関わる陰謀の影が見え隠れしていようとも、まずは目の前の問題を片付けないと」
「誰かが既存の岩巨人操る術を編み出したのか、或いは製法を発見したのか……推測が当たっているにしろ外れているにしろ、まずはアレ等を破壊しないとね」
 『青き戦士』アルテミア・フィルティス(p3p001981)はパカダクラにぴょんと飛び乗ると、その頭を撫でてやった。
「それにしても……大丈夫なのかしら、あの子」
「ああ……」
 アルテミアたちの視線がひとつに集まった。
 『迷い込んだ狼と時計』ウェール=ナイトボート(p3p000561)は慣れた様子で軍馬に跨がると、『クソザコ美少女』ビューティフル・ビューティー(p3n000015)の腰にロープを巻くように言った。その端を自分の腰に巻く。万一落馬しても離れないようにするためだ。
 その上で、ウェールはクソザコ美少女に馬の乗り方を具体的に教えていた。
「嬢ちゃん、今回は十一人もいるんだ。嬢ちゃんと一緒に戦う仲間が十人もいる。だからそんなに足を震わせなくていいんだぞ」
「ハ、ハイィ? わわわたくしのどの部位がふるえているですってそんなことああありませんわハハハ!」
 足ガッタガタになったクソザコ美少女が全力の引きつり笑いをした。なんか様子から察するに馬上の高さが既に恐いらしい。
 馬を寄せてくるルチアーノ。
「ビューティーさんもよろしくね。君の力で、存分に魅せてよね!」
「もももちろんで――ひゃあああ来たあああああああ!」
 会話の途中で悲鳴をあげるクソザコ美少女。振り返ると、ずっと遠くからワーロックロックが接近してくる砂埃が見えていた。

●チェイスバトル
 猛烈なダッシュをかけて接近するワーロックロックの編隊。
 一体を中心とした『やじり型』のフォーメーションを組んで迎撃のかまえをとったこちらを突破するつもりのようだ。
「さ、行こう。俺たちの役目は引き付けだ」
「引き付け? それって危険なことじゃ――ひゃんぐ!?」
 突如走り出すウェールの軍馬。巧みな手綱さばきでワーロックロックの編隊へ突っ込んだ彼の馬は、先頭の個体に真正面からの体当たりを仕掛けた。
 余談だが。クソザコ美少女の席はウェールの前である。もっというと鞍無しである。
 渾身のブロッキングバッシュを繰り出すウェール。巨大なスレッジハンマーをアンダースイングで叩き付けるワーロックロック。その間に挟まれたクソザコ美少女である。
「ふせろ」
「ぎゃああああああああああああああああ!? ――へぶ!?」
 先頭の個体がぶつかったと同時に、蛍とルチアーノがパカダクラと軍馬をはらせ始めた。
「左右の個体を引きつけるわ。手伝って」
 接触の手前あたりで同方向に走り出し、宙に手甲を翳す蛍。宝石が輝き、手のひらの前に幾何学模様の魔方陣が展開された。魔方陣を通して魔術弾が発射される。
「よしきたっ」
 ルチアーノはショットガンを端のワーロックロックへ浴びせると、そのまま引きつけるように陣形の外側へと馬を走らせていった。
 蛍とルチアーノがそれぞれワーロックロックの隊を左右に引きはがしていく一方、アリスと葵はルチアーノを追いかけてパカダクラを走らせる。
「よろしくパカ! もふもふ!」
 葵はアリスから借り受けたパカダクラを軽くなで回しつつ、編んだ縄に魔術を行使して輪っかを作った。頭上でくるくる振り回し、ワーロックロックの腕や頭に引っかけるように投げていく。
「葵さんの言う事を確り聞いてあげてねパーちゃん。それじゃあ、行こうトロンベ!」
 アリスは黒いパカダクラに合図を入れると、ワーロックロックの横に並ぶようにして走らせた。
 ルチアーノや葵で取り囲むような陣形だ。
 が、丁度いいので……。
「ゲンティウス――」
 杖をボウガンのように構えると、杖から横向きの弓が展開し魔矢が扇状に装填された。
「ファイア!」
 すぐ後ろのワーロックロックたちに魔矢を浴びせ、おびき寄せるようにして走り出す。
 一度離れていた蛍が合流をはじめ、丁度三体ほどがアリスたちに引き寄せられた形になった。
 それを追いかける形で走り出すシルヴィア。ワーロックロックは腕を迫撃砲に変形させると、追走するシルヴィアとそのすぐ横にいた葵めがけて砲撃を放ってきた。
 回転しながら飛んできた岩のようなものが、着弾と同時に爆発する。
 眼前に展開したバリアで直撃を防いだシルヴィアは、ギザギザに見まがうほど歯を見せて笑い、爆風に煽られるメイド服の裾を無視するかのように拳銃を乱射した。
 ボディが大きいせいかシルヴィアの腕がいいせいかまるで外さない。
「横にも縦にも並ぶな。広がって取り囲め」
 銃を振って合図をすると、葵たちは広がった陣形を取り始めた。
 そんな中で、ワーロックロックへと距離をつめていくルナール。
「さて、手に入れて早々に役に立ってもらうことになるとはな」
 馬の上で器用に剣を両方抜くと、ワーロックロックの繰り出すハンマーをあろうことか剣で打ち払った。
「目的が分らん敵ほど面倒なんだよなー」
 などと言いながら足を切りつけると、岩の足は派手に崩壊した。
 転倒し、走っていた勢いのまま派手に回転するワーロックロック。葵がひっかけていたせいで無理にひっこぬけた首が飛んで、高速回転しながら地面をバウンドしていった。

 ウェール(と白目をむいてガタガタしているクソザコ美少女)がワーロックロックの一体を引きつけている間、もう一体をアルテミアたちが対応していた。
「私は右、狐耶さんは左から挟み込んでください。行きますよ――いち、にの、――」
 アルテミアはパカダクラの上で器用に重心を傾け、ワーロックロックに側面からの体当たりを仕掛けた。
 迎撃にと繰り出されたハンマーを盾で受け、歯を食いしばって衝撃をこらえる。
 そうして僅かに押し出されたワーロックロックの進行ルートを限定させるように、同じくパカダクラに跨がった狐耶が側面から挟み込んだ。
 至近距離から格闘術式を打ち込み、ワーロックロックの対応を迷わせるのだ。
 一度ワーロックロックの前方に飛び出し、左右入れ替わるようにクロスして進行を妨害し続ける。
 アルテミアにだけ攻撃していればよかったものを、ワーロックロックは味方との合流を妨げることになった狐耶を振り払うべくハンマーを繰り出した。
「ほい」
 ぴょんとパカダクラの背に直立した狐耶が、頭めがけて繰り出されたハンマーを飛び馬感覚で回避。再びパカダクラに跨がり、ワーロックロックの周囲をぐるぐる回るように妨害し続けた。
「この調子でいけば……ん、おっと?」
 別働隊が引き受けるはずだった一体が、気分が変わったのか狐耶の方へと移動してきた。
 元々大きく離れるつもりはなかったので、ちょっと気が変わると目標が映ってしまうリスクがあったが……そこは織り込み済みである。
 エリーナが目標を外れたワーロックロックにマギシュートを仕掛けて気を引き始めた。
 横から打ち込まれたエリーナのマギシュートをうっとうしく思ったのか、ワーロックロックは元の目標に戻り砲撃を再開した。
 砲撃を潜るようにしてマギシュートを継続。仲間与えたダメージが随分蓄積していたのか、エリーナの攻撃でワーロックロックの腕が砕けて飛び、バランスを崩したワーロックロックはその場で派手に転倒したのだった。

●ある意味では釣り
 ワーロックロックが砂煙をあげ、機関砲に変形させた腕で砲撃を仕掛けてくる。
 砂地を半自動ミシンで縫うかのようにラインが刻まれ、それをかわすようにアルテミアと狐耶は左右に分かれた。
 弾幕にさらされかけたパカダクラが悲鳴をあげる。
「来てますわ来てますわ! 後ろ! 後ろぉー!」
 勿論パカダクラの悲鳴ではない。クソザコ美少女の悲鳴である。
 振り向いてわめくクソザコ美少女の声に耳をやられながらも、ウェールは後方からの機関射撃を盾で防いでいた。
 射撃しながら距離を詰めてくるワーロックロック。
 巨大なハンマーをゴルフクラブのように振り込んでくる。横殴りの衝撃。
「く、まずいか……!」
 盾でなんとかダメージを流したものの、ウェールの腕と肩にはビリビリとしびれが残った。
 開けた視界。身体を全形させ、馬に距離をとらせ――ようとしてハッとした。
「嬢ちゃんがいない。嬢ちゃん!? 嬢ちゃ――あっ」
 白目を剥いたクソザコ美少女が靡いていた。
 ウェールとロープでつながったまま、暴風にぐわんぐわんしていた。
 馬をとめるわけにもいかぬ。引っ張って乗せる余裕もなし。ウェールは『すまん』と心で祈り、馬のスピードをあげた。
 やや近い距離までパカダクラを寄せてくる蛍。
 後ろのクソザコ美少女を見て、ウェールを見て、最後に後方から追いかけてくるワーロックロックを見て、ちゃきっと眼鏡のブリッジを押した。
「回復、しておくわね」
「たのむ……」
 蛍は攻撃を受けたウェールと、地味にまだ生きてるクソザコ美少女の回復を始めた。

 引きつけ役の体力も危ない。ということで、早急な撃破が待たれている。
 シルヴィアはまたがるパカダクラのスピードを上げ、ワーロックロックの側面から斜め前方へと回り込んでいく。
 ワーロックロックの砲撃。頭上を抜けた爆弾が砂地をまき散らし、煙を遠く後方へと置き去りにする。
 反撃。拳銃に残った弾を全て叩き込み、マガジンを排出。
 『ハッ』と笑ったシルヴィアはメイド服のスカートに手を突っ込むと、予備弾倉を取り出し素早く装填。再度射撃を始めた。
「とっておきの弾頭が尽きた。残りはノーマルだ」
「こっちもだよ」
 シルヴィアの反対側から対象にショットガンを浴びせ続けていたルチアーノは、銃身を折って空薬莢を排出、鞄から取り出した弾を投げるように滑り込ませていく。腕の勢いだけで残る装填作業を終えると、懐から取り出した爆弾に火をつけた。
「これでカンバン」
「そろそろケリをつけられるか? カウガール」
「えっ私に聞いてます!?」
 パカダクラにしがみついてもふもふを堪能……じゃなくて弾幕をさけていた葵が、はっとして顔を上げた。わずかにずれる眼鏡。
「僕らが好きを作るから、足下をすくっちゃって」
 ルチアーノは馬に合図を出して手前に回り込むと、爆弾を高く放り投げた。黒色火薬の爆発がワーロックロックの頭部周辺を包み込む。
 と同時にシルヴィアが足下めがけて銃撃を開始。
 反射的に銃撃をかわそうとしたワーロックロックの足下に、葵の仕掛けた大きなロープの輪っかが存在していた。
「パーちゃん、ブレーキ!」
 葵はパカダクラから飛び降り、ロープを握って踏ん張った。
 ロープの引っかかったワーロックロックは思わず転倒。シルヴィアは『おまけだ』と言って手榴弾のピンを歯で引き抜き、放り込んで駆け抜けた。
 爆発四散するワーロックロック。

 一方で、アリスはトロンベの黒い毛をそっと撫でつつ、アルテミシアたちの引きつけていたワーロックロックへと狙いを移していた。
「こっちの三体は片づけたよ。残りの撃破に回るね――エリーナさん、ルナールさん、ついてきて!」
 アリスはトロンベを加速させてワーロックロックのはるか前方に回り込むと、くるりと反転して後ろ向きに跨がった。ゲンティウスをアンチマテリアルライフルフォームに変形させ、トロンベのお尻に三脚を乗せる。
「ちょっと我慢しててね――!」
 強力な魔力弾をシュート。
 鋼の弾頭のごとく空を穿った魔力はワーロックロックの胸に着弾。
 ワーロックロックからみて9時方向に回り込んでいたエリーナは、着弾のよろめきに乗じるようにして黒の書を用いたマギシュートを叩き込んでいった。
 着弾のよろめきが更に大きくなる。『あとは任せた』と言って安全に離脱するウェールと入れ替わり、ルナールがワーロックロック前方へと走り込み、軍馬に複雑な合図を入れた。
 四つの蹄鉄が砂地を削り、180度ターンする馬。
「シンプルだがこれが一番楽な攻撃方法っていうね」
 剣を抜き、突撃をしかけるルナール。
 反射的に反撃に出たワーロックロックのハンマーと衝突。ルナールは自信を、ワーロックロックは片腕まるごとを吹き飛ばすことになった。
 バランスを欠いたワーロックロックに、強烈な跳び蹴りを叩き込む狐耶。
 最後はどうぞというアイコンタクトを受けて、アルテミアはパカダクラの手綱を握りしめた。
 地面を転がる巨大な腕を飛び越えるパカダクラ。
 それに跨がったアルテミアは、剣にまばゆい光を集めていた。
「追いかけっこは、ここまでよ!」
 突きだした剣が巨大な光の剣となり、ワーロックロックの心臓部を貫いた。
 衝撃に突き飛ばされたように倒れ、バウンドし、そして動かなくなる。
 丁度その頃残る一体も倒しきり、仲間たちがアルテミアのもとへ集まっていた。
「なんとか、ミッションはこなせたわね」
 疲れたパカダクラから飛び降り、額の汗をぬぐう。
 村は、もう目に見える距離にあった。
「それにしても、一体……どうしてこんなことになったのかしらね。黒幕、そこにいるんでしょ!?」
 蛍が眼鏡を光らせて鋭く振り返る。
 ハッとして仲間たちも振り返る。
 そこには。
 クソザコ美少女が軍馬の上で仰向けに干されていた。
「…………」
「あ、あれ?」
「う、うん」
 咳払いして明後日の方向を向くルチアーノたち。
「しかしこれ、お嬢様の経験になるんですかね?」
「……うむ、まあ、無事に終わって何よりだ」
 ぽつりと呟く狐耶に、ルナールはちょっとだけかわした返事をした。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お疲れ様でした。
 たぶんはかったわけではないと思うんですが、クソザコ美少女がいい具合に酷い目にあったようでなによりです。

【クソザコ美少女の成長】
★前回までのクソザコ美少女
『ファンブル低下』:慎重さを学びました。
『防技アップ』ハラパンに耐性がつきました。
『遠術』:前に出ない戦い方を覚えました。
『祈祷師/鼓舞』:応援団長を自負しています(タスキは宝物です)。
『料理(悪)』:雑草を沢山食べて味覚が崩壊しました。
★今回からのクソザコ美少女
『騎乗』:死ぬほど振り回された結果、かえって乗り物酔いをしなくなりました。
『HPアップ』:ひどい目にあって体力がつきました。

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