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シナリオ詳細

【Tissier Town】お菓子の街を、味わおう

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●おかしなおかしな、おかしのまち
 ふわり、冬の風に乗って、甘い香りが漂う。
甘い香りの源は、街のシンボル、チョコの噴水。
さくり、さくりと足音が鳴る。
靴底からぱらりと落ちた砂は、サクサクに焼けたパイの石畳……の、小さな小さな欠片で。
風に乗って飛んできたのは……雪、ではなく。

「むぐっ……! ん、おいひー!」
「あーっ、マシュマロいいなーっ!」
「いいじゃん、まだまだたくさんあるんだからさあ」

 そう言って笑い合うのは、この街……【ティシエール街】の少年達だ。
マシュマロ一つに一喜一憂しているのは、彼らが単に子どもだから、というだけではない。
見れば、周囲の大人達もまた、お菓子を片手に語らっているではないか。

 それもそのはず。
この街は、今は年に一度の。

「『ティシエール祭』は、今年も賑やかだなあ」
「当たり前でしょ? だって、毎年皆、楽しみにしてるんだから」

 甘い香りは、老若男女問わず、皆の胸と心を満たす。
けれど、この街の若者は、年々少なくなっている。
この街の老人もお菓子は大好きだけれど、食欲では、若者にはとても敵わない。
お菓子を食べる手も、胃も足りない。

「……私も歳ねぇ、もうお腹いっぱいだわあ」
「おい、もう少し食べないか?」
「そうしたいのは山々なんだけど……若い頃のようにはいかないわよ」
「……まあ、かく言う俺も、もう、満腹なんだけどな」
「でも、困ったわ。このままだと、とても食べ切れなくって」

「『ティシエール街が、生まれ変われないかもしれない』」

●おかしなおかしな、おまつりさわぎ

「……と、いうわけで、皆には、『ティシエール祭』に参加してきてほしいの」
 境界案内人……マチネ・ソワレ・ゲネラルプローペは、この場に集ったイレギュラーズへと視線を向けた。

「そもそもね、この『ティシエール祭』っていうのは、この街の大掃除……と、言っても過言じゃないんだ」

「どういうこと?」

イレギュラーズからの問に、マチネは続ける。

「あのね、ティシエール街は、そもそも『お菓子の街』なの。……単純に、お菓子作りが盛んな街って訳じゃなくって。『街そのものが、お菓子でできている』んだって。で、そこのお菓子は、食べれば食べるほど、新しく補充されるみたいなんだけど……」

 そのティシエール街は、近年若者が都会へと流出し、ティシエール街中のお菓子を食べる担い手が減っているという。

そうなれば、年に一度の『ティシエール祭』に、街中のお菓子を食べ切れない、かも、しれない。

「だから、街の人達を、助けてあげて。あたしは、皆を送ることしかできないけど……皆が楽しい、美味しい時間が過ごせること、祈ってるから」

NMコメント

ティシエール街へようこそ。
なななななです。
以下、OP補足になります。

●ティシエール街
 家も公園の遊具も外灯も、お菓子で作られた不思議な街です。
 
 街中のお菓子全てに不思議な魔法が掛かっていて、思いっきり踏んだり叩いたりすれば割れるものの、何をしても汚れる事はなく、食べてお腹を壊すこともありません。
また、食べてもまたすぐに、新しいものがどこかからやってきます。

そんな不思議な街で、年に一度行われているのが、『ティシエール祭』です。

●目標
・街中のお菓子を食べ尽くすこと
 この街のお菓子は元々全て美味しいのですが、食べれば食べるほど、『より見た目がよく、より美味しいものに生まれ変わります。』

 実は常日頃から、街の住人も、ちょこちょこと街のありとあらゆる場所のお菓子を『つまみ食い』しているのですが、人通りの多い場所にあるお菓子は、常に綺麗になっているものの、普段人気の少ない場所のお菓子はあまり顧みられず、割れたままで放置されているものも多いようです。

 年に一度の『ティシエール祭』は、皆に人気のスポットから、穴場中の穴場まで、街全域のお菓子を皆で食べ、改めて街中のお菓子の魅力を見直すと共に、一気に街を綺麗にする……といった催しのようです。

●例えば何があるの?
 そこら中の家の屋根がビスケットだったり、外灯の明かりがキャンディになったりしています。
家のペンキも、よくよく見ると生クリームが薄く塗られたりしているようです。

他にも……

・チョコレートの噴水
・バームクーヘンのベンチ
・プレッツェル遊具
・あんこの畑

……等など。多種多様のものがあるようです。
皆さんのプレイング次第で、さらに生えるかもしれません。

●サンプルプレイング

1:SKくんの場合
うわー!お菓子の街だって!?
そんなの、オレ達ちびっこも大好きに決まってるじゃん!

高いとこのお菓子は取るのも大変だろーから、身軽さを活かしてジャンプして……ゲット!
そしたら、そのまま美味しくいただくぞ!
……あまーい!うまーい!
ただでさえこんなにおいしいのに、これでこの街の助けになるなんて!
こんなにハッピーな事はねーよなー?

2:Hさんの場合
甘いものは好きだけど、そればっかりだと、どうにも喉が乾くよね。
だから、アタシは皆にお茶を配ってようかな。
ほら、お口をさっぱりさせるものがあった方が、リフレッシュしてまたお菓子に挑めるじゃん?

さっ、次行ってみよー!

●その他
一章構成、締切は未定です。
合わせプレイング、もとい同行者がいらっしゃる場合は、同行者の方のお名前、キャラクターIDの記載をお願いします。

例:マチネ(p3pxxxxxx)と一緒に街を散策

どなたでもどうぞ、ご参加ください。

  • 【Tissier Town】お菓子の街を、味わおう完了
  • NM名ななななな
  • 種別ラリー(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年02月04日 14時35分
  • 章数1章
  • 総採用数8人
  • 参加費50RC

第1章

第1章 第1節

郷田 京(p3p009529)
ハイテンションガール

 ざわざわ。ガヤガヤ。ティシエール街が、にわかにざわつく。
無理もないことだろう。何故なら、今、ここでは。

「えー、なになになんなのここ、天国?  ヘヴンってやつか!」

 この街で初めて見る顔が、長身の若い女性が、ムシャムシャと、パイの石畳を、プレッツェルの鉄棒を、食らっているではないか。

「食べてるのにタダどころかお給料が発生しちゃうわけでしょ? いやー、逆に無いわー! 引くわー、めっちゃ引くわー!」

 言いながらも、彼女の手は止まらない。
ただでさえ緩い表情が、より一層幸せに綻んだ。
ああ、素晴らしきかな、幸せの味。

 そんな彼女……郷田 京の視線は、自ずと街のシンボルへと向けられる。

「うわ、チョコの噴水じゃん、やっぱフォンデュっしょここは」

 その言葉に答えるかのように、街の装飾……マシュマロが、風に飛ばされ、ぽちゃんと、チョコの水面に浮かび上がる。

「あ、ラッキー! いっただきまーす!」

 残っていたプリッツをピック代わりに、マシュマロを刺し、チョコに潜らせて、食べる。
『んん〜!!』と歓喜の声を上げる彼女に、もっと自分達を食べて欲しいとでも言うかのように、さらにマシュマロが、風に吹かれて飛んできた。
カロリーなど、乙女の前では無力なのだ。

成否

成功


第1章 第2節

イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色

 人に溢れ、活気に賑わい、笑い声の響く場所もあれば、人口が減り、人気が無くなり、寂れゆく所もある。
イズマが歩いているのも、そんな裏通りの一つだ。
 
 この街のお菓子はけして痛むことはないが、誰にも顧みられなければ、砕けて壊れたものがいつまででもそこに残る。
この街を美しく生まれ変わらせるためには、このような場所に赴くのもまた必要なのだ。

 砕けたまま放置されたレンガを拾い上げれば、思いの外軽い。
一口齧れば、甘くて苦いチョコレート。

 穴の空いた壁を見てみれば、赤や紫のラインでぐちゃぐちゃに落書きされていて。
思い切って剥がしてみれば、ベリーのジャムに彩られたクッキーだ。

 甘いものが続いたので、塩気のあるもの、と周りを見てみると、目についたのは、朽ちかけた看板。
そこに記されているのは『ベークド通り』。
今、彼の歩いている通りの名だろう。

パキリ、小気味よい音とともに噛み砕けば、香ばしい醤油の香りが鼻腔を抜けていく。

 容器に入れて持ちこんだ紅茶は、ほかほかと湯気を立てていて。
火傷しないようゆっくり飲めば、素晴らしい香りとともに、彼の胃を優しく温め、広げていく。

「うん、美味しい」

 この街のお菓子は、至福のティータイムを楽しむのに、質量共に申し分ないだろう。
まだまだ、お菓子も進むし、お茶も進む。
ティシエール祭りは、まだまだ続くのだ。

成否

成功


第1章 第3節

青燕(p3p009554)
蒼穹の翼

 ティシエール街の空は冬。
今も分厚い綿飴の雲から、純白のマシュマロが降っている。

「建物だけじゃなく、空までお菓子でできてるのか!」

 思わず『すっげーな!』と感嘆の言葉が漏れる。
自慢の翼で空を間近に臨みながら、青燕は街を文字通り飛び回る。

 そう、彼は飛行種。元より空を愛する者。
しかも、ここは美味しいお菓子の街。
食べれば食べるほど、街の人が喜び、笑ってくれると言うのなら、胸踊らずにはいられない。

さて、彼はどこを目指して飛んでいるのか?
その答えは間もなく明らかとなる。

 黒い脚が掴んだのは、粉糖の降り積もった空き家の屋根。
ビスケットで作られたそれは、チョコレートの接着剤で繋がっている。
壁面に塗られた生クリームも、この場のお菓子に添えるにはおあつらえ向きだろう。
食欲をそそる甘い香りに、迷わず青年の手が伸びる。
サクリ、口の中にバターの香りが広がる。

「あ、うめぇなコレ! へへ、一杯食べよ」

ふと通りを見下ろせば、地元の人間だろうか。
千切れて落ちていたキャンディの電飾を、少女が大事そうに拾い上げると、そのままポシェットへと仕舞い込んだ。

 なるほど、ここのお菓子を持ち帰って、後でじっくり味わうのもアリか。
何から食べて、どれを土産に持っていこう。

こうして悩む時間さえも、また楽しい。

成否

成功


第1章 第4節

トスト・クェント(p3p009132)
星灯る水面へ

 街の奥の奥、ぽつんと住人を待つのみだった『ハニー池』に目を付けたのはトストだ。
古びたグリッシーニの柵や、割れたガレットの注意書きも、食べやすくなるように割って、池に投げ込んでいく。
すう、はあ、深呼吸して、胸いっぱいに幸せの香りを吸込めば、準備万端。

 途中の宿屋で、シャワーの予約も取り付けた。
なんでも、例年の祭りでも住民達が、街を流れるホイップ川に飛び込んだりするので、それに合わせてシャワーやタオルを無料で貸出しているそうだ。
なれば、後の憂いはどこにもない。
いざ、夢のスイーツダイビング。

 ドボン、蜂蜜の池に飛び込む。
思ったよりもさらさらな蜜は、彼の視界も、動きも、呼吸も妨げない。
目を細めて、濁流に微睡む。

 水面には、つい先程投げ込んだ柵や看板の破片。
更に古いものをと水底を見れば、チョコレートの石がゴロゴロと。
更に、マンホールの蓋程のサイズのココアビスケットが横たわっていた。

 それを拾い上げ、ざぱんと水面に浮上する。
ほろ苦いココア生地に蜂蜜が染みて、しっとり感と共に甘さと苦さのハーモニーが奏でられる。
この池の、つやつやの蜜のせいだけではない。
間違いなく、彼の笑顔は輝いていた。

 先程投げ入れたものも、これなら、良い味が染みていることだろう。
期待と共に、次なる美味へと手を伸ばした。

成否

成功


第1章 第5節

天之空・ミーナ(p3p005003)
貴女達の為に

 ティシエール街が、騒々しさに包まれる。何か事件だろうか?
否。ロールケーキのベンチに、ミーナが腰掛けているだけだ。
しかし、折角の祭りだというのに、彼女は街のお菓子を食べないでいるつもりだろうか?
これも否だ。

「お、お待たせしましたっ!」

 数少ない力自慢の若者が、両腕で懸命に抱えたお菓子を、ミーナの眼前に置く。
同じようにして、息を切らした男性が、別の方角からやってきて、更に彼女の前をお菓子の山にする。

 そう、自ら動かずとも、誰かにお菓子を持ってきてもらえばいいのだ。
だって、ここのお菓子は幾ら食べても構わない。
むしろ、街を綺麗にするために、皆食べて欲しがっている。ならば、今この時は、リミッターなど不要。
かつてレストランを出禁にされた胃袋は、今こそ活躍の時だと言っている。

「さあ、どんどん持ってこい!」

 言いながら、彼女は山に手を伸ばす。
街の北から運ばれた、コンコンブルのアーケード。
街の南に立ち並ぶ、リーフパイの街路樹達。
西からここにやってきた、生チョコレートの石畳。
東エリアの名物は、ステンドグラスのフルーツゼリー。

「こちらもどうぞ」と町民から、ポットの紅茶を渡されたなら、覚悟は完了。いざ実食。

――この時現場に居合わせていた現地の民は、後にこう語ったという。
ティシエール街に、戦乙女が現れた、と……。

成否

成功


第1章 第6節

ヨタカ・アストラルノヴァ(p3p000155)
楔断ちし者
武器商人(p3p001107)
闇之雲

 ちゃぷん、ちゃぷん。
裾を捲って浸した足を、心地よい炭酸の海が刺激する。

「シュワシュワだ、楽しいね、ヨタカ」
「そうだね、紫月」

隣を歩く紫月……武器商人に向け、青年はそっと微笑む。

 ここは『シュガーハーバー』。
白く輝く砂浜、透き通った海が美しいが、季節柄、地元の人間もあまり近づかないようだ。
少しでも、景観の良いところを。そして、目も舌も喜ぶような穴場を。
そう考えているうちに、二人はここに辿り着いたのだ。

ふと、爪先が何かに触れた事に気づいて、足元を見下す。
赤くて丸くて小さくて。貝殻か、と思いきや。

「スイカ……?」
「おや、こっちはパインだねぇ」

細い指先で、それをつまみ上げる。
どうやら、二人はフルーツポンチの海辺を歩いていたようだ。

再び、二人は顔を合わせて笑い合う。
どうやら、考えている事は同じらしい。

「ねえ、紫月」
「ああ、分かってるとも」

つい先程だが、街行く二人に向けて、町民が「お兄さん達もお祭りかい? だったら、これを使うといいよ」と、瓶を分けてくれていたのだ。
さあ、甘い物が大好きな番のために。
今、側にいてくれる君とともに。

瓶いっぱいに、詰め込もうではないか!

 


 それからしばらくして、彼等は、焚き火の前に、それぞれの収穫を翳した。
小さな一粒さえも瑞々しいみかん。
色鮮やかな黃緑が目を引くキウイ。
少し掴むのに苦労した、輪切りのバナナ。
ぽつんと一個、愛らしいさくらんぼも忘れずに。
そして、瓶の中を満たすのは、今もぱちぱち弾けている、無色透明なサイダーだ。

 互いの収穫を喜んで、二人で幸せの味を分かち合う。
冷たい海に浸かった手も足も、炎の前で少しずつ温もりを取り戻していく。

 折角ここまで来たのだ。海だけでなく、砂浜でも遊ぼう。
そう言ったのは、どちらが先だったか。

 ともあれ、今度は潮干狩りだ。
とはいえ、特別な道具などは必要ない。
さらさらで柔らかい砂は、手だけでも容易に掘り起こせる。

「名前の通り、砂糖の砂浜なんだ」
「アーモンドプードルも混ざってるみたいだよ」

 その言葉通り、甘い香りに混じって、仄かに特有の匂いが舞う。
すると、ヨタカが、目を輝かせる。

「見て、紫月」
「どうしたんだい?」
「金平糖……!」

砂の中に星を見つけたヨタカの声が、にわかに弾む。

「やったじゃないか」
「これ、持って帰っても良いのかな」
「良いんじゃないかい? ここに来る途中も、飴玉を拾い集めてる子が居たしねぇ」

その言葉に、ヨタカの瞳で星が煌めく。
ヨタカが喜ぶのなら。武器商人もまた、砂を少しずつ掘り起こす。

 そうして間もなく、小瓶に色とりどりの星が集まった。
赤、白、黄、緑、青、その他色々。
この街を訪れた記念に、そして二人の思い出として、大事に飾るのだ、と。

ひゅう、と一瞬吹いた冷たい風が、小さく身体を震わせた。

「今度はあったかい室内で紅茶と一緒に食べようか、ヨタカ」
「うん、そうしよう」

二人は、浜を後にした。

成否

成功


第1章 第7節

アム・ハーバーランド(p3p009564)
未知への期待

 ティシエール祭の光景は、街の住人にとっては毎年恒例の事であっても、外部より来たもの皆を驚かせる。
これまでにこの街を訪れたイレギュラーズが、皆そうだったように、アムもまた、魔法の景色に目を輝かせた。

 気になる場所へと歩き出せば、そこは街のシンボル、チョコレート噴水の通り。
ティシエール街の中で最も人通りの多く、賑やかな場所に、彼女の足が向くのは何の不思議もない。

 街の要所要所に置かれたバームクーヘンのベンチに、アムはそっと座ってみる。
柔らかく、沈み込むような快適な座り心地。
その端を千切って、一口食べてみる。……あむ。

「美味しい……!」

バームクーヘンの層の数だけ、心弾むし胸踊る。
他には何があるだろう?
そう思ってキョロキョロ周りを見てみると、アムよりも年少だろうか、子供達が纏まって同じ方角へと走っていく。

 その後を追ってみると、子供達が辿り着いたのは『パフェ公園』。
トランポリンのプリンをスプーンでほじくり返しては、何度も味わう母子が居た。
チョコレート細工のジャングルジムを割り砕く少年や、ターザンロープのグミに目一杯かじりつく少女も居た。

「すごい……!」

 この街では、遊びながら食べる事もまた、幸せの一つ。
この幸せを、皆と味わうのがティシエール祭。
ならば、自分ももっと、それを楽しもう。

そうしてアムは、公園の遊具に手を伸ばした。

成否

成功


第1章 第8節

 かくして、ティシエール祭を訪れたイレギュラーズの無尽蔵な胃袋により。
あるいは、彼等の活躍に奮起したティシエール街の人々の手もあって。

街中のお菓子が、皆に美味しく食べられた。

 すると、街全体が、眩い光に包まれ、その輝きに、一瞬目を瞑ると。
次の瞬間には、剥がされたパイの石畳が、無残に穴の空いたクッキーのあった場所が、平らげられただけ、かさの減っていたチョコの噴水や蜂蜜の池が。
元々そこにあったもの以上に香りよく、美しいものと入れ替わっていた。

なるほど、『街が生まれ変わる』とは、こういう事だったのか。

 ある者は、満腹になった腹をさすり。
ある者は、ささやかな手土産に微笑み。
ある者は、一層美しくなったこの街に、目を見開き驚いただろうか。

 ともあれ、これでティシエール祭は無事に終わった、と言えるだろう。
今回の活躍もあって、イレギュラーズ達は、これからも街の人々に暖かく受け入れられる筈だ。
また、お菓子の街からの不思議な招待状を、心待ちにするとしよう。

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