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シナリオ詳細

ホソナガの土地には近づくな

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ホソナガ
 砂地を割って現われる直径30センチ弱の黒い物体。
 物体は細長く、にょろにょろと左右にゆらめきながら砂地から這い出ると、更に細い腕や足を使って大地へと立ち上がる。
 二本の足で立ち二本の腕を持つという点から亜人種にカテゴライズされているこれらは、『ホソナガ』と呼ばれていた。
 『ホソナガの土地には近づくな』という伝承と共に。

 ある村では土着の宗教が信仰され、死したものは『ホソナガ』になると言われていた。
 ゆえに死者は骨を残して焼いた後、壺で屈葬状態にして砂に埋めるという風習があった。
 様々な影響から村はさびれ、潰え、人の残らぬ土地となり、やがて砂と風が全てを覆い、民家すら埋め尽くしていった。
「だから、ここにはお宝が埋まってるってハナシなのさ」
 蛇のピアスをした女がケタケタと笑って言う。
 同じようなピアスをした二人の女が、半信半疑の顔でスコップを手に取った。
「それならとっくに掘り返されてるんじゃないのかい? 近くに別の村もあるんだしさ」
「馬鹿ねえ。聞かなかったの? ホソナガの土地に触れれば祟りがあるっていうんで、誰もここに近づかないんじゃないの」
「なあんだ。くだらない迷信に感謝だね!」
 女たちはスコップを砂に突き立て、ざくざくと砂を掘り進めていく。
 どれだけ掘っただろうか。
 用意していた水が底をつきた頃、スコップの先端が何かに当たった。
「お、早速何か見つけたよ!」
 かつんと言う音を頼りに砂をどけていく。
 すると。
 確かに見つけた。
 黒くて丸い、30センチ弱の物体だ。
 まるで蛇やミミズのように砂から這い出ると、白い三つの点がぱちくりと動いた。それが顔なのだと気づいたとき、女は悲鳴を上げて飛び退いた。
「ひいっ! なんだいこいつは!」
 仲間の女がスコップを叩き付ける。
 が、スコップは黒くて細長い何かによってぴたりと止められた。それが腕だと気づいた時に、女たちは恐怖の叫びをあげた。
 理由はわからない。
 それを深く認識すればするほど、なぜだか恐怖がこみ上げるのだ。
 恐怖はまるで喉元を這い上がるかのように膨らみ、やがて自らの喉から這い出てくる。目から這い出てくる。耳から、鼻から、ついには腹や胸を突き破って、這い出てくる。
 小さな『ホソナガ』が、這い出てくるのだ。
「アッ……ッ……ガッ……」
 女は声ともつかぬ声をあげ、目から血を流して倒れた。
 三人の女はそれぞれ似たような形で力尽き、まるで何十日も砂上に干したかのようにひからびていく。
 小さなホソナガは組み合わさり、ねじ合わさり、溶け合い、何体かの大きなホソナガへと変わっていく。
 新たに生まれた三体のホソナガにぱちりぱちりとまばたきをして、ホソナガはゆったりとした足取りで歩き出した。
 あちこちから新たなホソナガが這い出てくる。
 歩く方角は、近隣の村であった。

●ホソナガ退治
「そういうわけで、『ホソナガ』っていう魔物を退治して欲しいんだ。
 真っ黒な影が形をもったようなヤツさ。名前の通り細長くてね、左右にくねくねと動いているのが特徴だよ。
 他に特徴があるとすれば……そうだね、認識すればするほど害をなす、ってことかな」
 ギルド・ローレット近くの酒場。
 『黒猫の』ショウ(p3n000005)はビールジョッキを手にそんなことを語った。
「放っておくと近くの村がやられるらしくてね。危険を感じた貴族サマからのご依頼さ。
 どうかな、受けてみる気は?」

GMコメント

【オーダー】
 成功条件:ホソナガを全て倒すこと

 ホソナガは現在6~9体存在しています。
 数が曖昧なのは関連情報が古く曖昧なためです。
 一応9体想定でプランを組んでおくと安定した戦闘ができるでしょう。
 総合的な戦闘力も『自分たちと同じかちょっと上』くらいを想定すると安定する筈です。

【ホソナガ】
 長細い腕で触れる。
 じっと見つめる。
 不思議な言葉をかける。
 といった方法で攻撃してきます。
 情報が曖昧なためそれらがどんな効果をもたらす攻撃なのかはハッキリしていません。
 少なくとも先述した女たちのようなコトになる可能性がある、と思って置いてください。

 『ホソナガ』を深く認識すし同時に自分も強く認識されることで恐怖が内面から強制的にわき出すようです。
 具体的には、ホソナガに触れられる。目を合わせる。言葉の意味を考える。ホソナガについて考える。ホソナガについて調べる。ホソナガに近づく。ホソナガと会話をする……などなど。
 情報接触の深度が深ければ深いほど被害の度合いが高くなると思ってください。

 とはいえある程度踏み込まないと戦闘で勝利できないので、どの辺りまでリスクを冒すかのバランスをとるのがこの依頼のキモといっていいでしょう。

【フィールド】
 砂地で戦闘を行ないます。
 天気は晴れ。見通しはよく、ずーっと遠くから歩いてくる『ホソナガ』を観測することができます。

【アドリブ度(注意)】
 当シナリオではキャラクターがグロテスクなダメージをうける可能性があります。
 口から細長い生物を吐く。目を潰して細長い生物が這い出てくる。耳を細長い生物が這う。腹や胸や腕などの部位から細長い生物が割って出てくる。
 そういった描写が発生することがあります。
 もしキャラクターにグロテスクな描写が起きることがお嫌でしたら『グロテスクNG』と書いて頂ければ描写をカットいたします。
 逆に覚悟が完了している場合は『グロOK』『グロテスクOK』と書いて頂けると幸いです。
 (どちらも無い場合はなんとなくの雰囲気で決めます)

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

  • ホソナガの土地には近づくな完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年05月30日 21時10分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (10人)

アート・パンクアシャシュ(p3p000146)
ストレンジャー
マグナ=レッドシザーズ(p3p000240)
緋色の鉄槌
世界樹(p3p000634)
 
琴葉・結(p3p001166)
魔剣使い
河津 下呂左衛門(p3p001569)
武者ガエル
狩金・玖累(p3p001743)
PSIcho
クリム・T・マスクヴェール(p3p001831)
血吸い蜥蜴
九条 侠(p3p001935)
無道の剣
リジア(p3p002864)
祈り
一条院・綺亜羅(p3p004797)
皇帝のバンギャ

リプレイ

●傾向と対策
 噂話に尾ひれが付くなんて話はよく聞くが、逆に噂話が縮小されていくこともある。
「聞いとるとおり、奴らは見ただけで命にかかわってくる存在じゃ。マジで戦闘を覗きに来ちゃイカンからの? ホントにグロく死ぬぞ」
 『飛行する樹』世界樹(p3p000634)は近くの村へ入り、まだ仕事をしている村人たちへ避難を呼びかけていた。
 村人たちは『ホソナガ』の話にいまいちピンときていないようで、とにかく死ぬから離れろという世界樹の要求に直接応じる形で村から離れていった。
「さあホソナガの迎撃に向かうのじゃ。この村人達の不安顔を笑顔に変えるため、ここは踏ん張り所なんじゃよなー。いくぞよ」
 村人が避難用の馬車にのって去って行くのとは、逆方向。
 もはや砂ばかりとなった平地の上に、『ストレンジャー』アート・パンクアシャシュ(p3p000146)は立っていた。
「…………」
 『ホソナガ』はどうやら自分とは相性が悪いらしい。アートはそう考えてか、色々と準備をしてきたようだった。
 例えば覆面を被って耳に布をつめ、音を聞き取りづらくした。
 更にマントで身を覆い、ミラーシールドで自分の身を隠すようにして接することにしていた。
「その鏡は?」
 『魔剣使い』琴葉・結(p3p001166)がアートの盾をつつくと、アートは何度か聞き直したあとで頷いた。
「相手に自分の姿を見えるようにしたいと思ってな」
「それって、意味あるのかしら」
「……いや、よく考えたらなさそうだが、少なくとも盾で自分の視界を覆うことはできる」
 ホソナガが複数体で移動している時点でお互いを認識しているはずなので、ホソナガの特性が同じホソナガには発生しないという説明がつく、と考えた。
「どうにも情報が曖昧だけど『認識すればするほど害をなす』って話だし考え過ぎても良くないわね。けど恐怖心に対しても考え過ぎるとドツボに嵌るから……」
 ぱしん、と頬を叩く結。ズィーガーが『魔力残量には気をつけろよ?』と声をかけてきたので、その柄をノックすることで応えた。
 頭をかりかりとやる『緋色の鉄槌』マグナ=レッドシザーズ(p3p000240)。
「認識しただけでヤベぇって、とんでもねえな、おい。んな攻撃、防ぎようがねえし、殺られる前に殺るしかねぇ、か。要は何も考えずぶっ倒しゃいいんだろ?」
 マグナの何気ない問いかけに、肩をすくめて返す『膿より不快な』狩金・玖累(p3p001743)。
 色の濃いサングラスをかけているのは、ホソナガを直視しないためだろうか。
「かもね。僕はなんとも思ってない。石ころみたいにね。恐怖に起因する攻撃しかできないなら、まだまだだよ」
「む……」
 『生誕の刻天使』リジア(p3p002864)はどうも感情の読みづらい顔で地面を見つめていた。
 『認識することで発動する特異性』が、『意識しないこと』で対抗できるかは少々疑問だったからだ。
 少なくとも、強制的にわき出すという恐怖を連鎖的に増幅させることは防げるかもしれない。どのみち、ぶっつけで試すほかないことだ。
 そんな雰囲気を吹き飛ばすように、『名乗り口上委員会』一条院・綺亜羅(p3p004797)がパカダクラに跨がってやってきた。
 上から下り、馬身で銃弾を防ぐかのように側面に張り付いてやがてくるであろうホソナガから身を隠す。
「気味の悪い攻撃の敵じゃが心まで鋼鉄に武装するのが鉄の乙女よ。鉄帝国は魔術に屈しはせぬ。迷信の怪物を蹴散らしてくれよう」
「いいですねえ。蹴散らしましょう」
 拳銃を手にどこか調子のよさそうな『血吸い蜥蜴』クリム・T・マスクヴェール(p3p001831)。
「所でそのホソナガっていうのは血が出るんですかね?」
「血が流れるなら殺せる、と?」
 それまで目を瞑っていた『無道の剣』九条 侠(p3p001935)がぱちりと片目を開いて言った。
 『別にそういうわけじゃあ』と手を上げるクリムに、侠は特に追求をしなかった。
「ホソナガねえ……情報を聞いてる限り、真面に戦うのは避けた方が良いのは間違いない相手だが、とにかくやってみるしかないな」
「古くから言われている話にはそれなりの意味があるという事でござるな。やれやれ……」
 恐らくホソナガを掘り返してしまった連中のことを言っているのだろう。『武者ガエル』河津 下呂左衛門(p3p001569)はため息をつくと、懐から取り出したサングラスを装着した。頭の形と目の位置がかわっているので、サングラスっていうかもう軽いシールドである。
「向こうからどう認識されているのかも、呪詛の効果に影響しているようでござるからな。こちらの認識もしづらくしたいところでござる」
「じゃろうな」
 後ろからやってきた世界樹が、腕組みをしたまま会話に入ってきた。
「おそらく相互認識が発動のキーじゃ。でなければ、情報拡散だけで全滅してしまうからのう」
 さて。
 ここで。
 遠くでゆらゆらとする細長い人影が見えた。
 人影だと思ったのは、手足のシルエットがあったからだ。
 明らかにこちらへ向かってくる。
 こちらを見ている。
 そんな風に思った全員は、途端にぞくりと背筋が冷たくなるのを感じた。
 ある意味、もう始まっていたのだ。
 先手を打ったのは、相手側になったようだ。

●恐怖と絶望
 身体の震えが止まらない。
 リジアは震えをおさえるべく自分の肩を握り、爪を立てた。
 なぜだろう。その爪が肉の内側へ、骨の内側へ、その中心を抜けて身体の裏側へとめりこんでいく錯覚がわいてきた。
 ぶしゅん、と音を立てて肩から飛び出してくる小さな『ホソナガ』。
 それを急いで千切って払い落とし、自らは飛び上がるように飛行を始めた。
「この身が持たなくなるのが先か、貴様が破壊されるのが先か。なんにせよ、私は貴様をこの世界に残しはしない」
 私の領分ではないが、生き物の天使の真似事だ。
 この世へ留まらんとするその楔を破壊する。
 リジアの視覚情報が大きく歪み、空間ごと歪曲していく。
「あるべき場所へ戻るまで、完全に破壊する」
 リジアは今や破壊の権化だ。恐怖そのものを破壊するかのように、翼から放った光を解き放つ。
 空間がひび割れ、崩れ、散っていく。
 ホソナガにも確実にヒットし、その細長い腕を吹き飛ばした筈だ。
 だが、その一方で。

 リジアはその場に膝をつき、地面をただ見つめていた。
 全身のあちこちからホソナガが吹き出し、うねうねとゆらめいている。
 それを見てしまった綺亜羅は、思わず口を押さえた。
 彼女が身を隠すために使っていたパカダクラが全身のあちこちからホソナガを吹き出し、ひからびたように細くなってその場に崩れ落ちる。
「こうなれば……!」
 グレイブを手に、ホソナガへとかけ出す綺亜羅。
 直前で砂を蹴って目つぶしを仕掛け、切りつける。
 細長い腕がグレイブの刃をとめる。
 一方で綺亜羅の腕からはホソナガがわき出していた。肉を破いて血を噴き出させ、肌を掴んで這い出ていく。
「子種を孕んだ記憶はないがの。よくできた幻影の類いか」
 と言い捨てて、引きちぎってたたき落とす。
「イメージにはイメージで対抗じゃ。こやつらはゲジゲジゲェジじゃ!」
 自分に言い聞かせるように恐怖を振り払い、攻撃を続ける。
「ホソナガども。くだらぬ幻術など鉄の意志が粉砕してくれるわ! まとめてかかってこい」
 剣がホソナガの腕を切り落とす。
 さらには首を切り落とし、それでもゆらゆらとしている身体にグレイブを叩き込んだ。
「トドメじゃ……!」
 うねる胴体を掴み、切断した、その瞬間――。

 マントを被り、ホソナガへ突撃する世界樹とアート。
 今すぐ足を止め、家へ逃げ帰りたい気持ちがわき出した。
 だがアートは決して足をとめることなく、片目を瞑ったままホソナガにマントを投げつけた。
 反射的にか、マントを振り払おうとするホソナガ。
 逃がしはしないとばかりに回り込んだ世界樹が、ホソナガに自分のマントを投げつける。
 二枚のマントが絡むようにしてホソナガを包み、もごもごと動いている。
 これでいい――と思った瞬間、アートと世界樹の口からホソナガが飛び出した。
『――――』
 何か呟いている。
 何か呟いているが。
 それを認識したら終わりだ。
 そう思えるのだ。
 地面へ吐き捨て、踏みつぶす。
 アートが瞑っていた片目を開くと、その眼球を突き破って極小のホソナガが飛び出した。
「あ、あああああ」
 今の言葉は誰がいったものだ。
 それすら認識できなくなっていた。
 認識が、できなくなっていた。
 耳が鼓膜から突き破られホソナガが這い出ていくのが感覚でわかった。
「なに……まだ、身体は、動く」
 と、自分で言ったような気がした。
 ホソナガに掴みかかり、必死に顔面を殴りつけているような気がした。
 もはや肌の感覚すらなくなり、五感が消えていくのがわかった。
 世界が闇より昏いなにかに落ち、思考が恐怖に満ちていく。
 まるで脳が恐怖という液体にたっぷり浸ってしまったかのようだ。
 いや脳なんてあるのだろうか。
 自分はここにいるのだろうか?
 緑色の液体の中に脳だけ浮いているのでは?
 この世界はほんとうに……。

 全身からホソナガがわき出したアートと世界樹が、ぐったりと動かなくなったマントの中のなにかに覆い被さるように倒れている。
 ただ、海藻のようにゆらゆらと揺れるホソナガが、それこそ海藻のように身体からびっしりと生えている。
「瞬く間に四人……か」
 結は呟き、そして何かを振り切った。
 相手の個体数は最初から数えていない。
 大体6~9体くらいだろう。
「要は、相手から認識しづらくすればいいのよ」
 相手の周りを駆け回り、そして飛び回る。
 下呂左衛門もそれに加わり、相手を翻弄するように周囲を跳ね回った。
 ホソナガは目をぱちくりとして、きょろきょろと見回している。
 その一方で、マグナが別個体へと襲いかかっていた。
「逃げてばっかは性に合わねえ! だからこいつだ――レッドニードル!」
 マグナが生み出した魔棘がホソナガを染め上げていく。
 右目を潰して飛び出したホソナガを掴み、握りつぶす。
 右目を潰して飛び出したホソナガを引き抜き、地面に叩き付ける。
 腕から飛び出したホソナガを、噛み千切る。
「うざってえんだよ! 殺す殺すてめえら全員、ぶっ殺す!」

「うぇええー、気持ち悪いなぁ。僕に気持ち悪いって言わせるなんて、こいつはよっぽど大物に違いないぜ」
 玖累は相手の心をさすような言葉を吐きながら、ゆらゆらとホソナガに対峙していた。
 マグナが狙っている個体を集中して狙うようにマジックロープを放ち、自分の腕や胸を突き破って出てくるホソナガを引きちぎる。
「ああ、お腹を痛めて産んだモノを殺す事になるなんて! ……中々、喜劇的で刺激的な話だね?」
 目や耳、腹や腕から無数のホソナガが飛び出しているというのに、彼は動じる様子がなかった。いや、表面的にそう振る舞っているのかもしれないし、そもそもの人格構造がおかしいのかもしれないが……。ただ立ったまま敵と戦う彼の様子はかなりの異様であった。
 有刺鉄線がまるで蛇のようにうねり、袖の下から飛び出してはホソナガに襲いかかる。
「この程度の恐怖で僕を制しようだって? 甘いぜ、こんなの……」
 喉や口を突き破ってホソナガが飛び出すが、玖累は未だ余裕を見せていた。
 有刺鉄線がホソナガにからみつき、締め上げ、べきべきと奇妙な音を出して破壊していく。
 玖累はその場に倒れたが、精神までも破壊されたかどうか……。

「がふっ……」
 喉をさいて飛び出したホソナガ。
 侠はそれを引き抜き、傷口を押さえて粗く息をした。
 目は既に見えない。肌感覚でかなりの攻撃を受けていることはわかった。
 なんとか耳をすませてホソナガの位置を確認していたが、右耳にホソナガが居座って何かをぶつぶつ語り始めたことで限界を感じていた。
『お前らみたいな得体の知れない奴相手の時は怖気づいても仕方ねえ、斬らせて貰うぜ』
 心で語り、飛びかかる。
 刀がホソナガの肩に食い込んだのを感じる。
 更にもうひとふりの刀が胴体に食い込んだ。
 まるで巨大なハサミのように刀を交差させると、侠は相手を斜めに切断した。
 振り返る。背後に何かが立った音だ。
 味方かどうかはもはや分からない。だからマントに手をかけた。
 その手に、奇妙な感覚がはしる。
 何かが触れた感覚だった。
 絹のようになめらかな女性の手が、侠の手を撫でたように思えた。
 手はすべるように侠の肘、肩、首へと進み、侠の身体に抱きつくように思えた。
「くっ……!」
 かろうじて出た声で自分を奮い立たせ、侠は至近距離に存在する『それ』をへし折った。

 クリムは額を手でぬぐった。
 苦戦を強いられている。こんな相手だ、当然だ。
「わらわらわらわら気色悪ぃ! ぶった斬ってやる!」
 腕の毛穴という毛穴が逆立ち、揺れている。否、すべて小さなホソナガだ。
 それらが一斉に『やめてやめて』と懇願していることに気づいたクリムは、手で払うようにそれらをそぎ落とした。
 飛行状態を保ち、ホソナガめがけて銃を連射する。
 ズドン、とかつて聞いたことも無いような爆音がした。
 まるで鼓膜が破れるような音だが、それが自分の鼓膜の破れる音だと気づいた時には世界が無音に包まれていた。
 平衡感覚がおかしくなり、身体が空中で転がる。
 が、それでも無理矢理銃口を向け、ホソナガにさらなる射撃を加える。
 くるくると回転し、地面へ落下するクリム。
 ホソナガがうねうねと身体をゆらしながら近づいてくる。
 剣を抜く。
 世界が半分ほど吹き飛んだ。いや、右目が吹き飛んだせいだ。
 それでもクリムは何かを叫び、ホソナガへと斬りかかった。
 相手の身体が真っ二つに切り裂かれる。それは、自分の目が潰れたからではないはずだ。

 味方の殆どが倒れ、ホソナガがわき出でている。
 まるで緑に覆われた土のように、彼らの身体からは小さなホソナガの上半身が飛び出してゆれていた。
 そんな中、マグナは不思議な感覚の中にあった。
 両目からはえたホソナガのせいで視界は悪いどころじゃない。
 ものは聞こえないし、口から何度も何かをはき出しているせいでまともに直立すらできていない。
 が、自分に触れる何者かの気配は分かった。
 左手のハサミを開き、その何者かの首を掴む。
「――」
 ぶつん、と手の中で細長い何かを握りつぶした。

「えぇい、奮い立て下呂左衛門! 怖気づいている場合か!! ここで斃れれば、より多くの犠牲が出るのだぞ!!!」
 下呂左衛門は自らを奮い立たせ、ホソナガへと斬りかかった。
 サングラスは既に落ちている。目から飛び出したホソナガが未だにびたびたと揺れていた。
 一方では結が片目をおさえたまま剣を握っていた。
 ふうふうと粗く息をしているが、まだ意識はあるようだ。
「結殿、トドメを」
「――」
 結がなんと答えたのか、鼓膜の破れた下呂左衛門には分からなかった。
 だが結が結らしからぬ表情をしたのは、なんとなく分かった。
 同時に跳躍し、剣を振り上げる。
 ホソナガは二人を見上げ、両腕を掲げた。

 地面を転がる結と下呂左衛門。
「やったか!? く……皆、無事でござるか!?」
 片目を押さえる。
 が、そこにはサングラスがあるだけだった。
「おや?」
「いたた……頭が……」
 結は頭を押さえていたが、それだけだ。傷らしい傷は残っていない。
 振り返ると、そこにホソナガはいなかった。
 死体すらも残っていない。
「…………」
 リジアが、空を見ている。
 地に足をつけ、空を見ている。
 両目もまるで傷ついていない。腕や身体も綺麗なままだ。
 あたりを見回すと、仲間たちは頭の痛みを訴えてはいるが外傷らしい外傷はなく、『自分たちはホソナガを倒したのか?』と確認しあっていた。
 いや、だが、確かなことはある。
 自分たちはホソナガと戦い、死亡することなく、勝利したのだ。

 彼らはその後、近隣の村へと立ち寄った。
 避難をしていたはずの村人たちはごく普通に仕事をしており、問いかけたイレギュラーズにこう答えたという。
「ホソナガ? なんですか、それ?」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――事件終了
 ――任務達成

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