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シナリオ詳細

死にぞこないの兵士達へ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「人は……いないか。どうやら捨てられた村みたいだ」
 酒場らしき場所のカウンターにて、そう嘆いたのは、剣を腰に差した青年だった。
 年のころは20代後半か。ズタボロの甲冑が痛々しい。
「メイナード隊長、残念ながら……誰も見当たりませんでした」
 扉を開けて酒場に入ってきた女性が敬礼をして言う。
「ありがとう。キミも休めイングヒルト君」
「……それから、村からの物資調達は構いませんか?
 他の者達も腹をすかしております。盗賊めを適当に倒して得た食料ももう底を着きます」
「……畑か何かあれば、それを貰うぐらいなら構わないだろう。
 だが、家の中に潜入して金目の物を奪うことは禁ずる」
「承知いたしました……」
「ただし、貰いすぎては駄目だ。
 我々はここを占領したような物。空き巣のような真似は出来ぬ」
 その言葉に応じるように、綺麗に礼をしてその場を後にした女性――イングヒルトを眺めた後、青年――メイナードが舌打ちする。
「――主よ。何故我らにこのような苦難をお与えになるのか……」
 頭痛を堪えるように言ったメイナードが、重い溜息を吐いて立ち上がって酒場の外へ歩き出した。
 そこに広がるのは、同じようにぼろくなった鎧を身に纏った20人ほどの兵士達。
(……少なくなったものだな。
 主君には忘れ去られ、死に場所は得られず、されどこれと言って仕官する先も思い当たらぬ。
 このまま賊徒に落ちぶれて死ぬのか、我々は……それも宿命か)
 考えを振り払ったメイナードが足を踏み出した。
「篝火は焚いておけ。獣除けにはなるだろう。
 見張りは複数立てて、時間ごとにゆっくり休めるように」
 空しい指示を飛ばし、空を見上げればメイナードは嫌に澄んだ空が広がっていた


「ようこそ。お越しいただき感謝いたします。皆様」
 そう言って礼をしたテレーゼ・フォン・ブラウベルク(p3n000028)が集まってきたイレギュラーズを見渡して微笑する。
 メイドがそっとイレギュラーズの分の紅茶を差し出せば、そのままそっと立ち去っていく。
 テレーゼはそのままちらりと隣に控えていた傭兵らしき男に視線を向ける。
 男が広げたのは近辺の地図だった。
 何やら街道沿いにある小さな町にバツ印が記されている。
「実はですね、ここ数日の間に賊……と思しき集団がそのバツ印の付近に拠点を築いたらしいのです。
 先だって、その街道を進んでいた商団が灯るはずのない篝火を見たようでして。
 ここは主要の街道が通る場所でもあります。そんな場所を得体のしれない者に使われるわけにはいきません」
 眉をひそめてそう言うと、そのまま視線をイレギュラーズに向ける。
「この者達を無力化したいと思います。
 盗賊――あるいは、何らかの亜人であるようなら討伐を。
 そうでなくとも、話が通じ無さそうであれば退去していただくのが目標です」
 そこまで言うと、詳細の情報をイレギュラーズに伝えていく。
「あぁ、そうでした。すっかり忘れてました。
 お仕事が終わったら、ここに戻ってきてくださいね。
 せっかくですから、夕食を御一緒できると嬉しいです」
 忘れていた、と言わんばかりに手を打って、テレーゼはキラキラと目を輝かせて笑っていた。

GMコメント

 そんなわけでこんばんは、春野紅葉です。
 ちょっとだけ変わった討伐依頼?になります。
 それでは詳細をば。

●オーダー
・廃村内にたどり着いた集団を無力化する。
 方法は討伐、交渉、捕縛、その他、何でも構いません。

●フィールド
数年前に討ち捨てられた村。
戦火の痕が見られ、そこら中がボロボロです。
とはいえ、家屋や店舗のような物は点在しています。

●エネミー(?)データ
・共通
 数では圧倒的に敵が有利ですが、1対1ではイレギュラーズの方が遥かに優位です。戦闘になっても、さほど脅威ではないと思われます。

・『忘れられた武略』メイナード
 青色の髪と瞳をした20代後半らしき青年。ボロボロの甲冑に身を包み、腰にはやや長めの剣を佩いています。
 そこそこの手練れであろうと見受けられますが、顔には隠しきれぬ疲労感がべったりです。
 この集団のリーダーと見受けられます。

・『流転する槍媛』イングヒルト
 紅髪赤眼、20代前半の女性です。ボロボロの甲冑に身を包み、槍を携えています。
 そこそこの手練れであろうと見受けられますが、疲弊は見受けられます。
 この集団の副リーダー的立ち位置と見受けれます。

・死に損ないの兵士×18(剣×6、槍×3、斧×3、弓×3、魔法×3)
 ボロボロの兵士達です。各々が一応の甲冑に身を包んでいます。
 殆ど戦闘能力があるように見えませんが、戦う場合は文字通り最後の力を振り絞るでしょう。


●その他
 戦後はブラウベルク家から夕食の提供があります。
 味噌鍋風の野菜やら肉やらが満載の料理です。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はB‐です。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、相手の情報はやや薄くなっています。

  • 死にぞこないの兵士達へ完了
  • GM名春野紅葉
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年02月13日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

R.R.(p3p000021)
破滅を滅ぼす者
マルク・シリング(p3p001309)
浮遊島の大使
リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)
紅炎の勇者
コゼット(p3p002755)
ひだまりうさぎ
マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)
威風戦柱
リア・クォーツ(p3p004937)
願いの先
カイロ・コールド(p3p008306)
闇と土蛇
ノルン・アレスト(p3p008817)
願い護る小さな盾

リプレイ


 鳶が空を翔けている。
 翼を開いて滑空するように進むソレは、幾度かの旋回を熟しながら、廃村を見下ろしていた。
(ちょっと前にゴタゴタがあったばかりで、テレーゼも大変ね)
 修道服を靡かせる『願いの先』リア・クォーツ(p3p004937)はこの辺りで魔種がらみで起きたやや規模の大きな動乱の事を思いだす。
「まぁ、折角報酬の料理を用意してくれているわけですし、ちゃちゃっと終わらせて帰りますか」
 やや強めに吹いた風は、未だに肌寒い。あまり外で長居はしたくないものだ。
「盗賊はどこでも湧いてきますねぇ……自然災害と言って良いのでは」
 そう言う『無益なる浪費こそ最大の贅』カイロ・コールド(p3p008306)は一見すると優しげな笑みを浮かべながら、このあとの想定しうる状況を考えている。
「さて、連中は賊であるか否か、破滅をもたらす存在であるか否か。
 まずはそれを見極めねばな」
 その言葉を聞きながら、『破滅を滅ぼす者』R.R.(p3p000021)はちらりと後ろを見る。
 そこには荷馬車が一つ。馬が嘶き、大地の葉を食んでいる。
「んー、なんだろうねやっぱり盗賊の人なのかな」
 そう言う『ひだまりうさぎ』コゼット(p3p002755)はぶるると顔を振った馬を優しくなでている。
「どうだろう。装備に統一性があるし、統制は失われていないみたいだ。
 流浪の身ではあるだろうけど軍人かもしれないね」
 コゼットの言葉に答えたのはマルク・シリング(p3p001309)だ。
 鳶の向こう側、見下ろしていた集団は統制のとれた状態ではあるように思える。
 ズタボロの鎧の兵ではあるが、見張りのような者も入り口には立っている。
 荷馬車の片隅に座っているノルン・アレスト(p3p008817)はそんなマルクの話を聞きながらも、今はまだ盗賊の類であろうとあくまで判断していた。
 この荷馬車があれば、賊であれば襲ってくる可能性が高い。
(統一された装備、行き届いた統制……だとすれば、間違いなく彼らは貴族に仕えていた騎士か兵士……)
 ――ならば。『春告げの』リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)はその情報を纏めながら考える。
「……急ぎの依頼でも無いのに対象の情報が無いのはちと仕事が荒い気がするが」
 青色の扇子で口元を覆いながら、『こむ☆すめ』マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)は小声でぽつりとつぶやく。
「まぁ仕方ないか、貴族だし」
 思い直しつつ、その思考は別のことに割かれていた。
(被害がないならさほど敵は強くない、もしくは……賢いかのどちらかだなぁ……
 まぁどちらでも良いか。なるようになるさ多分)
 ここに来ることになった経緯の一つに商団が篝火を見たという話を聞いていた。
 商人になんの被害もないのなら、さて、どういうことなのかと。


 遠くからでも分かる情報収集を終わらせたイレギュラーズはいよいよ廃村の入口へと馬車を連れて訪れていた。
 馬車の姿が見えたであろう辺りで、見張りの一人が廃村の中へと戻っていくのが見える。
「何者だ」
 入り口をふさぐように、2人の槍兵らしき男の片方が問うてくる。
 その鎧には事前の通り、一部が欠けたり剥げたりしている。
(はて? 盗賊にしては装備の質は悪くない。随分と傷んでいますが……)
 カイロは柔和そうに見える表情のまま、槍兵が構える武器と鎧を目ざとく見る。
「どうもこんにちは。私達はこの地帯の盗賊退治に派遣された者です」
 カイロの言葉に、片方がぴくりと眉を吊り上げる。
 その手に僅かに力が入ったのか、槍が微かに上に動いた。
「……ああその反応、貴方達はやはり盗賊ではないんですね?」
「…すみません。ボク達はイレギュラーズです。
 賊の討伐を依頼されましたが、貴方たちは本当に盗賊ですか?」
 続けるように言葉を発したノルンに、2人の表情は硬いままだ。
「ローレットの方、ですか」
 女性の声がして、視線をそちらに向ければ、廃村の入り口に新しく女性と、もう1人、男が立っていた。
 20代前半だろうか。疲労こそ感じられるものの、赤眼には見定めるような意思を感じた。
 もう1人――槍を持つその男は、一度中に戻った男のように見える。
「私達はローレットです。貴方達の指揮官と話がしたく思います」
「……指揮官、ということは私達が軍人か何かと思っておいでなのですね」
 盗賊の類であれば、指揮官ではなく頭領とでも言うべきだろう。
 リースリットの言葉に、警戒を解かぬまでも女性はこちらに興味を持ったように見える。
「少し、話をしませんか?」
「ええ。『私達は追手ではありません』。貴方達と話をする為に来たのです」
 続けるようにマルクとリースリットが声を掛ければ、女性は少しばかり黙考する。
「話をしてくれるなら、食べ物いっぱいあるから、食べていいよ。
 おなかすいてつと、いいことないよ。
 食べてからでいいから、あたしたちとお話ししようよ」
 コゼットが荷馬車の荷物を露わにして告げれば、女性の目線に僅かな警戒が宿る。
(相手の事情があると見るや助けようとするのほんっとイレギュラーズって感じだよな)
 そんな様子を眺めながら、メーヴィンは頭の中でそう考える。
(……とはいえ、こちらの弱みを知って尚且つ解決する術を持って無手で近づいて来る奴らって警戒しないか?)
 その判断は一面に置いて正しい。
 事実、対面にいる女性は、未だイレギュラーズへの警戒を解いていない。
 ――もちろん、それは賊討伐のために来たと言われたことも踏まえているのだろうが。
「盗賊と違うのでしたら、どうかお話を聞かせていただけないでしょうか?」
 アレストが言葉を紡ぐと、兵士達の視線が女性へと向く。
 どうやら、少なくとも彼らより彼女の方が地位は上なのだろう。
「あたしは見ての通り聖職者だから変な事はしないわ。
 それと、怪我人が居るならあたしに診せて」
「治療ができるのですか?」
 女性の眼が期待のような物を僅かに覗かせる。
「ええ、あたしの前で誰かが苦しんでいるのは絶対に許さないわ」
「…………分かりました。
 病人はそれほどですが、傷を負っている者は何人かいます。
 治療も含め、お願いします」
 長い沈黙だった。何らかの利益を考えていたのはたしかなようだ。
「イングヒルト副隊長?」
「……二人とも、気持ちは分かるけど槍を降ろして。
 まずはお話を聞きましょう。隊長もそれを望まれるはず」
 イングヒルトというらしい女性の言葉を聞いた2人の槍兵が、本の僅かな逡巡の後に槍を降ろす。
「ご案内します。それから、ごめんなさい。彼らも気が立っているのです」
 そう謝辞を告げられ、8人は廃村の中に踏み込んだ。
 廃村の中では、12人の兵士達がある者は休み、ある者は武器の手入れをして。またある者は田畑を耕しているように見えた。
 案内された先には、一人の青年がいた。一人の兵士を連れて畑に鍬を入れていた彼は、イングヒルトとイレギュラーズを見据えた。
「メイナード隊長。お客様です……ローレットからの」
「――……ありがとう、イングヒルト君。それじゃあ、酒場に行こう。
 話し合いに使えそうな場所はあそこぐらいだ」
 一瞬、驚いた様子を見せた青年――メイナードは、鍬を置いて兵士に労る声をかけた疲労こそ見せつつも確かな足取りで歩き出す。

 連れてこられた先は村の中に存在していた小さな酒場だった。
「すまない、それで……目的は我々の討伐だとか」
「いえ、僕達の目的はあくまで皆さんにこの村から退去していただくことです。
 可能であれば交渉で解決したい」
 マルクの言葉を受けて、メイナードの表情が曇る。
「ここは主要の街道が通る場所でしてね。
 陣取られると、街道を通る方々が不安で不安で仕方がないのですよ」
 続けるようにカイロが言えば、相手から乾いた笑いが聞こえてきた。
「たしかに、主要な街道沿いであれば、我々は邪魔か……だが。
 我々には行くところが無い。民衆や商人にいらぬ不安を抱かせたくはないが……」
「それでしたら、ブラウベルク家の方に事情を話してみては?
 このご時世、領地を持つ以上は兵は必要でしょうし、
 もしダメでも傭兵などの仕事先を探して仲介くらいならできるのではないでしょうか」
 アレストの言葉に、メイナードとイングヒルトの表情が暗くなった。
「アンタ達はどこから来たんだ?」
 廃村に通されるまでは離れていたR.R.も交渉の席にはついている。
 R.R.からの問いかけにも、2人の顔色は優れぬまま。
「どの貴族の所属で、何の戦いで落ち延びたか。これは重要なことだ。
 特に、今回の依頼人とブラウベルク家と敵対的関係にあるのなら、密かにことを進めねばなるまい。
 逆に、友好的関係であれば、直接テレーゼ嬢に話を繋ぐこともできるかもしれん」
 続けての言葉に、2人は言葉を詰まらせたまま、互いに目配らせした。
「……貴方達は、元オランジュベネ男爵の兵ですか?」
 口を開くのを躊躇する2人の先手を打つようにリースリットは問うた。
 イオニアス=フォン=オランジュベネ。
 かつてイレギュラーズの手で討ち取られ、その領地の一部がイレギュラーズにも開放されているこの付近の旧貴族。
 彼の敗残兵ならば、この付近に隠れ潜んでいても不思議ではなかった。
 何より、魔種に転じ、国に反旗を翻して果てた男の配下であれば、言い澱むのもむべなるかなという話だ。
「それでしたら、立ち退く代わりの問題を解決できます。
 私達から口添えしテレーゼ様に恩赦を頂けるよう交渉します。
 その後、お望みなら仕官の推薦をしましょう」
「……しかし、それを許してもらえるかも分からぬ。
 そもそも、我々は旧主に忠節を尽くしきることも出来ず、主の滅びに殉ずることも叶わなかった。
 それでもいいのだろうか? ……それに、恩赦を貰えたとて、近辺には我々を恨む者もいるだろう」
「貴方達は何のために戦ったのですか?」
「……我々はただ――戦えなかった。主君に殉ずるにはあの方は道を誤りすぎた。
 国や民のためにと思えど、も……」
「、国やそこに住む人の為であれば、現領主に使える事がその実現となる筈。違いますか?
 それに、たった今、テレーゼ様からファミリア越しに仕官を認めるって。貴方達さえよければ、だけど」
 明確な驚きを見せたメイナードはそのまま考え込んだ様子を見せる。
「それに、もしも仕官以外の道を望むなら養父……シリング商会で隊商の護衛として働いてもらえるよう養父に取り掛かろう」
「……もしブラウベルクや周辺を避けたいのでしたら、良ければ新天地としてファーレル伯――父に私から推挙したく思います。
「……シリング商会と、ファーレル伯に?」
 隣にいたイングヒルトが驚きを隠さない。
「……各々に決めさせたい。それでもいいだろうか?
 郷里に家族を残した者や離れたくない者、離れる気力のない者は残し。
 離れて功を立てたい者にはファーレル伯に。貴族とかかわるのを辞めたくなった者にはシリング商会に。
 ……それでも、構わないだろうか?」
 沈黙の後、メイナードが2人を見上げた。
 ここにいる2人を含めれば20人の所帯。
 ここまで統制されたとはいえ、内心では別々の何かがあってもおかしくないから――そう言って、メイナードが口を閉ざした。
「俺達に出来るのは選択肢の提示までと考えている。
 ともあれ、生きては置け。死ねば死に損、生くれば生き得とも言うしな」
 R.R.が告げれば、メイナードは静かにうなずいた。
 もちろん、死ぬという選択肢を取れぬことは明白ではあったが。
 それでも、言っておかねばならなかった。
 話し合いが続く中、コゼット、アレスト、リアの3人はイングヒルトの仲介もありつつ村の中にいた。
「ありがとう、ありがとう……」
 聞いてみても、目的なんて物はなかった。決戦にも混じれず敗走し、流浪する他なかった彼らには、それはなかった。
 いつ賊徒に落ちてもおかしくない――その瀬戸際を生きてきたのだろう。
 今、感謝を告げて握り飯を喰らった女性兵士は、傷こそ殆どが痕になっているが、疲労感は見えていた。
「まだまだあるし、ここにいる人たちをお腹いっぱいにさせられる程度にはあるから、落ち着いて食べて」
 こくこくと、コゼットの言葉に女性が頷いた。
 アレストの方もコゼットと同様に彼女が持ってきていた荷馬車の中から食事をふるまっていた。
 リアの周囲には、傷の目立つ兵士達が集まっていた。
「これで傷がある兵士は全員?」
「ええ。他の者は基本的に自然治癒をしています」
「そ。貴方達、あたしの様な優しい聖女に出会えた事、主にでも感謝しておくことね?」
 魔力で編んだヴァイオリンを作り出して、奏でる二つの旋律が、傷を負っている兵士達の身体に染みるように響き渡り、彼らがやっと落ち着いたと言わんばかりに目を閉じていた。
 2つの曲を奏で終えた後、リアは一人一人の話を聞きながら、物理的な応急処置を熟していく。
「はい、終わり! 兵士だってんなら、しゃきっとしなさいよね!」
 バシッと背中を叩いてやれば、古傷を押さえるように呻きつつも、元気そうに兵士が笑っている。


 交渉を終わらせたイレギュラーズは廃村にいた兵士と共にブラウベルクへ帰還していた。
「きっと8人でも28人でも変わらないでしょ?」とはリアの弁である。
 実際、手間自体はそれほど変わらず、寧ろ、人数が増えたことで大広間に食事場所を変える準備の方が掛かったらしい。
(……きっとこれは主のお導きよね)
 特に問題なく事が終わって、兵士達が食事に浸るのを見ながら、リアは静かにその様子を見つめていた。
「……御令嬢、ひとつ、いいですか?」
 イングヒルトが声をかけてくる。
「はい、なんでしょうか?」
「……どうして、私達に皆さんはここまでしてくれたのですか?
 私には、まだ納得しかねている部分があるのです」
「それは……」
 目を少しばかり伏せたリースリットは、この手で最後の一太刀を入れた男を脳裏に浮かべ。
「……主君に忠義と義理を尽くし苦境にあって誇りと矜持と礼節を失わない。
 貴方達の振る舞いは騎士の何たるかの体現でした。
 立派なことだと思います。だからこそ、惜しいと思ったのです。
 あなた達のような方々を苦境に塗れさせておいて良い筈が無い、と」
 静かに、視線を兵士達の方へ向けながらそう答えた。
「……そう、ですか。……私もどうするか考えなくてはなりませんね――」
 リースリットにそう漏らしながら、イングヒルトが肩の荷でも降ろしたように笑っていた。
 マルクはメイナードと共にテレーゼの下に訪れていた。
 そのまま、手渡された赦免状を読んでから、それをメイナードに渡す。
「本当に赦免を……」
「テレーゼ様が求めるのは服従や恭順ではなく、協力者だよ」
「――そう、であったか。はは、我々は主君を見誤って過ちを正せなかったのか……」
 乾いた声を漏らしながら、メイナードが虚空を見つめている。
 その目から、微かに雫が漏れて――彼がそれ拭うのをそっと視線を外す。
 それを横目にしながら、マルクは料理の方へ歩いていく。
 コゼットはテレーゼと話し合っていた。
『あたりまえを、あたりまえにするのは、とっても大変だから。
 せめてここだけでも、あたりまえが、あたりまえになるように』
 コゼットがそんな理念を掲げる領地には孤児や奴隷、難民といった者達が領民として集められている。
 戦いに疲れた2人の兵士がコゼットの領地への移動を希望している。
「素敵なことだと思います。きっと、コゼットさんの領地なら彼らもゆっくりと休めるでしょう」
 そう言って微笑みかけられたあと、二人はそのまま少しの間、会話に花を咲かせた。
 R.R.やアレストは黙々と食事を続けている。
 温かい鍋のような料理は身体の芯からぽかぽかとしてくるもので。
 ちらりと視線を向ければ、兵士達もほっとしているように見えるのだった。
 結局、退去となった20人の兵士達は、ブラウベルクに仕える者、カイロ、メーヴィンから傭兵への紹介をされる者。
 シリング商会やファーレル家へ行く者、コゼットの領地へと赴く者などに分かれ、彼らは各々の道を選ぶことになる。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お疲れさまでした、イレギュラーズ。
死に場所を得られなかった者達は今後の生きるべき場所を選び取ることができました。

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