PandoraPartyProject

シナリオ詳細

私、コスプレなんてしませんから!(フラグ)

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●フラグだって言ってるじゃん
「「ラサの特殊なダンジョン?」」
 鬼桜 雪之丞(p3p002312)とエルス・ティーネ(p3p007325)が異口同音に呟いた内容を『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)はうんうんと頷きながら聞いた。
「そうなのです。ラサの、ファルベライズとは別のやつなのです!」
「あら、そうなのですか?」
 ラサと言えば今はファルベライズでしょう、という心持ちだったため雪之丞が目を瞬かせる。
 随分と前に見つかったラサの遺跡群『FarbeReise』だが、さらに奥へ進みながら『ホルスの子供達』なる存在と戦うなどしているのがここ最近のローレット、ひいてはイレギュラーズの近況である。勿論ローレットの情報屋がファルベライズだけでなく世界各地に飛んで情報を仕入れていることは知っているが、まさかラサで無関係な遺跡が見つかろうとは。
「でも不思議じゃないわよね。まだまだあそこには前人未踏の遺跡があるはずだもの」
「そういうことなのです。という訳で是非とも挑戦して欲しいという依頼なのです」

 わかったわ、とエルスが頷く。
 え、と雪之丞が彼女を見る。
 うんうん、と満足そうにユリーカが首肯した。

 三者三様な有様であるが、一瞬の沈黙ののちに雪之丞がエルスへ向き直る。
「いいんですか? あの、まだ何も聞いておりませんが……」
「ラサの依頼だもの、あの人のためになることなら私は何だってやるわ」
「すごく良い心がけだと思うのです! それじゃあよろしくお願いしますね!」
 満面の笑みを浮かべてユリーカがエルスを――ついてきていた雪之丞も巻き込んで――送り出す。これから2人で他のメンバーを集めることになるのだが、揃って頭を抱えるのはこれよりもう少し後の話であった。


●フラグを回収した皆さんへ
「……というわけで……」
「……ついてしまいましたね……」
 エルスと雪之丞、そして他のイレギュラーズたちは依頼書に示された遺跡まで辿り着いていた。いや辿り着いてしまった。他のイレギュラーズも騙さr……詳細を聞いていなかったか、聞いて尚参加したのかは定かでないが、ここまでくればもう覚悟を決める他ない。
 開かれた門扉の中はラサの気候からすれば比較的涼しく、けれど他国のように寒くもない。心地いい室温であるが、それはそれでなんともこの先に待ち受ける嫌な予感を強めるだけである。
 いや、予感ではないか。もう確定事項である。
「最初は何かしらね」
「最初も何もあって欲しくありませんでしたけれどね……」
 などと言葉を交わしていても、到着はしてしまうもので。そこにはこの遺跡が成った頃にあったとは思えない、けれどここにある以上はあったと容認しなければならないものがあった。

 ウォークインクローゼット。
 バニーさんの衣装。
 全サイズあります。

 ちなみに、入口にはご丁寧にもこんな書置きがある。
『ここにあるものを着ないとクリアできないよ☆』
「「えぇー……」」
 イレギュラーズは入ってきた時より幾分か死んだ目でウォークインクローゼットを見た。進まない選択肢はない。これは依頼なのだから。

GMコメント

●成功条件
 遺跡の踏破

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。そもそも依頼の渡り方的な話だとCです。だってユリーカが><

●仕掛け
 これはPCが色んな衣装を着て(コスプレして)恥ずかしがったり戸惑ったりしちゃう姿をPLが楽しみつつ進む、戦闘アリのコメディダンジョンです。以上PL向け告知でした。

 各階層でお題に合った衣装へ着替えないと、多大なデメリットを負うことになる特殊ダンジョンです。デメリットの内容は分かりません。分からない方がいいかもしれません。
 この仕掛けについては依頼書に書かれていましたが、知ったのは受ける前でも後でも構いません。
 尚、各階層にはお題に即した衣装の収められているウォークインクローゼット、及び個室の更衣室があります。個室から先が踏破すべきエリアになります。全員で階層の出口へ到達しなければ次の階層が開きませんのでご注意ください。

・第1層【バニーさん】
 老若男女問わずバニーさんです。うさ耳付けてバニーさん衣装になってください。
 この階層のエリアはカジノのような風体をしていますが、カジノディーラーのような形をしたスライムたちが立ち向かってきます。弱いけど何もしなかったら倒されるので頑張って倒してください。服は溶けません。
 どこかに出口のような扉があるはずです。

・第2層【メイドさん】
 老若男女問わずメイドさんです。猫耳カチューシャとかは任意みたいです。ミニスカあります。
 この階層のエリアは屋敷のようになっており、お掃除ロボみたいなアンドロイドたちが立ち向かってきます。弱いけど何もしなかったら(以下略)。
 どこかに次階層へ続く階段があるはずです。

・第3層【????】
 老若男女問わず……何かの衣装を着せられます。(PCは)分かりません。この階層は各更衣室に衣装が置かれており、何故かサイズもばっちりです。
 この階層は各PLが「PCに着て欲しい、けれど普段じゃ絶対着てくれない!」という衣装を指定してください。統一されていなくて構いません。
 踊り子でもナースでも制服でも、ユリーカの服もコスプレになると思います。あれ結構肌面積広いですよね。

 この階層のエリアはファッションショーのようなステージになっています。決められた防具を着てビシッと決めてやりましょう!
 うまくいけば先の道が開けるはずです。その先はどうなっているか不明です。更なる階層が待ち受けているか、それとも財宝が存在しているのか。
 いずれにせよ8人で攻略するとなれば一旦ここまでとなるでしょう。

●ご挨拶
 最近コメディ的な依頼需要が増えてきた気がします。リクエストありがとうございます、愁です。
 フラグ回収してくれる皆さんをお待ちしています。シナリオ価格にのみご注意ください。
 「そんな、私がコスプレ依頼とか受かる訳ないじゃないですかー!」っていうほらそこのあなたですよ。
 それでは、よろしくお願い致します。

  • 私、コスプレなんてしませんから!(フラグ)完了
  • GM名
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年02月11日 22時00分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費200RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

嶺渡・蘇芳(p3p000520)
お料理しましょ
鬼桜 雪之丞(p3p002312)
白秘夜叉
※参加確定済み※
ルチア・アフラニア・水月(p3p006865)
高貴な責務
エルス・ティーネ(p3p007325)
祝福(グリュック)
※参加確定済み※
マギー・クレスト(p3p008373)
マジカルプリンス☆マギー
ニーヴ・ニーヴ(p3p008903)
孤独のニーヴ
黒水・奈々美(p3p009198)
パープルハート
リーラ ツヴァング(p3p009374)
蠱惑可憐な捕食者

リプレイ



「だ、だまされましたぁ!」

 『蠱惑可憐な捕食者』リーラ ツヴァング(p3p009374)の悲痛な声が響く。しかし残念ながら目の前のそれがかき消えてくれるわけもない。
「コス……プレ……? はい????」
 呆然と『「Concordia」船長』ルチア・アフラニア(p3p006865)が書き置きを眺めるが、いくら見たとしても文字が変わることはない。
「あのクソマスコット……こ、こんなお仕事持ってきて……!」
 目の前のウォークインクローゼットにわなわなと震える『パープルハート』黒水・奈々美(p3p009198)
の傍らにその『クソマスコット』はいない。逃げたか? 逃げたな。今頃はどこかでほくそ笑んでいるに違いない。
(いやでも……魔法少女のドレスだって十分コスプレっぽいし……今更?)
 奈々美は自分の姿をちらりと見下ろす。黒を基調に紫を差し色とした――一般的にゴシックロリータと呼ばれる服装。この多種族混在する混沌だからこそツッコまれにくいものあるだろうが、もと世界じゃ立派にコスプレである。下地がある奈々美からすればこの先のコスプレとて耐えられる代物なのでは?
「どうして……どうして最近こんなのばかりっ」
 ラサの仕事だけどッと『砂食む想い』エルス・ティーネ(p3p007325)が唇を噛み締める。言った。確かに自分は『ラサの仕事だから何でもやるわ』って。でもどうして狙いすましたように羞恥心を煽ってくるのか!
「随分と近代的な作りなのねー……」
 その傍らで『スライムバスト』嶺渡・蘇芳(p3p000520)は現実逃避するようにウォークインクローゼットやら奥の更衣室やらを覗き見る。彼女も近頃こんな依頼が多いのであった。どうして。
 『小さな決意』マギー・クレスト(p3p008373)もマギーで「少し特殊なダンジョンの調査」としか聞いてこなかったばっかりに目を回してしまっている。これ現実? 実は夢だったりとか。

 しないので頑張りましょう。

 思わず遠くを見そうになった『玲瓏の壁』鬼桜 雪之丞(p3p002312)が小さく咳ばらいをする。どれだけ嫌がろうと受けた以上は成功に向けて尽力するのがハイ・ルール。ならば完遂するのが筋だろう。
「他の遺跡よりは目立った罠も無さそうですし……危険度は低いかも知れません」
「でも、着ないとデメリットですよ……?」
 マギーが書き置きを見て呟くが、むしろ着る『だけで』デメリットを回避できるのならば良いのではないだろうか。痛い思いをすることもない。……心は痛いかもしれないが。
「見目麗しいお嬢さん方が着飾るのは良いんじゃないかな。……これ、ボクの方が大丈夫?」
 『孤独のニーヴ』ニーヴ・ニーヴ(p3p008903)が首を傾げる。そう、彼はこの中で唯一の男性枠である。それもショタとかではなくて立派に成人した男性の体を持つ者である。ガタイが良い、という程でもなかったのが救いか。救いか??

 ――まあ、何はともあれ。皆でクリアに向けて頑張りましょう!



(自分の肉体を着飾るのは初めての体験だ)
 羞恥心がない訳ではないけれど、初めての体験はそれと同じくらい、いやそれ以上に二―ヴのわくわくと心を躍らせる。こんな体験、電脳空間にいた頃はなかったものだ。
 ひとつ懸念があるとすれば――女性用しか用意されていない事ではあったが。
「でも、なんか……嫌ねぇー」
 蘇芳は自分に合いそうな服を何とか見つけて更衣室へ。サイズ展開が広く、製作者の何としてもコスプレさせるぞという意気込みが見える。怖い。ちょっと信じられない。
(だって私みたいな体型にも合うなんt)
 むちっ。
「……」
 たらりと冷や汗をかく蘇芳。ちょっと製作者、サイズ合わないんだけど。胸周りが一番大きい服でもきついんだけれど。収まんないんだけれど。大丈夫か?
 そして同じような事が起こっている隣の更衣室。奈々美は半泣きで必死に服の布を引っ張っていた。
(な、何で誂えたかのように紫色なのよぉ……)
 彼女らしい色合いのバニースーツはサイズもぴったり――と言いたいところだったが、結構キツい。あちこちがムチムチとしてしまって羞恥心を煽る。
「キツいのはラーメンの食べ過ぎじゃないかって、だって……は?」
 奈々美は聞こえてきた声をそのまま復唱し、あれっと顔を巡らせる。どこかに雲隠れしていたはずのクソマスコットが、そこに。
「よくも騙してくれたわねぇ……!」
 眦を吊り上げる奈々美だったが、いずれにせよもう攻略はスタートしているのである。ここで1人のこのこ帰るようなタフな精神はしていなかった。
「えっ際どいんだけど。着るの? マジ?」
「これは……すごく……!」
 色々な場所から震える何とも言えぬ声が上がり、しかし皆恐る恐ると言ったていで出て来る。ここにいるのは同士だ、大丈夫――。
「ヤバいんだけれど」
「タイツも気休めですね……」
 ルチアと雪之丞は顔を見合わせる。雪之丞はまだタイツを履いているがルチアはそれすらない。きわっきわを攻めに行ったデザインだ。
「う、う~……」
 そんな中、遅れて更衣室から出てきたリーラが呻き声を上げる。腕も足も出した状態で、しかし目隠しと拘束ベルトまでは外さない。彼女なりの意地である。指示でもない限り外してやるものか!
「み、皆さんお揃いですね……」
 その後から出てきたのは垂れ耳黒兎のマギーと、そして最後に二―ヴである。彼はほぼ一番乗りで更衣室へ入ったのだが、最後になったのはワケがあった。
(まさか、ホットパンツもないとは……)
 考えてみれば女性がホットパンツなどを履くわけもなく、そしてここにあるのは女性用のみである。流石にハイレグではないバニー衣装を持ってきたのでこのままでも最悪――本当に最悪――どうにかなるが、心もとないことこの上ない。
「致し方ないです。ここは、腹をくくりましょう」
 雪之丞の言葉にエルスも頷く。こんな際どい服、この層を突破してさっさと脱いでやろうではないか。
 更衣室を抜けた先には大きな扉があり、そこを開くとまるでカジノのような大広間に出る。最も、そこで蠢くのは人の形――よく見るとディーラーのような姿を模した――スライムであったが。
 それらは扉が開いたことに気付き、一斉にイレギュラーズたちの方を見た。蘇芳がそれを見てにっこりと包丁を取り出す。
「そういえば、スライムの調理法に試行錯誤してたのよねー♪」
 訳:ちょうどいい材料があるじゃない。
 スライムを斬り刻みながら前進し始めた蘇芳に続き、他の一同も前進し始める。雪之丞はギガクラッシュを叩きつけながら辺りを見回し、出口となりそうな扉がないかと目を凝らす。その耳に――ビッ、と引きつれるような音が入り込んだ。
(! タイツが……)
 網掛けタイツは繊細だ。ほんの少し引っ掛けるだけでこれは破けてしまうものであったらしい。これから動けば動くほどどんどんほつれて行くだろう。その末路を想像して雪之丞は首を激しく振る。
「早期脱出すれば問題ありません。ええ、きっと」
 そう自らへ言い聞かせるその背後からスライムが迫る。それを思いきり蹴り飛ばしたリーラは肌の上を滑る空気にぞわりと背筋を粟立たせた。
「あぁ! すーすーするぅっ」
 その頬は上気し、瞳こそ見えないが周知に染まっているだろうことが分かる。うさ耳が震えに合わせてふりふり揺れている姿は可愛らしいが、いかんせんそのせいで技にキレがない。早く、早く出口を見つけないと――!
 ルチアが回復支援をする傍ら、二―ヴもライトヒールで積極的に回復していく。このスライム、弱いが攻撃してきた時の感触は結構気持ち悪い。皆も同じように思っているのだろう、撃破速度は兎も角として倒さねばならない意志はかなり強い。
「は、はやく扉をっ」
 精密射撃でスライムを近づけまいとするマギーだが、そのパンツの短さが気になって仕方がない。必死に生地を下へと伸ばしていると、腕へねとりとスライムが絡んでくる。
「ひえぇぇ……っ!?」
「動かないで!」
 エルスの鎌がスライムを断つ。マギーが解放されたことを認めた彼女は手を差し出した。
「大丈夫?」
「溶けなくて良かったです……」
 何がとは言わない。でも伝わるのでエルスも「そうね」とそれ以上の深追いはしない。そんな彼女はバニーさんについて特段羞恥心を抱いていない様で、その表情は至って普通だ。
「? 鉄帝みたいな寒い場所じゃなくて良かったとは思ってるわよ。そうじゃない??」
 なるほど、次層以降に期待しよう。
 そうこうしているうちに開く扉――正解以外はダミーらしかった――が見つかり、一同はそちらへ向かって動き始める。奈々美もまたブラッグドッグで牽制しながら徐々に移動を始めていた。
(味方も強いし……これならなんとかなるんじゃないかしら……)
 ――読者諸君は覚えておくとよい。これが『フラグ』である。
「っ、」
 唐突に背中をどろりとしたものが流れる感触。ひぇ、と奈々美はその身を硬直させて、それからぎこちなく首を巡らせる。大きく体を伸ばしていたスライムはそんな奈々美の体へねとりと降り注いだ。
「い……え、あ……っ!?」
 口をパクパクさせて悲鳴すら出せない奈々美はパニックになりながら手を伸ばす。何だこれ気持ち悪っ!?
「こちらです!」
 雪之丞とマギーが揃ってその手を掴み、スライムから強引に引きずり出す。扉を閉めることでスライムを阻止した一同は、隙間から侵入してこないことを確かめてから大きく息を吐きだした。



 はいそんな第2層。用意されていた服を纏ってイレギュラーズたちは1層より比較的早く更衣室を出る。二―ヴはロングドレスをなびかせ、何処か安心したような表情を浮かべた。さもありなん、1層がひどすぎる。
「いいわねー、安心できるわー♪」
 布面積の多さに喜んだのも束の間、蘇芳はスンッと真顔になった。
 百歩譲ろう。背中が開いているのは良い。ちょっとスースーするけど。だがしかし、それよりも。
「――なんでこのサイズはミニスカートしかないのー?!」
 蘇芳の悲鳴じみた声が良く響く。雪之丞はそんな彼女を見て、それから自身を見て、それからすっと視線を逸らした。
(これが、めいど服。というものですか)
 なんだか猫耳と尻尾のついているセットだった。これはこの際、知人に似ているから良しとしよう。だがしかし、どうしてこれも蘇芳と同じように丈が短いのか。ちなみにルチアも同様である。
「露出もういいでしょ……? どうして??」
「わからないわ……この可愛い飾りもいらないのに……」
 1層を余裕で突破したエルスが表情を赤らめる、その理由はその頭についている猫耳であった。雪之丞ともお揃いである。が、絶対に似合わないはずのものをどうして付けねばならないのか!
 ここも早々に抜けてしまおう。動き出したイレギュラーズたちは練達にでもありそうなお掃除ロボを目にする。その迫ってくる様子たるや、これが2層の敵らしい。
「もー、この階も『お掃除』しましょー」
 蘇芳の言葉に頷いた雪之丞は武器を片手に、もう片方の手は短いスカートを押さえる。とてもじゃないが普段のような体勢になったら丸見えだ。
「それでは扉探しをメインに頑張りますね!」
 ミニスカパニエ風のメイド服を纏ったマギーは躊躇なく走り出す。ヘッドドレスにくっついたリボンがひらひらと揺れる中、彼女の表情に羞恥はない。何故なら――これ、実はキュロットなのである。
「まぁこれくらいならマシですねぇ」
 リーラもクラシカルタイプのメイド服に身を包んだおかげで技のキレを取り戻している。相変わらず目隠しと拘束具があるのは彼女らしさという事だろう。
「ね、もう外したらダメかしら……」
「もう許してぇ……」
 エルスが情けない声を上げる隣では、奈々美も奈々美で――一番露出が多いのではないだろうか?――肌色の多い衣装を纏っていた。ちょっと動くだけで見えそうなそれを必死に手で隠しながらブラックドッグをけしかける彼女は早くここから出たいと視線を彷徨わせる。
「ありましたー!」
 そこへ神の声ならぬマギーの声。皆がロボたちを牽制しながら喜び勇んで駆けていくが、奈々美はその後ろをモタモタと遅れてついていくしかない。
「は、走ったらぁ……!」
 見える。何もかもが見えてしまうかもしれない。けれども走らなければ皆に追いつけない!
(どうして!? これどう見てもえ、えっちぃゲームとかに出て来そうなデザインじゃない!)
 遺跡の制作者は何を望んで衣装を作ったのか――それは未だに分からない。




 さあようやく次の層。中々深い場所まで来たが、ここには更衣室しかない。しかも『何故か』それぞれの個室にメンバーの名前が記載されている。
「ここに入れってこと……?」
 ルチアが首を傾げながら入っていく。他のメンバーも同様にそれぞれの個室へ入っていった。個室はこれまでとなんら変哲なく、強いて言うなら既に衣装が置いてある。それをなんとなしにとったルチアは目を見張った。
「これは……紺色の……」
 ――スクール水着である。しかもひらがなで『るちあ』って名前入り。どうしてとかいつのまにとかもうツッコミは疲れるのでやめた。
 空を仰いだルチアは覚悟を決めたのか、スクール水着を力強く握る。
「やってやろうじゃない。着りゃいいんでしょ!!」

 尚、彼女はまだ知らない。これを着てファッションショーもどきをやらねばならない、なんて。

「次は何かしらねぇー」
 蘇芳は蘇芳でもうだいぶ目が死んでいた。せめて露出は辞めて欲しい。ミニスカとかいう年齢じゃないんだって。
 そんな彼女が手に取った衣装はなんか布地が多そうで、何か見おぼえあるような――。
「う……嘘でしょー!?」
 エコーの響いた悲鳴が更衣室を満たす。いや、これは本当に無理だろうって。
 それはバニーでもメイドでもユリーカの服でもなく。……再現性東京希望ヶ浜、希望ヶ浜学園の制服であった。
 彼女の悲鳴はエルスの方へも聴こえ、彼方も何か起こっているのだと察しながらエルスは姿見を見た。恥ずかしくはないけれど、この衣装を着るのは複雑だ。
(神様嫌いな私が、シスターだなんてね……)
 スリットやガーターベルトはこの際気にしまい。そう意気込んで出たエルスを待っていたのは自身を見せつけるような、あの、花道があるステージである。
「え?? モ、モデル……???」
 歩くのか、あそこを。どうしてとか何故とか頭をめぐるけれども――もうラサの為ならどうとでもとエルスはどこかヤケのようにステージへ上がっていったのだった。
 その後に出てきたのはマギーである。ここまでで慣れたかと思われたコスプレも、新たな衣装を見ればやはり慣れないもので。ミニのタイトスカートと白衣で女医姿とめかしこんだマギーはくい、と眼鏡のブリッジを上げた。
 エルスの姿を見たのでここで何をすべきかは理解した。いかんせんぺったんなので色気は出せないが、ならば違う方面から攻めてやろうではないか!

「なんというか……これで良かったのかな」
 疑問を呈するのも仕方ないと思う。二―ヴはセーラー服なるものに身を包んでファッションショーへ望んでいた。いや、変哲もない服なのだけれど。女性用のそれを成人男性の肉体が纏っている時点でどうなのか。製作者は何を望んだのか。答えは出なくともやらねばという意気込みで二―ヴは1歩を踏み出す。
 それを影から見ていた奈々美は――今にも逃げ出しそうだった。
(む、むり。マトモじゃないわ……死にたい……)
 覚悟を決めてメタリックなレオタードを着てきたはいいものの、どう見ても悪落ち姿である。心まで堕ちてしまわなければあんな場所に立てるはずもない。
 けれども。
「ええい……やけくそでいくわ……!」
 心の重症待ったなし。奈々美はもはや泣き笑いのような表情でステージへ上がっていった。
「これは……どうして」
 雪之丞は自らの纏った姿に頬を赤らめる。煽情的な着物――花魁と呼ばれる者たちが纏うそれ。しかも憧れの人が着ていた衣装そっくりそのままという不思議な巡り合わせである。
 魅力と同時に羞恥も覚えよう、だが。
「毒を食らわば皿まで、ですね」
 もう戻れなどしないのだ。ならば先に待つファッションショーで魅せてやらずしてどうするか!
 雪之丞は用意されていた扇子を手に、最後の戦場へと赴いたのだった。

 さて、残るはリーラだが。
「馬鹿ですかぁーーーー!!」
 今日一番の怒声、いや悲鳴か。メイドもバニーもかすむような衣装に、リーラはそれを破らんばかりの握力で握りしめる。めちゃくちゃ布面積のない、紐と言っても過言じゃない――マイクロビキニ。
 リーラはぺったんである。絶壁である。まな板と言っても良い。そんな自分に!! これを着ろと!?
 しかもご丁寧にこれまで意地でも外さなかった目隠しと拘束は外すよう指示書が置かれている。どういうことだ。
「ふ、ふふふふ……!」
 ゆらりとリーラは立ち、服を脱ぎ捨てる。やらねばならぬのだ。やるしかなかろうよ。

 結果として、一同は遺跡を踏破した。その先に合ったものに彼女らは束の間宝かと心躍らせたが――それが隠し撮りされた自身らのチェキだと気づいた瞬間、それを切り刻み燃やし尽くしたという。

成否

成功

MVP

黒水・奈々美(p3p009198)
パープルハート

状態異常

ルチア・アフラニア・水月(p3p006865)[重傷]
高貴な責務
黒水・奈々美(p3p009198)[重傷]
パープルハート
リーラ ツヴァング(p3p009374)[重傷]
蠱惑可憐な捕食者

あとがき

 お疲れさまでした、イレギュラーズ。
 だんじょんってこわいね。

 それではまたのご縁をお待ちしております。

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