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シナリオ詳細

癒しの一時を『四季折々』で

完了

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オープニング

●摩訶不思議な温泉
 
「ようこそ、おいで下さいました」
 恭しく礼をする支配人の女性の姿に、背筋が伸びる。膝を折り、深々と礼をするその一挙手一投足が洗練されており、徹底したおもてなしの心の一端が垣間見える。
「当温泉、『四季折々』は初めてのご利用でしょうか?」
 誰かが「そうですね」と答える。普段敬語なんて用いないかもしれないが、この女将の立居振る舞いの前では普段より丁寧になってしまう。
「それでは、当施設についてご説明をさせていただきます」
 そう言う女将が貴方たちに背中を向ける。つられるように奥に視線を向けた貴方たちはそこでふと気づいたであろう。
 出迎えてくれた支配人――どうやら「女将」と言うらしい――のすぐ後ろには大きな待合室のような一角があり、その左右両端に上の階へと続く階段と下の階へと繋がる階段、計4本の階段が伸びている。一見すると左右対称、意匠の凝った佇まいのようだが、各階段の登り口前に置かれた像が全て異なるため、なんとなく落ち着かない雰囲気を醸し出している。
「この施設は4つの温泉と今私と皆様のいるこのフロア――大広間で構成されています。各温泉へはそれぞれの階段を登り降りして頂ければ辿り着けます」
 それぞれの温泉はというと、

 常に桜が咲き誇り、春特有の甘い香りを堪能できる「花見の湯」
 清流と蛍、遠くに三尺玉の振動と華を眺める「盛夏の湯」
 中秋の名月とライトアップされた紅葉を愛でる「月見の湯」
 柑橘の香りと銀世界に彩られた神秘の空間「銀雪の湯」
 
 と、全く違う景色を堪能しつつ、温泉を楽しめるというのだ。
「一体どういう仕掛けなんだ?」
「それについては、企業秘密、ということでご勘弁ください」
 女将の物言いはやんわりながら、有無を言わさない響きがあった。その気迫に歴戦の戦士たる特異運命座標も押し黙る。この女将も又、海千山千の強者なのだ。
「温泉内ではお酒を含めて『飲む』ことは可能ですが食べることはできません。また、全ての温泉が混浴なので水着の着用をお願いしております」
 食事をしたい場合は大広間にある席について料理を注文すればいいとのこと。季節のものからちょっとマニアックな料理まで揃っており、フードコート顔負けの品ぞろえを誇る。
 水着のことを聞かされていなかった面々が驚きの色を見せるが「水着は当施設でも貸出しています」というので一安心だ。
「それでは皆様、どうぞごゆるりとお寛ぎください」
 最後にもう一度恭しく礼をしてフロントの奥に去っていく女将。その姿が完全に消えてから、貴方たちはそれぞれ――たまたま一緒にいた仲間かもしれない、誘い合わせてきた恋人、或いは夫婦、もしくはそれ未満――相談を始める。どこに行こうか。或いは全ての温泉を回ってみようか。

 どうやら、長い湯治の時間になりそうだ。

NMコメント

 お世話になっております、澪と申します。
 厳冬の時期ですね。中々外に出辛い時期ですが、せめて気分だけでも温泉なんてどうでしょうか?

●目的
『四季折々』の温泉を堪能する。

●『四季折々』とは
 とある境界内にある温泉。謎の力により、4カ所ある温泉から見える景色全てが異なるという摩訶不思議な施設。飲食のうち、温泉では「飲む(酒も可だが体調の悪化には注意)」ことは可能だが、食べることは大広間でしかできない。
 温泉施設の内訳は以下の通りです。

常に桜が咲き誇り、春特有の甘い香りを堪能できる「花見の湯」
清流と蛍、遠くに三尺玉の振動と華を眺める「盛夏の湯」
中秋の名月とライトアップされた紅葉を愛でる「月見の湯」
柑橘の香りと銀世界に彩られた神秘の空間「銀雪の湯」
フードコートばりの店舗を有し、施設内唯一の食事可能箇所「大広間」

 露天風呂もありますが、サウナ、洗い場など温泉にありそうなものは一通りそろえています。なお、設備に関しては全ての温泉が同じものを有していると思っていただければと思います(場所は別)
 また、四季折々の温泉は全て混浴なので水着の着用が義務付けられています。予め用意しても構いませんし、店からレンタルするのもありです。何も記載がない場合は店からレンタルしたという扱いになります。

●プレイング記載時の注意
 一つのプレイングで一つの温泉(或いは大広間)に入る形となりますので、一行目に行先をタグ指定してください。
(花見の湯:【花見】、盛夏の湯:【盛夏】、月見の湯:【月見】、銀雪の湯:【銀雪】、大広間:【広間】)
 二行目には同行者、或いはタグを使用し、三行目から本文を記載願います。
 水着の指定がある場合は、本文での起債をお願いします。


【銀雪】
同行者:p3p00××××
一緒に温泉入ってあったまる!

それでは、温泉で存分に癒されてください。

  • 癒しの一時を『四季折々』で完了
  • NM名
  • 種別ラリー(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年01月20日 21時35分
  • 章数1章
  • 総採用数5人
  • 参加費50RC

第1章

第1章 第1節

耀 澄恋(p3p009412)
六道の底からあなたを想う

『およめさん』澄恋(p3p009412)は、この場所に並々ならぬ決意をもって臨んでいた。
「なんとしても……」
 新年、オイシイご飯、仕事のない日々。堕落し、狂った生活リズムの果てに乗った体重計の数字は絶望に近い数値を弾き出す。
 ここは「さうな」とやらの力を借りて夏までに身体を絞っておかなければ、「あの方」に「月が綺麗ですね」と言ってもらえない。そんなことは断じて避けなければならない。「あの方」が特定の誰を指すのかわからないけど。

 とはいえ澄恋、さうなの知識は皆無に近い。何も知らないまま懐に飛び込むのも怖いけど、そうも言ってられないと意を決して箱の中に侵入、
「あつっ!?」
 一瞬で一旦退出。違うんですこれは勇気ある撤退なんです。
「え、え、え!?」
 茶碗蒸しを作る時の蒸し器ですかあれは? そう言いたげな視線で目の前に聳える灼熱地獄に対峙する。
「いいえこれしき、耐えてみせます!」
 全ては、来年またこの月見の湯でロマンチックなひと時を過ごす為。そのためなら例え火の中さうなの中。眦を決し、いざ、再びの高温へ。
 微かな知識を頼りに、座る。ただ、じっと座り汗を流す。

 彼女がさうなに入って暫くの後、大広間にサウナに長く入り過ぎた挙句のぼせて倒れた女性が一人担ぎ込まれたとか。

成否

成功


第1章 第2節

ラクロス・サン・アントワーヌ(p3p009067)
ワルツと共に

 ラッシュガードを着込み、花見の湯に颯爽と現れたのは『ふたりのワルツ』ラクロス・サン・アントワーヌ。深く息を吸うと、桜の香りが鼻腔をくすぐる。
「本当に桜が満開なんだね」
 露天風呂に身体を浸す。爽やかな陽気に突きさす蒼天が眩しい。少し肌に纏わりつくような泉質は程よく暖かく、僅かにピンク色に染まっている。
(眠くなってしまいそうだ……)
 暖かさが眠気を誘う。うつらうつらとしかけたその時。
 やや強い一陣の風が、縫うように駆ける。まきあげられた花弁が、ふわりと舞う。
 ピンク色の雪が、アントワーヌの前で踊る。
「これは……絶景だね」
 ハラハラと落ちるその景色もまた儚くて、淡い。どこかでは桜の花びらを殊に愛し、愛でる文化があると聞いているが彼女にもその言わんとすることが理解できる。
「……うん、決めた」
 いつかまたここに来る時は、必ず誰かを誘おう。脳裏に浮かぶ人は何人もいる。誰と来ても、きっと楽しい思い出が紡げるはずだ。
「でも、まずは」
 全てを目に焼き付けよう、寝てしまうのはもったいない。
 そうして出来上がった思い出を、話してあげよう。綺麗な温泉で見た、綺麗な思い出を。

 桃色の湯に浸した身体も、心も、溶けるように軽くなっていく気がした。

成否

成功


第1章 第3節

デボレア・ウォーカー(p3p007395)
海に出た山師

「……」
『海に出た山師』デボレア・ウォーカー(p3p007395)は逡巡していた。白濁した銀雪の湯は、そんな彼女の前に横たわって新たな客人を今か今かと待ち構えているのだが。
(邪魔よね……この翼)
 彼女は飛行種であった。水着を着るのに困ることはなかったが、このまま湯船に身体を浸せば間違いなく羽が抜けてしまう。
 注意書きには「翼を畳んでご利用ください」とはなかったが……白いのは露天風呂の外だけで十分だ。自分がそんな視線に晒されたくはない。
 変化で翼を折りたたんでから膝までまずは湯に浸す。少し粘度のある湯が、暖かくて気持ちいい。
「……ふぅ」
 そんな声が出てしまう。お湯の温度も実に丁度良く、たまらず全身浴に移行する。
「ああ、あったかい……」
 独り言が漏れる。どろっとしたお湯の中に、疲れとかそういう体に残しておきたくないものが全て溶け出ていくような気がする。
 目を閉じてお湯を堪能していたデボレアだったが、少しずつ目を開けていく。紺色の瞳が像を結んだ先には、一面の銀世界。新たにしんしんと降り積もる雪が、少し離れたところである筈のこの場所の音まで吸い取ってしまっているかのような静寂をもたらす。
 折角だし、思いっきり羽を伸ばしたいな。物理的には無理だけど。
 
 銀雪の湯が、肩まで浸かる彼女を捉えて離さない。

成否

成功


第1章 第4節

ニゼル=プラウ(p3p006774)
知らないこといっぱい

 しんしんと雪が降り積もり、音を奪う世界の中。『知らないこといっぱい』ニゼル=プラウ(p3p006774)は一人、湯に浸かりながら銀世界を見遣る。
(なんだか、埋まりたくなっちゃうなあ)
 狐の獣種だからか血が騒ぐ感覚を覚えるが、そこは我慢。代わりに大きく深呼吸をすると、柑橘類の香りがほのかに漂ってくる。
 ニゼルも風呂は経験済み――けっして豊富とは言えないけど――だが、ここまで広い浴槽は初めてだ。勿論、露天風呂も経験がない。もっともそれは、以前に経験した川での水浴びがむしろ近いかもしれないが。
 暖かくて気持ちいい。けれど、顔だけは寒風に当てられて冷たい。そのコントラストが、不思議で、けれど嫌ではない。
 夕焼けに彩られた空からひっきりなしに降り注ぐ雪の欠片を見ながら、誰も足跡を付けない純白のキャンバスに視線を向ける。どこまでも続きそうな果てを見ていると、自分が吸い込まれそうな錯覚に陥る。
(いい景色だなあ……)
 自分が「冬」という季節を好むが故にこの銀雪の湯を選んだが、これだけの絶景を見てしまうと他の三つも気になってしまう。

「また、お邪魔しようかな」

 どうせなら全て回ってみようか。悩み始めるニゼルのうなじに迷子の雪片が一つ、舞い降りる。

成否

成功


第1章 第5節

葛籠 檻(p3p009493)
蛇蠱の傍

 本来、銀雪の湯に入る客は皆顔こそ寒いが体は温い、そういう経験を経る筈だ。だが、『神仕紺龙』葛籠 檻(p3p009493)は現在顔も体も火照っている。理由は簡単、浴槽に酒を持ち込み、風景を肴に雪見酒と洒落こんでいるからだ。
「ほれ、汝も一杯やらぬか?」
 見ず知らずの入浴客にもお猪口を勧めては、気さくに酒を酌み交わす。そうして庭先を白く染め上げる雪化粧の美しさを話のネタに盛り上がる。
 檻のいる一角は酒を嗜む入浴客が集まり、さながら小規模な宴会のような賑やかさを見せている。雪化粧の美しさにか風呂の気持ちよさにかはたまた袖振り合った縁ある面々の和気藹々さに触れたせいか、檻の尻尾はゆらゆらと上機嫌に揺れている。

 風呂を出ても檻は酒を求め、大広間に。銀雪を初めとした湯の中では酒は楽しめるが肴は、つまり食事はできない。ここらでちょいと小腹を満たしたい。
「よきツマミはあるだろうか?」
 立ち並ぶ店を見渡すと、定番のツマミから聞き慣れないものまで実に多種取り揃えている。これなら、ヒトをつまみにする必要もなさそうだ。
 まずは定番のツマミから。数ある店の中から一つを選んだ檻は、千鳥足ともいうべきちょっと覚束ない足取りでその店へと向かう。

「さて、その肴を小生に貰えるか?」

成否

成功


第1章 第6節

 こうして、温泉から出た「あなたたち」はそれぞれが見た光景についてやんややんやと話し始める。
 それぞれが見た絶景を見て、また来たいと思っただろうか。それとも、もっと色々なものを食べたいと思っただろうか、それは人次第。
「それでは、またのお越しをお待ちしております」
 去り際に女将が深く礼をした。

 硫黄の香りが、鼻に残っている気がする。

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