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シナリオ詳細

ヴァル・ベールデ共和国の野望Ⅱ〜サメ帝国の脅威〜

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●サメ帝国、永遠に不滅
 海洋王国軍の軍艦。
 一隻の大砲がずどんとサメにさく裂した。巨大なサメは、なすすべもなく悲鳴じみた咆哮をあげる。無数のサメの一部が海の上に落下していき、海の上には鉄の赤が広がった。
「はっはーーーあ! 見たか、クソ鮫どもお!
メガ・ディスペアー・シャーク、ついに仕留めたり!」
『メガ・ディスペアー・シャーク』――何隻もの船を沈めてきた怪物は海洋王国の将校タオ=セナインの手によって、この海に沈むこととなった。
 豪華客船に忍び寄るサメ。――救難信号。サメ崇拝者集団との邂逅。サメ司祭との対決――船員に広がる奇妙な病。そして裏切り――みたいなそれらしい光景は、特に何の伏線でもないので忘れてしまって構わない。
 とにかく大切なのは、『メガ・ディスペアー・シャーク』はこのときに一度死んだということである。

 メガ・ディスペアー・シャークは、たしかにこの時に絶命したのだ。
 サメ帝国の狂信者たちは、奇妙な被り物を被りながら、なにやら意味不明なことを叫んでいた。
『ハイ・メガーーーーー!!! ミル・スティア・ラーー!』
「サメ崇拝者どもめ……なんといってる?」
『ミルディ・スティア・ラーーー! シナ・ナイン!』
「メガ様は不滅であると! 帰ってくると!」
「……あの姿を見てもまだそのようなことを言うのか? 正気とは思えんな」
 狂信者たちの目はぎらぎらと輝いていた。

●『ヴァル・ベールデ共和国』の再来
「紫電くんっ、『ヴァル・ベールデ共和国』を覚えているかね?」
(よし、帰ろう)
『願いし黒刀』紫電・弍式・アレンツァー(p3p005453)はビーキュウ・エイガスキーと他人のふりをしようとしたが、がっしりと両肩を掴まれてしまった。
 ローレットの入り口には、海洋軍人の姿も見える。
 事はどうやら割と大事らしい。
「知っての通り、ヴァル・ベールデ共和国とは、様々なオーパーツを収集し、それによって世界を統一して一つの共和国を作ろうという悪の組織だ」
「新しいというか初耳の設定だな!?」
「ふむ、君たちがアクダヨー大統領の”オーブ”を破壊したのは記憶に新しいと思うが……あれがまさか人々を操る”秘宝”だったとは……」
 次々と出てくる後付け設定。なんて都合のいいことだろう。

 ヴァル・ベールデ共和国の野望Ⅰ……それは、イレギュラーズたちの活躍をカメラにとらえたエイガスキーが公開した映画だ。
 設定ブレ、意図のわからない演出、予算のなさ――約束されていたクソ映画はイレギュラーズの名演技や巨大ロボットの登場、やたらに機敏でかっこいい戦闘描写などによってこの世界にあるかもわからない映画史に巨大な爪痕を遺した怪作となった。
 サントラが良かった。
 一部ではカルト的人気を博して、一躍ある意味での有名人になったエイガスキー。
「そして、そのヴァル・ベールデ共和国は……あの「サメ帝国」と手を組んだのだ」
「サメ帝国ってなんだよ」
「説明するのですっ!」
 ずいと出てきたユーリカ。
「サメ帝国――それは、海洋王国に住み着く超巨大な鮫型狂王種を崇拝する海賊たちのことです。メガドロンのマークを海賊旗にしているのです!」
「頼む、イレギュラーズたちよ! 君たちだけが頼みなのだ! 倒したはずの……メガ・ディスペアー・シャークが、復活したのだ! だから、わかるね!?」
 きらきらとしたエイガスキーの目。
「私の勘が告げている! これは――おそらくは『怪王種(アロンゲノム)』と呼ばれる生物だ! これは絶対に大きな事件になる! 絶対に!」
 要するに……彼は、B級映画が撮りたいだけだ!

GMコメント

グラオ・クローネといえば、そうですね。サメ映画です。

●敵
海の支配者『メガ・ディスペアー・シャーク』
 滅びのアークによって突然変異した巨大な怪王種(アロンゲノム)。
 中型の船と同じほどの大きさを持ち、嵐を呼びます。
「問題ない! 敵は一体だけだ!」
「やったか!? 見たか! これが海軍の力だ!」

<天候操作「サメ嵐」>
 局所的に強烈な鮫嵐を引き起こします。竜巻を起こし、海の生物をランダムに呼び寄せるようです。

怪王種
 練達へ移籍した研究機関『プロテオミクス』がモンスターとアークの関係を調査するうちに発見した新種のモンスター種別です。
 不明点が多いですが、とりあえずクソ映画なのでそれなりにそれなりでもそれなりだと思ってください。

●場所
海洋王国ビーチ、グリーンオーシャンズ付近。
その近くには「サメ帝国」を名乗る海賊たちのすみかがあり――。

●状況
いざ退治、と海岸に行ったところ、天候は急激に悪くなり……あっあれは! サメ嵐じゃないか!
係留してある船や、なぜだかあった火薬などは自由に使っていいそうです。
ちょっと予算が増えました。

●その他エキストラ
サメ帝国の皆さん
「メガ・シャーク!!!(崇拝のポーズ)」
 サメ帝国を自称し、超巨大な鮫型狂王種を崇拝する海種の海賊たち。思い思いに奇妙な被り物をしています。
 弱いです。
 小舟や波に乗り、メガ・ディスペアー・シャークの味方をしますが、メガ・ディスペアー・シャークは構わずサメ帝国の人間を巻き込みます。
 彼らによると、『メガ・ディスペアー・シャークは不死身』で、『何度でもよみがえる』そうです。間違いなく倒したにもかかわらず……。

ビーキュウ・エイガスキー(監督)
「来たかボランティア軍! この正規の瞬間を逃すわけにゃいかん!」
 ご存知B級映画大好き監督。海洋で「鮫帝国」の陰謀を聞きつけてやってきた。
 サメ用チェーンソーを持って味方としてついてきます。
 カメラを止めるなあーーーー!(名作)

●情報精度
 このシナリオの情報精度はEです。
 おいおいジョニー、所詮はサメだろ?
 嵐が過ぎ去るまで陸上にいればいいってこった。

  • ヴァル・ベールデ共和国の野望Ⅱ〜サメ帝国の脅威〜完了
  • GM名布川
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年01月30日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚
紫電・弍式・アレンツァー(p3p005453)
真打
※参加確定済み※
わんこ(p3p008288)
雷と焔の猛犬
ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)
人間賛歌
白夜 希(p3p009099)
死生の魔女
リズ・リィリー(p3p009216)
アンラッキーハッピーガール
暒夜 カルタ(p3p009345)
花合わせ
ルビー・アールオース(p3p009378)
正義の味方

リプレイ

●『白い死神』
――「心配はいらない、もうすでに『白い死神』が犠牲者の追悼のために出撃している」

『白い死神』白夜 希(p3p009099)は小舟に乗って海の上に進む。名もなき犠牲者たちを弔うために、花輪を投げ入れる。
(ゆっくり眠って……)
 静けさをたたえていた波間が、一瞬揺れた。
 ぽつりと、希の白い頬に水滴が落ちた。
(雨……)
 希はぼんやりと空を見上げた。
「どういうことだ、嵐だって?」
「さっきまで晴れてたのに……」
……予想を裏切らず、巨大なサメが襲来する。
「う、うわあああああーーーー!」
 何をしようと言う間もなく、小舟ごと腹の中に収まった。
 絶望の空気が、辺りに立ちこめていた。

●『ヴァル・ベールデ共和国の野望Ⅱ?サメ帝国の脅威?』
 これはノンフィクション映画。
 偉大なる勇者の物語。
 巨大な怪王種の脅威に立ちむかった彼ら、
『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)
『戦神護剣』紫電・弍式・アレンツァー(p3p005453)
『シャウト&クラッシュ』わんこ(p3p008288)
『銀河の旅人』ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)
『白い死神』白夜 希
『アンラッキーハッピーガール』リズ・リィリー(p3p009216)
『花合わせ』?夜 カルタ(p3p009345)
『薔薇の少女』ルビー・アールオース(p3p009378)。
 彼ら8名に花束を。

●死神がやられた!
「あの『白い死神』がやられるなんて……っ!」
――対策本部(見覚えのある部屋)はひどく混乱していた。
(海洋で狂王種……いや、今回の依頼の場合は怪王種か、それが暴れているのはいい、手に負えないのを討伐するのはオレたちの仕事だ。……仕事、なんだが)
「……よりにもよってメガ・ディスペアー・シャークだと!?」
「どうして、怪王種を相手に、映画なんかと、撮ろうとしてしまいましたの……!?」
 紫電とノリアは頭を抱える。正常な反応と言えるだろう。
「おおーっ! こちら海洋の巫女様ですか! なんと神々しい尻尾……」
「ど、どうしてそうなりますの……!? いえ、もう、自棄ですわー巫女ですわ……」
(ちくしょう、海洋案件となると断れねえ……)
 やけっぱち半分、無明永夜を握る紫電。
「サメ帝国め、もう一度痛い目を見ないと気が済まないようだな……!」

「海の支配者『メガ・ディスペアー・シャーク』! あんな大きいサメ見たことないよ」
 映像を見て、目を丸くするルビー。
 もちろん冒頭のシーンを撮るために監督はカメラを構えていたのだ。
「! ああっ! サメ嵐から海の生物やサメ帝国の人がたくさん飛んできて凄く危ない!
ホントに映画みたい! ……なんとかしなきゃね!」
「うむ、素晴らしい意気込みだルビー君……!」
 ふむ、と映像を見ていたヤツェクがつぶやいた。
「サメと帝国と来れば次に来るのはゾンビだ。つまりこれはサメゾンビ帝国VSイレギュラーズ……」
「SOREDA!」
 SOREDA?
 こいつが元凶なんじゃないだろうか。紫電は疑いのまなざしを向ける。
「――わかっている。ヴァル・ベールデ共和国の連中は倒さなけりゃならない。だろう?」
「ああっ、そうだとも!」
 ヤツェクはあえて言わない。
 そう。共和国どこいったというツッコミは野暮だ。映画の続編は大分そういうものだ。
「お呼びですかっ! 監督!」
「わんこ君、来てくれたかねっ!」
「いぇーいご機嫌ようデス、エイガスキーサマ!!」
 わんことハイタッチを決めるエイガスキー。
「撮影と聞いて我慢できずに駆けつけたわんこデス、こっちは武器のチェーンソー」
 ブイイイインと音を立てているチェーンソーはすでに扉を破壊していた。
「アメイジング!!!」
 なるほど、この映画の方向性は分かった気がする。
「……とりあえずノリとテンションでいくわ!」
 リズは持ち前の明るさで頷いた。
 せっかくならば楽しい映画にしたい。
 ほいほいと火薬を運び込んでいくリズ。
「船と火薬が使い放題(?)なんて太っ腹ね!
せっかしだし盛大に使っちゃいましょ♪」
「ではわんこも!」
「イエーーース、派手に、派手にやってしまおうリズ君!」
「はにゃあ、これが怪王種、最近出てきたカルタ達の敵なのですねぇ。えっ、これ撮影するんですぅ?」
 猫耳をあざとく傾けるカルタ。
「ガチな戦闘でもありつつ映えと撮れ高を意識しろだなんて、こ、こんなん燃えますねぇ?!」
「カルタ君っ、この映画に出演すれば……きっと!」
「はい! カルタ、きっとこれをきっかけに銀幕の女神としてスターダムへとのし上がっていっちゃうのですぅ」
 そのスターダムにはひどい映画しかない気もするが、しかし、カルタは燃えている。
 目指せ、金・権力・顔の玉の輿。映画スターになってしまえば、きっとその夢には一歩近づく。
「そのためには多少のヨゴレは許容範囲なのですぅ」
「よく言った……っ! よし、キミはサブヒロイン役だ!」
「くっ、負けねぇですよ」
 ぎりりと唇を噛むわんこが闘志を燃やしている。
「リズ君はそのまま、魔法少女で行こう! ルビー君は……ヒーローの役だ! ヒロインのノリア君、がんばってくれたまえ!」
「はえ!?」

 緊急警報――。
「大変です! また一隻がやられました!」
(――分かっている。これは船の中で暇つぶしに見ていたバカ映画ではなくて現実だ)
「ああ、難しいがやってみせるさ」
 ヤツェクはワンダラーズ・ラックを羽織った。
「頼んだ、ヤツェク君! 船と火薬を買いすぎてBGMに予算がないんだ!」
 ヤツェクのギターが緊張感のあるBGMを奏で始めた。

●サメ、現る!
「んぅーーーー」
 カルタはきわどい水着を着て、空に向かって伸びた。
 ナイスバディのお色気担当。それがエイガスキーの考えた最強のヒロインだった。
「おい、寒くないか? サメの嵐が……」
「いいですか? サメが襲ってくるわけなんてないですぅ」
 ヤツェクの忠告を無視して、ココナッツジュースをストローで飲む。
 トラブルメーカーなのは全て台本が悪い。
「がっはっは! そうでありますな! サメが襲ってくるなんてありえない!」
 カルタにデレデレする海軍。
「カルタ殿はおきれいですな。おいくつですか?」
「んー、忘れちゃいましたぁ♪ 誰ですか童顔って言ったやつ。精霊なめんなですぅ」
「って、おい海軍連中、そんなベタな死亡フラグを建設すると……っ!?」
 ヤツェクのギターが緊迫感のあるBGMを奏で始め、それによって人々はサメが来ることを理解する。
 死亡フラグに向かって、サメがまっしぐらにやってきた。
 圧倒的に巨大なサメ。
 あれが、メガディスペアシャーク……!
「どうして空からサメなのか……まあいいか、戦うしかないな」
「いくよっ♪」
 リズは胸元から赤い宝石を取り出した。
 その宝石は短剣へと変じる。ラズベリル。深夜帯すれすれのきわっきわの変身――!
 サメの水しぶきがかろうじて対象年齢の上昇を防ぐ。

「らぶりー ちぇんじー らずべりー
すちーるはーと あんぶれいくっ
不運に負けずにキラメキシャイニー!
魔法少女ラブリー☆ラズベリー
ピカッと参上! ヨロシクねっ♪」

 ビシっとポーズで笑顔とウィンクを決めるリズ。
 若干照れているのはご愛敬。
 それらしくきらきらしい演奏を難なく決めたヤツェク。
「『不死身サメ vs ネコミミ魔法少女』よ♪
サカナは私のエサになるニャン♪」
「う、うおおおおーーー!」
 オーディエンスは大盛り上がりだ。
(負けてられないですぅ!)
 カルタもまたお色気ポーズを決めた。

(で、実際問題どうやって倒すかなんだが……いやこれデカすぎでは?)
 刀を構えながらも突破口を考えあぐねる紫電。
「ここは、私がいきますわー」
「ノリア様っ!」
 進み出たノリア。
「これは……きっと、神の怒りに触れたのでしょう……どうか、お鎮まりくださいですの!」
 ノリアは大海の抱擁に身を委ねた。
 ノリアは、神秘的に透き通って輝く。
「いいぞいいぞいいぞ!」
 チラリと目を伏せて、カメラが自分の顔をアップにしているだろうことを確認し――。
 こっそりと、?化を解いた。
 何かの供物。
「!!!」
 つるんとしたゼラチン質のしっぽに、サメはまっしぐらに近寄ってくる。
 約束された食材適正。
(サメの怒り、受けいれましょう……)
 サメはノリアを一飲みにした。
「なんてことだ……巫女様まで!」
「ああ……ああ!」
 絶望に次ぐ絶望。
「きゃわー☆ 怖ぁい、守ってくださぁい!」
「い、今はそれどころでは!」
 砲手に抱きついたカルタ。むにゅんとした感触に大慌ての海軍。怒られて、わざとらしくウルウルと涙を浮かべるのだった。
 そのときだった。サメ嵐が接近してきたのだ。
「きゃー!」
「カルタ!」
 胸元が露骨に覗くサービスシーンのノルマをこなしながら、カルタは飛んでいった。
「あっという間に仲間が3人も……コイツァ絶望的ですぜ!」
「なんてこった……若い奴らが……」
 絶望のBGMを奏でながら、帽子を深くかぶり直すヤツェク。
「……行くぞ。準備は良いか? エイガスキー」
「ああ、鳩は用意してきたともっ!」
 パンくずをまき散らしながら銃撃戦の気配にはしゃぐエイガスキー。
「サメ嵐はサメの集合体。つまり、生き物だ。殺れる」
 悲壮な曲調が一転、情熱的なギターに変わる。
 ソリッド・シナジー。
 R.S.Cがエネルギーを帯びて光り輝く。
「サメ嵐にゃビームの嵐をぶつけるんだ!」
 銃撃に交じって、鳩たちが一斉に舞い上がった。
 サメへ向かって、逃さじの雨が降り注ぐ。海産物がびちびちとはじき出されていく。

 紫電が操縦した漁船が、的確にサメの嵐をかいくぐり接近していった。
 人を食らう化け物に遠慮は必要ない。
「食らえっ!」
 紫電の無明永夜が、大きくサメを両断して波を断ち切る。
「キャヒヒヒ……! 追撃、いっちゃいますよお!」
 ばるるんばるるんとエンジン音を響かせて、バトルシップわんこ艦隊がサメをかいくぐりサーフィンをする。落ちてきたマグロを足場に、思い切り飛び上がる。
 帝国兵どもは波に乗れずにそのまま落下していく。
「とにかくやることはひとつデス。あれこれ考えずサメをぶっ倒せ!!!」
 爆風の勢いに乗って、そのままサメを斬りつける。
 わんこショータイム。指先が次々とサメへと降り注いでいった。
「チェーンソーと銃撃のコラボだぁ!! 華麗に馬鹿やろうぜ!!」
「画面映えは爆発だぁー!」
 魔法少女リズは火薬を投げると、それに向かって魔力弾を放出する。
 熱と爆風の影響も、リズはものともしない。
 スチールハート。むしろ困難を前にすればするほど燃え上がる!
「やっぱり、見込んだとおりだったか――」
 ドM――クソ映画適性がある!
 大量の焼き魚が降り注ぐのだった。

 勝った。
 夕日に向かって、サメが沈んでいく。
 ゆっくりと嵐が静まっていくかに、思えた。
「やったか!?」
 だが……。
 再び、ぽつりと雨が降り出した。
 サメは、――2体いるっ!
「そんなっ……!」
「ふはははは! サメ帝国、万歳っ!!!」
 帝国兵たちがはしゃいでいる。
「オーーーーノオオオオウ!」

●反撃の狼煙
 撮れ高が足りなかったから――じゃないよな?
 いやそんなまさか。
 紫電は空中から二匹目のサメを睨んだ。
「この世界は狂っている……!」

 シーン変わって、体内。
 冒頭、思いっきり丸呑みされた希がいた。
 霊魂に語りかけ、サメの犠牲者達を呼び起こしていく。
「そう……それじゃあ、ここから出て……一撃、当てたいよね。
騙したようで悪いけど……。この船には少量だけど爆薬が乗せてある……」
 爆薬の入った樽を、霊魂たちがわっせわっせと転がしていく。
「あらー?」
 ばしゃばしゃと泳いでいるノリアと出くわした。
「……食べられたんだね」
 とりあえず、のんびりとお茶を飲んで休憩しつつ、互いの状況を整理する。
「こ、この旋律は……」
「ああ、懐かしい、ような……いや、……思い、出せない」
 死神の唄。長く思いとどめておくことは出来ない。
「素敵な歌ですのー」
 ノリアもゆっくりと口ずさんでみる。泡のように消えていく歌。
「……? あら、この人たち、まだ生きてますわねー」
「ほんとだ。じゃあ、本当にサメの餌になりたくなかったら、ついてきて」
 希は生存者をほいほいと回収していく。
 身体が揺れた。
「動き出したようですわねー、先に行きますわー。この貝殻を届けなくてはなりませんのー」
 熱水噴出杖で勢いよく口から飛び出していくノリア。
「!」
 サメは、美味しそうな尻尾を噛み損ねた。
(来る)

「紫電さん……紫電さん……」
「! この声は……」
「わたしの魂が、消えてしまう前に……、力をさずけましょう……」
 ノリアの姿。
 海の加護をまとった、不思議な貝殻が、力を授ける。
 水鉄砲が、サメと、エキストラたちをまとめて押し流す。追い風のように波が揺れる。
 この絶望的な状況にあっても、彼らは攻撃をやめなかった。

「今だ……」
 紫電は海の加護を得て、最終手段として残しておいたガンブレイズバーストを握りしめる。熱で蒸発して波が消えていく。
 隼刃《星落》。その太刀、星を落とす隼の如し――太刀を構えた紫電は大きく跳躍して距離を詰める。
 一撃。
(炎獄と高火力をぶつければいやでも爆発するはずだ!)
「ああ! そんなことをしたらっ……!」
 リズが顔を覆った。にやりとわらう。
「死ぬほど痛いぞ」
 危険は承知の上、痛み分け、だ。
「サプライズプレゼントイェア!」
 波に乗って、距離のある場所から――わんこの毒物仕込みの刃がサメを切り裂いた。
「でけぇ体にゃ致死毒はよく効くぜ?」

 どしん、と。
 お腹に大きな衝撃があった。
 今だ。
 希は歯に向けて火をつけた爆弾の樽を転がし爆破する。
 口をこじ開け、外へ出た。
「あれは!」
「死神だ!」
「死神が……帰ってきた!」
 闇の果て『魔女の鉄槌』。
 牙は千々に砕け、降り注ぐのは血の雨だ。
 虚空より下る黒き光塊が、無風空間を作り出した。
 一瞬の凪。
 そして、その勢いは、 正義を謳う剣を砕き罪を焼く。

 爆風。
 くるりと身を翻す希とのハイタッチ。
 希の死神の指が、傷を癒やした。
「きました、きましたね、チャンスって奴が!」
 こんなこともあろうかと、わんこは余力を残していた。
「1時間じゃ映画としては短すぎるよなあ……」という監督の仕草を察して、まだ続きがあることを理解していたのだ。
 そう、残したAPはこの為に!
(ネタが割れた以上、死なないサメなど存在しねぇ!!)
 必殺のアロガンスレフト。思い切りサメの横っ面をひっぱたく。
「……行くよ」
 インフィニティーバーン。希の攻撃は研ぎ澄まされていった。
「ええ、わかりました!」
 わんこはボートを切り離す。
「最期に一華咲かせてやるぜ……ネジは拾ってクダサイネ……!!」
「わんこ……!」
「お達者で!」
(いい画の為デス、体持ってくれよ!!!)
 派手な爆発が鳴り響いた。
 仲間を失い、涙目になるリズ。
「海のバケモノめ!
大地の力を喰らえっ!」
 リズのアースハンマーがサメをぶちのめす。飛んできた熱々のサンマがぶつかってもめげない。
「ダメージがナンボのもんじゃい!」
「やーん」
 爆発のはずみで、あられのないポージングで現れるカルタ。
「生きていたか!」
 カルタがアタックオーダーで召喚したクーラーボックスがサメに直撃する。
「おっかないので、代わりにお願いしますねー」
 ブレイクフィアーが、ルビーを癒やした。
「……! わかった!」
 ルビーはエクスキューショナーの構えをとった。
 必殺の一撃。この一撃に全てをかける。
「ここはおれに任せて、早く行け!」
 ヤツェクが叫ぶ。
「頼む、いい絵を! 最高の映画を――」
 目の前に広がるサメの嵐。
(あれだけ色々巻き上げてる竜巻に飛び込んだらタダじゃ済まなさそうだけど。監督は絵がGOサイン出してるし、ヤツェクさんは人生で言ってみたいセリフランキング上位な事いってるし……うーんよし!)
 クイックアップで加速して、そのまま飛び上がる。サメよりも高く、高く、渦を飛び越して――。
 マントをパラシュートにして、急降下。
「この必殺攻撃を受けて甦る事が出来るならやってみろー!!」
 今度こそ、ついに……。
 サメが爆発四散した。

●特典映像
 スタッフロールが終わると、一転。コメディなBGMが流れ出す。
「! このギターの音は……ヤツェクさん?」
 リズがきょろきょろと辺りを見回すと、いつのまにか浮き輪に身を任せて、ぷかぷかと浮いているヤツェクの姿があった。
「やれやれだ……」
「ぷっは!」
「いたか、わんこ」
 ぐっと親指を立てる、すっかり焦げ焦げのわんこ。
「わんこ『水中行動』可能なんデス。爆破直前で海に飛び込んでも溺れ死にゃあシマセン、余波でボロ雑巾みたいにゃなるがな!!」
 ざっぱんと海から這い出すノリア。
「これで、いいのでしょうか……疲れましたの」
「おつかれ……」
 のんびりと浜辺を眺めている希。帝国の連中は連行されていく。
「いやー、お疲れだ、皆!」
 浜辺で打ち上がった魚でBBQの構えだ。
「気のせいだよな? なんか準備が良いのは気のせいだよな?」
「うぅ、服がびしょ濡れで肌に張り付いて気持ち悪いのですぅ」
 袴の裾をパタパタとするカルタ。隠されたむちむちあんよがあらわになる。あまりにセクシーすぎて、やはりR15は免れない。

成否

成功

MVP

白夜 希(p3p009099)
死生の魔女

状態異常

紫電・弍式・アレンツァー(p3p005453)[重傷]
真打
わんこ(p3p008288)[重傷]
雷と焔の猛犬

あとがき

映画の撮影、じゃなかったサメ退治、お疲れ様でした!
加工いらずのド派手な映像は再び伝説(の馬鹿映画)となり、映画界に波紋を呼び起こしたようです。

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