PandoraPartyProject

シナリオ詳細

出る杭をぶっ叩く

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●悪巧みはいつだって
「幻想は今や大忙し、あちらこちらに賑やかなものですな」
 どこかの屋敷の、とある地下室で、怪しげな男が二人、密会をしていた。
「うん、なんか色々あったみたいだよ! まあ私は見てただけなんだけどね、これでも貴族なんですけどね僕ね、全くここの領民緩すぎない? 危機感足りてなくない? まさか私めためた舐められてない?」
 あー言っちゃったぁ。みたいな顔で愚痴を聞く男は、ツルリんピカッとした頭頂部にろうそくの炎をテカらせて、ゴホンと一息。
「それで、約束のものは?」
「ん~なんだいなんだい欲しがり屋さんめそんなにコイツが……いや気持ち悪いなコレ、無し。まあ見てよ」
 と、貴族の男が壁際に置かれた石像を示す。
 それは巨大な人間のフォルムをしており、胸部がぽっかりと空洞になっている。
 それを、ハゲは頭以上に目を光らせて、興奮を隠そうともせず声を上げた。
「さすが、さすがでございます! いやぁ、あなたに頼んでよかった。噂に違わぬ手腕!」
「待ってなに噂立ってるの? 僕聞いてないよ、それ」
「え、割りとネジのぶっ飛んでると裏でコソコソ言われてますよ」
 それ悪口じゃね? という貴族の訴えはスルーし、ハゲは石像をぺたぺたと撫で始める。
 そうしてしばらく愛撫を楽しんだハゲは、おもむろに石像の膝へと足を掛け、空洞に背中を向けて乗り込んだ。
「どうだい、ゴーレムの乗り心地は」
「なんかゴツゴツしてて座りづらいですな?」
「自分の消え去った髪の毛でも敷き詰めてなよ、そうじゃないよ、動かしてみろってことだよ」
 そんなおふざけをしつつ、ハゲは両腕をゴーレムの両腕に差し込む。すると、ゴーレムはハゲの魔力に反応し、術式を自動展開する。
「おっ、おっ?」
 そうして起こる術式の光が腕に行き渡ると、以降はハゲの意思で自在に操作ができるようになった。それからハゲは、同じように脚を差し込んで体を固定すると、胸部の装甲が左右からスライドして空洞を覆い隠す。
『うわぁ、うっわーこれやっべーな! うーわー!』
「ははは語彙力」
 完成したゴーレムは、まさしく人間と同じように駆動する。歩く、走るはもちろん可能で、背後と左右の腰に空いたエラから魔力を放出すれば、スラスターの様な使い方を可能とした。
「もちろんそれは君の魔力量に依る。ガス欠になればただの石だから、気を付けるんだよ」
『わかってますとも! ……ふふ、これを量産すれば、この国は私のものということですね?』
「え、量産なんて無理だよ?」
『え?』
 マジで? と石像から聞こえる声に、当たり前じゃん、と答えた貴族は、
「魔力伝導率の高い素材は、たまたまとある遺跡から出たものだし。そんなレア素材、そうそう見つからないよ」
 ただ、
「国をどうこうしたいなら、まさしく今かもしれないね? 直接君を助けるのは無理だけど……そうだね、私の兵をこっそり分けてあげよう」
 ちょっとしたサービスだ。と語る貴族に、いたせりつくせりだと言わんばかりにはしゃいだゴーレムは、ドシンドシンと跳ねる。
『マジですか貴族殿!』
「おっと私の事は謎の貴族Xと呼ぶのだ。Xとは未知数の意。まさしく私」
『ほほう。ならば私はゴーレムマイスターGと。Gとはゴーレムの意。まさしく私』
「え、なに、ゴーレムマイスターゴーレムってこと?ゴーレム二回も言うとかセンス悪くね?」
 なにはともあれ。
「君には期待しているからね。頑張って国家転覆してくれたまえ。追って、兵は向かわせよう」
 そう言って、謎の貴族XはゴーレムマイスターGを送り出した。
 ガコンボコンと出入り口を破砕して出ていく背中を見送った彼は、
「まあでも、出る杭は打たれるっていうしね。出すぎた杭ならなおさら、そうは思わないかい?」
 そう呟いて、これ直るの? と壊れた壁を見て首を傾げるのだった。

●イレギュラーズに休み無し
「はいというわけでね」
 ここ最近、特に忙しないローレットに、依頼が飛び込んできた。
 依頼人である貴族の青年は、満面の笑みを浮かべると、幻想中で起こる戦いに東奔西走するイレギュラーズを集めると、口を開く。
「ちょっと潰してきてくれない? 得意でしょこういうの!」
 そして鼻っ柱に拳を打ち込まれた。
 ゴロゴロと転がって地べたに沈黙する青年はおいておき、『黒猫の』ショウ(p3n000005)は苦笑いと共に説明を始めた。
「ここしばらくの蜂起軍の活動で、薄くなりがちだった隙を着いて、どこかの貴族が暗躍をしているらしい。それを、止めてもらいたい」
 相手は昨今の蜂起事件とは無関係に、入念な準備をもったクーデターを企てているらしい。放っておけば後々、面倒な事になる可能性がある。
 せっかくここまで頑張ったのに、おじゃんにされるわけにはいかない。
「というかその人も一枚噛んでるんでしょ?」
 もっともなイレギュラーズからの突っ込みに、まあまあ、と場をいさめたショウは言葉を続ける。
「場所は敵の屋敷。巨体のゴーレムに乗り込み、搭載された武器で攻撃してくる。それから、私兵が4人程いるそうだが、こいつらは入り口の警備をしているらしい」
 つまり、
「私兵を排除して突入し、ゴーレムの破壊と操縦者の撃破をする。これが今回の仕事だ。今回も、生死は問わないよ」
 そこで言葉を区切ったショウは、相対するであろう敵の詳細と配置が書かれた紙を渡す。そこには屋敷の見取り図が付属し、
「私兵は東西南北の四方に一人ずつ。ゴーレムは、屋敷の中央で最終調整をしていると予測される。これらとどう戦うのかは……方法は君たちに任せよう」
 メンバーを分けて四方から攻め入るのもいいし、一方に集中して突破してゴーレムと三人の兵と戦うのもいい。それ以外の手を取っても、もちろんいいだろう。
「前提として、ゴーレムは屋敷からは出ないし、私兵は君たちが屋敷内に侵入した時点で中に入るということだ。
 以上を踏まえて、依頼遂行を目指してくれ。気を付けてな」

GMコメント

『マスターコメント』
 ユズキです。
 いつものあれです。

●依頼達成条件
・ゴーレム&ハゲ、私兵×4を撃破。生死は問わない。

●目標敵
・ゴーレム&ハゲ
 ゴーレムが壊れたら抗う術を持たないハゲと、巨体に似つかわしくない高機動高耐久を実現した機体のコンビ。
 ノリは大体全編通してOP通りで、屋敷のだだっ広いエントランスホールで待ち構えてます。
 
 攻撃手段は以下の通り。
 
 『連』の効果を持つ『近距離列範囲』の機銃掃射。
 『暗闇』効果を持つ『中距離域範囲』の煙幕。
 『防無』効果を持つ『遠距離貫範囲』の魔力光線。

・私兵×4
 『超反射神経』と『精神耐性』のスキルを持つ、心を持たない兵士。
 東西南北にある入り口に突っ立ってます。
 基本は素手で、至~中レンジの攻撃手段があります。

●ポイント
 どんな戦略を立てても構いません。
 多分戦闘がメインになります。
 それでは、よろしくお願いします。

  • 出る杭をぶっ叩く完了
  • GM名ユズキ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年05月24日 20時55分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

スウェン・アルバート(p3p000005)
最速願望
アラン・アークライト(p3p000365)
太陽の勇者
ルーティエ・ルリム(p3p000467)
ブルーヘイズ
ジェームズ・バーンド・ワイズマン(p3p000523)
F●●kin'Hot!!!!!
ルチアーノ・グレコ(p3p004260)
Calm Bringer
フィーゼ・クロイツ(p3p004320)
穿天の魔槍姫
タチカゼ(p3p004756)
科戸の風
オロチ(p3p004910)
悪党

リプレイ


「バカな、早すぎる……!」
 どこを見るでもなく、頭頂部を輝かせた男は呟いた。
 隣に誰が居るわけでもなく、返事もなく空へ消える声を置いて、男は作業を急ぐ。
 そこは、正四角形に建てられた屋敷の中央、吹き抜けた高い天井のエントランスホールだ。その中央に鎮座した搭乗型ゴーレムの調整を、彼は急ぐ。
 なぁに、簡単な事さ。とニヒルな笑みで垂れる冷や汗を拭い、かっこつけて言うのだ。
「ギルドなんかに負けないんだからね……!」


 東西南北。四方に入り口を設けられたその屋敷は、かなり特殊な造りと言えるだろう。
 両開きの門戸は豪奢で大きく、分厚い壁のようだ。
 そして門を守るように、その前には一人ずつ、黒い服の人物が立っている。
 それは、老齢の翁であり、若齢の少女であり、頑強な男性であり、うら若い女性であった。
 一様に目を隠すサングラスを装着した彼らの前に、それぞれ、二人の来訪者が近づいていく。

「ゴーレムってカッコイイよね、操縦出来て羨ましいな」
「でも、体よく利用されるのはどーかと思うッスねぇ」
 東から近づく二人、『最速願望』スウェン・アルバート(p3p000005)と『Calm Bringer』ルチアーノ・グレコ(p3p004260)は、雑談の様な気楽さを持って歩いていた。
「……依頼人の貴族サマに、言い様に使われているッス」
 自分達も、ハゲも。と、そう思うスウェンは、視界に黒服の翁を認めると、口を閉じる。
「行こう」
 気楽さを消したルチアーノの言葉に頷いたスウェンは、体を前に倒す。
 軸足で地面を強く蹴った彼は、加速の付いた身体で走った。
 踏み込む。
 二度目の加速を、踵に内蔵させたホイールの回転で得た彼は、三歩目の踏み込みで速度を上げる。
 そうして敵の眼前まで迫った彼を、翁は顔色を変えることなく、迎撃した。
 低い前傾姿勢で来るスウェンの頭部。フルフェイスヘルメットに向けて、握った拳を打ち下ろす。
「ま、そーするッスね普通!」
 が、それを読んでいたスウェンは、足を横向きにして地面を削り急ブレーキを掛けると、進路を横へ、跳ぶ様にして変える。
 そうした回避で得た敵の隙を、目で捉えたスウェンはそのまま、ホイールを地面に滑らせ、円を描く様に身体ごと回すと、
「ふっ……!」
 呼吸の溜めと同時に回し蹴りで翁の背を打った。
「ーーっ」
 そうしてたたらを踏み、背中の衝撃で
前へと足をもつれさせる翁の行く先は、
「僕の間合いだ」
 準備を完了させたルチアーノの前だ。
 見下ろす様な彼の視線の先で、翁の身体があちこちから燻る。白煙から始まったそれは少しずつ黒に染まり、やがてそれ以上の漆黒に塗れた炎が身体を走っていった。
 焼ける。
 服に移り、肌を焦がし、血肉を蒸発させていく。
「ーー」
 だが、意に介さない。
 今、進行形で、自分の身体が焼失していくというのに、翁は感情を変えずに動く。
 目の前のルチアーノに向かい、燃え盛る両腕でガシッとその身体を掴んだ。
「無駄だよ」
 冷静に呟いたルチアーノは、手に持ったマスケット銃の銃身を持ち、下から上へと手首を使ってスイングした。焼け焦げた身体は脆く、ボロボロと炭を撒き散らして翁の腕は弾ける。
 だが、まだ。
 まだ翁は動ける。
 一度バックステップを入れた翁は、門の前に立ち直し、炎をそのままに二人の進軍を阻む。
「死んでるのは、心だけじゃなさそうッスね」
 生かす手加減も必要ない。
 そう思い、二人は追撃を開始した。

「またクーデターかよ!」
 西を担当する『ブルーヘイズ』ルーティエ・ルリム(p3p000467) は、堪らずと言った愚痴を溢しながら、少女の様なフォルムの私兵へと接近していた。
 本来、大声等を叫ぶのが苦手な彼女だが、この言葉だけは違ったようだ。
 ……まあ報酬もらえるし、仕事があるのはいいことだけど。
 と、そう思い、武器を前にして駆ける。
 穂先を下げた突撃姿勢で行くルーティエの斜め後ろを、追随するように『焼滅の魔人』フィーゼ・クロイツ(p3p004320)も行く。
「あれが私兵……さしずめ、門番代わりって所か」
 待ち構える少女の姿にそう思う。小柄ゆえに、当てずらそうとも。
「まぁ、何の障害も無しとは思っていないさ」
 だから、二人は行った。
 始めに動きを入れたのは、槍のリーチを活かしたルーティエだ。
 相対する少女の鳩尾を目掛け、踏み込みと腕を伸ばして突きを放った。
 その線の動きを、少女は身を捩る事で回避。半足を引き、上体を横に向けてやり過ごした。
 そこへ、フィーゼが迫る。
 持った剣を逆側に捻り、斜め下へと斬り下ろす。
「……っ」
 少女はそれを、ルーティエが突き出した槍を利用して防ぐ。
 身体を屈ませ槍を潜る様に動くと、槍の柄でフィーゼの刃を受け止めたのだ。
 そのまま柄を掴んだ少女は、ルーティエの足を払って体勢を崩させ、フィーゼへぶつける様に彼女を蹴り飛ばした。
「以外とやるな……」
「そうだね」
 攻防の後、変わらず門の前に立つ少女に向き直り、二人は評価を改める。
「まあでも」
 と、剣を握り直したフィーゼは、
「勘を取り戻すには丁度良い……!」
 再度の接近を試みた。
 正眼に構えたまま走り、近づいて剣を振り下ろす。正面からの攻勢に、少女は後ろへ下がることで回避とした。が、フィーゼの攻撃はそこで終わらない。
 振り下ろした動きを止めずに身体を前に、次いで軸足を踏み込み、手を返す動きで剣を振り上げた。
「!?」
 一閃する。
 斜めの軌跡を描いたそれは、少女の身体を切り裂いて鮮血を吹き出させた。
 そうして、思わずよろめく身体へと、ルーティエは追撃の為に距離を詰める。
 反撃を。
 と、少女は迫るルーティエの速度に合わせて拳を振り抜いた。それを、
「手早くやらせてもらう」
 ルーティエは踊った。
 外側へ向かうように身体を回し、少女の腕を手に取る。そのまま捻り、流れるように相手の後ろへ移動する最中に、足を払った。
「っが!」
 そうして関節を極め、地面に押さえ付ける。だが、少女はその拘束を、なんの策も無く振りほどく。
 ゴキリと、骨を砕くことで、だ。
 無理矢理腕を引き抜き、外側へ転がり出て、
「逃がさない」
 体勢を整える前に、フィーゼの刃が、胴を薙いだ。

 風の中を、『科戸の風』タチカゼ(p3p004756)は泳いでいた。
 手に持つ大太刀を構え、キラキラと色を変える髪をなびかせ、彼女は行く。
 その背中を、『悪党』オロチ(p3p004910)は見ていた。
「頼むぜ、いろっぺぇネーチャン」
 口角を上げ、笑みの形を作りながら、彼も行く。
 向かうのは北口。待ち構えるのは門番の女性だ。
 距離を詰める二人に対し、女性は先制の一手を打つ。
 手頃な石ころを複数拾い、それを散弾のように投擲した。
 二人はそれを、左右に広がって回避。そのまま挟み込むようにして、門の前にいる敵へと駆けていく。
「一気に潰すぜ」
「承知」
 接近する。
 二手に別れた事で、どちらかを攻撃すれば、どちらかが攻撃してくるのは必然。
 大太刀が、鞘に収まった剣が、振りかぶられる。
 だから女性は、行動した。
「!!」
 後ろを向き、門に向かい合うと、そのまま駆け上るようにして上空へと回避を選んだのだ。
 二つの軌跡が空を切り、落下するに任せた女性は、その動きのまま攻勢に移る。
 身体を縦に一度回し、上から下へ、打ち下ろすような踵落としを放った。
「ーーッ」
 それに対し、先に動いたのはタチカゼだ。
 打ち下ろした大太刀を、外へ回すように再度振り上げると、袈裟の軌跡を描いて一閃させた。
 それは、踵から来る女性の脚を断ち、宙に転ばせる。そして、
「ゴクローサン」
 地に落ちるよりはやく、オロチが拳をぶちこむ。
 大きく振りかぶったそれは、女性の身体を捉え、大地に強く打ち込まれた。
「そこで潰れてろ」


「くっ、遂に動き出したか……!」
 キリリッとキメ顔のハゲは、ゴーレムに乗り込んでいた。
 外から聞こえてくる騒音に胸をドキドキさせつつ、最終調整を済ませていく。
「よし、よしっ、よーしよしよし、いける、動く……動くぞぉ!」
 歓喜に震えながら、声高に叫んだ瞬間。
「ほぇ」
 ゴーレムを眩い光りが包み込んだ。


 南を攻める『ガスライト』ジェームズ・バーンド・ワイズマン(p3p000523)は、静かに思案していた。
「どうすんだ?」
 それを、『太陽の勇者様』アラン・アークライト(p3p000365)の問いが打ちきる。
『うむ、行けそうだ』
「んじゃ、一気に片付けちまおうか。頼んだぞ」
『ああ。……荒事は苦手なのだがね?』
 そんな言葉を背に、アランは行く。
 自分から提案しておいてよく言う、とか内心思いつつ、弓なりの迂回を入れて門番の男へと近づいていった。
 そして、ジェームズも静かに歩き出す。
 手を前に掲げた彼は、円を基にした術式陣を形成する。
「さて」
 陣に魔力を通し、起動の準備を整えたジェームズと門番との距離は、約30~40m。
「適正距離だ」
 そう言って彼は、超距離用の雷を放った。轟音と稲光に彩られたその一撃は、腕をクロスさせて防御姿勢を取る門番を巻き込んで行く。
 空を焼き、門戸を貫き、そして、
「ぬわー!?」
 屋敷に籠っていたゴーレムにぶち当たった。だが、直撃の割りに聞こえてくる声に緊張感は無く、
「ふむ。思ったより分厚かったか」
 閉ざされた門という障害物が、いくらか威力を減衰させたと見える。
 そしてそれは、適正距離ではない門番にも同じことが言えた。
 だから、
「お前は」
 アランが追い打つ。
「そこで潰れてろ」
 ねじ込む様にぶちこんだ拳は鈍い音を立て、男の内側に強い衝撃とダメージを与え、膝を着かせた。


 四方からの攻め入りは、多少の差違をもって為された。
『来たな、ローレット!』
 スピーカー音の様にゴーレムから叫んだハゲは、一番に飛び込んで来た二人を出迎える。
「一番乗りッス!」
 そして、スウェンが行った。
 最速の加速を持って、ゴーレムへと一気に迫る。
『迎え撃ってくれるうわぁ!!』
 意気揚々。そんなゴーレムに向かって銃弾が飛ぶ。
 それは、ルチアーノのマスケットから火を噴いて発射されたものだ。
「ふふっ、操作が甘いんじゃない?僕の方がそのゴーレム、上手く使えるんじゃないかな」
 銃口を向けながら挑発する言葉に、
『これ結構難しいから無理ですぅーーーー!』
 ハゲは普通に返して移動をする。
 追いすがるスウェンを意識しつつ、滑る様に横へ。
「丁度のタイミングでござるな」
 そこへ、突入したタチカゼに出くわした。スラリと上げた、海神という銘を持つ刃が、ゴーレムへと一閃を打つ。
『!?』
 それに対して、ハゲはゴーレムの身体を急停止させる。タチカゼの間合いに侵入するのを防ぐつもりだ。
 だがそこへ、スウェンという同格の速度を持つ相手が来る。だから、
『きゅーじょーしょー!』
 ゴーレムは跳んだ。
 スラスターから急速に吹き出させた魔力風を下へ向かわせ、後方へと浮き上がり逃げの一手を打った。さらに、両手に付けた機銃を眼下に向け、
『ローレットの戦い方はわかっているぞ、動きを封じてタコ殴るつもりだろう、他の依頼みたいに!』
 掃射する。
 狙いは、スウェンとタチカゼだ。
『ふははは、どうだ!』
「くっ……」
 降る弾雨は二人の身体を撃ち、身を削っていく。
 悦に浸る様なハゲの笑い声は耳障りで、しかし大きな隙でもある。
「おうハゲ」
 なにせまだ跳んだ直後だ。高機動を売りにしていても、その重量は半端ではなく、必ず停止の瞬間は来る。
「デカイのは口と態度だけだな」
 だからそこを、オロチは撃ち抜いた。
 ゴーレムの頭部へ激突した弾丸は、落下する体勢を崩して着地を阻害する。
「迅速に、ケリつけるッスよ!」
 そこを逃さないと、スウェンは弾幕を突き抜けてゴーレムの目前に迫り、声を上げた。
「自分たち、全員で!」
『なに……!』
 そして、言葉通りのことが起きた。
 スウェンが回し蹴りが胴を打ち、慣性のままに横へふらついたゴーレムの身体へ、
「まだ踊ろうよ、ゴーレム」
 ルーティエの身体が懐に飛び込んでいった。払おうとする腕を上体を反らして回避した彼女は、躍り、翻弄するようにゴーレムの周りでステップを刻む。
『くっ、この、ちょろちょろと……』
「ちょろちょろはそっちもだろう、が!」
 そこへ、アランが飛びかかる。横へ振り絞った剣を一気に振り切り、胸部へと斬りつける。
「くっ……堅っ!」
「それなら、こうする……!」
 アランと入れ替わり、フィーゼがゴーレムの後ろから行く。地を滑る様に低く飛び込んだ彼女の狙いは、硬いゴーレムの表面ではなく、脚の関節部分だ。
 剣の切っ先を駆動部の隙間へ突き込み、引き裂く様に振り抜いて噛み合いを悪くした。
『これだから、ローレットってやつぁ嫌なんだ……!』
 折れる様に曲がる膝から煙幕のボールを打ち出し、ハゲは叫びながら次の手を打った。


  幾度と重なる攻防が、屋敷で繰り広げられていた。
 恐らく、イレギュラーズにとってデメリットだったのは、近接で攻める者の多さだ。
「ッ!」
 四方から囲むとはいえ、戦闘中に動線が重なるのは必然。そこを見逃すほど、ゴーレムを乗りこなすハゲは甘くない。
 カランカランと、ゴーレムから排出される薬莢が無数に落ちる。
 その度に、イレギュラーズの傷は多く、深くなっていった。
『侮るなよローレット諸君』
 ただし、数の優位差はイレギュラーズが上だ。分厚く、頑強だったゴーレムの肌は凹み、歪み、壊れていく。
 それでも。
『私は反旗の主。敵対の可能性がある勢力は調べるさ』
 ハゲはしぶとい。
『……スウェン君、お薬だ』
 ゴーレムのマークをフィーゼと変わったスウェンへとポーションを与えるジェームズは、屋敷に踏み入ってから回復以外の行動をほぼしていない。
 例え囲んだとて、機動力を封じたとしても、決してただのゴーレムと変わらない、なんてことはないのだ。
 ただ、何事にも限界はある。
「いくぞ……!」
 それは、誰の掛け声なのか。
 考える間もなく、イレギュラーズは行動を起こしていた。
 それは、集団突撃だ。
 機銃を用いた迎撃の構えを取るゴーレムの腕を、まずルチアーノが狙撃する。
「ごめんごめん。抵抗するから、壊しちゃった」
 留め具のネジを砕き、故障をした一瞬に、
『ォ』
 拳が。剣が。槍が。大太刀が。足が。
 ゴーレムの身体を破砕していく。
『ォォォ!』
 そして衝撃は、粉々に砕いた機体からハゲを弾き飛ばした。転がり出る生身は、度重なる攻防によって傷だらけだ。
「ぐっ、くそ……」
 震えながら起き上がろうとするハゲへ、銃口が突きつけられる。
「で、お前にこれ売ったアホはどこのどいつだ」
「謎の貴族X……こんな素敵なゴーレムを作る人、知りたいな」
 オロチとルチアーノだ。脅しとホールドアップを兼ねた質問の最中には、タチカゼとルーティエのロープがハゲの身体をきっちりと締め上げていく。
「いや、どこのどいつもなにも……お前達をここに送ったの、その人じゃないのかい?」
「え?」
 解せぬ、という顔で下手人は語る。そもそも秘密裏だった反旗の準備を知っているのは、ハゲと、その貴族Xだけだ。
「こいつもだが、あの兵士も何だったんだ」
 ロープをくくり終えたルーティエの呟きは、イレギュラーズ達に不可解な間を与えた。
『ところで』
 沈黙を破ったのは、ジェームズだ。
『このゴーレム、調べていいかな?さぞ素晴らしい素材だろう、うん。知的好奇心が擽られるなぁ』
「あぁ、はい。りょかいッス、後の処理も任せるッスよ」
 ウキウキする探求者はおいておいて。
 連行されていくハゲを尻目に、
「……剣、折れたりしてねーよな……?」
 自分の武器を心配するアランの呟きが、主を無くした屋敷を抜けていった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お疲れ様でした。
特徴をちゃんとつかめてたらいいなとおもいました。
またのご参加をお待ちします。

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