PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ペインズフォール・ダウン

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●『撃鉄』の聖銃士セルゲイ・ヨーフ、そしてファーザースニーア
 独立都市アドラステイア。それは壁に覆われた神聖なる都市。
 天義の失敗を教訓として独自の神ファルマコンを崇拝し国からの離脱と独立をはかった彼らはしかし、終わりなき魔女裁判と悪しき闇に支配された都と化していた。
 下層域には孤児たちが集められ、わずかな大人の管理の下清く正しく魔女を告発し、旅人を浄化し、血と泥に今日もまみれている。
 そんな街の、一角でのこと。

 ウッドテーブルに革靴をはいた脚をのせ、英字新聞を広げるビジネススーツの男がいた。
 部屋には蓄音機からクラシックミュージックが流れ、どこか爽やかで静謐な空気を作っている。
 部屋にころがるノックが二回。
 新聞を読んでいた男はどうぞとかえし、扉はゆっくりと開いた。
 姿を見せたのは白銀の鷹を摸した鎧をきた青年である。よく整えられた髪や誠実そうな瞳から、かれのまっすぐな性格がうかがえる。
 扉をあけたが部屋のラインから内側には決して立ち入らない配慮もまた、彼の生真面目さがうかがえた。
「セルゲイ・ヨーフ聖銃士であります。『浄化作戦』の報告にあがりました」
「はい。え……なんですか、そんなところに突っ立って。風がはいりますから、さっさと中へどうぞ」
「は、失礼します」
 定規ではかったかのように正しく頭を下げると、セルゲイは室内へと足を踏み入れた。
 鼻につく煙草のにおい。だがセルゲイは眉をわずかに動かすのみだ。
「ファーザースーニア……」
 タールの重い煙草を灰皿の上に山のようにつみ、クラシック音楽のレコードを聞きながら新聞を広げる相手。彼こそがセルゲイに、『撃鉄』の称号を与えた男ファーザースーニアである。
「はいはい。そこに置いておいてください」
 新聞をさげるスーニア。爽やかなサラリーマンといった雰囲気のさらりとした髪型とさりげなくしゃれっ気のきいた眼鏡。しかしゆるくしめたネクタイの柄はお世辞にも爽やかとは言えなかった。
 その、とてもビジネスマンがつけるべきでないけばけばしい柄にセルゲイは顔をしかめる。きつい煙草のにおいには耐えられたのだが。
「失礼します……」
 しかし何もいうことなく机へと近づき、手書きの紙束を置いた。
「どれどれ、拝見しますよ」
 スーニアは新聞を畳んで横に置くと、彼の報告書をとった。『手渡しを嫌う』というのは、彼の癖の一つだ。
 はじめ報告書を突き出したまま30分ほど放置された寒々しい記憶を、セルゲイは無表情のなかに押し込めた。
 報告書を手に取ってからの動きは速い。起用にページをコンマ2秒ほどでめくり続けては内容を速読していく。そして読みながらも会話を続けていた。
「セルゲイ君。称号には慣れましたか?」
「はい。栄えある称号と鎧を頂きました。この鎧に恥じない戦いをファーザースーニアに誓って――」
「結、構。弟さんも喜びますよ。崇高な作戦をローレットなんていう野蛮な連中に邪魔されたうえ命まで奪われて、さぞや無念だったでしょうからねぇ」
 返答を遮って自分の話を続けるスーニア。
 セルゲイはそれに慣れた様子で直立不動の姿勢を保っていた。普段ならこれで報告が終わり、『下がりなさい』と言われる頃……だったが。
 命令はこない。
 どころか、スーニアはめくる手を止め報告書の一部を凝視していた。
 やがて彼の手は震えはじめ、その手でもって眼鏡をゆっくりと外すとゆっくりと鼻から呼吸をした。
「セルゲイ君」
「は」
 やっと声がかかり、セルゲイは踵をあわせて背筋をのばした。
「帰って早々ですが、君に命令があります。受けてくれますね?」
「は、光栄です。なんなりとファーザースーニア!」
 こういうとき、スーニアの目をまっすぐに見るのがセルゲイという青年である。
 こういう相手を見ていると、いつかの記憶が蘇る。
 それを眼鏡をかけることで無理矢理忘れると、スーニアは爽やかに笑って見せた。
「このエクスマリア=カリブルヌスというウォーカーの女。世界各地でテロ活動をしている非常に危険な人物です。しかしこの頭髪はたいへん貴重なサンプルになる筈」
「……と、いいますと」
 察しの悪いセルゲイに若干のいらだちを感じつつも、スーニアは笑顔を崩さなかった。
「彼女を生きたまま倒し、捕獲しなさい。
 君にはダイダリオン小隊と聖獣ペネム二体を預けます。
 世界のため、人類のため。あなたの力を私に預けてくださいますね? セルゲイ君」
 いわば殺し文句である。
 セルゲイは背筋をのばしたまま、力強く答えた。
 握った拳を心臓にドンとあてて。
「お心のままに、ファーザースーニア!」

●糸は雁字搦めに
 小金井・正純(p3p008000)は熾烈なぶつかり合いを経験した聖銃士セルゲイのことを独自に調査、追跡していた。
 そんな彼女がエクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)とすぐに駆けつけられる数名のローレット・イレギュラーズをキャンプ地に集めたのは、ある夜のことであった。
「セルゲイ・ヨーフのことを覚えていますか? 彼は旅人の抹殺や拉致を専門とする『浄化作戦』に従事している聖銃士で、スーニアという大人の命令で動いています。スーニア……ミハエル・スニーアについては情報が非常に少ないのですが、あなたならご存じの筈です。エクスマリアさん」
 メンバーのなかで唯一指名によって招集されたエクスマリア。彼女は『そういうこと、か』とつぶやいて説明を始めた。
「奴は『新世界』という暗殺集団の幹部メンバー、だ。表向きにはスニーア商会の頭取として強い財力とネットワークをもっている。スニーア商会というのは……そうだな、総合商社だ。ラーメンから大型船舶までなんでも揃うという業務形態で、彼自身も商人として有名だ。クソダサいネクタイもセットでな」
 言い方にトゲを感じたのは、気のせいではないだろう。
 エクスマリアはフンと鼻を鳴らして正純のそろえた資料に指をついた。
「彼の扱う『主力商品』は……旅人(ウォーカー)だ」
 ざわ、と仲間達に嫌悪と怒りの色が浮かんだ。
 ウォーカーが世界的に受け入れられているとはいえ、彼らの特異な体質や外見を『嗜好』する金持ちは少なくない。
 エクスマリアは直接口に出さなかったが、彼女もまた商品として『獲得』されかけたことがあるらしかった。
「そうか。アドラステイア……あの環境でどうやって都市経営ができているかと思ったが、やはりスーニア商会がバックにあった、か。
 そしてこの情報を持ってきたということは……」
 正純の顔を見るエクスマリア。正純は頷きでそれに答えた。
「スーニアの放った聖銃士セルゲイ、そして彼率いるダイダリオン小隊の狙いはあなたです、エクスマリアさん。ですから……」
「マリア(わたし)を餌に、奴らをおびき出そうというわけ、か」
 町中で騒動を起こして住民へ流れ弾がいってもよろしくない。
 自分たちのペースで戦える場所で迎撃作戦をとったほうが適切だろうというわけだ。
「わかった。自分の身を守れる上に、もう一度あのクソダサネクタイをこきおろせる。一石二鳥、だな」

GMコメント

■オーダー:エクスマリアの護衛とダイダリオン小隊の迎撃
 聖銃士セルゲイ率いるダイダリオン小隊が、皆さんのキャンプへと向かっています。
 しっかりと迎撃する準備をととのえ、彼らを武力によって追い返しましょう。

■フィールドデータとシチュエーション
 皆さんがキャンプをはっているのは天義国内の廃村です。
 アドラステイアと人里のだいたい中間くらいにあり、アドラステイアから放たれた聖獣によって一度滅ぼされてしまった村でした。
 雰囲気は『田舎の村』といった様子で、かれた田畑と崩れかけの家々が曲がりくねった一本道を基礎にして並んでいます。
 キャンプに丁度良いという理由でこの場所をアドラステイア潜入などの際の中間拠点としていましたが、今回は迎撃に使っても誰にも迷惑がかからないという理由で利用することになりました。

■エネミー
●『撃鉄』の聖銃士セルゲイ・ヨーフ
 殉死した旧撃鉄の意志と称号を継いだ兄。白銀の鷹を摸した鎧を着ている。
 性格は真面目で実直。
 ウォーカーが魔種のように世界を蝕んでいるという『旅人害悪説』を教育されており、これを強く信じている。
 固体戦闘能力は割と高め。
・超物攻。CTFBやや高。EXA超高。
・付自単アーリーデイズ
・物至単【連】攻撃
・物至単【連】【ブレイク】【必殺】【恍惚】攻撃

●『聖獣』ペネム
 アドラステイアが聖銃士へと与えた使役モンスター。
 聖銃士の命令に忠実でそこそこの知性をもつ。
 全長3m近い人型のシルエットをもつが、頭部はヤツメウナギに酷似している。
 怪力や瞬発力の他、粘液を槍のように硬化させる能力をもち投げ槍など応用のきいた戦い方も可能。
 ローレットは以前にも戦闘経験があるが、ハイレベルなギルド員が二人がかかりで戦っても倒し切れていない程度には強い。
 外見のわりには知性がはたらくようで、回り込みをかけたり戦力の投入タイミングを計ったりといった器用な戦術も用いる。

●ダイダリオン小隊
 やや強力な武装でかためた子供たちによる部隊。
 聖銃士ほどの戦闘力はないが数が多くそれなりに統率もとれている。
 セルゲイと同じく『旅人害悪説』を教育されており正しい戦いと信じてこの作戦に従事している模様。
 具体的な数と戦闘力は不明。

●独立都市アドラステイアとは
 天義頭部の海沿いに建設された、巨大な塀に囲まれた独立都市です。
 アストリア枢機卿時代による魔種支配から天義を拒絶し、独自の神ファルマコンを信仰する異端勢力となりました。
 しかし天義は冠位魔種ベアトリーチェとの戦いで疲弊した国力回復に力をさかれており、諸問題解決をローレット及び探偵サントノーレへと委託することとしました。
 アドラステイア内部では戦災孤児たちが国民として労働し、毎日のように魔女裁判を行っては互いを谷底へと蹴落とし続けています。
 特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/adrasteia

●聖銃士とは
 キシェフを多く獲得した子供には『神の血』、そして称号と鎧が与えられ、聖銃士(セイクリッドマスケティア)となります。
 鎧には気分を高揚させときには幻覚を見せる作用があるため、子供たちは聖なる力を得たと錯覚しています。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • ペインズフォール・ダウン完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年01月07日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)
波濤の盾
エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘
マルク・シリング(p3p001309)
軍師
小金井・正純(p3p008000)
ただの女
三國・誠司(p3p008563)
一般人
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
雑賀 才蔵(p3p009175)
アサルトサラリーマン
ウィルド=アルス=アーヴィン(p3p009380)
微笑みに悪を忍ばせ

リプレイ

●鉄が朽ちるまで
 アドラステイア周辺には廃村がいくつもある。
 都市建設のおりに衝突した村や、建設後に放たれた聖獣たちによって滅ぼされた村など経緯は様々だが、そのほぼすべてがアドラステイアによる影響だった。
 今回主戦場に決めたこの村もまた、そうしてできた巨大な廃墟群である。
 割れた窓。ツタだらけの壁。人の手から離れたためか急速に朽ちていった家々を眺め、マルク・シリング(p3p001309)はぽつりとつぶやいた。
「これだけの爪痕を残すとはね。まるで軍隊だ……」
 洗脳と服従。薬物による支配。
 増えすぎた子供達は魔女裁判によって自動的に減らしていくというシステム。
「明日も知れぬ子どもが信仰に逃避するのは仕方ないと言えば仕方ないのですが……。
 いやはや、裏で彼らを扇動している者たちはいい趣味をしていますね。気が合いそうです」
 道ばたに木箱を積み上げながら、金具を打ち込んでいく『新たな可能性』ウィルド=アルス=アーヴィン(p3p009380)。
 ウィルドは振り返り、工具をかざして見せた。
「今回の襲撃部隊……ダイダリオン小隊を率いているのはセルゲイという子供でしたか?」
「ああ……どうやら、器用な性格ではないらしい」
 アーマデル・アル・アマル(p3p008599)がローレットのまとめた人物評を眺め、そして廃材で簡単な封鎖がなされた扉をぐいぐいと試しに押してみる。
 持ち込める資材はそう多くないが、村に元々放置されていたものを用いてできるかぎり有利になれる陣地を彼らは構築していた。
 思い通りに、ないしは一方的になれるとは限らないが、少なくとも敵の出鼻をくじくことはできるだろう。
「これにどう対応する? ダイダリオン小隊」

 味方の作戦が上手くいくようにと屋根の上で作業をしていた『アサルトサラリーマン』雑賀 才蔵(p3p009175)。
 放置された煉瓦を紐にくくっては並べていく。
「アドラステイア。それにスニーア商会……聞けば聞くほど、だな。
 他に情報は? ミス・エクスマリア」
「いいや」
 作業を手伝っていた『愛娘』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)がぽつりとつぶやく。
「ただ……ミハエル・スニーア。混沌に喚ばれてより、唾棄すべき輩も、少なからず見た、が……あれは選りすぐり、だ。ネクタイのセンスも含めて、な」
「見聞の広いあなたがいうなら間違いないんだろうな。正直な青年と狡猾な年長者……実に嫌な組み合わせだ」
「しっかしまぁ……この世界も色々あるとは思ってたけど、僕らウォーカーが商品ねぇ。流石に同僚狙われたらタダで返すわけにはいかないよね」
 屋根の上に立ってキャノン砲を試しに構えてみる『一般人』三國・誠司(p3p008563)。道が曲がりくねっていることもあって打ち下ろしには丁度良いが、ひきうち作戦をとるにはやはり曲がりくねった道はあまり都合がよくない。何百メートルにも渡って横への小道を封鎖し続けるのも現状無理がある。
 あくまでも敵による包囲を避けるため、あるいは序盤のアドバンテージをとるために用いるのが適切だろう。
(でも変だな、なんでこんなに分かりやすいんだ?)

 作業を一通り終えた一同は、ファミリアー偵察をだしていたマルクの報告をうけてそれぞれの配置へとついていく。
 非武装状態で腕組みしていた『波濤の盾』エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)も、胸のブローチを握ることで軍服の上から鎧を展開。全身を覆うように自動装着させると、同じく出現した盾と斧を手に取った。
「生憎、俺は旅人ではないんでな。お前さんたちの獲物ではないんだ。
 ……だが、こちとら大事な仕事仲間なんでな。悪いが簡単にここを通すわけにはいかんわけだ」
「言葉を尽くして話さねばならぬこと、話したいことは沢山ありますが、私の友人にまで手を出すというのであれば。
 ――もう一度、いえ、何度でも貴方を撃つ」
 『不義を射貫く者』小金井・正純(p3p008000)は弓を構え、はるか遠い対象をにらみつけた。
 ひときわ大きなシルエットの聖獣ペネムが二体。馬に乗って先頭をはしるのは白銀の鷹鎧を纏った青年だ。
 何人もの重武装をした子供達を引き連れて、その表情は強い使命感に満ちている。
「撃鉄の、セルゲイ・ヨーフ」
「流星の、小金井・正純」
 そして彼らは、あらがえぬ争いの渦へと飲まれていく。

●正義はいつも穴だらけ
 馬を走らせるセルゲイ・ヨーフ。
 超人的な視力で廃村を見つめると、その入り口にエクスマリアが堂々と立っているのをみつけた。それも一人で。腕組みをして。
「あんな場所にたった一人……罠、でしょうか」
 つぶやくが、仮に罠だったとして何ができるでもない。
「いいや。所詮は卑劣なウォーカーの考えること。正義正道、正面より堂々とぶつかれば私たちは負けなどしません! ダイダリオン小隊の皆さん、突撃準備を!」
 剣を抜き、前屈みな姿勢を取る。馬は加速し、随伴していた聖獣ペネムたちも手を突いた四足走行で加速を始める。

「来るぞ」
 エクスマリアはセルゲイたちが交戦可能距離に入る直前で身を翻し、村の中へと走り出した。
「逃がしません!」
 馬の入れないような柵や障害物だらけの細道が続くが、セルゲイたちは馬を下りて追跡を開始。
「久しい、な。撃鉄。お使いとは偉い、な?」
「挑発は無駄です。あなたをこれ以上自由にはさせない。この世界のために……私のような子供を、二度と出さないために!」
 重武装の子供達が早速魔術を行使し、ホーミングする魔法の矢がエクスマリアへと迫った。
 と、その時。
「いい台詞だ。心にしみますね。『中身がない』ということを除けば」
 ポケットから取り出した折りたたみナイフを開き、ロングコートをなびかせたウィルドがエクスマリアを庇うように割り込んだ。
 魔法の矢をナイフで切り落とし。破壊した先端を掴んで投げ返す。
「どんなきれい事を言っても、あなたの正義は所詮借り物です。違うというなら、私たちを捕まえてみることですね」
 挑発的な笑みを浮かべ、エクスマリアと共に住宅の並ぶエリアへと逃げ込んでいく。
 セルゲイが追いかけるも、ウィルドがタイミング良くロープを引いたことで木箱のタワーが崩れ行く手を一時的に塞いだ。
 すぐによじ登って追いかけるセルゲイたちだが……。
「これは……」
 木箱を乗り越えてみて分かる。まがりくねった道の先には住宅が向かい合わせにならんでいるが、その家々の扉はみな板を打ち付けて封鎖され、家々の間にある細道も様々な廃材や家具類がつめこまれていた。つまりこのエリアは、蛇行した完全な一本道となったのだ。
「隊長……」
 危機を察して声をあげる兵士。だがセルゲイは剣を握りしめて首を振った。
「いいえ、退きません。私たちが退けば、この世界はウォーカーたちに、ローレットに支配されてしまう。私たちがやらなければならないんです」
 セルゲイは防御を命じながら前進。
 道の先で待ち構えていたマルクとアーマデルは、そんな防御陣形のダイダリオン小隊へと襲撃をしかけた。
「こちらは敵を引きつけながら引き撃ちを続ければいい。うまくすれば一切の被害無く敵を壊滅できます」
「そう都合良く行くか?」
 マルクは敵陣から15m強の位置を目測で保って『神気閃光』の魔術を行使。
 そして即座に後ろをむいて走り出す。
「作戦って言うのは都合良く行かないことのほうが多いものだけど、少なくとも今は効いてる!」
 アーマデルはセルゲイを守るように前に出た兵士達に急接近。蛇鞭剣『ウヌクエルハイア』と蛇銃剣『アルファルド』を交差させ、変幻自在の斬撃を繰り出していく。
 斬撃を防御しようと集中すれば、アーマデルの放つ毒の香りがしみこんでいくという二重の仕掛けである。
「効かなくなるのも、すぐだろうがな」
 この際あまり厳密に説明はしないが、今回の布陣と攻撃レンジ選択の場合引き撃ちが成立しないので、もとよりこの作戦は『撃ち合っては逃げ』を繰り返して適時マルクとエクスマリアの回復を使用して立て直していくしのぎかたになるだろう。
 さておき。
「大物が来るぞ、下がれ!」
 エイヴァンが咆哮のように叫びながら突進。
 アーマデルを突き飛ばすと、螺旋状に練り上げられた槍がさっきまでアーマデルのいた場所へと飛来した。
 盾をかざすエイヴァン。が、その盾を槍が強引に貫通し、またエイヴァンの鎧をも貫通して腕へと浸食していった。
「くっ……!」
 槍を無理矢理引き抜き、斧をランチャーモードに組み替えて構える。
 狙う先は、先ほど槍を投げた聖獣ペネムだ。
「こいつは俺が引き受ける」
 ペネムに向けて放たれた氷弾。ペネムはそれをいとも簡単に払いのけると、拳を固めてエイヴァンへと迫った。
 が、その直後に斜め上からの集中砲火。無数の銃弾と矢が撃ち込まれ、ペネムは咄嗟に腕をかざして防御する。
 才蔵が煉瓦を一個蹴り落とすと、ひもづいた煉瓦が連鎖的に兵士達へと落ちていく。
 ろくなダメージにはならないが、彼らの進行を弱める二は役立つ仕掛けだ。
「使える罠はそう何個もない。そうだな……30秒以内に引きつけを完了してくれ。できるか?」
「ああ、しんどそうだがやってみる! まったく、命中値が100あれば強敵でも確実だった時代が懐かしい」

 才蔵は屋根の上からセルゲイたちへと射撃を浴びせ、すぐに後退。
 追ってきたところへ正純が鋭く矢を放つ。
「セルゲイ・ヨーフ!」
「小金井・正純!」
 飛来した矢が肩に刺さるのも無視して、セルゲイは鎧から幻の翼を展開。
 鳥のように高く飛び上がると、屋根の瓦へと着地した。
「あなたとはまた逢う気がしていましたよ。ローレットと手を切りなさい。あなたは正しいことをすべきだ! まだ間に合うはずだ!」
「『これ』が正しいことなんです。なぜそれが分からないんですか……!」
「それはこっちの台詞ですよ! 流星の――」
 言葉の途中で、セルゲイにぶっとい鉄の塊が激突し、屋根の下へと強制転落させた。
 キャノン砲、御國式大筒『星堕』を肩に構えて立つ誠司。
「それは水掛け論だ、セルゲイ。僕はね、そういうのはこりごりなんだよ」
「あなたは……この世界の住人ではないのですか!」
 転落したセルゲイは手を突いておきあがり、誠司をにらみつける。
 大筒をおろしてセルゲイを見返す誠司。
「違うと言ったら?」
「あなたが……」
 セルゲイは片頬を引きつらせ、湧き上がる怒りを無理矢理に抑える顔をした。
 思考を読まなくてもわかる。彼の裏表のなさは天然記念物なみだ。
「あなたが――あなた達が彼女を洗脳したんですね! 流星の弓使いを!」
「答えてあげないよ。だから言ったろ、こりごりだって」
 距離をとるべく走り出す誠司。
 セルゲイは悔しげに地面を叩き、そして――。

●悪魔の証明
 セルゲイたちが追撃をやめた。
 【怒り】状態にした兵士も追ってこないところからすると、おそらく回復したのだろう。
 待ち構えて攻撃し、そして逃げるということを幾度か繰り返せたマルクたちに対して、セルゲイたちダイダリオン小隊がその対抗策に出たことは明らかだった。
 このままちょびちょびとお互い消耗するだけの戦いになれば不利だ。味方の何人かは充填能力をもつとはいえ他者へのAP回復手段はない。持久戦になれば不利になるかもわからない。
 マルクがファミリアーを飛ばした結果。ペネムの怪力を用いて民家の扉を破壊。建物内に入り込んで兵士の回復にあたっていることがわかった。リスク分散のためか、いくつかの建物に分かれてから裏口の破壊を試みている。
「まずいね。このまま回り込まれたら僕らは挟み撃ちだ。アーマデル、ウィルド――」
「分かってる」
「『子守』はお任せください」
 コートを翻して走るウィルド。
 一方でアーマデルは翼の幻影を展開することで屋根へと飛び乗り、ワンクッションおいてから飛び降りることで建物の裏口へと先回りした。
「ここは通行止めだ」
 アーマデルは不思議な不協和音を奏でながらピストルを乱射。
 密集陣形をとって回復していた子供兵たちはそれを防御するも、回復担当の子供がアーマデルの弾をまともに受けて転倒。
 そこへウィルドが素早く飛び込んでいく。
「では、君たちの相手は私です。……遊ぼうぜ? クソガキども」
「この……異端者め!」
 剣をとり斬りかかる子供達。
 ウィルドは繰り出された剣を折りたたみナイフだけで器用に打ち払うと、逆に相手の腕をからめとって投げ落としてしまった。
 一斉に向く魔法の杖や銃口。集中砲火がウィルドへ浴びせられるも、ウィルドはニタニタと笑うのみだった。
 なぜならば――。
「あからさまなマトは罠かもしれない……覚えておけよ、ガキ」
 壁の裏に潜んでいたマルクが飛び出し、神気閃光を発射。
 ウィルドを中心として展開した光の魔術が、子供達をなぎ払っていった。

 どんな村にでもある教会。
 村人が集まるのに充分な、逆に言えばその程度の広さしかない空間に、大柄なエイヴァンとそれより更に巨体のペネムがにらみ合っていた。
 ブン、と繰り出される拳を、あえて拳を叩きつけることで相殺するエイヴァン。
 びりびりと身体にはしる痺れは純粋な威力ゆえだろう。
「二匹同時にとはいかないが、せめて一匹程度は片付けるとしようか」
 近くのベンチを掴み、ペネムへと叩きつける。
 木片となって砕け散るベンチ。直後首を捕まれるが、そなえていた斧でその腕を切断――しそこねた。
 半分まで埋まったところで斧はとまり、ペネムはその腕でもってエイヴァンを床や壁へ次々と叩きつけていく。
 とはいえ頑丈さがうりのエイヴァン。タイマンで殴りつけられたところでそう易々とは――。
「おっと」
 教会の壁が破壊され、もう一体のペネムが乱入してくる。
 ペネムへの再びの引きつけに成功したエイヴァンを警戒して、可及的速やかな撃滅を狙った配置なのだろう。
 エイヴァンは斧のランチャーを起動し至近距離から乱射。
 激しい攻防の末に、エイヴァンは仰向けに倒れ、ペネムもまたうつ伏せに倒れた。
 残るペネムが戻ろう……としたその矢先。
「無理だと思うが、一度言ってみてもいいか?」
 才蔵がライフルを構えて教会の入り口に立っていた。
 ゆっくりと振り返るペネム。
「『動くな。手を上げろ』」
 直後に硬化した槍が飛んできて、才蔵の胸へと突き刺さった。
 それでいい。才蔵の役目は、ペネムをここで足止めすることなのだから。

 こうした中、セルゲイは誠司たちとの接触に成功していた。
「まっすぐな奴。それだけにしのぎづらい……!」
 大筒を連射してセルゲイにダメージを稼いでいくが、誠司へ迫るセルゲイの足をとめることはできない。
「こうなったら――」
 大筒をハンマーモードに変形させて持ちかえると、誠司はセルゲイめがけて殴りかかった。
 インパクト――の瞬間、横からエクスマリアの猛烈な砲撃が浴びせられる。
「逃げ帰っても許されるよう、今のうちに、褒め言葉を考えておくと、いい。あのネクタイの、な」
「エクスマリア! テロリストが、なにを偉そうに……!」
「ああ、伝言も頼もう。『次会う時は、首は洗わずともいいが、ネクタイはまともなものに変えておけ』と」
 エクスマリアはまるで彼を翻弄するように手足を頭髪でつかみ振り回すと、民家の壁へと叩きつけそのままの勢いで壁を破壊。
 屋内へ転がり込んだセルゲイへ電撃の弾を発射。誠司のキャノン砲撃とあわせ、セルゲイへと直撃した。
 そうとういたんでいたのだろう。その衝撃で建物が崩壊し、セルゲイは瓦礫に埋まった。
「これは……」
 弓を構えていた正純が、僅かに肩を落とす。
 殺してしまったのだろうか。
 いや、そうするべきだったのだ。やるべきことを、やったにすぎない。
 正純が帰投すべくきびすを返そう、とした、その時。
 バン、と音をたてて瓦礫が吹き飛んだ。
 振り返る。
 瓦礫のなかから腕が一本、握りこぶしで突き上がっている。
 周囲の瓦礫が爆発でもおきたかのように吹き飛んでいき、その中心からはセルゲイがたちあがっていた。
 鎧はビキビキと音をたて、まるで粘性の生き物のように変形していく。
 大きく広がった白銀の翼。顔を覆う鷹のようなフォルム。
 両腕は大きく太く。剣のごとき鉤爪がバキリと開く。
「流星の、弓使い……!」
「――っ!」
 咄嗟に弓をかまえ、撃ちまくる。
 すべて命中したが、次の瞬間には正純の至近距離までセルゲイが迫っていた。
「正純ィ!!」
 横から突き飛ばすように割り込む誠司。彼の身体に鉤爪が食い込み、肉体を引きちぎっていく。
「う。ぐ、う……!」
 しかしその直後、セルゲイは困惑したように顔へ手を当てた。
 その隙を逃さず、正純は不安定な姿勢から矢を発射。
 鎧の解除された僅かな隙間を縫うように、正純の矢はセルゲイへと突き刺さる。
「何度来ても貴方を止める。それが星の、いえ、私の望みだから」
「こが、ねい……まさず、み……!」
 びきびきと、まるでセルゲイを喰らうかのごとく蠢く鎧。
 セルゲイは恐怖したように腕を振り回すと、その場から一目散に逃げ出した。





 その後合流した仲間達によれば、セルゲイの撤退にあわせてペネムたちも撤退したという。その際にペネムは倒した子供達を回収し、両脇にかかえて逃げ去ったとも報告された。
 ともあれ、エクスマリアの保護とダイダリオン小隊の撃退には成功した。
 新たな疑惑と、謎をのこして。

成否

成功

MVP

三國・誠司(p3p008563)
一般人

状態異常

三國・誠司(p3p008563)[重傷]
一般人

あとがき

 ――ミッションコンプリート

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