シナリオ詳細
猪突猛進猛牛集団!
オープニング
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ンモオオオオオオオオオオオオオ!!
モオオオオオオオオオオオオオオ!!
鉄帝の街道に響く獣の雄叫び。
爛々と目を輝かせるその集団は……、牛、牛、牛。
牛の魔物の群れを引き連れた鎧の牛男が雪積もる地面を揺らしながら歩いていたのだ。
「いよいよ、我らの刻が来た……!」
鼻息荒く告げた男は、牛魔王と名乗っている。
優れたカリスマ性を得た彼は、徐々に勢力を拡大しながら移動している。
ただ、牛魔王はただのモンスターには一切見向きもせず、それどころか両手の刃で切り裂いてすら見せる。
その一方で、牧畜の牛ですら興味を抱き、自らの力で魔物に変えて群れの一員に加えてみせていた。
「我ら、牛の血族。来るべきこの時に備えていた力を全て発揮しようぞ……!」
ンモオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!
雪降る街道の地面を破壊しながら進む彼らは、鉄帝の首都スチールグラードを目指すのである……。
●
そのスチールグラード近郊。
雪舞う中、魔物の群れの襲来を聞きつけたローレットイレギュラーズ達が10人余り駆けつけていた。
「皆さん、よろしくお願いいたします!」
その場で指揮を執っていたのは、この地の出身であるヨハン=レーム(p3p001117)だ。
「うむ、よろしく頼む」
「同じく、よろしくな」
「よろしくなのです」
「なんか嫌な予感がするのだわ……」
集まったのは、咲花・百合子(p3p001385)や黎明院・ゼフィラ (p3p002101)のようなベテランから、あじえる (p3p009354)やコルネリア=フライフォーゲル (p3p009315)らイレギュラーズとなって間もない者も。
「敢えて、鉄帝の首都を狙おうだなんて、見上げた根性だね」
一行の中で、もう1人、鉄帝出身ではあるが、北東部の大森林地帯の出身であるリズリー・クレイグ (p3p008130)が鼻を鳴らす。
この2名以外はいずれも旅人か他国の出身者達。半数近くが旅人である。
「相手は牛って聞いたんやけど、戦いの後は目一杯お肉が食べられるんやろか」
月待 真那 (p3p008312)は戦闘後いつもお腹がすくらしく、今回の依頼はそのお肉を思いっきり食べたいと考えているらしい。
「ええ、そう言うと思いまして、バーベキューの準備をしています」
誘いに応じて駆け付けたアクアベル・カルローネ(p3n000045)はそれらの道具を馬車に積み、戦闘の邪魔にならない場所へと置いている。
(牛のお肉を食べれば大きくなるだろうか)
元魔王様、ニル=ヴァレンタイン (p3p007509)がぼんやりと考えている最中、魔物の群れについての説明が始まる。
「一団の長は鎧を纏った牛人間、牛魔王。それが2体の真っ赤な巨牛と3体のミノタウロス、それに20体以上の魔物牛を引き連れて移動しています」
「ふうん、どんなエナジーを吸うことができるかしら」
「話だけでも野蛮な相手ね」
敵に興味津々なAlice・iris・2ndcolor (p3p004337)に対し、ルチア・アフラニア (p3p006865)はやや冷めた感もある。10人以上いれば仕方ないが、この場にいるイレギュラーズ達も一枚岩ではなさそうだ。
すでに地響きがこちらにまで届いている為、アクアベルも手短に説明を済ます。
「相手の狙いは自分達の力を見せつけることだと思います」
それゆえに鉄帝を狙ったと思われる。だからこそ、自分達が強者だと示せば、スチールグラードよりもイレギュラーズを優先して攻撃を仕掛けてくるはずだ。
あとは、相手がぐうの音も出ないほどに叩き潰せばよい。
「要はその魔物達を倒せばよいのですね」
「純戦バトルで相手を叩けばよいだけなら、話は早いね」
黎 冰星 (p3p008546)、茶屋ヶ坂 戦神 秋奈 (p3p006862)の言葉に、ヨハンが頷く。
「ほら、もうそこまで来てるよっ!」
ンモオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!
ヨハンの呼びかけの直後、街道の向こうからやってくる巨躯の牛達。
イレギュラーズ達はその侵攻を食い止めるべく、身構えるのである。
- 猪突猛進猛牛集団!完了
- GM名なちゅい
- 種別リクエスト
- 難易度-
- 冒険終了日時2021年01月16日 22時10分
- 参加人数12/12人
- 相談10日
- 参加費---RC
参加者 : 12 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(12人)
リプレイ
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鉄帝首都、スチールグラード近郊。
街道で起きている事態を受け、10名余りのイレギュラーズ達が集結していた。
「新年一発目にド派手な戦が出来るたあ、幸先が良いね」
『厳寒の誇り』リズリー・クレイグ(p3p008130)が言うように戦を行い、勝利することが目的なのだが……。
「焼き肉パーティ♡」
「やったー! BBQ!! 牛狩ってBBQであるぞ!!」
『Sensitivity』Alice・iris・2ndcolor(p3p004337)も、『白百合清楚殺戮拳』咲花・百合子(p3p001385)はすでに、事後のお楽しみへと意識が向いている。
「ふふっ、焼肉か。たまにはこういう依頼も悪くないね」
「確かに肉食べたいって言ったけれど、まさか現地調達とはね……」
『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)はまんざらでもなさそうだが、『自堕落適当シスター』コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)はこれがイレギュラーズというわけだと自らを納得させていた様子。
(牛……のう、思うところは沢山あるのじゃが……)
『夢想の魔王』ニル=ヴァレンタイン(p3p007509)もそう思いながらも、前方を見て。
「幻想にあんなのが入り込んだら、街への被害は確実じゃのう」
「干支……という文化があるみたいですが、それで張り切ってるのでしょうねぇ」
『男の娘の魅力』ヨハン=レーム(p3p001117)もそれらの群れを見やる。
ンモオオオオオオオオオオオオオオオ!!
前方からは30頭ほどの牛を思わせる魔物達がスチールグラード目指して駆けてきていたのだ。
「新年早々にこれだけウシと戦う事になったら、今年の干支、ずっと忘れそうにないですよコレ」
ヨハンの言う干支については、旅人メンバーが解説しているようだが、その間に、基本草食だという『ノンスメル(無香料)』あじえる(p3p009354)は、ヨハンに押し売りされた弁当を恐る恐る口にして……。
「んん!? オイシィ!!!!!!!」
その美味しさにこの上なく興奮していた。
「ウェーイ! ぴーすぴーす!」
『奏でる記憶』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)もまだ食材レベルだが、おにくが食べられるとテンションあげぽよである。
「なんていうの? カモが山岳行軍装備背負ってなんとやら」
「美味しいお肉を食べると、気持ちが豊かになりますよね」
「美味しいお肉のために頑張らなあかんな……っ!」
「食いでがあり過ぎるぐらいの数だけど、バッと終わらせて酒盛りよぉ」
秋奈に促される形で迫りくる肉付きの良い魔物達を眺め、『耐え忍ぶ者』黎 冰星(p3p008546)が空腹を主張すれば、『ティア大好き』月待 真那(p3p008312)やコルネリアももはや、事後の為に魔物の侵攻を止めると言わんばかりである。
「年の始めから肉の大盤振る舞いとは、なかなか主も太っ腹よね」
防寒と迷彩の為に白い衣装を重ね着した『「Concordia」船長』ルチア・アフラニア(p3p006865)も事後の楽しみの為、奮起していた。
「厄介そうな見た目の奴もチラホラいますね。気合い入れなきゃ!」
鼻息荒く突撃してくる牛の魔物の群れを遠慮なく退治をと、冰星は考えているが、そう簡単にはいかない。
魔物の中には赤く染まった巨大な牛、レッドホーン2体。
ダブルアックスを携えた牛人間、ミノタウロス3体。
そして、重厚な鎧に身を包む、牛魔王1体が隊を率いている。
そのままでは、スチールグラードに多大なる被害が出てしまうのは間違いない。
「まずは目の前の仕事を片付けるとしようか」
それを防ぐべく、ゼフィラが意気込みを見せるのだが。
「よし! では屠殺から始めましょうか!」
「さあさ、いっちょ景気よくぶっ殺して景気よく食おうじゃないか!」
「美少女クッキング! 何かとひき肉を作りがちな吾であるがBBQの為に品質のよいお肉を作るのであるよ!」
冰星に続き、リズリーも敵を食材に見立てており、百合子などはもはやその処理方法まで考えている始末。
「いつも通り敵を叩くだけよ。後はカルビ、ロース……牛魔王も美味しくいただく」
一見、依頼の目的を覚えているような秋奈もまた、思考のウェイトの大部分が焼肉になっていたようだ。
とはいえ、しっかり戦いに備えるメンバー達はそれぞれのポジションへと向かう。
例えば、真那は純白のモッズコートの迷彩効果を利用しつつ、遠くから敵を狙える高台を探していたし、ルチアは前線から少しだけ引いた位置で仲間と接敵していた。
「アクアベル! きみは僕から離れるなっ!」
「はい、解りました」
応じたアクアベル・カルローネ(p3n000045)が頷いたのを確認し、ヨハンが間近に迫った魔物の群れに扇を向けて。
「さぁ、状況を始めよう! 新年をきみと白星で飾ってみせよう!」
「ミッションスタートなのだわ」
ンモオオオオオオオオ!!
ヨハンが高らかに告げ、仲間達とタイミングを合わせてコルネリアが自前の重火器の砲口を敵に向ければ、魔物達も地鳴りの音量で吠えてみせたのだった。
●
モオオオオオオオオオオオ!!
まずは牛達の勢いを抑える必要がある。
「先手打ったらぁ」
携えた殲滅兵装を使い、コルネリアは強烈な弾幕攻撃を敵陣へと浴びせかける。
銃弾の嵐を浴びせかけるが、その侵攻は止まらない。鋭く角を突き出してこちらを狙っており、非常に危険だ。
「数の多い魔物牛を纏めて範囲で焼く方針ね」
真っ先に主観的な世界観の転換を行ったAliceは盾となって前線に立つ。
さらに、Aliceは自身へと迫っていた魔物牛達の身体から流血させて血抜きを行う。
リズリーは、そのAliceの陰から仕掛ける。
「ぶちかましてやるよ!」
宝剣で切りかかるのは魔物牛らの足だ。相手が態勢を崩したなら、団子の如くすっ転ばせると判断したのだ。
牛どもは思った以上にしっかりと体幹を持っていたが、リズリーは諦めずにガンガン刃を振るっていく。
「さあ、来たわね。バーベキューの食材になって貰うわよ……!」
ルチアは同じく支援役となるヨハンとは距離を置く。
号令を上げたルチアは主に後方の仲間へと力を与え、一通りスキルを使うとすぐに軽く盛った雪の陰に隠れていた。
直後、そのヨハンが熱砂の嵐を敵陣へと浴びせかけて牛達の進軍の足を遅らせる。
「アクアベル! きみも攻撃だ!」
「はい、行きます!」
呼びかけに答えたアクアベルも、得意の水弾を牛達の顔面にぶつけていく。
(おのれ憎き牛肉め、大人しく妾の胸の糧になるが良いわ)
続け、禍々しい力を放出するニルが魔物牛どもへと乱撃を浴びせかけ、仲間の傷を深めていく。
ンモオオオオオ!!
「妾は小突かれたらそれだけで戦闘不能になるスペなんたら仕様ゆえ……」
いきり立つ敵に、ニルはすぐヨハンの近くへと隠れていた。
ゼフィラも敵の数の多さを危険視して。
「……こっちも仕事でね。邪魔をさせてもらうよ」
回復役となる彼女だが、まずは弱った敵を確実に仕留めようと、冷たき霊刀を一閃させる。
どうと倒れる魔物牛。だが、1体倒れた程度ではその歩みは止まらない。
「頼もしい先輩イレギュラーズさま達の脚を引っ張らないように、私も頑張りますよー!」
冰星も手近な牛へと闘気を発すると、間近まで迫ってきていた魔物牛の足元から火柱が立ち上る。
業炎に包まれ、魔物牛からこんがりと美味しそうな匂いが漂っていた。
さらに、お弁当の美味しさに興奮したあじえるなどは魔物牛へとゼシュテルグレートを突き出して一気に突撃する。
「うぉぉぉぉぉ!! 打つべしなのです!!」
仲間を狙おうとする牛をこれでもかと殴り、あじえるは1体を倒していた。
「さぁさぁ、牛さん達! 雪中わんこを見つけられるかなっ!?」
高台で迷彩効果と気配消失をフル活用し、身を潜めた真那は愛銃で敵をスナイプする。
弾は潤沢ではない。闇雲に撃てば後続の強敵に見つかるリスクもある。
「……へへっ、絶対外さんよっ……!!」
仲間の攻撃を受けた魔物牛の心臓を狙い、真那はトドメを刺す。
「あっやべっ、固まりすぎっ」
数を減らす魔物牛だが、それでも固まりすぎると一点突破される危険もあると秋奈は考え、紫の輝きを帯びた刀を大きく振り回す。
「カッキーン! ほーむらーん!」
なぎ払った彼女の刃によって、直進していたはずの牛が周囲へと飛んでいく。
態勢を崩した牛達をみれば、縦横無尽に移動する百合子にとっては手玉となる。
突進ラッシュを喰らう前に、構えを取った彼女は勢いよく牛達へと乱打を叩き込むと、魔物牛は血を噴き出して地面を転がっていく。
着実に数を減らすそれらの背後から、巨大な影がイレギュラーズ達へと迫っていたのだった。
●
ンモオオオオオオオオオオオオオ!!
魔物牛が数を減らす中、レッドホーンも戦場に到達し、激しく足を鳴らして地響きを起こしてくる。
混戦状態となる状況で、ヨハンは仲間の体力を回復すべく、混沌の世界の何かにアクセスして。
「あ、アクアベルさんの項もありますね、これ。プライベート覗いちゃってるような気持ち」
ちらりと、ヨハンの目にぱんつが水色という情報まで……。
「回復しないとです!」
顔を真っ赤にしながら、ヨハンは仲間の体力、気力、異常状態までも正常なものへと書き換えていく。
それにより、気力を回復したニルはなおも魔物牛に切りかかるが、レッドホーンが迫れば魔術と格闘を折り混ぜた技を叩き込み、次なる攻撃に備えて身を引く。
追撃をかけるのはコルネリアだ。誤射を防ぐ為、彼女は確実に魔弾を撃ち込んでレッドホーンを凍り付かせる。
それでも大きく角を振るってアクアベルを襲おうとするその赤牛を、コルネリアは死の凶弾で屠ってみせた。
もう1体のレッドホーンは傷を顧みずに攻撃するリズリーに角を煌めかす。
「危ないのですぅ!! ア゛イターイ!!!!」
自らのパンドラを砕き、へたり込むあじえる。
その間に自己修復したリズリーはレッドホーンの巨体へとガントレットを強く叩き込む。
間髪入れず、宝剣を握ったリズリーはレッドホーンの巨体を見事にぶった切ってみせた。
なお、へたり込むあじえるにはヨハンがハッキングで傷を塞ぐ。
「うぅ……かたじけないのです」
頭の冠刃をへたらせ、味エルはグスグスとべそをかいてしまっていた。
ンモオオオオオオオオオオッ!!
咆哮を上げて大斧で薙ぎ払ってくる3体のミノタウロス。
例え倒れてもすぐに起き上がることができるAliceは不死身の盾としてコミカルに復活し、そいつらを抑える。
とはいえ、完全に不死身というわけではない為、Aliceは定期的な強化は怠らない。
皆が傷付いてきていたこともあり、Aliceは仲間のカバーに専念していた。
傍には、雪に紛れて姿を隠していたルチアの姿がある。
ルチアのエランヴィタール……生命の躍動は仲間へとより強い癒しをもたらし、Aliceの回復や気力を大きく使う百合子らの支援に当たる。
少し奥にはヒーラーとなるゼフィラが天使の声を響かせており、仲間全体を見回して回復を行っていたのだが……。
ンモオオオオオオッ!!
ミノタウルスの斬撃は激しい衝撃波を生み、そのゼフィラへと襲い掛かる。
まさに油断大敵。前方から迫りくるその一撃から逃れられず、ゼフィラは収集器から零れるパンドラの力に縋ってその身を起こしていた。
ただ、イレギュラーズ達は猛然と襲い来るミノタウルスに怯まずに攻撃を続けていて。
「ユリユリユリユリユリユリユリユリユリユリィーーーーッ!!!!!!」
独特な叫び声でミノタウルスへと連撃を浴びせかける百合子。
魔物牛やレッドホーンにも拳を浴びせていた彼女だったが、別段牛人間の敵でも変わることなく、その侵攻を止める為に足の腱を叩き潰す。
多少の状態異常がスパイスを効きやすくしてくれる。
そうして相手を物理でクッキングしていた百合子だったが、ミノタウロスが足並み揃えて肉薄してくれば、纏めて血抜きをと全身に乱打を見舞って。
「うむ、ひき肉にはなってないな!」
自身が攻撃を繰り返していたミノタウルス1体が昏倒していたのを見て、百合子は大きく頷いていた。
秋奈は仲間と協力し、刃を光らせてミノタウルスを苛む。
それに見とれていた敵に、仲間が大ダメージを与えてくれるという戦法。秋奈はダメージディーラーとなっていたのだ。
「これで足を狙えば……」
相手は大きなダブルアックスを振り回す敵。ならば、足を狙えばバランスを崩すと真那は見て、愛銃を突きつける。
「唸れ、マーナガルムロアー!! 遠慮せんと全弾持ってけぇぇぇ!!」
目の前のミノタウルスの両脚目がけ、真那は全弾をぶちまけていく。
足が吹っ飛ぶのではないかと思う程の火力を浴びたミノタウロスだったが、それでも堪えた……ように見えたがそれは体躯のみ。
こんがりと下半身を中心に焦がした敵は白目を向いて倒れていった。
残る1体は秋奈にチャンスが巡って。
光る刃で仲間のサポートに回っていた秋奈だったが、上手く連続攻撃できる状況が訪れれば、自ら大ダメージを与えるべく全身の力を雷撃に変えて。
「今日がお前の、出荷日じゃい!」
「ン、ン、モオォォ……」
勢いよく叩きつけた刃に焼かれ、感電したミノタウルスはこんがりと焼けた匂いを漂わせて崩れ落ちていった。
「まさか、我ら牛の血族を悉く倒してしまうとは……!」
重い鎧を纏う牛魔王は、交戦しながらもイレギュラーズの力に只ならぬプレッシャーを抱く。
「ところでところで、魔王の妾を差し置いて牛魔王と名乗っておる怪物がおるとかおらぬとか?」
あらかた魔物牛を倒し、ニルは聞えよがしに敵へと告げる。
「むろんだ。我が炎……その身で味わうがよい……!」
だが、牛魔王とて群れを率いる長。炎を纏った両刃剣での斬撃は侮れない。
敵の数が減ったこともあり、盾役としてAliceが牛魔王の抑えに回っている。淡々とその斬撃を受け止めている彼女は仲間のサポートを受けつつ、敵の前に立ち塞がる。
「牛魔王……! 何か縁起物な気がしますけど、お前もこれまでだ!」
「ぐぬうう……!」
レーム家の戦術に敗北はないと胸を張るヨハンは仲間への支援と回復を繰り返す。とりわけ、尽きぬ雷帝の魔力は、牛魔王とて恐怖を感じさせるはずだ。
冰星がふにふにの肉球を叩きつけ、刹那牛魔王を恍惚とさせれば、イレギュラーズが態勢を整えて畳みかける。
「この場にいる魔王は妾だけで十分じゃ。素直に滅ぶがよい!」
すぐさまニルが体術と魔術を織り交ぜて一気に攻め立て、牛魔王の体力を削る。
多少のダメージは覚悟の上。炎舞う幅広の剣に切られれば、ニルとてただではすまぬが、傷つきながらも踏みとどまってみせた。
「ふっ……。まぁ、妾は元魔王……なのじゃがのう??」
「何……!?」
少し怯んだ牛魔王を、攻撃へと転じたAliceがヴァンパイアとして快楽へと堕とそうとする。
気持ちよくなりかけて無防備になる牛魔王の心臓をコルネリアが遠方から撃ち抜こうとするが、敵も致命傷を避けるよう実を動かす。
「ぐふっ……」
それでも、口から血を吐き出すところを見れば、ダメージは小さく内容だ。
「おおおおおおおおっ!!」
両刃剣を片腕で軽々と振るった牛魔王は炎を伴う衝撃波をイレギュラーズへと浴びせかけてくる。
しかし、それに耐えきった冰星が反撃に出て、高めた闘気で牛魔王の身体を中心に火柱を立ち上らせる。
「グ、グオオオオオッ!!」
「パンドラはお肉と同じで良く燃えるって聞きましたけど、試す必要はなさそうですね!」
大声で叫ぶ牛魔王は冰星の炎によって全身をこんがりと焦がし、黒い煙を噴き出して前のめりに倒れていく。
「さて、牛魔王はどんな味するのかね」
敵の全滅を確認した秋奈の思考はすでに、焼肉へと移っていたようだった。
●
「おにく!! おにく!!! 食べたいの!!!!」
全ての魔物が倒れ、ここからが本番とばかりに秋奈が倍速でテントを張り、バーベキューの準備を始める。
「メインで牛捌くのは任せときな」
自身が適任だろうとリズリーが経験を活かし、牛どもをワイルドに捌く。
「味が落ちる前に、さっさと捌いちまうよ!」
モツ周りなどは気を使いながらも、リズリーは割合適当に切り裂いて血抜きを行い、料理担当へと渡す。
「ゲッヘッヘ……こいつぁ~いい感じに霜が降ってるじゃないですか」
良質の肉を前に、スペアリブ用のバーベキューソースを用意すべきだったかもと冰星は刹那迷っていた。
「火の見張りは任せて」
皿に盛られたお肉をちらちらと気にするルチアがファイアーファイターとして主張すれば、アクアベルが肉を焼き始める。
「お肉!!! 私もお料理手伝う手伝うっ!!」
人数も多いこともあり、別の火元にいた真那が塩だけで味付けした肉に火を通す。
まずは弱火で火を通し……一気に強火で焼き目を!!
「あぁぁぁ~~~~っ!!!」
燃え上がる肉に、真那は悲鳴を上げてしまう。
「アーッ! 月待さんの方向から火柱が!! ギャーーーッッ!!!」
一方、冰星は遠慮なく素材の味を楽しむことにしたところで、火柱が立っていたことに気付き、網に氷を放り投げていた。
一時は大惨事になりかけた一行だが、その後、焼きあがった牛肉が皆の手元へと渡って。
「ごほん。皆さん、今年もよろしくです! かんぱーい!」
ヨハンが音頭を取り、皆で杯を酌み交わす。なお、未成年はジュースを口にしていたようだ。
「小食な方だが、賑やかな食事は嫌いではないよ」
調理班が焼いた肉を、ゼフィラが自身の分を少し確保しつつ皆へと配分する。
バランスも考えて彼女は用意した野菜もよそっていた。
「やったー!!! BBQである!!! 吾、タレが塗ってあるお肉好き!」
百合子は嬉しそうにしっかりとタレをつけた肉を食する。
Aliceもルチアも美味しそうに焼けた牛肉を食べている横で、勢いよく食べていたのは秋奈とあじえるだ。
「うまい! うまい! うまい! 肉汁がジュワッと溢れ出る!」
「お肉オイシィィ!!! お肉最高!!!!!!!!! はちゅ! はちゅ!」
匂いで食欲をかきたてる秋奈は鉄帝トップレベルの味で、コスパも最高でエモいと絶賛し、完全に肉食に目覚めたあじえるが瞳を輝かせて一心不乱に牛肉をかき込んでいた。
「こっちが本命、食べて飲んで大騒ぎなのじゃ!」
また、酒を持ち込んで存分に飲むメンバーもおり、ニルなどは羽目を外し、一升瓶を抱えてカルビやホルモンを肴にしこたま飲んでいた。
「ひゃっはーー!! 肉! 酒! 肉!! 酒!!」
待ちに待っていたコルネリアもハラミを口に放り込み、酒で流し込む。
動いて倒した奴が材料だからと、コルネリアはドヤ顔でカロリーなど気にしないで煽る。
「なんの問題も無かったわね……」
「はーーー! お仕事終わりにビールで肉を流し込むのは最高であるな!」
セーラー服を纏う百合子はジョッキを煽っていたが、ニルに目をつけられて。
「未成年の者は飲酒禁止じゃぞ!」
「あっ、吾は余裕で20才越えてるタイプの年齢あんのーんであるので、ジョッキ取り上げないで!!」
メタなセリフを吐きつつ抵抗していた百合子であったが、ニルは視界がゆらゆらしてきたらしく。
「むぅ……うにゅぅ……ぎぶあっぷなのじゃ……」
しこたま食べ、飲んだニルはついにダウン。その後、鉄帝の宿にて二日酔いで倒れたという話はさておき。
年の初め、ヨハン達イレギュラーズは存分に牛肉を堪能したのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPは盾役としての役割を全うした貴方へ。
今回はリクエスト、並びにご参加、ありがとうございました!
GMコメント
イレギュラーズの皆様、こんにちは。GMのなちゅいです。
今回はリクエスト、並びに挙手に対するご指名ありがとうございます。
お相手は、来年の干支丑年にちなんで牛の魔物の集団です。
なお、相談期間を長めに設定しておりますが、こちらは当方の執筆期間調整の為です。ご了承願います。
●目的
魔物達の討伐、撃退。
●敵……魔物の群れ
なぜか全てが牛モチーフの敵です。
○牛魔王……1体
全長3mほど。持ち前のカリスマ性で群れを統べる重厚な鎧を纏った怪物です。
両手に刃渡り2mほどの両刃剣を持ち、炎を操りながらの斬撃を放ってきます。
○レッドホーン……2体
全長5mもある四つ足のモンスターです。
巨大な2本の角で全てを突き刺して屠り、返り血で全身が赤く染まったとされます。
突進、大きく頭を振りかざす他にも、4つ足で周囲に地響きを起こすことがあります。
〇ミノタウロス……3体
寒い中腰みののみ纏った全長4mほどもある筋肉隆々の牛人間のモンスターです。
軽々とダブルアックスを片手で操り、烈風を伴って斬りかかってくる他、前方の大地を切り裂く斬撃、衝撃波を伴う咆哮を使ってきます。
〇魔物牛……25頭
全長1.5~2m程度の魔物牛達です。その見た目は白黒、茶、黒一色など様々。
基本的には突撃してからの体当たり、角の一撃が主体となります。
勢いで吹っ飛ばされて布陣を乱されることもあるので、注意が必要です。
●NPC
アクアベル・カルローネ (p3n000045)
お招きに預かり、参戦致します。
基本後方支援タイプで、水の術での攻撃、回復が可能です。
ある程度自分の判断で行動しますが、皆様の意向を優先致します。
無事に依頼が成功した場合、事後にバーベキューの準備も行います。
●状況
場所は鉄帝の首都、スチールグラード近郊の街道です。雪が降っており、2,30cm程度雪が積もっております。
魔物の牛のみを取り込んで大きくなった集団は幻想方面を目指しているようです。
依頼に成功した場合、事後は街道脇に大きなテントを張り、その下でバーベキューを楽しむことができます。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
それでは、よろしくお願いいたします。
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