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シナリオ詳細

雪原の雪合戦リベンジ!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 季節はすっかり冬となり、大陸の北側は見渡す限り真っ白で平原は一面銀世界である。
 そんな季節、ただでさえ国土は痩せた土地が多い鉄帝は過酷な環境となり、食料を得ることすら厳しい状況になることも……。
 体の一部が機械となった鉄帝民は寒さを耐え忍びながらも熱い戦いに身を置き、あるいは蒸気機械の整備をするなど自分にできることをしてこの期間を過ごす。
「鍛錬が足らあああああああああん!!」
「「おおおおおおおおお!!」」
 筋骨逞しい男達の声が鉄帝の平原に響き渡る。
 彼らは大闘技場ラド・バウの闘士や傭兵を主体とした集団。
 2年前、彼らは突然現れた雪だるまの一団によってボロボロにされ、一時は雪だるまに負けた連中と揶揄されることもあった。
 だが、彼らはその評価を覆すほどの力をつけ、各地で名声を上げる活躍を続けたことでようやく過去の汚名をすすぐことができ、訓練に参加する者も増えてきていたのだが……。
「なんだ、あれは……」
「まさか、また現れたのか……!?」
 実戦形式の模擬線を開始した鉄騎種の男達は、遠方からやってくる多数の白い物体を目にして、2年前の悪夢を脳裏に過ぎらせた。
「我らと一緒に」
「「「雪合戦をするのである!」」」
 全長5mある2体の雪だるまが、一般成人人間種と同等の大きさの個体を25体ほど従えていた。
 立ちはだかる彼らはこう主張する。
「この場は、君達だけの場所ではないのだ!」
「故に、雪合戦で勝負するのである!」
 そんな雪だるま達の要望に対し、刹那、鉄帝の男どもの動きが止まる。
「「ふはははははははは!!」」
「待っていた。この日を待っていたぞ!」
 大声で笑い始める鉄騎種達。
 以前、相手を甘く見てあっさりとやられてしまった彼らは、またこんな日が来るであろうと構えていたのだ。
「我等をルール無視の破天荒集団と思わないでいただこう!!」
「お前達のその勝負、正面からルールにのっとって受けてやろうではないか!」
 前回は、ルールを無視した者に対する罰の力も働いて敗北を喫した鉄騎種達は、今回こそ雪合戦というルールにのっとって全力で雪だるま達を捩じ伏せんとしたのだ。

 その結果……。
 ――やっぱり、雪だるまには勝てなかったよ……。
 勝負事に関しては負けないと自負していた男どもは皆、完膚なきまでに叩き伏せられ、地面を這ってしまう。
「そんなバカな……」
「我々の完全敗北だ……」
 確かに、鉄騎種達はあの後雪合戦について知識を得て、できる限りの対策を練ったはずだった。
 だが、残念ながら相手が悪かったとしか言いようがない。
「敗北した我らもまた、力をつけたのである」
「この平原を取り戻したくば、全力でかかってくるのだ」
 夫婦と思しき大型2体の言葉に、小型の雪だるま達は大きく頷く。
「む、無念……」
 その姿を見上げる男どもはぐうの音も出ず、雪の上で気絶してしまった。
 倒れ伏す大男どもを見下ろし、雪だるま達は呟く。
「我らはここで待つのだ」
「今度こそは勝ってみせるのである。ローレットイレギュラーズ……!」
 その表情はなんともほのぼのさせられるが、本気の彼らからは雪だるまらしからぬ熱気すら感じられたのだった。


 幻想ローレットにも北風が吹きすさぶ。
 鉄帝程ではないが、こちらでも雪がちらつく日もちらほら。
 防寒具に包まれたイレギュラーズ達もまた身を震わせながら、談話室に設置された暖房器具へと一直線に向かう。
「皆さん、お疲れ様です」
 そんなイレギュラーズ達へと、『穏やかな心』アクアベル・カルローネ (p3n000045)が温かい飲み物を差し出しつつ、依頼の説明を始める。
 以前にも、雪が積もった鉄帝の平原に現れた雪だるまの集団。
 彼らは雪合戦でのバトルを望み、それに応えたローレットイレギュラーズ達が見事な勝利を収め、雪だるま達も満足してこの場を去っていった。
 あれから2年。彼らは帰ってきた。バリケードばかりに頼らぬ戦術と飛行する術を得て。
「雪合戦での好敵手を求め、雪だるまさん達は再び雪降る鉄帝の平原を占拠しています」
 以前、鉄帝の手練れが力ずくで排除しようとし、ものすごい力で倒された過去がある。どうやら、この平原で雪合戦以外でのバトルを仕掛けようとすれば、彼らはとんでもない力を発揮してしまうようだ。
 この為、雪合戦で彼らを打ち倒す必要がある。
「ただ、以前の件もあって、雪合戦の特訓もしていた鉄帝の手練れ達は完全に打ちのめされてしまったとか……」
 その後、その鉄騎種達を鼻で笑っていた者達がいくつかグループを組み、雪だるま達へと挑んだそうだが、全てが敗北してしまったとのこと。
 ここで、焦点が当たったのが、かつて勝利したローレットイレギュラーズ達である。
「またあのチームが揃うかはわかりませんが……、ともあれ、チームを組んで雪だるまさん達に勝たねばなりません」
 今度は私も参戦しますと、アクアベルもやる気を見せる。
 2年前は雪が珍しいと語っていた彼女も、混沌中を見回って随分と逞しくなったものである。

 さて、雪合戦のルールについて。
「基本は、雪玉で攻撃して相手を倒すのがルールとのことですね」
 雪原は予め、雪だるま達が雪の塊を作って障害物としている。
 便宜上、平原を大きく縦に二分して敵味方の陣営とするが、自分の陣地から出ずとも敵を殲滅さえできれば勝利となる。雪を使った弾丸、矢、魔法は可。素手で作った雪玉を投げるのも問題ない。
 一方で、剣、斧、槍、格闘など、近距離武器の利用は「ルール無視」となる。
 直接相手に雪玉を触れさせるのはセーフだが、それでその相手を倒せるかは別問題だろう。力ずくで彼らを倒すのは極めて難しいと心得たい。
「大型は空中にも飛び上がって後方からの狙撃や指示を行います。強力なロケット砲を炸裂させて広範囲に攻撃してくるのが怖いですね」
 小型は狙撃、遊撃と空中とその役割を3つの班に分かれている。
 狙撃班は遠距離、遊撃班と空中班は中距離を得手として攻撃を仕掛けてくる。
 一通り説明を終えると、雪だるま達の資料を差し出すアクアベル。参戦する彼女はメンバーの作戦に従ってサポートに当たるそうだ。
「強くなった雪だるまさん達……どんな相手か楽しみです」
 実は、この依頼で一番楽しみにしていたのは他ならぬアクアベルだったのではと、イレギュラーズ達は小声で語らっていたのだった。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 雪原での雪合戦バトル再びです。前回が2年前なので、雪だるま達にとっては2年越しのリベンジバトルです。
(前回のバトルの模様は拙作「白い大地で雪合戦!」にて。なお、読まずとも問題ありません)
 彼らからの勝負、改めて受けていただきますよう願います。

●目的
 全ての雪だるま達を打ち負かすこと

●状況
 現場は、鉄帝付近で雪の積もった平原。
 ここを30体弱の雪だるま達が占拠しており、雪合戦で彼らのルールにのっとったバトルで勝利することが依頼成功の条件です。
 雪は1m程度積もっており、所々に雪だるま達が作った雪の塊(1.5~2m程度)があり、障害物として使えます。
 なお、今回は新たに雪だるま達がバリケードを作ることもありますので、ご留意くださいませ。
 イレギュラーズ、雪だるま共に、戦闘不能になった者(パンドラ復活はОK)は、戦場から離脱します。
 なお、雪玉を使わず、剣などの近接武器で戦いに臨む場合、依頼成功の難易度が上がりますので、ご注意ください。

●対戦相手……雪だるま一団
 旅人の一団で、大きな雪だるま夫婦が子供達を引き連れて混沌中を歩き回っています。
 冬場になったことで鉄帝の平原に陣取り、雪合戦の好敵手を待ち構えております。
 基本、雪玉のみの攻撃を行います。また、戦闘不能になっても、体が崩れることはありません。
 ルールを無視して直接武器などで殴りかかろうとする相手には、棒を手に持って全力で成敗してきます。

◎大型……2体
 全長5mほどある雪だるま。夫婦かつ、一団の親のような存在です。
 基本、後方で指揮をとりつつ、攻撃を仕掛けてきます。なお、前回の敗戦もあって飛行手段を得ています。
 ルールを無視して近接攻撃を行う者には滅法強いので、くれぐれもご注意を。

・成敗である!(物近単)※ルール無視時のみ
・大雪玉狙撃(物遠単・飛)
・雪玉乱舞(神中扇)
・雪玉ロケット砲(神遠範・溜1・氷結)
・統率、飛行、カリスマ

◎小型……24体
 1.5~2m程度と一般成人人間種と同等程度の大きさです。大きく3種の役割を果たします。

〇狙撃班……8体
 大型の手前からバリケードで身を隠しつつ狙撃してきます。
・成敗なのだ!(物近単)※ルール無視時のみ
・バリケード展開(自範)
・雪玉狙撃(物遠単・飛)
・雪玉ガトリング(神中扇)
・超視力

〇遊撃班……8体
 積極的に相手へと近づき、雪玉をぶつけてきます。
・成敗してやる!(物近単)※ルール無視時のみ
・雪玉投擲(物近単・ブレイク)
・雪玉狙撃(物中単)
・罠対処、警戒

○空中班……8体
 空を舞い、偵察、情報伝達を行う他、頭上から狙い撃ってくることもあります。
・成敗するのである!(神遠単・必殺)※ルール無視時のみ
・雪玉乱射(神中扇)
・雪玉狙撃(物中単)
・戦略眼、飛行

●NPC
 アクアベル・カルローネ (p3n000045)
 雪合戦をしたかったらしく、参加表明です。
 水の術を使うことができ、その応用で雪玉も操ることができます。
 ある程度自分の判断で行動しますが、皆様の意向を優先致します。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • 雪原の雪合戦リベンジ!完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年01月11日 22時30分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
黒撃
グレン・ロジャース(p3p005709)
理想の求心者
日車・迅(p3p007500)
疾風迅狼
フレイ・イング・ラーセン(p3p007598)
長月・イナリ(p3p008096)
狐です
エシャメル・コッコ(p3p008572)
魔法少女
リコリス・ウォルハント・ローア(p3p009236)
花でいっぱいの
インベルゲイン・浄院・義実(p3p009353)
破戒僧

リプレイ


 混沌にも冬が訪れる。
 それは、北国である鉄帝にとってはとても厳しい季節。しかし……。
「おぉ、一面の銀世界!」
 小国家群出身の『狼拳連覇』日車・迅(p3p007500)はその光景に晴れやかな表情をしていた。
 そこで行うは、雪合戦とイレギュラーズ達は聞いている。
「こんな寒い日に遊びに興じる余裕があるなんて、昔じゃ考えられなかったな」
 『不沈要塞』グレン・ロジャース(p3p005709)は雪こそなくとも、凍える冬を生き延びるのに精いっぱいだったスラム次代を思い返しながら呟く。
「ふふ、雪合戦、楽しみです」
 ここにも、自らの依頼についてくる程、遊びを興じたい『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)の姿が。
「アクアベルは雪合戦をしたかったのか。なかなかアクティブだなぁ」
 『Immortalizer』フレイ・イング・ラーセン(p3p007598)は微笑ましげに、楽しそうで何よりと微笑む。
「雪遊びとは童心に還った気分だ。しかし。懐かしさにかまけて本分を忘れてはいかんな」
 『自称破戒僧』インベルゲイン・浄院・義実(p3p009353)も今回の対決を楽しむ気持ちを残しながらも、敵陣を見据える。
 そこにいたのは、白く大きな雪玉2つで身体が構成された群れ。
「我らと一緒に」
「「「雪合戦をするのである!」」」
 一際大きな個体な2体、多数の個体を引き連れている。
「相手は雪だるまか。これはこれで楽しめそうだな」
「敵はきょーごー雪だるまファミリー! 相手にとって不足なしな!」
 フレイに続き、『魔法少女』エシャメル・コッコ(p3p008572)も気合十分。
「雪合戦でもバトルはバトル。ゼシュテル人として負けてられない!」
「雪だるま殿も歴戦の猛者のようですね! 相手にとって不足なし!」
 『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)が鉄帝で好き勝手する雪だるま打倒に力を入れれば、和やかな戦いも良いとする迅はこうした真剣勝負も大歓迎だと気合を入れる。
「相手は雪だるま……雪の使い方に関してはエキスパートでしょうね」
 そこで、衣装を白一色に染め上げた上で露出した肌まで白く塗るほど、準備を万全にしていた『狐です』長月・イナリ(p3p008096)も雪の中から姿を現して。
「強敵と思って油断せずに確実に撃破していきましょうか!」
 再び雪に紛れ、敵からの視認性の低下を狙うイナリ。
 準備を行うのは彼女だけではない。例えば、イグナートはカラーボール等に使う塗料でカラフルな雪玉を増やす。
「久し振り。イグナートは寒いのに元気だね。にぎにぎしい」
 また、イグナートの妹弟子であるアナヒ・ラフワティーも何もしていないように見えて、彼女の髪が雪玉を作っていた。
「『犬は喜び庭駆け回る』って言うけど、こんな雪玉が容赦なく飛んでくる庭はおちおち散歩に出られないよね」
 『狼殺し』リコリス・ウォルハント・ローア(p3p009236)は雪玉を投げ合って準備運動をする雪だるま達を見回しながら雪玉を量産していて。
「みんなまとめてお片付けしなきゃ!」
「かつて雪合戦クイーンと呼ばれたコッコがきっちりかっちりばっちり勝って、しょーりのプリンをいただきな!!」
 そのリコリスの言葉を受け、コッコも気合を入れて準備運動する。
 そんな仲間達の会話に、グレンは難しく考えることもないと笑う。
「満足してもらいつつ、存分に楽しませて貰うぜ!」
「うむ、こちらは準備万全なのだ!」
 雪だるま達はすでに臨戦態勢に入っており、こちらの状況が整うのを待っている。
 イレギュラーズ達は顔を見合わせてから、迅が叫ぶ。
「それではいざ尋常に――勝負です!!」
 各自、雪原に散り、開戦の時を迎えるのである。


 始まる雪合戦。
 雪だるま達はすぐにそれぞれのポジショニングにつき、自らの役割を開始する。
 ふわりと浮かぶ大型2体。他の雪だるまの親である彼らはこちらの布陣を確認して。
「ふむ、いつも通りに行くのだ!」
「「了解!!」」
 大型以外は3班に分かれ、こちらのメンバーを狙う。
 自陣の奥から目を光らせる狙撃班、率先して近づいてくる遊撃班、そして、空から雪玉を飛ばしてくる空中班。
 さすが戦い慣れしており、見事な連携を取った部隊だ。
(制空権争いはこちらがやや不利か?)
 先に空へと展開した雪だるま。グレンは直感で悟る。
 対するイレギュラーズは即席チームの上、不利なルールを強いられる形。
 空からの狙い撃ちは危険と判断したグレンは敵陣へと潜り込み、頭上より少し高いところに、雪原の幻影を投影することで仲間の姿を隠そうとする。
「そーいん、【我に続け】な! そして……とう!」
 そこで、コッコが仲間の士気を向上すべく叫び、飛翔する。
「雪合戦で大事なのはチームプレーな!」 
 積もった雪の上は行動が制限される上、敵のフィールドだと認識するコッコはチームの司令塔となり、敵を丸裸にしようと意気込む。
「む、あいつを狙うのだ!」
 大型の片方の指示もあり、狙撃、空中班がコッコを狙い始めるが、そのコッコをフレイがカバーに当たる。
「タンクに空中班……エシャメルを護衛せんとな」
 自らに聖なるかなを降ろしたフレイは飛んでくる雪玉を受け止める。
 その一部は同じ速さで跳ね返り、投げた雪だるまへと返ってダメージを与える。
 後は、自己修復を行うフレイはまさにチームの永久機関タンクとして機能し、仲間のカバーへと動く。
 コッコもただ守られているばかりではなく、とっておきの魔法を展開して。
「……その名もまぼろし魔法な!」
 現れたドリームシアター……幻影が雪だるまを撹乱する。
 それだけではない。コッコは戦略眼を働かせて、周囲に飛び来る空中班を視認する。
「まずは敵の目である空中班……ドッグファイトな!」
 コッコは能力阻害の簡易封印を施した雪玉を投げつけることで、敵空中班の撃ち落としに当たる。
 その雪玉にもまた、コッコは幻影を纏わせて。
「どれが本物の雪玉かわかんないな?」
「さ、下がるのだ!」
「「う、うああああっ」」
 大型が指示するがもう遅い。一部は雪玉をもろに食らい、墜落していく。
 ただ、うまくそれを回避している敵もいて。
「動いている敵を頼む」
 同じく、戦略眼で戦況を見るフレイの言葉を受け、地上のメンバーが動く。
 事前に妹弟子と用意していたカラー雪玉を、イグナートが敵にして。
「オレは最近、練達でFPSってヤツを遊んだから知ってるよ!」
 こういうのは、フォーカスを合わせてシュウチュウ的に敵を減らすべき。
 それを理解するイグナートだが、動き続けている偵察、伝令に動き続ける空中班が最優先だ。
「右手じゃ投擲はちょっと当てられないんだよね。でも、雪玉を当てる分には左でジュウブン!」
 そのカラー雪玉を投げつけ、イグナートは空中班に目印をつけていく。
 ただ、敵は頭上だけではない。
「貰うのである!」
 いつの間にか、雪上のバリケードに紛れて遊撃班となる雪だるま達が迫って来ていたのだ。
 とはいえ、イレギュラーズ達にとってはそれも想定内だ。
「させはしません」
 空中のコッコやフレイからの指示を受け、迅が遊撃班へと雪玉を投げつける。
(空中班が全滅するまでは無理できませんね)
 予め、雪だるま達が用意してくれたフィールド……バリケードを利用しながら、敵の牽制を行う。
 それだけではない。迅は合間も見て陣地構築も行い、自陣にもバリケードや塹壕も作って仲間が身を隠せる場所を増やす。
「相手は障害物を増やしているのだ!」
「向こうから近づいてくるなー」
 大型の指示で遊撃班は指摘する箇所を狙うが、それを今度はコッコやフレイが指示する。
 相手は基本身を隠し、投げる瞬間だけ身を晒す。その瞬間を、バリケードに開けた銃眼から義実も見逃さず、素早く雪玉を叩き込む。
「やられてばかりではない!」
 遊撃班も多少雪玉を受けても怯むことはない。
 相手は余分に身体へと蓄えた雪を使い、ほぼゼロモーションで雪玉を投げつけてくる。
 その勢いはバリケードすらも削っていく。あっという間に破壊しかねない威力だ。
 ついに、破壊されてしまうバリケード。その前に立ち塞がったのはグレンだ。
「敵の攻撃下に防御しながら前線を押し上げる、これぞ強襲の基本ってな!」
 この場のゲームも制しようと力を高めたグレンは、飛び来る雪玉を華麗に捌き、直撃を防ぐ。
 バリケードはまだあるし、新たに作る仲間もいる。
 統制によって自チームメンバーと呼吸を合わせてグレンは連携を取りつつ、突撃を行う。
 それを援護するのはイナリだ。ドリームシアターによって普段の姿の分身を使って敵を撹乱する本物の彼女は身を低くし、四足歩行の獣の如く敵との距離を詰める。
「雪玉を絡めた攻撃にしないと、ルール違反だからね」
 敵の遊撃と合わせ、できるだけ狙撃班も捉えてイナリは雪玉の嵐を巻き起こす。
 それに気を取られていると、ドローンが迫っていたことに雪だるまが気づく。
 多少のことでは気づかぬ気配。それは、クッキーを齧り、雪をこねくり回す音だ。
「敵が何処にいるか分からない恐怖を教えてあげるよ」
 息を潜ませていたリコリスは自軍後方から動かず、船上全体を見渡して敵……主に狙撃班を狙う。
 ドローンに仕込んだ雪玉をぶち込みつつ、リコリスは敵を爆撃していく。
 バリケードごと吹っ飛ばし、雪だるま達にダメージを与えると、追撃するようにアクアベルも雪玉を投げつけていた。
「破壊が有りなら……」
 グレンはそこで盾を掲げ、バリケードの裏取りを狙って突撃していく。
 彼はバリケードを雪玉に見立て、後ろの雪だるまへと攻撃したのだ。
 だが、近接武器を直接使った攻撃ではない。雪玉で直接殴る行為と変わらない。もちろん、威力は段違いだが。
「む、無茶苦茶なのである!」
 これには大型も動揺を隠せない。
「レンケーしてゲキツイするな!」
「のあー!」
 そうこうしているうちに、コッコの雪玉がさらに敵空中班に命中、その数を着実に減らしていくのである。


 序盤はイレギュラーズが優勢に戦いを進める。
 リコリスは敵の斜め前へとドローンを飛ばし、仲間へと当たらぬことを確認してから貫通力をこめた対空射撃を行う。
「かーっ! これはもはや航空戦だね!」
「む、無念……」
 倒れ行く雪だるまはその形を残したまま横倒しになる。
 崩れてしまうのではないかと考えていたフレイは、その姿に安堵する。
 だが、なおも攻めくる遊撃班の雪玉に気付き、フレイはすぐにタンク役としてそれらを受け止め、跳ね返す。
 イグナートは依然としてカラー雪玉を投げ続けていたが、空にいた全て空中班が雪の上に落下し、動かなくなったことを確認して。
「空中班を始末したら次は狙撃班な!」
 敵陣へと向かうコッコは敵陣奥にいる狙撃班を狙い、雪玉で爆撃する。
 ナビを行うコッコの指示で、アクアベルも思いっきり雪玉を投げつける。その姿は実に楽しそうで、ここでもまたフレイがほっこりとした表情を見せていた。
 狙撃、遊撃と、まだ敵の数は多い。
 大型は空中班がいなくなったことで高度を下げ、狙撃班が山のように高く築いたバリケードで直撃を防ぎ、または雪上に着地してから指示を出す。
 敵に動きを読まれると察すれば、グレンは仲間が巻き込まれぬように前に出て。
「俺自身がバリケードってな!」
 もっとも狙われやすい最前線で防御に徹する。それで自分自身が生き延びることで、その分仲間を護る。
「それが俺のコールドフローだぜ!」
 その間、イナリはなおも雪玉の嵐を巻き起こすことで敵の数をさらに削りにかかる。
「まだ終わりじゃないわ」
 続けて、イナリは複数の敵を狙い撃ち、雪玉を投げつける。
 ただ、それはただの雪玉ではない。その雪玉は突然爆発したのだ。
「な、なんだこれは!」
「気を付けるのである。何か入っているのだ!」
 
 なお、イナリが雪玉の中に入れていたのは、耐水導火線。彼女はダイナマイトの如く雪玉を爆破していたのだ。
「雪玉に石とか氷いれる事もあるでしょ? それと同じよ!」
 敵陣の障害物が減り、敵が怯む……イレギュラーズはそう思った。
「遊撃班、下がるのである!」
 大型の声が響き、遊撃班が下がったタイミング、動きのなかったもう1体が展開したロケット砲から大玉を撃ち出す。
 イレギュラーズの陣地へと着弾した一発は正確な狙いこそなかったが、破壊力は抜群。
「ううっ……」
「きゃああああああっ!!」
 義実は陰にしていたバリケードごと吹き飛ばされ、アクアベルもまたそれに巻き込まれて倒れてしまう。
 後方にいたリコリスはパンドラの力を借りて何とか起き上がっていたが、たったの一撃でチームが半壊しかけてしまった。
「楽しく……とはいかなくなってきたか」
 フレイは徐々に戦況が悪化してきたことを悟る。
 確かに優位であった空中からの攻撃を潰したが、それでも地上からでも十分に動くことができる。
「さあ、行くのだ」
「させないよ!」
 イグナートは残る敵にカラー雪玉を当てたことを確認し、簡易飛行で大型の牽制に動く。
 相手の空中班はもういない。敵の攻撃も幾分緩んだこのタイミング、迅は遊撃班目がけて青い彗星となった雪玉を叩きつけていく。
 一度攻撃した迅は自軍後方へと下がり、次なる攻撃チャンスを待つ。
 問題は自軍が先程のロケット砲で半壊してしまったことだが、リコリスの闘志はまだ潰えていない。
「あの辺りなー」
「思いっきりやるんだ」
 空中にはまだコッコやフレイの姿がある。
 2人の指示を受け、リコリスは狙撃班が纏まる敵陣深くを狙ってドローンを飛ばし、雪玉を乱射していく。
「のああああっ」
 遠方からフレイやグレンを狙っていた狙撃班は思わぬ方向から奇襲を受け、物陰で倒れてしまうのだった。


 善戦していたはずのイレギュラーズ達。
 ただ、雪合戦というフィールドに長けた雪だるま達はメンバーの想像を超える力を発揮する。
(てか、雪玉以外の武器使うと難易度上がるってめんどくさいよなぁ)
 敵大型への牽制が弱まり、遊撃班が機能してこちらへと数で雪玉を投げつけてくる。
 盾役となるグレンは至近距離から意志の力を込めた雪玉を振り被って。
「この距離なら外さねえってな!」
 グレンは見事に叩きつけた遊撃班を撃破するが、まだ残っていた別の遊撃班、狙撃班に狙い撃ちにされ、残る体力を削ぎ落される。
 回復役はすでにいない。グレンはパンドラ収集器から零れる力の一端によって、強く意識を保っていた。
 途中までは楽しんで雪合戦をしていたフレイも再生力の高さでタンク役を続けていたが、再度飛んできたロケット砲を続けて自軍に撃ち込まれぬようにと身を張り、パンドラを砕いていた。
 ただ、イレギュラーズもやられてばかりではない。
「バリケード壊すのは殴ってもセーフだよね!」
 先程、仲間がバリケードごと雪だるまを撃破したのを見ていたイグナートだ。
 遊撃班が減ったことで彼は切り札を切り、全身の気を爆発させて突進して敵陣へと飛び込む。
 勢いのままに、イグナートはバリケードを破壊し、さらに別のバリケードに隠れて雪玉を投げつけ、残る遊撃、狙撃班を撃破していく。
(雪だるまに毒って効くのだろうか……?)
 女王蟻の首を使い、リコリスは毒を含んだ雪玉を投げつけると、イナリの爆発する雪玉、機動力を駆使する迅の雪玉が残る雪だるま達を地に伏していく。
「さいごに本丸、大物ふたりな!」
 仲間に守られ、コッコが残る兄弟な敵について指摘する。
 ただ、ここまでくれば数の利はイレギュラーズ。
「慌てず騒がず、確実に追い込んでしほーはっぽーからボッコボコなー!」
 コッコの激励を受け、バリケードに隠れるイナリは雪玉を使った嵐を巻き起こして大型へと浴びせかける。
 もう少し、気力は持つとイナリも考えてはいるが、互いの攻撃でバリケードの数が減ってきている。
 うまく自らを保護色のように隠していたイナリだが、徐々に身を隠すのが難しくなってきたこともあり、自陣へと下がっていく。
「待つのである!」
「倒された子供達の為にも徹底抗戦なのだ!」
 ここまでくれば小細工は無用と、迫りくる大型雪だるま達。
 身体の一部にカラー塗料が付いたままの彼らも少なからず雪だるまを受けており、体力がかなり削がれてきている。
 近場にまで迫ってきたことでフレイやグレンが敵の抑えに当たる中、リコリスも応戦する。
「ジャッカルは狡猾でずる賢い存在の象徴なんだってさ。ま、ボクは狼なんだけどね」
 元々、超反射神経を持つ彼女には不意打ちなど無意味ではあったのだが、隠し持っていた雪中迷彩塗装を施したドローンで零距離から曲芸射撃を撃ち込んでいく。
 しもやけにもなりそうな雪玉攻撃でのダメージを修復したイグナートは大型の1体を空中へと再度誘導して。
「そんな図体でフヨウイに飛行を覚えると飛行ペナルティ受けて返ってツライって教えてやろう」
 雷光と共に、空を飛ぶイグナートが敵を撹乱しながら飛び回り、雪玉を叩き込んでいく。
「む、むねん、なのだ……」
 目を回し、力尽きた大型が雪の上へと落下していった。
 もう1体もかなり追い込まれている状況。
 ここまでリタイアせずに生き残っていた迅も最後のバトルに加わって。
「兵の生死を分けるのは日頃の訓練と、最後まで諦めない不屈のド根性であることをお見せいたしましょう!!」
 雪玉が飛び交う戦場で迅も残る大型へと握りしめた雪弾を投げ飛ばす。
 こちらも終始、身を張っていたフレイ。
「これなら剣技ではないし、雪玉でも行けると思うんだよな」
 彼は黒き閃光と共に雪玉を投げつける。
 次の瞬間、その一撃は大型の雪玉の繋ぎ目に命中した。
「ぐああで、ある……」
 最後の大型は小さく呻き、地面へと転がったのだった。


 こうして、雪合戦はイレギュラーズ達の勝利で終わる。
「完敗なのだ」
「まだまだ、我らの練度は足りないのである」
 戦いが終われば、ノーサイド。互いの健闘を称え合う。
 倒れていたメンバーも身を起こすが、義実のみは怪我も大きかった様子。もう少し立ち回りの幅を広げるべきだったかと反省もあったようだ。
 ともあれ、敗北した雪だるま達は鉄帝の雪原から離れることに。
「また会うことがあれば、よろしくなのだ」
「さらばである!」
 多数の雪だるまを引き連れ、彼らはまたいずこかへと去っていく。
「もしかしたらまた、戦うことがあるかもしれませんね」
 彼らへと手を振っていたアクアベルはそんな予感がしていたのだった。

成否

成功

MVP

エシャメル・コッコ(p3p008572)
魔法少女

状態異常

インベルゲイン・浄院・義実(p3p009353)[重傷]
破戒僧

あとがき

 リプレイ、公開です。
 MVPはチームの指令塔となって活躍を見せた貴方へ。
 今回はご参加、ありがとうございました!

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