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シナリオ詳細

クリスマスには鮭を食え!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●シャケネンナハトだこの野郎!
 海の漢スラマオ。彼は大海と戦う猟師である。
 彼と彼率いる猟師団遠の洋漁業は海洋王国の食糧自給やふるさと納税に多大なる貢献をしてやまない。
「リーダー、港が見えてきましたぜ。へへっ、各地の港にゃ俺の女が待ってるのさ……」
「おめーに女なんかいねーだろ」
「リッツパークにはウェイトレスのキャシーちゃんが待ってんだよ! 俺ぁあのこと結婚するんだ!」
「毎年フラれてんのになあ」
「つーかよく毎年チャレンジするよな」
 丸坊主の男フランクや髭ずらのボッサー、わかめが主食のコブコブたちは愉快な団員だちだ。
 どんな彼らをまとめるスマラオもまた……。
「団長が向かうのは娘さんのところでしょう? あと若い奥さんの」
「ヒューヒュー!」
 今時ヒューヒューって本当にいうひといるんだなってくらいスムーズにヒューヒューする団員達に照れ笑いをすると、スマラオは近づく港を見つめた。
「そうだな。今日はシャイネンナハト。家に帰ってローストチキンを食わせてやるって約束なのさ」
 男前オブ男前の笑顔。歯を光らせて親指を立てるスマラオ……の背後に、首から上が鮭のひとが立っていた。
 あの、皆知ってるあの鮭あるじゃん。あと褌一丁のマッチョがいるじゃん。マッチョの首から上をそのまま鮭に雑コラしたのを想像して。それだから。
「シャイネンナハトには、鮭を食え」
 ポンッて肩に手を置く鮭マン。
「えっ」
 振り返ったスマラオをぐいっと持ち上げると、パイルドライバーからの反転バックドロップとかいうマニアックかつアクロバティックなプロレス技で甲板に沈めた。
「シャイネンナハトには! 鮭を食え!」

●この言葉ができてから三年くらいたつけど未だに企業はメリクリサーモンしてるらしい
「鮭なのです!!!!!!!!!!!!!!!!!」
 ローレット海洋支部(ってことになってる港町の酒場)に『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)がダイナミック飛び込み前転で入店してきた。
 こいつ何やってんだそして何言ってんだと振り返るイレギュラーズに、顔を受付の机にぶつけたユリーカが起き上がって叫んだ。
「鮭なベイベーなのです!!!!!!!!」
 もっとわからなくなったので、まずは順を追って説明しよう。

 鮭マン。正式名称サーモン・オーケイノス・ティーターイムは海に古くから伝わる大精霊のひとりである。
 一節によれば海洋の猟師にデラヒンナシャケの漁法を教え文明を助けた力ある神霊ともいわれ信仰の対象にもなったというが近年いろいろあって鮭信仰が廃り、どころかなんかいつからかシャイネンナハトには焼いたり揚げたりしたチキンを食うみたいな風習が定着したことにたいそうおブチギレあそばされているという。
「鮭マンは大量の鮭眷属をしたがえ港から上陸し、鶏肉屋さんやチキンをだすお店を襲撃しては鮭と入れ替えていく謎の運動をしているのです。
 抵抗する人間にはシュケバスターという謎のプロレス技を仕掛けて昏倒させ……るのですが、どうやら皆特に怪我は残っていないよう、なのです」
 人を傷つけることなく鮭を食わせる。
 そんな大精霊に、しかしシャイネンナハト需要に鶏肉売りたい人々は猛反発。
 なんとかして収めちゃくれねえかとローレットに依頼してきた次第である。

「鮭マンは暴力によって追い返すことは……理論上可能と言われてるのです。でもとっても強いので、最終的には美味しい鮭料理を作って一緒に食べることで『ニンゲン、やるじゃん……』て思わせるのがいいといわれているのです!
 なので!
 一旦殴っておとなしくさせてからお料理をする作戦……。
 『殴ってから鮭!』作戦を実行するのです!」

GMコメント

■オーダー:鮭マンに帰ってもらう
 作戦名、『殴ってから鮭!』。
 一旦鮭マンとその眷属シャーケーンたちと戦って興奮を落ち着かせてから、鮭料理を一緒に食べて納得してもらいましょう。

■バトルパート
 たたかえ! 話はそれからだ!
 別に不殺攻撃とか使わなくてもいいから安心してくれ。切り裂こうが鉛玉ぶち込もうが毒まみれにしようが大体最後はスッキリしてるのが鮭マンだから。りゆうなんかしらん。
・鮭マン
 褌一丁の鮭ヘッドで現れるナイスなボディのマン。
 非常に屈強でめちゃくちゃプロレス技ぶっこんでくる。
 地味に『BS無効』を持ってるがそれは多分海の大精霊だからじゃないかな。

・シャーケーン
 巨大な鮭から人間みたいな脚が生えた存在。
 きっとこの眷属作るとき鮭マン酔っ払ってたんだとおもう。
 鳴き声は『シャケェ!』です。
 鮭キックと鮭タックルと鮭ジェットストリームを使います。どんな技かは名前しかしらないので想像するしかねえな。

■お料理パート
 鮭をお料理しましょう。
 鮭マンが鮭食うのかっていう野暮なツッコミやよそうや。めっちゃ美味しく食うしなんなら一生懸命こっちに食わせようとしてるから。

 材料となる鮭はいっぱいあるので、自分なりにお料理してみましょう。
 ここでヒトクチアドバイス! お料理の手順をプレイングに書かずに料理名とつける工夫だけ書いておくとプレを節約できるしお勧めだゾ☆(実際の料理シーンはPCがあんまうつらないって理由で大幅にカットされることがあります)

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

■■■アドリブ度(鮭)■■■
 このシナリオには沢山の鮭とアドリブが含まれます。あ、イクラもあります。ストップっていってもかけ続けるのストップって言ってくださいヨイショーヨイショー!

  • クリスマスには鮭を食え!完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年01月07日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

亘理 義弘(p3p000398)
侠骨の拳
咲々宮 幻介(p3p001387)
刀身不屈
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
アンジュ・サルディーネ(p3p006960)
海軍士官候補生
ワモン・C・デルモンテ(p3p007195)
生イカが好き
リディア・T・レオンハート(p3p008325)
勇往邁進
エシャメル・コッコ(p3p008572)
魔法少女
トスト・クェント(p3p009132)
星灯る水面へ

リプレイ


「鮭! 食わずにはいられないッ!!!」
 ミニスカサンタコスの『流麗花月』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)が両目を切らーんってしながら振り返った。ぴーんとしたしっぽが先端をぷるぷる震わせ、耳はともかく今にも髭がとびだしそうな興奮ぶりである。
「よし、いまからあの鮭頭を掻っ捌いて食えばいいんだな。
 ふふふ、刺身にしようか、燻製にしようか……ん?
 こいつらはしばくだけ? そうか」
 巨大な鮭を食える日じゃないと気づいたのか、汰磨羈は表情をスンと鎮めるとたてていたしっぽを下げた。
 そろそろ状況を説明しておこう。
 真冬の海岸にやってきてポージングしている鮭マンとその眷属シャーケーンたち。
 迎え撃つはローレットから派遣されてきたイレギュラーズ。
 南国らしいというべきか12月の太陽が照り付けるなか、『魔法少女』エシャメル・コッコ(p3p008572)はプリン空手の構えをとった。なあにプリン空手って。
「でたな鮭マン! それとなんかアレなかっこしてるシャーケーンな!
 いまのトレンドがおしょーがつサーモンであることを見抜いたそのケーガンはみごとな!
 でもでもあばれるならこのコッコ、ヨーシャはせんな! まずはぼこぼこにしておとなしくさせてやるな!!」
「ち、違いますよコッコさん!
 アレは確かスケトウ〇ラっていう別の魚だったはずですよ!
 あと今回のお話はお正月じゃなくてシャイネン! つまりクリスマスの事であって――あーもう! 分かりました! とりあえず大人しくさせるのは賛成です!」
 行きますよ! と言って剣を構えるミニスカサンタの『勇往邁進』リディア・T・レオンハート(p3p008325)。
「シャケェ!」
「コッコー!」
 勢いで生きてそうな人達を、一歩下がった視点から眺める『よく食べる』トスト・クェント(p3p009132)。
「海初めてで楽しみにしてたんだけども、なんかそんなこと言ってる場合じゃなくなっちゃったなぁ。
 てか、他のモノを押しのけて食べさせようとしないで、もっと平和なアピールもあるだろうにねぇ
 まっ、とりあえず、倒せば鮭食べられるし! しっかり倒して、いっぱい食べるぞ!」
 『血道は決意とありて』咲々宮 幻介(p3p001387)はといえばまたもう一歩下がった視点から鮭マンとミニスカサンタコスの女性陣をまじまじと見つめていた。
 特に汰磨羈は背中をばっくりあける趣味があるので後ろからみていたほうが……ってちがうそうじゃない。
 幻介は大きく息を吸って、言うべきことをいった。
「何故鮭なので御座るか!? 拙者、この催しは初参加では御座るが鮭を食す催しでない事だけはハッキリ分かるで御座るぞ!」
「ナァニィー!?」
「ッスゾオラー!」
「シャケァオラァ!」
 巨大鮭から足だけ生えた眷属シャーケーンたちが目ぇかっぴらいて至近距離でガンとばしてくる。
 脅しかたがヤンキーのそれだった。
「いやあ、やはり何でも有りだな、混沌ってよ。未だに良く分からねえ存在がいる。
 基本的に殴って何とかなるのは救いだが、今回は旨い鮭料理も作らなきゃならねえ。……どうにせよ、気張るとするか」
 そんなシャーケーンたちの顔面を掴んでにらみ返すと、『仁義桜紋』亘理 義弘(p3p000398)がカタギじゃないツラで拳をごきごき鳴らし始めた。
「えっこれ何がはじまるんでござる? ハイロー?」
「もちろん、鮭パだぜ!」
 『ガトリングだぜ!』ワモン・C・デルモンテ(p3p007195)がずしゃーっておなかスライドで登場。サンタコスした『いわしを食べるな』アンジュ・サルディーネ(p3p006960)がその上にまたがってビッて親指を立てた。
「殴ってから鮭! 改めて聞くとすげー作戦だな!
 でも面白そうだからオイラもやっちゃうぜー!」
「そうだね。あと鮭っていわし食べるんでしょ? じゃあ敵だね、ぶちのめそ」
 きゅいって親指を反転して下げるアンジュ。
「やれるもんならやってみろやオラァ!」
「ッスゾオラー!」
「シャケァオラァ!」
 ガンガンにしゃしゃってくるシャーケーンたち。
 空飛ぶいわしを大量召喚したアンジュとガトリングを構えたワモン。
 あとホイッスルふいてヒヨコ応援団を呼び出したコッコ。
 対するは巨大鮭から足はやしたシャーケーンと褌一丁の鮭マン。
 いまここに、混沌ならではのカオスバトルが幕を開けようとしていた!


「行くぞ、鮭! お魚大好きねこの熱いハートが籠った刃を受けるがいい!」
 先陣をきったのは妖刀『絹剥ぎ餓慈郎』を抜刀した汰磨羈であった。
「こいやオラァ!」
「シャケェ!」
 三人がかりで走り謎のジェット噴射で加速するシャーケーンたち。
 彼らは流れるような連携で三人一列に重なるとまったく同じ速度で汰磨羈と突撃する。
「この陣形は、まかさ……!」
「「鮭ジェットストリーム!!」」
 クワッと目を光らせたシャーケーン!
 の、先頭一匹をげしって足払いする汰磨羈。後続二人はそれに躓いて派手に転倒した。
「グワー!? この鮭ジェットストリームを打ち破るとは!」
「やかましい」
 シャキシャキシャキーンと刀をひらめかせると、シャーケーンたちをサーモン寿司に変えた。シャリがどこからきたのかとか先生ききたくないな。
「よくも同胞を。ユルセン!」
 猛烈なタックルが浴びせられ、汰磨羈の後方で構えていたトストたちへと殺到する。謎の爆発と砂埃がおこり吹き飛ばされるも、トストは素早く態勢を整えて『ロベリアの花』を発動。悪意の霧がシャーケーンたちを包み込む。
「まだ戦闘には慣れないんだよなぁ。後衛だから安全だとは限らないし……」
「そういうことなら助太刀いたそう」
 幻介はゆらりと独特の効果音で割り込むと、さらなる突撃を仕掛けようとしているシャーケーンをマークした。
「鮭の眷属シャーケーンよ。拙者の刀『命響志陲』の錆にしてくれよう」
 っていいながら、生鮭をすって取り出した。
 生鮭を見つめるトストとシャーケーン。二度見する幻介。
「拙者の命響志陲ーーーーーーー!!」
「大丈夫なの? 武器とりにいく?」
「まあいいでござるか」
「まあいいの!?」
「シャーケーン覚悟!」
 チョアーといって飛びかかった幻介は握りしめた鮭のあのなに背びれ? とかで? うまいことシャーケーンを切り裂き反撃に繰り出されたキックをひらりひらりときにぬめりと回避した。
「ククク、今宵の生鮭は血に飢えておるぞ」
「その言い方だと鮭がただただ怖いね」
「もー! 真面目にやってよね!」
 アンジュはぷんすかして拳を突き上げた。
「生魚を武器にするなんてだめだよ!」
 っていいながらアンジュは『行け』のジェスチャーをだし、大量のイワシを浮遊させてはシャーケーンに突撃させ謎の爆発(こちらの爆発はセルフサービスになっております)を起こさせていた。
「鮭に食べられたいわしの無念……アンジュに集まれ、イワシジャッジメント!」
 きゅぴーんと銀色に輝いた拳。はっと見上げる男達。
 その手には……さっき飛んでいくのを嫌がったイワシさんが握られていた。
「くらえー!」
「シャケェー!?」
 ぐしゃあと音を立てて爆発(こちらの爆発は強制となっております)するいわし。
「「いわしーーーーーーーーー!!」」

 次々とシャーケーンがやられる中、鮭マンもまた戦っていた。
 具体的には……。
「うおお! オイラはアシカじゃねぇ!
 そしておまえはシャケ!
 クリスマスだからといわず食わせやがれー! 腹へったぞー!」
「うおお俺はシャケ!」
 高速きりもみ回転しながら飛んでいくあざらしことワモンと、同じくきりもみ回転しながら頭から突っ込んでいく鮭マンによる真正面からの激突であった。
 ぎゃぎゃぎゃっていう人体からでちゃいけない音をたてながら火花を散らし合うふたり。
「このまま放っておくわけにはいかねえな」
 義弘は横からドロップキックで参戦。
 吹っ飛んだ鮭マンの足を掴んでジャイアントスイングすると、砂浜めがけてぶんなげた。
 グワァといいながら転がった鮭マンは素早く立ち上がり、今度は義弘めがけてクロスチョップ。さらなる連続打撃でひるませた後後ろに回って鮭バックドロップを繰り出した。
「な、なんだかここだけプロレスな!? それも大阪あたりのやつな!?」
 コッコがどうやって割り込んだもんか迷っていると、リディア(くどいようだかサンタコス)が肩をポンと叩いた。
「こんな言葉があります」
「……」
「………………なんでしたっけ」
「こっちがききたいな!?」
「秋茄子は嫁に食わすなでしたっけ?」
「たぶん、いや絶対ちがうな!」
「あ、思い出しました『化物でも血が出るなら殺せる』でした」
「よりによってチョイスがえぐさな!」
 けど言いたいことはわかったな! といってこっこはプリン拳法の構えをとった。
「ぜんえーはんはコッコジェットストリームアタックの陣、こうえーはんはコッコを中心にしてインペリアルクロスサーモンの陣な!」
「コッコさんそれは!?」
「当然……ディッティが一番危険な」
「望むところですコッコさ――なんですその呼び名!?」
「ディッティとでろしゃぶの二択だったな」
「ディッティがいいです! ディッティが気に入りました!」
 わかったいくな! とプリンフラメンコの構えをとったコッコ。
 その勢いに押される形でリディアは剣を両手でしっかり握って身体をやや前屈みにまるめ胸のあたりで突き立てるように剣を構えて突進する『鉄砲玉の構え』もとい「レオンハートチャージアタック」を繰り出した。
「シャケェ!」
「グワーーー!?」
 剣はうめーこと鮭マンの脇腹にぶっささった。


「フウ、つい熱くなってしまった。正気に戻したお前達には鮭を食う権利をやろう」
 脇腹にばってんにしたバンソーコーはっただけで完治しやがった鮭マンは、ワゴン山盛りにしたぴちぴちの生鮭を眷属のシャーケーンに運ばせてきた。
「鮭はさばけるかな?」
「心得があるでござる」
 幻介は包丁を手に鮭をぽいーんと三匹くらい上に放り投げると、目にもとまらぬ早業で鮭をさばいていった。
「ありがとう。切り身にするならおれにもできそうだよ」
 トストはさばかれた鮭をスライスして皿にならべテイク。
「あ、おれは料理からきしなんだよ。
 故郷じゃ火をあんまし使えなかったからね」
「ふむ、折角に御座る。土鍋と出汁……この2つがあれば、鮭しゃぶというのもアリで御座るな」
 湯を沸かしたトストがそこへ昆布を一枚入れ、「これでいい?」と振り返ってくる。
「上出来でござる。これで熱燗とかあれば、一杯キメたい所で御座るが。あと、麗しい女人の御酌とかあればなー」
 チラッて振り返る幻介。
 そう、そこにはミニスカサンタコスをした――。
「「シャケェ!」」
 シャーケーンと鮭マンがいた。
 ぽって頬を赤らめるシャーケーン。
 スッてまな板に視線をもどすトスト。
「やっぱり魚は新鮮なのが一番だよなぁ」
「トスト殿助けて? 見なかったふりしないで助けて?」
 一方の義弘も黙々と準備を進め、石狩鍋を完成させていた。
「しかし、鮭マンは自分の仲間が食べられる事には抵抗ないのかね。食えと言って暴力奮っているくらいだし、それが望みなんだろうが……。
 満足したら帰ってくれるんだろうが、何とも、毎年来そうな雰囲気があるんだが」
「あっそれ私も気になった」
 サーモンの寿司をもぐもぐしていたアンジュが小さく手を上げた。
「ねえ、鮭マン。鮭マンはどうして鮭を食べられて嬉しそうなの? あなたにとって鮭って何?
 アンジュはさ…いわしが食べられてるの、すごく許せないよ。
 アンジュにとっていわしは家族で、友達で、大切なものなの。一匹たりともこの世界から居なくなるなんてやだよ。
 だから人も、魚も、動物も、いわしをいじめる何もかもをぶん殴ってきたの。
 でも、世界は何も変わらない。いわしは食糧として消費され続け、私は異常者として扱われただけ。
 ──ねえ、こんな事は無駄だと思わないの?
 シャイネンナハトにみんなに鮭を食べさせる事で、どんな結果を求めているの?」
 アンジュからの質問に、鮭マンはかくんと首をかしげた。
「自己の繁栄のために自己の一部を利用するのは当然の生命活動では?」
「ん?」
「ん?」
 お互い何言ってるのこいつって顔で首をかしげ合ったが、その後ろで汰磨羈が鮭のムニエルやらホイル焼きやらスモークサーモンやらを両手でばくばくいきながら語り出した。
「種の生存競争において、『食べさせる』というのは割と重要な要素をもつ。
 植物が果実を食べさせて繁殖域を広げたりな。鮭マンにとって鮭を人間の生活に定着させることは鮭という種の保存と保護を人間にとって必要なものにさせるという重大な意味があるのだろう。更に言えば、鮭にとって意識は群全体で共有するものであり個性や個人といった概念をもたない。鮭が一匹食べられることは自分の肉体を部分的に食べさせることに他ならないのだ。つまりイワシも食べ――」
「いわしたべたらころすよ」
 目を光らせて振り返るアンジュに、汰磨羈はうっかり喉をつまらせた。

「喫茶店料理長の実力、しっかりと見せつけてあげましょう!」
 エプロンをつけて腕まくりしたリディアは、切り身になった鮭を前に食器やらなにやらを準備しはじめた。
「テレビの前のみなさんごきんでよう。きょうは新鮮な鮭のカルパッチョを作っていきます。コックのリディアです」
「助手のコッコな!」
 コッコはでかめのミートハンマーを振り上げると、切り身に向けていきなりドーンした。
 当然切り身はグシャアする。
「嗚呼!? コッコさん!? もうちょっと丁寧に! 食べ物は大事に扱いましょうって教わらなかったんですか!?」
「肉はズタズタサーモンにしてサーモンユッケな! 卵黄おとしたら完璧な!」
 これな! といってずたずたにした鮭をご飯に載せて卵黄おとしてちょっとのごま油とラー油かけたものに醤油をそえると、スッてリディアへとだしてきた。
「おいしい……だと……?」
「また来週な! コッコー!」
「コケェー!」
「動いた後のシャケは格別だぜ!
 いただきまーす! あっちい! あちあち! うまうま!
 キャッチマイハートシャケェ! おかわりだ!」
 できあがったズタ鮭丼をかっこむワモン。
「しっかしこのシャケうめーなー、あんまりうまそうだったんで途中つまみ食いしちまったけど、生でもいけるぜ! 調理すればもっとうめーな!」
「だろぉ?」
 ビッと親指を立てる鮭マン。
 ワモンもビッとひれを立て、ニヒルに笑った。
「諸君、メリクリサーモン! 来年また逢おう!」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 メリクリサーモン!

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