PandoraPartyProject

シナリオ詳細

新たなる年を迎えるために

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●京の都の復興作業
 あちこちから、活気の良い人の声と、金づちを振るう音が聞こえる。
 様々な職人たちが街を行き交い、壊れた建物を解体したり、あるいは改築を行っている。
 イレギュラーズ達は、『神逐』の戦いの後、再びカムイグラの地を訪れていた。先の『神逐』での戦いにおいては、城下町にも少なくない被害が出ており、今はその復興のための作業で大忙しのようだった。
「……復興、進んでるみたい」
 白夜 希(p3p009099)は、その街の風景を眺めながら、安心気に息を吐いた。ふわ、と白い吐息が宙をあがる。時期はもう年末。随分と肌寒くなり、カムイグラも冬が本番、といった様相を呈している。
「できれば、しずかに、おだやかに……冬を迎えて欲しかったのですけれど」
 エル・エ・ルーエ(p3p008216)が言った。本来なら、忙しいとはいえ年越しの準備にのみ取り掛かるであろう時期であるが、しかし『神逐』の戦いの傷は、未だに癒え切った様子ではない。
 とはいえ、街の人々の顔には、絶望ではなく、希望の明かりがともっているように見受けられるのは、『神逐』の戦いを潜り抜けてきたイレギュラーズ達にとっても、喜ばしいばかりだ。
 さて、京の街をしばし歩いてから、奉行所へ。此処は街の治安や厄介ごとを担当する、いわゆる役所の派出所のよう場所である。中には、一般の町民からの相談に他応するべく、奉行所の職員たちが右往左往していた。
「おお、神使殿! ご足労、誠に感謝いたします!」
 奉行所の職員の一人から、声をかけられた。彼こそが、今回神使――イレギュラーズ達を呼んだ張本人であり、今回の依頼人であった。

●復興のために
「建築資材も人手も足りない……?」
 希が小首をかしげるのへ、奉行所の職員の男は頷いた。
「何せ、京の都も大規模に損害を被ったわけで御座るからな。城の方も相応に修復が必要であるし――まあ、今は街の復興を大事にせよとの仰せであるから、優先的にこちらに資材や人材が送られているとはいえ……それでもなぁ」
 むぅ、と職員が唸る。職員も言った通り、京の都が被った被害は、決して軽いものではない。となると、あちこちで家屋修復やけが人治療のための材料や人手が必要となるわけであるが、そうなって来ると、どうしても、不足しがちな部分は出てくる。
「だから、また、エルたちにお仕事を?」
 エルが尋ねるのへ、職員は頭を掻きながら言った。
「先の戦いで命がけで我らを守ってくださった神使殿がたに、また頼るのは忍びないが……この通りに御座る」
 そのまま深く頭を下げる。とはいえ、イレギュラーズ達も依頼としてやってきたわけ4だ。その心中は様々なれど、この国の力になる事には、やぶさかではない。
「……ええと、大丈夫。お仕事はちゃんと、受けるから。それで、何をすればいいの?」
 希が尋ねるのへ、職員は「おお、助かりまするぞ」と声をあげて、続けた。
「まず、ここより東の山林にて材木の確保を行っているのでござるが、どうにも悪しき妖の類が発生してしまって、作業が遅々として進まぬのでござる。そこで、皆様には、この妖を退けて欲しいのでござるな」
「妖退治、ですね。任せてください」
 エルが微笑んで頷くのへ、職員は「助かり申す」と頭を下げる。
「それから、これは余裕があったらで構わないのでござるが、街の方も見て回って欲しいのでござるよ。折しも、新年に向けての準備と重なってしまったこともあり、全般的に人手が足りぬのでござる。今は猫の手も借りたい状況……どうか、街の衆の力になってやって欲しいのでござる」
 つまり、イレギュラーズ達へのオーダーは、こうだ。
 まず、東の山林に現れた妖の撃退。
 そして、街を見回り、町民たちの手助けと交流を行う。
「色々と頼りきりになってしまって申し訳なく思うが、どうか、よろしくお願いいたす!」
 職員は、再び深く頭を下げた。
 イレギュラーズ達は、そう言う事ならば、と頷くと、さっそく仕事に取り掛かる事とした――。

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 カムイグラの復興の手助けを、よろしくお願いいたします。

●成功条件
 1.東の山林の妖の撃退
 2.町民たちとの交流

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●状況
 先の『神逐』の戦いにより、少なからず傷ついたカムイグラ、京の都。
 その復興用の資材を確保するために、妖退治と、町民たちとの交流とお手伝いの依頼が、皆さんにもたらされました。
 まずは東の山林に向い、資材回収を邪魔する妖を退治してください。
 その後は、街を巡り、町民たちの復興や年越しの作業のお手伝いや、町民たちと触れ合うことで、彼らの力となってあげてください。
 東の山林にて戦う時刻は、午前中。周囲は明るく、戦闘ペナルティなどは発生いたしません。
 町民たちとの交流は、お昼から夕方にかけて。建物の修理を手伝ったり、子供たちと触れ合ってみたり……思い思いに、カムイグラでのひと時をお過ごしください。

●エネミーデータ
 雀の妖 ×4
  巨大な雀の妖です。回避力と反応速度に秀でています。
  集団で動くことが多く、一人のイレギュラーズに対し、群れで一斉攻撃を仕掛けてくることが多いです。

 狼の妖 ×4
  獰猛な狼の妖です。攻撃力に秀でています。
  連携は不得手で、バラバラに動くようです。出血系統のBSに注意してください。

 以上となります。
 それでは、皆様のご参加をお待ちしています。

  • 新たなる年を迎えるために完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年01月10日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (8人)

彼岸会 無量(p3p007169)
帰心人心
鹿ノ子(p3p007279)
琥珀の約束
紅楼夢・紫月(p3p007611)
呪刀持ちの唄歌い
エル・エ・ルーエ(p3p008216)
ふゆのこころ
此平 扇(p3p008430)
糸無紙鳶
希紗良(p3p008628)
鬼菱ノ姫
瑞鬼(p3p008720)
幽世歩き
白夜 希(p3p009099)
神は許さなくても私が許そう

リプレイ

●豊穣のための第一歩
「はっはっは、来たか! 瑞鬼!」
 奉行所から出てきたイレギュラーズ達に、そんな元気そうな声がかかる。その声の方を見てみれば、腕を組んで大輪の笑顔を咲かせる、一人の八百万の姿があった。
「……刀子……」
 額に手をやり、思わず呻くのは『幽世歩き』瑞鬼(p3p008720)である。八百万――刀子は、瑞鬼の友人であった。
「そうじゃろうなぁ、こんな状況じゃ。お主の好きそうな事じゃろうなぁ」
「何を言うか。我は人助けは好きだが、人が困っているのは好きではない! 我が最も好ましいと思うのは、我が鍔が鳴らん平穏な時だよ!」
 わはは、と刀子は豪快に笑う。其れより、と刀子は言うと、続ける。
「君たちが来たという事は、東の山林の妖討伐に駆り出されたという事か。それもありがたいが、出来たら街の方の手伝いもお願いしたい所だな」
「それに関しては、奉行所の方からもお願いされてるッスよ」
 『琥珀の約束』鹿ノ子(p3p007279)が言う。「なるほど、そうかそうか」と刀子は笑うと、
「では心強いな! 怪我などせぬように、気を付けて行ってくるのだぞ……おっと」
 その時、凛とした音が鳴った。それは、刀子が持つ鍔のなる音であり、誰か困った者がいる時に鳴る警報音のようなものであった。
「では、我はこれで! また会おう、皆の者!」
 駆け足で何処かへと去っていく。その背中を見送りながら、
「なんというか……豪快と言うか……」
 『帰心人心』彼岸会 無量(p3p007169)が呟くのへ、瑞鬼は苦笑しながら答えた。
「嵐のような奴じゃろう? まぁ、悪い奴ではないのは確かじゃよ……それより、出発しよう。早めに仕事を終えて、町民たちの手伝いもせんとな」
 その言葉に、仲間達は頷いた。

 京の都から離れて街道へ。東へ向かってしばし進むと、広大な山林が見えてくる。
「新年を迎えるにしても、住む家が壊れたままでは悲しいであります。沢山お手伝いして、笑顔になって貰わねばであります」
 『鬼菱ノ姫』希紗良(p3p008628)がそう言った。そのまま、傍らを歩む仲間へと目を向け、すこし、小首をかしげた。
「……ご加減、よろしくないでありますか?」
 希紗良が、『白い死神』白夜 希(p3p009099)へと尋ねる。希は依頼を受諾した時から、無表情で、無口のままだ。それを、どこか調子でも良くないのか、と希紗良は心配したわけであるが、希は静かに首を振って、小さく呟いた。
「……いつも通り」
「そうでありましたか。些か、考え事をしているようでありましたので」
 あはは、と苦笑する。希は、ふぅ、とため息をついて、
「考え事をしていたのは事実」
「差し支えなければ、教えていただいても?」
 希紗良の言葉に、希はすこし、考えるそぶりを見せた。
「ごめん、個人的な、ことだから」
「そうでありますか」
 希紗良は微笑んだ。深くは踏み込まない。きっと、自分一人で考えたいことだろうから。
 希が考えたことは、今回の依頼が人間の都合で、妖怪の住処を奪うように思えた事であった。確かに、そう言った側面もあるだろう。とはいえ、依頼として受諾した以上、希とて、その仕事を全うすることに疑問の余地はない。ない、が。
 少しだけ、考えてしまうわけだ。
 この場合、どちらが悪であるのか、などを。
 それはおそらく、単純に答えの出る問いではないだろう。利害の衝突である以上、何方がより悪いか、という問題でもあるまい。
 とはいえ、世の中そういうモノである――そういうモノである、が。
 納得して目をそむけたくはない。
 ごめんなさい、あなた達は悪くない、と刃を向けることは容易いだろう。
 だがそれも――何か、本質から逃げ居てるような気もしてしまい。
 ぐるぐると、脳裏を巡る。前述したが、僅かな時間では答えなどでない。
「しかし、妖とは言え命を奪うのは、あまり気持ちの良いものではありませんねぇ。無益な殺生は避けたい所でありますゆえ」
 ふと、希紗良はそう言った。希は静かに、頷いた。答えは出ずとも、現実は目の前にある。山林入り口、伐採作業場に到着すれば、いくつもの大きな材木が転がっていて、職人たちが作業をしているのが見える。
「おお、神使様方ですね! 奉行所から話は聞いております!」
「皆様、作業お疲れ様です。では、早速ですが、お話を聞かせていただけますか?」
 無量が尋ねるのへ、作業者の男が答えた。
 男が指さして言うには、森の奥に雀のような妖と、狼のような妖が住み着いてしまっているのだという。
「そやねぇ。資材が取れないのは、困った話やねぇ」
 『呪刀持ちの唄歌い』紅楼夢・紫月(p3p007611)が言った。
「木材は重要やものねぇ。建築にはもちろん、端材も色々なものに使えるからねぇ」
 紫月のいう通り。余すところなく使える資材は、貴重にして重要なものだろう。その供給が途絶えてしまうとなると、今の豊穣にとっては些か苦しいこととなりかねない。
「大丈夫です。そのために、エルたちが来ました」
 『ふゆのこころ』エル・エ・ルーエ(p3p008216)がこくり、とうなづく。
「まかせてください。みなさんが、素敵な冬を過ごせるように。エルたちも、頑張ります」
「おお……よろしくお願いいたします!」
 頭を下げる作業者たち。そんな彼らを背に、一行はさっそく、森の奥へと向かう。冬のしんとした、冷たい空気がほほをくすぐる。さわさわと、揺れる木々の音があたりを駆け抜ける。
 一歩歩くたびに、ちち、ちち、と鳥の鳴く声が聞こえた。やがてそれが大きく、大きく、なってくる。
「見つけた……あいつらだね」
 『糸無紙鳶』此平 扇(p3p008430)が呟く。その視線の先にいたのは、4匹の狼のような妖と、同じく4匹の、雀のような妖だ。何方も人間の大人くらいの大きさをしていて、特にスズメはでっぷりと太った外観をしてる。ある種の愛嬌を感じるようではあったが、その眼光は鋭く、足先の凶悪な爪は、確かに凶器になるだろう。
「さて……どう攻めたものかな?」
 扇が言った。人間以外の相手をするのは、どうやらこれが初めてのようであった。
「対怪物のセオリー……みたいなものはあるのかい?」
「変わりませんよ。斬れば死にます」
 無量が表情一つ変えず言うので、扇は苦笑した。
「それはそうだろうけれど」
 と――がさり、と、希が草木をかき分けて立ち上がった。妖たちの視線が、希に集中する。
「……ごめん。貴方達に、話したいことがある」
 と、懐から牡丹餅を取り出して、放り投げた。妖たちの足元に、美味しそうな牡丹餅が落ちる。
「どうか、ここから立ち去ってくれないかな……貴方達が、ここを住処に選んだって言うのもわかる。離れたくないだろうことも。でも、どうか……」
 妖たちは、不思議気に、希を見つめていた――だが、それもわずかな間。妖たちは各々に威嚇の声をあげると、イレギュラーズ達へ向けて、牙をむき出しにしたのである。
 わずかに、希は瞼を閉じた。ダメだったか。分かってはいたことだけれど、でも――。
「お気持ちは、エルにもわかります」
 エルが、そう言った。
「なるべく、追い払うようにしましょう」
 その言葉に、仲間達は頷いた。そうして、武器を構えると、一気に戦場へと飛び出したのであった。

●最初のお仕事
 イレギュラーズ達と妖たちが衝突する――連携攻撃を仕掛けてくる雀たちを、イレギュラーズ達は上手く捌き、反撃に転じていた。
「貴方達の住まう森を荒らしているのは心苦しいのですが……」
 無量がその刃を煌かせた。妖刀が翻り、宙を舞う雀妖の一匹を斬りつける。ぴぃ、と声をあげて、地に落着。しかしとばかりに、残る三匹の爪が無量へと襲い掛かった! 無量はそれを、妖刀ではじく。体勢を崩した雀妖が空中でふらつくのを、
「隙あり、やねぇ」
 紫月は逃がさない。首落とす山茶花の斬撃。本来ならばその名通りに首を狙う一撃を、しかし紫月は剣先を反らした。逸れた刃は致命打を避けて、しかし鋭い傷を雀妖へと与える。
「あんまりお痛しとるとぉ、ほんとに死んでまうよぉ?」
 くすり、と笑う紫月。とはいえ、仲間達の意図を組んでか、加減はしているようだ。続くエルの不可視の一撃が、宙を舞う雀妖を捉えた。
「えいっ、です」
 叩きつけられた不可視の打撃が、雀妖をふらふらと地へと落着させる。
 さて、残る雀妖へ、鋭い蒼の雷が打ち据えられた。
「さっさと終わらせてもらうぞ。この後の仕事の方が大変そうじゃからな」
 瑞鬼の一撃だ。蒼雷は雀妖を倒すと、続く狼妖を強かに打ち据える。ぎゃん、と悲鳴を上げた狼妖が転がる――そのままびくびくと身体を震わせた。
 イレギュラーズ達は、堅実に、妖たちと戦っていく。妖の攻撃は、確かにイレギュラーズ達を傷つけはしたが、しかしその命に届くほどとは言えない。多少の傷を負いながらも、危なげなく、確実に、敵を仕留めていく。
「人とは違う……とはいえ、打撃を与えるべき場所は同じはず!」
 手にしたナイフで、扇は狼妖へと斬りこんだ。速力を威力へと変換し、必殺の一撃を繰り出す音速の殺術。実際、この場で扇の脚に追いつけるモノなどは誰も居なかった。その神速の一撃が、狼妖を捉えるや、確実にダメージを与えていく。
「よし……!」
 手応えあり、だ。狼妖が地に倒れ伏すのを確認する。
「キサは、狼を相手取るでありますよ!」
 残った狼妖が、吠え、最後の攻撃に転じた。希紗良を狙い、跳躍する。その鋭い牙が、希紗良の喉元にかぶりつこうとする瞬間――一瞬のきらめきが、狼妖を襲った。
 カウンター気味に放たれた、希紗良の刃。後の先をとる斬撃が、狼妖を討つ。次の瞬間には、狼妖は地に横たわっていた。が、命を奪うまでではない。ぐぐ、と唸りながら、立ち上がろうとする狼妖へ、希紗良は静かに刃を向ける。
「立ち向かって来るのならば、容赦はしないであります。どうか」
 その言葉が果たして通じるものか――それは不明だが、少なくとも、妖たちはイレギュラーズ達を、勝ち目のない相手であることは十分すぎるほど理解したようだ。生き残った妖たちは這う這うの体で、何処かへと逃げだす。
「……これでよかったのか?」
 扇が呟く。答えはない。答えられない。良かったのか、そうでないのか。それは分らない。
 ただ、少なくとも、依頼そのものの達成は出来ていただろう。此処を奪還できれば、妖たちの生死を着にはしていない。目的はあくまで、敵の撃退であるのだから。
「……謝らないよ。私達は人間だから」
 希が呟いた。それは、希の矜持でもあったのかも知れなかった。

●午後のお仕事
 さて、無事に妖たちを撃退したイレギュラーズ達は、作業者たちの歓待を受けた。しばしの休憩の後に都へと帰還することとなる。
「私は、ここで伐採作業の手伝いをするから……」
 希が、仲間達に向けてそう言った。傍らには、運搬用のロバと馬車が佇んでいて、その役割を発揮する時を静かに待っている。
「なら、第一便に資材を乗せるのを手伝うわぁ。行きくらいは、一緒に行くんのええんやなぁい?」
 紫月の提案に、仲間達も同意する。
「……ありがと」
 希は無表情ながら、そう謝意を込めて頷いた。
 希のロバと共に、都へと戻る。馬車には満載の資材がのせられていてたが、森の作業場ではさらなる資材が次々と増産されているはずである。何度も往復しなければなるまい。
「……いつもありがと。無茶させてばっかりだね」
 日ごろから色々と世話になっている自身のロバへ、希はそう言って優しく体を撫でた。ロバは主のねぎらいに感謝を示すように、一鳴きした。
 果たして時間をかけて、一行は都へと帰還した。日はちょうど頂点に達していて、街はこれから昼休憩の様相を呈していた。
「では、私はこの資材の配給について、奉行所と相談してきます」
 無量が少し口元を緩めて、言った。
「ここからは、各々自由行動でいいでしょう。まぁ、自由行動と言っても、仕事なわけですが……」
「わかって、います」
 エルがゆっくりと微笑む。
「エルは、皆さんのためにご飯を作るつもりです。奉行所の方から、配給用の食料を作っている所を、紹介してもらいました。そこへ、行きます」
「ならぁ、私も資材を配るのを手伝うわぁ」
 と、言うのは紫月。
「うむ。各々、やりたいことは決まっているようじゃな。無量のいう通り、解散でよいじゃろ」
 瑞鬼の言葉に、仲間達も頷く。
「それでは、また日が落ちたら落ち合いましょう」
 無量の言葉に、一同は各々、目的の場所へと向けて解散していった。

「わ、わ、わ」
 熱々のご飯を、エルは手にすくう。手に冷たい水をつけていたが、そんな冷たさはすぐに感じなくなってしまう。
 配給用の食事を作っている建物へと向かったエルと扇は、事情を話し厨房へと向かった。そこでは多くの人たちが食事を作っていて、エルも早速、おにぎりを作ることに挑戦したわけだが……。
「ご飯が、あつあつです……」
 熱さを我慢して、ぎゅっ、とおにぎりを握る。でも、初めての作業という事もあって、綺麗に参画に握るのは難しい。
「お嬢ちゃん、俵型に握るのもいいんじゃないのか?」
 通りがかった料理人の男が笑いながらそう言うのへ、しかしエルはぷるぷると首を振った。
「エルは、諦めません」
 果敢にも、次のおにぎり作成に挑戦していく。やさしく、やさしく、しっかりと。にぎって。ころがして、にぎって。難しいながらも、だんだんと楽しくなってくる。
「お、上手くできてるじゃないか」
 隣でみそ汁を作っていた、扇がエルの手の中を覗いた。そこには、些か不格好ながらも、三角の形をした可愛らしいおにぎりが出来上がっていた。
「……おいしく、食べていただけるでしょうか?」
 エルが小首をかしげるのへ、扇は笑った。
「ああ、きっと大丈夫さ。さ、お盆にのせて。みそ汁と一緒に、皆に配りに行こう」
 扇の言葉に、エルは笑って頷く。
 扇の作ったみそ汁と、漬物。そして、エルの作ったおにぎり。ささやかながら、心のこもった昼食をみんなに配るために、二人は調理場を後にした。
 外では多くの人たちが、食事を楽しみに待っていた。二人は大忙しで、食事を配って回る。
 目の回るような忙しさだったが、人々が笑顔で食事をとっている様子は、二人にとっても、心に残る光景になっただろう。
 それに、一息ついた後に食べた、自分たちで作ったおにぎりは、いつもよりもずっと、美味しく感じたのだ。

「希紗良さん、お疲れ様です」
 無量が、街を行く希紗良へと声をかけた。
「ああ、無量殿! お疲れ様であります!」
 ぱたぱたと手を振る希紗良。無量は資材を運び、希紗良は建物の建築作業の手伝いをしていた所だ。
「どうでしょうか、少し、休憩など」
「そうでありますね。こちらも、ひと段落着いた所でありますし……」
 にこり、と微笑んで、希紗良がそれを受け入れる。二人は広場を見つけて、そこに置かれていた切り株に腰を下ろした。
「こちら、葛湯です。よかったら」
「ありがとうございます! いただくでありますよ!」
 水筒から葛湯を注ぎ、差し出す。温かなそれが、身体を温めてくれる。二人は、復興続く街の景色を眺めてみた。作業速度は目に見えて上がっているようで、多くの場所で作業音が鳴り響いている。同時に、人々の楽しげな声も、響いているようだ。
 豊穣も大変なことがあったが、無事に年を越せそうだ。それは、神使……イレギュラーズ達の活躍のおかげでもある。
「今年は、貴女と知り合えて良かった。来年もまた、宜しくお願い致しますね」
 無量がそう言ってほほ笑むのへ、希紗良もまた、微笑んだ。
「こちらこそ、であります!」
 そんな二人の前を、子供たちがはしゃいで走っていく。この子供たちの笑顔も、自分たちが守ったのだ、と思えば、なんだか誇らしい気持ちになって来るというものだ。
 希紗良は、立ち上がって、うーん、と伸びをすると、
「さて、キサはまた作業に戻るであります。葛湯、ありがとうございました。さ、日の入りまで、もう少し頑張るでありますよ」
「ええ。それでは、また」
 無量は微笑んで、走り去っていく希紗良を見送った。しばらくしてから無量も立ち上がると、次なる作業場へと向かって行った。

 日が傾いてくる。日没までもうあと少し、といった時間帯だ。
 団小屋の軒先で、瑞鬼は、んん、と伸びをした。治療術による傷の治療を行っていたのだが、先の戦で傷を負ったものはもちろん、復興作業中の事故によるものまで、重傷軽傷唾つけとけば治るようなものまで、様々な患者が次々と運び込まれている。これは間違いなく、刀子が何の区別なく次々と患者を運んでくるせいであった。おかげで、一息付けた今の時点で、まぁへとへとだ。
「やれやれ、働くのは嫌いなんじゃがなぁ」
 ふぅ、とため息をついて、お茶を飲む。
「はっはっは、だが、人々のために働くというのは気持ちがいいだろう?」
 隣に座って大笑する刀子。刀子は、人々のために働けて満足だろう。だが、
「お前は相変わらずのお人好しじゃな……わしはもう働かんぞ……」
 瑞鬼としてはしばらくごめん願いたいことだろう。肩を落として疲労をアピールする瑞鬼へ、刀子は笑った。
「だが……以前の瑞鬼だったら……と考えれば。こんなことをするとは、ちょっと変わったな。もちろん、いい方向に」
「おぬしにいいように使われる方向に、の間違いではないのか?」
 べぇ、と舌を出して見せる瑞鬼。そのまま、茶をすすり――呟いた。
「……とはいえ」
 考えてみれば。
「確かに……悪い気はしないかもしれぬなぁ」
「……そうか!」
 にい、と刀子は笑って、茶を飲み込んだ。
 二人で見るカムイグラの夕日は、とても大きく、美しいものに見えた。

「~♪」
 日が沈む――カムイグラの地に。新しい年を迎えるために、日が沈む。
 紫月は日の沈む街を眺めながら、歌を歌った。それは、穏やかな歌。誰もが健やかに過ごせることを祈るような、そんな歌。
 大禍により、この街は確かに傷ついた。
 けれども、こうして、人々は確かに希望を抱いて生きている。
 明日も日が昇る。新たなる年がやってきて、それは希望に満ちた都市のはずだ。
 紫月は歌う。希望の歌を。
 同か全ての人が、幸せな明日を過ごせますように。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました。
 皆様のおかげで、カムイグラの人々……それから、きっと、生き残った妖も、穏やかな新年を迎えられたことでしょう。

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