シナリオ詳細
<Scheinen Nacht2020>劇作家が遺した演劇博物館を巡る
オープニング
●カルヴァーニ演劇博物館と云う遺産
――我が娘のオペレッタへ
この手紙が開封される頃、僕はもうこの世にはいないだろう。
僕は劇作家として、愛する娘の君に演劇を通して伝えたい事柄がある。
――劇作家フランフォン・カルヴァーニ
本日は世界中の全ての争いが魔法の様に休止してしまう聖夜の日だ。
先日、『鉄帝』北国で魔種フランフォンとの死闘があった事実すら懐かしい。
「実は件のフランフォン・カルヴァーニから遺言状がローレットに届きました。実娘のエル・エ・ルーエ(p3p008216)さん宛へのお手紙です」
ローレットのギルドであなた方に事情を解説する情報屋はロゼッタ・ライヘンバッハ(p3n000165)だ。ロゼッタは親展の封筒を丁寧にエルへ手渡した。
「えっ!? お父さんからエル宛にお手紙ですか? あのお父さんが……? これは、驚きですね。それはそうと、気になりますので、早く開封してしまいましょう。悪い物ではないと、良いのですが……」
エル宛に届いた手紙の日付には先日の討伐日よりも遥か以前の日が記載されていた。
彼は魔種に成った頃から死期を自覚していた為に遺書を残していたのかもしれない。
「こ、これはっ……? 『カルヴァーニ演劇博物館への招待状』という物も、出て来ましたが? はい、まずは、お手紙を読みますと……」
エルが遺言状を読み上げるとどうやら劇作家だった亡き実父は博物館を遺したそうだ。
特に冬を題材として展示した演劇専門の博物館を『鉄帝』郊外に開館したとの事。
「ふむ、そういう事ですか? 折角ですし、ローレットの有志でエルさんのお父様が遺した博物館へ遊びに行きませんか? おそらくあのお父様は、エルさんに対して伝えたい事があったのではないでしょうか? 先日の討伐の日では、語り切れなかった何かがあったのだと思われます」
手紙の事情を知り受けてロゼッタが特異運命座標の面子にも提案する。
むしろ、演劇博物館と云う表現の場へ特異運命座標が集まれば故人も本望だろう。
「そうですね、ぜひ有志で博物館巡りでも、しましょうか? それはそうと……。お父さん、劇作家なだけあって、本当に憎い演出ですね。こんな回りくどいやり方をしなくても、直接言ってくれれば良かったと、エルは思います。しかも、シャイネン・ナハトという魔法の日に、手紙の開封を狙ってまで……」
エルは魔種として敗れ去った亡き父の面影を思い起こして涙目と鼻声になる。
彼女はそっと手で涙を拭い取ると、手紙をゆっくりと親展封筒に戻した。
さて、特異運命座標の皆様は各自の都合で博物館を愉しまれてはいかがだろうか。
聖夜解禁の博物館で故人を忍ぶのも純粋に遊ばれるのもどちらでも構わない。
- <Scheinen Nacht2020>劇作家が遺した演劇博物館を巡る完了
- GM名ヤガ・ガラス
- 種別通常
- 難易度EASY
- 冒険終了日時2021年01月14日 22時01分
- 参加人数6/6人
- 相談10日
- 参加費100RC
参加者 : 6 人
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参加者一覧(6人)
リプレイ
●ベルナルドとヨハン
――命は雪のように淡く、いつか消えゆく。
儚いからこそ人は、誰かの心に残る事を願い、作品を作り続けるのかもな。
――『聖女の小鳥』ベルナルド=ヴァレンティーノ(p3p002941)
粉雪が舞うシャイネン・ナハトの聖夜にカルヴァーニ演劇博物館が開館された。
今夜、特異運命座標と情報屋の計七名が当博物館を訪れる。
「劇作家と画家。ジャンルは違えど、芸術に満ちた人生を歩む者としてフランフォンに敬意を示すと共に、彼の遺した『人生』に触れに来た」
開館と同時に博物館の門を潜るのは自らも画家と云う芸術家であるベルナルドだ。
本日は劇作家が博物館に遺した演劇の知性に触れられる事を期待して居る。
「さて、劇作家さんのフランフォン・カルヴァーニですが……。僕は、この名前を聞くのは初めてでしたが魔種だったとは。っとと、故人の娘さんの前でそんな事言うのもアレですね。ところで、ベルナルドさんは生前のフランフォンさんと芸術業界で面識があったのですか?」
ベルナルドの傍らで『男の娘の魅力』ヨハン=レーム(p3p001117)も門を潜る。
本日の彼はベルナルド画伯の助手として当博物館で学識を深めるつもりだ。
「いいや、直接の面識はないな。『鉄帝』界隈で一世を風靡した劇作家である事実を知っているが、彼の作品に触れるのは今回で初めてだ。しかし、一連の事件については、不幸な事故だったと思っている。芸術家ってのは繊細な人間が多いからな。支えを失えば折れやすい。……かつて俺がそうであったように」
ベルナルドは当依頼の予習としてフランフォン事件の記録を事前に調べた様だ。
彼自身も過去に壮絶な時期を経験した芸術家としてある種の同情を禁じ得ない。
「確かに、芸術家の不幸を象徴したような事件でしたね。フランフォンさんが起こした事件は許されるものではないですけど……。結局、言葉巧みに反転させてくる原罪の呼び声というものが悪いのでしょうか」
ヨハンも今回の依頼参加に向けてベルナルドと共に例の事件簿は一通り押さえた。
内面が繊細な彼には心中が中々に穏やかではなかったそうだ。
展示室では初期の作品から遡って近年の代表作迄の生原稿が丁重に保管されて居た。
二人は早速、編年体に沿って作品群の流れを辿ってみた。
「どれどれ? 時系列からフランフォンが描きたかった世界のイメージを膨らませてみるか。……ううむ、売れない時期から近年まで遡っていくと、ある時期を境にぐっと登場人物の心の動きに深みを感じる。届けたい相手が明確になったからかもな?」
ベルナルドの審美眼が遺された原稿を鋭利に分析する。
やはりターニングポイントは愛すべき女性を見出した代表作の時期だったかと頷く。
「ふむ? 僕も思うところがあります。例えば、『作品の芸術性』と『作者の人格』は切り離して考えるべきでしょうか? ぜひとも芸術家本業のベルナルドさんの解釈をお聴きしたいですね?」
ヨハンもベルナルドと共に数々の原稿が生み出された流れを辿ると疑問を抱いた。
演劇博物館は遺族の個人的な追憶かもしれないが彼は公平な目線で見学を試みる。
「面白い質問だな。俺もかつては『天義』で持て囃された画家だ。その昔、とある作品が異端であると聖女に断罪された過去もあってだな。その事件から学んだ教訓だが、『作品の芸術性』と『作者の人格』は切り離して考えたくても結び付けて考えてしまうのが人の悲しい性なのかもしれん」
ベルナルドは在りし日の苦闘を思い起こしながらも自らの解釈に熱弁を振るう。
彼には自暴自棄で精神的に筆が執れない過去もあり何とも芸術家は苦悩が絶えない。
***
芸術談義に一先ずの決着がつくと二人はそれぞれの関心に沿って見学をする。
ベルナルドは衣装と小道具展の部屋へ向かい当時の印刷物を観覧した。
「やはり気になるのは当時のポスターやチケットだな。当時の絵描きがどんな部分をアピールしたかは気になるところだ」
色彩美術にも造詣が深いベルナルドは代表作に込められた絵描きの記号を読み取る。
華やかな雪の女王と妖精の印刷物には寒色を活かした独自の色調が観られた様だ。
観覧を終えた後、ベルナルドは休憩スペースで仕事道具を取り出して描画を試みる。
今回の展示で芸術的天啓を受けた彼は筆の勢いが止まる事を知らなかった。
――澄んだ氷の世界で微笑む雪の女王と、幸せそうな雪の妖精。二人を愛するように柔らかく降り注ぐ朝日。冷たいけれど温かい。そんな一枚を描きたい。
ベルナルドが黙々と絵画を完成へと導く頃には周囲にギャラリーが出来て居た。
完成度の高さに心を奪われた学芸員達に請願されて絵画は当館への寄贈品と成る。
***
一方のヨハンは兼ねてから気に成って居た書斎展示室に入室する。
彼は細心の注意を払いながらも学芸員から見本の脚本を受け取った。
「『雪の女王に捧げるレクイエム』が大ヒットしたのであれば、僕にもわかるような大衆芸術なのかもですけど。では演劇とやらの座学に励むとしましょうか」
代表作には映画版もあったがヨハンはあえて文字から読み解く方を選択した。
脚本をぱらぱらと紐解きながらも注意深く速読して劇の概要を読み取った。
「薄情な気もしますが、家族間のアレコレは家族にしかわからないモノなのです。……僕が真面目に推測し始めると魔種になりやすい人間の特徴とか、そういう事ばかり探ってしまいそうですね」
脚本に一通り目を通したヨハンは静かに本を閉じて円らな瞳も閉じた。
ヨハン自身は身内でも芸術家でもないので決定的な結論は下せないが……。
――この博物館が世界に存在する事で少しでも世の中が明るくなれば良いですね。
●栄
『伝 説 の 特 異 運 命 座 標』虚栄 心(p3p007991)は妄想逞しく邪気眼を強烈に輝かせながら本日の博物館巡りに現れた。
「ふふふ、この私の伝説がさらに輝く為の礎としてやるわ! 演劇のフィルムとやらを拝見させてもらおうかなー」
心は上映される代表作『雪の女王に捧げるレクイエム』を観る為に手前の席を陣取った。
「まあ、ぶっちゃけ凡種が書いたシナリオなんて大して期待してないけどね」
主演女優エリーゼを全面に押し出して居る為か心には艶のある劇にも見えるそうだ。
「しかも色欲に振り回されるとか、毎年シャイネン・ナハトのたびに湧いてくるにわかカップルと同レベルの精神性でしょ」
上映前から劇に批評を加えつつも心は内心では上映開始を心待ちにして居た。
一方で観客席はカップルが多い為、独り参加の心は若干の居心地の悪さを覚える。
「話は変わるけど、なんでシャイネン・ナハトのたびにあちこちでカップルが急造されるの? 発情期なの? シャイネン・ナハトってのは、なんかもっと……神聖なあれであって、男女が盛る日じゃないんですけど? べ、別に自分にパートナーが居ないから僻んでるんじゃないんだからねっ! 勘違いしないでよねっ!」
厳粛な冬の衣装を纏った雪の女王である女優のエリーゼが華やかに劇中で演ずる。
女王がモノローグを通して冬が生き物の生命を奪う峻厳さを語ると……。
「う、うう……そうよね、冬になると動物も植物も昆虫も皆……ぐすん、ぐすん、雪と寒さと飢えで……死んでしまうのよね……」
気付けば何時の間にか演劇に号泣して居る自身を心は発見した。
彼の代表作は案外傑作だった事を認めざるを得ないのだが……。
「と、途中でタマネギ切っただけで感動して泣いてるんじゃないんだからねっ! 勘違いしないでよねっ!」
眼光に邪気眼の輝きが戻ると、心は尊大な態度で周囲を「虚栄光」で威圧して居た。
心は今回の演劇映画から学んだ感動を糧にしてさらなる伝説の高みを目指す事だろう。
●マリア
先日のフランフォン事件での死闘を追悼するかの様に『白虎護』マリア・レイシス(p3p006685)は本日の博物館巡りに臨むそうだ。
マリアは前回で活躍した半面、葬ったかつての強敵に一抹の寂しさも感じる様だ。
「フランフォン君……。彼とは戦いの中でしか面識はないけれど、魔種になる前にお話してみたかったな……」
彼女は有志と共に博物館の門を潜ると遺族の仲間に配慮しながら笑顔で呟いた。
「彼の遺した博物館……。一体どんなものなんだろうね? 不謹慎かもしれないけれど少しわくわくしてしまうよ」
マリアは生原稿の展示室を巡りながらフランフォンの創作劇に想いを馳せる。
「彼はどんな人物だったのか? どんな作品を創り上げたのか? 少しでも知りたい……」
代表作『雪の女王に捧げるレクイエム』の展示パネル前でマリアは目頭が熱く成った。
殺してしまったフランフォンにもかつては愛すべき女性が居たと云う事実に……。
例え相手が魔種と雖もマリアは自らが奪った命と向き合う為に展示と誠意で対話する。
「私は軍人だ。けれど、国にはずっとこう教育された……」
――死を恐れ、命を奪うことを嫌悪せよ。(Memento Mori)
「人は死に恐怖を感じなくなった時。そして命を奪うことに慣れてしまった時、怪物になる。死の恐怖を噛みしめ、命を奪うことに嫌悪しながら戦えと軍人に言うのは酷だ。それでも国民の命を護ることを国是とする我が国ではそう教育された」
――辛くとも、苦しくとも、護る者はそれを忘れてはいけない。
そんな鉄則と良識の狭間で揺れながらもマリアはドッグタグを強く握り締める。
専守防衛国家ガイアズユニオンの『雷光殲姫』としての信条は今でも健在だ。
フランフォン事件の教訓を忘れない為にもマリアは代表作の映画を心に焼き付けた。
銀幕の『雪の女王に捧げるレクイエム』が訴える冬の賛歌はマリアの心を打った。
「ふうむ。これが若き日のフランフォン君が世の中に伝えたかった作品か……。確かに、後世に遺したい素晴らしい演劇だね……。フィルムが残っていたのは幸運だ」
マリアは劇の映画を鑑賞した後は衣装と小道具展を見て回り、書斎へと辿り着く。
書斎は劇作家フランフォンの博学さを象徴するかの様に万巻の書物で溢れて居た。
「彼はこういう環境で仕事をしていたのか……。きっと真面目な男性だったんだろうね……」
最後に写真展を観覧すると一家三人の古き良き日の写真がマリアの目に留まる。
マリアは幸せそうな家族の肖像に胸を締め付けられる想いで見入って居た。
そして、彼女は此の博物館を世に遺した故人を忍びながら天に祈った。
――フランフォン君……。君の娘さんはきっと立派に成長するよ。どうか安らかに……。
●フリークライ
先日のフランフォン事件で回復役として死闘を演じた『友思う心』フリークライ(p3p008595)は、本日の博物館巡りにも有志として同行した。
仲間と共に博物館見学へ歩みを進めるフリークライは心中で問題を整理する。
「ン。思ウコトハ 色々アル。何故 死期ヲ悟ッテイタノカ。理性 ドノ位残ッテル時ノ モノナノカトカ。何ヲ 伝エヨウトシテイルノカトカ……」
だが、其の様な疑問はフリークライにとって些細な事であり本題は友人の今である。
「エル オ父サン 最後 思イ出ガ 戦イ以外ニナル。ソノコト フリック 嬉シク 思ウ」
フリークライは入館前に学芸員と話があるとの事で一度離脱する。
管理人の学芸員が対応に現れるとフリークライは献花を手渡した。
「博物館 管理 スタッフニ 感謝」
「この様な素敵な物を博物館に頂けるのですか? ありがとうございます」
混沌の植物知識に精通する庭師フリークライが特選した献花である。
雪の劇作家にちなんで『鉄帝』の真冬に咲き誇る静謐な花々を捧げた。
「博物館モマタ 故人 墓標。ソレニ フランフォン自身ガ 遺シタ 自ラノ 墓標。フリックモ 尊ブ」
館前にあるフランフォン記念碑の下でフリークライは黙祷した。
入館したフリークライは館内を満遍なく見て回る。
特に展示数が多い生原稿展ではパネルの文字と説明を一字一句丁寧に閲読した。
フリークライは各作品の舞台を把握しながら作者の人格も想像した。
「展示物 故人 見テ欲シイカラコソノ物ダカラ」
フリークライは先日の依頼を通じてエルの父親の方は既知だが母親の方は未知だ。
自然と興味を覚えたフリークライは舞台女優の母親が遺した軌跡も辿った。
雪の女王であったエリーゼの衣装、小道具、代表作等を観覧して……。
「エル オ母サン ドンナヒトナノダロウト 記録 興味。ン。事件モ有リ 自然ト オ父サンノコトバカリ 聞イテイタカラ」
最後に写真展でもエリーゼを確認すると其の若き日の姿は何処か友人に似て居た。
フリークライは思わずほっこりと微笑んだ様だ。
館内の展示物を純粋に楽しんだフリークライは休憩スペースで暖を取る。
ベルナルド画伯が描く美麗な冬の絵画を眺めながらも本日を振り返った。
「フランフォンモ ココニ展示サレテルノハ 魔種 反転前ノコトバカリ? ……ン。反転前ノ フランフォン 人生 ココニアル。反転後 フランフォン 反転前ノ 自分ノ人生ニ 何ヲ想イ 建テタノダロウ」
おそらく彼は、愛する娘、妻、演劇の事を想って建てたのではあるだろうが……。
其の真実はフランフォン自身すらも分からない謎の侭かもしれない。
だけれどフリークライは本日の見学を総括して一つの解釈を導いた。
――フリック ココ 墓標 思ッタケレド。魔種トシテノ フランフォンニヨル 人トシテノ 墓標ダッタ カモシレナイ。
●エルとロゼッタ
劇作家としてのフランフォンは、一体、何を『ふゆのこころ』エル・エ・ルーエ(p3p008216)或いはオペレッタに伝え様として博物館を遺して招待状を送って来たのだろうか。
「エルは、とっても気になります。ロゼッタさんも、一緒に見に行きましょう」
「ぜひ見学したいですね。私も気になる所です」
エルに誘われて情報屋の『鉄騎学者』ロゼッタ・ライヘンバッハ(p3n000165)も同行する。
そして有志を募った二人はローレットの仲間達と共に演劇博物館へと訪れた。
入館した二人は生原稿展へと早速、足を運ぶ。
代表作『雪の女王に捧げるレクイエム』の生原稿は丁重な硝子箱の中で保管されて居た。
エルは説明パネルを丁寧に目で追うと両親の若き日々の出会いを想像した。
「これが、お父さんがお母さんと出会って、結ばれるきっかけになった、脚本ですね。情熱と言えば、良いのでしょうか? エルはこの脚本に、熱い想いを、感じました」
エルの感嘆する声にロゼッタが相槌を打つ。
「でしょうね。その熱い想いはお二人の青春だったのかもしれません」
展示室では代表作の映画が上映されて居るので二人は並びの席で鑑賞した。
作中で雪の女王を演じるエリーゼの挙動や声調には主演女優としての風格がある。
エルは銀幕の中で動く母親の一挙一動をじっくりと注視して居た。
(……お母さん、本当に綺麗です)
(ええ。素敵な方だったのですね)
映画を観終えた二人は衣装と小道具展を巡りながら劇中を思い起こす。
時に雪の妖精の衣装はエルが幼い頃に試着したあの衣装ではないだろうか。
「雪の妖精の衣装、とっても懐かしいです。今ではちょっとだけ、小さいように見えますね。でも、まだまだ雪の女王の衣装は、エルには大きいって思いました」
「試着コーナーもありますね? 着てみますか?」
ロゼッタに勧められて、エルは試着室を借りて模造品の衣装を着用するが……。
やはりエルの見立て通りに女王衣装は一回り程大きかった様だ。
二人は書斎展示室に入室して驚愕する。
ロゼッタの方は文化人の書斎の迫力に。
エルの方は……。
「わわわっ。お父さんのお仕事のお部屋、そのまま持ってきたみたいだって、エルは驚きました。エルの大好きな童話も、たくさんあります。これが、懐かしいという気持ちだって、エルは覚えました」
「学芸員の許可を取れば童話の見本はお手に取って良いそうですよ?」
エルは在りし日の大好きな童話を捲って父親との思い出を想起する。
彼女が所有する『冬のおとぎ話』とはまた一味違った趣がある様だ。
最後に二人は写真展示室でカルヴァーニ家の写真を観覧した。
とある写真の前でエルは思わず声を上げてしまう。
「この写真。エルは、初めて見ました。お父さん、お母さん、ちっちゃいオペレッタ。お父さんは、二人とも、とっても大好きだったのですね。エルは、えぅは……ぐすん、ふぇ……」
突然と泣き崩れるエルを前にしてまずロゼッタが宥めた。
館内に散らばる仲間達もエルの泣き声を聞くと皆で駆け付けてくれた。
ベルナルドが、ヨハンが、心が、マリアが、フリークライが……。
今のエルには心強い仲間達が居るから亡き父の霊魂も安らかだろう。
見学後、エルはロゼッタと学芸員にお願いを申し出た。
其の純粋で誠実な願いとは……。
――この博物館を、維持するお手伝いを、エルにさせてもらえますか? お父さんが、いっぱいいっぱい頑張った事を、色んな方に知ってもらいたいし、見て貰いたいって、エルは思いました。どうか、お願いします。
後日、エルは此処の学芸員と成って演劇博物館の運営を手伝う事に成る。
エルは劇作家が遺した演劇博物館を巡った事で一つの結論に辿り着けた様だ。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
シナリオ参加ありがとうございました。
博物館で故人を忍ばれた方。
博物館巡りを純粋に楽しまれた方。
皆さん、良きシャイネン・ナハトを過ごせた様で誠に幸いです。
GMコメント
●注意事項
当依頼はエル・エ・ルーエ(p3p008216)さんの『関係者依頼』です。
関係者以外の方も今回から参加の方も大歓迎です。
●経緯
以下、前回迄のシナリオと過去のSSを提示します。
参考になるかもしれませんが、今回参加の際に必読ではありません。
純粋に「シャイネン・ナハト」や「博物館巡り」を楽しまれても良いです。
前回シナリオ「劇作家フランフォン・カルヴァーニの最終公演」
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/4595
前々回シナリオ「雪の妖精の裁きと訣別する為に」
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/4058
過去SS「カルヴァーニ家の昔話」
https://rev1.reversion.jp/scenario/ssdetail/853
●フランフォン・カルヴァーニとは誰?
エル・エ・ルーエ(p3p008216)さんの実父です。故人です。
元々は冴えない劇作家でした。所謂ダメなお父さんでもありました。
雪の女王の劇(エルさんの母親主演)で大ヒットした過去もあります。
しかし、喧嘩で妻を殺害した衝動で魔種に反転してしまいました。
前々回でエルさん似の女の子達を誘拐した連続殺人事件を起こしました。
撃退された後、前回は孤児院を占拠しましたがローレットに討伐されました。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
●目標
劇作家フランフォン・カルヴァーニが遺した演劇博物館を巡る。
●ロケーション
『鉄帝』首都郊外にあるカルヴァーニ演劇博物館が今回の物語の舞台です。
博物館は郊外の雪降る森に位置するログハウスの一軒家です。
大きな博物館ではありませんが、ゆったりと出来る雰囲気の場所です。
●展示物
演劇博物館の館内では以下のフランフォンの遺品が展示されています。
・生原稿展
売れなかった頃から全盛期の頃までの生原稿が硝子ケース内に展示されています。
初期の作品は、探偵物や冒険物が主にあります。
全盛期の作品には、舞台女優エリーゼ(妻)を主演にした大ヒット作『雪の女王に捧げるレクイエム』があります。
なお展示室にはスクリーンもあり上記演劇のフィルムが鑑賞出来ます。
・衣装と小道具展
代表作『雪の女王に捧げるレクイエム』の劇で使用された衣装や小道具が展示されています。
雪の女王の衣装や雪の妖精の衣装等はマネキンが着衣しています。
当時の劇の小道具のステッキ、ランタン、楽器等は硝子ケースに入っています。
なお模造品の衣装を着たり、模造品の小道具を持ったりしての記念撮影も可能です。
・書斎展
フランフォンの自宅の仕事部屋である書斎が再現されています。
主に演劇に関する専門書籍が本棚に収納されています。
子供に読み聞かせる冬の童話や冬の小説も置いてあります。
なお書斎の本は細心の注意を払った上で手に取る事が出来ます。
・写真展
カルヴァーニ一家の記念写真が展示されています。
フランフォン、エリーゼ(妻)、オペレッタ(=エルさん、娘)の写真です。
『雪の女王に捧げるレクイエム』成功当時のトロフィー、賞状、写真もあります。
・その他
館内には休憩スペースもあります。
自販機等で飲み物を飲めます。
●NPC
今回、情報屋のロゼッタ・ライヘンバッハ(p3n000165)も呼ばれれば参加します。
ロゼッタと何かしたい場合は「プレイング」でご自由にどうぞ。
ちなみに彼女はフランフォン事件(前回と前々回)を担当した情報屋でもあります。
●GMより
ハッピー・シャイネン・ナハト! 今回はエピローグ的なお話です。
年末年始の期間である関係から相談日は「10日」設けています。
お好きな時に「プレイング」投稿、お好きな展示でご自由に参加をどうぞ。
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