PandoraPartyProject

シナリオ詳細

温泉旅館と年越し

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

■本年最後のとんでもお客
 年末の温泉街は観光客で賑わい大忙しである。例年であれば。
 今年はタチの悪い流行病が大流行してしまい、観光客はいなくなった。一時期は肩を落とした温泉街の住人達だが、気を取り直す。いつも忙しい年末年始でゆっくりできなかったのだから、たまには自分たちもゆっくり過ごそう、と。
 こうして休みを決め込んだ住人達は仕事を忘れ思い思いに過ごす。温泉旅館の従業員達も例外でなく、簡単な管理作業以外は完全に休日だ。支配人も例外ではない。
「お客様がいないのは悲しい事だが……うむ、一年くらい、こういう年があっても良いのかもしれんな」
 今年は色々ありすぎた。幽霊騒動が解決したと思えば、そのまま幽霊が住み着いて。夏には大ダコが現れたり、秋にはゴブリン達が騒いだり。しかしその全てを幸運な事に協力者を得る事ができて乗り越えた旅館なのだ。
 もうこれ以上、トラブルなど起きないだろう。大晦日を目前にしたその日、支配人は簡単な見回りだけして自分も帰宅しようと……そうしていたのだ。
 幽霊夫妻からとんでもない話を聞かされるまでは。
「し、支配人……大変です」
「おや、どうしたのかね?」
 今では立派な従業員にして、頼りになる自警団の幽霊夫妻だが。何かに怯えるようにして支配人の前に姿を見せる。
 首をかしげる支配人だが……旅館の扉を開ける存在を目にして、腰を抜かす事になる。
「我こそはアマテラス。大神である。主がこの旅館の長か」
「は、はぁああああああ!?」
 魔物がいれば幽霊もいるのだ。神もいる。この世界の常識である。
 しかし、しかしだ。
 このような雲の上も上な存在が、よりにもよって従業員がいない時に現れるなど、夢にも思っていなかったのだ。

■助っ人求む!!
「……このおじさんも毎度毎度大変だね。不幸体質っていうんだっけ?」
 境界案内人のカストルが、心底同情しているかのような表情を見せる。前世でどれだけの業を背負ったのだろうかこの支配人は。
 さておき、仕事だよ、と集まったイレギュラーズ達を見渡す。
「支配人さんを助けてあげて。このアマテラス、大神って言うだけあって機嫌を損ねるとそれはそれは大変な事になっちゃうみたいだから」
 従業員をかき集めたり、仕事を手伝ったり、アマテラスを接待したり。やれることは多岐に渡る。
「良い年越しを、彼らが迎えられますように」

NMコメント

 もう2020年終わりってほんと……? 以下略です。
 終わりなので年越し依頼です。この温泉街が無事で済むかは皆様次第です。
 以下概要。一緒に仕事をしてもいいですし、バラけても良いです。足りないところは支配人と幽霊夫妻達がなんとかしてくれます。
■支配人
 中年男性。仕事には誠実で従業員からの信頼も厚い。けど妙に不幸体質。支配人なので旅館の仕事のほぼ全般はできます。
■幽霊夫妻
 以前のシナリオにより、旅館の手伝いをするようになった幽霊です。戦闘能力は一応ありますが……。
■アマテラス
 この世界の神の頂点の一人。見た目若い女神。彼女の機嫌を損ねると太陽が昇らなくなります。神々の頂点ということから心労が重なってる模様。リフレッシュしたいお年頃。

・従業員を集める
 街を巡ってすぐに働ける人たちを集めて下さい。また街の近くの野原に住んでるゴブリンや妖精達の一部は以前のシナリオ展開により、好意的になっております。話をつければ器用なゴブリンは料理を作り、妖精と芸を披露してくれるでしょう
・旅館の体制を整える
 簡単な見回りはしていたとはいえ、数日稼働していなかった旅館は少し汚いです。それの手入れをして下さい。少しすれば従業員の方が来てくださるはずなので、協力を。
・アマテラスの接待
 支配人が基本はなんとかしてくれますが、流石に風呂場までは無理です。女性PCさんは一緒にお風呂入ってみたりしてもいいでしょう。男性PCさんは食事の際のお相手などを……。
・食事の手配
 客の来る予定などなかったので当然食材もありません。街を駆け巡り店に話をつけて、なんとか食材を集め、そしてアマテラスの納得行く料理を作り上げて下さい。

・他に何かいい案があれば実行してみて頂いて大丈夫です。

 一人のPCさんがこなせる仕事は2つまでです。
 以上となります。
 無事にアマテラスのご機嫌取りが終われば、見事な初日の出を見せてくれる事でしょう。最高神で太陽の神ですからね。

  • 温泉旅館と年越し完了
  • NM名以下略
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年12月31日 22時00分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)
無限円舞
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
長月・イナリ(p3p008096)
狐です
ナイアル・エルアル(p3p009369)
新たな可能性

リプレイ

■女神の我儘を叶える為に
 早朝、まだ日が昇りきらぬうちから二人のイレギュラーズは人もまばらな温泉街を駆けていく。途中で一人は街の外へ、もう一人は街の中心へと分かれる。
 『狐です』長月・イナリ(p3p008096)の胸中は穏やかではなかった。彼女からすればアマテラスは正しく主神とも言える存在。顔を拝む事すら一生ないだろうと思っていた相手なのだ。それが、あろうことか温泉旅館に現れて我儘を言い出したというのだから、気合の入り方が違う。
「他の旅館で働いているのは承知の上でお願い! 相手はあのアマテラス様なの!」
 当の旅館の従業員だけではなく、他の旅館で働いている料理人や芸者達に声をかけて回る。腕の立つ人物のリストは支配人に受け取っていた為探すのは苦ではなかった。
 しかし、各人ともに休みのつもりでいたから最初は渋い顔であったものの、大神アマテラスが相手と聞き、驚き、そしてやる気を漲らせる。一生に一度あるかないかの出来事なのだ。ここで奮わねば何が職人だ、という意気込みである。
「話が早くて助かったわ……次は、と」
 イナリは市場へと足を向ける。

 一方もう一人のイレギュラーズ、『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)は以前の縁があるから、と街の外に住まうゴブリンや妖精に話をつけに向かっていた。
「確かこの辺りで……お、いた」
 街の人々と共生するようになってから文化的になったゴブリン達は、小さな子ども用の服を身にまとっていた。そのため他のゴブリンとは見分けがつく。
 そして一匹、人語を話せるゴブリンがいる。彼は頭がよく、世界の事も覚えていた。
「ギ、ギギ。オマエ、オボエテイル。セワニナッタ、ヨクキタナ」
「おう、覚えててくれたのか」
 そのゴブリンが世界に話しかけ気さくに会話する。すると周囲のゴブリン達も警戒を解き、妖精達も世界の周囲に集まってきた。
 そこで世界は皆に事情を説明する。力を貸してほしい、と。
「アマテラス……ニガテ。ダガ、マチガコマッテイル。ミンナ、イクゾ!」
「助かる。うまくいったら菓子をやるから、頑張ってくれよ」
 こうしてゴブリンと妖精を引き連れて、世界は街に戻る。旅館に向かうゴブリン達と別れ、世界は式を起動させて市場へと。

「大自然の恵みよ……少しだけ、我に加護を……」
 イナリが持ち込んだ実に、彼女が祈りを捧げると。すぐにそれは芽を出し、育ち花を咲かせ、すぐに実りを迎える。
「ほー、見事なもんだな」
 それを離れたところで見ていた世界は、式に命じて収穫を行わせる。イナリ特製の作物となれば味はもとより栄養も満点。疲れたアマテラスには良い効果が現れるだろう。
「少しばかり、食材の交渉に使うわね」
「ああ。こっちは先に旅館へ持っていっておく」
 出来上がったものを抱えてイナリは酒屋を探す。この世界のお金を持っていない彼女は、作物と物々交換で手に入れようという考えだ。
 理由は一つ。神は往々にして酒好きなのである。

「お風呂はやっぱり綺麗にしないとね」
 『舞蝶刃』アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)の一言で、『新たな可能性』ナイアル・エルアル(p3p009369)は奮起してブラシで床をこすり続けている。
 彼もまた、アマテラスという存在に失礼のないように。自分にできる事を一つずつ着実にこなしていこうと考えていた。力仕事ならば、とアンナに頼まれた床磨きを行っていたのだ。
 普段からきちんと手入れはされていた為に、目立つ汚れはない。ただ数日放置されていたので少々埃がある程度だ。それでも、神を迎える以上は手を抜けない。
 一方のアンナは、庭掃除へと回っていた。幽霊夫妻に頼み、高いところでぼうぼうに伸びた木の枝を切ってもらい、それを回収するという地味ながら大事な仕事だ。
「よかったー、物持てる幽霊さんで」
「あはは……我々も最初は困惑しましたが、今では便利なものです」
 と、雑談混じりに掃除を続ける。ぽつり、ぽつりと従業員の人たちが集まり始めたところを見ると世界やイナリが役目を果たしたのだろう。
「じゃあちょっとお風呂の方確認してくるわ」

「ふむ、なるほど。力だけではだめ、適切な道具を使うのが肝要……勉強になる」
 ナイアルは本職の従業員の指導を受け、細かいところ……蛇口やホースの元栓。洗面器の手入れなどのレクチャーを受けていた。彼は元々祭り上げられる側の人間、常識とされる事も知らない事があるのだ。
 しかし彼は勤勉であり、真面目である。そのために、次々と技術を学ぶ事ができた。
「どう? そろそろいけるかしら?」
 一通り掃除し終えた頃にアンナが顔を出す。彼女に力強く、笑顔で頷きを返すナイアル。
「良かった。それじゃあお客様を呼んでくるから、お湯の用意よろしくね」
「任された」
 数日ぶりに浴槽に湯が張られる。たった一人、されど大事な客の為に。

「アンナと申します。今宵はアマテラス様の背中を流す名誉を賜りたく存じますわ」
 やがてアマテラスと、彼女に付き従うアンナが浴場にやってくる。恭しく頭を垂れるアンナに、アマテラスは頷きを返し、笑う。
「うむ、良いぞ。よろしく頼む」
 こうして見る分には少し尊大な、しかし気さくなお姉さんである。しかしその実態は気まぐれな神の中において頂点の者。機嫌を損ねてはいけないと、笑顔の裏でアンナは戦々恐々としていた。
「それでは失礼致します。……惚れ惚れするような美しい肌で羨ましいですわ」
「そうか。しかし、我はそなたも美しいと思うぞ」
 緊張の余り震えそうになる手をなんとか意思で抑えつつ、アンナは時折アマテラスを持ち上げながら背中を流す。
 アマテラスも気分が良いのか、アンナを褒める事を忘れずに付き合ってくれる。湯船に浸かる時も隣に座る事を許してくれた。
「一度こうしてみたかったのだ。堅苦しい事を抜きにして、な」
「それはそれは……」
 我儘に、横暴に振る舞っているように見えるが、アマテラスも女性である。年の頃はわからないが、その内心には人間では図りきれぬ
 しかしその内面は、人とそう変わらないのかもしれない。アンナはそう感じながら談笑を楽しむ。

「ほう、これは中々に豪勢ではないか。急だったろうに、良くできたものだ」
 食堂にやってきたアマテラスを迎えたのは、見事な真鯛の塩焼きに、数々の山菜と、美しい白米。厨房に立つ職人達はデザートにも対応できると自信満々である。
「アマテラス様、よろしければ我が舞を披露して奉りますが」
「うむ、許す。見せてみよ」
 イナリが差し出した酒を呷り、ほどよく酔いが回ったところでナイアルが申し出る。笑顔で許諾するアマテラスに一礼し、ナイアルは舞台へ上がる。
 彼の脇には楽器を構えたゴブリン達もいる。彼らは努力して演奏技術を覚えたゴブリン達なのだ。事前に打ち合わせをしたとおりに、静かな、心を落ち着かせる演奏が響く。
 その音色に合わせナイアルは舞う。アマテラスの心労が癒やされるように、明日、良き朝が迎えられるようにと願いを込めて。力強く、それでいて時折、アマテラスの疲れを吸い出すかのようにしなやかに。
「良き舞であったぞ。褒めて使わす。天界に一人欲しいくらいだ」
「お褒め頂き光栄であります」
 更に気をよくしたアマテラスはイレギュラーズ達を傍に置き、飲んで食べての大騒ぎ。世界に菓子を強請り、イナリに酒を注がせ、アンナに肩を揉んでもらい、ナイアルに食事を運んでもらうとやりたい放題であった。

■そして……日はまた昇る。
 イレギュラーズ達は旅館に一夜泊まる事に。朝に天界に帰るというアマテラスを見送る為である。しかし、時刻は朝5時。突如館内放送が響き渡る。
「皆のもの、起きるが良い! これは主神アマテラスの命である!」
 その声で渋々と起きてくるイレギュラーズと、従業員達。そんな彼らを笑顔で見やるアマテラス。
「もっとシャキッとせんか。これから出かけるぞ!」
「出かけるって……まだ朝の5時だぞ」
「今から出ぬと間に合わんのだ」
 世界のぼやきに、急かすようにアマテラスは先を歩く。仕方なく全員でぞろぞろとついて歩くと、そこは海岸。少し離れたところには双子の島が見える。
「皆のもの、新年を迎えた事をまずは祝い申す。……これは一晩世話になった我からの礼だ、受け取れい!」
 そう述べて、アマテラスは手を天に掲げる。その手は光輝き、全員の目が眩さに眩む。ようやく明るさに慣れて皆が目を開く頃……。
 双子の島の、間の海から。太陽が、初日の出が昇りはじめていた。
「初日の出、だ。人間達、それと小鬼に妖精。我はお前達の接待を忘れはせぬ。本当に良い思いをさせて貰った」
「こちらこそ……アマテラス様と過ごせた事は良い思い出になりました」
「神様だって疲れるんだもんな。たまには、いいんじゃないか?」
「アマテラス様、私は貴女を目標に、精進します!」
「我が舞を披露できた事、お褒めいただいた事は一生の誉でございます」
 口々に言葉を交わす。この瞬間を、いつまでも続かせようと。
 されど主神は天に帰る。また世界を、天から見つめる為に。

 なお余談だが。
 時折、素性を隠した女性客がこの温泉街にはやってくるようになる。大体はトラブルを抱えて。或いは、忘れがたき友人に会う為に。

成否

成功

状態異常

なし

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