PandoraPartyProject

シナリオ詳細

Happy merry Kanikousen.

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●カニトリーナ、それは匠の知恵を尽くした捕獲道具
 シャイネンナハトは街いっぱいに魔法がかかる。
 つめたい夜空に温かな灯りがともり、サンタクロースを迎えようと子供達がはしゃぎだす。
 誰もが胸踊る輝かさんばかりのこの夜に、凛とした乙女『千里の道も一歩から』夏宮・千尋(p3p007911) もまた相応の反応をする――程度のアクシデントなら、幾分もマシだったろう。

……おかしい。

 眼前に広がる海原はドス暗く、灯台の明かりひとつすら見つからない。
 おまけに天気は大しけで、揺らいでいるのは水平線か、はたまた己の乗る船か――判別がつかないまま、ただただ寒さと共に固まりゆく思考回路。
 ざっぱぁん! と大波が蟹工船『那鳩丸』の舳を打ち、大きく船体が揺らぐ。辺りには細かな流氷が漂い、先へ進むのも命がけだ。

「ひゃあ、冷た! 寒すぎるとテンションあがるよねーちっひー」
「……やかましい」
 既視感を覚えるやり取りに千尋は深い溜息ひとつ。対して『春雷の』春宮・日向(p3p007910)はご機嫌そのものだ。
 海中にしかけた籠の罠を鼻歌混じりに引き上げて、船の甲板へゴトリと降ろす。この寒空の中で漁をする命知らずは特異運命座標くらいの様で、少ない餌場を奪い合うように我先にと入った魚やらなにやらが、籠の中でビチビチと思い思いに跳ねている。
 あっ、と喜色を含んだ声があがった。『今は休ませて』冬宮・寒櫻院・睦月 (p3p007900)が興奮気味に幼馴染の袖を引く。
「しーちゃん、欲しかったやつがかかったよ!」
「小振りのが二杯か。まだまだ足りないな」
「……ッ!」
 淡々と成果を告げる『浮草』秋宮・史之(p3p002233)の声。千尋は思わず振り向いて、噛みつくように洋上で吠える。
「史之、説明しろ! この状況はどういう事だ!」
「どういう事、とはこちらの台詞だよ、ちひろ。実は薄々気づいているんじゃないか?
 俺達には今、サンタクロースそっちのけで取り組まなければいけない事がある……それだけだよ」
「そうそうっ! あーし達には今やるべき事がある。ツリーの飾りつけでも、リースを玄関に吊るすんでもなくて、今はただ、純粋に――」
「「「今年のクリパは絶対、カニ鍋!!!」」」

●カニパ、それはシャイネンナハトの宿命
「鍋の具程度に命を懸けるなーーーーー!!!」
「うっひゃあ!?」
 唐突に隣から叫び声が聞こえて日向が目を丸くする。何事かと聞くまでもなく、声の主たる千尋自身も驚いた様子で辺りを見回していた。四人暮らしのボロアパート。澄めば都の精神で住んではいても、この時期は炬燵がないと過ごし辛い。
「珍しいじゃん、ちっひーが自分の寝言で起きるなんてさ」
「寝言……私が?」
 それにしても、先刻まで見ていた夢は何だったろうか。命がけの危険な物だったのはうすぼんやり、覚えている様な――。
「炬燵で寝ると風邪ひくよ」
 千尋が頭を悩ませているうちに、史之がキッチンの方からエプロン姿でやって来た。彼は秋之宮のおさんどん。日向、千尋、睦月の面倒を一手に引き受けており、その日の晩御飯の決定権は彼が握っているも同然なのだが。

「全員集まってるから発表しておくけど、えー本日はクリスマスですが……蟹鍋です」
「えっ、チキンは!? ケーキは!?」
 映える写真をいっぱい撮るつもりだったのにと日向がショックを受け、それと反比例するかのように、睦月は平穏な顔のまま卓上の蜜柑を剥きはじめる。
「カニ食べたかったんだもん。シャイネンナハトの聖女伝説とか、僕関係ないし」
 真の黒幕はすぐ隣にいた。睦月の言う我儘の中で可愛いレベルの物であれば、史之はあっさり叶える方向に舵を切ってしまうのだ。
「ちひろだって、美味しければ別になんでもいいよね?」
 ふと、睦月は違和感を覚えて千尋に話を振った。いつもであれば、騒ぐ日向を諫めるかわりに「説明しろ」の一言くらい史之に言って迫りそうなものだが……彼女は何故か納得顔で、炬燵から黒ニーハイに包まれた美脚を出して立ち上がる。
「食材集めは任せろ。ただ……船だけは無しだ」

NMコメント

 ご指名ありがとうございました! ノベルマスターの芳董(ほうとう)です。
 去年のクリスマスは勿論、シャケを食べて過ごしましたよ!

●目標
  シャイネンナハト(クリスマス)のカニ鍋パーティーを楽しむ

●場所
  縁側でお茶をすするための場所こといつものボロアパートです。

●やれる事
 今回は前半と後半、大きく2パートくらいを想定しています。

【前半】
 カニ鍋に必要な具材を集めましょう。
 場所は近所の商店街はもちろん、パリピ思考の「境界案内人」神郷 蒼矢(しんごう あおや)に相談すると、異世界で蟹工船『那鳩丸』を使ったカニ漁にもチャレンジできます。

 また、具材の主役はカニの筈ですが、必要と思った物であればとうふやしらたき等のお鍋の鉄板の具はもちろん、食べられる物であれば何でも鍋に入れる事ができます。
 シャイネンナハトの夜は街中が浮かれ、店の軒先にも魔法のかかった不思議な食材が並んでいたりするので、ヘンテコな具が混じる事もままあるようです。
 食べると子供になってしまうキノコや、牛の尻尾や角が生えてくる魔法の牛肉……等

【後半】
 具材が出来たらカニ鍋パーティー開始です! いざ、実食。
 純粋に味わって楽しむのもよし、鍋の中に入っている疑惑の具材をつっついてみるもよし。いつもの4人らしい、素敵なプレイングを楽しみにしております。

 それでは、よいシャイネンナハトを!

  • Happy merry Kanikousen.完了
  • NM名芳董
  • 種別リクエスト(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年01月03日 22時30分
  • 参加人数4/4人
  • 相談8日
  • 参加費---RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)
秋縛
春宮・日向(p3p007910)
春雷の
夏宮・千尋(p3p007911)
千里の道も一歩から

リプレイ


 ドドドドド!!
「蒼矢さーんはろはろー! はじめましてだねー!」
「えー、いま何か言ったー?」
 ざっぱあぁん!!
「今回はー! 船出してくれてー!ありがとー!!」
 左右から飛び交う声は大きいが、甲板に打ちつける波の音が言葉の端々を攫っていってしまう。
 やって来ました、真冬の海!
「船だけは……船だけは無しだと言っただろうがーー!!」
 予防線をあれだけ壮大に張ったというのに、哀しきかな『千里の道も一歩から』夏宮・千尋(p3p007911)は蟹工船の上にいた。
「……うう、寒い」
 本意でないとはいえ、船を出すよう『境界案内人』神郷 蒼矢に要請したのは千尋と『春雷の』春宮・日向(p3p007910)の2人だ。今更帰りたいとごねる訳にもいかず、ここまで来たなら成果無しでは辛すぎる。
「へっへーんカニカニ! カニ!狙うは一点、冬の味覚の王様ズワイガニ!」
「相変わらず貴様は底抜けに元気だな……」
「だって見てよほら! 今日のあーしはサバイバルコーデー」
 イヤマフに迷彩柄のダッフルコート、長靴はちょっとはずしてネオンカラー。
 しかも反射材入りで、甲板のどこに居ても分かる。可愛さと分かりやすさを兼ね備えた最強スタイル!
「ふっふっふ、実用的かつ見た目もおしゃれ、まーちっひーにはできないコーデよねー……って、こっち見てよ!」
「競り合うつもりは毛頭ない。貴様も早く帰りたかったら、魚群探知機とレーダーから目を逸らすなよ」
「えーつまんなーい! 人が気合入れてるのに水を差すような真似は厳禁よー」
 愛らしく頬を膨らませた日向も、レーダーが警鐘を鳴らせば目を丸くする。眼前に迫る魚群の影は波の上からでも明瞭に見えた。
「ちょっと、これ迂回した方がいいんじゃない?」
「いや。網を投擲する」
 那鳩丸は小振りだが、荒波に負けない頑丈な船だ。やるからには全身全霊。四の五の言っていられない。
「もし、船が沈んじゃったら?」
「そうなれば……運命を共にしようではないか!」
「つまり自棄って事ー!?」
 日向の叫びとほぼ同時、千尋が投網をぶん投げる。輝かんばかりのこの日――カニと2人の生存競争の火蓋が切って落とされた。


 日向と千尋が荒波に揉まれている頃――カニパーティーに呼ばれた『境界案内人』ロベリア・カーネイジと神郷 赤斗は建物の影に隠れ、さる人物を追っていた。
「任せとけよ、鍋の買い出しなんて」
「問題はそこじゃないの」
 よーく見なさい、とロベリアが示す先では『今は休ませて』冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)と『浮草』秋宮・史之(p3p002233)が並んで歩いている。
「しーちゃん、ふつうに、ふつうで、美味しいのをよろしくね。僕変なもの食べたくないからね」
「分かってる」
 焼き豆腐、ネギ、しらたき、食用マタンゴ、かなり昆布、かろうじて白菜……。境界案内人を呼ぶ都合で。パーティー会場は異世界の旅館となった。混沌とした食材の中から理想の鍋の具材を見た目で判断し、史之はぽいぽいと買い物かごに入れていく。
(本当はこの日のためにウッキウキでチキンとケーキの準備してたんだけどね……手を付けなくてよかった。食材が無駄になるところだったよ……後日シチューかなんかにリメイクしよう)
 食材と向き合う彼の眼差しは真剣そのものだが、睦月は少し寂し気だ。
(こうして二人きりで歩くのってデートみたい! 照れくさいけど、すごく楽しい)
 けれど……あと一歩、叶うなら。
「しーちゃん、睦月って呼んで」
「夏のあれは緊急事態だったから……」
「いいじゃん呼ぶくらい、減るもんじゃないし!」
 すげなく断られようと、睦月は諦めようとしない。
「ねえねえ睦月って呼んで、呼んでよー。荷物持ちくらいするからさあ」
「よくないし減る。ダメったらダメ」
 名前で呼ぶなんて恐れ多い。どんな世界に渡ろうと、睦月は冬宮の者。本家様なのだ。
(なんて言ってもわかってもらえないんだろうな……)

「史之は良い従者じゃないか。あれに何の問題が?」
 保守派の赤斗は史之の態度に好感を持ったようだ。分かって無いと、眉をハの字にするロベリア。
「呆れるくらい鈍感ね! いいわ、私ひとりで面白くしてくる」
「おい、今ナチュラルに『面白く』って――」
「えい」
 赤斗のツッコミも知らぬ存ぜぬと言わんばかりに、ロベリアは宙へ魔方陣を展開する。
「あれ? しーちゃん、何だか空が暗くなって……」
「――! こっちだ!」
「えっ、ちょっと、しーちゃん!?」
 ぐい、と強引に手を引かれ、睦月の身体が大きく揺れた。空から飛来した何かよりも、騒ぎはじめた町民よりも――ただ、繋いだこの手が温かくて。束の間の逃避行にドキドキしながら、この瞬間を永遠にしようと、睦月は握る手を強く握り返した。

「あれっ、あーし達さっきまで海のど真ん中だったよね? 何で唐突に街の中?」
「いきなり船が降ってきたと思ったら、ひなちゃんとちひろか」
「もう何が起こっても驚かないつもりでいたが……史之、本家にくっつきすぎだぞ!」
「これは僕がしーちゃんにギュッてしてるからいいの!」
 4人集まれば春夏秋冬、仲の良さから騒がしい。陸に打ち上げられた船とその足元で盛り上がる特異運命座標を見て、赤斗はポンと手を打つ。
「なるほど、面白いっていうのは効率を指していたのか。どちらの組も食材が集まったようだし――」
「違うわよ、引っ張ってくるの間違ったの! 本当に鈍感なんだからっ!」


 海へ行ったり、陸へ打ち上げられたり。祝いの日だというのに、一つ処に落ち着けない。
「いやー、くたくただよねぇちっひー。背中流してー」
「……ん」
 貸し付けた宿の大浴場で冗談交じりに日向が笑うと、千尋は素直に背中へまわった。泡立つ手拭で背中を撫でられ、くすぐったさに思わず身じろぐ。
「ち……ちっひー?」
 珍しく従順な千尋に、驚きを隠せない日向。振り向いてみると、千尋はうつらうつら背を流しながら船をこぎかけていた。早朝からの漁で疲れているせいか、いつもより格段に大人しい。
「その代わり、洗い終わったら……春宮、私の背も頼めるか?」
「まっかせて! 生まれたての赤ちゃんばりにつやっつやになるまで洗い倒してあげるし!」
「いや、潮風のベタ付きを洗い流せればそれでいいんだが……」

 女子2人が海での疲れを癒している頃――睦月と史之は厨房に立っていた。
 冷蔵庫を睦月が開けると、磯の香りと共にお披露目になったカニ、カニ、カニ!
「いっぱいとってきたねえ。ひなたもちひろも、おつかれさまだよ」
 後でいっぱい労ってあげないと。そう思う反面――睦月の中では未だ、彼女達が冬宮の「家」に仕えているという感覚がぬぐえない。
『みてみてーおっきいのたっくさんとれたよー!』
『夏宮の者として、本家がこれほど喜んでくれるのであれば嬉しい限りだ』
 もっと僕を見て。冬宮じゃなくて……僕は、ちゃんとここに居るのに!
……でも、分かってる。これが子供じみた駄々だって。僕が冬宮の者である事実は何処へ行こうとついて回る。彼女達が悪い訳じゃない――だから。

 しーちゃんは特別。本家だからと言いながら、彼だけが僕を見てくれた。冬宮の名に埋もれた僕を、見つけ出してくれたんだ。
 しーちゃんにかまってもらえなくなったら、僕は……。

「どうしたんだ、ぼーっとして」
「どうやったらしーちゃんに『あーん』して貰えるかなって考えてたの」
「それは……頼むから普通に食べてくれ。殻くらいは剥いてやるから」
「あっ、しーちゃん茹でガニみたいに真っ赤!」
 まあいいや。今は今をうんと楽しもう――輝かんばかりのこの夜を!


「何だこれ。随分と派手だね」
 七輪を持って史之が和室の戸を潜ると、大きなもみの木が出迎えた。
「ふふー、クリスマス、あーこっちだとシャイネンナハトだっけかー。どっちでもいいけど、ごちそうが和に寄ったって諦めてないからね! リースとツリー、んでもってケーキとチキンも!」
 元の世界の法則を適用すればー本番はイブ、ナハト当日は安くなる!
 そう見込んだ日向は、事前に千尋と連れ立ってクリスマスマーケットで必要な物を買い込んだのだ!
「ひなた、このケーキの上に乗ってるマジパンなぁに?」
「あーし作、カニちゃんです!」
「いや、そこはサンタでも乗せときなよ」
 よく見ればリースやツリーに飾り付けられたオーナメントにも、カニらしき物が混ざっている。色味が赤いだけあって、他の装飾から浮かないという点もシュールさを誘う。

「お鍋だけじゃ勿体ないから、まずは蟹刺し、焼き蟹から」
 縁側で史之が腕を奮うと、何とも絶妙な焼き上がり。タイミングよく垂らされた醤油が香ばしく、空の殻が積み上がる!
 この上、たらふく食べた後でもメインディッシュのカニ鍋は更なる食欲をそそるんだから、恐るべしカニの魔力。
「しーちゃん、カニの殻剥いて」
「はいはい、って脚じゃん! いちばん楽なとこでしょ」
「やだー面倒くさいし、しーちゃんが剥いてくれるからいいの」
「やれやれ……って今度は俺の皿のカニが消えてるんだけど!?」
「しのにいが剥いてくれるって言うから。ねー?」
「「ねー」」
 いつの間に仲良くなったのか、日向と頷き合うロベリアと蒼矢。まさかの取り合わせに史之も動揺を隠せない。
「待って、俺ぜんぜん食えてないんだけど」
「答えは聞いてないーあとよろしくー。あーしらが楽しむために犠牲になるがよいー」
 剥きガニを奪い合う仁義なき戦いを遠目に見ながら、千尋は上品に汁を啜る。
「蟹漁は大変だったが、こうして鍋を囲んでいると苦労が報われるな。骨身に染みる温かさ。叶うならまた来年も、このようにーー」
 ふと、千尋が箸へ視線を落とす。掴んでいたキノコがもそもそと動いた。
「なっ、何だこの椎茸は!?」
「マタンゴだよ」
「マタン……え? 食用?食用なのか?! 妙なものを入れるな史之のどあほうーー!」

成否

成功

状態異常

なし

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