シナリオ詳細
少女カナメとマガツノ河童
オープニング
●
少女カナメには隠れた日課があった。
「河童さん河童さん。とれたての胡瓜はいかが?」
冬の川辺。さらさらとゆるやかに流れる水と、その上をすべるようによぎっていく木の葉。
のぞき込むには深すぎる川に自らの姿を映すようにのぞきこみ、少女はザルに入った野菜をひとつ掴んでかざして見せた。
ちゃぷん、と水面にうつった彼女の姿をわるように一匹の河童が姿を現し、水かきのある手でくいくいと手招きをする。特徴的な十字傷のある手だ。
少女ははいはいと言って胡瓜を一本投げてやると、河童はそれをキャッチしてからかじり始めた。
しばらくもぐもぐしてから、あーといって上向く河童。
「あんたの家、妹が生まれるだろ」
「すごい。なんで分かったの?」
「胡瓜食えばそいつんちのことは大体わかる」
河童はみんなそうだぞといい加減なことを言って笑い、少女カナメもまたけらけらと笑った。
週に一度、野菜を川で洗うのがカナメの役目であった。何歳になった頃だろうか。川でいつものように野菜を洗っていると、川底から声がした。
胡瓜を一本おくれ。よしなしごとを聞いてやる。
その、なんとも言えない要求に、しかし少女は応えてみた。
それから。少女は時折川にやってきては河童とよしなしごとを話すことが日課になった。
けれど。ある日のこと。
「河童さん河童さん。とれたての胡瓜はいかが?」
胡瓜をかざして笑うカナメ。
しかし返事はない。
不思議に思って川をのぞき込むと、ごぼごぼと赤黒いよどみが川の底から上がってきた。
いつもと違う。
そうは思ったが、頭をひっこめることはしなかった。
しなかったせいで。
「――!」
ギギギという知性なき声と共に飛び出した河童が、カナメの顔面めがけて手を伸ばした。特徴的な十字傷のある、手だ。
水かきのついた手からは鋭利な爪が伸び、目は血走り顔面はいびつに歪んでいた。
そのさまに驚いて飛び退いたのがよかったのだろう。
彼女の頬から胸元にかけてを爪で大きく切り裂かれるだけで済んだ。
激しく血の吹きかかった指をべろべろと舐め、そしてカナメをじっと見つめる河童。
「河童さん……」
言葉が通じている、ようには見えない。
さらには川の底から次々と同じように歪んだ河童たちが這い上がり、そのうちの一匹が牛の足らしきものをゴリゴリとかじりながら前に出た。
「ゲ、ゲ、ゲ」
カナメを指さし、河童たちへと振り返る。
なにを言っているのか、本能で分かってしまった。
悲鳴が、あがる。
●
イレギュラーズたちは例の川辺へと急ぎ走っていた。
ここは豊穣郷カムイグラ。高天京から悪しき巫女姫やザントマンが消え四神結界に守られた今、動乱の種は周辺諸地へと向けられた。
高天京襲撃に失敗し撤退していった魔種集団羅刹十鬼衆による国崩しの陰謀や、八扇の大量欠員による政治不安。その他様々な不足によって中央集権が困難となった豊穣郷は、各地の大名による領土の奪い合いを止めることが出来なくなっていた。結界に守られた都を攻め取ることができないならば獲得領土を広げ都を蒸し焼きにするが如く実質的に陥落させようという狙いが、各地の大名におきたのだ。
その一方で、復興に追われる都と潰し合いに貧する大名たちの横やりを突くかのように羅刹十鬼衆の魔の手もまた、迫っていたのだ。
「迎道川の中流にすむ河童たちが凶暴化して近隣の畑や家畜を襲っているという報告が入っています。おそらくは羅刹十鬼衆・大叫喚地獄による仕業でしょう。彼に操られた妖怪たちはみな凶暴化し、高い戦闘能力を持つようになります。さながら呪獣化のように……」
このように、イレギュラーズに依頼された内容は凶暴化してしまった河童たちの退治だった。
だがそんな折。
「カナメがいねえ! あいつ、川に行ったんだ! いまは近づくなと言ったのに!」
カナメの父親が、村の集会場へと駆け込んできたのだった。
急げ、イレギュラーズ。
悪しき力によって引き裂かれた友情と、それ以上の悲劇を、生まぬために。
- 少女カナメとマガツノ河童完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2020年12月31日 22時00分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●奔れ
草むらを駆け抜ける『不沈要塞』グレン・ロジャース(p3p005709)。
ふくらむ茂みを大きく飛び越えて、河原へと走る。
別ルートから走っていた『琥珀の約束』鹿ノ子(p3p007279)と『二律背反』カナメ(p3p007960)が合流し、グレンの左右に並んで走って行く。
「妹と同じ名前の女の子が困っていると聞いて!
これは一大事ッスよ! 色々と裏はありそうッスけど、まずは取り押さえて場の鎮圧を優先ッスね!」
「羅刹十鬼衆かー……大事件が終わったが今でも、やっぱり騒ぎを起こすひとはいるんだね
何か目的があるのかな? やっぱり本人を探して聞くのが一番だけど、今はそんな場合じゃないね! 早く助けに行かなくちゃ!」
時は神逐後のカムイグラ。
都を大きく離れた地方諸領土は首都の力が弱まった隙を突くかたちで地方領主同士での領土や覇権の奪い合いを始めていた。
その結果おろそかとなった民の安全。さらには各地で頻発する妖怪の凶暴化現象。
一見して呪詛や呪獣のたぐいにも思えるが、その本質的なところは神逐騒動のおり百鬼夜行を引き連れて現れた羅刹十鬼衆『大叫喚地獄』のそれに近かった。
かの力が、妖怪達を歪めているのだ。
「河童は気の良い連中も多いってのにこういうのを見ると居たたまれなくなるねぇ」
事情を知って大遠征時の装備を引っ張り出してきた『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)。やや辛そうに走りながらも、ブシュウと首の辺りから熱を排気した。
「やれ、似たような事件があっちでこっちでと。忙しない国よねぇ。
ついこの間、夜通し馬鹿騒ぎしたばっかりですってのに」
一方こちらは涼しい顔をして走る『never miss you』ゼファー(p3p007625)。
末端の民ですら管理がゆきとどかぬ今である。領民として数えられていない妖怪達など好き放題にいじくられるだろう。
そしてそれを守るものも、取り返すものもない。
今歪められたのは守られざる民であり、今それに襲われているのは守るべきなれど守られていない民なのだ。
だからこそ、神たちに守護を託されたローレットは走るのである。
「さて、先の大戦の時にも聞いた術式、仕掛けが見られますね。
つまり表立って暴れさせられ、咎を背負わさせられる者の陰で、何かしら企んでいる者がいるという事でしょう。……まず敵の目論見を潰しましょうか」
『遺言代筆業』志屍 瑠璃(p3p000416)がちらりと横を見ると、弓を畳んで走っていた『不義を射貫く者』小金井・正純(p3p008000)が目を鋭くした。
(この国も一難去ってまた一難、中々平和にならないものです。
特に、仲睦まじいものを引き裂く所業など許せません。早く助けねば。
それは、彼が目指す国に程遠いでしょうからね……)
民の幸せを願った者たちがやがて争い、乱れ、狂っていった国。しかしそれで滅ばなかった国。
つなぎ止めるための糸となった正純たちには、その先を見届ける義務があるような気がした。
そして願わくば、本当に目指した国へと成らんことを。
「川が見えたよ! 河童たちが出てきてる。急ぎな!」
『任侠道』豪徳寺・芹奈(p3p008798)は声を上げ、そして剣に手をかけた。
(まさか小兄……大叫喚地獄の影響がこんな所にまで。
何より変貌させてしまった河童達によって少女が傷つくなど、見過ごす訳にはいかない!)
「せめて少女だけでも拙達が助け出さねば!」
●悲鳴の先
少女カナメのあげる悲鳴をかき消すかのように、奇声をあげて飛びかかるマガツ河童。
その鉤爪が少女へ届くその寸前。
黒い風となって一人の女が間へと割り込んだ。
振り込まれた爪は女の――瑠璃の腕に食い込み、少女へと届くことはない。
突然の出来事に目を見開き硬直する少女カナメ。
瑠璃は小さく振り返って薄く笑うと、鎧からのジェット噴射によって突っ込んできたゴリョウに場をゆずって飛び退いた。少女を抱えたまま。
取り残された形になったマガツ河童は、ゴリョウのショルダータックルによって川へと弾き飛ばされる。
ブレーキをかけ、今度こそしっかりと少女と河童達の間に割り込むゴリョウ。
「おぅ河童よ! ガキ喰うよりも、まずはこの食いでのありそうな豚さんを相手してもらおうか!」
鎧の豚鼻を摸した部分からブシュウと激しい蒸気を噴き出し、増設された犬型の籠手と漆黒のシールド。
極小の結界核を手のひらに光らせつつ突き出すと、どこからでもかかってこいとばかりに身構える。
そんな風に挑発されて襲いかからぬ河童たちではない。
ゴリョウの誘引力にやられたものもそうでないものも、川から跳躍し一斉にゴリョウめがけて飛びかかる。
と、そこへ。
「さぁさぁ、御用ッスよ!」
「こらー! そんなに痛め付けたいならカナを痛め付けてよー!」
鹿ノ子とその妹、剣士カナメがゴリョウの両脇から飛び出すかたちで河童たちへとカウンターアタックをしかけた。
複製魔剣『黒蝶』が美しいラインを描き風の刃で河童を打ち落とし、残る河童たちへカナメの百華『大水青』および緋桜『紅雀』が繰り出される。
姉妹の絶妙なコンビネーションによって描かれた複雑な交差線が河童たちを弾き、地面へどさりと転落させた。
これはほんの挨拶にすぎない。鹿ノ子とカナメもまた着地し、アシンメトリーに剣を構えて河童達を威圧する。
その上を残った河童たちがゴリョウめがけて飛ぶが、なにも手が足りなくてスルーしたわけではない。
「天落流星――!」
弧を描き飛来した矢が穂先に仕込まれた魔方陣発生装置を潜ることで二十二本ほどの矢へと拡散。河童たちを迎え撃つかのように、そしてゴリョウやカナメたちを的確に避けて打ち込まれていった。
新たな矢をつがえて少女カナメの横へとかけつける正純。
「さてと、お姫様のピンチには間に合ったみたいだな」
「ハロー、お嬢さん。今日はちょいと刺激的な一日ね?
でも大丈夫。直ぐにいつも通りにしてあげますわ!」
更にグレンとゼファーが加わり、二人で少女カナメへとウィンクした。
正純の迎撃によってばらばらに転落した河童達だが、すぐに起き上がり妖術で水の手裏剣を作り出した。
正純や少女カナメへと放たれるが、グレンが間に入って鋼の盾をかざすことでそれらを防御。
彼の理想の象徴であり勇気の証。『天来聖盾ルキウス』である。
更に『守護聖剣ノルン』を抜き、ゼファーへ『行けるか?』と目で合図する。
ゼファーは片眉をあげることでそれにイエスと応え、まずは手持ちの槍を河童めがけて投げつけた。
あえて水平にして放り投げられた槍を慌てて二人がかりでキャッチする河童たち。そこへがら空きになった胴体を打つように、ゼファーの突きと蹴りが連続で炸裂していく。
「出だしは上々。ここからね」
「そうさね。油断禁物……!」
芹奈は刀を抜いて河童達の前へ堂々と姿を見せると、自らの名を高く叫んだ。
「拙の名は豪徳寺芹奈! 河童達よ、拙が相手になろう! 拙はそう簡単には倒せんがな!」
銀の狼が吼えるかの如く、気高い彼女の叫びは河童達をびりりと震わせた。
掴みかかろうと鉤爪を繰り出す河童達の攻撃を剣で右へ左へ払っていくと、更に河童達を圧倒するように踏み込んでいく。
思わず後じさりした河童に対し、芹奈はかちりと刀を返した。峰打ちの、姿勢である。
●
芹奈やゴリョウの術中から逃れたわずかなマガツ河童が水手裏剣を作り出し、次々と投擲していく。
ゼファーは地面に突き立てた槍でそれを弾くと、砂利道をスライドしながら正純が射線を確保。
水平に構えていた弓から連続で三本の矢を発射した。
三匹の河童へとホーミングして飛んだ矢は流星の如き軌跡を描いて河童達の腕へと命中。
一瞬にして腫れ上がるような痛みにうめく河童へ、ゼファーと正純は同時に急接近をかけた。
正純は弓をロッド状に変形させると河童の頭を豪快に殴りつけ、よろめいた所にゼファーの槍が三匹まとめてなぎ払っていった。
「運が無かったと言えばそこまで、だけれど。友達をあまり泣かすもんじゃないわ?」
気絶したマガツ河童たち。その身体からふわりと禍々しい気が抜け出ていく気配がした。
「これは……?」
「カナ、カナメさんを!」
「え、え? どっちのどっち――って一緒か!」
剣士カナメは少女カナメに笑いかけると、彼女を腕に抱えるように庇いつつ刀を構えた。
「カナも名前はカナメって言うんだ、えへへ、同じだね☆」
「狂暴化したのは河童たちも本意ではないだろうし、カナメさんにとって友人だというなら、可能な限り助けたいッスね!」
鹿ノ子はカナメの防衛を妹に任せ、剣をしっかりと両手で握って河童達へと突撃。
花が散るかのような美しい流線を描いて河童達を次々に殴り倒し、その衝撃で川へと突き落としていく。
が、河童がしゅるりと縄のようなものを放って剣士カナメの足首へと絡めた。
「おわっ!?」
転倒し少女カナメごと引きずられそうになる――が、ゴリョウが籠手の先端についたハーケンを用いて縄を切断。他の河童達がカナメに向けてはなった無数の縄がかわりにゴリョウへと絡みついていく。
「ゴリョウ!」
「ぶははっ、なんのこれしき……!」
ブシュンと素早く各所から排気すると完全密封モードへシフト。川へとドボンと転落するも、ウォータージェットによって逆に河童を引っ張り回した。
「伊達に青を越えてねえ! 凶暴化なんざ所詮タンクのいいカモよ! 選択を間違えたな大叫喚地獄!」
「良い位置ですね。そのまま……」
ゴリョウを追って川へと飛び込んだ瑠璃は不思議な力でもって水中呼吸を可能にすると黒い刀を水平に振った。
虹の如く煌めく雲が墨を吐いたかのように広がり河童達を包み込んだかとおもうと、狙い澄ましたように放った第二の刃が河童を刈り取っていく。
(正気のない時に誰かを傷つけたとして、それが親しい友人よりは今後顔を合わせない他人のほうが気は楽でしょう)
反射的に向けられる殺意に小さく笑うと、美しいドルフィンキックによって泳ぐ芹奈に先を譲った。
(カナメ殿、本当に申し訳なかった。この様な事態になったのは拙の身内の不始末……)
奥歯を強く噛むと、咄嗟に防御姿勢をとった河童を防御の上から強引に斬り捨てた。
否。
芹奈の剣は事前に返されており、峰打ちとして河童の意識だけを刈り取っていく。
「河童さん……」
不安そうにする少女カナメ。
グレンはそれを振り返り、そしてもう一度退治しているマガツ河童を見た。
特徴的な十字傷のある手には鋭い鉤爪がはえ、グルグルと獣のように唸っている。
だが……。
「お姫様、こういうときは君が鍵になるもんだぜ」
カナメの目に浮かぶ迷いと、希望。それに応えて頷くグレン。
「声をかけるんだ。『友達を助けたい』って気持ちをこめて。……時間は稼ぐ!」
奇声をあげて襲いかかるマガツ河童。
グレンはかざした盾で防御するも激しすぎるタックルにおもわず転倒。
転がった所に無数の水手裏剣が浴びせられ、更に鉤爪をむき出しにした手で肩を捕まれる。
グレンの鎧を貫通するほどの鋭さだ。おそらく特別な妖術によって強化されているのだろう。
退くも押すもできぬまま、グレンは肩に食い込んだ爪に顔をしかめる。
至近距離。しとめるには絶好のチャンスだが……。
「カナメ! 声を!」
呼びかけに応えて、少女カナメは思い切り叫んだ。
「河童さん! 目を覚まして……!」
一瞬。ほんの一瞬だが、マガツ河童の目に正気の光が宿った。
その瞬間を見逃さない。
ギュワンと激しい音と共に剣の刀身を聖なる紅蓮の光が覆い、河童の胴体を横薙ぎに吹き飛ばすような水平斬りが繰り出された。
素直に吹き飛び、河川敷をバウンドして転がる河童。
……それを最後に、河童達の抵抗は終わった。
●
「う、うぅーん……」
自分を呼ぶ声がする。
うっすらと目を開けると。
空と、木々と、そして少女カナメの顔があった。
「河童さん河童さん。とれたての胡瓜はいかが?」
目に涙をうかべて、胡瓜をかざすカナメ。
「なんだおめえ、なんで泣いてんだ? って腰痛ぁ!? 死ぬほど腰痛っあ!? 折れてんじゃねえか!? これ折れてんじゃねえか!?」
膝枕されていた河童はグオオといって転げ回り、そしてその様子をじっと観察していたグレンに気づいて身構えた。
「うおおなんだあんた! やんのかオラァ!」
相撲の構えをとってホアァと声を上げる河童。
グレンはその様子に吹き出して、少女カナメもまたふきだすように笑った。
「え、え、何? どういう状況なんだこれ」
それを交互に見て困惑する河童。
まわりでは、川から引っ張り上げられた河童達がひとりまたひとりと意識を取り戻しているところだった。
彼らに狂暴そうなそぶりはなく、どころかマガツ河童として凶悪なフォルムになっていた爪や目つきがまるでなかった。
今にも胡瓜をつまみに焼酎のみはじめそうな牧歌的な河童姿である。
「正直、半信半疑でしたが……」
瑠璃はなるほどと言ってゴリョウのほうを見る。
ぶははと笑い、胡瓜を酢であえた料理を作るゴリョウ。
「妖怪が凶暴化するってのは呪獣とおんなじだが、根本的に別物らしいな。【不殺】攻撃で解除できるかどうかは賭けだったが……」
大きな石の上に並んで腰掛け、武器を布でぬぐうゼファーと正純。
「どの妖怪もこの方法で元に戻せるんでしょうか。それなら……」
「決めつけるのはまだ早いんじゃないかしら? 今回のケースがたまたまそうだったのかもしれないし」
「なにはともあれ、お友達を守れてよかったッス!」
「そういうこと」
鹿ノ子と妹のカナメはほっと胸をなで下ろした様子で、いまだに混乱している河童たちを観察していた。
「カナメ殿……」
そんななか、芹奈が少女カナメへと歩み寄る。
「このような事態になって本当に――」
「ありがとうっ!!」
芹奈の手をとり、満面の笑みをみせるカナメ。
「お姉ちゃんたちが河童さんを助けてくれたんだよね! 本当にありがとう!」
「…………」
言うべきだろうか。
河童達が狂ったのは身内の不始末なのだと。
反転し国を破壊することにとらわれた小兄のしわざだと。
「いや……いいんだ」
よしよしといってカナメの頭をなでてやると、芹奈は空を見上げた。
――小兄。あなたはなぜそんな風になってしまったんだ。
――カムイグラは立ち直ろうとしている。なのにあなたは、まだあの時代に囚われている。
川はせせらぎ、未来へと流れ込んでいく。
小さな葉が、石にぶつかってまわった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
――mission complete
GMコメント
■オーダー:マガツ河童の退治
・成功条件:マガツ河童を鎮圧する
・オプションA:カナメの生存
羅刹十鬼衆によって凶暴化してしまった妖怪河童たちを倒すことが今回の依頼内容です。
あなたはマガツ河童たちに直面したカナメ、つまりはOP冒頭パートの状態に乱入する形で現場へ駆けつけることができます。
あくまで急いで駆けつけることになるので、かなり強引かつ派手な飛び込みが必要になるとは思いますが、やりようによってはカナメの無事を確保したままマガツ河童たちとの戦闘に入ることができるでしょう。
■エネミーデータ
マガツ河童は元々の河童がもつ特徴に加え高い身体能力と水を手裏剣のように鋭くして飛ばす術、そして鋭利な爪による斬撃を攻撃方法としてもっています。
かなり物理攻撃に寄っており、時には深くて広い川の中へと引きずり込んで水中戦にもちこむこともあるようです。
■フィールドデータ
川辺です。
中流とはいえ川は広くて深く、たとえば高所から川の中央にダイブしたとしても怪我をしないくらいには深いようです。
くわえて川底は曇って見えづらいため、水中戦に持ち込まれたら仲間と分断されがちなので気をつけましょう。あえて水中戦を挑んで敵味方とも地上組と分断しておくというのも、有効な手ではあります。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
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