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シナリオ詳細

Skiing Battle!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「――よく来てくれたな、イレギュラーズ」
 雪山。鉄帝の中でも寒さの激しい場所にてイレギュラーズ達を待っていたのはゲルツ・ゲブラー(p3n000131)であった。風吹き荒ぶ。それだけで体感温度が更に下がる中――しかし顔色一つ変えずに彼は言葉を紡いで。
「早速だが依頼を受けて欲しい。実は数時間前、近くの銀行が襲撃されてな……犯人たちはこの山に駆けこんで、今なお逃走中なんだ」
「こんなクッソ寒い所に? マジで……?」
「ああ。だからだろうな……見ろ。寒いだけならまだしも今日の天候は悪く、風も強い。
 これでは探しにくい事この上ない」
 天を見上げれば黒い雲が雪を積もらせていて。
 同時に吹き荒ぶ風が雪を舞わせて視界を閉ざす。
 逃げる方も一苦労だろうが、追手も楽々とはいかない……実際、ゲルツの話だと地上を逃げていた強盗団を途中までは追い詰めていたらしいのだが、この雪山に逃げられて以降その姿を見失ってしまったらしい。
「だがこんな天候の雪山だ。奴らも自在に移動できるわけではない」
「つまり――逃走ルートは予測できている、と?」
「そうだ。最終的にどちらの方角に逃げるかは分からないが、しかし」
 地図を広げ、ここは必ず通るとゲルツが差す一点があった。
 指をなぞらせ円を描く様に。
 見れば――周囲と比べて比較的なだらかな地形の様だが――
「ここは天候が良い時であればスキー場としても解放されている場所でな。間違いなく通るだろう……先回りしておけば奴らと遭遇出来る筈だ。それに奴ら、どうやらスキーか何かで移動しているみたいでな、その点でも通るにうってつけの地形でもあるから――」
「えっ。スキーで移動を?」
「ああ。知っているか、スキーを? あれで移動をするとかなり早く動けるぞ」
 スキー。二枚、もしくは一枚の板を使い雪の上を滑る移動手段の事だ。
 積もった量にもよるが雪の上での歩行は中々鈍重になってしまうものである。しかし雪の上を滑って移動するスキーであれば――高速での移動が可能だ。最近ではレジャーや競技の一つとしても楽しまれているようだが、元々は狩りの為の手段の一つだったとか。
 しかし強盗団がそんなモノを持っているという事は、予め用意していたという事……
 先回りしても奴らを捕まえる事が出来るのか――? 一抹の不安が脳裏に過って。
「――待てよ。まさか」
「そう――流石察しが良いな、イレギュラーズ。奴らがスキーで逃げるなら……」
 突如、背後の荷物を漁るゲルツ・ゲブラー。彼が取り出したのは――

「――こちらも同じ手段で追いかけるまでの事だ」

 スキー板であった。こ、こいつ! 準備万端であるッ!!
 どうやら人数分用意されているようだ……な、なるほど。確かに同じ移動手段を用いればそうそう容易く逃げられる事などない。いやしかし、でもね? そんないきなりスキーやろうぜ! って言われても慣れてない人もいる訳で……
「飛行とかでなんとかならないのか?」
「風が強いからな……まぁ低空を飛行するぐらいならあまり影響は受けないだろうが、スキーの方が多分早いぞ。相当足に自信があるなら話は別だが……ああそうだな。念の為雪山に登る前にレクチャーしておくか」
 おっ、雪国の人間からの教えとはありがたい。
 まずこうして足にスキー板を付けてだな。
 こうやって立って。そうしてこう体重を掛ければ。

 転んだ。

「……えっ?」
「――こういう風に動いたらこういう事になるので気を付けておけよ。いいな」
「ゲルツ。もしかしてお前スキー、下手……」
「強盗団の連中は銃器などで武装しているという話だ。ああ、あと大量の金が詰まった袋も持っているから……幾らスキー板を使っていると言っても万全のスピードではないだろうな。上手くスキー板を扱えれば追い詰める事が出来ると思うぞ」
「いやゲルツお前……」
 雪景色に大の字で埋まりながら説明を続けるゲルツ・ゲブラー。
 駄目だこいつきっと役に立たないぞ! いやそんな感じならお前、飛行した方がまだ早いんじゃ。
「心配無用だ――今はちょっと調子が悪かっただけだ。行くぞ、奴らは近い!」
「いや待ていや待ていや待て落ち着けぇ!」
 叫ぶ声。止める声と強行しようとする勢い。
 全ては豪雪の中に溶けていくのであった――こんな感じに言えば綺麗に終われます? 駄目?

GMコメント

 ゲルツ過激派の夏あかねさんに「どうして私の優先がついてないの???」って怒られました。ひどいや。

●依頼達成条件
 強盗団から金を取り戻せ!

●戦場
 ガルベッド山脈という雪山の一角です。
 この中を強盗団が逃げています。しかし彼らの逃走ルートとして有力な地形に先回りする事が出来ました。皆さんは敵の姿が確認され次第、追撃戦を行ってください!
 周囲は雪と強風が激しいです。
 普通に歩く、低空飛行よりも上の高度へと往くと移動にマイナスの要素が付く可能性があります。後述のスキーを利用すると機動力がプラスされますので、検討してみてください。(スキーの利用は絶対ではありません)
 あまり高くない(低空飛行)であれば風の影響は少なく移動できます。

●強盗団×10(敵戦力)
 麓の銀行を襲い逃走中の強盗団です。
 保安部が追いかけていましたが雪山に逃げ込んで以降、行方がわからなくなっています。彼らはいずれも銃器を携帯し、この中の5人が強奪した金の袋を持っているようです。いずれもスキーを利用し、雪上を滑っています。
 ちなみに何か日々の生活に困って銀行強盗した訳ではなく、いわゆる『ひゃっは~!』思考の世紀末的強盗というか……とにかく悪人ですので遠慮なくぶちのめしてやりましょう。

 ただし結構銃の扱いは上手いらしく、クリティカルな攻撃を出す確率がそれなりに高いです。近寄るのには十分注意した方がいいでしょう。

●ゲルツ・ゲブラー(味方NPC)
 ラドバウ闘士にして鉄帝国保安部の一人。
 スキーがド下手糞で、死ぬほど役に立ちません。
 でもスキーで移動しようとします。どうしてー!

●スキー
 本依頼においてはスキーの移動方法を利用すると機動力+2~されます。
 機動力が+2以上に高くなるのはプレイングでの工夫の他『騎乗、騎乗戦闘、アクロバット、跳躍』などの非戦スキルがあると役立つでしょう。その他のスキル(や類するギフトなど)も使いようによっては役立つかも……?
 ちなみにこのルールは敵にとっても同様です。
 ただし敵は重い物を背負っている人物は機動力+1~となるでしょう。

●備考
 キャラクターにはそれぞれスキーが得意だったり、あるいは不得手だったりするイメージがあると思います。
 プレイング中の工夫方法を除き、キャラクター自身が『スキーが得意、不得意』という要素はフレーバーとして取り扱いますので『わわわ、自分はスキーに慣れてないんだよ!』という場合でも能力判定上においてはマイナス要素として取り扱いません。ご安心ください。ゲルツは除きますけど。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • Skiing Battle!完了
  • GM名茶零四
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年12月29日 22時25分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

日向 葵(p3p000366)
紅眼のエースストライカー
ヨハン=レーム(p3p001117)
おチビの理解者
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
黒撃
高槻 夕子(p3p007252)
クノイチジェイケイ
リュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)
神殺し
笹木 花丸(p3p008689)
堅牢彩華
ルビー・アールオース(p3p009378)
正義の味方

リプレイ


「おほほほ、覚悟なさい薄汚い盗人共! 酒代を踏み倒……いえ、今度機会があった時に払う為に鍛えたスキーの腕、見せて差し上げますわ――!!」
 ホントですわよ! 今度払うつもりがあるんですわよ! 機会があれば!! そんな事を叫びながら雪面を駆け滑っているのは『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)である。流石雪国の人間であるのかスキーには慣れっこの様子。
 軽快な滑りから強盗達にみるみる迫っていて。
「しかしゲルツはこの鉄帝で軍人やってるのにどうしてスキー出来ないんだろうね……」
「全くですよ。同郷の先輩として……もうちょっとかっこいい所が見たかったですね」
「違うぞお前ら。今はちょっと調子が悪いだけだ――見てろよ、ここからが俺の本領で」
 同時。『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)と『男の娘の魅力』ヨハン=レーム(p3p001117)が見据えるのは涼しい顔をしながらスキーに悪戦苦闘しているゲルツである。何を余裕ぶってるんだ、全然出来てないでしょ! あ、また転んだ!
「ああもう。どうしたんだよゲルツ、そうじゃなくて……基本はオヤユビの付け根くらいに体重を乗せるイメージで、曲がりたかったら曲がる方向と逆のアシの土踏まずガワに体重を乗せに行くつもりで……ナンデ今の右アシに力入れたのに右に曲がったの!? ああ、そっちはハヤシだよ――!!」
 滑り方を教授しようと思ったイグナートだが――どういう訳なのかゲルツは明後日の方向に進んでいく。コースを逸れて道脇の林の方へと……ああッなんか凄い衝突音が聞こえたきたぞぉ。
「ゲルツさん……人間、だれしも得手不得手はあるから。
 ってそれはそうと真面目に追わないと流石に距離が離されるかも!」
「あーっ、もうッ。ゲルツさん、御免っ! でも、そんなに苦手なのに苦手なのを認めようとしないゲルツさんが悪いんだからね!?」
 と『クノイチジェイケイ』高槻 夕子(p3p007252)はかつての世界で(あわよくばナンパされる目的で)嗜んだ軽快な滑りを見せていて、ルートを逸れたゲルツは『人為遂行』笹木 花丸(p3p008689)によって回収される。
 首根っこ掴んで腕の力で己が背へ。無理やり背負う形で花丸が背負うのだ――
 やめろ離せ、自分で往ける! とかほざいてるが花丸ちゃん、もう聞きません。折角の戦力を遊ばせている余裕はないし――なんならさっきちょっと練習したらもう滑れるようになった花丸ちゃんにすら及ばないなら、問答無用である!
「しかし上手いな。さっき始めたばかりとはとても思えないぞ」
「そう? まぁね! 花丸ちゃん、運動だけは得意だからね! エッヘン!!」
 胸を張って自慢げな花丸ちゃんかわいいのであった。本来であれば折角のスキー場、純粋に満喫したいのだが……その心は流石に抑えて前へと進む。ゴーグルと防寒着で風と冷気をガードし、持ち前の運動神経で経験をカバーすればなんのその。
 逃げる強盗団の影へと迫る。金を背負っている者達に合わせているのか全体的に動きが鈍そうだ。
「やむを得ない理由があるならまだしも、ノリでお金を盗んで逃げるなんて。
 許せない。その為にどれだけ迷惑かかってると思うの!」
 であれば『薔薇の少女』ルビー・アールオース(p3p009378)は闘志を燃やす。もしも生活に切羽詰まっての犯行であれば――いや無論それでも犯罪ではあるが――百歩譲ってまだ理解は出来る。
 しかし彼らはただ己が欲の為だけに犯行を行ったのだ。
 ――許すべからず。身体を低くし真っすぐに、速度を上げて己が銃を奴らへ。
 放つ。
 後方より射撃の一閃が彼らへと食らいつくのだ。
「げ、げげぇなんだ奴らは!? 鉄帝国の連中にバレたのか!?」
「――遊び感覚で盗みやるからこうなるんスよ。ちっとばかし痛い目みてもらうっス」
「まてー! とうぞくだんまてー! すなおに置いたら痛いことしないよ!
 そうでないなら……ええと、大変なことになるよー!」
 更に『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)と『うそつき』リュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)もまた強盗団へと猛追する。両者ともにスキーの経験自体は浅いが……しかしそんな事は関係ない。彼らの様な無法者を逃す訳にはいかないのだから。
 葵は多少山なりになっていた箇所を利用し、跳躍。アクロバットな動きを見せながらもバランスを保ちつつ――敵の姿を常に射程圏に捉える。敵の中でも狙うべきは袋を持った者だ。
「逃さないっスよ。そいつを返してもらうっス!」
 再度跳躍。蹴りを叩き込み、そのまま速度を活かして止まらない。
 そしてリュコスも同様に超速度で接近するものだ。体重を前に掛け、姿勢を低くしてとにかくスピードを維持。凄まじい速度で駆け抜ける景色の中にありながらも――共に生じさせるは大喝。
 全身全霊で吐き出すソレが物理的な衝撃波となるのだ。
 逃がさない――ハツチョーセンなスキーに些かの不安はあるのだが、それでも前へ。
「ひょ、ひょえええ! 早い、早いよ――!!」
 目が回りそうな速度。あれ、止め方ってどうするんだっけ。足の先を開くんだっけ!?
 慣れた者。慣れていない者。
 様々いながらも――雪の世界を駆ける戦いは本格化しつつあった。


 スキー! やーん、きゃわわなあーしったらナンパされちゃうかもー。
 そんな理由で嗜んでいた夕子だったが、まさか異世界に来ても役立つとは思っていなかった。雪面を滑り降りる事になんと澱みの無い事か。最短距離を直進――かっ飛ばす勢いでその差を縮めれば。
「はいはーい。おにーさん達、あーしと遊んでかない?」
 夕子より甘い匂いが漂ってくる。
 妖艶なる香り。人を惑わす彼女のJKとしての魅力が注意を逸らすのだ――
「馬鹿野郎! そんな連中に構うな、今は一刻も早く逃げ……」
「あっ、どっせえ――い!!」
 流石に全員とはいかないが、未だ冷静だった一人をヴァレーリヤがメイスでホームラン。
「主よ。主の御手は我が前にあり。煙は吹き払われ、蝋は炎の前に溶け落ちる……
 さっ! 主への祈りも済ませた事ですし――ここからは許されしフィーバータイムですわ!」
 同時。聖句を唱える事で顕現させた炎の渦が敵の攻撃を焼き焦がす。反撃にと放たれた銃弾が燃え盛る炎に巻き込まれ減衰するのだ。
 その間に狙う。特に、スキー板や金の入った袋そのものを。
 スキー板を破損させてしまえば最早歩く事しか出来なくなる彼らを追い詰めるのは容易い事だ――少なくとも逃げられるという事はなくなるだろう。
「ええ折角先回り出来てるんです……このまま押し切らせて頂きますよ!」
 故にヨハンは周囲の指揮を執りながら強盗団を追い詰めていくのだ。
 彼らの前方に回り込み、それ以上行かせない。そして――熱砂の妖精が雪原の世界に現れるのだ。
 砂嵐が如き風を舞わせて敵の足を封じる。執拗に絡み取り、その身を拘束して。
「おぉ可哀想に! 極寒の雪に灼熱の熱砂……実に大変そうです!」
 ま、強盗なんてした貴方達が悪いんですけどね――ッ!
 思考をしながら手は休めない。統率の意思と軍師たりうる智謀が戦場に冴え渡るのだ。
「畜生! 一点突破だ! なんとか逃げろ――!」
「そうはいかないね。正義のヒーロー(志望)として、絶対好きにはさせないよ!」
 さすれば敵もやられっぱなしではない。即座に動き出し、ルートを変えて包囲に穴を作らんとするのだ。複数で一点を突破する様に動けば、流石に漏れる者もいよう。
 だから――ルビーは狙う。
 ヨハンの近くに位置しながら、精密なる射撃を繰り返すのだ。
 狙い定めて引き金を絞り、放てば敵の額を穿つ。
 無論敵からの反撃もあろう。交差する銃弾は苛烈で、ともすればルビーの肉を削いでいく。
 ――だがこの程度で臆するものか。
「だうりゃあああああ! いいかげん、袋おとして――!!」
 耐えていれば味方の援護もあるものだ。逃げんとする者の背後から迫るは、リュコス。
 打ち倒しては即座に離れる。放たれる銃弾が頭の上を掠めながらも、しかし直撃は避けるのだ。うひゃあ、と身を小さくしながら滑りを継続し。
「チィ、悪ぃ! そっちの片付けを頼むっス! 逃がしちまった……!!」
 その時、ボード蹴りを敵の顔面に葵はぶち込みながら、素早く移動する強盗の一人を目敏く見つけた。しかし人間身一つではあちらもこちらもとはいかない……注意の声を飛ばして、己は転ばせて時間を稼いだ者の相手をする。
 袋持ちだけは逃す訳にはいかないのだ。それだけは必ず。
「返してもらうっスよ……!!」
 依頼の目標物なのだからと、彼は抵抗の銃撃を躱しながら突っ込んだ。
 で、あれば。
「今だ! 行くよゲルツさん……!! ここまで来たなら大丈夫だよね!?」
「ああ――無論だ。後は任せておけ!」
 逃れつつある者には――別の者が確かに向かうのだ。
 滑らないでよ? 絶対に滑らないでよ? 何度も注意しながら追いついた花丸がゲルツという荷物……もとい戦力を高速の中で降ろしながら跳躍。大きく跳び込んだ彼女は逃げんとする彼らの前に立ち――名乗りを上げるかの如く派手な登場を行えば、自身に注意が向くものだ。
 そこへゲルツの射撃。スキーが下手でも動かなければ話は別だ。
 その地点から放つ――待て、動こうとするんじゃあない。絶対動くんじゃあないぞ。せめて歩くんだぞ。やめろ! スキーは諦めろ、馬鹿――!!
「もー! 何してるんですの、いい加減現実を見据えなさい! 落ち着いて、態勢を低くして、そう……違う、そうじゃないですわ! 足先は揃えて……もー! 私が引き摺って行った方が早いですわ――ッ!!」
「待てヴァレーリヤ、なんだそのロープは――ぐぁ! 首が締まってッ!」
 さすれば馬鹿(ゲルツ)の元へと駆けつけたヴァレーリヤが有無を言わさずロープをゲルツへ。西部劇よろしく投げたロープでゲルツを固定すれば、そのまま引き摺りながらスキー走行! ぐああああと絶叫が響き渡るが、些細な犠牲だ仕方ない! あっ! ロープが外れてゲルツが慣性の法則そのままに雪の中へ一直線――! 埋もれた――!!
「わわわわ、あれだいじょーぶかなー!?!?」
「――ゲルツは置いてきた! この戦いの先にはついて来れそうになかったからね!
 後でカイシュウしよう! オボえてたら!!」
 その光景にリュコスは焦るものの、半ば以上諦めたイグナートはゲルツが消えて行った雪の辺りに心の敬礼をし、敵の懐へと一直線。お金は返してもらうと目指すは袋持ちだ。
「いくよッ、なぁにゲルツがいなければこんなもんだよ……!!」
 懸念はもうない。集中すべきが目前のみ、己が武を振るうのみであれば。
 鉄騎の拳が敵を打つ――吼えるが如き一撃は山中に轟く程に。
 鳩尾一閃。
 神速の打撃が、悪を誅さんと打ち込まれた。


 強盗団は最初こそ纏まっていたがやがて散り散りにされ始めた。
 スキーの戦いは高機動な戦闘を可能にしている――が、だからこそ一度止まると距離が離れてしまうのもまた容易い状況なのだ。
 イレギュラーズ達が逃亡ルートを阻止し。ブロックされれば味方と距離が離れてしまい。
 カバー困難となれば陣形も容易く維持とはいかない。
 なにより彼らは戦闘よりもとにかくこの戦場を離れる事が主目的なのだから。袋持ちは特に、止まった者達に合流する事よりも逃げようとして――
「やーん、どこいくの? あーし以外をみちゃ、ヤ♪」
 そこへ夕子が割り込んだ。
 袋持ち以外は究極的にはどうでもいい。目的はそのお金の奪還なのだから。
 彼女の止めんとする圧はまるで巨大なる壁の如く逃げる事を許さない。
 ひいい離れろと怯えながら銃を乱射する、も。その程度では夕子が倒れる事もなく。
「敵は孤立しています! 袋持ちを優先して狙いましょう――近付けば此方が優勢です。食らいつくとしましょう……その喉笛にね!」
「しかしこんな状況に至っても袋は手放さねぇとは……
 見上げた根性と言うか、身下げ果てた執念と言うか……」
 ヨハンの号令と天へ通じる接続の意思が皆に活力を齎し攻勢への力とする。であれば葵が一気に強盗団の――特に金を持っている者へと近付くのだが――彼ら、どう足掻いても金を離そうとしない。
「くそ! 渡さねぇ、渡さねぇぞ! これは俺のもんだぁ~!!」
「違うっスよ。それは預けてた人達のもんっス!」
 意地汚い連中だ。だから容赦なくぶちのめしてやった。
 残っている袋持ちは三人――いや今葵が潰したのを含めて二人か!
 追い詰められれば敵の抵抗も激しくなりつつあるが、散発的になっているのであれば押し切れる。見失わなければ、決して。
「さぁ行くよ――花丸ちゃんも大分慣れてきたからね!」
 そして花丸は段々と雪の世界に高揚しつつあった。
 先程まではゲルツを背負っていた事もあり十分な速度は出せなかった――が。降ろして以降は全盛だ。スキー自体の経験に優れていた訳ではないが……しかし、元よりこんな事態でもなければ楽しみたい気持ちもあったぐらいで。
 微かな凹凸を利用し跳躍。足を揃えて速度を上げ、見据えた先へと飛び掛かる。
 林の中へ逃げ込もうとしている強盗へと、拳へ力を籠め――放つのだ。
 それは全てを凌駕し。林の木々を穿って敵の身へと着弾す。
 転げた袋持ち。さすれば飛翔するかの如き姿勢にて迫り、取り返す――
「あと一人だね……! よし、これならなんとかなりそ、うわぁ!」
 瞬間。最後の袋持ちを負っていたリュコスが思わず転げた。
 スキーに慣れていないが故か――そういえば失敗すると雪玉ごろごろになってしまうという伝説をリュコスは想起していた。あったかい服をすっぽり着て、ゴーグルで目がちくちくしないように対策しているが、雪玉になっては動けなくなってしまう!
「わわ、わ! こなくそー!」
 だからとアクロバティックに姿勢制御。敵の姿だけは常に捉えて見失わず。
 その背を捉えて――激突す。
 速度任せの一撃。放たれる銃弾を伏せて躱して、そこへ。
「うおおおおおー、お金お金お金!! はっ! どこぞのシスターの魂が乗り移ってしまいましたが……とにかく逃がすものですか! 喰らいなさい! ナントゲルツミサイル!!」
「待て、ヴァレーリヤ! まだ髪とかあちこちに雪が残って……!」
 直後。再びゲルツをひっ捕まえてきたヴァレーリヤが有無を言わせず人間砲弾。
 アスリートとしての腕力と全身のバネを用いて――黒スーツの男を投擲する。
 もはや射出と言っていい程完璧なスローイングだった。高速飛来する人間砲弾は着弾、激突し、雪を大きく舞い上げて。
「よし! ゲルツよくやったよ――これで終わり、だッ!!」
 その瞬間に出来た隙をイグナートは見過ごさない。
 銃を撃とうと伸ばす腕。その内側に潜り込んで、片腕で狙いを逸らし。
 全霊なる一撃を――敵の身へと叩き込んでやる。
 スキー状態であれば上手い事回避とはいかなかったが、この様な至近距離かつ己が武技の間合いであれば話は別だ。敵を吹き飛ばす程の勢いで穿ちて――背後の樹へと激突させてやる。
 さすれば白目。泡を吹いて気絶した様子を見据えれば……終わりだ。
 全ての金は取り戻した――こいつらの身柄は、後で保安部が回収に来るだろう。
「いえーい! 大勝利、だね! Vサインッ!」
 銃越しにその様子を確認したルビーが勝利のポーズを。煌めくVサインが眩しい限りだ。
 ――しかし強盗団を鎮圧し危険がないというのなら――このまま帰るのもどうか。
 だってここは雪山。スキー場だよ……? つまり。
「夜が明けたらここでスキーするのもいいんじゃない? 勿体ないよ、折角来たのに!」
「うんうん! 花丸ちゃんもそう思うな! だってお金は取り戻したんだし……少しぐらい滑って遊んだりしてもいいよね! いいよね? だ、だめ……?」
 いいよね? いいよね?? と何度も確認する花丸。
 練習もしたし、実際に動いてみたら中々楽しかったしで……いいよね! うん!
「勿論でしょ! 誰にも文句なんて言わせないわよ、さぁスキー楽しむわよ――
 あ。ゲルツさん、ソリにでも乗る? ソリだったら転ばないよね?」
「何を言ってるんだ。全てが終わった今こそ俺のスキー技術を――」
「もぅいい加減になさいな! ほら、スポーツもいいですけれど、雪ダルマとかかまくらとか作ってもいいかもですわねー。雪は豊富ですしなんでもできますわよ!」
 夕子はゲルツに視線を送りながらソリを勧め、それでもスキーに拘る彼をヴァレーリヤは雪玉ころころしながら窘めるものだ。あれだけあってまだ自信満々なのはどうしてなのだゲルツ……
「いやーやらなきゃなんねぇならやってやる……てだけの感じだったんすけど、案外うまくいくもんっスね。速度が出ると中々気持ちいいし――って、あらッ」
 その時。仲間達と共にスキーを楽しんでいた葵が勢いに乗って大ジャンプすれば、その先には地面が無かった。いや、正確には飛び過ぎて地面が遥か下にあったというか……わー消えて行った、大変だー!
 ともあれこれで強盗の事件は解決。
 楽しんだ後にゆっくり下山するとしよう――冬の間の、ささやかな楽しみなのだから。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

ルビー・アールオース(p3p009378)[重傷]
正義の味方

あとがき

 依頼、お疲れさまでしたイレギュラーズ!

 山の中でスキーをしながらの戦闘。
 中々楽しむばかりとはいきませんが……今度は平和な時にスキーを楽しんでみたいものですね。ゲルツさんが教える気満々な様ですが、彼には座って頂きましょう。

 ありがとうございました!

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