シナリオ詳細
人が住めなくなった大地で
オープニング
●むかしむかし
「おかあさん、ねむれないからおはなしして……」
「あら、眠れないの? ……仕方ないわね。それじゃあ、何のお話が良いかしら」
困った様に笑いながらも、母親は自分の愛しい子の頭を軽く撫でてやりながら、ねだった子供に希望のお話を確認する。
くすぐったそうにしながら、子供は嬉しそうに眼を細める。
こういった時にいつもこの子からねだられるのはこの世界の成り立ちについてのお話だ。
この世界がどの様にして生まれたのか──それをおとぎ話として語り継がれて来た物。
「かみさまのおはなしがいいな、それにせいじんさまと、みつかいさまのはなしも!」
「そう? それならお話しましょうか。私達の世界、“ルートスフィア”の神様とその御使い、そして御使いと心を通わす事が出来る唯一の存在──【聖人】と呼ばれる方々がどうして生まれる事になったのか」
もう覚えてしまっているだろうに、それでも子供は嬉しそうに目を輝かせている。
それじゃあ、始めましょう。昔、この世界は──
昔、この世界“ルートスフィア”は人が住める環境では無くなってしまいました。
大地が死に、森が消え、水が汚れ──そこに住む様々な生き物もどの様に、ゆっくりと姿を消していきました。
人によっては神々による天罰が下ったという者も居れば、その原因を調査し、今一度元の姿に戻そうと試みた者達も居ます。
しかし、それでも原因は解らず仕舞い。
当時の記録はもう殆ど残って居ません。
獣も、善人も、悪人も関係なくただゆっくりと死に絶え、大地には瘴気の様な物が漂い、そのまま世界は滅んでしまうのだろうと誰もがそう思って居ました。
……現在に残って居る記録では、こう書かれています。
絶望の最中、優しき女神が現れ、その世界に御使いを遣わせた──と。
その御使いの多くはおとぎ話に姿だけを見せる、幻想種と呼べる存在に似た者達でした。
或いは、竜。或いは、不死鳥。天を貫く巨人。何万年も生きたと思わされる亀。
巨大な大地を思わさせる御使いに、女神は人々と獣達に移り住む様に命じたのです。
やがて、御使い達はそれぞれがひとつの国となりました。
ある国は大地を歩き、ある国は空を駆け、ある国は海の最中を漂っていると言われています。
死の世界となってしまった、この世界で──それでも、明日があるという希望を抱いて。
時が経ち、御使いに移り住んだ人々や獣の中に、御使いと心を通わせる事が出来る存在、【聖人】と呼ばれる存在が姿を現しました。
彼らの多くは普通の人々には無い様な力が備わっていました。
御使いと心を通わせる事で、その力の一部を借り受けたのだとも言われています。
人々は聖人達をそれぞれの国の上に据え、御使いと共に歩んでいく事に決めました。
──しかし、それで全てが終わった訳ではありませんでした。
やがて、死の世界となってしまった大地から、御使いに対して攻撃を行って来るモノが現れたのです。
その姿は様々ですが、共通して影の様な色をした怪物達。
今では、それらをこの世界の住民は【骸】と呼び、悪魔の使いであるとしています。
……御使いの多くは、その姿同様に強い力を持っていました。
しかし、彼らはその力を使って戦う事が出来ません。彼らの身体には、幾多の人々が既に生活を営んでいたからです。
だからこそ、それは必然だったのでしょう。
【聖人】と呼ばれた彼らは、国を守る為に戦いました。自分達の家族を、この世界で唯一生き続ける事が出来る場所を守る為に。
●
「さて、それでこの世界“ルートスフィア”で皆に行って欲しい内容なんだけれど──幾つか選択肢を用意するから、その中から自分が出来そうな物を選んで貰えれば」
本をゆっくりめくりながらカストルは、そう呟いた。
「この世界で【聖人】として、【躯】を倒してくれても良いし、御使いと呼ばれている存在……今回の場合は竜の形をしている、国竜アウスバーンかな。彼に色々と話を聞いてみても良い」
国竜アウスバーンは竜の形をした御使いで、優しい落ち着いたお爺さんの様な口調の御使いらしい。
この世界の事で知りたい事などがあれば、彼に聞くと良い、とカストルは言う。
「彼自身、色々と退屈している様子でね。たぶん、世間話でも何でも喜ぶと思うよ。気になるなら、彼自身の事を聞いてみるのも良いかもね」
「解り易い方針は、【聖人】としてアウスバーンを襲って来る【躯】を倒す事かな。この物語では君達は【聖人】という扱いになって、空も飛べるし、その力も混沌世界よりはずっと強い力を出せる様になると思う」
最も、【聖人】が特異運命座標以外に居ない訳では無いとの事で、誰かが戦闘を必ず行う必要はないらしい。
「大きい蟲の様な【躯】と呼ばれる影が何体も出て来るだろうけれど、それでも君達の相手にはならないと思う。軽く蹴散らしてやって」
「御使いもまた生き物だから。何時か、彼らが動かなくなる時が来るんじゃないか、と、この世界の住民は気づいてる」
それでも、とカストルは続ける。
「希望が、明日が繋がる事も願っているから……宜しくお願いするね、混沌世界の英雄達」
- 人が住めなくなった大地で完了
- NM名もふ太郎
- 種別ライブノベル
- 難易度-
- 冒険終了日時2020年12月21日 22時05分
- 参加人数4/4人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 4 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(4人)
リプレイ
◆
「それにしても…すっごーいっ! 大地全てがアウスバーンさんの体なんだよねっ!?」
『人為遂行』笹木 花丸(p3p008689)は降り立った大地を踏みしめながら、驚きを露わにしながらアウスバーンへと疑問を投げかけていた。
「この背中に今では色んな人や動物たちが一緒になって暮らしてるんだよね?」
『ああ、そうだとも。太陽と月が幾度となく入れ替わった、もう随分と昔の事からになるが……』
御使いと聖人の間だけで交わす事が出来ると言われているテレパシー。
それによって、特異運命座標にはアウスバーンからの言葉が確かに届いていた。
「炎を司るような御使いもいるのかのう、いるなら会ってみたいものじゃ」
『焔雀護』アカツキ・アマギ(p3p008034)はこの世界に居るとされている、御使いの事について興味がある様だ。
『炎に特化した御使いとなるとフランヴェールだろうか。この世界の何処かを飛んで居るのだろうが……』
その居所はアウスバーンにも解らない、と唸る。
「それで、躯っていう悪い連中が居るって聞いたんだけど何処に居るのかな? アウスバーンさんは解る?」
『必要であればすぐにでも』
「色々とこの世界の話を聞いてみたい所ではあるが、先ずは当面の安全の確保かのう」
「よっし、それじゃあやろう、アカツキさん!」
アカツキの言葉に、同じ事を思って居た花丸が元気良く同意する。
「一緒に頑張るのじゃ!」
そう言ってアカツキと花丸は聖人に与えられた特権としての飛行を見事に操り、空を駆けながら戦場へと向かう。
「(死の大地と化した世界に残された、『御使い』と言う名の僅かな生存圏か……)」
一方、『プロメテウスの恋焔』アルテミア・フィルティス(p3p001981)は国竜アウスバーンの背──かの御使いの背に広がる国の住人達の様子を伺う様にしながら、街の中を歩いていた。
この世界の大地に人が住めなくなってどれだけ経ったのかは、異世界の住人である彼女には伺い知らぬ話だ。
しかし、だからこそ。この世界に住む人々が未来に希望を持てる様に手助けをしたい。
豊穣での、魂を分けたと言っても過言では無い姉妹との戦いは彼女を大きく傷つけた事だろう……その心境はどれだけ辛い物であったか、想像に難くは無い。
……しかし、彼女は今一度歩きだした。急ぐ必要はない、ゆっくりと歩くような速さでも良い。
その心に抱いた“片翼”は彼女と常に共に在る。
希望を紡ぐ為に降り立った世界を、この世界に確かにある人々の笑顔を目にしながらアルテミアはその決意を今一度確かな物とする。
「それじゃあ、聞かせてくれるかしら? 私達がこの世界で何かを為す為には情報が必要なの」
『無論。我が子らの為にこの世界に降り立ってくれた事、心より感謝を申し上げる』
彼の竜はこの背に乗せている人達を大切に思っている──その事に彼女は思わず口元に笑みを浮かべるのだった。
◆
「聖人などという柄では無いが……騎士として、貴族として。民草を泣かす者には立ち向かわねならない!」
『タリスの公子』エドガー(p3p009383)は彼の愛馬と共に戦場の一部となった国竜アウスバーンの背を駆けながらそう高らかに宣言する。
それはさながら、御伽噺に居るであろう勲しの騎士の様に。
彼の鋭い、雷鳴の様な槍の一撃によって躯は弾け飛び、やがてその身体は影の様に溶けて消えてしまう。
「さあ、下がって。此処は私に任せて君達は下がりなさい」
「ありがとうございます、聖人様……!」
「あ、ありがとうございます!」
もう少し遅れていれば、少女を庇っていた少年は躯にやられていただろう。
だがしかし、聖人として稲妻にも等しい速力を愛馬と共に手に入れた彼にとっては数瞬の暇さえあれば問題は無かった。
エドガーの周囲には未だに躯が存在し、出方を窺うかの様な動きを見せている。
聞くに躯の大本は未だに解っておらず、アウスバーンにも把握出来ては居ないらしい。
「さあ、躯共よ。私はまだこの通り健在だ。この国の民達には、指一本とて触れさせはせんぞ!」
言って、エドガーは躯達に突撃。嵐でも呼んだのかと言わんばかりの苛烈な槍技を繰り出した。
幾多も存在した躯は、蜘蛛の子を散らすかの様に消し飛んでいく。
嵐が過ぎ去ったその場には、エドガーと彼の愛馬が残るのみであった。
「国竜アウスバーン殿、次の躯が現れる位置などは解るだろうか?」
『問題無い、何せこの私の背の上で起きている事だ──存分にその槍を振るってくれると嬉しい、聖人エドガー』
「勿論だ、その為に私はこの世界に降り立ったのだから」
力強いその返答に、アウスバーンもまた何処か嬉しそうに笑う。
『有難い。ならば次は──』
エドガーの頭の中に、直接流れ込む様にして躯の位置が流れ込んでくる。
それは今居るこの位置からは多少距離のある場所だ。だが──
「問題無い、行こう!」
エドガーは自らが騎乗する愛馬へと呼びかける。
彼は気づいているだろうか。
天空を飛び、次の敵へと勇敢に向かう彼とその愛馬の姿は──この世界の住人にとって、御伽話や神話の時代に存在する騎士と殆ど等しいという事実に。
戦場から戦場へ飛ぶエドガーが躯達を葬り、子供達を助け出していた頃。
花丸とアカツキもまた躯と相対し、その力を振るっていた。
「悪魔の使い共よ、聞くがよい。妾は聖人アカツキ、貴様らを灰燼と化す者じゃ」
その指先には全てを焼き尽くす炎、そしてもう片方の手には稲妻が迸っていた。
「花丸ちゃんとアカツキさんが一緒なら、こんな奴らだってちょちょいのチョイなんだからねっ!」
「勿論じゃ、いくぞ! 花ちゃん!」
これは牽制とばかりにアカツキの掌から稲妻で構成された鎖が幾重にも重なり、躯へと殺到する。
聖人として召喚された特異運命座標の技はこの世界において、御業と言い換えても良い程の威力を誇る。
「花丸ちゃんは花丸ちゃんの為すべき事を為すよ。私のこの手が届く限り、手を伸ばし続ける。それだけっ!」
戦いの中で失う物もあるだろう。自分に言い聞かせる様に、この世界に響かせる様に吐き出された言葉。
諦めたりしない、例え一度届かなかった物でも、次は必ず。
想起した物は、かつて戦場で届く事が無かった反転した者への面影か──
名乗り口上として扱われていたそれは領域として展開され、その周辺に居た躯全てに効果を及ぼす。
躯の注意は花丸に集中し、殺到しようとする──だが。
「アカツキさん、いつも通り派手な奴を一発決めちゃってっ!」
声を上げて攻撃の合図を送る。
先程から昼間にしても随分と明るい、そう思っていた矢先。
「デカいの行くぞ! 花ちゃん巻き込まれぬようにな!!」
アカツキの頭の上に巨大な火球が顕現していた。
それは小さな太陽。この辺り一帯を焼き尽くしかねないとも思える炎で。
飛びのいた花丸が先程まで居た場所に、その炎が炸裂する。
その場に存在していた躯は炎で焼かれ、やがて動かなくなる者。
火球に触れ、あっという間に存在を消された者、様々ではあったが──
「うむ、いつもより炎の出力が良いのう」
パチン、とアカツキが指を弾くと辺りに燃え上がっていた炎は消え去り、大地をも焼いたと思わしき炎は躯だけを焼いていたのだ。
だが、たった1体、巨大な躯が生き延びている。それを確認して、ほんの僅かな暇。
躯の足元にスルリと影の様に花丸が姿を現した。
「これで、終わりだよっ!」
壁を貫く様な音が響き、躯を拳の衝撃が貫いていく。
衝撃は天の雲をすら引き裂き、その轟音がこの戦いの終わりだと言わんばかりにこの世界へと響き渡る。
「やったのう、花ちゃん!」
「うんっ、アカツキさんも凄かったっ!」
それを見届け、駆けて来たアカツキに対して花丸は満点の笑顔を返すのだった。
◆
『どうやら、終わった様だ』
「皆は無事なのね?」
『あぁ、勿論無事だとも。怪我らしい怪我もしていない』
「そう、良かった……それで、話の続きなのだけれど」
仲間の安全を確かめた後、改めてアルテミアはアウスバーンへと言葉を投げかける。
「他の御使いとの交流はあるのかしら。アカツキさんへの口ぶりだと、他の御使いの事は知っているような感じだったけれど」
『……我らは皆、兄弟の様なモノだ。だが、他の御使いとの交流……国交は今は無きに等しいと言って良い』
アウスバーンが言うには、かつては御使い同士のテレパシーが届いたがやがて大地に溢れる瘴気が溢れ出すと共に情報のやり取りが少しずつ行えなくなっていったと言う。
「それでも、国と国との交流は重要よ。どうにかして、機会を作る事は出来ないかしら」
今は自分達は無事かもしれない、けれど、他の国がもし既にその御使いと共に失われているのだとしたら?
その不安要素をこの国の人達から取り除く事は重要だとアルテミアは言う。
『可能性が全く無い訳でも無い。だが』
勿論、他に不安要素が無い訳ではない。
御使い達が一か所に集えば、何かが起こる可能性──躯達もどの様な行動をしてくるか想像がつかないという懸念点がある事もアルテミアは解っていた。
アウスバーンもまた、同じ様な事を考えているのだろう。
「ねえ、アウスバーンさん。あなたが懸念している事は私も解っている心算よ──それでも、この世界の人々にとっては『まだ他の国も生きている』という確かな希望には繋がるはずよ」
『……そう、だな。私も怖かったのかも知れん』
何が恐ろしいのか、それが言葉として伝わる事はアルテミアには無かったが、それはきっと彼にとって、同胞が既にこの世界に居ないという可能性を確かめる事が恐ろしかったのだという事は言外に読み取れた。
「それじゃあ?」
『あぁ、約束しよう。異界より訪れた新たな聖人よ──私はこれより、同胞達を探す為に動くとしよう。我らが母、女神ユーフィアの名に誓って』
成否
成功
状態異常
なし
NMコメント
どうも、初めまして。
今回が初ライブノベルとなります、もふ太郎です。
今後使えていけたら良いなー、という世界観で1本出させて頂きます。
もしご縁がありましたら宜しくお願い致します。
●世界観
人々が住む事が難しくなってしまった世界、“ルートスフィア”
女神により遣わされた御使いと呼ばれる幻獣達の身体に移り住んだ人々が暮らす世界です。
文明レベルは中世くらいを想定してください、一般的なファンタジーくらいの文明レベルです。
御使いの身体の上になりますが、木々もありますし、水などもあります。
人々が暮らすことが出来る生活環境は整って居るでしょう。
この世界の大地には、一般的な人間や獣に対して毒となる瘴気が漂っています。
ですが、御使い。そして、【聖人】と呼ばれる存在には効果がありません。
●この世界での行動指針
・【聖人】として国竜アウスバーンを襲って来る【躯】を撃退する(何をするか迷うならこれがお勧めです)
・国竜アウスバーンと何らかのお話をする(答えられない事もあるかも知れません)
その他、この世界で出来そうな事をやってみるのも構いません。
希望があればNPCなどが生えて来る可能性があります。例えば、この世界の事を話してくれる一般人。
或いは特異運命座標以外の【聖人】など。
●【躯】について
今回、国竜アウスバーンを襲って来る【躯】です。
全長3mくらいの巨大な蟲の形をした影の様な化け物です。
どうやら数体、5m程のボス格が混ざっている様です。
数はとてもたくさん。しかし、【聖人】になった皆様の敵にはなりません。蹴散らしましょう。
●国竜アウスバーンについて
かつてこの世界、“ルートスフィア”に女神によって遣わされた御使いの一柱。
巨大な竜の形をしており、その背の上にこの世界の人々は暮らしています。
大きな翼がありますが、今はもうその翼を羽ばたかせる事はありません。余程の事が無い限り、彼が戦いに動く事はないでしょう。
性格は優しい落ち着いたお爺さんの様な口調との事。
【聖人】の設定を与えられる特異運命座標とはテレパシーの様な物で会話をする事になります。
●特殊ルール
この世界での特異運命座標には、【聖人】であるという設定が付与されます。
飛行付与、飛行ペナルティはありません。
戦闘力は混沌世界よりも極めて強くなり、威力、攻撃範囲なども増大されます。
また、御使いと呼ばれる存在とコンタクトを行う事が出来る様になります。
●プレイング
書き方などはご自由にして下されば構いません。
キャラクターの呼び方など、その他特別拘りがある部分に関しても記載があれば助かります。
設定欄なども確認は致しますが、主に見るのはプレイングになると思います。
特にアドリブNGと記載が無い場合、戦闘部分などで他のPCやNPCとの絡みなどが発生する場合が御座います。
●その他
スキルの略称など、そういった物に関してはもふ太郎が分かる様にして下さればOKです。
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