PandoraPartyProject

シナリオ詳細

攫われよ、エウロペ

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●逃げ帰った牡牛 
 白い砂浜に青く静かな海。
 砂浜を歩く一人の美女と彼女の側に控える侍女。
 美女の名はエウロペといい心根の優しい女性である。今日は侍女を伴って、浜辺へ散歩へと繰り出した。
 そうしてそんな彼女を待ち受けていたかの様に、ゆうらり尻尾を揺らしてしずしずと真っ白な牡牛がエウロペへ近づいてくる。神聖さを感じさせる牡牛の正体はゼウス。名高い最高神である。
 彼はエウロペを気に入り妻にしようと考えていた。白い牡牛は背中に乗れと言わんばかりにエウロペの前への傅いた。
「まぁ、白くて綺麗な牛さんね。乗せてくださるの?」
 エウロペの白く美しい指が牡牛の背中に掛けられそうになった。
「いけませんエウロペ様」
 その手をそばに控えていた侍女が制す。
 そしてギロリと牡牛を睨んだ。
 その眼圧は鋭くまるで、そうヘラを思い起こさせゼウスの身が強張った。最高神なのに。
「海から突然現れる白い牛なんて聞いたことがありません」
 そうして冷や汗をダラダラと流す牡牛を更に睨みつけた。
「……大方魔物の類でしょうが、そうですね今晩の夕食はステーキがいいかもしれませんね」
(あ、これワシ喰われる)
 神様だって怖いものは怖い。
 水飛沫を豪快に立てていき白い牡牛は水平線の彼方へ消えていった。
「さ、エウロペ様お父様とお母様の元へ戻りましょう」
「ええ! それにしても不思議な牛さんだったわね。帰ったらお父様とお母様にお話ししなくちゃ!」
 二人の足跡を残して浜辺に静寂が戻ったのであった。

●攫われよ、エウロペ
「よう、また神話の改変があったらしいぜ」
 ちょいちょいと手招きして朧は穴あなた方を手招いた。読んでいた神話を指さすと白い牡牛と美女、それから侍女がいる。牡牛座の神話らしい。
 次の頁を捲ると、そこには牡牛が海の上を爆走する挿絵があった。背中には何も乗せずに。
「……要はゼウスがエウロペを攫うのに失敗したことになってるんだよ」
 このままでは牡牛座の神話自体がなかったことになる可能性もある。
 はぁ、と朧は頭が痛いと言わんばかりに額を手で押さえた。いや、変身していたとはいえ、かの最高神を視線で威圧し追い払う侍女など聞いたことがない。その光景を想像し、肩を震わせるあなた方に朧は今度は真剣な声で続ける。
「おっと、言っておくがこの話はギャグじゃないぜ」
 どういうことかとあなた方が問いかけると朧は少し言いづらそうに、だがすぐに口を開いた。
「……エウロペは、攫われることを望んじゃいない。むしろ攫われた後、故郷や両親のもとに帰れなくなってひどく傷つくんだ」
 つまりこれは、その未来を回避した物語。
 それを、元に戻すという事は――。
「そういうことだ。彼女をゼウスに攫わせる。まぁ、正しくいえばゼウスが変身した牡牛の背に乗せる。これが今回のオーダーだ」
 なお侍女はかなり警戒心が強くどうにか気を惹いてエウロペから離す必要があるだろう。
 また腕っぷしが強く、あのゼウスを視線で威圧したというのだから相当な圧力を持っていることが推測される。
「……胸が痛むってんなら、エウロペから外の世界に行ってみたいと思わせてもいいかもしれねぇな」
 それじゃ、頼んだぜと朧は力なく手を振った。

NMコメント

 初めましての方は初めまして。
 そうでない方は今回もよろしくお願い致します。白です。
 今回は星座シナリオ第三弾「牡牛座」の神話が改変されてしまいました。こちらを元の姿に戻してください。以下詳細です。

●目標
・ゼウスにエウロペを攫わせる
 本来の神話では白い牡牛にエウロペが乗って連れ去る、というところから始まりますが今回は侍女が強すぎてびびったゼウスが逃げ帰りました。最高神も怖かったんだ、嫁にちょい似てたんだよ仕方ないね。
 というわけで皆様にはゼウスが無事(?)にエウロペを攫えるようにアシストしていただきます。

●舞台

 神と人が暮らす星座の神話の世界です。
 今回は『牡牛座』の話の舞台です。

●場所
 静かな浜辺です。ゼウスは海からゆったり現れる予定です。

●NPC
・エウロペ
 両親に愛され、周りに愛された優しい女性です。
 彼女もまた両親が大好きで攫われたいとはこれっぽっちも考えていません。故に今回は彼女の意思をへし折って攫わせるという事です。
 彼女を言いくるめるか説得して自ら背に乗る様にしても構いませんし騙しても構いません。方法は一任します。
・ゼウス
 白い牡牛姿で現れ、エウロペを攫う最高神です。
 あなた方がこの世界の者では無いと気づいても何もしません。なんか手伝えよと言っても神聖な牡牛になってますのでなにも手伝いません。
・侍女
 圧が凄い。もう一度言います。圧が凄い。
 クラシカルメイド服がとっても似合う腕っ節も気も強い侍女さんです。エウロペさんが幼い頃から側で守ってきました。ゼウス曰くヘラに似ているそうです知らんがな。彼女の気をどうにかして逸らすかエウロペから引き剥がさない限りエウロペの誘拐は難しいでしょう。警戒心も強いです。

●サンプルプレイング
 うーん、誘拐の手伝いかあ。気乗りしないなぁ
 でも神話を戻す為には仕方ないか。
 ちょっと離れた場所で盛大に音と光をぶち上げてみるぜ!

 こんな感じです。それではいってらっしゃい。

  • 攫われよ、エウロペ完了
  • NM名
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年12月24日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

シラス(p3p004421)
超える者
小金井・正純(p3p008000)
ただの女
カイン・レジスト(p3p008357)
数多異世界の冒険者
メルーナ(p3p008534)
焔獣

リプレイ

●邂逅
 白い砂浜に青く静かな海。
 侍女はエウロペに危険が及ばないようにと周囲を警戒していた。
 彼女に護られたエウロペは鼻歌を歌いながら花を摘んでいる。
「美しいあなた、エウロペさま、突然のお声がけを失礼します」
 恭しく頭を下げてシラス(p3p004421)がその手をエウロペへと差し出した。
 突然現れた少年に侍女が警戒心を強める。
「我が主が貴女様をおもてなしをしたくご招待に参りました」
「まぁ!」
「失礼ですが、どちら様でいらっしゃいますか」
「私はシラスと申します」
 手を合わせてはにかんだエウロペとシラスの前に即座に侍女が割り込んだ。
 ここまではシラスの読み通りである。侍女の様子を伺えば確かに視線だけで人を殺せそうだ。冷たい視線には慣れているシラスでさえぞっとするほどに。咳払いをしてシラスは今度は侍女へと向き直る。
「お供のお方も是非」
「せっかくのお誘いですが、お断りさせていただきます。エウロペ様を知らぬ方と逢わせる訳には参りません」
 事前に『不義を射貫く者』小金井・正純(p3p008000)が得た情報によると、エウロペと侍女の関係は間違いなく本物で、強い絆で結ばれているという事。
 その視線の鋭さも圧の強さもすべてエウロペを護るためだという事がわかっていた。
 と、いう事は。
「お願いしますううう! 招待に応じて頂けなければ私の首が飛ぶんですううう!!」
「なっ」
 うわああんと泣き叫びながら突然砂浜に顔を埋めたシラスに流石に侍女もたじろいだ。
「お顔を上げてくださいな。ユーロ、こんなに頼んでいるのだからお話くらい聞いてあげても良いでしょう?」
「ぐ……エウロペ様がそこまで仰るのであれば」
「ありがとうございます! ありがとうございます!」
 エウロペをその気にさせればいいというわけだ。
 エウロペの真直ぐな穢れの無い瞳に負けた侍女は彼女と共にシラスの後を着いていった。

●外の世界
「最高神ゼウス……どうも、そんな感じには見えないのよね、だって牛だし……」
 シラスの到着を待っていた『焔獣』メルーナ(p3p008534)は海に静かに立つゼウスを見た。
 神話の中では最高神という事なのだが、どうみても牛にしか見えない。
「……攫うの失敗するとは何をされてるんですか神ゼウス」
 変装を解き、一人の巫女に戻った正純は頭を抱えた。
 自分の良く知る牡牛座の話が間抜けな結末に変わるところであったのだ。しっかりしてほしい。
「無理矢理攫うのは趣味じゃないからね。ここは彼女達にも前向きになって貰って付いていくのがベスト、なんだけれど」
 『数多異世界の冒険者』カイン・レジスト(p3p008357)は溜息を一つ零す。
 誘拐される未来を回避した女性を攫わせるというオーダー。
 ならばせめて、自分から外に行きたいと思ってほしい。それに外の世界には未知の物が沢山ありワクワクするところが沢山あるのは数多の世界をその足で旅してきたカインだからこそ自信を持って言える事であった。
「さ、こちらでございます。エウロペ様」
「まぁ、綺麗な牛さん。こんにちは」
「……海に立つ牛ですって?」 
 シラスに連れられてエウロペと侍女がゼウスの前に姿を現した。
 初めて見る美しい牛に頬を染めるエウロペに対し、侍女は更に疑いの目を強めた。
「初めまして、エウロペさん。僕はカイン、ここにいる最高神ゼウスの使者だ」
 爽やかに挨拶をし、カインは外の世界の素晴らしさを時に己の冒険譚を交えながら伝える。
 見た事もない様な不思議な事、人達と出会える事。
 様々な物と触れ合って、視て聴いて、体感できる事。
 剣の世界に魔法の世界、鋼の世界に迷宮の世界、白の世界や黒の世界……。
 カインが楽しそうに話すたびに、エウロペの瞳に輝きを増していく。
 この海の外にはそんな凄い場所があるのか、そう聞いている様であった。
「そう、君は選ばれたんだよ。神達が住まう場所へ連れて行って貰える稀人として!」
「私が……?」
「まぁ、神様と言っても能力は凄くても中身はそんなに人間と変わらないのばかりなんだけどね?」
「なりませんよ、エウロペ様。外には危険が沢山あります。辛い事も怖い事も。それにお父様とお母様にお別れをせねばなりませんよ」
 はっと侍女を見上げたエウロペの顔が寂しさで曇る。
 興味がないわけではない、けれど大好きな父と母に別れを告げるなんて。
 それにやはり、一人行くには心細い。エウロペが侍女のスカートの裾を握る。
「なら、侍女のアンタが一緒に同行すれば問題ないでしょ?」
 そんな空気を一蹴する様にメルーナが言った。
「だって、そんなにも迫力が出るくらい、このエウロペお嬢様の事を大事にしているみたいだし……アンタが一緒にいれば、何があったって安心――エウロペ、アンタだってそうでしょ?」
「……ユーロ」
「しかしっ」
「侍女さん、すこしよろしいですか」
 尚食い下がる侍女を正純が手招いた。ちらりと、エウロペの方を見た侍女は正純に歩み寄る。
「やはり、まだ信じられませんか」
「いえ、普通ではないことは判ります。ですが、エウロペ様を連れていくなど……」
「……これは神の誘いです、それに彼女に外の世界を見せたいのです」
 両親の愛を受け、優しく美しく育った女性。危ない目に遭わない様にと外の世界を知らぬ女性。
「無理やりに、とは言いません。最大限これからのエウロペ様……それに、侍女さんの今後に配慮する
ことを誓います」
 侍女自身にも屹度、外の世界を見せてやりたいという気持ちはあったのだろう。
 葛藤する様に、侍女は眉根を寄せた。
 其処へメルーナと話をしていたエウロペがこちらに寄ってきた。
「ユーロ、私。外の世界に行ってみたいわ」
「エウロペ様……」
「貴女が一緒なら寂しくないもの」
 エウロペの意志は固い。こうなると梃でも動かないことは、幼い頃から仕えてきた自分自身がよくわかっていた。
「……承知しました、エウロペ様。何処までもお供致します」
 その言葉にゼウスが体を揺らしたがシラスに無理やり括りつけられた手綱に絡めとられた。
「あの、お父様とお母様にお別れの挨拶をしてきてもよろしいですか?」
「もちろんよ、顔見せてあげてきなさい、あとそうね。そこの牛が変な事しようとしたら――」
 ジャキリと大砲の口がゼウスに向けられた。
「――私が駆けつけて、仕置きしてやるわよ」
 にっと笑ったメルーナの顔に安堵したようにエウロペは微笑んだ。
 それは頼もしい、と侍女も釣られた様に笑う。
「それに、選ばれただけの君はそんな神様に我儘を言う権利も持っているのさ」
 偶には帰りたいって言ってもいいんだよと、悪戯心を込めカインは目線だけゼウスにやりながらカインはエウロペに教えた。彼女が悲しまなくていいように。

●旅立、エウロペ
 両親との別れを済ませたのか、大粒の涙をはらはらと零しながらエウロペが戻ってきた。
 その手には抱えきれぬほどの贈り物。両親が持たせた娘への愛情であった。
「私から乗りますね」
 侍女が軽やかにゼウスへと跨った。ゼウスから不満げな鳴き声があがるが妻によく似た視線に何も言えなくなってしまう。
「えっと、ゼウス様。よろしくお願いいたします」
 恐る恐る背に跨ったエウロペを乗せ、ゼウスはちらりと異世界の助っ人を振り返った。
 その後何を言うわけではなく、牡牛が前脚を上げる。白い水飛沫を上げて駆け出していった。
 みるみる遠ざかる故郷にエウロペはまた涙が零れそうになるが、ぐっと堪えた。
「エウロペ様、大丈夫ですか」
 自分には微笑みかけてくれる優しく強い、大好きな彼女が居るのだから。

 三人の姿が見えなくなった水平線を四人は眺めていた。
 盛大に溜息を吐き出してどっかりと砂浜に座り込む。
「神話ってヤツは、さぞ大層に聞こえるけど、実際は碌でもない話が多いのよね。だから、誰かが酷く悲しむとか、そういう"要らないとこ"まで再現する必要なんて無いと思うのよ」
 メルーナはいつもとは違う形で役立った大砲を磨いた。いずれ本当に火を噴くことにならなければと思う。
「エウロペの側に彼女がいれば、行先がどこであれ悲しませるようなことはさせないだろう。神話も一応なぞってる、気分はすっきりだぜ」
 あの不満そうな顔はなかなか見ものだったけどとシラスは笑う。
「そうとも。それに、神がこちらに来てるんだから一方通行の世界なんじゃないからね」
 屹度、彼女が帰りを望めば帰られる世界なのだ、それくらいしてもらわなきゃ困るとカインは頬を掻いた。
「日帰りの神の妃というのもなかなか愉快だと思いますが。あとは神ゼウスに気合い入れてもらわねばなりませんね? こちらを顎で使う以上、神として、星座を数多生み出した方として、その辺はお願いしたいところです」
 神楽鈴は手元には無いけれど、丁度扇子なら持っている。
 開けば儚く揺れる夢の如く、群青の夜空と蛍火が舞う。
「星の巫女として、願い奉らせていただきます――」

 昔々、砂浜に美しい娘と一人の侍女が歩いていました。
 娘はエウロペといい大層優しい子でした。
 そんな二人の前に一人の少年が現れます、少年は我が主の元へ二人を招待したいと言いました。
 侍女は反対しますが、エウロペは真剣な彼の様子を見て話を聴いてやることにしました。
 侍女は渋々着いていくことにしました。
 案内され、辿り着いた先には海に立つ白い牡牛――ゼウスと三人の使者がおりました。
 一人の使者は外の世界の素晴らしさを伝えました。
 一人の使者は一人が怖いなら二人でくればいいと言いました。
 一人の使者は侍女に無理やり攫う事だけはしないと言いました。
 外の世界に憧れをもったエウロペは侍女に共に行きたいと願いました。
 こうして両親に別れを告げ、侍女と共にゼウスの背に跨り外の世界に旅立っていきました。
 そして幸せに暮らし、時折故郷へ帰ってきたという事です。

成否

成功

状態異常

なし

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