シナリオ詳細
選者の取捨選択
オープニング
●ある少女のメモ帳
一日目。
目が覚めたら恐ろしい量のごみの山の中に居た。電波は圏外、スマホはつながらないし電話もできないけどメモ機能が生きていたからここにメモをして私が生きていたことを示しておこうと思う。
名前はカノン。覚えていてくれなくてもいいし、というか、このメモは誰かが見てくれるものだと思ってないからまぁそういうものだと思って書くことにする。
これが誘拐ならずいぶん馬鹿な誘拐犯もいたものだ。でもこれ見られたら殺されちゃうかな、あとでスマホのロックのパスワードをめちゃくちゃ長いものにしておこうかな。
やさしいひととか私のこと好きな人ならまぁ許してくれるでしょ。許して。
二日目。
ごみがあまりにも多いからとりあえず生活スペースを作ってみようと思う。
昨日ほこりまみれのベットで寝たら鼻水が止まらない。掃除くらいしっかりしてほしいものだ。私ならもうすこしやる。たぶん。
それにしてもこのごみの山は女の子のモノが多いようだ。わたしの趣味っぽいものもあれば結構『おんなのこ』って感じのもある。趣味がわからなかったのかな。シンプル目が好きだよ。
三日目。
この手袋は見覚えがある。
なくしたと思ってたんだけどな。
この部屋。だんだん謎が解けてきたかもしれない。
私が今まで捨ててきたものなんじゃないか。だって、最近買ったものはないけど、小さいときに大切にしていたものがどんどん出てきたから。
百日目。
ごめんなさい。
私は捨てていたのか。母さんや父さんの愛まで。
暖かい掌の記憶。おおきなてのひら。私よりも大きな。それ。
覚えていた筈なのに捨てていた。どうしてなのか。
あんなにもだいすきだった人の記憶を。
母さん。父さん。今から帰る。なにをしたって。帰って見せるよ。
それから、今一番に伝えたい。
ありがとう。
●ほんとに捨ててよかったの。
「ねぇ。捨てて後悔しているものって、ない?」
銀の髪を揺らし微笑んだのはカストル。その後ろには壊れた本の山。茶浸し、破けて、文字もない。そんな本が積まれていた。
そのひとつを手に取ってこちらへと投げたカストル。その表情はどこかあざけるようで。
「物の一つも大切にできないひとが、何を大切にできると思う?
ものを拾うこともできないくせに、何を拾うっていうんだろうね」
「だからさ、」
「拾っておいで。大切なもの」
捨ててしまった大切なもの。
なにか、わすれてしまったような、気がする。
さぁ、進もう。捨ててしまった大切なものをもういちど抱きしめるために。
- 選者の取捨選択完了
- NM名染
- 種別ライブノベル
- 難易度-
- 冒険終了日時2020年12月29日 22時25分
- 参加人数4/4人
- 相談4日
- 参加費100RC
参加者 : 4 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(4人)
リプレイ
●果て
『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)は、辺りの焦げた匂いに眉をひそめながら目を覚ます。
(なんだここ…灰や鉄屑が多くないか…? それに焦げ臭い…)
自身が寝ていたのはこんなにも汚く汚れたゴミ溜まりではない。身体を起こせば辺りはちらほら燃えてこそいるものの火災と呼ぶほどではなく、せいぜいボヤがいいところだ。に焦げ臭い…)
自身が寝ていたのはこんなにも汚く汚れたゴミ溜まりではない。身体を起こせば辺りはちらほら燃えてこそいるものの火災と呼ぶほどではなく、せいぜいボヤがいいところだ。
「ああ、なんなんだ…あ、壊れたスコップみっけ」
ゴミ溜りの中。スコップなどいくらでもあるだろう。けれどサイズはある一つのスコップに目が留まる。
(なんか見たことあるなこれ……思い出した、前世界でサバイバルしてたときに使ってたやつだ…あの時は修理のスキルはなかったが…いまなら…)
失ったものはとりもどせない、はずだった。
けれど今。成長した今。
変わらなかった結末を変えることだって、できる。
(よし、直せた…これを使えば探索が捗るな…)
修理したスコップ。昔使っていたからか手に馴染む。
辺りを飛んでいけば、懐かしさを思い出す。
(スコップのお陰で色々と見えてきたな…どれもこれも捨ててきたものか…灰が多いのは心当たりないが鉄屑は失敗作といったところか)
降り積もっていく灰。それらに見覚えこそないものの、うまった鉄はかつて作った失敗作の数々であることを思い出す。
「あとな何が…うん? これは…長剣と長杖と金の指輪………」
ああ、間違いない。
確信する。三つともサイズの『親』の持ち物であると。
(これも捨てたになるのか…?一時的に体を乗っ取ってたしそういう判定されてもおかしくないが…)
しばらく向き合って出した結論。否、結論と呼べるものではない。
「…壊れてないが、どれも俺が使えるものじゃないな…」
サイズを生む分岐点とも呼べるであろう指輪は、彼自身がその身を狂わせるほどの恋へ堕ちることへの恐れを表すかのようであった。
血と悲恋でまみれたそれの讃える光は悲しげだ。
「……混沌に来たばかりの俺ならばするかと断言してたが…………どうすればいいんだろうな」
●しるべ
後悔はない。ないけれど。
『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)は苦笑いを浮かべた。
ガラクタの山に埋もれた品々。どことなく見覚えがあるような気がして、しゃがんで手に取ってみる。
(なんというか、ここにあるものは再現性東京の物が多い……
いや、これは……私が居た世界……日本のものかな。
この本も日本語だし、中身も呼んだ覚えがあるな)
かつて病床に伏していた際に読んだいくつかの本だ。ああ、これはしおりだ。
そうやって手に取っては思い出し。
手にとっては思い出し。
それを繰り返していく内に、ゼフィラはある考えへと辿り着く。
――ひょっとして、私は後悔しているのかな。
この世界を自分の目で見て知るためにつけかえた四肢。
長年の闘病で疲弊していたそれらは、動かすことすら叶わなかったから。
だから、捨ててしまったのだ。そうだ、ああ。思い出すこともやめていた。
もう戻れないのだから。そうやって足を進めてきた今までを。
もう会えないのだから。そうやって置いてきた、とおいとおい家族のことをすら、思い出すことを控えていた自分自身のことを。
そうして、様々なものを掘り起こしていく内に、あるものへと辿り着く。
(ああ、この指輪……)
どうしてかはわからないが。
自身の両腕をみつける。その手には、無くしたはずの、失ったはずの指輪がはまっている。
(これは確かに私のものだ。ははっ、この義手では嵌められないな)
柔らかいひとの肌。鉄のこの指にははまりそうにない。
(……もう、彼の手を握った感触も、あの子を撫でた感触も、今となっては確認できない。
私の記憶にある感触がすべて、か……)
両の手を握る。
鉄の。冷たく、体温を持たぬその手では、もう。
失ったものばかり数えていても仕方ないけれど。
せめて、今ばかりは足を止めてうずくまったっていい。
帰ったら、また前を向いて歩みだすから。
●さよなら
『雪中花蝶』斉賀・京司(p3p004491)もゴミだらけのこの世界をさまよう一人だ。
歩き続ける内に、京司はあるものをみつける。
(ボロボロの参考書? なんでこんな…………あ)
名前を書いていた場所を思い出したわけではないけれど。この端の折れかた。ああ、間違いない。
(そうか、そうだ。これは彼女と一緒に買ったやつ。
中高一貫が良いから、一緒に勉強したのだっけ。
でも。僕のせいでずいぶんと苦しめてしまったな)
苦笑を浮かべる。
ここは数学の公式を書いたところだ。
ここは読み仮名を振って。
ああ、ここの分子構文なんて試験にはでなかったじゃないか。
(もう言い訳にしかならないけれど、甘えてしまったのだよね。
許嫁と言っても親に決められたことだし、元から幼馴染みだった。
それに彼女がしっかり者だったから)
思い出す。過去の過ちを。
"うっかり"、口を滑らせてしまった、その結果を。
――僕たち将来、結婚しても幼馴染みの友人として上手くやって行けそうだね、だなんて。
そんな一言で君の気持ちを知るなんて。君を傷つけるなんて。
微塵も気付かないで、微塵も解ってなかったんだ。
(先に誕生日を迎えるのも向こうで、だらしない僕を叱りながら面倒を見てくれた。
そんな、優しくて頼りになる、姉貴分みたいだった彼女)
思い出す。懐かしい記憶のつまった参考書をめくりながら。
(もう彼女が僕に笑いかけてくれることはないかもしれないけれど。
どんな形でも良いから、幸せになってたら良いな)
参考書へ額を押し付けて、京司は囁くように祈った。
混沌にはいない若さんへ。いつも君が僕に対して想ってたことに気付けなくてごめんなさい。
願わくは、若さんがもう僕みたいなクズに捕まることなく自由に楽しく生きていますように。
「元の世界に帰ったら、もう一度謝ろうかな。もう僕はフラれてるし追い縋るつもりもないけれど」
ああ、でも。
きっと、それがいい。そんな気がするんだ。
●はじまりとおわり
『小さな決意』マギー・クレスト(p3p008373)は慌てて飛び起きる。
「寝ぼけていっぱい散らかしてしまったのでしょうか!?」
(乳兄弟におひいさんはまたこんな散らかしたのか! と怒られてしまいます。
これ以上怒られないように、お片付け頑張りましょう!)
あわあわあわと片づけをはじめ、降り積もる灰を拭いランプに明かりを灯し、埃被ったソファの埃をはらった辺りで、マギー気付く。
「…?」
この妙に落ち着くすっぽり具合、覚えがあるような気が、するのだが。
しかしマギーは14歳、まだまだ怒られるのが怖いお年頃。次に考えたのは、
(あ、どんどん片付けないと怒られちゃう!)
怒られるのはいやだから、とてきぱきからだを動かしているうちに、その懐かしさもどこへやら。
「ふぅ…だいぶ、綺麗になりました!」
もう一度ソファに座る。その位置からきらきらと光るなにかが目に映る。
思わずちかよって手を伸ばしてみる。
「これは……ボクが…いえ、私(わたくし)が婚約した際に、あの方から頂いた?」
大粒のエメラルドというわけではない。シンプルかつ愛らしいデザインのネックレスだ。
「と、いうことは。先程の不用品達は私がお屋敷においてきてしまった子達…?」
婚約破棄されたのが辛くて、悲しくて。大切なネックレスだったのに屋敷の部屋にしまい込んだまま忘れてきてしまったのだろう。
大切にすくいあげ撫でてやる。きらり、エメラルドは光を受けて光った。
(あの時は辛くてあの方のことも苦手になってしまったけれど…)
けれど、今の自分自身はちがう。
「外に出て色々見聞きした私…いえ、ボクだからこそ、見えたものがあります」
(だから…一緒に、帰りましょうね! あの方との想い出とともに)
埃をかぶっていたって大丈夫。
もういちど、大切な思い出で満たしていけばいいのだから。
●
からっぽだとおもっていた。
けれど、このせかいにはたいせつなおもいでがあった。
なくしたものをみつけなくったっていい。
でも、たまにはおもいだして。
たいせつなおもいでが、あるはずだから。
成否
成功
状態異常
なし
NMコメント
どうも、染です。
忘れてしまったもの。大切だったもの。
どうして、捨ててしまったの。
それではシナリオの説明に入ります。
●成功条件(※ライブノベルは必ず成功します)
ごみの山から大切な『なにか』を見つけ出す
どこかにあるようです。
探し出してください。
【ただ、それが何かは最初は解りません】。
●世界観
恐ろしいごみの山。
目が覚めたら其処に居ます。その世界をPCさまは不気味と感じるでしょう。
よく観察してみればそれが自分の捨ててきたものだとわかるでしょう。
それが縁なのか物なのか、ひとなのか。
それは参加者たるPCさまそれぞれ違うでしょう。
よって個別の描写となります。
●特殊ルール
この世界では探索系スキル、ひらめき系スキル、またこれらに該当するギフトは一切無効となります。
己の足で探してください。
誰も居ない世界の中で何を見つけ出すのか。そんなテーマです。
●その他
以下の書き方にしていただけるとよりご希望のリプレイに近付けるかと思います。
一行目:大切な探し物
二行目以降:探し物の詳細
(いつ買った、もらったものなのか/なんでそれを持っていたのか/どうして捨ててしまったのか/今は探し物をどう思うのか)
●サンプルプレイング
ぬいぐるみ
おじいちゃんからもらったもの。古びていてなくしてしまった、ほんとうは今も大切にしたい。
こんなぬいぐるみの山、かわいいけどちょっと不気味かも。
でもせっかくなら歩いてみよう。
あれ、これうちにあるのに似てるなあ。
……これ、おじいちゃんからもらったものだ。
どうしてこんなところに?
でも、そっか、みつかって、よかったぁ……。
それでは、ご参加お待ちしております。
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