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シナリオ詳細

海賊旗を掲げよ、いっそ半年ぶりに

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●青い空が嫌いだ。青い海も大嫌いだ。
 照りつけるような太陽と、ぎいこぎいこと軋むように鳴る船の底。
 その二つに挟まれて、青肌の男は苦々しく木の枝をくわえていた。
 特になにかの味がするわけでもないが、煙草をきらして久しい彼には丁度良いアイテムに思える。
「お頭ァ、今晩食う魚が捕れましたぜ! 一週間ぶりのまともなメシですね!」
 ヘヘヘと笑って歯の抜けた男が珍妙かつサイケデリックな色合いの魚をぶら下げて駆け寄ってくる。
 青肌の男は立ち上がり、そして歯抜けの男をパンチ一発でノックダウンすると歩き出した。
 床をデッキブラシで磨いていた男や、縄をたぐりながら作業をしていた男が振り返るなか、青肌の男は……ゴロワーズ船長は階段を上って操舵台へと立った。
 魔法の舵輪が自動で船を走らせ続けるべくからからと小刻みに回り、振り向けば大きな髑髏マークの旗が風をうけておおきく張っている。
 アルタディス海賊団の旗艦タバカレラ。
 それが、船の名である。
「おまえら……」
 ゴロワーズはくわえていた棒きれをつまみ、海へと放り投げる。
 そしてデッキでこちらを見上げる男達……つまりは海賊たちに、思い切り怒鳴りつけた。
「俺たちは海賊だろうが! いつまで遊覧船気分だ! おいお前、前に船を襲ったのはいつだ!?」
 びしりと指をさされ、床磨きをしていたスキンヘッドに片義眼の男がぎょろりとしながら顔を上げる。
「へい! 六ヶ月前ですぜ! 俺は記憶力がいいんでさぁ!」
「馬鹿野郎!」
 はいていた靴をぬいで男へ投げつけると、ぎゃあといってぶっ倒れた。
「毎日毎日船の上! メシといやあ生魚! 遠くを船が通っても見て見ぬ振り! 俺らはこれでも海賊かぁ!? えぇ!?」
「けどさー、おかしらー」
 でっぷりとした身体に髭をたくわえた男が腹をさすりながら立ち上がった。
「仲間は船ごとどっかいっちまったし、海賊連合も絶望踏破のドサクサで潰れちまったじゃーないかあ」
「んだんだ。俺ら海賊つっても、私掠船許可書もねえし海軍は今ノリノリだし、俺らが動いたらすぐつかまっちまうべよ」
「ばっかやろうこの野郎!」
 もう一方の靴も脱いで一人に投げつけると、ゴロワーズはずかずかと階段を下りてからもう一人を殴り倒した。
「じゃあ今から漁師にでもなるか!? 俺らは今まで漁船だの商船だのを襲って生きてきた海賊だろうが! 今更カタギになれるかよ! なろうとしたってどこも受け入れやしねえさ!」
 だろう!? と叫ぶと、殴り倒された男達がすっくと立ち上がって、苦々しい顔をあわせはじめる。
 そして、一様にゴロワーズにその苦い顔を向けた。
「じゃあ、どうするんです」
「そりゃおめえ……」
 ゴロワーズは言いかけたまま止まり、まわりの顔を一通り見回すこと三秒。
「次にこのあたりを通った船を、襲う!」

 まじすか! やったぜ! 海賊稼業復活だ!
 そう叫ぶ男達の光景が、ファミリアーで同期した海鳥から伝わってくる。
「……らしいんですが」
 一部始終をぜんぶ聞いていた、もとい聞いちゃった海洋王国の商船女性が『どうします?』という顔であなたへ振り返った。
 そう。
 これから通る船というのは、あなたの護衛する船だ。

GMコメント

■オーダー
・オーダー内容:船の護衛
・成功条件:依頼主となる船の乗組員全員が生存していること。
・オプションA:アルタディス海賊団を全員抹殺する
・オプションB:アルタディス海賊団を全員生存させる
・オプションC:ゴロワーズ船長と会話する
・オプションD:?????????

■シチュエーション
 海洋王国にて商船の護衛をつとめていたあなたは、偵察によって海賊と遭遇することがわかりました。
 けどなんだか、海賊達の様子がおかしいようで……。

・海賊達の背景(要約)
 海洋王国が絶望の青を踏破するその過程で壊滅した海賊連合。
 連合に所属していたアルタディス海賊団は海賊稼業が続けられなくなり、その過程で多くの離脱者をうんだ。
 結果船一隻と数人の部下が残るのみとなった海賊団。
 半年にわたって海のお魚食うことで生き延びていたが流石にこのままじゃダメだと思って商船を襲うことに。

■エネミーデータ
・ゴロワーズ
 アルタディス海賊団の船長。片手を失っており絡繰剣に改造されている。
 戦闘の腕がたち、その腕で部下を率いてきた。けど海賊の才能はあんまりないらしい。

・アルタディス海賊団の団員達
 別名ゆかいな仲間達。
 地味に戦闘スキルが豊富で戦いにはそこそこ慣れている。
 けどやっぱり海賊には向いてないのかもしれない。だって魚とるのすごいうまいし。

■■■船の使用について■■■
・メンバーの誰かがアイテム『小型船』を持っている場合これを使用することで乗員の戦闘力に相応のプラス補正がかかります。
・小型船の操縦と戦闘は若干のペナルティつきで同時に行なえるものとし、『操船技術』をもっている場合はその際のペナルティを無効化します。
・小型船の操縦は必ずアイテムを装備しているPCが行なってください。
・操縦者が戦闘不能になった場合、最低限の操縦は継続できるが戦闘は継続できないものとして判定します。(交代は不要です)
・この戦闘に投入できる小型船の数は3隻までとします。
・小型船は甲板での戦闘が可能ですが、戦闘可能範囲が狭いため船上での移動やレンジ選択には注意してください。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

■■■アドリブ度■■■
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用ください。

  • 海賊旗を掲げよ、いっそ半年ぶりに完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年12月27日 22時00分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚
エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)
波濤の盾
キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)
社長!
アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)
灰雪に舞う翼
寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
藤野 蛍(p3p003861)
比翼連理・護
桜咲 珠緒(p3p004426)
比翼連理・攻
ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)
人間賛歌

リプレイ

●喪失はそれを認めた時はじめてやってくる
 帆を張った船に立つ、『大号令の体現者』秋宮・史之(p3p002233)。
 吹き抜ける風を身体に受けて、広い広い海の向こうを眺めた。
「アルタディス海賊団、ね……不憫なやつらだなあ」
 細めた目が見つめたのは、過去であり、未来であり、そして今だった。
 後ろ姿をみていた『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)には彼が自分と海賊団を重ねたように、見えた。
 かつてすべてを失って身一つで世界に放り出され、女王との出会いで人生観を変え、まっすぐに憧れを追い続け、最大の障害を乗り越えることに命を賭け、賭けたつもりが生き残り、一度は目標を失ったかに見えた彼が、しかし今も生きている。
 人生ってもしかしたら、そんな喪失と獲得のくりかえしなのかもしれない。
 そういう意味で言えば、アルタディス海賊団は『失い損ねた』のだろうか。
「どう考えても、かれら……海賊よりも、漁師のほうが、向いてますの。
 きっと、立派な海の男になろうと、思ってらっしゃるのでしょうけれど……漁師は漁師で、巨大ザメとかと戦う、海の男の、仕事ですから……」
 脳裏に浮かんだのは自称猟師の海軍将校だったが、この過酷な海で自由に生きる猟師達は自由の対価として命の危機を支払っている。
「そうだな……このまま海賊続けても今回のようになるのがおちだ。
 俺達は命を奪うつもりはないが、他の奴等がそうするとは限らん。
 まぁ、転向するいい機会ではあるんじゃないか?」
 『波濤の盾』エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)はそう言って、船のレバーを操作。加速を始めた船は護衛対象の商船を離れ、事前偵察で発見したアルタディス海賊団の船へと向かっていく。

 双眼鏡ごしに見えていた船が、徐々に肉眼で確かめられる程度の距離へと近づいていく。
 『ザ・ゴブリン』キドー(p3p000244)は船首の先端にあぐらをかいて、そこへ顎肘をついてぐらぐらと揺れていた。
「この御時世でも海賊続けてる根性は大したもんだ……と言いたかったが、期待外れだなありゃ。正直ガッカリだ。
 俺ぁこう見えて海賊にはうるさいんだよ。海賊ならもっと強欲であって欲しいモンだね。
 何もかもひっくり返って姿形すら変わっても、己を貫き通して最期の瞬間までただひたすらに強欲であり続けるような……」
 この海で世界が得たものは大きい。
 その大きさに比べれば、もしかしたら失ったものは小さかったのかも知れない。
 多くの人が、栄えある海兵や海洋貴族たちの犠牲をちりぢりに覚えている。
 その中に、ある魔種の……いや、ある海賊の思い出があった。
 あれは支払うにふさわしい対価だったんだろうか。
 それとも、相応しくするために今があるんだろうか。
 どちらかといえばそんな借金めいたスタンスのほうが『俺たち』にはお似合いで、キドーはくつくつと笑った。
「そこが堪らなくいやだったんだが、な」

 ネオフロンティア海洋王国が静寂の青を手に入れて以降、多くの人員や装備を失ったのと引き換えに広大すぎる領海と未知の資源領域を獲得した。
 これによって海賊をやめて『青需要』にのった者も多いと聞く。
 最強の非公認海賊であるところの『奴』が海のどこかへ消えたことで海賊連合は散り散りとなり、中小の海賊達は寄る辺を失ったという面も少なからずあるのだろう。
「なんか憎めないわよね、あの海賊達。
 まともな道を提供できれば、案外ノってきそうな……。
 海洋王国で名声を得てる人なら、その辺融通が利かないかしら?」
 『桜花絢爛』藤野 蛍(p3p003861)は船の甲板で準備体操をしながらそんなことをつぶやいた。
 全く同じ体操をしていた『桜花爛漫』桜咲 珠緒(p3p004426)が『体を横に曲げる運動』を終え、蛍と背中合わせに腕を組んで身体をそらしあう柔軟体操をはじめた。
「聞けば、まともに食事もできていないといいます。
 今回遭遇できなければ、飢えで亡くなっていたかもしれません。
 向かず食えずな稼業など、早々に見切りを付けさせるべきでしょう」
 ばさばさと翼をはばたかせ、急速に相手の船へとびうつる準備をする『空歌う翼』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)。
 足場のない海へ飛び出すのはいかに飛行能力があるとはいえリスクのあることだ。墜落によるダメージがなさそうなことを除けば、空中での不利(ペナルティ)も逃れづらい。
「海賊っていうからには悪いことをしてはいたんだろうけど、憎めない感じでもあるねー……。
 海賊が天職というよりもう後に引けない気持ちでやってるっぽいし、ここは別の道があることを理解して手を引いてくれればいいんだけど」
 なにかにしがみついている人間を引き剥がすのは、それだけ力がいるものだ。
 なにせ『自分が自分である証明』を失うようなものだからだ。
 もし差し出されたハシゴが突然はずされたり、脚をかけたとたん崩れたり、ハシゴと言う名の罠だったりするとも限らない。それだけ『新しいものを信じる』というのは難しいのだろう。
 『銀河の旅人』ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)には、その気持ちが痛いほど分かった。
 宇宙船寓話号で星から星へ渡り歩きギターとリボルバー光線銃とその日飲む酒代があればなんとかなるという人生が、たった一瞬で消えてなくなったのだ。
 それでも昔の暮らし方をなぞってしまうのは、それが『よすが』だからなのかもしれない。
「海賊でなくても、空でも海でも船乗りが船を捨てられんってのは自然の成り行きだ。
 おれだって混沌に飛ばされてなきゃ、気ままな宇宙船乗り生活を捨てはしなかった……」
 あの日流れた涙の味は、どうにも酒では消えてくれない。
 きっとアルタディス海賊団も、忘れられずにいるのだろう。
 失ったことを、彼らはまだ認められないのだ。

●失うことを先延ばしにはできる。同時に未来も先に送られるだけで。
 アルタディス海賊団、旗艦タバカレラ。
 船への距離が近づくことで、小型船へぎゅうぎゅうに乗り込んでいたアクセルたちは『いくよ!』と声を発して飛び上がった。
 交戦距離に入るおよそ直前、全力の加速飛行でもってタバカレラへと突っ込んでいく。
「おかしらぁ!?」
「小型なうえに護衛つきかよばか野郎この野郎! こうなりゃ仕方ねえぶっ飛ばせ!」
「へい!」
 スキンヘット片目義眼の男が立ち上がり、フリントロック式の銃を撃ちまくる。
 アクセルは着弾の寸前でバレルロール機動をとると射撃を回避し、脚を前方に突き出すような姿勢で片目義眼の男を蹴倒す形で着地。
 その後ろを、珠緒の赤い球体障壁によって守られた蛍が魔法のスカーフによる飛行能力を使って追従。
 でっぷりとした髭男がカトラスを抜いた二刀流スタイルで斬りかかる。
「蛍さん!」
 前面に出て蛍を引っ張っていた珠緒は障壁を正面に集中させるが、それが無理矢理破壊されて珠緒の身体へと食い込む。
 しかしとまることなく脚と腕でがしりと男の腕にしがみつくと、ふわりと彼女の肩を飛び越えた蛍がホールドしていた二冊の教科書を解放。
 舞い散るページ群が手甲と剣へ変形し、髭男の顔面へと剣がたたき込まれる。
 前方宙返りからの大上段斬りが、髭男のもつもう一本のカトラスによってとめられた。
「珠緒さん、後ろに!」
 攻防のスタイルをチェンジする二人。珠緒は肩のダメージを自ら治癒すると、正方形のフォースフィールドを展開した蛍の後ろから砲撃姿勢をとるべく桜色の剣を生成させた。
「うおおっ、こいつらつえーぞお!?」
 髭男は両腕を大きく振り上げ、猛烈なカトラスラッシュを繰り出してくる。
 それをフォースフィールドによって無理矢理防御し受け流していく蛍。
 珠緒は剣を巨大な桜色の波に変えて豪快な回転斬り――を繰り出したと同時にアクセルが船のデッキを翼を広げた状態で高速旋回。
 髭男や片目義眼の男たちをまとめてなぎ倒していく。

 その一方。
「おじゃましますの~」
 船の底からにょきっと頭を出したノリア。
 きょろきょろして誰もいないですねとつぶやくと、両手をついてよじよじと身体を板から引っこ抜いた。
 ひっこぬいたというか、船下部の海中より物質をすり抜けて這い上がってきただけだが。
 びしょ濡れになった髪をまずは両手でぎゅって絞るノリア。
 ぷるぷる首を振って目を瞑るノリア。
 その後ろでむくーって身体を起こす寝袋。
 顔の部分が開いて、歯抜けの男がノリアの後ろ姿をじーっと見ていた。
 ノリアはシャツの裾をぎゅーって絞って水を落としてあとはぱたぱたはたいて適当に水分を落と……す過程で後ろの寝袋インザ歯抜け男と目が合った。
「あ、どうも」
「どうもですの」
 ぺこりと頭を下げ合っ――たかと思うと二人ともぴょんと飛び退き身構えた。
 身構えたっていうかノリアは神に祈る時みたいに両手を組み合わせて顔の高さにもっていったし、歯抜け男は寝袋に入ったままなんかぴょんぴょんしていた。
「てっててててめぇ、どっから入ってきた!」
「下からですの……!」
「そうか!」
「そうですの……!」
「ご親切にどうも!」
「こちらこそですの……!」
 ……。
 沈黙。
 からの。
「うおりゃー!」
 水鉄砲をばしばし発射しまくるノリアと寝袋にはいったまま器用にそれを回避しながらタックルを仕掛けてくる歯抜け男による妙に白熱した攻防が始まった。

 先行部隊による攻撃が始まってから三秒ほど。
 船を直接ぶつけた小型船より板がかけられ、細い板を豪快に駆け抜けたキドーが一番乗りでタバカレラへと乗り込んでいった。
 頭がマンタになっている男が厳めしい顔をして大砲を撃ちまくる。
「ひゃっひゃっひゃ! 襲われ慣れてねえなあ! こういうときゃ、板かけられた時点で射撃に意味はねえんだよ!」
 キドーは小さな爆弾を放り込むと、爆発に乗じて飛びかかった。肩車のような姿勢からククリナイフがマンタ男の首にかかるが――。
「うおお負けるかぁ!」
 強引にブリッジしたことでキドーを甲板に叩きつける。
 キドーをパージしたところで甲板を転がり、再び立ち上がった……瞬間、船に乗り込んできたエイヴァンによる姿勢の低いタックルが炸裂した。
 まるで車に撥ねられるような勢いで回転し頭から落ちるマンタ男。
「こ、このやろ……!」
 一方で体勢を立て直したキドーは新しい爆弾に火をつけながらエイヴァンに叫んだ。
「おい熊! 今だリダホれ!」
「馬鹿いうな、仲間に当たる。今は砲撃だ」
 斧砲『白狂濤』をキャノンモードに構えたエイヴァンがマンタ男へと撃ちまくり、キドーもそれに伴って召喚した犬邪霊をけしかけた。
「おーおー、混戦してんなあ」
 ヤツェクは船の手すりに飛び乗ると、腰から抜いたリボルバー光線銃でもってウェスタンハットのつばをあげた。
「そんじゃあ撃ちまくるから、アンタら避けろよ」
 くるりと曲芸めいて回転させた拳銃を天に掲げ、連続で撃ちまくる。
 空に打ち上がったエネルギー弾は鋭い放物線を描いて甲板へと打ち込まれ、そして空中で分解し大量のマイクロエネルギー弾になって降り注いだ。
「うおあああああああ!?」
「ヤツェーーーーーーーク!!」
「ケチケチすんな。こういうもんは最後に立ってたほうが勝ちなんだよ」
 そう言いながら今度は水平持ちした拳銃を撃ちまくる。
 弾は鋭く船長のゴロワーズへ迫ったが、しかしゴロワーズは握りこぶしでそれを打ち落とした。
「おっ?」
「このやろ全員兵隊じゃねえか。海賊かおめえらこのやろう!」
 ゴロワーズは腕をがちゃがちゃと変形させ剣にすると、ヤツェクへと突撃――する途中で史之が割り込み抜刀した。
 刀と絡繰剣がぶつかり、火花を散らす。
「いい腕だな、ゴロワーズ。だが女王陛下の海でこれ以上血が流れるのを俺は好まない。ここは海の男らしく一騎打ちで白黒つけよう。参ったと言うまで勝負だ!」
「海賊にそんなルールはねえ!」
 などと言いつつ、ゴロワーズはロープを切った反動でもうもう一本のロープにつかまって帆をはる柱の上へと素早く移動していった。
 史之も飛行能力でもって同じ柱の上へと飛び乗ると、刀をしっかりと両手で握り込む。
 半身に構えフェンシングの動きで史之の顔や胸、脚を突こうと絡繰剣を打ち込んでくるゴロワーズ。
 対する史之は刀を水流のように滑からに動かし相手の突きを払い続けていく。
 腕は互角――かにみえたが、一瞬。
「そこだっ!」
 ゴロワーズの絡繰剣が急速に伸び、史之の心臓を狙った。
 不意打ちの急所攻撃――が、しかし。史之の刀の鍔にそれはとめられた。
「――!?」
 目を見開くゴロワーズ。
 間合いの内側へ姿勢を低くして滑り込んだ史之は――。

●やらねばならない時と同じだけ、退かねばならない時がある。
 折れた剣が回転し、甲板へと突き刺さる。
 目を見開いたまま静止するゴロワーズと、それを見上げてあんぐりと口を開ける船員達。
「今のは禊だ。ゴロワーズ。おまえがこれまで重ねてきた悪行は断ち切った。
 それにしても見事な腕前だよ、海賊のまま朽ち果てさせるのは惜しい。どうだろう、皆の話を聞いていかないか」
 そう言って刀を収めた史之を前に戦いを続けられるゴロワーズたちではなかった。

 念のためというべきか。部下達をぐいぐい縛っておくアクセルと珠緒。
「絶望の青はもう消えて、静寂の青になったんですもの。
 この海に生きてきた人達にも、今までの絶望の代わりに、穏やかな明日がもたらされてもいいわよね」
「ですね。ところで……その方は?」
 蛍がぱしぱしと手を払うと、珠緒が寝袋に詰まったまま顔だけ出してる歯抜けの男を見下ろした。
 とりあえずって形で寝袋が縄で縛られているが、あんまり意味がないように見える。
「さあ? 戦闘が終わったあたりでノリアが船室から引っ張ってきたけど?」
 首をかしげるアクセル。
 その一方で、ノリアは縛った部下達と降参したゴロワーズの前にふわふわ立っていた。
「わたしが、みなさんに伝えられることは、一つだけですの……」
 海を見つめることでためを作ってから、集中線つきで振り返る。
「船を襲うだけが、海賊では、ありませんの……!」
「「なんだって!?」」
 一斉に身を乗り出すゴロワーズたち。
 乗り出すだけ乗り出してから、全員ぴたりと止まった。
「まってそれどういうこと?」
「パンはパンでも食べられないパン的なやつか?」
「海の、怪物たちと、戦って、かれらの守る、お宝をせしめれば、十分に、海賊では、ないのでしょうか?」
 そうなの? という顔で互いに見合わせるアルタディス海賊団。
「兵隊になる道もあるぞ。海賊の自由はないが何でもかんでも雁字搦めってわけでもない。戦いの腕も釣りの技能も活かせるし、悪くはないとは思うぞ」
 選択肢のひとつを示してみるエイヴァン。
 キドーもそれに続く形で船員たちのまえにかがみ込んだ。
「どうするよ? 特に下っ端ども。最期まで船長に付いていくってんならそれは結構なことだがよ」

 こうしてアルタディス海賊団は青き海から消えた。
 数日後、酒場ではギターの弾き語りをするヤツェクの姿があった。
 失い損ねた海賊団の物語と、再生を目指してあてなきチャレンジを始めた彼らの未来を語った歌である。
 こうしてじわじわと広がった評判はアルタディス海賊団にとって第二の人生へ繋ぐ架け橋となることだろう。
「なに、ちょっとした冬のプレゼントだ」
 ギターの先端でウェスタンハットのつばを上げると、ヤツェクはエールの瓶をラッパ飲みした。

成否

成功

MVP

ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)
人間賛歌

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete

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