PandoraPartyProject

シナリオ詳細

究極の一杯を求めて

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「……幻想の料理も美味い、美味いよ! けどなあ……」
 酔客の一人が酒を片手に呟く。
 酒場『黒ブータ亭』は、豚肉料理が美味くてお手頃と近所で一寸評判だ。
 ギルド『ローレット』の程近くに店を構えているため、依頼報告の帰りにちょっと寄り道なんて贔屓にしているイレギュラーズの常連客も結構いる。
 彼らも、そんな仕事帰りのイレギュラーズだった。
「たまにどうしても、故郷のラーメンが喰いたくてたまらなくなるんだ……」
 トホホ、と溜息。
「ああ、ラーメン。それも濃厚な豚骨ラーメンが喰いたいなあ……」
「んー。そういや飲んでるとどうしても、ラーメンが恋しくなるってことはあるな」
「判る。シメのラーメン、マジで最高」
 ラーメン談義に花が咲く。
「私は旅人じゃないし、そっちの世界のラーメンなんて当然食べたことないけど、そんなに違うもんなの?」
「一言で言うと、豚の旨味全てが口の中で爆発するスープ、かなあ」
 勿論、幻想にもラーメンはある。豚骨ラーメンだってあるし、なおかつ中々に美味い。彼の言は馴れ親しんだ思い出の味への望郷、というだけのものかもしれない。
「ふーん、私は幻想のラーメンも充分美味いと思うけどね」
『否! 断じて否!』と、酔いも手伝って男たちの熱いトークは止まらない。
「むしろ俺は醤油が」
 名物、黒豚燻製スペアリブにかぶりつきながら。ボリュームたっぷりで別名『骨豚』とも呼ばれる人気の一品だ。
「いやいや、味噌だろう!」」
 こちらも自慢の燻製豚バラ串を齧りながら。程好い脂が酒のツマミに絶妙で、追加注文が止まらない。
「あー、うちでもラーメン出さないの? ってお客さんは結構いるんだよねえ。でも皆さん言ってることや好みがてんでバラバラで……」
 聞くともなしに聞いていた酒場の主人が口をはさむ。
「何分、イレギュラーズの皆さんに下手なモノ出すわけにもいかないし。ねえ……?」
 一旦口を閉じ、声を潜める。
「ただ、一つだけ思い当たることはあるんですよ。けどね、中々難しくてねえ。いやね、ゴールデンブータっていう黄金に輝く巨大豚がいやしてね。幻の豚とも言われてるんですが、聞くところによると究極かつ極上の味らしいんですわ。まあ、あっしも食べたことないんですがね……。これの骨と肉でとったスープは、まさに究極の一杯っていう話ですよ。まあ、材料さえあればなんとかなるんですがねえ……」


「依頼なのです。うちの酔っ払いさん達にも困ったものなのです」
 『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)が開口一番に告げる。
 酔った勢いそのままに『ローレット』に戻るやいなら、ゴールデンブータの入手を依頼したのだ。
「自分たちで行けばいいとも思うのですが、それでも依頼は依頼なのです」
 ゴールデンブータは幻想の辺境、人里離れたキンカ山周辺に生息することが『ローレット』の調査により判明した。
 キンカ山が辺鄙すぎ、なおかつ対立する貴族の領土線上という一寸厄介な場所を跨いでいる為、立ち入る者なく狩猟自体行われず当然流通することも無く、それ故に幻の豚と呼ばれているのだ。
「ちょっと大きな豚さんって言うだけで、それほど強いわけではないらしいのです」
 簡単に言ってくれるが、10mを超えるとなるともうそれだけで十分な脅威と成り得る。油断は禁物だ。

「それでは行ってらっしゃいなのです! ボクも究極の一杯が食べたいのです!」

GMコメント

はじめまして、茜空秋人と申します。
以下、シナリオの補足情報になります。

●情報確度
 Aです。想定外の事態は起きません。

●依頼達成条件
・ゴールデンブータを狩猟後速やかに解体しラーメンの材料として持ち帰ること。
 とはいえ巨大な豚さんです。全部持ち帰るのが不可能な場合、忘れずに持ち帰るべき部位の取捨選択は必要と思われます。
・依頼が成功すれば、究極の一杯のご相伴に預かれます。

●リアクションスタート
・キンカ山到着からリアクションスタートの予定ですが、事前準備等の描写もあり得ます。

●キンカ山
・距離にして最低でも1週間以上はかかります。材料の運搬法、保存法等も考えたほうがいいでしょう。
・森林生い茂っている普通の山です。足場が悪く戦闘に不適なエリアもあるかもしれません。

●ゴールデンブータについて
・キンカ山と周辺の山々に複数生息。群れずに単独行動を好む。
・10mを超す全長と黄金色に輝く体躯のため、容易に視認できる。

●戦闘について
・巨躯を活かした突進攻撃、圧し掛かり押し潰しを主体として攻撃してきます(巨大なイノシシ――ただし牙はない――を想像して貰えればよいかと思います)。
・イレギュラーズはマーク、ブロックを行えません。
・イレギュラーズは命中補正が大幅にプラスされます。

●アドリブ
 アドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブNG』等お書きくだされば、対応いたします。

  • 究極の一杯を求めて完了
  • GM名茜空秋人
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年05月20日 21時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アクア・サンシャイン(p3p000041)
トキシック・スパイクス
ジーク・N・ナヴラス(p3p000582)
屍の死霊魔術師
恋歌 鼎(p3p000741)
尋常一様
ユーリエ・シュトラール(p3p001160)
優愛の吸血種
ザッハニーア・ザウト(p3p002054)
UNKNOWN
九重 竜胆(p3p002735)
青花の寄辺
藤花・遥音(p3p004529)
藤の花
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子

リプレイ


「んんっー! やっぱり結構遠かったね、体がなまってないといいんだけど」
 ゴールデンブータの生息地であるキンカ山を前に『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)が大きく伸びをする。
「ラーメンってお料理、ボクのいた世界にはなかったんだよね、どんなのなのか楽しみだなぁ!」
 王都からのひたすら揺れ続ける馬車の旅――結構な強行軍、そして退屈――から解放され、焔は赤い目を爛々と輝かせる。
「ふふ、渇望は急に湧いてきて拭い難いものだね? でもここで再現されたラーメンがどうなるか、私も興味はあるよ」
 クールに微笑むのは馬車の持ち主の一人、『尋常一様』恋歌 鼎(p3p000741)だ。小柄な少女の外見と相反し、ミステリアスな雰囲気を周囲に醸し出している。
 もう一人の馬車の持ち主『一刀繚乱』九重 竜胆(p3p002735)も、
「ラーメン……ね。話を聞いてたら私も食べたくなって来たわ。美味しいラーメンの為にも一仕事頑張るとしましょうか」と積極的である。小さな角が見てとれる、鬼族の姫君たる凛とした立ち振る舞いの裏に隠された事実――実は中身がおっちゃんなのである。おっちゃんって、ラーメン好きが多いしねえ。あと、ついでに食いしん坊。
 二台の馬車と数頭の軍馬、パカダクラからなる小規模な隊商レベルの一団。イレギュラーズはキンカ山の麓にようやく到着したばかりであった。

 最寄りの村落からでも馬で三日程の行程になるキンカ山は、言うまでもなく結構な辺境である。
 道中時間はたっぷりあった。それこそ、皆が退屈する程に。
 当然、ある程度の作戦も練られている。
「一番の弱点はやはり、心臓だな。他に頭部や足元も狙い目だけど、無理に狙っていかなくてもいいだろう。狙いやすい処を狙い、手数で仕留めるのが最良だと思うな」
 動物知識、モンスター知識に秀でる白衣の料理人『藤の花』藤花・遥音(p3p004529)が講ずる。ブータは主に巨体を生かした突進からの圧し掛かりで攻撃してくる。
「潰されながら齧りつかれるんだって。とにかく大きいから、一撃が痛いんだ。これは注意が必要だな」
「……ん。問題ない」
 冷静沈着で無口な『UNKNOWN』ザッハニーア・ザウト(p3p002054)は多くを語らない。緑の迷彩服を着たハンターは、職業的知識からそれに諾なった。
「幻のラーメンか、とても気になるな。どんな味なんだろう?」
 知識はあっても実際に食べたことはない遥音が依頼以前からの知己であるザッハニーアに尋ねるも
「……興味ないな。俺は狩りにきただけだ……」とさも、依頼――狩りにしか興味がないとでも言いたげに返される。
 もっともラーメンに興味を持たないザッハーニアは唯一の例外で、イレギュラーズの士気――ラーメン食べたい!――は一様に高い。
「ラーメン、一度食べたことがあってね、すごく美味しかったわ! また食べられると思うと、やる気が出るわね!」
 と意気込みをみせるのは『ちょーハンパない』アクア・サンシャイン(p3p000041)。御馳走してくれた友人に感謝だ!
『じゅるり……』
 食いしん坊『笑顔の体現者』ユーリエ・シュトラール(p3p001160) に至っては、想像しただけでよだれを流しちゃう始末だ。
「はっ、今よだれ出てました!? ん……コホン。美味しい食材持ち帰れるよう、皆で頑張りましょう!」
 うん、誤魔化せてないけど、その笑顔が皆を和ませる。
「ラーメンか……。初めて食べるね。想像したら腹が減ってきた……。腹は無いけどね」
 骸骨ジョークは忘れない『屍の死霊魔術師』ジーク・N・ナヴラス(p3p000582)が呵々と笑った。
 ガリガリの骨だけの身体の何処に食物が収納されるのか? これで味覚も空腹も感じるのだから不思議である。


「見つけましたあ!」
 コウモリのファミリアーを使い上空から探索していたユーリエが、ゴールデンブータを発見した。
 一行は馬車を麓に残し歩を進めると、ブータを目の当たりにする。成る程、その巨体は金色に輝き遠目にも見誤るはないだろう。ある種の畏敬、そして神々しさをも醸し出していた。
「大型バスくらいってとこですね」
 自称現代人の鼎が感想を述べる。
「大き……アレを丸焼きにしたら……食べごたえありそうね」
 どう頑張っても全部は持ち帰れそうにないサイズに、竜胆の中のおっさんの食い意地が思わず発動する。
「あのブータで作るラーメンも、きっとちょーハンパなく美味しいわよ!」
 アクアも少しづつテンションが上がってきている。

 簡単に周辺を確認すると、地形的に特に問題はないと判断を下すイレギュラーズ達。
(やれば出来る、やれば出来る、やれば出来る)アクアがさらにテンションを高め、流れる赤き血潮が戦いの始まりを告げる。
 竜胆が皆から抜きんでると先ずは名乗りを挙げた。
 さあ、狩りの始まりだ。
「遠からんものは音に聞け、近くば寄って目にも見よ! 九重 竜胆、此処に推参! ――何てね?」
 二振りの業物を両手に、疾風の如く襲いかかる。
『ブ、ブ~~~!?』
「来なさい! 遊んであげるわ!」

 焔はまず、ゴールデンブータの側面から前脚を狙う。
「大きいなぁ」
 思いがけず呟きが発せられる。
 大きすぎて攻撃できる場所も少なそう、狙いも付けにくそうだから、とりあえず脚を狙おうという発想だ。
(食べられる部分が減らないようになるべく損傷が少なくなるように、足の腱なんかを上手く切れれば暴れたりして傷ついちゃうこともなくなるかな?)
 カグツチ――愛用の槍、業物だ――を振り回しながら
「火はあんまり使わない方がよさそうだからなあ……」
 ついつい焼き豚を想像し、火属性の技を自粛しつつ炎の巫女(猫耳)は誰にともなく愚図るのだった。

「ザッハニーア君、また姿が見えなくなってるな」
 ふと。気がついた違和感に遥音が独りごちる。
 放たれた術式が、ゴールデンブータの脚部に強烈に決まる。
「彼のことだから、きっと頑張ってるんだろう。私もラーメンの為に頑張らないとだ」
 一方、ザッハニーアはゴールデンブータから充分に距離をとり、独り潜伏していた。木々の茂みに迷彩柄の服を着こんだ彼は溶け込み、気配は敵からも味方からも完全に消えている。
(……直ぐに終わらせる)
 虎視眈々とチャンスを待つハンターの、空気すら切り裂きかねない鋭利な目がスコープ越しに獲物を狙う。
(……相手の損傷は極力残さずに)
『パシュッ!!』
 ライフルから発射された銃弾がゴールデンブータの足に吸い込まれていく。新たな損傷部が増えるのをよしとせず、負傷部を正確に狙い撃ったのだ。
 そしてザッハニーアは直ぐに伏せると、また空気と同一化していった。

 念の為にと『なりそこない』に身を守らせつつ、ジークも後衛から使役したアンデッドでゴールデンブータを景気よく襲っていた。
 アンデッド故の鈍さだろうか? 攻撃が外れることもあったが、それでも一発一発が大きく決して少なくないダメージを与え、ついでにゴールデンブータの防御力までも奪っているようだ。
「ふむ、目はこんなものなのかな? それなら脚はどうだろう」
 どこか嬉しそうにジークは、自身の好奇心の趣くまま黒の書――破壊を司る暗黒の魔術書を掲げる。攻撃の手は決して緩められることはなく、アンデッドに対してゴールデンブータ――金色に輝く神聖すら感じられる豚――はただの哀れなエモノでしかなかった。

 アクアもまた、ゴールデンブータと遠距離を保つように移動し比較的足場の悪くない位置に陣取る。
 頭の中で脳内麻薬がどんどん分泌されていくのが明確に自覚でき、攻撃性が増していくのが意識できた。
「いっけー! お気に召すままア・ラ・カルト!」
 ちょーハンパない一撃が、ゴールデンブータに大ダメージを与え、怒りに火に油を注ぐ形になる。
 もっともその怒りの向かう矛先は……。



 イレギュラーズ達の基本的な戦術はこうだ。
 盾役の竜胆とサブ盾役の鼎。基本的に盾役が一人でゴールデンブータの攻撃を受け、散開した残りメンバーで安定した攻撃を加え続けるというものだ。
(とは言うものの、結構きついわね)
 無理もない。怒り狂ったゴールデンブータの巨躯を竜胆一人で受けきっているのだ。蛇口の壊れた水道から水が止まらないかのように、体力がどんどん流れていく。サイズがサイズだけに、一撃が重たすぎるのが非常に厄介だった。
「竜胆さん、お薬です!」
 回復役のユーリエがポーションを絶え間なく与えてくれるが、それでも回復が追い付かない。
「そろそろ交代の時間かな?」
 その時、鼎の怒り口上が発動した。サブ盾役と入れ替わる。
「ふふ……」
 鼎はそのちっちゃい(そしてちっぱい)身体で、ゴールデンブータの怒りを一身に引き付ける。
「もう一息だね。ゴールデンブータは前足がだいぶ弱ってきているかな。皆、そこに集中攻撃でお願いするよ」
 エネミースキャンとファミリアーを駆使して得た情報を鼎が告げた。
「ありがたい! さあ反撃の時間ですわ。金豚、覚悟しなさいね!」
 今までの鬱憤を払うかのように鬼族の姫君は微笑むと、
「一刀繚乱ーーー!」渾身の力をこめ業物をゴールデンブータの足に叩きおろす。
『ブッ、ブブ、ブッヒーーーー!』(ブヒー、ブヒー、ブヒー……)
 大ダメージ。キンカ山にゴールデンブータの絶叫がコダマした。
 追い打ちをかけるかのように、ジークのアンデットが! そして魔弾が襲いかかる。
 遥音の術式が絡めとる。
 苦し紛れにゴールデンブータが鼎に反撃するも、
「ふふ、情熱的だね?」鼎に軽くかわされてしまう。
「炎神の子、炎の巫女、炎堂焔ここに推参!」
 髪全体に炎を灯らせ、焔がカグツチを深くゴールデンブータの足に突き入れる。
 それがトドメになった。
『ブッヒィィィィィ!』(ブヒー、ブヒー、ブヒー……)
 脚を失ったゴールデンブータがバランスを失い転倒する。地面が大きく揺れた。
 身動きのとれなくなったゴールデンブータは既に獲物ではなく、マナイタの上の鯉も同然だ。
 かくしてゴールデンブータの捕獲は完了したのである。

●狩りは終わっても、まだ終わらない。帰るまでが依頼です!
 ゴールデンブータの解体作業はサバイバル技術に長けたハンター、つまりプロであるザッハニーアが率先して行った。
 戦闘中行方を姿をくらませていた彼だが、戦闘が終わるやいなや姿を現し見事な手際で首を切り落としたのだ。
 苦労の末に血抜きが終わらせると「こうも大きいと本当に面倒ね」と竜胆がしみじみと呟いた。
 毛皮、骨、肉、内臓に分けて一通りの解体作業は終わりとなる。
 下処理として骨の周りの肉もしっかり削ぎ落とす。削いだ部位は干し肉用に。さらに同行者が加工し易いように、それぞれ目的に合わせた切れ目までいれておく。馴れ合いは好きじゃないが、仕事は出来るザッハニーアだった。
 ここから先は保存作業だ。彼は肉に香辛料、薬草を塗りこみ袋に密封することにした。

 さて、ザッハニーアがサバイバルのプロなら、遥音は料理のプロだ。
「まずは持ち帰る部分とそれ以外をわけるかな。ロースと……」
「ロース!?」
 遥音の台詞にユーリエが、じゅるり……と反応した。
 ユーリエの予め氷や保冷材を敷き詰めたアイテムポーチは、鮮度をある程度保ったまま保冷できる優れ品だ。とりあえずロースをポーチに入れるユーリエ。
 ユーリエという助手をゲットした遥音は、スープ用にゲンコツ、背ガラ、アバラ骨、豚頭骨を選別する。
「それとは別に、余った部位で料理を作るわ」
「賛成ね。これだけの獲物だし可能な限り消費したいわね。要らない部位は捨てるなんて勿体ないお化けが出るってものよ」
「ボクも食べたいな。狩った獲物はきちんといただいて糧にしないと、命を粗末にしてはいけませんって怒られちゃうよ」
 竜胆、焔の二人がすぐに声をあげて賛同する。
 遥音は軽く頷くと、抜群の包丁捌きであっという間に、豚のスープ、豚の照り焼き、豚挽肉の油味噌と豚尽くし気まぐれセットをこしらえる。
「ザッハニーア君、その内臓はどうするんだろうか?」
「……使いたい奴がいるなら使えばいい」
 さらに追加でもう一品、豚レバだ。
「保存が効かないから新鮮なうちに食べないとだ。こればかりはイレギュラーズ冥利に尽きるな」
 恐るべし遥音の女子力(物理)!!!
 イレギュラーズ達は役得とばかりに、特別な食材をふんだんに使った最高のまかない料理に舌鼓をうつのだった。
「ふふ、それにしても一仕事終えた後の食事は格別だね?」

 話を保存作業に戻そう。
 肉の塩漬け――壺に肉塊と塩を詰めて密封するだけという『ちょーハンパない』簡単な作業を済ませたアクアはジークと合流して荷物運びを行うことにした。
 骨や保存作業の終わった肉を、軍馬を使って馬車まで運ぶのだ。加工しやすい肉と違い、大きな骨はもう運搬するだけで大変な作業なのだ。
「ちょ……ちょーハンパない……」
 骨の山を目にして、アクアは新たに気合いを入れなおすのだった。
 終焉の骨馬――人骨で作られた骨の馬が大きな骨を大量に運ぶ光景は非常にシュールだった。ぶっちゃけ、どこまでが馬でどこまでか荷物なのか判らない、とは見たものの弁である。
 一方、鼎と遥音は肉の瓶詰とチャーシュー瓶詰に。竜胆は干し肉に。焔は燻製という保存手段をとる。
「ふふ、ラーメンにはチャーシューも大事だよ?」

●後日談
 大量の肉と骨を積み込んだ二台の馬車一行(と複数の軍馬)が『黒ブータ亭』に到着してから数日後、究極の一杯が遂に完成したという。
 懸念であった保存法も無事に問題はなかったようだ。
 イレギュラーズ達も『……馴れ合いは好かん』と直ぐに退散してしまったザッハニーアを除いてご相伴に預かることになる。
 なお、依頼人の酔っ払い達&店の主人も大満足している。

 あなたは目前のドンブリを眺める。
 スープは白濁を通り越し、黄金色と呼べるほどまでにコッテリと煌めいている。
 あなたはキンカ山で食べたゴールデンブータの肉の味を知っている。だからあるいは、ラーメンの味も連想できていたかもしれない。
 しかしあなたは、ゴールデンブータの骨でとったスープの味は知らなかった。肉と融合することにより奇跡の昇華を遂げたその味は、想像を遙かに超える一品だった。
 あなたは、一口スープを啜ると堪らず声をあげる。
『……究極だ!』と。

 なお、筋肉がないため麺が啜れなかったジークも、初めてのラーメンを十分堪能したことを記しておく。

 おめでとう。依頼は達成された!

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

ユリーカ・ユリカも大満足していました。

それでは、機会がありましたらまたよろしくお願いします。
僕は豚骨で!!!

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