PandoraPartyProject

シナリオ詳細

目覚めの胎動

完了

参加者 : 2 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●勇者と魔王
 初めての依頼ならば境界世界が良いよ。
 赤いコートの彼にそう言われたのを思い出し、『誰がための光』望月 凛太郎(p3p009109)は境界図書館を訪れていた。
「お、俺にも、依頼を頂けませんか?」
 緊張した声で境界案内人に声をかけた凛太郎。『丁度いいところに!』と手渡された本はやけに古びていた。凛太郎は首を傾げながら案内人の説明を聞いた。
 凛太郎にとっては初めての依頼。
 それは。17の、あまりにも純朴な少年にやらせるには、酷く酷なものであった。
「勇者が魔王を殺して平和な物語になるのを止めてほしいんだ」
「は……?」
 オニキスは光を失う。現実が理解できず、宇宙に放り出された心地さえした。
 境界案内人はそんな凛太郎の様子には目もくれずに話を続けて。
「ええとね、この物語の正しい結末は勇者が魔王となり、また次の勇者が来るのを待つ――ってのが正しい終わりであり、いわゆる正史ってやつなんだけどさ、」
「い、いや、そうじゃなくて。平和な世界になるのは、いけないんですか?」
 乾いた笑みが漏れた。目は空中をさまよい、境界案内人の肩を掴んだ腕は情けないくらいに震えている。
 そんな凛太郎に返された答えもまた、酷であった。
「ど、どういうこと? 物語の『綻び』を直すのが今回の依頼なんだけど?」
「え、あ、」
「難しいならいいよ。君じゃない特異運命座標(イレギュラーズ)なんて腐るほどいるんだから」
 それも、もっともであった。
 凡そ一万人規模であるローレットの特異運命座標は、たかが一人が依頼を断ろうと他の誰かが依頼を受けることで成り立っているのだから。
 手の届くすべての笑顔を護りたい。
 なのに、自ら笑顔を消し去るなんて。
 握った拳に爪が食い込んだ。痛みは、なかった。
 手汗が酷く滲んで、けれど抱えた本は手放しがたくて。
「……ちょ、っと、考えさせてくださ、」
「いや、その必要はないわ」
 軽く喧嘩になりかけている二人の会話を遮ったのは『イエスロリータ、イエスショタ!』朔・ニーティア(p3p008867)であった。
「私と君で受ければまあなんとかなるでしょ。それで案内人ちゃんも満足でしょ?」
「まぁ、こちらとしては依頼が片付けば満足なんで」
「じゃ、そういうことで。本貸してもらっていい?」
「ええ、どうぞ」
 凛太郎を指さしてそのまま消えてしまった案内人。脳内の処理が追い付く前にその女は微笑んだ。
「……で、君はどうしたいの」

●割り切る勇気
「……ふーん、なるほどねぇ」
「俺、依頼向いてないのかな……」
「いや。とりあえず受けるのがいいと思うわ、私は」
「どうして?」
 本を片手に俯いた凛太郎の肩を叩き、朔は笑って見せた。
「新しい発見があるかもしれないからだよ。まぁ私としては寝ころんだまま世界救えるくらいが、楽で簡単なんだけど!」
「……」
「それにさ。依頼、失敗しても次に活かせばいいだけだしね」
 案外気楽な答えが返ってきたな、と凛太郎は思う。

 握られた本。片手に収まる範囲のちっぽけな結末。
 二人が選んだ答えは。

NMコメント

 リクエストありがとうございます、染と申します。
 譬えその先にあるのが惨い結末だとしても、進んでいけますか?
 その手で未来を切り拓いてください。
 それでは、今回の依頼の説明に入ります。

●依頼内容
 勇者を魔王にする。

 この世界では魔王を倒した人間が次の魔王になるという連鎖があるようです。
 勇者が何らかの方法で魔王を倒してしまう前に、何とかして魔王にしてほしいという依頼です。

●成功条件(こっちのほうが大事です。優先してください)
 結末を選ぶ

 ライブノベルは絶対に成功します。
 ですから、お二人が時間をかけて相談して、納得のいく結果を導き出してください。
 魔王を滅ぼしハッピーエンドでも。
 勇者が次の魔王となる結末でも。
 それ以外のどんな結末でも、大丈夫です。
 どうかお二人にとっての最善を。

●舞台
 ファンタジー世界。
 勇者たち五人が魔王を倒すありふれた物語のひとつです。
 街並みは幻想に近いと思います。
 勇者たちは森を通り魔王城にたどり着くようです。

 魔王城近くの小さな泉にて魔王を滅ぼすアイテムを入手することができます。

●勇者一行
・勇者
 両面アタッカー。活発な青年。
 『女神の涙』というアイテムを泉で入手するかもしれない。

・姫
 ヒーラー。心優しい少女。
 勇者を慕っています。女神の涙について知っています。

・魔女
 魔法使い。おとなしい少女。
 知識に飛んでいて、小さな泉に関する情報は彼女が勇者に伝えるかもしれません。

・狩人
 遠距離弓使い。きざな青年。
 人伝があります。話しかけやすいです。

・騎士
 タンク。高潔な青年。
 嘘をつくのが苦手です。あと脳筋。

●その他備考
 プレイングに書かれていること、相談の内容を基準に描写を始める心算です。
 書いてほしい部分はプレイングに書き込んでください。
 アドリブ歓迎などは書かなくて大丈夫です。いっぱいいれます!

 なお、この相談卓は物語世界の中のとある宿の一室を想定しています。
 余裕があればRPもいいかもしれませんね。

 それでは、素敵なプレイングをお待ちしております。

  • 目覚めの胎動完了
  • NM名
  • 種別リクエスト(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年12月19日 22時05分
  • 参加人数2/2人
  • 相談7日
  • 参加費---RC

参加者 : 2 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(2人)

朔・ニーティア(p3p008867)
言の葉に乗せて
望月 凛太郎(p3p009109)
誰がための光

リプレイ

●迷いは時に仇となる。ので、
(オレは……どうしたらいいんだろうか?)
 『誰がための光』望月 凛太郎(p3p009109)は歯がゆさを胸にただ勇者を見守った。
「さぁ、今夜はこのあたりで休憩にしようか。アンナはこのあたりでデイビットと辺りを警戒、テントを組み立ててくれ。
 俺とメアリとウィルは向こうで薪を取ってこよう」
 てきぱきと指示を出す勇者たちは正しく『生きている』。一介の物語の登場人物に過ぎないから、などと割り切れればどれほどよかっただろうか。凛太郎に滲むのは苦悩の色だった。
(どうしたらいい……か)
 『言の葉に乗せて』朔・ニーティア(p3p008867)はそんな様子の凛太郎を見守っていた。
(まあこの混沌ってところは色んな依頼がある。
 苦しい依頼に行くこともあるし、こういうことをしなきゃいけないこともある――だから)
 自分にできるのは。彼のやりたいことの手伝いなのだと、改めて気持ちを引き締めた。
 尤も、彼の手伝いの為に依頼を受けたのだ。彼の望みは朔への依頼の内に含まれるといっても同然なのだ。
 故に。
「悩む、ってことはそれだけ思ってることがあるんだろうし。
……お姉さんは意地悪だから、後押しはするけど――判断は全部もっちくんに任せるよ」
「……うん」
 頷く。それは、勿論承知しているのだ。承知しているからこそ、悩む。
 そんなこともお見通しだと、朔は凛太郎にデコピンひとつ。『なんですかっ』と不満げに頬を膨らませた凛太郎にくすくすと笑って。
「でもその選択に勇気が足りないってなら、そうだね」
 首に巻いた組紐を解く。紅の色。古ぼけてやや色あせて。それでも負けぬ深紅の色。
 瞬いた凛太郎は何が起こっているのかをまだ理解していない。
「勇気が出るおまじない、この組紐を貸してあげよう」
「えっ……そ、そんな。悪いですよ!」
 と凛太郎が押しのけるよりも先に、朔はそれを凛太郎の首に巻き付ける。
「私が元の世界からずっと苦楽をともにしてたお守りでね、ギュッと握ればなんか元気が出てくるんだよ。
 最初は私と一緒のお守りかもしれないけど、」
「あの」
「いつかもっち君がこのお守りなしでも決意ができるようになる日が来たら、」
「そんな」
「……そのときには! 私に、また返してくれればいい」
「……」
 仄かに暖かい。
 あたたかいのだ。
 ひとの、ぬくもり。
 おいてきてしまった大切な絆。傷つけたくはなかった大切な人たち。
 瞼が、あつい。
 見知らぬ世界に突然放り出されて、ひとりぼっちで。
 腹を貫く冷たいソレがのど元に突きつけられていたようだった。
 死ぬか、生きるか。

 生きたい

 その思いだけでここまで生きていた。
 自分が生死を問う側になるなど、思っても居なかった。
 命の重み。失われていくこと。悲しみの蔓延。
 ああ、それでも。
 この手が届く範囲の命は、護りたいのだと。
 だから。



 ああ、仮初の勇者様。
 なりませぬ。
 それでは、世界そのものが、書き換わってしまいます。

「違う。俺達が、世界を変えるんだ」

 ▼ めがみ の しずく を てにいれた !

●結論
「って!」
「す、すまない。怪我はないだろうか?」
「いや、大丈夫。それより君たちは大丈夫か?
 俺は凛太郎っていうんだけど……君は?」
「俺? 俺はアレックスというよ。リンタロウは、心の広い男なのだな」
「やーやーもっち君、さっそくお友達作ってんの? やるねぇ」
「あ、朔さん」
「サク、というのか。ええと、おねえさん、かい?」
「まぁそんなところだね。旅のもので、魔王を討伐しに向かっているんだ」
「! 君たちもなのか」
「ああ、魔王城はもう見つけてあるんだ。それで、俺が朔さんとはぐれちゃって……」
「ま、そんな感じさ。君たちも一緒に行こうよ、せっかくの縁だしね」
「ああ、はい。見たところ手練れの方のように見える。
 ならあんしんだ、一緒に行っていただけると心強いよ」

 ▼ ゆうしゃ との せっしょく に せいこう した !

●ほんばん
「……これでよかったのかな」
「君が満足しているならね。さぁ、帰ろうか」
 暗雲立ち込める魔王城。勇者たちと別れ、魔王城の前でその帰りを待つ、つもりだった。

「い、いやぁぁぁ――――!!!!!」

 叫び。
 のちの、轟音。
 勇者に何かあったに違いない。
 けれど。
 これは依頼で。

「……くそっ!」
 拳を打ち付ける。痛み。この痛みは成長痛だ。未来へと歩むための、その一歩。

 変わらなくてはいけない。

「やっぱり、オレにはこの依頼は向いてねぇや……はは、失敗したら怒られるかな……でも構わない、オレはどうしてもバッドエンドなんて認められない!」
「ああ」
「もう、依頼なんて知るものか。オレは勇者達を助けたい! 力を貸してくれ、朔さん!」
「怒られるなら私も一緒さ。後悔するのも一緒。
 助けたいって願うなら――いくらでも助けに行こう。
 特異運命座標はね、それをできる権利があるんだ。いこう、もっち君」
 奇跡を願え。
 奇跡を起こせ。
 奇跡(それ)を叶えるだけの力が、特異運命座標(きみ)には、ある。

「アレックス!!」
「りん、た、ろう……?」
「ッ……!!」
 叫びの主はアンナ、姫であった。
 片腕の勇者が立つ。仲間たちは立っているのが限界の様子だった。
「どれだけやっても、腕が、もどらないのです、ああ、ああ」
「大丈夫。俺達が来たよ」
 立つ。
 魔王がいる。魔王(ゆうしゃ)が。
 次の勇者が、倒れぬようにと、強い強い力をもって、立ちはだかる。


 ――怒られるなら私も一緒さ。後悔するのも一緒。
 助けたいって願うなら――いくらでも助けに行こう。
 特異運命座標はね、それをできる権利があるんだ。いこう、もっち君

 
「怒られるなら一緒、か……へへ、付き合わせてごめんな、ありがとう……!」
「……気にしない。さぁ、もっち君、」
「行くぜ、魔王。オレはもう負ける気がしねぇよ……生きて、守り抜いて。戦い抜く。オレのワガママを世界に叩きつける為に!!!
 そう決めたんだ……だから、オレが。オレが特異点だって、イレギュラーズだって言うんなら!その力を寄越せよ、フーリッシュケイオス!!」
『アン……ブレイカブルッッッ!!! 汝が名はムラサメ、我が写し身である! いざや参る!』
 勇者は立つ。それが困難であることを知りながら。
 少年は駆ける。それが誰かの不幸を呼ぶと知りながら。

 握った剣は誰が為に。
 叶える願いは我が為に。

 暗雲、晴れる。
 世界の色が塗り替えられている。
 魔王の影が薄ら、消えて、煌めいて。
「に、げろ」
「魔王……?」
「おれを、きった、ら」

「おまえ、が、」

「ま、おう、に、なって、しまう、から」
「そ、そんな」
「大丈夫」

「そのために、望月凛太郎(おれ)が、いるんだ」


 ……普通で居ること、いられること。
 助けたいと思うこと。そのワガママを突き通すこと。
 何があってもそれを貫くことなんていうのは――どんなことよりも難しい。
 朔はそのことを知っている。
 勇者パーティの仲間たちに魔障壁を展開し、女神の涙を振りまきながら。
(それはどんな世界でも変わらなくて、どんな世界でも常にまぶしい)

「私は、それができなかったからね……」

 立ち向かう少年の影。勇者は地に伏せたままだ。

「気張れよ、少年」

 魔障壁の外へと出る。一層濃い瘴気が朔を襲う。
「もっち君。やれるかい?」
「……今だって震えてるけど。でも、」

「世界を変えるのは、俺だから」

「……それでいいよ。さて、世界を救おうか」
「ああ!!」

成否

成功

状態異常

なし

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