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シナリオ詳細

カルネと鉄帝もみじ狩り

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●今日のダイジェスト
「ウワアアアアアア!?」
 木に縛り付けた半裸のカルネ君へ、頭からメイプルシロップをぶっかけた。
「ウワアアアアアア!?」
 そこへもみじ型饅頭から手足が生えたような怪物が牙むき出しで突っ込んできた。
「ウワアアアアアアアアアアアアア!?」
 ギリギリで縄を切られたカルネ君がMOMIJIに追われながら紅葉豊かな山の散歩道を全力疾走した。
 そうこれが

 ――MOMIJI狩りである

●秋と言えばもみじ狩り狩られる覚悟のある者だけが狩人となるべし
 『わくわくもみじがりランド』
 と、看板には書かれていた。
 およそ百年は放置されたであろう錆ついた金属プレートに、ところどころ塗装のはげた文字で、トタンでできた小屋の上に掲げられた形でである。
 立て付けが死んだのか、ドアがしばらくガタガタ言った後ボッと音を立ててフレームごと外れ、身長2mをゆうに超える巨大なババアが現れた。
「ヒーッヒッヒッヒ! よくきたねえ! 『わくわくもみじがりランド』だよォ!」
 ここが地獄の一丁目だぜ、みたいな口調と顔でいうババア。
 そうここはわくわくもみじがりランド。
 狩人達の戦場。
 鉄帝のさる富豪より依頼され来た場所。
 依頼内容は――MOMIJI狩り。

「やあ、爽やかな昼だね。まわりもすっかり秋めいて……ほら、街路樹の葉っぱが赤くなってる」
 喫茶店、窓際の席。ドアを開けウェルカムベルを鳴らしたあなたへ振り返り、カルネ (p3n000010)はニッコリと微笑んでいた。
 彼のテーブルにはティーカップが置かれ、美しいレディグレイのフレーバーティが半分ほど秋の陽光を照らしている。
 窓から入る光へすこしまぶしそうに目を細め、向かいの席に座るあなたにメニューブックを差し出すカルネ。
「今日の依頼は鉄帝国のさる富豪……て、名前がもう書いてあるね。数奇者で有名なチェルブロ卿だ。
 なんでも『もみじ狩り』を依頼されたらしくて、その過程で手に入る大きなもみじを持ち帰って欲しいんだってさ。
 ふふ、なんだか変だよね。もみじを見てお散歩するだけなのに名前がもみじ狩りだなんて。きっとちゃんとした由来があるんだろうけど……」
 そんなの些細なことだよね。そう言って、カルネはティーカップを手に取った。
 優雅に微笑むオールドワンの青年カルネ。
「なににせよ、君と一緒にもみじ狩りができて、嬉しいよ」

 ――が、いま『わくわくもみじがりランド』前でババアに直面していた。
「僕知ってるよ。これ、僕が酷い目にあうパターンだ」

●MOMIJI狩り
 説明しよう!
 MOMIJI狩りとはモォクレー山の森にすまうモンスターMOMIJIをおびき出して狩るという鉄帝セレブで今大流行の狩猟スポーツである。
 特にこの狩猟によって手に入るMOMIJIは毛皮から上等な生地ができるとして貴族女性に人気があり、男がMOMIJIを狩り生地を女に贈るといういとみやびな流行が――ってこの説明まだ続ける? いまカルネくん乳首にメイプルシロップぬられてるんだけど。
「くっ! こうなる気はしてた……!!」
 練習用の柱にすぐ切れる芋縄で縛り付けられ、ババアによる繊細なハケ裁きでメイプル塗られるカルネくんがそこにはいた。
 っていうか小屋の前にいた。
「よく見なァ! MOMIJIはこうして拘束されてる男が大好物なんだよ! 特にメイプルシロップが塗られてればサイコーだね!」
 どうやらMOMIJIをおびき出すための罠の解説をしてくれているらしい。カルネ君で。
「罠は多ければ多いほどいいねェ。我こそはっていう男はMOMIJI罠になる準備をしておきな!」
 シロップはたーんとやるからね! といってバケツを手渡してくるババア。
「じゃあ、エンジョイしてきな! MOMIJI狩りをねェ!!!!」

GMコメント

■オーダー
 MOMIJI狩りをしてMOMIJIを手に入れましょう
 端的にいうと男を木に縛り付けてメイプル塗って近くで待つともみじ型の全長1mくらいの怪物MOMIJIが現れて男をべろんべろんなめ始めるからそこを狩れって話だね。

 MOMIJIも案外ワンパンでやられてくれなかったりするから、取り囲んで集中攻撃をしかけたり時には機動力や馬なんかを使って追いかけてトドメを刺すプランも考えておくとグッドです。
 あと難易度からお察しの通りMOMIJIはべろんべろんする過程で相手を舐め殺すことがあります。パンドラの減少にご注意ください。
 舐め殺すってなんだろうって私もおもうけど多分めっちゃ舐められると気を失うんだと思う。なにかしらの理由で。

 MOMIJI罠になる男子は一旦木に縛り付けて貰って、MOMIJIが現れたら舐め殺されないように縄をブチィッてしてダッシュで逃げてください。
 仲間が駆けつけてMOMIJIを狩ってくれるでしょう。
 一応罠候補にカルネくんを置いとくので、『俺も俺も!』という方はメイプル塗られてください。かわりばんこで。

■おまけ解説
 MOMIJIが縛られたメイプル男子を好きなのは、なんでもそういう性癖だからだそうです。
 性癖じゃあしかたねえな。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

■■■アドリブ度■■■
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用ください。

  • カルネと鉄帝もみじ狩り完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年12月10日 22時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)
灰雪に舞う翼
ジョセフ・ハイマン(p3p002258)
異端審問官
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
黒撃
Tricky・Stars(p3p004734)
二人一役
三國・誠司(p3p008563)
一般人
節樹 トウカ(p3p008730)
散らぬ桃花
ポワゾン・ダヴリール(p3p009110)
milk fed
墨生・雪(p3p009173)
言葉責めの天災

リプレイ

●MOMIJI狩りってなんだよ
『MOMIJIって何?メープル男子が好きってどういうこと!? 混沌怖いよォ! 元の世界に帰して!!』
 ウォーカーの多くが言い出すワードをわりと今になっていいだす『二人一役』Tricky・Stars(p3p004734)。の、虚サイド。
 謎の遺跡にトライしたときも巨大なドラゴンが海からざっぱーした時も妖精郷が冬になった時もずっと勇敢に戦ってきた彼がもしかしたら初めておうち帰りたくなった瞬間である。
『あ、まってよく考えたら俺案外おうち帰りたくなったこと多いわ』
「聞いてない」
 稔サイドがものっそクールに眼鏡をクロスで拭うと顔にかけなおした。
「この体は神の物、珍妙生物に汚される訳にはいかない。安心しろ。回復はするぞ、回復は……」
『回復以外にもして!!!! 例えば身代わりとか!』
「断固断る」
 一人で会話してるTricky Starsを遠目に観察しながら、『散らぬ桃花』節樹 トウカ(p3p008730)はしみじみと腕組みした。
「鉄帝って……なんか凄いんだな」
「鉄帝だけの話じゃないよ?」
 後ろからひょこっと顔をだす『空歌う翼』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)。
「幻想では吸血もみじが空を飛ぶしね。このぶんだと他の国もなんかあるよ」
「世界ってすごいな」
 ひょんなことからグローバルカルチャーにふれてしまったトウカであった。
 そして、世界が怖いのは文化ばかりではない。
「秋といえばMOMIJI狩り!
 知らなかった! 不勉強なもので! ……しかし覚えたぞ!!
 MOMIJIの毛皮から作った生地は女性への贈り物に最適……ふ、これは良いことを聞いた」
 『異端審問官』ジョセフ・ハイマン(p3p002258)が仮面の下でくふくふと笑いながらなんか赤黒いモンがついた謎のペンチ的道具をがっちんがっちん鳴らしていた。道ばたにこんな人が居たら目を合わせないように素通りするだろうし友達にこういう人がいたらやっぱり目を合わせないように相づちをうっていたところである。
 だがそんなねじくれたグローバルに触れても案外冷静な鬼人もいた。『つみのゆき』墨生・雪(p3p009173)である。
「MOMIJI狩り。男性の……その、あんなところやそんなところにメープルシロップを……?」
 なるほどお、と言ってでっかい鞄から大きな瓶をいくつか取り出していく雪。
「折角ですから、色々なメープルシロップを塗りましょうね。まずはカルネさんには……」
 といってゴールデンメープルシロップをカルネ (p3n000010)にハケで塗りつけ始めた。
 もはや柱にくくりつけられた上半身裸のカルネにである。
 いままさに森んなかで、すぐ隣に半裸でメープル塗られたカルネくんがいる前提で頭から読み直してみると味わいが変わるので是非試して欲しい。
「カルネ君……僕いつも思うんだけど、ちょっと仕事選んだほうがいいと思う」
 はじめて見たときからこの人こうだよなって顔で、『一般人』三國・誠司(p3p008563)はカルネ君を観察していた。
「そん、な、ことっ……ないよ。皆と、一緒に、い、依頼を、受けられるのっ、は、う、嬉しっい……よ?」
「やめてメープル塗られながら喋らないで生々しいから」
 このお話が何か別のインターチェンジへ入ったままハイウェイしちゃうから。
 誠司は咳払いをしつつ、遠いお空を振り返った。
(ここでやっていけるか不安だったけれど、なんとか今日まで生き残れてる。
 周りはキャラの濃い人ばかりで個性のない僕は埋もれているけれど、生きているからラッキーだ……)
「MOMIJIがどんなイキモノなのか分からないけれど、あのバアさんの方がよっぽどバケモノじみてたと思うんだよね」
 話を横からかっさらう形で、カルネの脇腹にメープルぬったくりながら語る『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)。
 言われてから思い出すのは、『狩りが終わったら風呂に入れてやるよォ! ヒーッヒッヒ!』と言いながらババアが巨大な鍋みてーなやつを板でかき混ぜていた光景だった。説明されなかったら人を食うたぐいの妖怪にみえていたはずだ。
「それは言い得て妙だなあ」
 『milk fed』ポワゾン・ダヴリール(p3p009110)も同じババアを回想してみた。『美味しそうなボーイだねえ! ヒッヒー!』てポワゾンを見ながら歯を見せて引きつるみてーに笑っていた。レガシーゼロなので性別はないが、どうやらボーイに見えたらしい。
「僕っ子ロリの可能性を信じてくれたまえよ」
「ナンテ?」
「こんなに薔薇の香りを纏う面々だなんて、面白おかしい仕事じゃあないか。
貴族の間ではこれが流行りなんだろう、ならば僕もハイカラなその趣味にあやからせてもらおう」
 話を強制的に元に戻して、ポワゾンは眼鏡のブリッジに薬指をやった。
 でもって、手にしたハケでカルネ君の内モモをゆーっくりメープルした。
 こころなしか楽しそうだった。

●メープル☆ボーイズ!
「ハッ……!」
 エコーとスローモーションでご想像頂きたい。
 褐色の素肌に桜花弁のような刺青模様。白銀の髪はざくざくと切られ額から伸びた角と鋭い黄金の瞳が獣たらしめる鬼人の男。
 彼は……メープルまみれで木からぶら下がっていた。
 ――怒りと憎しみのままに全てを破壊する悪夢を幼い頃から時々見た。
 ――だから自分はいない方がいいと。
「今そのナレーションするのやめてくれないか」
「え、ベリーダークシロップのほうがよかったですか?」
 瓶からハケを取り出してにじりよる雪。
 はじめ見たときはおとなしそうだし名前もはかない感じだなあとか思って同じ鬼人同士微妙に距離感をはかりかねていたが、蓋を開くと『トウカさんには一番メープルの香りの高いダークシロップがお似合いです』とかいいながら持参したメープルをぬったくろうとするやべーやつだった。
 やべーやつランキングでは上位に食い込む自身のある桃果ちゃん。ここにきて迫る恐怖。
 そして名前の雰囲気と人格が一致しない実例が自分自身だったことに今更思い至る。
「くっ、よせ! 毛先で乳首の先端だけ丁寧に塗るな!」
「仕方ないじゃあないですか、縛られてる間は露出を控えたいっていうからピンポイントに塗る必要がアッ面倒くさくなったので瓶ごといっていいですか」
「面倒くさいって言ったか!? 今言ったか!?」
「キシャアアアアアアアア!!」
 すったもんだしてる二人のもとへ、茂みをかき分けて飛び出してくる怪物。てかMOMIJI。
「うおお来た!?」
 そしてェ――!?

 いっぽーそのころ。
「…………」
「イッパイ集まるとイイね! ジョセフにはワルいけれどね!」
 ジョセフがとげとげした木へ背中越しに無理矢理抱きつくみたいなヤベえ姿勢で縛り付けられていた。
 なんかの拷問かなと思ったし、イグナートは頭からベリーダークのメープルシロップをぶっかけているのでもしかしたら新手の処刑方法なのかもしれない。これで数日森に放置するっていう死体処理方法聞いたことある。
「オオウッ!」
 仮面の下で叫び、ビクンって頭を上げるジョセフ。姿勢の時点でちょっとした前衛芸術みたいだったのに、仮面のせいでよりやばみが深まっていた。
「この身を拘束し苛むのに丁度いい棘棘しい木……スバラシイ……」
 苛む必要ないのに自ら絵面のヤバさを深めに行くジョセフである。
「しかし私の裸はカルネ殿のなめらかな肌と違って傷跡だらけで舌触りが良くないかもしれない……背中の裂傷も師匠手ずから鞭打ってくれたものだしこの腕の火傷は異端者の反撃によるもので、この胸のピアスは私の宗派的に重要な戒めとしてのシンボルでなまだ若く心を迷いに支配されていた私に審問官としての自覚と覚悟を促すに師匠が用意してくれたもので痛みに呻く私を叱責するその目は厳しくも慈しみに溢れ――」
 放ってリプレイがおくと大変なことになると気づいたのだろうか。
 それとも傷だらけ男子が性癖に刺さったのだろうか。
 多分後者だとおもう。
 だって。
「オオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」
 目ぇかっぴらいてよだれ垂らしながら四足歩行のMOMIJIが茂みから飛び出しジョセフへとびかかったがゆえである。
『うおお今だオラァ!』
 茂みに隠れていたTricky Stars虚サイドが飛び出し、炎を纏った拳でMOMIJIを横から殴りつけた。
 突然のパンチにバランスを崩し、どころか吹き飛んで木の幹に叩きつけられる。
 それまで縛られていたジョセフは離脱し、代わりにイグナートが彼らの間に割り込んだ。
「オレ気付いたんだけれど雷吼拳で殴ると怒りでオレの方にアレが来ちゃうんだよね。ちょっとイヤだなぁ……」
 などと言いながら拳に雷めいた気をみなぎらせ、そこをどけとばかりに飛びかかるMOMIJIへ殴りかかった。
 よけはしない。なぜならMOMIJIは性癖にたいしてどこまでもまっすぐだからだ。
 ゆえに真正面から直撃したイグナートの拳、そして後方から追撃したTricky Stars虚サイドの『Femmefatale』が直撃し、炎と雷のオーラがMOMIJIを燃やし尽くしていく。

「塗られ方! 塗られ方がおかしい!」
 木の枝から逆さにぶら下げられたアクセルが、ポワゾンによってメープル塗装されていた。
 足の内モモんところをついーってやるポワゾン。
「仲間だって女性にセンシティブな部位に触れられるのは嬉しくも気恥しいかもしれないしね」
「そういう問題じゃないよね!? 向き! 向き!!」
「気にしないでくれたまえよ。あとでシャボンスプレーしてあげるし、なんなら縄も自力でほどけるようにしてあるか――」
「「シャオラーーーーーーーーーーー!!」」
 茂みからビャッて音立てて飛び出したのはMOMIJI。それも二匹!
 左右平行に並んでガッて大地を掴むように着地すると、アクセルめがけて一斉に走り出した。
「ウワーーー!?」
 バタバタしながら縄を解き、じまんの機動力で即離脱――しようと思ったら大きな舌をべろーんてだしたMOMIJIが真横を併走していた。
「そんな!? オイラより早いなんて聞いてなアアアアアアアア!?」
 またたくまに二人がかりでベロンベロンされるアクセルを、ポワゾンはなるほどなるほどって頷きながら腰の後ろにとめておいた大きな羽ペンを手に取った。
 ペン先にじわりと奇妙なインクが湧き出すやいなや、ポワゾンは空中に古代文字で『毒蛇』の意味を持つ文字を描き出した。
 文字は形をもち形は現実となり、毒蛇がMOMIJIの一体へと食らいつく。

 仲間達が順調に(?)ぺろられているなか、カルネくんは予行練習通り気に縛られていた。
 そばで待機する係として……選ばれたのは、三國でした。あやたかでしたみたいに言ってみました。
 縛られた木のその上。太い枝に屈むようにして待機する誠司は、これまでの七十を超える冒険の数々を思い出しながらカルネへと語りかけた。
「僕、イレギュラーズとしてやっていけるのかな」
「誠司……」
「カルネくんをカルネくんするのを覚えてからもう半年たつけど、僕はどんな成果をのこせたか……」
「半年で七十件解決してるの普通にやばいよ?」
「周りは個性的な人ばかりで、二重人格だったり仮面の拷問マンだったり、最近は鬼まで仲間になる始末で、僕の個性といえばキャノンの設計図を持ってるくらいさ」
「誠司(キャノン)……」
「自信ないよ。カルネくん」
 目を瞑る誠司。カルネもビキパン一丁でメープル塗れになりながら目を瞑った。
「僕はね、誠司。長いことホコリを被っていたことがあるんだ」
「カルネくん?」
「僕に個性らしい個性なんてない。ピッタリな仕事もあんまりない。ギルド酒場の椅子にすわって、周りを見て、お酒を飲んで、それで帰る。そういう日々がいくつもいくつも続いて、僕は自分が誰だかわからなくなりかけてた。何か芸を身につけようとしたこともあるけど、上手くいかなかったよ。そんなとき、僕は鉄帝のギルド支所に送られたんだ。ババアに唐揚げレモンされたりトロッコに乗せて坑道ラリーされたり雪山でカルネくんされたりしたんだ。僕はただされるがままだったけど……僕はね、それが、ほんとは……」
 うっすらと目を開く。
 どこか涙ぐんだカルネは。
「嬉しか――」
「オアアアアアアアアアアアン!?」
 目の間にMOMIJI。
「ウワアアアアアアアアアア!?」
「カルネくーーーーーーーん!!!!」

●MOMIJI
「た、たすけてーーー!」
 アクセルが翼をばっさばっさやりながら森を駆け抜けていく。駆けるっていうか低空飛行で木々を避けまくりながら抜けていく。
 とんでもねー速度で追いつきながら舌をべろーんて出したMOMIJIに、アクセルは魔法の指揮棒で攻性結界を発動。
 ベッと結界を貼り付けられて機動力を落としたところへ、ヒュウと口笛が聞こえた。
 まるで口笛にのるかのように飛行した巨大羽根ペンが、先端を赤く光らせながらMOMIJIを貫いていく。
 赤い軌跡を描いたペンがターンして飛んでいき、あとから歩いてきたポワゾンの手へと収まった。
「さて、これで二匹。囲んで倒すって話だったけど、案外なんとなかったようだ。弱い個体だったのだろうか?」
「うおおおおおタスケテーーーー!」
 とか言ってたらイグナートがもんのすげー速さで逃げてきた。
 目をハートにしたMOMIJIが高速四足歩行でそれを追いかける。
「ええい! ままよ! 逃げられるよりはマシ! ここにオイシイ餌がもう一人居るぞォッ!」
 イグナートは頭からメープルを自ら被ると、飛びかかるMOMIJIへとターン――。
「シャオアアアア!!」
「思ったよりも怖ェェェェェエエ!!!」
 ってしてる所へ。
「見よこれが連綿と受け継がれし真髄! ――『異端審拳・威』!」
 猛烈な速度で追いついてきたジョセフの異端審拳が炸裂。
 MOMIJIが爆発四散した。
「SAYONARA!」
「む……? 爆発四散してよかったのか?」
 あとからゆっくりついてきたTricky Stars稔サイドが、怪我(?)をしたジョセフやアクセルに治癒の光をパァーって浴びせかけていく。
「だが、これで何匹か確保したな。もう2~3いければいいが……むっ?」
 なにかの声を聞いて振り返るTricky Stars。
 見えるのは。
 こっちへ走ってくるMOMIJI。
 それを追いかける、亀甲縛りのトウカ(褌)。
「待ってくれモミジ!
 俺はお前に会う為にこの身体を縛ったままここに来たんだ!
 お前の蠱惑的なその舌でべろんべろんされる為に」
 胸に自らメープルでハート型を描くトウカ(褌)。
「さっきは怖くてつい逃げたが……覚悟は少しできた。
 その……この歳になってもそういう事は初めてだから、できるだけ優しくしてほしい。
 俺も、頑張ってお前を満足させるから……!」
 どうみてもヤベーやつから逃げるMOMIJIの図だが……。
「エッッッッッッッッ!!!!」
 四つの足でギュインてブレーキ&ターンし、トウカへと向き直る。
 木刀を抜くトウカ。
「俺の心で永遠になってくれ、モミジィ」
 やべーやつとやべーやつが大決戦をはじめよう……としたその時。
「せっ!」
 横から雪のハリケーンミキサー的なやつが炸裂した。『エッ』て言いながらぶちあげられ回転するMOMIJI。
 仰向けに転落し、動かなくなったMOMIJIを見下ろして、フウと息をつく雪。
「しかし、特異運命座標になって日が浅いのですが……この大陸というのはこういう流行があるのですか?
 いやはや、恐ろしいものです。私みたいなか弱い人間には知らない世界すぎるのでした」
「待って待って、全部終わったあとのシメみたいな台詞まだまって」
 いつのまにかそばにやってきていた誠司が、『あれみて』といって振り返る。
「ウワーーーーーーー!」
「キシャアアアアア!!」
 パンイチメープルまみれで走るカルネくんと、それを全力で追いかけるMOMIJIがあった。
「なるほど」
「これが」
「最後の一発か」
「そういうこと」
 (カルネくんをカルネくんしてここまで逃げてきた)誠司はデスペラード姿勢でキャノンを構えると、砲身を最大まで展開。そして――。
「御國式大筒【星堕】、発射!」
 一斉に走り出す仲間達。
 放たれるキャノン。
 涙目で走るカルネ。
 飛びかかるMOMIJI。
 その一秒後に、勝負は決した。





 かくして、イレギュラーズたちはMOMIJIを充分な数だけ狩りその毛皮を獲得することに成功したのだった。
 秋も終わり雪の季節がやってくる。そうなれば暖かく丈夫で謎の性癖をもつMOMIJI革は重宝されるのだろう。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete

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