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シナリオ詳細

<濃々淡々>おいでませ、百鬼夜行

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●夜は短し
 濃々淡々のハロウィン。
 文化としては最近根付いたばかりであるが、しかし。
 楽しむものはとことん、収穫祭として楽しんでいるようだ。

 ひゅう、どろろん。
 あやかしが列を成す。
 隻眼のあの男も、猫のようなあの女も、さちあれかしと笑ったあの娘も、皆集まって。
 ちんどんしゃららんちんどんしゃららん。
 虎がのそりのそりと歩いたような気がした。
 ほ、ほ、ほ。幼子の笑った声がした。足元には誘うように足だけが前へ、前へ。
 ひゅう、どろろん。
 少しずつ灯る明かりが、人魂だと気が付いたのは何時だろうか?
 青い明かりに魅せられて、気が付けば列は長蛇の列。
 嗚呼、でも気を付けて。

 あやかしでないならば――、

『――ばぁ!』

 或る男の手記には、こうかかれている。
<一頁>
 私はようやく『百鬼夜行』に混ざり込んだ。
 母さんの魂は彼らによって奪われてしまった。私は必ず取り戻すのだ。母さんを。
 其れにしても彼らは一体どこへ行くのだろうか。

<二頁>
 行く先々に灯る明かりが、薄ら青みを帯びている。私に寄り添うように纏いつく光がある。
 やれ、うるさい蝿のようだ。
 手で追い払おうとも付きまとう光は気味が悪いが、ニンゲンだとバレてしまわぬようにせねばならない。
 だから息を殺すしかないのだ。
 嗚呼、母さん。どこにいるんだ。

<九十九頁>
 嗚呼! 母さんは私があの時追い払った光であった。
 母さんは、母さんは! 私が!

 ――此れ以降に書かれた記録はない。

 人の魂すらも浚ってしまうような其の祭りが、今宵、濃々淡々に訪れるのだと言う。


●猫の男
「……あ、」
 犬の格好をしていたのは、濃々淡々の境界案内人たる絢。普段はまっくろな化け猫の彼が、今宵は気合い十分に首輪までつけている。
 目が合うと恥ずかしげに頬を掻き、なかったことにしようとこほんと咳をして。
「今日は、ね。百鬼夜行に、皆で行こうかとおもって……あ、百鬼夜行って、わかる?
 俺たちの世界だと、こう……パーティーみたいな、ものなんだけど」
 片手には洋語辞典。カタカナを学び始めた最中なのだと言う。
 えっとね、と言いながら、慌ただしく取り出されたのは招待状。
 簡単に読み上げると、絢は照れ臭そうに微笑んで。
「皆が俺を変えてくれたから、行こうかな……って、思えるようになって。
 皆のことは俺が守るから、皆も一緒に行ってみないかい?」
 お祭りみたいなものだよ、と微笑んだ絢は、尻尾がご機嫌に揺れているのを隠すことはできていなかった。

NMコメント

 お久し振りです、染です。
 少し遅めのハロウィンは、和風世界で如何でしょうか。

●目標
 百鬼夜行に参加する

●百鬼夜行って?
 妖怪パレード。
 彼らの世界では妖怪達が一年をかけて世界を巡り回る、一種のサーカスのようなもの。妖怪たちも仮装を施しているようです。
 彼らの怪しげな音色につられて、神隠しのように消えてしまうものもいるとかいないとか。
 名のある妖怪のもとには招待状が届けられるようです。

 妖怪でないモノが参加すると、酷い罰が与えられるようです。
 うまく仮装して(今年のハロウィンSD、いいですね!)隠れて、混ざり込んでみましょう。
 歩いた先には屋台もあるようですよ?

●世界観
 和風世界『濃々淡々』。

 色彩やかで、四季折々の自然や街並みの美しい世界。またヒトと妖の住まう和の世界でもあります。
 軍隊がこの世界の統制を行っており、悪しきものは退治したり、困りごとを解決するのもその軍隊のようです。
 中心にそびえる大きな桜の木がシンボルであり神です。
 昔の日本のイメージで構いません。

●絢(けん)
 華奢な男。飴屋の主人であり、濃々淡々の境界案内人です。
 手押しの屋台を引いて飴を売り、日銭を稼いでいるようです。
 屋台には飴細工やら瓶詰めの丸い飴やらがあります。
 彼の正体は化け猫。温厚で聞き上手です。
 今宵の仮装は犬。曰く、「俺より強そうじゃない?」
 呼び出されればご一緒致します。

●サンブルプレイング
 さあて、皆と一緒に行進だ。
 ……ふふ、たのしみだな。
 仮装、似合っていないかな。不安だけど、楽しめるといいな。

  • <濃々淡々>おいでませ、百鬼夜行完了
  • NM名
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年11月29日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談2日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

十夜 蜻蛉(p3p002599)
暁月夜
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
ハンス・キングスレー(p3p008418)
運命射手
グリジオ・V・ヴェール(p3p009240)
灰色の残火

リプレイ


 ちんどんしゃららん。
 ちんどんしゃららん。

 人魂踊り、あやかしも踊り。

 そうして、彼らは進んでゆく。

(バリッバリの人なんですけど大丈夫なんですかねぇ。今日が俺の命日とか嫌だぞさすがに)
『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)はがしがしと頭を掻き、自身の目の前に長く連なる百鬼夜行に青い顔をして。
 キャンセルして帰って寝るか、と歩みつつも脇へ逸れようとしたその時。
「ねえ、なえ、聞いた? 今年はあの飴屋もいるらしいわ!」
「へえ……終わったら少し並んでみようか」
「ええ、そうしませう!」
 きゃらきゃらと弾む女の声と、其れに頷いた男の声。
「ふーん。ただ歩いて終わりなら徒労でしかないが食うものがあるなら話は別かもしれないな……?」
 労力に見合う報酬があるから『仕方なく』の体を取り、参加することに決めた世界の味覚が求るはやはり、甘味。
 バレて酷い目に遭うのは御免。そんな自分を納得させたのは――

 影薄いし大丈夫だろ多分、きっと、めいびー。

 ファントムナイトに頭痛すら覚えながら、世界がチョイスしたのは鬼。
 彼曰く、「座敷童をやるには年齢が過ぎてるし、ぬらりひょんは頭が重いってか仮装でどうにかなるのかあの頭……角付けて仮面被って鬼とかやるのが無難か」とのこと。
 歩み続ける内にやはり命を狙われたり、人間だとバレていないかと心配になり、彼自身のイメージするような鬼の動きをして歩いてみる。
 流石に人目が恥ずかしくなったりしたものの、気付かれそうな様子はない。
「……このままならば大丈夫そうだな」
 安堵した世界。このままならば飴へと辿り着くのも遠くはないだろうか。
 そう思い弾む心を抑えつけ、進もうとした途端――

 ごんっ

「いってえな! 兄ちゃん鬼なんだろ? 角が刺さっちまうだろ」
「あ、嗚呼、済まない。でも、立ち止まったら危ないんじゃないか?」
「何言ってんだよ、初めての参加か? 其れならまあしかたねえな……ここいらで一旦休憩だったり、参加者の入れ替えがあるんだよ。覚えとけよ?」
 軽く頭を下げると、其の男は人懐っこい笑みを浮かべ、手を振り其の場を去って行った。
 世界も屋台を物色し、小さな猫の飴を買うことに。
「いらっしゃい。此れにするかい?」
「嗚呼、そうしたい。頼めるか?」
「勿論」
 一服ついでに他の屋台も見て回る。此の世界にしかない何かはあるのだろうか?
 舐めた黒猫の飴は結構甘く、世界の舌を潤した。


(昔はこんな世界とは繋がってなかったからな。
 興味深い場所ではあるが、百鬼夜行に参加させられるとは……)
『灰色の残火』グリジオ・V・ヴェール(p3p009240)は爛々と輝く青い青い炎に目を細め、やれやれと苦笑して笑って。
 ――けれども。彼の耳を擽るのは、甲高く甘く、鈴のように軽やかで蜜のような二人の乙女の声。
『とっても心地いいのだわ』
『近しい気配でいっぱいなのだわ』
「……お前ら妖怪の類なのか?」
『『まあヒドイ! 一緒にしないで欲しいのだわ!』』
 ――あんな所に人間がいるわ。
 そんな、声がした。
「人間? そう見えるのならば俺の変化の術も捨てたもんじゃあないようだ」

 瞬く間に姿を現す大きな灰狐。
 炎のように揺らめく、長い毛並に氷のように冴えた瞳。
 長く伸びた大きな尻尾は枝分かれし、揺蕩う。
 ――其の左目には人間時と同じように大きな傷が入っていた。

『かわいいひとだわ』
『おろかなひとだわ』
『『伽藍堂の瞳で何が見えるのかしら!!』』

 ケラケラと、キャタキャタと笑う声はグリジオには届かない。
 二つの光が――グリジオの隻眼には、二人の幼子が。其の立派なしっぽに飛び乗ってきゃらきゃらと声を上げる。
『ふかふかなのだわ!』
『もふもふなのだわ!』
「……乗るな」
 ぶぉん、と尻尾を振って振り払えば、拗ねたように頬を膨らませてみたり、其れでも未だ負けぬとじゃれついてみたりする幼女達にやれやれとため息を吐いて、グリジオはゆったりと歩み始めた。
『今日はわたしたちの時間なのだわ』
『心行くまで楽しむのだわ』
「はしゃぐのはほどほどにしてくれよ……」
「あら、其処の狐さんと……座敷童かしら。お連れさんかしら?」
 近くを進んでいた化け狐の女が微笑んで、ひらり、手を振るも、首を傾げた。
「嗚呼……勝手にくっついてきてるだけだ」
『まあ、ひどいのだわ!』
『そんなことないのだわ!』
 不服げに辺りを飛び回る幼女達を写したその女はくすくすと微笑んで。
「お兄さん、女の子には優しくしてあげるのが吉なのよ?」
『そうなのだわ!』
『女の子は大切にするべきなのだわ?』
 何処かの男が聴いたらゆったりと、口元に三日月を浮かべて笑うだろうか。

 しゃんしゃんしゃんと、鈴がなる。
 きゃらきゃらきゃらと、幼女の声が響き渡る。

 耳障りで、甲高くて――そんな声が喧騒に紛れ。セピアの色を夜に溶かし、楽しげに揺らめいていたことを、グリジオは知らない。


(……仮装、と言うには余りにも成れ果てているなぁ)
『虚刃流直弟』ハンス・キングスレー(p3p008418)の『仮装』魔羅の様に聳り立った二本の角と黒く染まった青い翼。
 喩えるならば堕天使の其れであるが――
「兄ちゃんは……なんだか随分と豪奢な妖怪のようだねえ」
「あ……ええ、と。鴉天狗です」
「へえ! かなり高位の妖怪じゃないか。楽しんでいっておくれ」
 辟易。溜息さえ出る程に。
 まるで昆虫の脚の様に歪んだ、何処かの誰かさんの物とは違うのだ。
 鬼のような姿であれば、彼は己を斬ったのだろうか?
 宇宙を込めた様で美しい、そう思う事でなんとか誤魔化すことにした。実際、其の頭部に生えた角はパイライト煌めくラピスラズリの様で、月光を浴びる度に美しく煌めいていた。

 嗚呼、残念だ。ハンスの溜息。――折角迷い込めたのに。
 ギフトは反転しているだろうか。そんな事よりも。そらを、とびたい。
 ――羽が抜けるのを気にしなくて良いのは、それなりに嬉しかった。
 青の鳥籠、黒の安寧。救われたものが居たとは、思えない。

 ――いざ、進めや影のパレヱド。どうか青を受け取って。
 抜け落ちることの無い羽根は諦念か、諦観か、或いは。

 絢爛豪華に音色を響かせて、世界を巡る百鬼夜行は止まらない。
 強く、羽ばたいて。
 宵空の頂上、月のソファにて君を待つ。上から眺めるのだって、ある意味特等席で素敵で、ひとりぼっちの鳥籠だ。
「……お祭りっていいな」
 男の囁き。届くことなどない。
(僕が何にもしなくたって皆が皆楽しそうで、魂が満ちている)
 華奢な指先は桜の花びらを形作る。風に割かれ、消えて、其の儘風に舞った姿が、なんだか可笑しくて笑ってしまった。

「……ねぇ、案内人さん。絢、さんでしたっけ。
 今近寄るのは申し訳ないのだけど、もし良かったらお邪魔しても?」
「? ええ、どうぞ」
「……ふふ、ありがとう。果物の飴だとか有ったりします?
 その、結構好きで。苺とか、葡萄とか、勿論林檎も」
「うん、あるよ。君には……此れ、かな」
 ふわり、空から降りてきた君が、どこか酷くシニカルに見えたのだと、男は微笑みに心配の色を滲ませて。
「はい。此れは、林檎の……青い林檎の飴なんだ。
 熟しちゃいないからこそ……大切にするんだよ」

 空を、舞う。
 屹度誰にもわかりやしない。
 胸の奥に蔓延る、酷く歪んで、其れでいて尊い、此の気持ちは。


「――今日という日の、花を、」


「百鬼夜行やて……面白そうな」
 そも、仮装せんでも妖怪の類なんやけど。瞬いたのは『暁月夜』蜻蛉(p3p002599)。
 雪女と小さな雪だるまを連れた蜻蛉は、ひらりと夜に咲く。
「耳と尻尾は引っ込めて、おぐしとまなこは、銀と赤、透かした布をしゃらんと纏えば……雪女や」

「絢くんはお犬さんやの。ほな、お散歩いこか?」
「嗚呼、お嬢さんか。今宵は君の番犬になるのも悪くはないかもね」
「ふふ、嘘やよ。番犬なんて……ふふ、心強ぉなるね」
 銀の髪、赤い瞳。されど、其の声は忘れないと。絢は微笑んで蜻蛉を見つめた。
「お犬さんになっても、優しい雰囲気と可愛らしいとこは、変わってないけど……ふふ。
 ひぃふぅみぃよぉ……お仲間がよおけおる、世界は違えど懐かしい気持ちやわぁ」
「……そう、だね。俺もこの姿で堂々と歩けるのは、久方振りだ」
 柔く。されど、其の表情にある憂いは、隠しきれはしないから。
(――屹度勘のいい貴女のことだ。気付かれてしまっては、いけない)

「さあ、行こうか、蜻蛉。おれ、少しは頼もしく見えるかい?」

「今年は行ってみよう…てことは、今までは行っとらんかったの?」
「うん……情けない話、おれは、未だ長生きってだけで、力が強かった訳ではなくて、どこか後ろめたくてね」
「お気持ちが変わったんなら、それはええことやわ。もちろん、周りの人の助けもあったやろうけど…それは絢くんの心の中にないと出来んことやよ」
 ぱちぱち、瞬いた絢の、少し高い頭に白魚の指を、掌を這わせ――
「今日は、よお頑張りました」
「……は、は。何だか照れ臭いや。でも、」

 ――ありがとう。
 頭の上に乗った雪だるま。落とさぬように、そっと。犬の尻尾を揺らして、絢は蜻蛉の隣を歩んだ。


「久しぶりのこの空気、おかげさんで楽しいひとときやったよ。
 来年もまた…頑張って参加しぃや? 絢くん」
 苦笑しつつも、頷いた絢に蜻蛉は微笑んで。
「運は自分で引き寄せるもんや、出逢いもまたしかり。どこで何があるか分からへんから、ね」
「……うん、その通りだ」
「あ……そやそや。せっかくやから今日の記念の飴をもらえんやろか」
 勿論。
 告げた絢がゆっくりと時間をかけて作ったのは、雪に咲く牡丹の花の飴。
 そっと受けとり、目を細め。蜻蛉は、ゆったりと、笑った。
「食べるの勿体ないわ、おおきに」

 ――ありがとう。

 この夜のパレヱドは、終わりはしない。
 貴方の手を取る、其の日迄。

成否

成功

状態異常

なし

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