シナリオ詳細
ブラックマネーファイナンス
オープニング
●金貸屋ミノザウワー
ある男がいた。
歓楽街で働く遊女に金を貢ぎ、あといくらあれば彼女がオトせると言い張る男。
ある男がいた。
ダンジョン冒険家になってお宝で大もうけするから資金をくれとせがむ男。
ある女がいた。
王都の貴族に近づくために豪勢なドレスを次から次へと買いあさりステータスを高めるのだと主張する女。
ある子供がいた。
母親が男を次々と渡り歩き怠惰な暮らしを続けた挙げ句に借金だけを残して消えた子供。
ある集団がいた。
店を開いて一山当てようと企んだがうまく行かずに夜逃げを画策している集団。
金。
金。
すべて金。
そんな人間たちが人生の中で巡り会う、ある業種の者たちがいる。
まともに生きてまともに稼げば、きっと巡り会うこともない、マネーファイナンス。
「うちは十日で一割。ジャンプはなしだ。上限はココまで。で、いくら要る?」
俗に言う、『個人金貸屋』である。
●ローレット回収代行
「王様の法に触れたことはない。ただしやれるギリギリまでやる。自分が喰う側に回らなければ途端に喰われるのが幻想国家の摂理だ。前置きは、このくらいでいいか?」
ミノザウワーと名乗ったブルーブラッドの男。
彼は名刺をテーブルに置き、鉄のように死んだ目で言った。
「俺は金貸しをやってる。金を貸して、利子をとる。単純なシステムだ。
これだけなら『単純な商売だ』と言えたんだが、そうでもない」
ミノザウワーは地図と写真、そしてちょっとしたメモをテーブルの上に並べていく。
その一番手前にあったのは『アノマロマーセナル』という傭兵団の資料だった。
顔写真はリーダーの『カリス』。
彼らはミノザウワーから金を借りて傭兵団を興したが事業に失敗し、返済を長期にわたって滞らせた。
ミノザウワーとその部下が徴収にあたったが、武力によって追い返されてしまったという話である。
「依頼する仕事内容は簡単だ。
こいつらを叩きのめし、滞納している利子を回収してもらう。奴らに完済能力があるとは思えないから、そこまで考えなくていい。
まあ手のつけられない案件だから、完済にできればそれが最高だ」
次に、と資料を並べていく。
傭兵団をたたきのめすだけなら、戦闘力を整えれば済む話だ。
だがそれ以外の案件はなんとも目を覆いたくなるような話ばかりだった。
「とりあえず四件ある。うちの部下が病院送りにされたんでな、代行を頼みたい。
まあアプローチだけでも効果はゼロじゃないから、こっちの四件に関しては回収できなくても金は払おう。だが努力はしてくれ。こっちがナメられるようなことがあれば、金は払わない。
なに……強制ってわけじゃない。『できない』と判断したら先に言ってくれ。案件を引き下げるまでだ」
要するに、今回の仕事は二種類に分けられる。
武力をもって借金を回収するチーム。
交渉や脅し、その他強い手段で個人からの借金を回収するチームだ。
「あんたたちは『できる』連中だって聞いてる。ピンチヒッターを任せたぞ」
- ブラックマネーファイナンス完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2018年05月16日 21時05分
- 参加人数10/10人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 10 人
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参加者一覧(10人)
リプレイ
●闇金ミノザウワー『冒険くん・甲』
コンコン、コンコン。ノックの音。
淀んだ空気に満ちた部屋でのっそりと起き上がった男は、気だるそうにドアを、ほんの僅かに開けた
「ひひ……ミノザウワーさんの紹介で利子の回収に来たんですけど……えひひ……」
ドアの外。
なんとも腰の低そうな女性が、引きつった作り笑いを浮かべていた。
『こそどろ』エマ(p3p000257)が任されたのは通称『冒険くん・甲』の利子回収である。
『中々に世知辛い依頼ですね。折角働ける身分だったというのに、もったいないことです。えひひっ』とは彼女の弁だ。
冒険くんのドアをノックすると、無精髭をいっぱいにした男が顔を覗かせた。黄ばんだシャツと黄色い歯。とても冒険者を志しているとは思えない。ありていに言ってニートである。
「少しずつでも払う意思を見せてくださいよー、簡単な依頼紹介しますからー」
エマの作り笑いに、冒険くんは露骨に嫌な顔をした。
「帰ってよ。金ないから」
「そんなこといわずにー」
エマはただナメられているわけではない。ギフトの力を借りてあえて相手をつけあがらせているのだ。
いつまでも態度の低いエマに調子を良くした冒険くんが強く舌打ちをした。ビビらせれば帰るだろうと踏んだのだ。
だが、踏んだのは、作り笑いに隠された地雷である。
「――」
笑顔のまま素早く。
意識させるよりも早く。
冒険くんは部屋の中に押し込まれ、転倒し、マウントをとられ、首にナイフを当てられていた。
「あなたの売れそうな部分をイカれた貴族に売りつけて回収してもいいんですよ?」
エマから笑顔が消えていく。
まるで喋るナイフのような表情と声色に、冒険くんは思わず失禁した。
彼が死にものぐるいで部屋中から小銭を集めて差し出したのは、言うまでも無いことである。
●闇金ミノザウワー『傭兵くん』Aパート
「ってことでどうです? お金返しませんか? 今ならまだ傭兵として、再出発は可能だと思いますよ? このタイミングでお金を返すとこうなります」
傭兵団アノマロマーセナルの事務所兼自宅前で、陰陽 の 朱鷺(p3p001808)は声も大きく語りかけていた。
「『お金に意地汚く、弱い者には強いが、敵の強さは解る傭兵団』……しかし今返さないと、『お金に意地汚く、弱い者には強く、敵の強さが解らず、身の程を知らず、一般人に毛が生えた程度の強さの詐欺師集団』。どうです? 今返した方がお得感あるでしょう? あぁ、返さなければ、『損得勘定も解らないオツム』が追加されちゃいますね」
「うるせえ、ぶっ殺してやる!」
目を見開き、剣を抜いた傭兵くん。彼が二束三文で雇ったというホームレスギリギリの傭兵が四人ほど現われ、朱鷺の前へ展開した。
「金は払ってくれるんだろうな」
「こいつをぶっ殺したら身ぐるみ全部はいでいいぜ」
「そうこなくっちゃ」
舌を出して笑う男たち。
朱鷺は『詐欺集団ですら無くなりましたか』と手を翳し、式符を取り出した。
ナイフを逆手に持って襲いかかる手下その1。
木の陰によりかかって様子を見ていた『『幻狼』灰色狼』ジェイク・太刀川(p3p001103)が姿を見せ、手にしていたリボルバー拳銃を連射した。
「当たり所が悪くても恨むなよ」
「ぎゃっ!?」
「筋が通らねえ話だ。借りたら返すの当たり前だ。返す事が出来ねえなら端っから借りるな。やってることは強盗団そのままだぜ」
腕を撃たれた男は悲鳴をあげてナイフを取り落とした。
朱鷺の式符が白鴉を生み出し男へ襲いかかる。
ジェイクはゆったりと歩を進め、逃げようとする男の足を撃った。
重なる銃声。足を押さえて転がる男。
「使えねえなあ! こうなりゃあ――!」
剣を振りかざし、斬りかかる傭兵くん。
だが剣の刃がジェイクへ届くことは無かった。
素早く割り込んだ『特異運命座標』久遠・U・レイ(p3p001071)が鎌を翳し、剣を強引に弾いたがゆえだ。
「な――」
「これじゃあ、同情はできないな」
レイはため息をつきながら、傭兵くんの腹を蹴りつけた。
派手に蹴り飛ばされ、事務所の中へと押し戻される傭兵くん。
「この女っ、てめえからもはぎ取ってやる!」
別の男が粗末な拳銃を取り出し、レイへと発砲してきた。
が、レイがやったことといえば首を大きく傾けたことと、踊るように歩をすすめたことだけ。
それだけで銃弾を回避し、至近距離まで詰め寄って鎌の刃を首にかけていた。ため息が、もうひとつ。
「クソックソッ、あのヤミ金野郎! 病院送りにしてやったのに、大人しく諦めてろよ!」
事務所の中で装備の突っ込まれた箱をあさる傭兵くん。
そばで昼寝をしていた部下の男に刀を放り投げると、すぐに戦えと命令した。
「ええっ、もう誰もこないはずじゃ――ぐわっ!?」
途端に粉砕される窓。
窓枠ごとぶち抜いて、『朱鬼』鬼桜 雪之丞(p3p002312)が屋内へと飛び込んできた。
まるで鬼のような籠手と脚甲で床をごろんと転がると、起き上がったばかりの男めがけて抜刀。首元めがけて振り下ろす。
咄嗟に刀を抜いた男がそれを受け止めるが、衝撃に耐えきれずに寝転んでいた木箱の上から転げ落ちた。
刀の軌道がツバメのように鋭くターンし、大上段。両手でしっかりと握った刀を、雪之丞は強烈に振り切った。
木箱が――粗悪品だったのだろうか、見事に真っ二つに切り裂かれ、中に入っていた砂があたりに漏れ出した。
「金を借りて返せず、あまつさえ追い返すとは。言い訳を聞く気にもなりませぬ。せめて、己が何から金を借りたのかは、自覚すべきでしょう」
「し、知らねえ! 俺は関係ねえよ!」
「可能な限り、命までは取りませぬ。死人は、借金を返せないですから」
問答無用、とでも言うように詰め寄っていく雪之丞。
傭兵くんは壁際をはうようにして逃げだそうとしたが、入り口から堂々と入ってきたレン・ドレッドノート(p3p004972)にたちまち襟首を掴まれた。
「傭兵なのだろう? 戦士として、意地とプライドを賭けて勝負というやつをしよう」
「う、うるせえヤミ金の手先のくせして、とっとと帰れ!」
「まあ、その態度でもいい」
どんな理由だろうと戦う理由にはなる。このときのレンのスタンスは、相手がどうであれ戦うのならそれでよいというものだった。
「日ごろの鬱憤を晴らすつもりで、お互い良い勝負としゃれこもうじゃないか」
顔面に幾度もパンチを浴びせる。
三発目で吹き飛んだ傭兵くんは背後のガラクタ置き場に突っ込んだ。
立ち上がり、剣を乱暴に振り込んできた。胴体をねらった横振りだが、剣の重さに振り回されていた。
だから、レンが刀身を蹴り上げれば剣ごとよろめく。
「悪いが手加減はしない。拳闘士なんでな」
殺さないことだけは保証してやる。
と言った風に、レンは鼻血を流しながら殴りかかる男の顔面に、強烈な拳を叩き込んだ。
鼻の砕ける音がした。
●闇金ミノザウワー『ブランドさん・甲』
お気に入りの鞄をさげて貧民街を抜ける『しまっちゃう猫ちゃん』ミア・レイフィールド(p3p001321)。
彼女が担当しているのは通称『ブランドさん・甲』の利子回収である。
ドアをノックしてしばし。
全身をブランドものの服で着飾った女が現われた。
「はじめまして、ミア……なの。白猫の獣種で、配達屋をしてる……の。よろしく……にゃ♪」
愛嬌のある挨拶に、女は嫉妬の混じった目つきで頷いた。
ピリピリした女だった。常識が通じない、ないしは話を聞かないたぐいの女だ。
婚期を逃しかけ、それでも一攫千金を狙って高額なダイスを振り続ける女。
「払ってもらえないか……にゃ? お金は、そのたくさんあるドレスを売れば、作れると思う、の」
ミアのそんな提案を、女はヒステリックに突っぱねた。
「嫌よ! これがないと貴族の目にとまらないでしょ!?」
実際ミアの手腕ならブランド品を相場より高い値段でお金に換えることができただろう。その辺はプロだ。だが手放したくないという。
ならば。
「貴族は……豪華な服は見慣れてる、の。むしろ、服はボロだけど、磨けば光る……みたいな子のが魅力的なはず、なの。でも、それには元が良くないと……なの」
「そんなの、やってみなくちゃわからないじゃない!」
反論、ですらない。耳を塞いでわめくのと同じような反応だ。
ミアは『他方面で勉強して魅力的な女になるべき』『貴族も領地を治める以上仕事をしてる。中身を磨いてできる女を目指すべき』といった説得を試みたが……。
「嫌って言ってるでしょ! 出てって!」
ブランドさんはヒステリックにミアを部屋から閉め出し、扉を閉めてしまった。
この後ミアは根気強くねばり続け、なんとか利子分だけは回収することができたという。
●闇金ミノザウワー『ブランドさん・乙』
貧富の差が激しい幻想国家では、貴族の目にとまればワンチャン……と辺りもしないルーレットを回し続ける女がそれなりにいる。
借金を重ねてでも、当たれば勝ちだと言わんばかりだ。
『仮面女皇』サブリナ・クィンシー(p3p002354)が対応したのもそんな相手だった。通称『ブランドさん・乙』。
「毒殺、刺殺、絞殺、撲殺に事欠かず。相手も正室、側室、王、他の貴族、民と選り取り見取り。コレを幸せというなら引き止めないがな」
サブリナは王のごとき風格で、貴族の闇について語って聞かせていた。
「貴族は表面を気にするから上位貴族ほど同じか更に位の高い貴族の家柄を求める。だから貴女のような力の無い平民では嫁げたとしても貧乏貴族の側室だろうな、きっといまよりも貧しい暮らしだ」
ブランドさんはそんなはずないと反論するが、言葉に覇気は無かった。
「しかし商人はならば話は違う。有能であれば有るほど商売に必要な『道具』として金を使うであろう。そしてその商人を乗っ取る程有能にだってなれる。若しくは貴女が店を開いても良い。知っているだろ? 貴女と同じ貴族に取り入りたい不幸な女が何を求めるか、どれだけの金を使うのか。簡単な事じゃないか」
「ほ、本当……? じゃあ、私、商人の嫁になればいいのね!?」
当を得ない返答に、サブリナはほんの僅かに目を細めた。
楽をして成功したい人間。
他人が施してくれるのを当然と考えている人間。
そんな人間の愚かさを目の当たりにしたがためである。
これ以上は言っても無駄だろう。
「まぁ、何処かの巨大な腐敗国家で王を務め臣下に殺されかけた小娘の戯言と思ってくれ」
サブリナはそう締めくくって、アドバイス料代わりに利子分にあたるブランド品を持ち帰った。
●闇金ミノザウワー『冒険くん・乙』
「お邪魔します! 余が来たぞ!」
粗末な鍵がかかった扉を、ほとんど強引に押し開ける『アルバイト』レグルス・ワンフォーオール(p3p002733)。
冒険くんは布団に寝転がっていたが、レグルスの圧とカリスマにおされたかのように跳ね起きた。
「今日は借金の取り立てに来たのだが……最初にこれだけは聞いておきたい」
締め切った窓やカーテンを開き、光と風を取り入れる。
逆光をつけながら、レグルスは振り返った。
「冒険者稼業を一度でも楽しいと思ったことはあるか? ダンジョンに潜る時にワクワクしたことは? 宝箱を開ける時に胸を高鳴らせたことはないだろうか?」
冒険くんが冒険者を志したのは、お宝をゲットして大もうけするためだ。
とはいえ、そうなるまでには大もうけした実物を見てきたわけで……。
「そんな風になりたいと?」
「はい……」
「そりゃあ、始めはぱっとしないだろう。失敗もあるだろう。だが長く続く道の先にあるものこそ、真の宝であると余は思うぞ」
「いくらぐらいの宝ですか……?」
「お金じゃないさ」
レグルスのポジティブな口調に、冒険くんは少しだけ気持ちが傾いているようだった。
「どんな理由でも、今までの生活を捨てるのは勇気のいることだったと思う。もう一度、勇気を出してみてほしい!」
レグルスはそれから、あちこちで調べてきた冒険者向けの求人情報を提示して返済プランを話し合った。
うっかり利子分の回収を忘れていたが、それはそれ。この先まっとうな冒険者になった冒険くんが、地道な返済をしてくれることだろう。
●闇金ミノザウワー『傭兵くん』Bパート
「はぁ。ちょっと計算すれば分かると思うけどなぁ」
「こいつらにかける慈悲はねえ。利息分はきっちり回収するぜ」
傭兵くんをふん縛ったレイたちは、早速利子分の強制回収を始めた。
あちこち物色するのは当然として……。
「金の在り処をゲロっちまいな」
「ねぇ。腎臓って2個あるんだけど……べつに肝臓でも構わないよ」
などと脅して隠した金のありかを吐かせることにした。
一部の金を隠し持っていたようで、それを引っ張り出すと……。
「チッ! しけてんな。今日はこれで勘弁してやらあ」
「これから頑張ってしっかり地道に働きなよ。どうしても死にそうになったら手伝いに来てあげるからさ」
といって、アノマロマーセナルの事務所兼自宅をあとにした。
●闇金ミノザウワー『貢ぎくん』
夜の歓楽街をゆくひとりの男。通称『貢ぎくん』。
商売女にお金を貢いでは失敗を繰り返す彼を、裏路地から誘うものがあった。
漂う色香はまるで獣を引き寄せるがごとく。
その白い肌は人とは思えぬほどで。
筒状のスタイルは男を否応にも興奮させた。
「私、この街にまだ慣れてなくて」
っていうかちくわだった。
『ご当地ゆるキャラ』ちくわちゃん(p3p005218)だった。
しかし、なぜだろう、どうみてもちくわなのに男は……というか周りの人はまるで違和感を覚えないようだった。だからみんなも覚えて置いてくれ。
ちくわちゃんは美少女。リピートアフターミー、ちくわちゃんは美少女。
貢ぎくんも貢ぎくんで『ちくわにも穴はあるんだよな』つって鼻息を荒くする始末である。
そんな彼に、くねりくねりとキャットウォークで近づくちくわちゃん。
くびれの一切ない腰がむにんむにんと揺れ、貢ぎくんの鼻息を更に荒くさせた。
「案内ついでにデートしてくれたら嬉しいなっ☆」
こうしてデートが始まった。
一緒にブランコを漕いだり、シーソーを上下させたり、滑り台を永久ループしたりした(エッチな映像のかわりにイメージシーンを流しております)。
一種倒錯的とも言える行動は日に日にエスカレートしついには週五で遊ぶ日々。
そんなある日。
「夜の世界は気を許せる人なんていなくて、ずっとひとりぼっちで。でも貴方にだけは心を開けそうなの」
今にも壺を売られそうな文句でも、貢ぎくんは迷わず『なんでも相談してよ!』と身を乗り出した。
そしてある日のこと。
「所詮夜の世界は瞬間の幻。分かったら自分の身の丈の範囲で遊びなさい」
どうみてもちくわでしかないちくわちゃんが大人のオンナみたいなことを言って、貢ぎくんの貢いだ品を持って去って行った。
男はそれを、『夢の三日間』と呼んだという。
●闇金ミノザウワー『傭兵くん』Cパート
「借金踏み倒し目前の傭兵ですか。傭兵という職業は、信用が第一だと思うのですが。まぁ傭兵であれ、なんであれ、借りたものを返さないのは、悪党や無法者に属することになりますからね」
と、語る朱鷺。
(金をかえせないならば拳で解決。なるほど、俺も金に困ったらそうしていたかもな……)
ぼんやりと不埒なことを考えつつ歩くレン。
彼らの向かった先はミノザウワーの事務所だ。
「おう、戻ったか。他の連中もなかなかよくやってたみたいだぜ」
いかがわしい本を読んでいたミノザウワーがレンたちに手を振った。
回収した金を差し出す朱鷺。
ご苦労さんといって、ミノザウワーが報酬のゴールドを袋に詰めて突きだしてきた。
「所で……アノマロマーセナルを回収用の護衛にとりたてては?」
雪之丞がそんな提案をした。
なるほどいい考えだ。と頷くレン。
なんならローレットで雇ったらどうだ、といった話も考えていたレンである。
ミノザウワーはうーんと唸ったあと、『それもありかな』と呟き――かけたところで、事務所の奥から声がした。
「だめだ。雇えねえ」
背もたれの大きな椅子がくるりと周り、恐ろしく無表情な男が顔を見せた。
「借りたものを返せねえ奴は男として信用できねえ。人件費人付き合い機密保持、人を雇うにはリスクが生じる。そのリスクを冒してもいい奴しか雇えねえ。少なくともアノマロは問題外だ」
なるほど、と頷く雪之丞。
レンやジェイクたちもそこには同意するところだ。
それがローレットであっても、雇った次の日から金庫のお金が減っているなんてことになっては困るだろう。敵に情報を売って小銭を稼ぐなんてことになれば死活問題だ。
コインの詰まった袋をミノザウワーから受け取り、デスクにしまい込む男。
「とにかく、あんたたちはよくやってくれた。回収してくれと頼んだものをキッチリ回収してきた。自分の頭で考えられるし信用もできる。次があったらまた頼む。仲良くビジネスしようぜ」
唇の片端だけを釣り上げて、男――ブラックファイナンス社長、ヤマジマは言った。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
――mission complete!
複数のMVP候補がいらっしゃったのですが、一つしか選んじゃダメって神様がいうので、ダイス神様に聞いてみました。
「ちくわちゃんにMVP大明神をさしあげなさい」
ハハァー! おおせのままにー!
GMコメント
【オーダー】
成功条件A:傭兵団を倒して借金の利子を回収する
オプションA:莫大な借金を完済させる
オプションB:個人案件の利子回収にあたる(最悪パスしても可)
本件は『1PCにつき1件まで』の対応とします。
傭兵団を倒してから個人案件を手伝ったり、あっちこっちの案件に手をつけたりといったことはできません。1件に集中して当たってください。
またメタなシステムとして傭兵団案件の戦闘規模は、その件に参加したPCの数に比例して変わります。極端な話になりますが、最低1PCは傭兵団案件にあたってください。
『参加PC全員が傭兵団案件に突入して、個人案件は全てパス』という選択でもOKとします。
相談をして、配分を決めてください。
【傭兵団案件】
傭兵団を倒して借金の利子を回収するという条件を達成します。
『アノマロマーセナル』はアーベントロート領の東にある傭兵団です。
借金を元手に兵士を雇い、貴族や大商人の護衛任務で一山当てようとしていたようですが、仕事がずさんだったせいで失敗しました。商才がないようです。
彼らはイレギュラーズが回収にやってくるという情報を掴んでおり、出会うなり戦闘で追い返そうとしてきます。
これを倒すことで、借金の利子の回収が可能です。
地味にミノザウワーのスポンサー貴族が対応してくれるので、悪名ポイントがつくこともありません。
クラスは『傭兵』。武装やスキルに個人差はありますが、大体が物理攻撃バランス型。
この案件に参加したPCと同数前後の数と戦闘になります。
フィールドは事務所前。建物に挟まれた路上です。
【個人案件】
以下のパターンのうち一つから選んで、利子の回収を行なってください。
ミノザウワーの紹介状が渡されているので、回収代行としての身分は(今回限りで)保証されます。
手段は問われていません。交渉、説得、恐喝、軽い強盗まがいのやり方をしてもOKです。
地味にミノザウワーのスポンサー貴族が対応してくれるので、悪名ポイントがつくこともありません。
・パターンA:貢ぎくん
歓楽街で働く遊女に金を貢ぎ、あといくらあれば彼女がオトせると言い張る男。
一般的な工場に勤務する男性で基本収入は低い。
商売女にハマっており、相手が自分に強い好意があると勘違いしている。
商売女の方は普通に商売しているだけなので他意はない模様。
・パターンB:冒険くん
ダンジョン冒険家になってお宝で大もうけしようと企む男。
貴族の使用人だったが、冒険者になれば大金持ちになれると勘違いして辞職した。
借金で装備や消耗品を整えてダンジョンに繰り出したが駆け出し冒険家業は実入りが少なく、すぐに資金が底をついた。
楽してお宝を見つけ大もうけできると思っていたので完全にやる気をなくし、軽くニート化している。
・パターンC:ブランドさん
王都の貴族に近づくために豪勢なドレスを次から次へと買いあさりステータスを高めるのだと主張する女。
貴族の嫁になれば一生遊んで暮らせると夢見ている(勿論そんな事実はない)。
借金をして豪華なドレスその他を買いまくったが、結果は出ていない。ちなみに決して美人ではない。
おかげで婚期を逃しかけており、なりふり構わなくなってきている。
メタではありますが、例えばパターンAをPC2人が選んだ場合『貢ぎくん甲・貢ぎくん乙』といった具合に該当する案件が増えます。実際的にはミノザウワーがその案件を持ってきます。
どうしても一人じゃ不安だから複数人であたりたいと言う場合は、プレイングにそのように書いてください。けど一応1PCで当たれる程度の案件となっております。
【アドリブ度】
ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。
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