PandoraPartyProject

シナリオ詳細

食いたくば、奪え!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 鉄帝国北東、ヴィーザル地方。
 そこは鉄帝にありながらも、貧しい大森林地帯が広がるのみ。
 得る物も少ないこの地において、少数部族達が鉄帝国から自らの領土を勝ち取って自分の国を成立させるべく、『ノーザン・キングス』という連合を立ち上げた。
 鉄帝国としては、領土を広げようという野心を持つ者、外の強敵との戦いに胸を躍らせる者が多い。全てではないが、ノーザン・キングスが内乱を起こしたところで簡単に叩き潰せる力なき者の集まりといった印象であり、率先してその鎮圧に乗り出すことは少ない。
 そんな事情もあり、鉄帝国はローレットへとその鎮圧を依頼してきていたのだ。

 赤いドラゴンシップを駆って鉄帝付近の海を行くノルダインの集団。
「「ガハハハハ、ガハハハハハハ!!」」
 彼らはリーダーの名を冠したトラヴィス団を名乗り、ノーザン・キングスに参加しつつも自らの欲のままに近海を荒らしている。
「波は上々ね」
 前方を見渡すその海種の女性は目を細める。
 副団長のアレオレは波を見ており、前方遠くに見える漁村までの距離と到達時間を予測する。
 自然は気ままだ。海と共にあり続けているアレオレであれ、風向き、波の高さなど、すぐに予測はずれてしまう。
「今日は肉が食えるといいなぁ」
「俺は新鮮な野菜を食いてぇ。思いっきりかぶりついてやんぜ!」
 とはいえ、目安にはなる。団員達も彼女の予測を元に、襲撃の為の準備を進めていた。
「てめぇら、うまいメシをありつきたくば、存分に襲え!!」
 集団を指揮する青年は人間種。やや日に焼けたその男こそが団長、トラヴィス。
 両手に持つカットラスが全てを切り裂くその様から、海の暴風を名乗っている。
「さあ、奪え! てめぇの食い扶持はてめぇで確保しな!」
「「おおおおおおおおおお!!」」
 大声で叫ぶトラヴィス団の団員達。彼らは刃を研ぎ、弾丸を装填し、魔力を充填させて襲撃態勢を整えるのである。


 幻想、ローレット。
 現状は豊穣の騒乱が一段落し、各地の依頼が改めてクローズアップされている状況である。
「皆様、豊穣の地の決戦、お疲れ様でした」
 『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)は戦いに参加したイレギュラーズ達を労う。
 一つの大きな戦いを終えたものの、まだまだ各地では事件が起こっている。ローレットには依頼はいくつも入ってきており、イレギュラーズに休む暇はなさそうだ。
 依頼の一つとして、鉄帝北東部のヴィーザル地方で活動しているノーザン・キングスの鎮圧がある。
 ノルダイン、ハイエスタ、シルヴァンス、少数部族の集まりである彼らは鉄帝国の覇に異を唱え、自らの国を樹立しようとしている。
 ただ、彼らは一枚岩ではない。
 自らの誇りの為に自治を勝ち取ろうとしている者達。自分達の勢力を拡大しようとしている者達。自分達の強さを示そうとしている者達。そして、自分達の糧を得る為に奪う者達……等。
「ノルダインは厳しい峡湾に住み、獰猛なことで知られますが……」
 アクアベルはそう前置きしてから本題に入る。
「そのうちの一団に、トラヴィス団を名乗る……海賊を思わせる集団がいます」
 彼らは自分達の糧を得るべく、狭湾の畔にある集落を襲っているのだという。
 力を示すわけでもなく、自分達の尊厳を主張するわけでもなく、ただ、その日の食べ物を得る。それだけの為に。
「今回の依頼は鉄帝国から、ノーザン・キングスのトラヴィス団を鎮圧してほしいという内容です」
 鉄帝としても、ノーザン・キングスの名を冠して好き勝手暴れる彼らは目障りな存在だが、小悪党といった感のある彼らの討伐に名乗りを上げる者はおらず、イレギュラーズへと依頼するに至ったようだ。
 元々、ヴィーザルの地は寒冷地帯であり、痩せた土地。そこで得られる糧などさほど多くない。
 トラヴィス団が奪うことを選択したのはその環境故だったのだろうが……。
「それでも、その土地で暮らすことを選択した人々から糧を奪うことは是とは思えません」
 アクアベルはそう自らの考えを主張する。
「依頼もそうですが、彼らの行いにはっきりとNOを突き付けてほしいのです」
 どうか、よろしくお願いしますと、アクアベルは依頼を受けたイレギュラーズ達へと頭を下げたのだった。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 鉄帝の漁村を襲撃して略奪を行うノルダインの一団の掃討を願います。

●目的
 ノルダイン、トラヴィス団の掃討

●敵……ノルダイン、トラヴィス団
 規模は20人程度。人間種と海種の若者のみで構成。
 ノーザン・キングスに所属こそしていますが、自分達のやりたいことを重視して活動しており、海賊さながらにドラゴンシップを操り、鉄帝の漁村など海合いの集落を襲って酒や食料を奪う野蛮な連中です。

○団長、「海の暴風」トラヴィス
 団を率いる青年男性、豪快さを感じさせるがっちりとした肉体を持つ人間種です。
 自分達が楽しければいいという思考と合わせ、その為には殺しも厭わぬ残虐さも併せ持ちます。
 戦闘では両手にカットラスを持ち、周囲を切り刻んできます。

○副団長、「空の荒波」アレオレ
 ノルダインを支える青髪のマグロの海種女性。
 止まっていられぬ性分で、トラヴィスの豪快さに惹かれて共に行動しています。
 空気中に波を起こして敵陣へと浴びせかけてくる他、自らその波にとって突撃して来ることもあります。

○団員
 人間種と海種の混成部隊。
 血気盛んな男女で、トラヴィスに共感して自分達の快楽の為に全てを奪おうとします。
 男性は片手斧と盾を持ち、女性はサーベルを手に襲ってきます。また、人間種はマスケット銃を、海種は水を魔弾として放ってきます。

●状況
 ドラゴンシップに乗って鉄帝中央部の漁村を襲ってくるトラヴィス団を迎え撃ちます。
 駆けつけることのできるタイミングは出発後のダイスの結果によって、3パターンに分かれます。それぞれの状況を予測、対処の上でトラヴィス団を迎撃していただきますよう願います。
 なお、ダイス結果はあとがきにて記入予定です。
 
・先手をとる(00~33)……敵のドラゴンシップに乗り込んで殲滅に当たれます。
・相対する(34~66)……漁村の入り江でドラゴンシップから降りてくるトラヴィス団と対することとなります。
・出遅れる(67~99)……思った以上に敵の侵攻が早く、漁村で人々を護りつつ交戦します。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • 食いたくば、奪え!完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年12月09日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

オリーブ・ローレル(p3p004352)
鋼鉄の冒険者
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
日車・迅(p3p007500)
疾風迅狼
長谷部 朋子(p3p008321)
蛮族令嬢
溝隠 瑠璃(p3p009137)
ラド・バウD級闘士
オウェード=ランドマスター(p3p009184)
黒鉄守護
ラルス・クラスティ(p3p009215)
剛力無双
ニコル・スネグロッカ(p3p009311)
しあわせ紡ぎて

リプレイ


 鉄帝国北東部。
「ヴィーザルと呼ばれていると知ったのは最近ですが、僕もこの厳しい大地の出身です」
 小国家群の一国出身の獣種軍人である『狼拳連覇』日車・迅(p3p007500)が言うヴィーザルと呼ばれる地へとやってきたローレットイレギュラーズ達。
 その峡海付近へとやってきたメンバー達は、襲撃されるという漁村を目指す。
「ったくよぉ……、鉄帝のこういうとこ、理解はできるが好きにはなれねぇな」
 開口一番、巨大な戦斧を担いだ『剛力無双』ラルス・クラスティ(p3p009215)が悪態をつく。
「ノーザン・キングス関係の依頼は……久しいのう……。イレギュラーズとして関わるのは初めてじゃ……」
 立派な髭を蓄えた大柄で筋骨逞しいオウェード=ランドマスター(p3p009184)が海の方角を見つめる。
 ノルダイン所属、トラヴィス団。
 この峡湾を中心に活動しており、集落を襲って飲食物を奪っている野蛮な連中である。
「ノルダインの連中は本当に傍迷惑な奴等だゾ」
 ポジティブな半夢魔、『ラド・バウD級闘士』溝隠 瑠璃(p3p009137)は鉄帝育ちとあって、その存在についてそう理解していた。
「厳しい環境……厳しい暮らし……分かるさ!」
 とある世界の軍人、『白虎護』マリア・レイシス(p3p006685)が叫ぶ。
 彼女のいた世界は神と人が戦いを繰り広げる世界。やはり厳しい環境にあったのだろう。
「でも、だからこそ……協力し合って暮らしていくことはできないのだろうか……」
 他者の物を奪うのであれば、逆に奪われることもあるだろうにと、マリアは考える。それを分かち合うことができれば……。
「自分達が楽しむ為に他者の命すら弄び省みない、ですか」
 ただ、鉄帝出身の『鋼鉄の冒険者』オリーブ・ローレル(p3p004352)は目つきを鋭くして。
「是非も無し、慈悲も無し。ここで全員始末します」
「いつ餓えるかわからぬ村に賊の略奪か……。ワシが居る限り略奪などさせんワイ! ガハハハ!」
 同調するオウェードが豪快に笑う。
「ま、奪うなら、当然奪われることもあるよねってことで」
 山に囲まれて自然と共に育った『蛮族令嬢』長谷部 朋子(p3p008321)はというと、略奪そのものを否定するわけではないようだが。
「今回は依頼人側に回らせてもらうよー!」
 奪う覚悟があるなら、奪われる覚悟もあるのだろうと朋子は言っているのだろう。
「生きる為に奪う事を否定する事は出来ませんが、楽はいけません」
 誰かを襲うなら、誰かに襲われる事も無いとだめだと、迅も同意して語る。
 この地で思うまま振舞えるのは、強者のみ。それが鉄帝という場所だ。
「さあ、我らを倒してその証を立てると良いでしょう!」
 両手の拳を強く握りしめ、迅は向かい来るノーザン・キングスの一団の前に立ち塞がる。
 ローレットのイレギュラーズも一枚岩ではない。
 ただ、間違いなく、今回襲撃してくるトラヴィス団は倒さねばならない。
 その認識だけは同じくし、メンバー達はその漁村を目指すのである。


 トラヴィス団はドラゴンシップを使い、漁村を狙っているという。
 その移動は多くを風や潮流に頼るが、それらの強弱によって襲撃タイミングは大きく異なる。
 イレギュラーズ一行は状況に応じた作戦を立て、柔軟に対応できるようにして迎撃に当たる。
 先んじて攻め込むことができるなら、ドラゴンシップに乗り込んで制圧すればよし、丁度出くわしたのであれば浜辺で迎撃すれば良し。
 ただ、こちらが出遅れてしまった場合が問題だ。
 その場合、オウェードや白髪から長い獣耳を生やした『しあわせ紡ぎて』ニコル・スネグロッカ(p3p009311)が村民の避難に当たる手はずとなっている。
「頼りになりそうな感じが出せればいいわね!」
 とは、ニコルの談である。
 同時に、目についた襲撃する敵団員をマリア、迅、瑠璃、ラルスが片っ端から攻撃する。
 オリーブは機動力でかき乱し、朋子は漁村内の物資集積所を即座に確認してそこを狙う団員を叩く。
「物資を台無しにしちゃったら、元も子もないからね」
 人を護ればいいというわけではない。敵の狙いは物資なのだから、それを守ることも重要と朋子は認識していたのだ。
 最悪の状況も想定しながらも、イレギュラーズ達は急いで漁村へと駆けこんでいく。
 ……まだ、漁村は無事だ。人々も何事もなく過ごしている、と思いきや。
「「ガハハハハ、ガハハハハハハ!!」」
 沖の方から聞こえてくる耳障りな笑い声。
 それらこそ、この漁村を襲わんとするトラヴィス団である。
「さあ、奪え! てめぇの食い扶持はてめぇで確保しな!」
「「おおおおおおおおおお!!」」
 大声で叫ぶ連中は漁村の入り江へと乗り入れて来る。
「あらあらあら、元気がいいわね!」
「ギリギリ間に合ったようだね!」
 ニコル、マリアが大声を上げ、自分達の存在を示す。
「ちっ、邪魔者は蹴散らせ!」
「「うおおおおおおおおおっ!!」」
 叫ぶ団員達に、瑠璃が問いかける。
「戦闘民族だか略奪国家だか知らないけど……、略奪を行うなら自分も強者から奪われる覚悟位は出来てる筈だよね?」
「「奪え奪えええええ!!」」
「「酒だ、肉だ、ごちそうだああっ!!」」
 ただ、相手にそんな気持ちはない。今回もまた自分達が思うままに欲しい物を奪い取るだけだろう。
「なんというか、皆さん『幸せ』いっぱいという感じ! わたしもぜひともあやかりたいものだわ!」
 ニコルは向かい来るノルダインの集団の表情に刹那喜ぶが、すぐに眉を顰めて。
「でもでも、襲われる人たちは『幸せ』ではないでしょう?」
「うるせええっ!!」
 欲望のままに振舞うノルダインらはニコルの問いに対して、肯定も否定もしない。そんな敵に、ラルスは笑みを浮かべて。
「ま、一丁前に覚悟はできてんだろう? そろそろ、おイタのツケ、払ってもらおうか……なぁ?」
 聞く耳を持たない相手へ、瑠璃は妖刀を抜いて。
「じゃあ、始めようか? 蹂躙の時間だゾ」
 群がって漁村を目指すトラヴィス団を止めるべく、イレギュラーズ達は入り江に散開していく。
「全力でこの場を突破するのよ!」
「「ひゃはあああああああっ!!」」
 敵は手にする獲物で強引に道を切り開き、漁村の備蓄食料や飲料などを狙うはずだ。
 その数は多く、ただ対するだけでは入り江を突破する団員が出てしまう。
 そいつら目がけ、迅がその名を示すかの如く素早く飛び掛かり、拳を叩き込んで殴り倒そうとする。
「さて……、奪われる覚悟は出来ているかい? お仕置きの時間だ!」
 幻影を展開したマリアも手数を活かし、武器として放電する紅雷の出力を上げ、蒼雷形態へ移行させてから砲弾として撃ち込む。
 出来るなら、気絶させて鉄帝国に引き渡そうとマリアも考えており、加減して交戦を気がけるものの、それでも命を落としてしまう敵がいるのは避けられないと見ていた。
「自らの行いを後悔しながら、死んでいくといいゾ」
 団員達もかなり素早い身のこなしではあるが、瑠璃はそれよりも速く血を啜る妖刀を団員達へと刻み込む。
 それでも、瑠璃はあくまで自身がサブアタッカーだと自認する。
(……だって、僕よりも速く、手数の多い人が2人も居るし……)
 既に前に出て、団員と交戦する迅やマリアを横目で見る瑠璃は刃を大きく振り回し、広範囲への攻撃を始める。
 その刃には彼女が調合したかなり危険な毒が含まれており、躊躇なく切りかかって毒で団員を侵す。
「命まで奪わないよう心掛ける仲間がいるけど、僕は遠慮なくいくゾ」
 その身に流し込まれた毒で苦しみ、動けなくなる者もいる中、瑠璃は半夢魔としての衝動の全開放し、団員達の精気を根こそぎ吸い尽くす。
「それじゃあ、『幸せ』にしてあげませんとね!」
 漁村の人々は襲撃を恐れて屋内、もしくは村の外へと退避している。
 突然、襲撃してきたノルダインの集団に怯える人々。
 彼らを幸せにする為、ニコルは敵の侵攻を止めることを最優先にし、加速しながら攻撃することで敵を混乱させる。
「うう、うあああっ!!」
「おい、落ち着け!」
 ニコルの術中にはまった1人が錯乱して敵味方構わず切りかかり、周囲の団員が取り押さえに当たっていた。
「オオオオオオッ!!」
 己の肉体の力を呼び覚ましたオウェード。
 団員達の援護射撃をその身に浴びてしまうものの、彼はそのダメージを気にすることなく戦略眼スキルで戦場を見回す。
「突破などさせんワイ!」
 後は気力を温存し、オウェードは入り江を突破しようとする敵を斧で叩き潰す。
「戦果を挙げれば、たらふく馳走が食べられると約束しましょう。全力を尽くすのです!」
「最悪、俺が突破して食料を奪う。安心しろ!」
 そこで、空中に波を起こす副団長のアレオレ、両手のカットラスでイレギュラーズを切り刻まんとする団長トラヴィスが団員達へと檄を飛ばす。
「「おおおおおおお!!」」
 ただ、荒事に慣れた団員達も手強い。
 盾やサーベルでこちらの攻撃を受け止め、さらにマスケット銃や水弾を発してくる。その勢いはなかなか止まらない。
「人員を潰したいところですが、やはり指揮する船長らは厄介そうですね……!」
 団員を殴り飛ばしていた迅だったが、ここは指揮役を叩くべきと判断し、率先してそちらへと攻撃を仕掛けに向かう。
 青き彗星となった迅はその速力を持って、鼓舞する力を持つアレオレへと拳を叩き込み、衝撃波と同時に発する気で敵を撃ち抜く。
「ぐっ……」
 率先して前線に出るオリーブもまた敵の状況を見て、トラヴィスとアレオレは確実に仕留めるべきと考える。
 生きて戻った者は成長し、より厄介な敵となることをオリーブは知っていたのだ。
 ただ、その前に敵の数を減らすべきと自ら乱戦に身を置く。
「ドラゴンシップの上でしたら、海種以外を突き落として始末のできたのですが……」
 冬の鉄帝の海は陸の生き物に厳しい環境だ。確かに海上ならオリーブの言うよう立ち回れたろうが、ここは入り江。人間種の敵も砂に足を取られこそするが、最後まで全力で応戦してくるはずだ。
 長剣を振りかざすオリーブは乱戦状態となる戦場で周囲の敵へと乱撃を浴びせかけていく。
 いくら戦意を向上した相手でも、傷が深ければ意識を失う。トラヴィス団の団員達も倒れる者が出始めていた。
 仲間から離れるように位置取っていた朋子も範囲攻撃を意識して立ち回り、両手の拳に地の獄の焦熱を籠めて。
「火のネアンデルタールが奥義の一つ……炎獄のデストロイバーン!」
 朋子はその炎を一気に燃え上がらせ、周囲の団員達を纏めて絡めとっていく。
 仕留められればそれでよし、そうでなくとも持続してダメージを与えられれば、仲間が仕留めやすくなるはずと朋子は考えていた。
 実際、朋子の炎に焼かれ、団員達は徐々に体力を減らしていたようである。
 そんな炎に苛まれる敵の傍へと、ラルスが躍りかかる。
(相手さん、数だけは多いからな)
 だから、ラルスは担いでいた殲斧を力任せに振り回す。
 こちらも仲間から十分な距離が取れていると判断すれば、一気に敵の殲滅をはかって。
「オラァ! 派手にぶっ飛びやがれぇ!!」 
 大斧を振り回すことで自分の周りに暴風域を生み出し、団員を薙ぎ倒してしまう。
「ぐああっ!」
「せめて、この場の突破を……!」
 身を低くして漁村への突破を目指そうとする団員達。
 それをマリアが見逃さず。
「はは! 所詮ノルダインと言っても弱い者しか狙わない戦士の誇りも無い連中か! 心底失望したね!」
「これでは自分達すら『幸せ』にはなれませんわよ!」
 マリアが挑発するのと合わせてニコルは敵陣を煽り、纏めて引き付けをはかることで漁村へと突破されることを防ぐ。
「死なねぇで済むなら、やり直しも効くだろ……」
 その手前から、ラルスが拳を叩き込んで気絶させていく。
「……ったく、我ながら甘ぇな、どうにも」
 小さく溜息をつき、ラルスはさらに残りの団員を叩き伏していくのだった。


 トラヴィス団は総崩れになりかけてはいたが、団長、副団長アレオレは健在だ。
「まだよ、我等トラヴィス団の力を見せつけなさい!」
「「お、おお……!!」」
 凛とした副団長の声が響けば、まだ戦える者達が身を起こす。
 やはり危険だと判断した迅がアレオレへと再び加速してからの強打を打ち込んでいく。
 その間に、他メンバー達が弱った団員達を叩き伏せる。
「悪いが、行かせはしない」
 迸る青い雷の砲弾が団員を貫いて倒し、瑠璃が残る団員の精気を根こそぎ奪いつくしてしまう。
「く、よくも部下達を……!」
 倒れたのは力がないからと分かっていながらも、やはり仲間意識が強いのだろう。団長トラヴィスは両手のカットラスでイレギュラーズ達の胸部や首を狙い、斬りかかってくる。
 大斧を振り被ったオウェードが威力特化した一振りで、敵将に痛烈な一撃を叩き込みはするが、相手は素早く反撃を叩き込んできた。
「こんなもんじゃないぞ!」
 更なる攻勢にオウェードも防御重視の態勢を取ろうとするが、相手の連続攻撃に苦しみ、収集器から零れたパンドラの力によって意識を繋ぎ止めていた。
 その直後、トラヴィスの至近へとオリーブが迫る。
「二度はありません。ここで必ず、自分が仕留めます」
 人々の糧を奪うこの一団はまるでヴァイキングを思わせる。
 さらに力をつければ手が付けられなくなるとオリーブは繰り返し、至近距離から切りかかって敵を追い詰めようとする。
 速度を高めようとトラヴィスが自らの身体能力を一時的に向上させれば、オリーブはすぐさま審判の一撃を叩き込んで力を霧散させてしまう。
「ちっ、厄介な真似を……!」
 思うように戦うことができず、トラヴィスも苛立ちを見せていたようだった。

 全ての団員が入り江で倒れる中、トラヴィスとアレオレだけは最後まで抵抗を止めることなく交戦を続けて。
「ハァ、ハァ……私達も国に目をつけられたってことなのかしらね?」
 荒く息をするアレオレは小さく笑い、空中に起こした波に乗って突撃してくる。
「言っただろう。これは仕置きだと」
 マリアがそれを受け止め、敵の膝関節目がけて紅雷纏う掌打を撃ち込む。
 少し離れ、トラヴィスもまた死力を尽くして豪快な剣捌きでイレギュラーズへと斬撃を見舞ってくる。
「その首貰い受けるゾ」
 だが、その剣を捌いた瑠璃が変幻邪剣で敵を惑わすと、すぐさまニコルがトラヴィスの身体深くへと音速の一撃を刻み込む。
「これに懲りたら、楽しければいいなんて理由で略奪なんてやめるんだな?」
「ハン、これ以上楽しい生き方なんざ知らねぇからな……!」
 大きく刃を振るうトラヴィスは、まだ戦意をなくしてはいないようだ。
 だが、アレオレはそうもいかず、砂地に足を取られて倒れてしまう。
 そこで、ラルスが飛び込んで拳を叩き込むが、両腕でその拳を受け止めようとしたところで、迅もさらに真上から腹目がけて鍛え上げた拳を叩き込む。
「かはっ……」
 白目を向いて意識が途絶える副団長。
「確実にとどめを刺すよ!」
 そちらへとトラヴィスが刹那注意を向けると、始原の獣として覚醒した朋子が敵の五体を噛み砕かんとし、態勢を立て直したオウェードも更なる渾身の一撃で追撃をかけた。
 全身を赤く染めたトラヴィスがカットラスを振るおうとするが、虚空を仰ぐのみ。
 すぐにオリーブが迫り、至近から切りかかってトドメを刺す。
「ぐおお……っ」
 それでも、2歩、3歩と副団長へと歩み寄った彼は、前のめりに砂の上へと倒れる。
「高い授業料だったな?」
 砂地を赤く染める団長へ、瑠璃はそう言い捨てたのだった。


 入り江での戦いを終えて。
「皆お疲れ様だよ! 怪我はないかい?」
「まあ、何もともあれ倒せたワイ……」
 マリアが仲間達の状態を確認する間、オウェードが大きく息をつく。
 ニコルが漁村を被害がないかと漁村を確認しに回るが、イレギュラーズの駆けつけたタイミングが良かったこともあり、被害はほとんどないようだった。
 一方で、倒れてしまったトラヴィス団の団員は少なくない。半数ほどの団員が命を落としており、それらをメンバー達や漁村民の力を借りて海に流す。
「君達にも何か理由があったのかい? それとも本当にただただ自分達が良ければそれで良かったのかい?」
 マリアがそう問いかけるが、答えは返ってこない。
 今となっては分からないが、マリアは死んでまで彼らを攻めることはしない。
「もし……次があるなら、皆仲良くしたいものだね……」
 生きていた者達も、全員を鉄帝へと突き出すことに。
「…………」
 団員の半数を失ったことにやや放心するアレオレ。トラヴィスも息こそあるが重体だった。
 鉄帝においては、強い者が全て。
 弱かった仲間達が命を落としたこともそうだし、奢っていた自身を含めて自らの弱さを受け止めねばならない。
「てめぇら! ノルダインだか何だか知らねぇが!」
 そんなアレオレにラルスが喝を入れる。
「そんだけ元気で腕っぷしもあるんなら、こんなとこでウダウダ中途半端な事やってねぇで、ラサにでも行きやがれ!」
 誰かに頼られて、それに応えて、腹一杯食う飯は最高に美味いと力説するラルス。
 しかしながら、野放しにすれば成長して厄介な敵となる。
 そんなオリーブの意見とマリアの意見もあって、鉄帝に突き出すことに決めた。

 また、トラヴィス団が残した物についても話し合う。
「ドラゴンシップは村の方々に上げましょう」
「積み荷ごと上げるのはいいですね」
 オリーブの提案に迅が賛同する。入り江に遺されたドラゴンシップをどうしようかと話し合う漁村民はそのまま利用することに、内部にある物資は皆で分けることに決めたようだ。
 その間、オウェードが漁村の人々に簡単な護身術や海辺と言う立地を活かした策略を伝えて。
(ヴィーザル地方の領地を得て、資源に恵まれた土地にするのもまた面白そうじゃな……)
 その最中、オウェードはそんな先の展望も思い描いていたのだった。

成否

成功

MVP

オリーブ・ローレル(p3p004352)
鋼鉄の冒険者

状態異常

なし

あとがき

 リプレイ、公開です。
 まず、こちらで振ったダイスの目ですが、「40」でしたので、「相対する」の状況で判定させていただきました。
 MVPはダイス運も絡みましたが、今回の事態に最も対処ができていた貴方へ。
 今回はご参加、ありがとうございました!

PAGETOPPAGEBOTTOM