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シナリオ詳細

獣神、顕わるる日に

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●第一印象だけで作ったエネミーだから大概行動パターンがひどい
「ぴぴー!」
「逃げろー! 良く解んないけどひよこの大群だー! ……すやぁ」
「ああっ、兄ちゃんがひよこに包まれて幸せそうに! 幸せそうに!」

「わたがしなくなった」
「えっ」
「わたがしなくなった」
「いやそんなこと言われても。と言うか食べるつもりなら何で綿菓子洗って……あっやめて! 噛みつくのやめて! あと爪引っかけて服ボロボロにするのもやめてー!」

「いいか? バナナには他の野菜と比べて遜色ない食物繊維と消化しやすい糖質が多く含まれている。しかも一食あたりに摂取するカロリーはご飯やパンなどと比べて格段に少ない。
 つまりバナナだ。バナナを食べろ。あと適度な運動と十分な睡眠時間を取れ」
「食べます! 食べますから無理やりバナナを口に突っ込むのは止めtもごごごご!」
「夫を離してください! それもう8本目じゃないですか! 離してあげてくださいお願いだから!」

●依頼主は匿名。匿名だって。私じゃないってマジで
「……以上だ」
「……ええ……」
 本日もローレットは盛況していた。
 日銭を稼ぐため、或いは実益を兼ねた趣味やら自身の信条の為やらと様々な理由で依頼を受けに来た特異運命座標に対し、死んだ目の情報屋が「来い。良いから。依頼受けてないならとにかく来い」と言って卓に着かせた後、伝えた依頼内容がそれである。
「あー……妖精郷は知ってるな?
 貴様らも知っての通り、先の戦にて魔種の支配から解放された彼の地はしばらく平穏そのものだったらしいんだが、其処に何かこう、こいつ等が現れたらしい」
 すっげえふわっとしてる。発生理由。
「現地の妖精たちは奴らを『深緑の三獣神』と呼んで恐れ戦いているとか」
 何処に崇める要素あるんだろう。
「……まあ、アレだ。妖精たちが迷惑してるから、倒してきてくれ」
 最早生ぬるい微笑みを浮かべるだけになった特異運命座標達に、情報屋も「どうにでもなーれ」って感じで敵の説明を始めた。
「先ず敵の一体、アライグマ。
 基本的なステータスは戦闘慣れしていない特異運命座標(きさま)らを4、5人相手取れる程度だが、攻撃と命中がヤバい。単体攻撃ながら誰であろうと絶対に命中して一撃で体力を0に持ち込む」
「……見た目に反して恐ろしいスペックだな」
「ただし綿菓子が大好物らしくて、持ってる間は攻撃しない。まあ食べる前に洗おうとするから直ぐに無くなるらしいが」
「ええ……?」
 要は毎ターン誰かが綿菓子あげ続けてれば無力化できる敵らしい。
「次。ひよこ。配下を合わせて数は200体程度。行動は全員で対象を包んで眠らせる能力だけ。リーダー格のひよこを除いては攻撃が一切通らないらしい。
 リーダー格――何かお腹に漢字一文字っぽい模様があるらしい――を速やかに見つけて倒してしまえば他は散り散りになるらしいから、解決方法としてはそれがベターだな」
「範囲攻撃は?」
「流石に200体が常時一か所に固まっているわけではない。集まって攻撃する際を精緻に狙いでもしない限り、相当数を射程圏から取りこぼすぞ。
 その上、通常行動以外にも反撃属性みたいに、攻撃に反応して即座に反撃する能力を持っている」
「それを覚悟の上でリーダー格が圏内に捉えられるまで、範囲攻撃を繰り返すのも一つの手だろうが」と言ったのち、情報屋は最後の敵に対する解説を始める。
「で。最後のゴリラ。此方は何というか……とにかくバナナを勧めてくる。嫌と言っても無理やり食べさせてくる」
「それに何か毒とか含まれてるのか?」
「近いんじゃないか? これを食べるとある程度体力が回復するわけだが、その回復値が貴様らの体力上限をオーバーフローすると強制的に戦闘不能状態になる」
「……ええ」
「とは言え、自傷系スキルなり仲間内でダメージ与え合うなり色々あるだろう。そこらへんは其方に任せる」
 そこまでを言ったのち、今まで解説した内容を纏めた資料を特異運命座標達に渡したのち、情報屋は早々と席を離れる。
「いや待て。受けるって言ってない」
「請けろ。妖精郷の住人と私の精神状態の安寧の為に」
 泣くぞ。真顔でそう言った情報屋に、特異運命座標らは思わず顔を見合わせた。
 敵のスペックは凡そ明らか。対処法もある程度解っているのだが……何だろう。既視感じみた悪寒と言うか。寒気と言うか。そんなものを感じるのである。
 さて、この依頼――受けるべきか。逃げ出すべきか。

GMコメント

 GMの田辺です。
 以下、シナリオ詳細。

●成功条件
『ゴリラ』『アライグマ』『ひよこ』の討伐

●場所
 ようせいきょうのひろばです。
 ひろいです。ひるです。てきいがいだれもいないです。
 てきとのきょりはじゆうです。

●敵
『ゴリラ』
 PPPユーザーの皆さんにとって、このゲームと言って真っ先に思いつくライターの一人が黒筆墨汁SDではないでしょうか。
 コメディ、熱血モノ、ミステリアスなどと多彩なシナリオパターンを持つこの方は、何よりもOP、リプレイ併せて10000文字程度と言う少ない文字数で、プレイヤーを引き込む一つの『異世界』を作り上げてしまう手腕が特徴的と言えます。
 それでいながら大半のシナリオに於ける成功条件のシンプルさは、PBWと言うゲームに慣れていない人でも入り込みやすいもの。
 PPPに慣れた人、PBWに慣れていない人、多くのユーザーに衰えぬ人気を誇るGMの一人です。
 なお今回の強制徴兵枠の一人。人のローマ字読みロゴをコラした画像を投稿するのをやめないか。

『アライグマ』
「読む」と言う行為で以て不朽の筆力を発揮する「書き手」こそ、洗井落雲GMその人と言えるでしょう。
 流行を読んで書き上げたOPは真っ先にユーザーの目を惹き、参加PCのプレイングから心を読み取ったリプレイは知らずの内に読み手をシナリオに没入させる。
 ユーザーの心に最も寄り添うこの方のシナリオは、これまでも今後も、多くの方々にとって心を満たすことと確信しております。
 今回の強制徴兵枠二人目。多分裏でこの人が一番例の呼び方で私を呼んでる。

『ひよこ』
 キャラクターを介して読む人の心を掴み、シナリオに引っ張り込む力量こそ、愁GMの実力の表れだと自分は思っております。
 OPに於いてNPC等の背景や実際の描写で読者の興味を引き、リプレイではそのキャラをPCの皆様が最大限引き立つ為のリソースに活かし、読み手(参加者様なら尚更!)の心に強い印象を残していく。
 キャラクターと言う存在が主役であるPBWでは、この才能を持つ愁GMもまた、ライターとしての力量に於いてSD陣に劣らぬ主力と言えるのではないでしょうか。
 因みに今回のゲスト枠。ひよこ牧場で捕まえるシナリオ出せなくてごめん。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。
 必要なのだろうかこの部分。



 それでは、参加をお待ちしております。

  • 獣神、顕わるる日に完了
  • GM名田辺正彦
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2020年12月05日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚
サイズ(p3p000319)
妖精■■として
カレン・クルーツォ(p3p002272)
夜明けの蝶
錫蘭 ルフナ(p3p004350)
澱の森の仔
ライハ・ネーゼス(p3p004933)
トルバドール
ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)
奈落の虹
シュヴァイツァー(p3p008543)
宗教風の恋
伽藍ノ 虚(p3p009208)
     

リプレイ

●妖精郷(異常事態)
 妖精郷の昼日向は、穏やかな空気に満ちていた。
 季節を問わず咲き乱れる草木。穏やかな陽光。妖精たちが燥ぐ声だって。
「ぴよ、ぴよぴよぴよ!」
「わたがしあらったら何も残らない……私の手には何も残らない」
「みんなゴリラになれ。ゴリラかエグザ〇ルのどちらかになれ」
 ごめん今の状況描写なしにしておいて。
「深緑の……三大獣神。僕も2、30年前に噂に聞いた覚えがある。
 時にひょうきんで、時に愉快。されど畏れよ、時には残酷な選択を迫る恐ろしい存在なのだ、とね」
「えっマジです?」
『森の善き友』錫蘭 ルフナ(p3p004350)の厳かな語りに対して『     』伽藍ノ 虚(p3p009208)が首ぐるんってして聞き返す。
 此処に来るまでの道中「ココロさんも人手集め大変ですね……情報屋と言う名の中間管理職……」とか言って著しく同情してくださったが、多分当の本人、今頃依頼をぶん投げ終えて羽根伸ばしてると思う。
 閑話休題。
「ひよこたちが、お怒り? ですの……。
 これは、捕食されるおそろしさを、知っているはずなのに、たまに、ブラウさんを、食べたくなってしまうわたしへの、罰なのでしょうか……?」
 戦場を縦横無尽に駆け巡っては妖精たちをスヤァさせ続けてるひよこに対して戦慄しているのは『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)。
 弱肉強食を理解する被食者(凄え説明だ)である彼女が、それでも覚悟を決めた様子で立ち向かっては、海種である自身の尻尾をふって隙の多さをアピールし始める。
「だとすれば……わたしも、覚悟を、決めますの。
 自慢のしっぽを振って、全力で隙だらけになって……ひよこたちを、わたしのところへ、集めましょう!」
「いやまあ、ダメージは無いから役割としては適当だけど」
「とうとう妖精郷にもとんちきの風が……」と遠い目をしているのは『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)。
 妖精郷の危機と聞いて訪れたらこのありさまで、若干来たことを後悔しても居るが、それとて最早後の祭りである。
「まあ、こんな変な依頼……とっとと終わらせてゆっくり休もう……」
 がんばってほしい。切に。
 そんな疲弊した様子のサイズとは対照的に、元気いっぱいの様子で胸を張りながら言葉を発するのは『誘いの蝶』カレン・クルーツォ(p3p002272)。
「ゴリラだわ! アライグマだわ! ひよこだわ! ……何方か全く存じ上げないのだけれど!」
「……まあ、確かにノリアだけにそちらだけに負担をかけるのも心苦しいが、お前も無理はするなよ。」
 意気軒高な彼女に対して、頭を掻きながら『トルバドール』ライハ・ネーゼス(p3p004933)が口を出す。
「一体どこの誰GMなんだ……全然わからないぞ……」と虚空を見上げながら呟いていた彼ではあるも、流石に知り合いを前線で働かせ続けることには幾らかの抵抗が働いている。のだが。
「平気よ! 危険な時はライハさんを盾にするから!」
「何て?」
「良いわよね? これも私とライハさんの仲だものね?」
 ワンパンキル特性二体いる戦場のもとで天使のような微笑みを浮かべてくださるカレンと、表情凍ってるライハはまあ、さておき。
「まさか奴がこのような依頼を出すとはな……masahiko……
 はっ、何だ今のは。俺には解らない。解らないぞ」
 依頼内容彼女の討伐に書き換えられません? 無理? そっかあ。
 何か良く分からない方向から電波を受信しているっぽい『宗教風の恋』シュヴァイツァー(p3p008543)が、びーくーる、びーくーると呼吸を落ちつけながら得物を構えた。
「ひとまず情報屋に言われた通りの作戦で行こう。そうしないとEasyなのに難易度Hardに跳ね上がりそうだ」
 そうだね。ベターな方法で戦闘に臨めば成果は見込めるからね。
「masahikoってのはそういう奴なんだ。知らんけど」
 誰かこの人をヤってください。

 ……戦闘始まるよー!(投げやり)

●ばーさす・あらいぐま
「わたがしなくなった」
「おぉ、鎮まりたまえ……!
 いずこかの名のあるヌシとお見受けするが、何故かように荒ぶるのか!」
「わたがしなくなった」
「くっ駄目だ別に巫覡でもなんでもないから全然響かないね!」
 戦闘(多分)始まってから一瞬で「すいませんあとちょっと待ってくれません?」ってアライグマにお願いしているのは『深森の棲人』ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)その人である。
 傍から見れば只のアライグマにお願いしている美形のハーモニアと言うシュールな光景だが、下手したらこの後一発でパンドラ削らされると考えれば当の本人からすれば必死なわけであって。
「サイズさん次のわたがし何時できます!?」
「今渡した! 次のはザラメ溶けるまでもうちょっと待って!」
「サイズさん次のわたがし何時できます!?」
「溶かすの早くないあのアライグマ!?」
 事前に鉄のインゴットを吶喊で加工した挙句、しっかりと着色や発電機の用意も済ませて作ったサイズと虚のお手製わたがし機が全力で唸りを上げる。
 第一目標だるこのアライグマを他の面々がしばいている間、それを創るサイズとバケツリレーしてる虚の方はある意味別種の戦場を構築していると言えるのだが。
「……もうこのアライグマに直接作って食べてもらうとかできない?」
「あなたはわたがしの妙を分かってない」
「それを秒で溶かしているキミに言われたくは無いけどねえ!?」
 半ギレしてるサイズが「はい次ィ!」と作った綿菓子をカレンに渡す。受け取ったカレンがにこやかにアライグマにそれを私に行った。
「はいアライグマさん、ご注文のわたがしよ!」
「わーい(ばしゃばしゃ)」
「ついでにエメスドライブ♪」
「いたい」
 すぱーん! と作った疑似生命がハリセンでアライグマをしばき上げる。
「……何かアレだな。ごはん食べてるだけの動物を後ろから攻撃するの、えらい罪悪感だな」
「そう? 私は心が痛むことも全くないわ! 殺しましょう!」
 言いながらわたがし差し上げつつスキルぶっぱしてるのを見て、シュヴァイツァーに加え、カレンが呼び出した周囲の霊魂たちも「うわ怖」って顔で遠巻きに眺めている。
「うーん、複数台作ってわたがし不足の事態が起きないよう留意してたんですが……不要でしたかね?」
「まあ、他の」
「腹が減っているか? ならバナナだ」
「お、おう。……他の個体がうまい具合に足止めに嵌っているからな」
 カレンと入れ替わり立ち代わり、バケツリレー交じりの戦闘に参加する虚の言葉に、バナナをもぐもぐしてるライハが答えた。
 実際、全体の体力を満遍なく削る虚の攻撃によって、ゴリラが差し出すバナナの体力回復効果は未だデメリットが働くに至っていない。なんか一部「もう腹八分目超えたんですけど」って顔してる人も居るけど、それはまあさておくとして。
 そしてもう一人のファインプレーヤー。
「ブラウさま、ブラウさま……わたしのことは、再生で済む程度にでしたら、食べても、かまいませんから……お怒りを、お鎮めくださいですの!」
「それ僕じゃないですから!?」って声が聞こえた。気がした。
 さておき、自身の『つるんとしたゼラチン質のしっぽ』をぶんぶか振りつつ、ひよこを誘導するのはノリアである。
「ぴぴぴー!」
「すやぁ……はっ、眠ってしまいましたの! み、『水鉄砲』――!」
「ぴぴぴぴー!」
「すやぁ……」
 ……ひよこたちの睡眠を誘発させる能力に対し、ルフナなどは独自スキル、鎮守森を介して対症療法を施そうとしたが、生憎この効果、状態異常では無かったりする。
 結果、目を覚ますのに役立つのは虚が全体にダメージをばらまく鎮圧の方へ軍配が上がる。とはいえ、それによるダメージが蓄積しすぎた仲間に対してルフナの回復は十全に役立っているため、無駄と言うことは全くないのだが。
 因みに、その回復役当人は。
「可愛いね、おてて小さいね。目付きが凶悪だね。大人のオスのアライグマは猛獣だからね。しょうがないね」
「わーい」
「……オスなの?」
「個人のプライバシーについてはお答えできない」
「あっはい」
 わたがしが出来るまでの間の足止め役をウィリアムと共同で行っていた。
 最悪、必中必殺のダメージについても自分が食らう覚悟であったが、存外綿菓子のできるペースが速くて単純におしゃべり(合間に回復)だけで済んでいるのは僥倖であった。
 さておき、膠着した戦況がいよいよ動き始めたのは、その数分後。
「わたがしなくなっ」
「全力を出すのは心が痛むが、そうは言ってられんのだ。滅びよ」
「あふん」
 付与強化を盛り込んだうえで撃ち込んだ何度目かのソウルストライクが、漸くアライグマを吹っ飛ばした。
 何か神秘的に光に包まれながら消滅していくアライグマ。疲弊した様子の一同。
 でもごめん、それまだ一体目なんだ。

●ばーさす・ごりら
「ほう、私を狙うか……。私のバナナが食べられないと?」
「生憎、神は大嫌いでね。第一無理に食べ物食わすだとか」
「ゴリラさんゴリラさん! 水鉄砲の反動が痛いですの! バナナをいただけませんこと?」
「良いだろう。食え。バナナのカリウムは運動に於ける筋肉のけいれんをも防ぐ」
「ありがとうですの!」
 美味しそうにバナナを頬張るノリアに対して、「空気読んで?」って顔するサイズ。
 ともあれ、第二回戦。お相手はゴリラである。
 此方に対しては小細工などは一切いらない。向こうはただバナナを差し出してくるだけであり、対する特異運命座標の側はそれを頂きつつも返す刀でぶん殴ればいいだけだからである。
「……まあそれ、個々人の腹具合によって難易度が上下しそうだけど」
「肝心の能力って捨て牌要素で、実は自分たちの胃を破裂させることが目的なんじゃ……あ、全体攻撃撃ちまーす」
 敵方が行ってくるアクションが回復一辺倒となったためにやることを喪ったルフナと、体力調節に専従し続けている虚が三角座りで会話していた。
 実際、アライグマを倒すまでにかかった時間が予想以上に長かったため、一部のメンバーは「食休みもらえません?」って顔してはいる。
「食え、バナナだ」
「あ。有難う。お礼に深緑バナナどうぞ」
「ほう、殊勝だな。ではこちらも倍のバナナを贈ろう」
「藪蛇だった! いやお構いなくって言うか房のまま口に全部突っ込まないで頼むから!」
 ビジュアル的には惨事だよね。これも。
 個人の意思にかかわらずバナナを口に押し込んでくる敵。同士討ちよろしく全体攻撃を味方に叩きこむ虚。あとひよこ布団に包まれながら戦場を行ったり来たりしてるノリア。
「うーむなんという地獄絵図、ならぬバナナ絵図……」
 どんどん瞳から光が無くなってきているライハ。
 一応、これでも真面目に戦闘は続けられている。敵方の耐久面に然したるギミックが無い以上、特異運命座標らが行う攻撃は必然的に威力偏重型のものが多く、また敵もそれを避ける気配はない。或いは避けられないのかはともかく。
「ご存じかしら? ゴリラさんはご存じだと思うのだけれど用法用量を守らないと生き物は苦しくなってしまうのよ。
 取り敢えず私を優しくどついて『カレンちゃん可哀想……』って時にバナナを進めなさい」
「そうか。可哀そうに。バナナをやろう」
「うん、話通じたようで通じてないわねこれ! ライハさんよろしく♪」
「良いかカレン。大人と言うのはな。30台後半を過ぎると食が細くなっていくんだ」
 慈母のような優しい微笑みのライハをぐいぐい引っ張っていくカレン。
「ステータス欄の罰の項目、暴食だからいけるわよ! きっと!」
「それ今のところフレーバー要素……まて、だから止めたまえカレン、私の背を掴むのは」
 うわー、という声を最後にゴリラのバナナ・エクストラアクションが働いて地に伏したライハ。食べ過ぎである。
「ライハさん! ……ゴリラ……マイフレンド……だけど!」
 仲間を倒した(胃もたれ)敵を、例え同胞であろうと許してはおけないと叫ぶウィリアム。
「ふっ、その通り。
 そこまでだ、深緑の平和を乱すゴリラめ! お前は私たちが倒す!」
 倒れた仲間(胸やけ)の屍を越え、びしぃっと指を差すシュヴァイツァー。
「……良いだろう。貴様らは未だ真のバナナを知らないようだ」
 かかってこい、とドラミングをしながら咆えるゴリラに、飛び掛かる二人。
 斬り伏す神威太刀、差し出されるバナナ。襲来するガスマスクキック。手渡されたバナナ。斬撃。バナナ。蹴撃。バナナ。どうするんだこれ。
「……なるほど、一筋縄ではいかないようだ」
 息を切らせる両者。しかし勝気に笑うゴリラが、両手にバナナを携えて叫んだ。
「……貴様らだけに見せてやる。私の必殺技、『ゴリラサイクロンストリームサイクロンジェットゴリラ』を――」
「ひよこさんそろそろ当たってくださいですのー!」
「あっ」
「……えっ」
 ノリアが撃った貫通攻撃の余波を食らって、光と共に消え去ったゴリラ。
 頭に?マーク浮かべてるノリアの背後で、青空にサムズアップしながら笑うゴリラの姿が見えた気がした。

●ばーさす・ひよこ
 で、最後、ひよこなんだけど。
 ゴリラが居なくなったので、自傷ダメージを撃つ必要もなく。
 わたがし要求するアライグマがいなくなったため、余計な行動に副行動消費する必要もなくなった。
 つまりどうなるかと言えば。
「すやぁ……」
 ――寝てるノリア。放置。
 情報屋が事前に言っていた通り、このひよこたちが行う攻撃は全員で群がって相手を眠らせる。ただそれだけである。
 逆説、ひよこたちは通常攻撃の手段すら持ち合わせていない。結果として怒りの状態異常を付与したノリアが襲われ続けるのは放置して、ひよこ達の状態異常が切れる……要はターゲットが分散する可能性が出てきたときのみ彼女を起こし、また状態異常を付与してもらう、と言うループが完成してしまっていた。
「……うん、駄目だねコレ」
 あたればラッキー、程度の間隔で範囲攻撃を撃ち込み続けるルフナだが、やはりどうして上手くいかない。
 彼の結界に対して「ぴぴー!」という鳴き声と共に、ばたばた暴れ始めるひよこ達ではあるも、それだけだ。精々相手方にとってすれば「何か嫌な感じがする」程度の間隔でしかないのだろう。
 事前に情報屋が言っていた通り、範囲攻撃は当たりづらく、また本体以外を狙った攻撃に効果は無い以上、只の戦闘では効果が高いとは言えそうになかった。

 Q.じゃあどうするんです?
 A.人海作戦。

「メカ子ロリババアカモーン! 俺はエネミースキャンで探すからそっちよろしく!」
「ノ・ジャー!」
「虚さんペンキあります? 僕こっち側のひよこ確認したら塗っていくんで」
「じゃあウィリアムさんはこっちのペンキお願いします……あっ待って逃げないで! 乾いてない! ペンキ乾いてないから!」
「何か真っ黒でびちゃびちゃしてるひよこが来たわ! ライハさん! ライハさん起きて! 胃もたれで倒れてないで!」
「いやだから何で私を盾にしようと……うわー」
「妖精の敵は倒すべし妖精の敵は倒すべし妖精の敵は倒すべし……」
「最早サイズさん壊れつつある自我を使命感だけで繋ぎ止めてるよね。うん。僕もその気持ちわかる」
「すやぁ……はっ!? も、もう残ったのはひよこだけですの!? わたしも本体探し手伝……」
「ぴぴぴー!」
「すやぁ……」

 この後。
 大体逃げ回ったり暴れたりするひよこ達と悪戦苦闘しつつも、30分くらいかけて漸く本体を見つけた特異運命座標達は、それをぺちりと叩いて消滅させることに成功した。
 斯くして、深緑の三獣神は滅び、妖精郷に平和は訪れたのである。
 ――しかし、忘れてはならない。
 未だ無辜なる混沌には、様々な脅威があふれていることを。
 そして、それらに立ち向かう事こそ、『ローレット』の特異運命座標達の役目なのであるということを!



「とりあえず難易度詐欺と心折シナリオするmasahikoが一番悪いやつなんでしょ? 知らんけど」
 ぶっ飛ばすぞおめー。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

シュヴァイツァー(p3p008543) サマニ ショウゴウヲ サシアゲマス。
オボエタカラナ キサマ。
ご参加、ありがとうございました。

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