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シナリオ詳細

<瘴気世界>火焔の精霊

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●イグニスヴール防衛線
「報告します! 魔獣の群れの対処に当たっていた冒険者は第一防衛ラインを奪還した模様。魔獣の数はまだ多数ですが各国の増援も無事に到着し、完全に押し返す態勢であります!!」
「イレギュラーズ……恐るべき力だ」
 直近、イグニスヴール王国地上付近で観測された高密度の瘴気。通称『大渦』と呼ばれるそれは幾多の魔獣が王国へ攻めてくることを示す予兆なものだった。王国はその報告を受け、多くの冒険者とギルド員を招集。来たる決戦に備えて防衛線を築いていた。
 予測よりも早い襲撃に一時は押されたものの、イレギュラーズの援軍により第一防衛ラインを取り返し、更に各国の冒険者が到着したことでこの決戦は勝利がほぼ確定したと言っても過言はないだろう。
「だが、最後まで油断は禁物だ。犠牲は最小限に抑えるように前へ伝えろ」
「はっ!」
 前線の報告を聞いたギルド長はとりあえず安堵の息を漏らす。
 大渦により生み出された魔獣の数は想定以上のものであったが、なんとか退けることができそうだ。そんな思いの裏腹に、憤怒に燃えた存在がいなければ。

●焦りと怒り
「くそ、くそっくそっくそぉぉぉ!! なんでだ、なんでこんなことに。あの無能な冒険者のどこにこんな力が!!」
 世界のどこに存在するかすらわからない、見上げるだけでめまいがしそうなほど高くそびえ立つ塔の頂で、【火焔の妖精】イグニスヴールは玉座に座りながらも怒りの拳を振り下ろした。
「精霊の力はもう残り少ねぇ。魔獣は減る一方で冒険者どもは数を増やしてる。やむ負えねぇ、この俺様が直々に手を下してやる……」

●精霊という存在
「おう、今日は集まってくれてありがとうな……」
 集まったイレギュラーズたちを前に、【元冒険者】ラナードは柄にもなく神妙な表情を浮かべていた。
「この世界にいる人間が死ぬと、灰だけが残って『魂は精霊に還る』……って言われてんだ。それはどんな死に方をしても同じなんだがよ」
 <瘴気世界>において精霊の加護を受けた核を胸に宿している人類は、寿命を含めたどんな死因でも核が残ることはなく、等しく灰になるという。その時に砕け散った核、つまり魂と呼ばれるそれは精霊に帰還すると言い伝えられていた。
「イグニスヴール王国を襲った『大渦』を作った張本人が、その王国が崇め祀るイグニスヴール張本人だったなんて、笑える話だよな……。俺にはなんでそんなことすんのか理解できねぇが……このままだと絶対に何かしでかすつもりだ。頼む、奴を止めてきてくれ」
 例のごとく今回も塔の頂上まで扉を繋げてくれるらしいが、今回は今までと話が違うようだ。情報は少ないが、とにかく戦う以外の道はないだろう。

NMコメント

 再び瘴気世界です。牡丹雪と申します。
 この物語は<瘴気世界>の続編となります。物語は個々で完結する&前回のあらすじを書きますが、過去作を見て頂けると見ると更に楽しめる世界観となっております。
 また、世界観の詳細は自己紹介欄にも記載されています。ご覧いただけたら幸いです。


●目的【火焔の精霊 イグニスヴールを倒す】
 【火焔の国】イグニスヴールを襲った大渦を作った張本人であり、世界の均衡を守っていた六大精霊の一人です。『死ぬと魂は精霊に還る』と言われている通り、イグニスヴールは精霊の力を沢山得るために強い力をもった冒険者たちをけしかけようとしました。イレギュラーズの介入によりそれは失敗に終わり、彼は精霊の力を使い果たした状態です。
 また、イグニスヴールは何かにとても怯えている様に見受けられます。
 このままでは彼は直接地上へ赴き、魔獣と戦う冒険者を葬り去ろうとするでしょう。それを阻止するため、以下に具体案を提示します。プレイングの参考にしてください。

①【火焔の精霊】イグニスヴールのHPを0にする
 イグニスヴールのHPを0にすればとりあえず彼を止めることができるでしょう。
 ただし、彼の死亡は<瘴気世界>の崩壊を招く可能性があります。

②【火焔の精霊】イグニスヴールと対話をする
 とにかくイグニスヴールのHPを0にする必要はあります。
 彼を弱らせることに成功すれば、対話も可能になるでしょう。
 上手くいけば事を優位に運ぶことができるかもしれません。

※【闇の精霊】オプスキュティオの干渉
 ターン経過により、【闇の精霊】オプスキュティオが到着します。
 彼女はイグニスヴールを生かすための鍵でもあります。

●敵対相手の情報
・【火焔の精霊】イグニスヴール
 精霊の力を使い果たし弱体化しています。
 HPと防技が低めですが、それでも攻撃力と命中の高さは猛威を振るうでしょう。
 通常攻撃に【炎獄】【追撃40】が付与されており、HPが30%を切ると一度だけ『灰ニ還ス』を使用します。

・『灰ニ還ス』
 【業炎】【炎獄】【ブレイク】【防無】を含んだ強力な全体攻撃です。
 イグニスヴールの切り札であり、使用後は3ターン行動不可になります。

●味方NPCの情報
・【闇の精霊】オプスキュティオ
 対話ターンを含め一定ターン経過すると登場します。
 六大精霊の中で唯一信仰を得られなかった一人ですが、他の精霊のことは友達で仲良くしたいと思っている一面もあります。
 戦闘中でも彼女が到着すると強制的にイグニスヴールの体力は0になり、戦闘が終了します。

●世界観のおさらい
 かつて世界の均衡を保っていた6人の精霊たちはあまりの退屈さに人類を生み出し、それを繁栄させた。だが、人類を生み出す過程の中で邪悪な力を持つ魔獣も生み出してしまい、やがて史に残る大戦争が起きてしまう。瘴気により荒廃してしまった跡地から逃れるべく人類は地底へと生活圏を移動した。
 そう願った精霊が導いてくれた際に偉人が受け取ったとされる高純度の精霊石を用いた5つの疑似太陽により、まるで地上にいるような生活を送っている。のちにその疑似太陽に惹かれるように人々は巨大なコロニーを築き、5つの国が出来上がった。
 人類は精霊に最初に生み出された種族であるため、精霊石の魔力を浴びつつ魔獣の灰を食べながら生きている。

●前回までのあらすじ
・大型魔獣を討伐したことで、イレギュラーズはこの世界でAランクの冒険者として扱われることになりました。
・【闇の精霊】オプスキュティオと交流を行いました。
・【半魔獣】ラナードはイレギュラーズの手により元に戻り、彼はこの世界で死んだことになっていますが境界案内人になりました。
・ラナードが受けた謎の少女(光輝の精霊)の依頼を完了させました。


●関連シナリオについて
 当シナリオは以下の連続シナリオと関連しています。
 よろしければ参考程度にしていただけたらと思います。

・『<瘴気世界>イグニスヴール王国防衛戦』
 https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/4564

・『<瘴気世界>オプスキュティオの退屈②』
 https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/4582

●アドリブについて
 本シナリオではアドリブが多めに含まれることがあります。
 アドリブがNGの場合、通信欄かプレイングに一言ご記載いただければ幸いです。

  • <瘴気世界>火焔の精霊完了
  • NM名牡丹雪
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年11月23日 22時10分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

回言 世界(p3p007315)
狂言回し
メルーナ(p3p008534)
焔獣
白夜 希(p3p009099)
死生の魔女
溝隠 瑠璃(p3p009137)
ラド・バウD級闘士

リプレイ

●憤怒の火焔
「まだだ、まだあの穴に群がる冒険者どもを駆逐すれば俺は、俺はあのクソ悪魔に……!!」
 憤怒に燃えるイグニスヴールは党全体に伝わるほどの熱風を発して怒り狂っていた。
 理由は明白、精霊の力を得ようとしたばかりに作り出した最大級の大渦をイレギュラーズにより阻止され、既に本来の力を失ってしまったからである。
「あっちいな、こりゃだいぶ怒ってるぜ? 今から撤退しても……」
 その塔の扉が開かれたのは本当に唐突なことだった。
 凄まじい熱風を受けながらも『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)がそんなことを言えば、『白い死神』白夜 希(p3p009099)は続くように「それ、本気で言ってる?」と真面目な表情で返す。
「いやいや、何となく言ってみただけだよ。分かっているからそう怒らないでくれ」
 イレギュラーズの突然の訪問にイグニスヴールは一瞬表情が硬直する。
直後、希と『ラド・バウD級闘士』溝隠 瑠璃(p3p009137)の顔を見て肩を震わせた。
 この二人は王国防衛戦に参加し、戦況を一変させた異世界人の一人である。
「——らか」
 玉座に座っていたイグニスヴールは血相を変えて立ち上がると、神域を侵したイレギュラーズの方へふらふら歩いていく。ピリピリと感じる殺気は相当のものだ。
「貴様らか、俺様の『食事』を邪魔したのは!!」
 刹那、イグニスヴールは既にイレギュラーズたちの目の前まで迫っていた。
 燃ゆる豪炎の拳が真っ先に希を捉える。すかさず間に割り込んだ世界がその拳を受け止めなければ、一瞬にして墜とされていたかもしれない。
「食事か。作り出しておいてお前もいいご身分だな?」
「黙れ!!」
 両手でしっかりと受け止めたにも関わらず、腕が痺れる一撃。全身の骨が軋む衝撃に世界が苦笑いを浮かべるも、すぐに次の一撃が飛んできた。
 流れるように打ち込まれた豪炎を纏う回し蹴りは世界の腹部をしっかりと捉え、物凄い勢いで吹っ飛ばした。
「話にならないわね。悪いけど手加減なんてできないから!」
 世界が吹っ飛ばされ、他の全員がイグニスヴールから距離を取るため地面を蹴る。
 『焔獣』メルーナ(p3p008534)も素早く動くと、担いでいた大砲の照準をイグニスヴールに向けながら言う。魔力が十分チャージされた銃口から放たれる馬鹿げた威力の魔法は眩いレーザーの如く一直線にイグニスヴールを捉えた。
 結果、イグニスヴールが受け止めようと伸ばした腕が消失する。
「そうか……」
 その威力と精霊の力が弱まっていたことが原因だろう。片腕を失ったイグニスヴールは、更に憤怒の炎に燃えていた。
「お前等がこの世界を荒らしている異世界の冒険者か。
 この世界の秩序とルールを乱す異端者め。
 ああ、おまえらは俺の手で確実に始末してやる!!」
 まずはお前だと、イグニスヴールはメルーナへ一気に距離を詰める。
 残った片腕が超速でメルーナに迫り、まさに彼女を強烈な一撃で屠ろうとしたとき。
「食事だと? 精霊風情が笑わせるでない」
 イグニスヴールの前に素早く立ちはだかったのは瑠璃だ。
 夢魔の彼女はメルーナを後ろへ下げながらもイグニスヴールの一撃を受け止め、その威力で吹き飛ばされないよう踏ん張りながら口元を吊り上げた。
「なんとも薄味な者の生(精)を啜ることなど食事とは呼ばぬ。
 それで満足している貴様の味もたかが知れているが、まあせいぜい貴様は美味しくあってくれよ?」
「黙……っ!」
 イグニスヴールは更に一撃、世界を吹き飛ばしたときと同じ蹴りを打ち込むが少し鈍い。
 瑠璃は燃え盛る華奢な足をすんでで回避し、逃がさないようにがっちりと捕まえた。
「いただきます!」
 彼女を中心に発動された吸精結界と呼ばれるそれは、暴れるイグニスヴールをその名の通り吸精する。この世界の均衡を保っていた精霊とだけあり、流れ込んでくる力の味も格別なものだ。
 だが、暴れる力も相当なものである。イグニスヴールは素早く瑠璃を突き放すと、結界の範囲外へ抜け出した。
「ふむ、流石精霊。それなりに強く美味であった……が、そちらに逃げていいのかな」
 結界から逃げ出たイグニスヴールを、今度はメルーナと希が挟み込むように捉える。
「火力には自信があんのよ。簡単に押し負けて堪るもんですか!」
「悪くはしないから、ちょっとは大人しくなって」
「な、しまっ……!!」
 再び撃ち込まれたメルーナの強烈な魔砲。希の影から伸びた不気味な黒針がイグニスヴールを挟み撃ちにするようにぶつかり、再び激しい爆発を起こす。
 当然、まともに食らって無事で済む筈がなかった。
「貴様……ら」
 ここまでダメージを受けても倒れないのは流石といったところだろうか。
 失った片腕を再生する力すら残っておらず、ふらふらと立っている火焔の精霊に既に勝ち目は無いように思われた。
「貴様らの負けだ……」
「っ!!」
 イグニスヴールがふと浮かべた不気味な笑みに希は嫌な予感がした。
 ——刹那。
「火焔ヨ来タレ、全ナルモノヲ飲ミ込ムハ太陽ヲモ焼キ尽クス者、我ガ名ハ『イグニス』」
「ってぇ……おい、なんかヤバくねぇか?」
 吹っ飛んで壁に埋まっていた世界は、やっと抜け出しながら言う。
 一度は消えかかった火焔が再び、激しく燃え盛り渦巻いていた。
「免レエヌ破滅、無慈悲ナ紅蓮ノ火焔ハ今解キ放タレル。燃エヨ燃エヨ、全ヲ燃ヤシ、全ヲ一掃ス……」
「うん……やばいかも」
 詠唱が進むほど火焔は強さを増していき、やがて焦げ付く臭いが鼻につくだろう。
 何となくやばい雰囲気を感じた希は、彼を盾にするように後ろへ隠れた。
 他も同じく。
「……おい、何俺の後ろに来てんだ? サクリファイスエスケープするんじゃねえ!
 畜生、死んだら恨むし死ななくても恨むからな!
 こうなりゃやってやる! そしてやるからには徹底的にだ!!」
 世界は両手と両足を広げ、そんな泣き言を言いながら守る体勢をとる。
 直後に呪文は完成した。
「灰ニ還レ」
「まさかこんな早くにリリースされるされるなんて思わなかったぜ……。
 だがお前たちは死なない!
 俺が守……うわーーーーっ!!」
 イグニスヴールを中心とした閃光のような熱風波が部屋全体に響き渡った。

「俺の勝ちだ……。
 異世界の冒険者とて、俺の切り札を受けて生きては生きられまい。
 ……だいぶ力を使っちまった。
 ——さっさと地上に行って、冒険者たちを……」
「悪いけど、そんなことさせないから」
 勝ちを確信し満身創痍になっていたイグニスヴールの視界は突如として漆黒に塗りつぶされた。

●火焔と常闇
「アハハハ、やるではないか! これは楽しませてくれた褒美ぞ」
「うぐぅ……」
 回言世界という大きな犠牲がありながらも軽い火傷を負ったイレギュラーズたちは、既に動く力すら残っていないイグニスヴールを取り囲み「さて……」と呟いた。
「我はそこそこ満足できたかのォ……説得はお前等に任せるわ。我は寝る」
 瑠璃に限っては倒れるイグニスヴールを暫く死なない程度に痛めつけていたが、やがて満足して塔の扉の方へ向かい出ていってしまった。彼女は自由人なのである。
 しばらくして、何とも言えない沈黙の空気を破ったのはメルーナだった。
「アンタね……消えたくないのは分かるけど、他に方法はなかったの?」
「……うるせぇよ」
 コテンパンにされて、沢山痛めつけられてもイグニスヴールの生意気さは健在だった。
 ボロボロでみすぼらしい姿になりつつも鋭い瞳でメルーナを睨む。
「とりあえず、貴方がばら撒いた炎の核はあるから、これで最低限回復して」
 希はここに来る前に扉の前に置いてあった炎の核を持ってくると、ため息交じりにイグニスヴールを見る。切羽詰まったイグニスヴールは苦渋の決断の末、差し出された核を口の中に入れて呑み込んだ。
「はあ。もともとアンタ達が導いて国を作らせたとか聞いたけど、それってつまりカミサマみたいなもんでしょ?
 消えてほしくないのはきっと人間だって同じでしょうが……」
「っ……」
 メルーナの言葉は至って正論で、真理を突いている。
 実際イグニスヴールはそんなの分かっていると言いたそうな目をしているし、希も同じようなことを考えていた。
「俺だって、本当はこんなことしたくねぇよ……」
「じゃあなんで!」
 メルーナが問い詰めようとした時、突如としてその存在が介入した。
「やあイグニス、久しぶりだね。暫く見ていたけれど、だいぶおいたがすぎるじゃないか」
「この声……」
 希には聞き覚えのある軽快な声調。間違いない、【闇の精霊】オプスキュティオだ。
 同時に漆黒の渦が巻き起こると、中からはオプスキュティオことティオが姿を表した。
「……何しに来やがった、無様な俺を嘲笑いにでもきたのか」
「ああ、本当に無様だ。信仰を得られなかった私程ではないけどね?」
 突然現れた闇の精霊にメルーナは少し警戒するが、ティオの存在を知っていた希は「味方だから大丈夫」とメルーナを諭す。
 ティオはイグニスヴールの肩を触ると、そこから彼に精霊の力を分け与えた。
「これで、キミなら身体の修復くらいはできるだろう?」
「っ……」
 いくら力を分け与えられたとはいえ、ここから暴れるほどイグニスヴールも馬鹿じゃない。彼は観念したように身体を再生させつつため息を吐いた。
「それで、どうしてこんなことを?」
 何か訳アリを感じた希は、ティオ立ち合いの下で質問する。
 ティオも今回はそれを聞きに来たらしく、「答える義務があるよ」と補足した。
 だが、イグニスヴールが答えた理由はティオの想像すら絶するものだった。
「リュミエールの奴が……アイルを、ウィンドを、アールを……吸収した。
 本当に当然のことだった。
 あいつは、バケモノになっちまった……」
「おい、それは本当のことなのか……!?」
 闇の精霊はいつにもなく、おぞましい寒気を感じていた。

成否

成功

状態異常

なし

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