PandoraPartyProject

シナリオ詳細

すべて、閣下の仕業。

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ノブレス・オブリージュは、嘘を吐く。

●盗賊と幻想
 ラサ地方を荒らしていた大盗賊団『砂蠍』が壊滅したが、その頭目『キング・スコルピオ』の首は未だ挙がっておらず、挙句、その残党が≪幻想≫(レガド・イルシオン)に侵入したらしい……という事は、既に多くのイレギュラーズにも伝達されているだろう。
 ≪幻想≫へと忍び込んだ盗賊達は不正義で治安維持も適当な貴族達は兎も角、イレギュラーズ達が大きく動き出した事に危機感を持ち、バラバラと小規模乱立していた盗賊団に連携の動きが見える。
 実際、盗賊によるものと推測される事件は≪幻想≫内部で多くイレギュラーズによって解決されてきた。

●ローレットへの依頼
 ……そんな盗賊に関する依頼が、ローレットへと舞い込んできた。
 内様を要約すると、『三日間の間、ある貴族邸を、盗賊達から防衛して欲しい』という事らしい。
「先日、当家へ侵入しようとしていた不審者を一名、捕えました。
 どうやら盗賊団の一味で、その末端構成らしい。彼を尋問した所、所属する盗賊団が、当家への襲撃を企てている事が判明しました。
 候補日は、三日間。しかし、偵察役の彼が捕縛された事を受け、どの日に実施されるかは不明確になりました。
 しかし、一度高まった機運は簡単には静まりません。『計画が中止となる事は無い』というのが、偵察役の言です。我々も、それを支持します」
 依頼者の男が言った。彼は、今回防衛対象となる貴族邸で使用人を取りまとめる、責任者である。
 名をパラシャントと云った。容姿はまだ若く見える。地球人類で言えば三十歳頃だ。
「詰り……ローレットの派遣したイレギュラーズが、三日三晩お宅の貴族邸に張り付いて、盗賊団の襲撃に備える、って訳か。
 しかし、偵察役の一味はきちんと捕縛出来たのだろう?
 自衛能力が在る様にも見えるし、何より金はあるのだろうから、地元の傭兵でも雇えば済むのでは?」
「ええ、我々も当初は自警団による対応を考えましたが、どうやら盗賊団の方もそこそこの手練れらしい、というのが、追加の調査で分かりました。
 イレギュラーズの皆様の盗賊撃退の噂を、私も、そして当主様もお聞きしております。
 そこで、皆様のご尽力を賜りたく……」
「分かった、分かった。
 ……因みに、その間、俺達はお宅に寝泊まりする事になる訳だが……」
 イレギュラーズの男が、意味有り気な視線でパラシャントを見遣った。一拍置いて、パラシャントは「ああ」とその含意する所を理解した。
「当家の設備は、”全て”ご自由に使用して頂いて構いません。
 自画自賛という訳ではございませんが……、≪幻想≫でもそれなりに上流の生活をご堪能していただけますよう、従者一同お世話いたします」
 それも、報酬の一部ですから。パラシャントの言葉に、イレギュラーズの男は、心底嬉しそうに頷いた。
 ―――少なくとも三日間は、食に困らない。
「あ、あと一点」
 にやにやとほくそ笑んでいたイレギュラーズの男に、パラシャントが付け加える。
「当家の当主様は、先代急逝に伴い、まだお若くございます。
 どうやら、イレギュラーズの皆様にご興味がある様子で……。
 もし可能でありましたら、当主様のお相手もしていただけますと、ご幸甚の極みでありまして……」
「やりますとも。食えるなら」
 イレギュラーズの男は、即答した。

 依頼が成立したパラシャントは、満足気にローレットを立ち去る。
「しかし、何故、当家が襲われるのか―――」
 独言した彼は、首を傾げながら歩く。心当たりが無かった。
 確かに裕福な貴族の家だ。しかし、何故……。
 偶然なのか。それとも。

●貴族様の退屈
 暇だ。
 極めて暇だ。
 ナサニエルは、忙殺ならぬ、暇殺されてしまうかの如く、暇を持て余していた。
「ナサニエル様。ローレットへの依頼、無事受理されました。
 近く、イレギュラーズが護衛として派遣されるでしょう。これで安心ですね」 パラシャントがだらりと溶けているナサニエルに言った。ナサニエルは、「うーん」と気怠気に返す。
「左様であるか」
「お命が危ぶまれる可能性もあると云いますのに、緊張感の無いことですね……。
 宜しいですか、宜しいですか? 盗賊の一味が当家を襲うかもしれないのですよ!」
「スパイスがあって、いいじゃない。人生に、一振りのスパイス」
「全く……。先代のご当主は、それはそれは素晴らしいご人格者でありましたのに。
 人命と、当家の行く末に影響があるかもしれませんよ」
「だって、暇なんだもん。
 ……暇は人を殺すんだぜ? 余、暇すぎて死んじゃうぜ?」
「はあ……」
 パラシャントは今日何度目かも分からない溜息を吐いた。
「其れを言うなら、『好奇心は猫を殺す』です」

GMコメント

●依頼達成条件
・『盗賊』から貴族家を防衛し、大きな物的・人的被害を出さないこと。


●情報確度
・Bです。OP、GMコメントに記載されている内容は全て事実でありますが、ここに記されていない追加情報もありそうです。


●現場状況
・≪幻想≫にある貴族邸宅。
・少し離れた所には街が在り、物資調達等が可能です(お金は全てロスチャイルド家が出資します)。
・シナリオは、一日目の地球人類で云う所の深夜零時になった瞬間に、貴族邸に到着する所から原則開始となります。
 終了は、三日目の深夜零時丁度です。

■貴族邸
・大きな邸宅で、三階建の豪奢や洋館が、中央棟、東棟、西棟と大別して三つの館から成っています。
 各棟の正面中央には、部屋と出入り可能なベランダが設置されています。
・邸宅正面は広い庭があり、庭園や花壇、噴水、様々なオブジェが設置されています。
 壁等の囲いはありません。
・各棟には、下記設備が例示されますが、プレイングで指定がありましたら、それがあることになります。
 また、全ての設備をイレギュラーズは利用することができます。
 基本的には、一人一室、客室(トイレ・シャワー付き)が宛がわれますが、其処以外で寝泊まりしても原則文句は言われません。
・凡そ二十名の純種の人間種が、住み込み使用人として働いています。
 『パラシャント』を始め数人は、低いながら戦闘能力を有します。

◆中央棟
・一階にメインエントランスがあり、三階まで吹き抜けています。
 エントランス正面にはそのまま二階へと上がる二股の階段があり、二階へ上がれます。裏には、裏出入り口があります。
・地下一階には、酒蔵があります。
・二階には、使用人代表の『パラシャント』の居室と、使用人控え室がいくつもあります。
・三階には、当主である『ナサニエル』の居室があります。

◆東棟
・一階には、小さな裏出入り口があります。
・客室、風呂場、大きな食堂、台所、洗濯場等があります。

◆西棟
・一階には、小さな裏出入り口があります。
・客室、風呂場、大きな図書室、娯楽室、ギャラリー、備品庫等があります。


●味方状況
■『ナサニエル』
・貴族。ロスチャイルド家の現当主。
・地球人類で云えば十代後半くらいの年齢。
・深緑の髪は肩あたりまであるミディアムヘアです。非常に美しい容姿の美少年です。
・性格はぐーたらに見えます。暇を持て余しており、本襲撃計画への危機感は少な目に見えます。
・イレギュラーズとの交流に興味を持っています。暇があれば相手をしてあげるのも一興です。
・戦闘能力は皆無です。

■『パラシャント』
・使用人。ロスチャイルド家の現使用人代表。
・地球人類で云えば三十歳くらいの年齢。
・銀色の長髪を腰で結っています。これまた非常に美しい容姿の美青年です。
・ロスチャイルド家を実質切り盛りしている有能な執事ともいうべき存在です。
・本襲撃計画への危機感を多分に有しており、一部使用人には警戒に当たらせています。
・盗賊二~三人を相手取る程度の戦闘能力を有していますが、限定的です。
・イレギュラーズ達のお願いは大体聞いてくれます。

■『その他使用人』
・戦闘能力を有する使用人が五名程いますが、パラシャント程使えません。
・戦闘能力を有さない使用人が十五名程います。
・イレギュラーズ達のお願いは大体聞いてくれます。


●敵状況
■『盗賊』
【状態】
・盗賊です。大盗賊団『砂蠍』の残党一味です。
・今回の計画に携わる盗賊は、凡そ三十名程度です。
・三日間の間に、盗賊は貴族邸への襲撃を行います。
 ある一日に集中的に行われるか、三日間全てで分散的に行われるか、定かではありませんが、
 基本的には分散的になるでしょう。
 また、分散的に襲撃が行われた場合も、盗賊人員の補充は行われません。
・妙に土地勘があります。

【傾向】
・金品目当ての犯行です。
・どちらかと云うと、出来るだけ忍び込もうとする筈です。夜間の方が、襲撃の危険性が高いかもしれません。

【能力値】
・素人では無く、そこそこ錬度のある集団です。上手く迎撃してください。

【攻撃】
 1.ナイフ、剣による斬撃
 2.銃、爆弾による遠距離攻撃
 3.格闘による打撃

●備考
・盗賊撃退が主目標ですが貴族生活を満喫出来ますので、日常パート描写としてご利用可能です。
・貴族特権を利用してやってみたいことがあれば、三日間の間は可能です(公序良俗に反しない範囲)。
 大体やりたいことは何でも出来ます(公序良俗に反しない範囲)。
・街に買い出しに行き、道具を持ち込む事を可能とします。
 ステータスシートの装備欄に無いものでも、便利過ぎない範囲で、本シナリオ中では使用可能とします。
 また、それらを利用して、何らかの罠状の物を設置することも、便利過ぎない範囲で、可能とします。
・盗賊の生死は、依頼達成条件に影響しません。捕虜にしたければ、何処かの部屋を宛がうことも可能です。
 但し、脱走等に留意して配置してください。

●まとめ
・貴族邸に二泊三日で泊まり込み、盗賊からの襲撃を防衛し、被害を抑えてください。
・折角なので、貴族の暮らしを満喫してください。

皆様のご参加心よりお待ちしております。

  • すべて、閣下の仕業。完了
  • GM名いかるが
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年05月20日 21時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (8人)

ジュア(p3p000024)
砂の仔
セララ(p3p000273)
魔法騎士
ヴェノム・カーネイジ(p3p000285)
大悪食
ミスティカ(p3p001111)
赫き深淵の魔女
トート・T・セクト(p3p001270)
幻獣の魔物
鳴神 香澄(p3p004822)
巫女見習い
リーゼル・H・コンスタンツェ(p3p004991)
闇に溶ける追憶
ミルヴィ=カーソン(p3p005047)
闘技戦姫

リプレイ


 貴族ナサニエル家の豪邸に、八名のイレギュラーズが来訪していた。
 西棟を 『双色の血玉髄』ヴェノム・カーネイジ(p3p000285)、『赫き深淵の魔女』ミスティカ(p3p001111)、『幻獣の魔物』トート・T・セクト(p3p001270) 。
 中央棟を『魔法騎士』セララ(p3p000273)、『巫女見習い』鳴神 香澄(p3p004822)、『寄り添う風』ミルヴィ=カーソン(p3p005047)。
 そして、東棟を『砂の仔』ジュア(p3p000024)、『闇に溶ける追憶』リーゼル・H・コンスタンツェ(p3p004991)、使用人代表のパラシャントが警備していた。

 三日間の貴族警備の見返りは、貴族特権の代用。
 イレギュラーズ達は、そんな依頼に取り掛かるのであった。

●一日目(朝)
「呑気な貴族様だこと……。
 退屈が嫌だってトコは多いに同意すっけど、こーゆー連中は人の迷惑考えないからネ」
 街で仕入れてきた材料を素に、使用人を動員し様々な罠を作成・設置しているミルヴィンがぼやく。
 ……深夜に此処へ着いてから数時間、今と成っては朝陽が昇っていた。
「ミルヴィさん、お疲れ様です。休憩交代の時間になりましたよ」
「お、そりゃ助かるネ」
「十分休んで下さいね」
「朝飯でも食べて、一眠りしようかナ」
 香澄の言にミルヴィが伸びをして立ち上がる。
 今回、イレギュラーズ達は賊の強襲が予想される夜間の警備を重点的に、朝・昼は配置の一名を交代で休息に充てるローテーションを組んでいた。合理的な動きであった。

 ミルヴィが食堂に向かいがてら窓から外を見ると、敷地内でリーゼルが犬を放している。
 上空付近を飛んでいる二羽の黑鴉は、ミスティカが使役する召喚獣であり、地上・空と監視網が構築されていた。
 セララの超聴力が周囲の物音をも確認し、その上、香澄が保護結界を形成し、邸宅への被弾にも考慮されているという念の押し様。
「……アタシだったら、こんな家に押し入りだなんて御免だネ」

●一日目(昼)
 西棟で休憩に入ったトートは、中央棟へと足を運びナサニエルの居室へと向かう。
 部屋には、丁度お目当ての二人が居た。
「お疲れ様でございます。トート様」
「おー、お疲れ。美少年と美青年と聞いて楽しみにしてきた!
 言っておくが恋人居るからやましい気持ちじゃないぜ。
 飽くまで、”目の保養”ってヤツだ」
 ナサニエルとパラシャントは目をぱちくりとさせる。
「トート様も非常に見目麗しくお見受けいたしますが……リストに依れば男性との事で?」
「ま、”そーゆー”こと!
 しっかし、ホント二人とも顔整ってんなー」
「パラシャントの言う通り、卿の方が可愛いらしいと思うがな」
「ん? ナンパ?
 だから、恋人が居るって言ってんだろー?」
「……余は今の所、パートナーの事は考えて居らぬ。
 しかし、卿も中々楽しませてくれそうだな」
「個人情報に反しない限り、ローレットの事は聞いてくれれば言うぜ?」
 けらけらと笑うトートにナサニエルも気を良くしたのか、「それでは」とその後色々と質問をぶつけた。

「ジュア様、食事の支度が出来ました。
 ご希望通り、様々な肉料理をメニューにいたしました」
「うん、ありがとう」
 客室で休憩中だったジュアは、メイドの声掛けに立ち上がり、食堂へと向かう。
 此処の食堂は、晩餐会を開催したりすることもあり、数十人は入れそうな広い構造だ。
 ジュアの為に調理された肉料理が、大量に用意されている。
「本当に肉祭りだね」
「御味の方も、調味料を控えめにし、素材の味を活かしております。
 食材の方も拘っておりまして、≪幻想≫のある地方の……」
 厨房から調理人らしき人物が現れ丁寧に説明をする。普段お目にかかれない高級な肉である事は間違いなさそうだ。
「じゃあ、早速」
 ぱくり。ジュアが口にすると、彼女の顔に幸悦の表情が浮かぶ。
「……やっぱり、他人の金で食べる肉は美味しいね」
 ジュアはその後も肉料理を堪能したのであった。

●一日目(夜)
 警備初日はここまで順調だ。
 しかし、日が沈み、これから愈々本番が近づいてくる、と思われた。

 ―――そして、その予想は何れ現実と成る。

 甲高い笛の音が三回。「西棟の方か」とリーゼルがパラシャントと目を逢せた。
「応援へ行きます……!」
「ボクは待機だね!」
「ああ、此処は任せヨ」
「うん、気を付けてね!」
 中央棟では香澄、ミルヴィが西棟へ向かい、セララが残った。

「当家への招待状は持ってるの? 砂蠍の残党さん。
 もしも、無いと云うなら―――、代わりに命のチップを頂いていくわ」
 ベランダから侵入してきた三名の盗賊を前に、ミスティカが冷たく言い放つ。
 実際は敵の侵入前に察知しており、残る二名がまだ外に居て、そちらは既にトートとヴェノムが対応に向かっていた。
「ふん、小娘如きが。
 怪我したくなかったらさっさと退きな」
 数も力も有利。盗賊は余裕の笑みを浮かべるが、
「……若い躰も悪くないわね」
 ―――過小評価も甚だしかった。

「……やってるねぇ」
 響き渡る悲鳴は、汚く低い声。目を覚ましたナサニエルにも、盗賊のものである事は良く分かった。
「賊をとっ捕まえたぜ、ナサニエル様!」
 少し服が汚れたトートが手でVを作りながらパラシャントと居室に入ってくる。
「やるではないか」
「やっぱ、貴族って大変だぜ。
 お金はあるかもだけど、一般市民のほうが絶対気楽だよなー」
 パラシャントは安堵の溜め息を吐いていた。

●二日目(朝)
 昨夜、盗賊五名の襲撃が在ったが、各種索敵の御蔭もあって迅速に鎮静化出来た、という事がパラシャントにより全員に通達された。
 そんな中セララは、ナサニエルに呼び出され、暇潰しに付き合わされていた。
「……だから、遺跡探索に怪物退治、運び屋に恋愛成就までなんでもあり!」
「ふむ。実に興味深い話だな!
 もっと聞かせてくれ給え」
 ナサニエルがソファの上で胡坐をかき、話の続きを請う。
 グランガラド遺跡の話。
 東の村へ薬を届けに行った話。
 他者の時間を食べる怪物との激戦。
 ナサニエルにとってはそのどれもが新鮮な冒険譚だった。
「貴方の話も聞きたいな。貴族の生活って良く分からないから」
 話が集束してきた所で、セララが話を振る。
 当のナサニエルは「うーん」と頬杖を付きながら天井を眺めた。
「貴族と云っても地方貴族だから、其処まで大層な事は無いね。
 ……此処だけの話だけれどね。余は、貴族になど成りたくなかったのさ」
「これだけ豪華な生活が出来るのに?」
「満たされた生活は、何れ誰でも飽く。
 むしろ、満たされぬ生活の方が輝いている物だと、余は思うがね」

 休憩時間となったミルヴィも、やっぱりナサニエルに召喚された。
 彼女の場合はギターの腕前がある。
 各地を旅した話や面白かった物を、音楽を交えて伝えた。
「遜りはよい。卿の素のままで話すが良い」
 と途中でナサニエルが言った為、ミルヴィは従者口調を解いていた。
「何かアンタの自慢したそうな話とか無いの? じっくり聞いてあげるケドさ」
「自慢? 無いねぇ。……しかし、卿の生き方は”自由”だな。
 自由は良い。しかし、責任も付き纏うな」
「ああ。汚い事もするし、命取られたって、文句は言えねェしサ」
「覚悟が無いのだな、余には」
 そう言ったナサニエルの顏は真剣だった。ミルヴィは頬を掻く。
「……連れてってやろうか、外」
「木偶の坊でも当主は当主。居なくなれば使用人も民も路頭に迷う。
 ……けれど、まあそうだな、そんな”不可抗力”でもあるのなら……」
 ―――呑気な貴族。そんな彼の奥底を、ミルヴィは覗いた様な気がした。

●二日目(昼)
 ヴェノムは、パラシャントと休憩時間が重なったのを見計らい、彼に図書室の案内を頼んでいた。
 パラシャントを見遣る。最適化された動きは従者として満点。
 彼なら主の為に―――、”其処”までするのかもしれない、か。
「執事先輩が一番面白そうっす」
「……いえ、滅相もございません。私は只の従者です。
 何の取柄も、面白くも無い男ですよ。
 貴女の方が十分興味深くございますが」
 穏やかに微笑したパラシャントは、ヴェノムの触腕を嫌味の無い視線で見遣る。
「僕は通りすがりの只のアイドルっす。
 ―――因みに、”上手の猫は爪を隠すらしい”スけどね」
 ヴェノムが口の端を歪める。パラシャントは微笑んだままだった。
「執事先輩は、盗賊と内通何かしてないスよね?」
「……成る程、そう来ましたか。確かに、私が内通していれば、賊の動きも納得できます。
 しかし、カーネイジ様。
 私は、ナサニエル家に仕えているのであって、ナサニエル様に仕えている訳では無いのです。
 これは非常に大きな違いなのでございます―――従者にとっては」
「これは失礼ッス。
 ―――じゃ、御当主自身が、という可能性は?」
 パラシャントは目をぱちくりとさせる。
「それこそ、御冗談を……」

(やー、貴族様のご機嫌をとるのもお仕事かな)
 そう考えたジュアがきちんと入室許可を取った上、物質透過でナサニエルの居室へと入っていった時は、
「―――」
 眼を真ん丸にさせたナサニエルが金魚の様に口をぱくぱくとさせる様子が可笑しくて、思わずジュアも小さく微笑んだ。
「……うむ、余はそういうのを待っていた。
 待っていたが、やはり躰には良くないな」
「意外とイタズラ好きなのさ。またやってあげようか?」
「……うむ」
 少し複雑そうなナサニエルの様子に、再びジュアは外へ透過していくのであった。

●二日目(夜)
 笛の音が一回だけ鳴った。東棟からだった。
 今日は内部への侵攻すら許さず、外に五名の盗賊の姿をパラシャントとリーゼルが確認し、すぐさま応戦に躍り出た。
 
「此処で大人しくしてるんだな。ああ、間違っても脱走など考えるなよ。
 私は別に、お前らを殺す事に躊躇は無いからな」
「くっ……!」
「それで、ここを襲ったのはお前らの意志か? 誰かの差金かい?
 ―――目的は本当に金か?」
「雇い主は居る。が、それは言えねえ。
 目的は勿論、金さ」
「ふん、まあいいさ。”大体”は分かっているんだ」
 リーゼルは盗賊を丹念に縛り上げ身動き出来ない様にした後、酒蔵へと放り込む。
 明日の朝には、地元の官憲に引き取って貰う手筈が取れた。その辺り貴族の顔も効いている。
 御蔭で、多数の盗賊を抱え込むリスクは下がった。飽くまで盗賊の端くれ。数が集まれば、不確定要素を孕むだろう。
「んじゃ、見張りは頼んだぜ」
「承知しました」
 使用人二人を見張りに付け、リーゼルは中央棟を離れる。
 ……ふと心変わりし、ナサニエルの居室前へ向かう。
 入室する訳でも無い。
 その扉を薄く眺めたリーゼルは、誰に宛てるでもなく。

「―――ナサニエル、お前何か知ってるだろう?」

 虚空に紡がれた尋問。
 無感情なその貌は、貴族の罪を見据えていた。
 そして、そのまま踵を返し東棟へと戻る。

「流石、イレギュラーズ様だ。
 悪知恵はお見通しって事かな?」

 ……そんな”閣下”の独り言は、リーゼルの耳には入らなかったが、
(悪知恵? お見通し?)
 中央棟で超聴力を使用するセララには、届いていた。

●三日目(朝) 
 肉料理を堪能し尽くしたジュアとは異なり、香澄は、ナサニエル家で用意された食事は一切手をつけていなかった。
(内通者対策として注意していますが、ひもじいですね……)
 街で仕入れてきた携帯食料をぱくり、と口に入れる。
 彼女の飲食は、持ち込んだ水と携帯食料のみという徹底だ。
(貴族的な生活にちょっと憧れていたんですよね……。
 出来ればもっと気楽な内容で参加したかったものです)
 その代わりと云っては何だが、香澄の客室には、ナサニエルとほぼ同等クラスの高級ベッドを搬入していた。

「客人を充足させられなくば、従者失格でございます」

 香澄の様子を見たパラシャントが、彼女の遠慮を頑なに拒む形で用意した物だ。
「はー。それにしても、確かに凄いベッドです」
 ごろごろとそのベッドに横たわる香澄が一人ごちる。
 そのふかふか魔力は凄まじく、病み付きになってしまいそうだった。

●三日目(昼)
 此れまでに対処した盗賊は約十名。
 ―――情報から考えると、今夜は最大の山場を迎えようとしているに違いなかった。
「やはり、少し心配でございます」
 パラシャントが言うと「魔法騎士セララちゃんが、絶対守って見せるのだ!」とセララが(無い)胸を張った。
「セララさんの言う通りです。必ず私達が守りきって見せますよ」
「ああ、万が一ピンチだったら俺が駆けつけるぜ!」
 香澄とトートの言に、パラシャントも頷く。
 これまでの内偵の結果、使用人に内通者が居ない事はほぼ確定していた。
 ……もっと云うと、大体の”裏”は取れていたのだった。

 ミスティカとナサニエルは、娯楽室でチェスに興じていた。
「富と名声を手に入れていても尚、満たされないというのは因果なものね。
 ……全ては”誰か”の望むが儘かしら」
 後二手でメイトだ。ミスティカは如何するか思案していた。
「全てお見通し、という訳か。全く、誰もかれも大したものであるな」
「それは、自白と捉えて良いのかしら?」
「チェスの話、さ」
 ナサニエルが微笑む。只のお坊ちゃまという訳でも無さそうだ。
「もうすぐ卿の勝ちだ。勝利は何時だって甘美な物。
 だか、勝利しか味わった事の無い者にとって、それは只の平凡に過ぎない―――。
 さて、どうする?」
「……どうする、とは?」
「―――卿は、メイトするかね? しないかね?」
 その言葉に、ミスティカは本の僅かに口角を上げた。
 ……彼女はそのまま駒を動かし「チェックメイト」と告げた。

●三日目(夜)
 その日の襲撃は、予想していた通り大規模なものになった。
「各自で持ち場を死守すんよ!」
 ミルヴィが叫ぶように言う。
 約二十名の盗賊は一階を中心に、全棟で正面と裏出入口を狙っている事が索敵で分かっていた。
 必然、イレギュラーズ達も分散して対応する。
「進んで殺しはしたくねェ……男としちゃ死ぬかもだけどゴメンね♪」
「うっ……」
 ミルヴィは盗賊の急所を蹴り上げると、男はは思わず蹲った。

「通しませんよ―――」
 香澄の放つ淡い魔力が、盗賊を穿つ。
 その支援を背に受けて、セララが敵へと斬り込む。
「正義の鉄槌を受けてみろ!」
 聖剣技が冴え渡れば、正しく悪を討つ―――。
「くっ……」
 盗賊達の顔は、次第に険しくなっていった。

「B級映画みたいな死に方したくないスよね?
 生きたまま齧られるの、ちょー痛いと思うっす」
「ひっ……」
 盗賊の顔が絶望に彩られる。ヴェノムの触腕が大きく口を開けた。
「蠍の頭ってどんな奴? どんな性格?」
「と、盗賊王は……。
 しぶとくて、執念深くて、残虐で……。
 精力的で理想的な『盗賊王』だったぜ……」
「強いすか?」
「強い、間違い無く強ぇ!」
「―――なんかイイ得物持ってます?」
 ごくり、と盗賊は唾を呑み込む。
「専用のクローを愛用していた……、専ら格闘戦が得意な男だったが」
 ヴェノムはそこで、満足した様に力を緩める。重要な情報だ。
 が、応援に来ていたリーゼルはまだ離さない。
「雇い主のことも言えるだろう」
「や、雇い主は―――」
 その名前を聞きだして、正真正銘”チェックメイト”。

●エピローグ
「俺、街で吟遊詩人やってて結構有名なんだぜ?
 もしよかったらナサニエル様達も遊びに来てくれよ」
「退屈凌ぎはこれで満足したかしら、お若い当主様。
 ……また招待してくれるなら、今度は花を愛でながらのお茶会にでも誘ってくれたら嬉しいわ」
 トートとミスティカに言に、ナサニエルは頷く。
「それでは卿の余興を何時か聴きに行くとしよう。
 ……もうすぐ庭園に様々な薔薇が咲く。その時にはお茶と菓子を以て歓待するぞ」

「もし何か依頼があったら、ローレットによろしくね!」
 そう言ったセララは、一冊の本をナサニエルに手渡す。彼女のギフトで、この三日間を漫画に仕上げた物だった。
 ナサニエルは嬉しそうにそれをパラパラと捲り眺めた。
「人生で最も面白い三日間であった。此れで、何時でも思い返すことが出来よう。
 ……此度の迷惑は、何時か必ず返すのでな。次の依頼を待っていてくれ給え」
「全くです。
 ……当主の不始末は、従者の不始末です。何時かまた、奉仕させて下さいませ」
 パラシャントがイレギュラーズ達に頭を下げる。

 ―――今回の事件の真相は、ナサニエルの自作自演だった、という事である。

 つまりこの騒動のいざこざでナサニエルは自由の身になろうとした、と云う訳だ。
「身勝手な迷惑野郎だナ。
 ま、根っからの悪人て訳でもねェとアタシは思うからサ」
「此れに懲りたら、反省しなきゃいけませんよ」
 ミルヴィと追撃する香澄の言葉に平時は不遜なナサニエルも「う……」と縮こまる。
「悪い子だったら、また脅かしにくるからね」
「……楽しみな様なそうでない様な」
 ジュアの言にまた複雑な顔をしたナサニエル。
「んじゃ、執事先輩失礼するッス」
「ええ、また。―――次は御手合わせでも致しましょうか?」
 出来た執事な事だ。ヴェノムは内心ほくそ笑んで軽く手を振った。

 屋敷を後にする一行。
 リーゼルは何時までも見送る貴族と従者を一瞥し、

「―――すべて閣下の仕業、か」

 無感情にその場を去った。

成否

大成功

MVP

ミスティカ(p3p001111)
赫き深淵の魔女

状態異常

なし

あとがき

皆様の貴重なお時間を頂き、当シナリオへご参加してくださいまして、ありがとうございました。

①各プレイングについて
 やるべき事が非常に多くなってしまった案件の中、限られたプレイング字数の中で、如何に適切な行動を記載するか、と云う所が、本シナリオでは課題であったように思います。その解は、参加者の皆様が結論付けた通り、『一人で出来ないことは、皆で協力しよう』と云う事だと思います。プレイングの記載内容を共通項としてまとめ、分散させるというのは非常に良かったと思います。
 精緻な人員配置に、各々特徴的な罠・細工の設置、適切な役割分担と、プレイングの完成度が全体的に極めて高かったと考えます。また、罠や細工等は、文字数の都合上、リプレイで描写されていない物も多くあるかと思いますが、判定上はきちんと有効活用されていますのでご安心ください。また、戦闘描写もかなり省かれていますが、実際はプレイング・ステータスシートを反映していますのでご安心ください。

 上記理由から、本シナリオ結果は大成功と致します。

②首謀者について
 シナリオタイトルからヒントを出している心算でしたが、勘づいておられる参加者様も居り、流石だなと感服致しました。
 貴族様も素敵なお土産を頂き改心した事でしょう。その内、イレギュラーズの皆様を『貴族体験』にご招待することも、あるかもしれませんね。

③『キング・スコルピオ』について
 PCの動きに合わせて、一部情報が開示されています。

ご参加いただいたイレギュラーズの皆様が楽しんで頂けること願っております。
『すべて、閣下の仕業。』へのご参加有難うございました。

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