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シナリオ詳細

<Common Raven>それを押すなんてとんでもない

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●大鴉盗賊団のとある失敗
 その日、大鴉盗賊団の一団――盗賊団の中でも殊更、愚図だ鈍間だと嘲られていた者達だ――はローレット・イレギュラーズや『赤犬』の警戒網を珍しく掻い潜り、遺跡群『ファルベライズ』のひとつ、圧倒的に包囲が薄いそれへと辿り着くことに成功していた。包囲が薄いといってもそこは相対評価で、不埒者が近づけば普通なら即刻対応、討伐も辞さなかっただろう。だが彼らは到達した。何故か?
「喜ばしいことだが、嬉しくねえなあ……『存在感を認識率に反映させるマント』だ? 俺達が影が薄いって言われてるようなモンじゃねえか」
「ヘヘ、仕方無ぇよう。俺達、愚図だからよう」
「お前達がそんなだからなんにもうまく行かねえんだよ! ちょっと自重しろ!」
 やいのやいの騒いでいる彼らであったが、遺跡に侵入してしまえばこっちのものとばかりの蛮行だ。彼らの言葉通りなら、彼らがいかに重視されていないか、が明らかになり、そして哀れ極まりないことも分かるというもの。
 そしてその外套の効果は、決して人相手とは限らず。
「な、なあ、こ、こ、これ……押して、見ようぜ?」
「は?」
 おどおどした団員のひとりが指差したのは、赤く塗られ、周囲に古代文字で「さわるな」「ダメ!」「押下厳禁」などと書かれた大仰なスイッチ。
 周りを見ると、あからさまなスイッチが色違いであちこちに配されているではないか。
「お、お、俺達がみ、みみ、見えない、なら……罠も、そそ、そうだ。イレギュラーズ、が、来ても……罠で潰せ、ちまう」
「一理あ……いや、無いんじゃないか……?」
「えい」
 ぽちっと。
 辿々しい口調の団員に懐疑的なリーダー格はしかし、仲間の1人がスイッチを押した事実に理解が追いつかない。表情が虚無と驚愕のあわいにあるような、まあそういう顔だ。
 直後、左右の岩壁をスライドさせて現れた矢衾……はしかし、彼らを狙うことはなかった。
「ほ、ホントだ! こっちに気付いてねえ!」
「やったぜ!」
 これはしたりと喜ぶ盗賊団。存在感のなさを喜ぶんじゃないよ。
 だが、団員の1人は楽観的ではなかった。目の前の事実を見て、首をかしげる。
「もしかして、だけど……これ、奥に辿り着いて課題らしい課題をクリアしても俺達は色宝をゲットできないんじゃねえか……?」
 ははは、そんなまさか。
 硬直した盗賊団御一行様は、その当たり前といえば当たり前の事実に硬直し、それから絶望した。そして、きた道に音を立てて現れた大穴のせいで戻るに窮し、先に進むしかなくなったのである。

●寝た子を起こす蛮行
 盗賊団が移籍に侵入してから1日後。遅ればせながら事態に気付いたローレットは、急遽イレギュラーズを招集し、遺跡の探索と攻略に向かわせることを決定した。
 事態発覚から驚くほどに早く決断されたそれには、当然ながら理由もある。
「実は、潜入された遺跡は……その、控えめにいって色んな意味で危険な遺跡なんです。遺跡内部に配されたスイッチ群はひとつひとつが強力な罠のトリガーで、最奥部、ボスフロアにあたる場所は罠とゴーレムのあわせ技。普通の盗賊団ではとても手出しできる難易度ではないのです。こちらでも、十分な情報を確認してから皆さんを送り出したかったのですが……」
 『ナーバス・フィルムズ』日高 三弦(p3n000097)は痛む頭を抑えてイレギュラーズにそう伝えた。本当なら、最奥部のスイッチの仕掛けだけでも解明しておきたかったのに。
「盗賊団に偽装能力があるとすれば、最奥部に守護者が現れても襲われていない可能性は高いです。彼らは救出というより、横から盗まれる可能性を加味して討伐したいところですが、おそらく指向性の探知能力は阻害されます。五感とそれに加えて何か、確実に察知した上で並行して撃破していきたいところです」
 実力の有無はさておき、存在を欺瞞できるのは厄介だ。横取りされた上で消えられては堪ったものではない。
「なお、最奥部ですが……既に守護者が出現しているうえで多数の罠スイッチが押されている可能性もあり、更に増える可能性があります。ご留意ください」
「罠が?」
「罠『も』」

GMコメント

 禁止されるとやりたくなる心理を「カリギュラ効果」と言うそうです。でも広告とかの「絶対〇〇しないでください」は「さよけ。ならええわ」ってなりません?

●達成条件
・遺跡攻略を達成し色宝を確保する
・大鴉盗賊団の排除
(オプション)遺跡攻略前に盗賊団を排除する

●スイッチ遺跡(仮称)
 あからさまなスイッチを多数配した遺跡。
 その全てが罠……というわけでもなく、罠と水薬類が降ってくる「サービス」とがある。が、判別は不可能(全部「絶対おすな」系の記述があるため)。
 既に起動されている罠もあるが作動はしていない(=イレギュラーズに反応し攻撃してくる)。
 落とし穴、小型地雷、矢衾、etc...
 最奥部に到達すると、壁一面のスイッチ群と足元にステルスしたスイッチ、既に起動している番人(初期3)がお出迎えしてくる。
 最奥部の広さは50~60m立方。

●番人(初期数3)
 遺跡最奥部に鎮座する番人。
 基本的に物理通常攻撃のみを行う。通常攻撃には「ブレイク」が伴い、初期3のうち1体、そして追加個体の一部は「必殺」を伴う。
 BSは不明だが、軽微なものを多数付与したうえで「呪殺」してくるタイプがいる模様。

●スイッチ
 壁に配置された大量のスイッチ。すでに1/3程度押されている。
 毒矢、鉄球落下、5m四方の落とし穴、万人の追加、HP全快薬(レア)、AP全快薬(めっちゃレア)などが配置されている。

●大鴉盗賊団×5
 特段にネームド級の手練はいない。
 が、存在感が薄く特殊な外套で身を隠しているため、素で「ブロッキング」「ステルス」発動状態にある。
 また、「超〇覚」「温度視覚」などの探知能力は複合して使用しないと対象を発見しづらい。
(逆に言うと「ハイセンス」は複合能力のためこれだけで探知確度は上がる)
 実力はそれなり。各個撃破ならそこまで苦戦はしないだろう。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <Common Raven>それを押すなんてとんでもない完了
  • GM名ふみの
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年11月25日 22時35分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)
白き寓話
ミルヴィ=カーソン(p3p005047)
剣閃飛鳥
エルス・ティーネ(p3p007325)
祝福(グリュック)
シルキィ(p3p008115)
繋ぐ者
晋 飛(p3p008588)
倫理コード違反
伽藍ノ 虚(p3p009208)
     
アルヤン 不連続面(p3p009220)
未来を結ぶ
司馬・再遊戯(p3p009263)
母性 #とは

リプレイ

●発想は自由、現実は非情
「あの……盗賊団は自力で色宝を入手できないんですよね? だったら急ぐ状況ではないですし……出入り口を物理的に封鎖して閉じ込めてしまえば兵糧攻めで盗賊勝手に倒せません?」
 『     』伽藍ノ 虚(p3p009208)は出発前、仲間と情報屋にそう問いかけた。与えられた情報だけなら、そういう発想が生まれるのも無理からぬ話ではある。『盗賊だけなら』それも考慮の内である。が、そもそも『ファルベライズ』の遺跡を攻略せず放置するのも、ましてスイッチの作動次第で番人を攻略して色宝を獲得する最悪の事態も予測される中で放置という選択肢はあり得ない。依頼が与えられるには相応の理由があるのだ。
 という話を、情報屋は訥々と話さねばならなかった。激しいタイムロスだが、仕方なし。一笑に付してあり得ないということもできるが、経験の浅い者にそれを教えるのもギルド側の義務なのである。
 ……とまあ、理由を話されて素直に引き下がった虚を連れて、一同は遺跡にやってきたのである。
「おすなおすな……って話は聞いたことあるんですけどね」
「押すなと言われたスイッチを押すその心理……私にはよく分からないけれど……でもお馬鹿な大鴉盗賊団にもお馬鹿な方々がいるのね? ……なんて」
 『特異運命座標』司馬・再遊戯(p3p009263)はそのやり取りをどこで聞いたか思い出そうとして断念した。テレビの番組欄だったら、練達のゲームにしか使っていないそれから流れる道理もないのだから。『砂食む想い』エルス・ティーネ(p3p007325)は背徳に惹かれる人の心理に理解が及ばぬまでも、それを実際にやらかす者の出現に笑いを隠せない。
「あらあら……罠が沢山。凄腕のハンターでも先に来ているのかしら……?」
「ってゆーか罠だらけの遺跡なんてやだー!」
 『白き寓話』ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)は遺跡の中から漂う凄まじい罠の雰囲気に驚くでもなく首を傾げ、内部の様子を探ろうとする。他方、『清楚にして不埒』ミルヴィ=カーソン(p3p005047)は度々、罠ばかりの遺跡に叩き込まれているせいか乗り気ではない。ないが、色宝の為に背に腹は代えられないらしい。まあイレギュラーズだからね。
「に、しても影が薄すぎて罠にもかからねぇって悲しすぎね? それでいいのかよ」
「……でも、こういう人達が邪魔するならスイッチって下手なトラップより遥かに有効なんじゃないかなぁ?」
 『マジ卍やばい』晋 飛(p3p008588)はことの次第を聞いて、正直不憫というか理解が追いつかない様子だった。忍び込めてもそれでは意味がないのではないか? と。良いワケはなかろうが、それで最奥部に到達してそうなのだからわからぬものだ。『la mano di Dio』シルキィ(p3p008115)は疼く手を抑えて遺跡を見る。自分達は引っかからない。だが他の人間は近付けばボタンを押すか否かに関わらず即発動する。クソゲーにも程がある。
「ちゃんとした依頼はこれが初めてになるんすかねー。先輩方のご迷惑にならないように頑張って遺跡探索するっすよー」
「よろしくお願いします、アルヤンさん。……個性的なお姿ですね……?」
 『扇風機』アルヤン 不連続面(p3p009220)の初々しい挨拶に丁寧に返した虚は、その個性的すぎる姿に僅かにたじろいだ。だが何だ、多分体育祭でもっと個性的な面子を見ている以上此れくらい誤差ではないか。
「罠の仕掛けが分かればうまい具合に楽できると思うんですけど、流石に無理ですかね……?」
 再遊戯は入り口から奥の方へと軽く意識を集中させる。透視能力が通じるなら、有効な仕掛けだけを拾っていけるのではと考えたのだ。……が、やはりその辺りはしっかり対策されているようだった。
「ま、迷ってても盗賊は出てきてくれないわ。早く追いつきましょう!」
 エルスは気にすることはない、とばかりに先頭に立って遺跡へと入っていく。不測の事態など慣れたもの。ラサのためなら、彼女にとって無理なことなど余り無いのである。

●見えている地雷のバーゲンセール
「“絶対押すな”って書いてあるのに押す道理はないよねぇ」
「当たりのボタンだけ押せればそれはそれでラッキーなのかもしれませんが……」
 僅かに体を浮かせて進むシルキィに、虚は油断なく周囲を見回しつつ応じる。風の音、石の擦れる音、靴に返ってくる反動と音響は、感覚を研ぎ澄ませた彼に多くの情報を与えてくれる。……が、盗賊達は外套で感情の露出を抑えている。それ以前に、見えもしない相手へどう悪感情を抱けというのか。虚は戦闘経験の薄さ故に、己の持つ能力に過当な万能感を抱いている様だ。……新人のイレギュラーズにはよくある話なので、微笑ましい限りだが。
「でも、沢山の罠が起動しているのはわかります。ミルヴィさん、3歩先の壁から罠が」
「大丈夫大丈夫っ、カットが教えてくれてるから……こうっ!」
 虚の警句が飛ぶより早く、ミルヴィは駆け出していた。素早く地面に身を投げだすと、背中を掠めるように多数の矢が彼女目掛けて射出される。既に使い魔の鼠、カットを利用することで仕掛け自体は知覚していたらしい。流石に仕掛けそのものの構造に干渉しようとした試みは失敗したらしい。それどころか、無理をさせてカットを失う寸前まで行ったのである。賢いとはいえ鼠は鼠、無理をさせればあっさり死ぬのだ。
「むむ、幻には引っかからないっすかー。残念っすー」
「最初のうちは引っかかってた様だから、奥にいくにつれて感度が上がっているのかしら? それとも……」
 アルヤンはミルヴィが避けた罠のさらに先へと幻影を投射させ、なんら反応が窺えないことに肩を落とした。が、ヴァイスが指摘する通り『序盤は』引っかかったのだ、罠が。通じなくなっている理由は幾つか予想されるが……まさか、『成長』などしてなかろうか? そのような懸念が浮かぶ。
「超嗅覚が有効なほど臭いと嫌ですね……周りの温度はさほど変わっていないので、もう少し奥まで侵入されてそうですが」
「音はどうにもおかしい所がちょくちょくあるな。壁の反響がおかしいのか?」
 再遊戯は己の感覚を総動員して周囲を見渡し、視界内の温度に異常がないかを観察する。嗅覚には侵入者が嗜んでいたであろうタバコの残り香が纏わりつき、温度の変化は乏しい。この調子だと、ボスフロアへ到達している可能性すら在り得た。
 他方、晋は口笛を反響させ、ときに壁を叩いて音の反響を確認しながら周囲をくまなく観察する。発動済みのトラップは相当数、危険度は総合的に見ればさほどでもないが数が多い。
 ……そして、押すことを要求してるんだか止めてるんだかわからない誘い受けめいたボタンも増えてきた。
「ここまで素直に誘ってくるのは大変だねぇ……式神達も酷な仕事ばかりでごめんねぇ……!」
「自分も手伝うっすよー。新“人”っすからねー。雑用なんでもするっすよー」
 シルキィは次々と現れるボタンに衝動を掻き立てられながらもなんとか抑え込み、式神をガンガン死地に向かわせる。当然いい気分はしないが、明日は我が身と思うと恐ろしい事この上ない。アルヤンは事前準備が完璧だったためか、先行した盗賊団が起動した落とし穴にロープを渡し、休憩がてら水を配ったりと忙しない。手段は問うな。「渡した」事実がそこにあるだけだ。
「新人……人でいいのよね?」
「ん? 人っすよ? はい、扇風機っす」
 エルスはアルヤンを凝視して「人」という単語の不思議さについて思いを巡らせた。人? ……人。
 ごくごく一般的な扇風機の旅人。旅“人”。
「……そうね! 人ね!」
 深く考えないことにした。
「ここまで盗賊が見つからないとなると、もう奥までいってるのカナ……?」
 ミルヴィがいよいよもって見つからぬ盗賊達に首を傾げるのと、壁際をするりとすり抜けて無色の影がアルヤン目掛けて向かうのとはほぼ同時。あと一手早ければ、アルヤンは盗賊の手で負傷を免れなかっただろう。
「させないですよ……!」
「チッ、いいところで邪魔するな」
 魔力の縄を投じて動きを止めたのは虚だ。再遊戯の温度視覚による声掛けと晋のエコーロケーションによる探知が盗賊の動きを捉え、アルヤンと比較的近い位置にいた彼が偶然にも間に合った格好だ。盗賊の口元は口惜しげに歪められたが、感情の心奥までは読み取れない。ノイズのようなもので遮られる感触は、虚本人をして不快にするものだ。
「その様子だと、本当に大したことはなさそうだな。ここで軽く寝とけやッ!」
 晋が追いつき、一撃のもとに盗賊の意識を断ち切る。それだけで昏倒するのだから本当に弱かったらしく、彼1人が迎え撃ったということは――この先が番人の控える間であると暗に証明している。
「スイッチを押しに来られていたら面倒が増えていたわね。わかりにくいのがここまで面倒だなんて……」
「助かったっすよー、ボスにも会わずに機体が損傷したらコトでしたから」
 エルスは盗賊が直接襲ってきたことにある種の安堵を覚え、アルヤンは自分が狙われた事実に肝が冷える想いをした。肝ってどこだろう。制御スイッチ辺りだろうか。
 ……ともあれ、わざとらしく「あけるな!」と書いてある扉が番人への道であることは間違いなさそうだ。ダミーの扉もあるのに、そこだけわざとらしく警告表示がしてあればそりゃあなあ……。

●見えない所に危険は潜み、慣れは心を鈍化する
「侵入者……発見。抹殺シマス」
「明らかにわたし達より怪しい侵入者が隠れていると思うんだけど見えないもんなんだねぇ?!」
 突入するなり自分達を捕捉した番人と、ちらりと見え隠れする程度のステルス性能を発揮する盗賊団との対比を前に、シルキィは疑問と抗議の念を露わに叫ぶ。槍を手にした番人が前進してくるのにあわせ、ミルヴィ、ヴァイス、晋の3名がそれぞれ個別に番人を抑えるべく前進する。
「足止めは任せて♪ なんなら皆がやってる内に倒しちゃっても構わないでしょ?」
 ミルヴィの言葉からはどこか失敗の予感がひしひしと漂うが、そんな予感さえ正面から切って捨てるのが彼女だ。速度と連続性を高めた槍の連撃を、しかし軽々と避けていく。
「あなたの能力は……大雑把にだけど把握したわ。私が十分相手できそうで何よりだわ」
 ヴァイスの相対した番人は大鎌を担いだ一撃の重さと攻撃範囲を高めたタイプのようだが、それも先手を打って放たれた茨に縛り付けられれば軽々には放てまい。
「チンタラしたタイマンだが付き合ってくんな?」
 そして晋が相対すのは、蒸気の推進力で拳を打ち込むタイプ。遠近何れも対応できる類のようだが、近接の間合いに入られ、敵意を揺さぶられてはその多様性も十全には発揮できまい。
「あぁっ……! もぉ……っ!!」
 他方、再遊戯は突入時に仲間達を賦活することで戦局を優位に保とうとした。したのだが、それに合わせるように何故か光る縄に縛られて動きが鈍……らない。縛られたのは完全に演出上の都合といわんばかりだ。誰か! 誰かこのちょっと可哀想な縛りプレイ(物理)にこうなんか携行品を! あるだろ【えっちな目に遭いやすくなります】みたいなの! もってこい!
「皆さんが番人を抑えてくださっている間に盗賊を先に倒しましょう……」
「スイッチを押したがる盗賊の皆さんはしっかりと痛めつけてあげないと、ね?」
 虚とエルスは左右に散り、外套に隠れた盗賊たちを仕留めにかかる。虚のマジックロープで仕留めきることは敵わないが、動きを止めることは十分にできる。対して、エルスの全力を籠めた鎌は一瞬にして盗賊を切り裂き、動きを止めた。……殺していないのが不思議なほどの技の冴えだ。
「番人と戦ってる人の砂埃のお陰でバレバレっすよー。逃さないっすー」
 アルヤンは小刻みなステップ(どこで?)で盗賊達の前に立ち塞がると、逃すまいと行き先を塞ぐ。当然相手も攻撃をしかけてくるが、当たったり躱したりの一進一退の攻防を続ける。攻防、というか。アルヤンは大胆なことに自分から攻めずに受け切ることで足止めを図っていたのだ。成長したら参考にならない実力の付け方をする代表候補がここにいる。
「息詰まる室内砂嵐をお見舞いだよぉ! 盗賊はさっさと蹴散らして番人を倒しにいこうねぇ!」
 シルキィは砂嵐を発現させると、纏めて狙える分には全て、といった調子で次々と盗賊達(とついでに番人)を狙っていく。自動機械とて魔力の流れが淀めば戦いの選択肢は削れていく。長期戦になったとき、彼女のような戦いこそ厭らしいのである。
「縛りプレイってそういう意味じゃないでしょう!」
「そういうのも悪くねぇと思うけどな!」
 再遊戯が縛られつつも的確に仲間達を癒やす様子は、男性陣にとってみれば眼福としか言いようがない。それは必然、晋のボルテージをあげ、限定解除による動きの冴えを更に高めるものでもある、
 ……虚は極力再遊戯を見ないことにした。ただでさえ嫌われそうなのに追加で悪行を働きたくはなかったので、番人の撃破に注力することにする。
「ふっ、アタシのキックは岩を砕き鋼鉄をひしゃげさせる! これぞ清楚力っ」
「多分ちょっときっと絶対違うと思うよぉ……?」
 ミルヴィの蹴りは華麗であり苛烈であり劇的であった。それは見る者全てが肯定しよう。だが、炎の糸で援護するシルキィはその様子が清楚と直結することはないな、と思った。何故かはわからないが。
「面白い盗賊さん……泥棒さん? 達だったわね。こちらの番人さんも面白いけれど……」
「ヴァイスさん、私の一撃に合わせてもらえる? 損はさせないわ」
 エルスの変幻自在な切っ先が番人を切り裂くと、明確に動きを鈍らせたそれにヴァイスの一撃が突き刺さる。言葉どおり、損をさせるどころか最大効率での破壊を生み出すのだから、この少女、そしてイレギュラーズ同士の相乗効果は計り知れない。
 盗賊達がもう少し長く動けていれば、罠を起動させていれば……もう少し苦戦したのかもしれないが、結果的にはそこそこの被害で収まる結果となった。
「これを持って帰るまでが仕事です……罠に気を抜かずに行きましょう……」
 虚は疲れ果てた声で、そう締めくくるのだった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

伽藍ノ 虚(p3p009208)[重傷]
     
アルヤン 不連続面(p3p009220)[重傷]
未来を結ぶ

あとがき

 色々と勉強しておくと後々役に立ちます。
 あとその、そのビルドは……将来が怖いなあ……!

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