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シナリオ詳細

リス獣人族の冬越え 貯蔵食品の味見祭り開催!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●リス獣人族の冬越え準備
 冬眠という動物の生態メカニズムがある。
 冬が始まる前から食物を蓄える一方で、冬には眠る事でカロリー消費を制御する。
 冬の時期に代謝機能を低下させた状態で籠って過ごす事を目指す活動とも云える。

「今年もついに冬越えの季節到来か……。お前、食物の蓄えは出来ているか?」
「そうよねぇ、冬越えの時期ね、あなた? 大丈夫よ、リスのキャラバンを頼るわ」

 上記は『鉄帝』北部に定住するリス獣人族夫婦のとある日の会話である。
 ご存知の様に『鉄帝』北部の冬は想像を絶する程に極寒の地獄となる。
 当地を生活の基盤とする集落では、冬眠して過ごす部族が少なからずいる様だ。
 また、冬眠活動を援助する為に隊商(キャラバン)が活躍する時期でもある。

「ぷっぷー! リスのキャラバンだよー! 冬越えの貯蔵食品、販売中だよ!」
「すみませーん! 胡瓜鳥のピクルスありますか?」
「私は鉄砲豆の乾物、それと爆発栗の燻製も!」
 集落に訪れた隊商がラッパを吹いて貯蔵食品を叩き売ると行列が出来る。
 リス獣人達は皆で競争でもするかの如く熱烈に商品を買い求めるのだ。
「ママー! あじみしていい?」
「そうねぇ……。隊商さんに聞いてみましょう」

 さて、屋台前で試食会が始まり、味見を申し出た子供が代表に選ばれた。
 胡瓜鳥のピルクス……。
 歯応えある胡瓜魔物を漬物にした塩加減が絶妙のピクルスだ。
「わあ、しょっぱくておいしいきゅうりづけだあ!」
 鉄砲豆の乾物……。
 魔物の木から採取した鉄砲玉の如く弾けるカリカリの豆だ。
「カリカリカリ……。うまいねえ、いくらでもいけるよ!」
 爆発栗の燻製……。
 紅の栗魔物を燻製にしたとろける様に甘美な栗だ。
「う~ん、あま~くて、くちのなかでとろけるねぇ~」
 この小さなリス獣人は、本日試食した美味を冬越えの度に思い起こす事だろう。

●貯蔵食品の素材採取依頼
「あ、ハルアさんだ! 丁度良い所で会ったね! リスのキャラバンからの依頼があるんだけれど、もしよかったら相談してもいいかな?」
『リスの冒険家』リース・ウォルナッツ(p3n000114)が依頼の為にローレットへ訪れる。
 一方で『Remenber you』ハルア・フィーン(p3p007983)も次の依頼を探していた所だったので、リースの相談に耳を傾けてみる。

「久しぶりだね、リース? 今回はどんな依頼かな? 先日の依頼みたいにピザの配達をしたりするの?」
 実はリースとハルアは先日の依頼で協力関係にあったので面識がある。
 前回は依頼達成後に美味しいピザのご褒美もあったが、さて、今回は……!?

「うん、今回の依頼は素材採取の調達依頼だね! 『鉄帝』北部に住むリスの獣人族がいるんだけれどね。その部族は冬には冬眠して冬越えをするんだよ。それで毎年、今ぐらいの時期から冬越えに備えて貯蔵食品が必要なんだ。だから、キャラバンにとっては貯蔵食品の販売時なんだよね!」
 リースがハルアに対して件のリス獣人族が必要とする貯蔵食品の詳細を解説した。
 しかも販売先は『鉄帝』だが、食材の採取地は『深緑』という話だそうだ。

「へぇ? 食材を求めて『深緑』の迷宮森林まで行くの? えっと、復習すると、丘陵にいる胡瓜鳥のピクルスに、湖畔にいる鉄砲豆の乾物に、雑林にいる爆発栗の燻製だっけ? 要するに、今回は魔物を倒して魔物をドロップアイテムとしてゲットすればいいのかな?」
 ハルアが詳細を復唱して確認を取るとリースが笑顔で頷いた。
 食材の袋や馬車等はリスのキャラバンが必要なだけ貸与するからご安心との事。

「最後に重要な事だけれど……。集めた食材で調理した貯蔵食品は、販売前に試食の段階があるよ! つまり、内輪だけで味見祭りの開催も予定しているから、そのつもりでね! よろしくお願いするよ!」
「イェーイ! その言葉をずっと待ってたね!」
 リースが、特異運命座標の面々に一礼すると改めて参加の是非を問う。
 ハルアは、「味見祭りならボクにまかせよ」と、眼光が鋭く輝いていた。

GMコメント

●注意事項
 当依頼は「<Autumn food>松力茸ピザの配達と護衛の依頼」の「アフターアクション」から発生したシナリオです。
 ハルア・フィーン(p3p007983)さんからの提案でした。
 前回のシナリオに参加された方も不参加だった方も大歓迎です。
 なお、今回の参加にあたり前回のシナリオは必読ではありません。
 https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/4234 (←前回のシナリオです)

●名声
 当依頼は『鉄帝』と『深緑』の名声が半々程度での獲得となります。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●目標
 以下の3つの条件を全て達成する。
 1.丘陵で胡瓜鳥を撃破して可能な限り採取する。
 2.湖畔で鉄砲豆を撃破して可能な限り採取する。
 3.雑林で爆発栗を撃破して可能な限り採取する。

●ロケーション
『深緑』に位置する迷宮森林の一角が今回の戦闘の舞台です。
 迷宮森林で3種類の素材を採取する為、3か所の採取場を訪れる事になります。
 採取場の3か所は同じ迷宮森林内にありますが距離的にかなり離れています。
(採取場ごとの班分けを推奨します)
 以下、採取場の解説です。

 1.丘陵
 迷宮森林の一角にある大きな坂を登ると見晴らしの良い丘陵に出ます。
 足場が悪い上に魔物(胡瓜鳥)は空中戦も出来ますので注意です。
 また特に高所に上がると空気の薄さからBS窒息もあり得ます。

 2.湖畔
 迷宮森林の一角の奥地に大きな湖畔があります。
 凍える様な冷たい湖に入るとBS凍結が付与されます。
 水中は深く、また水中の魔物(Unknown)もいるかもしれません。
 湖畔の周辺を鉄砲豆(魔物)の木々が囲んでいますので狙撃注意です。

 3.雑林
 迷宮森林の一角にあるトンネルを出ると大きな雑林に出ます。
 ここの雑林は多種多様な木々がありますが爆発栗(魔物)が大半です。
 魔物の爆発も注意ですが、雑林特有の花粉(BS痺れ)にも警戒しましょう。

●敵
 以下、採取場ごとに登場する魔物を解説します。

 1.丘陵
 胡瓜鳥×初期10体程度(増援の可能性あり)
 胡瓜に嘴や翼等が付いた鳥系の魔物です。
 空飛ぶ胡瓜で外見はコミカルですが、空中戦を得意とします。
 戦闘方法は以下。
 ・急降下攻撃(A):上空から狙って突撃します。
           物中単ダメージ。CT高。
 ・胡瓜羽射撃(A):鋭い羽で機動力を奪う射撃をします。
           物遠単ダメージ。万能。BS足止。
 ・丘陵飛行(P):丘陵を自在に飛行します。BS窒息も無効。

 2.湖畔
 鉄砲豆(の木)×初期20体程度。(増援の可能性あり)
 鉄砲豆を実らせている木の姿をした魔物です。
 湖畔周辺は似ている木々が多くて見分けが付き辛いです。
 戦闘方法は以下。
 ・弱点狙撃(A):鉄砲豆で急所を狙撃します。
          物近単ダメージ。弱点。ブレイク。
 ・連続狙撃超遠型(A):鉄砲豆を連続で狙撃します。
             物超遠単ダメージ。連。万能。
 ・弾丸チャージ(P):鉄砲豆(弾丸)を生成します。再生弱&充填弱。

 3.雑林
 爆発栗×初期15体程度。(増援の可能性あり)
 棘の殻に覆われた紅の栗魔物です。戦闘不能時に殻が割れます。
 地面に落ちていたり木々に実っていたりします。
 戦闘方法は以下。
・棘攻撃(A):棘を全開にして突撃です。物近単ダメージ。必殺。
・自爆攻撃(A):自爆します。魔物自身は戦闘不能です。
         物自範ダメージ。識別。BS火炎。
・棘防御(P):攻撃を受ける時に棘を反射させます。反。

●味方NPC
『リスの冒険家』リース・ウォルナッツ(p3n000114)が冒険に同行します。
 班分けされる際には、いずれかの班に入れて下さると助かります。
 リースは「アイテム使い」である為、回復アイテム等で支援出来ます。
 あまり強くありませんので、戦闘時は簡単な補助程度となります。

●GMより
 そろそろ冬ですが、今回のシナリオは秋深まる頃を想定しています。
 魔物を沢山倒して、食品の素材となる「アイテム集め」をお願いします。
 戦闘後は、貯蔵食品の味見祭り(試食会)を予定として考えています。

  • リス獣人族の冬越え 貯蔵食品の味見祭り開催!完了
  • GM名ヤガ・ガラス
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年11月25日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

杠・修也(p3p000378)
壁を超えよ
マルク・シリング(p3p001309)
軍師
レスト・リゾート(p3p003959)
にゃんこツアーコンダクター
ハンナ・シャロン(p3p007137)
風のテルメンディル
ハルア・フィーン(p3p007983)
おもひで
モカ・ビアンキーニ(p3p007999)
Pantera Nera
伽藍ノ 虚(p3p009208)
     
クルル・クラッセン(p3p009235)
森ガール

リプレイ

●丘陵
 丘陵班が迷宮森林に聳え立つ険しい坂を登るとその先に胡瓜鳥の巣窟があった。
『壁を超えよ』杠・修也(p3p000378)は魔物が屯す高所へ先頭で行軍する。
(『鉄帝』北部のリス獣人は冬眠するのか。まあ、俺も寒いと正直外に買い物に行くのも嫌だしな。気持ちはよくわかる。確りと彼らのために食材ゲットしてこようか)

 高所に登れば登る程、見晴らしが良くなり標的である胡瓜鳥の群れも展望出来る。
 ただ、足場が劣悪な上に空気も薄い為、修也は警戒しながら歩みを進めた。

「ふむ、俺の魔砲の射程から狙撃して誘き寄せられるかな? 出来るだけダメージも与えておきたいから、複数当てられそうな狙い所は、と……」
 修也が真下で旋回する胡瓜鳥共に狙いを定めるとアンダーリムの眼鏡が煌めいた。
 黒蓮華が刻まれたハーフグローブから古武道・杠流魔砲術を全身全霊で叩き込んだ。

「よし! 数体は確実に落としたな? おーい、式神にリース君、回収任せた!」
 修也は敵勢の第一陣を落下させると下層の仲間へ向けて大声で叫ぶ。
 丘陵下層では、彼の式神と『リスの冒険家』リース・ウォルナッツ(p3n000114)が撃破済みの胡瓜鳥を馬車に詰めて回収に励む。
 なお、彼女らは馬車を護る役も担当しているのだ。

「第二陣が来たか……。まあ、まとめて相手してやるか?」
 修也は高所から跳ね上がると古武道の気合で飛翔しながら殴り掛かる。
 筋力を漲らせた修也は両腕から気の潮流を爆裂させて胡瓜鳥を叩き落とした。
 対峙する胡瓜鳥の群れも急降下攻撃や羽射撃を放ち修也の墜落を狙う。
「おらぁ! まだまだやれる!」
 猛攻を浴びた修也であるが杠流の気合術で全身に治癒力を行き渡らせて持ち直す。
 その後も着実に胡瓜鳥を撃破しては、下層の仲間へチームワークを繋ぐのであった。

 高層が修也の担当である一方、『食材ハンター』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)は飛行靴で軽やかなステップを踏みながらも中間層の位置で撃破に取り掛かる。
 秋空を自在に舞う胡瓜鳥の群れを眺めながらモカは愉快な感想を漏らした。
「うーむ……まさに『胡瓜に翼が生えている』魔物だな……。しかし、これくらい面白い造形でないと珍味っぽさが出ないのだろうな」

 高層では既に戦闘が開始されたらしく次々と胡瓜鳥が落下して来る。
 上空から敵を突き落とす修也とは真逆に、モカは中間層から上空を撃ち抜く。
「そこか……!? 数時間後の酒のつまみ、頑張って採取するぞ!」
 崖に陣取るモカが蒼空を斬り抜ける神業の刃を発生させて幾度も狙撃する。
 高所を飛行する胡瓜鳥が切り刻まれると次々と墜落していった。
 その直後、別の群れが増援を引き連れて現れるとモカの頭上から反撃する。

「ふぅ、流石に何度も急降下攻撃をくらうと痛いな……。早期で決着だ!」
 至近距離の白兵戦であれば流星流格闘術・基本ノ型の餌食になるも同然。
 毒蜂の鋭敏な挙動を模倣したモカの殺人術が残像を滲ませて敵陣に喰い掛かる。
 さらに猛攻が押し止まる事はなく、流星を駆け抜ける天馬の如き連撃が炸裂した。

「おーい! リースさん、式神さん、回収頼むな?」
 撃破された胡瓜鳥の数々が落下すると、モカは下層の仲間に向けて叫ぶ。
 指示を受けたリースと式神の二人は右往左往して回収に勤しんだ。
 だがここは敵地のど真ん中であり魔物の増援も後を絶たない。
 多勢に無勢の急降下攻撃と機動殺しの連続射撃がモカから運命の断片を略奪した。

「モカさん、ファイトだよ!」
 下層にいるリースが回復薬の瓶を全力で放り投げてくれた。
 モカは素早く瓶を捕まえると開封して一気に飲み干す。
「ありがとう、リースさん。これならまだまだやれるぞ!」
 援護を受けたモカは心身の活力が再燃して機動力の切れも復活する。
 群がる敵勢の魔の手を打開すべくモカは流星流格闘術を構え直して蒼穹を舞った。

●湖畔
 迷宮森林奥地の巨大な湖を目指して湖畔班の馬車が行軍する。
『武の幻想種』ハンナ・シャロン(p3p007137)は御者を務めながら歓談していた。
「早いものですね、『鉄帝』北部ではもう冬越えの季節なのですって! さて、私達は味見祭りのため、リス獣人様達にとっては厳しい冬を乗り越えるため……。美味しいものを沢山採って帰れるよう頑張りましょうね!」
 隣の席に座る『森ガール』クルル・クラッセン(p3p009235)は、にこやかに相槌を打ちながらもハンナの会話を繋ぐ。
「そうだね、もう冬が来るんだねー。確かに、冬眠するのであれば、食べ物いっぱい貯め込んでおかないと大変! ハンナちゃんの言う通り、リス獣人さん達の為………それと! 試食会が盛り上がる様に! がんばろーっ」

 馬車が目的地に到着すると、荷台に居た『     』伽藍ノ 虚(p3p009208)が飛び降りて女性二人の元へ駆けて来た。
「ここは……自然が豊かで静かですね……。自分は『練達』のビル街で活動することが多いので、こういう景色は新鮮です……」
 虚に手を引かれながら馬車から降りたクルルが楽しそうな口調で返答する。
「わたしは逆に田舎育ちだから、街中だと人の波に流されて溺れそうになっちゃったりするかも。虚はしてぃーぼーいさんだねー、なんて」
 二人は呑気に会話をしている様だが、実はエネミーサーチを発動させて警戒中である。
 しかも虚の方は自然知識も動員させて鉄砲豆の木々の特徴を確認している。
 一方のクルルは湖に居るかもしれない魔物にも細心の注意を払っている。

 ハンナは馬車を停車させると、虚から借りた保護結界の札を馬や荷台等に貼り付けた。
 その後、幻想種の特技を活かして自然と対話しながら鉄砲豆の木々の居場所を探る。
 さらに彼女はギフト(採狩の魔眼)の発動を併用して『食用』である魔物の木を見抜く。

 僅かな時間であったが、三人分の索敵が功を奏して鉄砲豆の木々を特定出来た。
 水中に居る魔物にも近寄らない様にして三人はそっと標的の木々へと忍び寄る。
 最後尾にいるクルルの射程距離からロックオン出来た時点で奇襲攻撃が開始された。

「射止めて大物! 追い詰めて一矢!」
 クルルが必殺の愛弓の弦を引いて火炎の魔矢を解き放つ。
 突き抜ける火炎の一矢は凶悪な羆が猛攻を仕掛けるが如く鉄砲豆の木を倒壊させた。
 その後もクルルは魔弓に仕込まれた呪い殺しの秘術でも追撃して木々を追い詰めた。
 流石に派手な奇襲を受けると魔物陣も殺気立ち反撃の攻勢に出る。

「なんの、これぐらい……。壁役ならば……自分に任せてください……」
 最前衛に立つ巨躯の虚が精悼な身体を盾にして後衛二人を庇いながら前進する。
 敵勢の悪意ある狙撃が彼に集中するが、そこは再生する不滅の肉体で持ち堪える。
 自分から貧乏くじを引きたがり己を顧みない男の敵ではない。

「刮目しなさい、鉄砲豆の魔樹よ! 武神(かみ)に捧げる血の舞を踊りましょう!」
 虚のお陰で敵勢の至近距離まで潜り込めたハンナが必殺の一撃で勝負に出た。
 希少な魔黒銀の銃弾を撃滅の銃刃に装填し、回転式拳銃の如く魔炎を炸裂させる。
 奥義―殲刃神楽―が殺傷力の限りを尽くして爆裂すると鉄砲豆の木を薙ぎ倒した

 特異運命座標の遊撃で着実に数を減らしていく鉄砲豆の木々だが……。
 木々らは歩行する事も出来るらしく根っこを足にした援軍が走って現れる。

「来ましたね……。こう、根っこをうねうねと動かして……」
 非常時だが、虚は手と指で敵の動作の真似をするユーモアは忘れない。
 壁役の彼は友軍を護るべくそのまま戦場の最前線で立ちはだかるが……。
 近距離迄の射程に彼が入ると、鉄砲豆が弱点を狙撃して再生付与も破壊した。
「くっ、中々厳しいですね……。これだから不幸体質は……。ですが、負けません……!」
 もっとも、虚と雖も特異運命座標では矜持のある壁役だ。
 不屈の闘志で立ち上がり、今一度、再生能力の付与を発動させて最前線で持ち直す。

「虚様、これをどうぞ! では、一旦距離を取って、回復してから再挑戦しましょうか。ねばーぎぶあっぷ、です!」
 虚は、彼の後方で庇われながらも最前線で戦うハンナから治療薬の援助を受ける。
 確かに、この場は彼女の言う通り一時退却する方が安全策であるだろう。

 停車した馬車ではクルルが撃破済みの鉄砲豆の枝を荷台へ次々と詰めていた。
「わっ!? 虚がすごい怪我だね? 庇ってくれてありがとね、今、手当てするから」
 クルルの治癒術式が眩い光を放ちながら虚の生傷を癒す。
 さらに彼自身の再生能力も拍車を掛けると瀕死には至らなかった。
「助かります……。ところで……豆の量はあと、どれぐらい必要ですか……?」
 虚が大事な件の確認を取るとクルルは両腕で丸を描いた。
「そろそろ十分な量だよ。あともう一息かな?」
 クルルの返答を受け、地面で散開する豆の木を指してハンナが改めて提案する。
「では、今ある限りの鉄砲豆の枝を馬車に詰め込めるだけ詰め込んだら帰還しましょう」
 三人は次の増援が襲撃に現れる前に残りの木々を回収して無事に撤退するのであった。

●雑林
 風光明媚な深秋の雑木林に雑林班の馬車が停車した。
『ピザを奪う奴は返り討ち』ハルア・フィーン(p3p007983)が元気溌剌に降り立つ。

――お味見っ♪ 一口だけじゃないよね? いっぱい食べていいよね? リース?

 出発前、ハルアがそんな食いしん坊の切なる願望をリース相手に確認した。
 リースが否定する訳もなく、ハルアはさらにアイテムの支援も懇願。
 結果、雑林班の三人には隊商から花粉対策のマスクとゴーグルが支給されたのである。

「爆発栗の燻製かあ。ちょっと味が気になるね。仕事が終わったら、僕も味見させてもらおうかな。さて、まずは爆発栗の出方を研究しておこう……」
 マルク・シリング(p3p001309)も依頼後の報酬という期待に胸を膨らませている。
 彼は静寂な雑林に遣いの鴉を放つと爆発栗の木々を索敵するのであった。

「今は紅葉が綺麗な時期だもの、楽しい観光になりそうだわ~。おばさんも雑林でお目当ての物を探すわよ~?」
 旅行好きな『ホテルにゃんけとる監修』レスト・リゾート(p3p003959)は雑林のマイナスイオンを楽しむ一方で、爆発栗の索敵にも力を入れる。
 周辺の植物から爆発栗の居場所を自然会話で聴き取っておく。
 あるいは聴力を研ぎ澄まして怪しい音の有無も警戒もして。
 最後は双眼鏡を手にして秋の大樹を彩る多様な木の実を覗いてもみるが……。
「なんて綺麗な紅葉なのかしらね~? ……って、栗探しよね、おほほ……」

「おや? どうやら現れたみたいだけれど……?」
 警戒中のマルクの所へ紅の爆発栗が猛回転しながら出現した。
 流石のマルクも噴き出し笑いをしたが、直後、二刀流の神秘杖を構えて交戦する。
 次々と転がって現れる栗に追い駆けられながらマルクが雑林を駆け抜けた。
「よし、これぐらいかな? 効率的に片付けるよ」
 マルクは敵勢を一か所に集めてまとめて攻撃する為に疾走していたのだ。
 爆発栗がマルク周辺に集るや否や、彼の魔術師は神聖な光の裁きで邪悪を浄化した。
 なおかつ爆発栗が棘の反射防御を備えている事を理知的なマルクは熟知している。
 だからこそ、体力の限界を鑑み、五体程度迄を反撃の許容量と見做した。

 マルクが爆発栗と奮闘するその上空ではレストが日傘飛行で浮揚していた。
 彼女は今、18m程度の高さで浮遊しているが、これには計算に基づいた理由がある。
(栗は攻撃の射程が10mくらいしか無いような?)
 つまり、地上の爆発栗が必殺の棘を光らそうが自爆しようがレストには届かない。
 下方で反撃に遭っているマルクを治癒するべくレストが生命調和の術で支援した。

「ま、ざっとこんなものか……。いや、上にもいるね?」
 次の増援は聳え立つ木々の上空から落下しながら出現すると自爆が炸裂した。
 しかも迫り来るさらなる増援が猛回転して現れては自爆してこの世を去って行く。
 大爆発の連鎖に呑まれてマルクは運命の欠片すらも燃焼してしまった様だ。
 もっとも、準備万端な彼は永久氷樹の腕輪で炎上の防御には成功した。
 一方で、神出鬼没な増援から襲撃された彼にレストから回復術式の援助が届く。
「自爆した栗は、殻が綺麗に割れるんだね……。では、栗拾いの時間にしようか」
 マルクは栗の亡骸から現れた新鮮な実を拾って丁寧に回収する。
 レストも蒼空から着地するとマルクと共に栗拾い作業に勤しんだ。

 最前線で激闘するのがマルクであれば、後衛の馬車を守護するのはハルアだ。
 四方八方、爆発栗の木々に包囲されたこの雑林に安全な場所等はないからである。
 馬車に向かって猛回転して突撃する爆発栗の群れをハルアが俊敏に撃退する。
「爆発栗をまとめて相手? まかせよ! やってみる!」
 食材ハンターの乱撃が雑林に跋扈する爆発栗の大群を鋭利に打ち砕いた。
 棘がへし折れて、殻が剥けた栗からは、美味しい栗の実が咲き乱れた。

 ところが爆発栗の増援が聳え立つ木々から降って来ては自爆して自爆する。
 しかも今回のライフラインとも云える馬車を目掛けて突っ込む厳しい仕打ちで。
「この馬車はボクが護るからね! 爆発栗にはやらせないよっ!」
 ハルアはタンカー専門職ではないが格闘極意に長けたフィジカルエリートだ。
 彼女の決死の防御のお陰で馬車は無事に護れたが運命の欠片を手放す事になった。

「あらあら、ハルアちゃん、大丈夫? おばさんからの援助よ、受け取って~」
 秋空の上方でレストが日傘で漂いながらも回復術式をハルアに届ける。
 常日頃の活力が舞い戻ると、ハルアは爆発栗の残党を容赦なく始末に掛かる。
「レストありがとう。さて、あなた達全員はリースのお土産にしてあげるねっ!」
 月晶風舞が蒼穹にてグラデーションを立体的に描きながら空中殺法を炸裂させた。
 ピザを奪う奴は返り討ちだが、爆発栗は引ん剥いた上でお持ち帰りだ。
「馬車いっぱいに栗が集められるわね~。みんなをびっくりさせちゃいましょ~」
 レストはハルアが撃破した栗の実を方々から掻き集めて大満足のご様子だ。

●味見祭
 食材採取に成功して合流した後、皆で『深緑』隊商支部のギルドに集合した。
「栗って、蒸すだけでもホクホクして甘いよね。燻製栗はスモークウッドの香りが香ばしいな」
 マルクは燻製栗を試食してみると、彼が思い描いた様な理想の甘味が満喫出来た。
 実はマルクもこの手の商売に詳しいらしく、折角だからと自前の栗料理を披露する。
「渋皮煮やマロングラッセは、シロップごと瓶詰めで保存すれば日持ちがするよ。新しく商品ラインナップに加えるのはどうかな? 冬ごもりでも、選べるメニューは多い方が嬉しいだろうし、ね」
 リースはマルク作の栗料理を試食すると即座に合格サインを出す。
「ありがとう、マルクさん! 今回の美味しい料理も商品に加えておくね!」

 食堂には次々と貯蔵食品が運ばれて来るが、レストは特製の紅茶を準備してくれた。
『練達』から仕入れた高級紅茶をレストの手並みで淹れれば至極の一杯となる。
「飲み物が無い子にはお裾分けをするわよ~。あと、グラオ・クローネのチョコもあるわ~」
 かく言うレスト自身、燻製栗や鉄砲豆を淹れたての紅茶と共に楽しんだ様だ。

 修也はレストからレモンティーを受け取ると栗の燻製をつまんで試食してみる。
 彼が狩ったのは胡瓜鳥であったが、あえて栗を選ぶ理由とは……。
「俺、甘いものの方が好きなんだよな。栗の燻製を試食してみたが、これ、中々いけるな?」

 ハンナもミルクティーを味わいながら、自らが狩った鉄砲豆の乾物を快い音で咀嚼する。
「この豆、本当にカリカリして美味しいですね……。特に飲める方なら『お酒が欲しい』と言いそうでしょうか。販売先のリス獣人様達が喜んでくれると良いですね!」

 酒豪と言えばStella Bianca店長のモカだ。
 店から雑多な酒を持ち込んで貯蔵食品をつまみにしながら酒盛りをしていた。
「ううむ、ピクルス、乾物、燻製……どれもあらゆる酒のつまみとして最高だ!」

 食べ比べならばクルルも引けを取る事はない。
 彼女の方は『くるみ亭』のパンを持参してピクルスや乾物を挟んで試食している。
「とれたて新鮮なのも勿論美味しいけれども、保存食も味が濃くて美味しいよねー。あ、止まらなくなっちゃいそ……。なんて、美味しくってついつい食べすぎになっちゃうかも」

 同じ班だったクルルの隣で満身創痍の虚が猛烈に鉄砲豆の乾物を頬張っていた。
「うぅん、あれだけビシバシ食らった豆がこうも美味しくなるとは……。これは食の奥深さなのか、あの魔物が勿体ないことをしているのかわからないですね……」

 恐るべき速度で貯蔵食品を制覇しているのは健啖家のハルアだ。
 彼女はピクルスのサンドイッチを平らげながら豆の趣も慈しむ。
「もぐもぐ、カリカリ……。どちらも手が止まらなくなるって知ってた」
 自らが手掛けた栗の燻製にも止まらぬ好奇心で頬張る。
「ぱくぱく……。燻製って甘い物でも作れるんだね」
 完食したハルアは芳醇な風味に感謝して手を合わせた。
 満腹の彼女は極寒の地方に住む獣人達に心からの善意で祈りを捧げる。
「皆が冬も楽しく過ごせますように」

 了

成否

成功

MVP

ハルア・フィーン(p3p007983)
おもひで

状態異常

伽藍ノ 虚(p3p009208)[重傷]
     

あとがき

シナリオ参加ありがとうございました。
皆さんのご尽力により、今年の『鉄帝』北部のリス獣人達の冬越えは安泰です。 
僕も冬に備えて美味しい貯蔵食品が食べたくなりました。

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