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シナリオ詳細

<Phantom Night2020>男女逆転遊覧リゾート

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「旦那様、この危険な時期にリゾートスパに行きたいとは何事ですか!」
「だって行きたいんだもんね」
 執事のあきれた声も意にも介さず、コートニー・テヘペーロ氏は頬を膨らませてそっぽを向いた。とはいえ、おっさんだから全然かわいくはない。
「時期を考えてください。旦那様は敵が多いことを自覚されるべきです。この前の発明品も、思いっきり練達の既得権益とぶつかるわ、パクリぎりぎりになるわで、かなりさんざんにライバルどもに脅されたではありませんか」
 そう、このコートニー氏は優秀な科学者であり、実業家である一方で、かなり敵が多いのだった。
 この度の学会を控えてのお忍び旅行についても、かなりの危険が予測された。とはいえリゾート施設の営業を止めるわけにもいかず……。
「まあ、旦那様が譲らないことは分かっておりましたよ。ゆえに、手配してあります。とりあえず護衛を4名確保しました。いずれも優秀なイレギュラーズたちです。必要があれば追加の人員を手配しましょう」
「さっすが僕の執事だ」
「敵のある程度の情報も得ておりますよ、この通り……あっ」
「『あっ』?」
「間違ってイレギュラーズの情報敵に送信してしまいました」
「「あっ」」
「あっ……」
「あーーーー」
 それはすでに練達の技術力によって電波的なあれそれに乗り、相手方に送られてしまっていた。
 送ったものは取り戻せない。
 幸い(?)にも相手方に渡ったものは顔写真で済んでいたようだ。
「まあ、僕の発明品のお薬……もといファントムナイトの力で女の子になってもらえばいっか!」
 というわけで、彼らはリゾートスパに集められたのだった。


「ってわけなんだよね~」
 というわけで、依頼人のおっさんは謎の力で美少女となっていた。それでも言動にはいらっとさせられるかもしれないが。
「それで、このカッコで護衛しなきゃならないってワケかー」
「そういうことみたいだねぇ」
『八百屋の息子』コラバポス 夏子(p3p000808)……いや、今日ばかりは八百屋の娘だろうか。今や、眠たげな目をした美女である。案外この状況を受け入れていた。
 やたら飲み物をおごってもらえたりしているが、適当にあしらいつつバーを見張っている。さぼっているわけではない。そういうオーダーだからだ。
 物々しい気配を、リゾート施設に持ち込んではいけない。そう厳命されている。
『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)はホテルに併設されたバーでグラスを傾けており、グラス越しに映った一人になんとなくあたりをつけていた。
 リゾートだっていうのに楽しんでいる雰囲気がない。なによりもあれほど高い酒を飲んでいるのに嬉しそうではないのはおかしい。
 とはいえ相手もこちらに気が付いている様子はないし、公衆の面前でどうするわけにもいかず、頃合いを待っている……という名目で飲んでいるのだった。
 ぐびぐび。
「あ、あの、海とか行かない? 泳ぐのうまいよ、俺?」
「……いや、いいです」
『綾敷さんのお友達』越智内 定(p3p009033)は、かわいらしい少女になっており、あちこちらからナンパされている。
「助けたほうがいいかしら?」
「うーん?」
「あ、探したよ」
 と、そこへ、『揺蕩』タイム(p3p007854)がやってきた。麗しい精霊種の男性がやってきたことで、ナンパはおさまったようだ。
 そして、ちらちらとタイムを見ていた女性客ががっかりしたため息をつく。
「? なんだろ?」
「いや、助かった……」
 というわけであなたたちは今日ばかりは本来の性別とは逆の男/女である。
 こんな事件はとっとと解決して、このリゾートを楽しもう。

GMコメント

ハッピーファントムナイト!
TSにはロマンが詰まっていますよね。ご指名ありがとうございます。
布川です。
ちょうどよかったので、ついでにファントムナイトを楽しみましょう。

Q:「追加の人間のプロフィールは?」
A:「追加で漏らしました(てへぺろ)」

……ばれてなくてもいいのですが、依頼の趣旨的に性転換は必須です。不明の人は、まあ、きっと不明なりにどっちに寄るなどあるのでしょう。

●目標
・依頼主を狙う刺客を倒す
・リゾートスパで遊び倒す

●オーダー
水着でお願いします!
持っていない人のために更衣室に用意しています。
ちょっと露出が多い気がしますがよろしくお願いします!!!
(頑張って探せば比較的マシな水着もあります)
人の命がかかってるんです!!!
パーカーなど着ても構いません。

●状況
【全員性転換(TS)させられています】。
おかげでぱっと見、相手側に顔が割れずに済んでいるというわけですね。
よかったよかった。
あ、夜中の12時には戻るので、それまでに依頼を済ませてください。

●登場
依頼人:コートニー・テヘペーロ
 練達のお偉い様です。
 才能のある発明家でもありますが、割とどうしようもない失敗を繰り返す困ったおっさんでもあります。
 現在は不思議な力で美少女になっています。

刺客×10名程度
 コートニーのせいでひどい目に遭った人間やライバルから刺客が送り込まれています。
 リゾートスパにおいても油断なく、緊張した面持ちで過ごしているのですぐにわかるかと思われます。
 一般人よりは強いですが、イレギュラーズと比べれば弱いものです。
 彼らはイレギュラーズたちが性転換していることは全く知りません。
……うっかりナンパしてくるかもしれません。

●場所
 練達のリゾートスパです。
・巨大なプールや、海水浴場
・エステ
・カフェテリア
・ホテル
 などの設備があります。とっとと片付けて楽しみましょう。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • <Phantom Night2020>男女逆転遊覧リゾート完了
  • GM名布川
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年11月22日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

カイト・シャルラハ(p3p000684)
風読禽
コラバポス 夏子(p3p000808)
八百屋の息子
※参加確定済み※
ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)
優穏の聲
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
※参加確定済み※
タイム(p3p007854)
女の子は強いから
※参加確定済み※
モカ・ビアンキーニ(p3p007999)
Pantera Nera
越智内 定(p3p009033)
約束
※参加確定済み※
えくれあ(p3p009062)
ふわふわ

リプレイ

●不思議なくすりで男女逆転!
「なんか……まあ……乳尻……うーん平凡」
『八百屋の息子』コラバポス 夏子(p3p000808)は自分を眺める。男から女への劇的な変化……ではあるのだがいまいち面白みがない。
 自分の体だしそんなモンか……と、妙な納得をするのであった。
「しかし、軽い気持ちで飲んだクスリでエラい事になってしまった」
 女体になったの良い事に、女性陣触り放題!
 という邪な考えが一瞬考えをよぎったのだが、その女性陣は今は男性になってしまっている。
(手詰まりじゃんクソがー!)
「……何だか自分の身体なのに触っちゃいけない気がするんだケド」
『凡人』越智内 定(p3p009033)は慣れない。着替える時も、何とか人のいないときを見計らって、なるべく見ないように着替えた。
(初めて見る女の人の身体が自分のものなんてさ……)
 どぎまぎとする。
(……あれ? でもボク、女なんだから初めても何も別に見たって)
「ウアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
 ばあん、と更衣室の扉をたたいた。
「ダイジョブ? おーい」
(あ、危ない……今一瞬心まで女の子になっちゃう所だった……!)
 鶏が先か卵が先か……。
 心も身体に引っ張られるのかも知れない。注意しようと決意するのだった。
「うん、まぁ練達だしねってもう私……”俺”は驚かない、うん」
『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)もまた、男性へと姿を変えていた。ほわほわとした雰囲気をまとう、今どきの好青年だ。さすがに上を脱ぐのははばかられてパーカーを羽織る。
「まあ、楽しめるものは、さ」
「楽しんじゃおうか、うん」
 さすが練達、何でもアリである。
 適応の早い二人。
 定はまだ更衣室から出てこない。

 一方で、この状況にいち早く順応した者たちもいる。
「よーし、楽しむぞー!」
『風読禽』カイト・シャルラハ(p3p000684)は、楽しいことが好きな自由な鳥さんだ。たとえ女の子になったとしてもそれは変わらない。
 筋肉質で立派な鳩胸は羽毛に隠れた美乳。最近忙しくてお手入れが甘くゴワツキ始めていたファーは、女性らしく細く柔らかなフワフワな毛となった。
 ふんわりと甘いシナモンのような香水。隠しきれずに漂うメスのフェロモン。
 しぐさは女性らしさを帯びている。
「ぶっ」
「ぼあっ……」
 歩いているだけで何人かがばたばたと倒れ、知らず見とれたカップルを破壊する魔性の鳥。
「胸を堂々と晒しても何も言われない。なんという開放感!」
『黒いばぁてんだぁ』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)は謎の力で褐色イケメンとなっていた。
 ギフトはどう置き換わったのか、ムキムキの大胸筋。キレッキレのブーメランパンツ。
 ためらいのかけらもなく、男性を満喫している。

「どーしてこうなっちゃうの!?
もう! あっというまに男の人の身体だし! 気持ちの方が落ち着かないよ!」
『揺蕩』タイム(p3p007854)は男になったはいいものの、更衣室から出られなくなっていた。
「大丈夫?」
「きゃああああああっ」
 たいへんな鳥さんがやってきた。
 うまくタオルで隠れてはいたけれど、上を着ていないような。いや、普通か。だって、え?
 あれ? ここは男性更衣室では?
「……なんかお胸が普段より硬いけど……いつもよりある? どおして? どおゆうこと? 女性のアイデンティティが崩壊しちゃうよ?」
 でもこれは依頼であることだし……。
「んっ!」
 咳払いをする。
「わた、僕はタイム! 刺客はぱぱっとやっつけちゃお!」
 髪の毛は一本に纏め、サーフパンツ姿。うん、男だ。

 一方そのころ、女子更衣室でも……。
「大丈夫?」
「ウワアアアアア!!! ゲオルグ……ゲルダさん!!!」
 定が叫んでいる。
「?」
 銀髪ロングヘアーでナイスバディの妖艶な淑女。黒のビキニにパレオをまとった『天穹を翔ける銀狼』ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)が様子を見に来た。
「そうね。今日はゲルダよ」
「どしたの? ただちゃん見てこようか?」

(大変だった……)
(うん……)
 着替えるだけなのに、なにかと心臓がバクバク言っている。
 タイムと定はようやく出てくることができた。
 日焼け止めを塗る仕草すら直視できない。

「すっごーい! ぼく、男の子になっちゃった!」
『ふわふわ』えくれあ(p3p009062)はこころなしかきりっとしている。星の王子様のようにロマンチックな童話風。
「カワイイ」
「おっ、かわいいな!」
 そっとえくれあを浴びて気力の回復に努めるタイムと定。
 もこもこの気配にそわそわそわそわとし始めるゲルダ。
「? ほめてくれるの?」
 きゅっと目をつむって撫でさせてくれる。
「はなまる……」
 思わずにゃんたまクッキーが出た。
「えへへ。おねーさんたちはかわいいし、おにーさんたちはかっこいいね!
いっぱいあそぼうね!」
「刺客にはさっさと退場してもらって、存分にリゾートを満喫したいね」
「……えっ、しかく?」
 アーリアの言葉にちょっと首を傾げたえくれあはふるふる頭を振った。
「わ、わすれてないよ、ほんとだよ」
●ハニートラップ
「やだ、凄い日差しじゃんもうっ! 日焼け止め……SPF100のPA++++++? いくら練達でも大丈夫? 肌荒れたりしないでしょうね?」
 すっかり女の子を満喫する定。
「もう真冬も近いって言うのに、リゾートって凄いのね。海水浴場だけじゃなくって日差しまでまるで夏みたい。あ、夏子センパイも使います?」
「使う使う―」
(あ)
 本人はふつうというけれど。
(ちょっと気だるげでカッコよくて、大人の女性ってカンジで憧れちゃうな)

「こういう時はベタに囮大作戦よね」
「えっと」
「お手本見とけよ見とけよ~」
 これでも女体。
(私が何時も引っかかるようにテキトーにモーショ……ンッォォエかけれな~い)
 人ごみに紛れ込んでそのまま、ぎくしゃくとした動きで帰ってくる夏子であった。
「えーんえん女性と仲良ししたいのに……!」
 男を引っ掛けなきゃならんなんてそんな、酷い。
「よしよし。それじゃ、ただちゃんも頑張ってね」
「え……」
「大丈夫、先生が助けてあげるから、ね?」
 なんとか頷く。
(センパイに幻滅されないように、囮頑張るぞっ)

●クリームうさぎのおうじさま!
「ふわ~!」
 吹きあがる噴水にきらきらと目を輝かせるえくれあ。悪い人たちの動きを見て、報告したり、困ったらたすけるのがおしごとだ。
(決して水あそびとか、珍しいものを見るのがたのしいとかそんな……たのしい!!!)
「あ~そーゆーの遠慮~……アッ ちょ……っ」
 えくれあの耳がぴんと立った。
「夏子おねーさん!」
 しかくの人と話してて困ってるみたいだ。
 ぎゅっと手のひらを握る。

「大丈夫? 彼氏に振られたの?」
(んぬぅぁぁキター泣いてる女性引っ掛けマン~)
 さりげなく振り払おうとしても、その力は思いのほか強い。
(なんて強引に手を引くヤツなのキモッ)
 この強引さ、刺客に違いない。
「この……ッ!」
 キレるまえに、ぎゅっと二の腕を下の方から引き寄せられた。
「ごめんね、おにーさんたち。夏子おねーさんは今日はぼくといっしょにあそんでくれる約束なの! レディーに約束をやぶらせるのはスマートじゃないよ?」
 人に変身したえくれあだ。ふんすと胸を張っている。
(やだッえくれあちゃん……可愛いッ!)
「あ、キミ、弟さん?」
 闇を劈く爆裂音【炸】がさく裂した。いや、大きな音だけだ。
「まさかお前たち! くそっ、見つかった」
「えっと、できるならしかくさんともおはなししてなかよくなりたいけど、どうしてもうだめならしかたないよね……」
 えくれあはきりとして、我に続け、とぴょっこり拳をあげる。そしてそのまま、ヘイトレッド・トランプルがさく裂した。
「どりゃー!」
「ぐ、ぐああああ!」
 まずは、一体がプールサイドに沈んだ。
「助かった~ありがとう~」
「ううん、けがしてなくってよかった!」
(カワイイ……ううん、かっこいい)
 これがときめきという奴だろうか。

●私の生徒に何か用?
 夏子の加勢に行こうとしたところだったのだが。
「暇?」
「え、あの、ちょっと……困ります」
 定もまた別の男に絡まれていたのだった。
 しかも、こちらもかなり強引だ。
(どうしよう、囮なんて大丈夫って思っていたけれど、怖い……!)
 アーリアが、すぐ近くに待機しているはずだ。……お酒を飲んでいる気もするけれど、黙っていなくなるなんてないよね。
 目を瞑って耐えていると、その手は……。
 定へ触れる前に、アーリアがつかんで止めていた。
「ね、俺の生徒に何してんの?」
「ひっ」
 その語気の下に強い威圧を込めた。
 イェーガー・ショット。手の平から放たれた衝撃波が近くの風船を割った。
「せんせぇっ! 遅いよ、もうっ!」
 ちゃんと助けに来てくれた嬉しさや照れ臭さを隠す為に、小言を一つ。
 うっかり安心して泣きたくなったくらいだ。
「ごめんごめん」
 あれほどの騒ぎだ。すぐに気が付くだろうし、最悪でもセキュリティがつまみ出すだろう。
「……!」
 追手が、追いかけてくる。
 ふわりと定を抱いた。お姫様抱っこだ。
「あ」
 人気のない廊下までやってきた。
「動かないで…」
 壁ドンというやつではないだろうか。
 覆いかぶさるアーリアは、がっしりした男性だ。
「しーっ」
 アーリアは口元に指を当てる。
 人差し指があてられた唇が何だかとてもキレイで……。
「……」
「……」
「いたか!」
「無粋だね?」
 ミッドナイトピロー。蠱惑的な笑み。
 それから、逃れることはできない……。

●幸せてんこもり
「ゲオル……ゲルダちゃんも遊んできていいんだよ~?」
(この依頼人、ナンパされようものなら相手が刺客でも面白がってついていきそうだわ)
 絶対信用ならない。うん。
 ゲルダは護衛をしつつも、リゾートを楽しんでいた。
 こちらをうかがっている男は、リゾートのくせにかっちりしたスーツを着込んでいる。
(そうね……)
 ゲルダは、少し考えた。胸を下から支えるように組んだ両腕で軽く持ち上げてみる。
「……!」
 しめた。ゲルダの魅力と質量に引かれ、刺客は直角に曲がってきた。
「ねえ……一緒にプールでもどうかしら? 日焼け止めを塗っていただけるとありがたいわね」
 抗えない。その重力には……。
「このあたりでいいかしら」
 ゲルダは振り返り、すっと胸に手を当てる。
 ナイフを構えた相手は文字通り固まった。
 その隙を逃すゲルダではない。振り上げたローキック。パレオがひらりと舞ってもう一体も止まった。
(なんであからさまにわざと隙を見せる度に皆動きを止めているの? 正直複雑なんだけど……倒しやすいからいいわ)
 次々とのされていく刺客たち。
「自分達から声をかけておいて、私より先に果てちゃうなんて……いけない子ね」
 ふさあと、髪をかきあげながら言ってみる。
 刺客は幸せそうに鼻血を漏らしていた。
 一体、撃破。

「畜生、なんて質量だ……っ」
 ゲルダから思わず逃げ出した男は、ふわりと空から降りてきた者に目を奪われる。
 緋色の羽毛の下に覗く肌はほんのり朱に染まる。
「そんなピリピリした雰囲気じゃ楽しくないでしょ? 遊びましょ?」
 ふにふにした質感は、とても柔らかくて美味しそうだ……。
「いただきます!」
 この誘惑から逃れられようか。
 緋天歪星からの赤が、刺客を蝕んだ。
 じわじわと緋色の夢の中で、男は無限にハピネスを感じていた。
(あなたは獲物、もう逃れられない)

●オーバーキル(いろいろな意味で)
「みんな、うまくやってるかな……?」
 タイムは少し緊張しながらも、ちらちらと隙を見せる。
「ぼく、一人?」
(あ、わたし、ううん、僕のこと……っ!)
 今はイケメン男子。黄色い声が上がるのも仕方ない。
 ぎゅっと腕を組まれる。
(……あ、うわちょっと近い近い何か腕に当たっ、おっきい……ぽよぽよ……)
 我に返ってぶんぶんと頭を振る。
(駄目だぁこのままじゃ自分の中に芽生えた劣情に敗北しちゃう。ご、ごめんね!)
 タイムの君への贈り物が、女性をふわりと寝かせていった。慌てて受け止めてそっと安全な場所へ寝かせる。

「……残念だったな、世の中そんな美味い話があると思ったのか?」
「馬鹿な! 貴様、従業員じゃないな?」
 ふ、とモカは答えの代わりに蹴りを食らわせた。
「コートニーが雇ったイレギュラーズの詳細な情報を買わないか」……モカがそっと忍ばせた釣り餌に、うまい具合にひっかかってくれた。
 モカを従業員と誤認したのもしかたないだろう。接客業ならおまかせあれ。
「ふう、これで3人か」
「モカさああん!」
 黄色い声が上がった。モカに寄ってきた女性だ。
「お仕事、終わったんですね」
「心配かけてごめんね、お嬢さん。良かったら、このあとプールでもどうです?」
「わああああ! モカさん、助けて!」
「わあ、可愛い!」
「一緒に遊ぼう!」
「!?」
 まさかの追撃だった。
 
●※飲酒しながらの遊泳は大変危険です※
「もうやだ! 飲む! 遊ぶ! プール!」
 タイムは頭を冷やそうと思ったのだが、ゲオルグさんがざっぱんとあがってきたからだめでは?
「ああいいなあ……水飛沫を上げて弾むみんなのいろんなもの……」
 今日は本当に女性が魅力的に見えてだめだ。男性への目覚めとか言ってる場合じゃない。プールから上がれなくなったら困る。
 ぶくぶく顔を沈める。視界さえ遮ればなんてこともないはずだ。
「それにしても……胸のある女性って常にこの状態で生活してるの?
私、もう既に重くて辛いんだけど……。
男性に生まれて本当に良かったわ」
 だめでは???
 ぶくぶくと沈んでいく。
「どうしてこんなことになったんだろ……ねえ~~~~~!」
 プールの縁でぐでぐで泥のようになるタイム。
「……」
 ゲオルグのことばに、なにやら釈然としないものを感じる定であった。

「若者達は元気だねぇ」
 アーリアはゆったりバーのソファ席に座り、高い酒を味わう。
(逆ナン、っていうのもされてみたいよね、ふふ)
「水に入らないの? パーカー脱がない? 暑いでしょ?」
「この下は特別な子にだけ見せるんだ……部屋取ってるけど来る?」
「あらあらあらあら」
「なんてね、これも言ってみたかったんだ!」

 定は時折、バーでグラスを傾けるアーリアをチラチラ見てしまう。
 手なんて振られて、嬉しくて振り替えす前にちょっと周りを確認してしまったり。それもまた見られていてくすり、と笑われる。
 なんだかくすぐったい。
(あれ? ボク、あれ……?)

「ふう、運動したら体が火照ってきちゃったわ。おいで、ジーク」
 現れたジークは、匂いでゲオルグとわかったらしく、ぎゅうと飛びついた。
「私だけリゾートを楽しむなんてずるいもの」
「がんばったよー!」
「やったねやったね」
 夏子はえくれあを肩車しながら、こじゃれたバーへ向かう。
 目当てはクリームソーダだ。
「やあ、可愛いお嬢さん方」
「あっ……」
「わあ」
 モカだ。女性に囲まれている。
(おおう……)
 さすがに、強い。
「なかよしだね!」
「ご注文は?」
「えと、クリームソーダが飲みたいです!」
 いっしょうけんめいに頼むえくれあ。
 かわいい。かわいい生き物だ。
「思い出に残る一杯を ねッ」
「そうか」
 ふ、と笑う仕草がやはり色っぽい。
 モカのクリームソーダはひと味違う。しゅわしゅわとした炭酸は大人の味。内緒だよ、と、アイスを乗っけたあと空色のシロップをふりかけた。
「すごいすごい! えへへー、だいすきー」
「夜も更けて 酒で鳴るのは 喉の音か」
(言っておきながら自分でも意味は分かんない!)
 思い出したらあとから恥ずかしくなるやつだろうか。
「なにそれ、かっこいい!」
「えっそう?」
 えくれあはにこにこと笑っている。
「よもふけ~」
「ふふふ、えくれあちゃんのおかげで良い思い出になっちゃった」
「夏子おねーさんこそありがとう!とってもたのしい思い出になったよ!! モカおにーさんもありがとね!」

●深夜パート
 このまま時間が来れば元通り。
 のはずだ。多分。
 一生このままなのは困りそうだが、名残惜しくもある。
「あのさ」
「んー?」
 切り出したのは夏子だった。
「部屋 行って良い……? 今日だけの特別 気になるの」
 なんて。ナンパっていうのをちょっとだけしてみたかったりして。
「……いいよ?」
(あれ?)
 ワンチャン通っちゃった?
 ホテルの部屋に戻って「好きなところに座ってね」と言われ……アーリアはミニバーの酒を取り出す。
「乾杯しよっか」
 アーリアの髪はふわりと色を変える。
(あ、綺麗)
 その酒を、カルヴァドスだというらしい。
「ちょっと酔っ払っちゃったかな……」
「大丈夫? 水を持ってくるね。何なら寝ててもいいよ」
「わ」
「きゃあ」
 躓いたのは偶然だろう。かなり酔っていたのだから。
「あの……」
 時計が12時の鐘を告げ、姿はもとにもどった。
 がっかりしたような、ちょっと残念なような。

 この日の出来事は、たぶん。忘れた方がいいだろう。
 ファントムナイト。一夜の夢だ。
「ぴぃ、ぴぃ!!!!!」
 真っ赤な羽毛をさらにまっかっかにするカイト。
 昼のあれやこれやそれやを思い出して悶絶する。酔っ払ったせいだろう。なぜか1パック98円の卵を羽毛の下に抱いていた――。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

カイト・シャルラハ(p3p000684)[重傷]
風読禽
タイム(p3p007854)[重傷]
女の子は強いから
越智内 定(p3p009033)[重傷]
約束

あとがき

刺客は壊滅、依頼人もにっこにこです。
お疲れさまでした!

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