PandoraPartyProject

シナリオ詳細

虚像・巨像・嘘像

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 壊しますか? 壊しませんか?


 高さで云えば凡そ二~三十メートル。足と腕(と思われる部位)は人間が数人分の太さであり、歩くだけで周囲に振動が伝わる。

 巨像。巨像だった。

 右腕には同様に巨大な剣の様な物を握りしめている。
 顔と思わしき部位もある。
 目は蒼白く発光していた。
 詰まり。その外見は、人間を模倣した物であることは、ほぼ間違いなかった。
 動きは愚鈍だ。目的も不明。
 だが近づいた者をきちんと認識する。巨像は、正しく防御の性能を有していた。その一振りは嵐の様に暴虐的な一撃で、諸に浴びた者は其れだけで肉塊と化し、息絶えた。

●ローレットへの依頼
 突然現れた巨像は、何かに導かれるようにして行進を始めた。そのルートには、≪幻想≫(レガド・イルシオン)に位置する村がある。即ち、この村は今、巨像に飲み込まれるという悪夢のような局面と対面していた。
 家々を捨て去る事は、命を天秤に掛けた時、その傾きを変える程の重みを有さないだろう。しかし、そうして追われていった人々は、その後の生き方を大きく歪められることも、きっと確からしいのだろう。
 地方管轄貴族は部隊を派遣し巨像の行進を食い止めようとしたが、上手くいっていない。王都までは遥かに遠く、有力貴族はこのリスクを気にも留めないだろう。
 そこで優れた異能を有するイレギュラーズ達の噂を知った管轄貴族から、ローレットへと依頼が入った。
 依頼内容は極めて簡潔。『巨像を止めてくれ』。


 その異形は異形なれど、正に人身と酷似。
 表面は岩の様な無機物状で覆われ、屈強な層を構築。
 動作は比較的鈍いが、発作的に俊敏に暴れること、三度。
 敵対者を認識し的確な迎撃動作を取る。
 純種により構成された兵団による弓・槍の攻撃は効いているのかいないのか不明瞭。
 人で云う項の箇所には薄く浮かび上がる発光があるが、詳細は不明。
 また、人間大の、人間上の”影”のような物体が複数現れ我々を阻害する。”影”は巨像の容姿と酷似するが、対照的に酷く脆く、斬り払えば容易に息絶えた。
 如何にして巨像を止めるか。
 ―――貴方達の作戦を、お伺いしたいのだが。

GMコメント

●依頼達成条件
・『巨像』を止め、村への物的・人的被害を出さないこと。


●情報確度
・Bです。OP、GMコメントに記載されている内容は全て事実でありますが、
 ここに記されていない追加情報もありそうです。


●現場状況
・≪幻想≫郊外のひらけた谷。此の谷は、そのまま村まで続いています。
・時刻は昼間です。特にデメリットはありません。
・シナリオは≪幻想≫郊外のひらけた谷で巨像と相対する時点からスタートします。事前自付与可能です。
・凡そ一キロメートル程離れた所に百名ほどの人が住む村があります。巨像の進行ルートは、その村に正確に重なっています。また遥か遠くには、王都にもルート自体は重なっていることが追加で判明します。


●敵状況
■『巨像』
【状態】
・人型の巨大な駆動体です。一見すると無機物の様に見えます。
・普通に倒そうとすると凡そ一キロメートルを死守するのが難しい可能性があります(勿論地道にダメージを与えて倒すことは不可能ではありません)。巨像の項には紋章上の発光体が刻まれています。この部位は恐らく巨像の……。近づくためには、巨像自身を上っていく必要があります。飛行能力は、有利に判定されますが、巨像の攻撃に注意して下さい。
・巨像の躰からは漆黒の人間大・人間上の『巨像の影』が複数出現し、イレギュラーズ達に襲いかかります。巨像の影自体は低ステータスですが、囲まれると思わぬ被弾に繋がる可能性があります。

【傾向】
・感情、思考能力の有無は不明です。現在までに、発声は確認されていません。
・自身に近づく者や、攻撃をする者を正確に判別し、迎撃行動を取ります。


【能力値】
・機動力が低く、攻撃の命中率も低いのですが、攻撃は大威力です。またその巨躯故に射程が広いです。
・極めて高い物理防御・神秘防御を有しています。


【攻撃】
 1.神罰(A神特レ域、飛、大威力)
 2.斬り払い(A物特レ域、崩れ、飛、大威力)
 3.振り払い(A物特レ域、飛)
※本シナリオでの特レ:R0~R4の全レンジで補正無しで攻撃可能

●備考。
・『巨像』に名前はありません。プレイングでは適宜それと分かるように記載して頂ければ十分です。


皆様のご参加心よりお待ちしております。

  • 虚像・巨像・嘘像完了
  • GM名いかるが
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年05月19日 21時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

カイト・シャルラハ(p3p000684)
風読禽
エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘
コラバポス 夏子(p3p000808)
八百屋の息子
アイリス・ジギタリス・アストランティア(p3p000892)
幻想乙女は因果交流幻燈を夢見る
ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)
黒武護
ルナール・グリムゲルデ(p3p002562)
片翼の守護者
クローネ・グラウヴォルケ(p3p002573)
幻灯グレイ
秋空 輪廻(p3p004212)
かっこ(´・ω・`)いい

リプレイ


 創造神の創造神と云う、循環論法。


 巨像が歩いている。
 高さ凡そ二~三十メートル。
 その質量は、巨像の一歩毎に響く大地の嘶きが代弁している。
「すごい! でかい! かっこいい!」
 狭い世界で暮らしてきた反動か、好奇心の塊の様である 『奇跡の体現者』ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619) は、眼と角を光らせながらその巨像の姿に驚嘆した。
(こういうのって作るの大変そうだよね。
 それとも元は小さい物がおおきくなったのかな?)
 純粋に愉しむそんなムスティスラーフの横では、寧ろその巨躯に恐怖感を覚える『駆け出し』コラバポス 夏子(p3p000808)が自身を鼓舞していた。
「……オーライビビんな、ビビっちまうと尚デカく見えがち。
 ダチが持ってた『アンタの虚像』ってゲームにそっくりだろ?」
 夏子は、自分に言い聞かせるようにして奮起する。彼の背には、凡そ百名の村人の生活が懸かっている。逃げ出すわけには、いかなかった。
「病は気から。喧嘩は度胸。勝負は勢い。
 色々あるけど一つだけ―――全部守る」
 夏子の槍先が遠く巨像の項を目掛けて鈍く光った。
「しっかし、夏子とむっちーの言う通りホントにデカイなー。
 一撃でも喰らったら危なそーだぜ!」
 『大空緋翔』カイト・シャルラハ(p3p000684)が翼をはためかせながら云うと「全くだ」と『神話殺しの御伽噺』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787) が感情の籠らない顔で頷く。旧世界の神を打ち倒してきたエクスマリアには、それとも、驚くに値しない敵であろうか。
「この巨像の目的も、イマイチ分からない。
 何故このルートを進んでいるんだろうな?」
 『紅獣』ルナール・グルナディエ(p3p002562)が皆の胸中を代弁するかのように首を傾げると、横から『落ちぶれ吸血鬼』クローネ・グラウヴォルケ(p3p002573)の溜め息が惜しげも無く漏れた。
「……いやホント、誰が何の目的でこんなもの用意したのやら……。
 お陰でこっちにまで危険な仕事が回ってきましたよ……良い迷惑ッスよ……」
 そのままルナールの呟きに憂鬱気に同意し、そして、ふわりと地上を離れる。カイトと同様に、クローネは飛行の異能を有している。
「何事も二面性がありますしね。
 ……案外、今回も巨像の方に『正義』があるかもしれませんから」
 『幻想乙女は因果交流幻燈を夢見る』アイリス・ジギタリス・アストランティア(p3p000892)が今回の依頼書を思い返す。其処に出てきた三つの単語は、巨像、虚像、嘘像。嘘像だけが未だ判然としていない。
「アイリスちゃんの言う事も一理あるわね。
 ともあれ、注意深く動きは見といた方が良さそうね」
 秋空 輪廻(p3p004212)がアリスの言に頷いて、巨像を見遣った。
「しかし、巨像がこのまま進めば、村への人的被害は避けられん。
 その目的がどうあれ、依頼として受けた以上それは達成しないとな」
 ルナールが静かに言うと、アイリス「ええ」と頷いた。元より被害を見て見ぬ振りする心算も彼女には無かった。
「像の目的は解らない、知りえないけど……。
 どうあっても―――、ヤる!」
 夏子の威勢の良い掛け声が合図と成り、イレギュラーズ達は駆ける。
 目の前の巨躯を。
 打ち倒すために。


「わらわらと邪魔な事だな……」
 手応えも、傷口からの血流も無く、ルナールの振り抜いた横一線の軌道が、巨像の影を切り裂いた。影は霧散して消失し、その先には、ただ無機質な巨躯がちらついた。
 先に飛行に入っていたカイトの視界には、
「おー、随分と湧いてるな!」
 と彼が思わず口に出す程、巨像がイレギュラーズ達の敵意を感じ取ったのか、その巨躯から多数の影が生成され、そしてイレギュラーズ達へと襲い掛かって来ていた。
「……あんまり見てて気持ちの良いモノじゃないッスね……」
 クローネもカイトに同意する。この二人とムスティスラーフの三人は、飛行班として、巨像の発光体に最短距離で向かわんとする戦法を想定していた。そして、そのためには、地上班へと巨像が意識を向ける必要があった。
 斜め上方から袈裟切り、そしてそのまま振り返り薙ぎ払う様に横一線―――ルナールと背を合せるように、輪廻の妖艶な体躯から繰り出される蹴り、手刀が巨像の影を次々に駆逐していく。
「――――――」
 轟音と共に進む巨像は、人間を模した姿。しかし、声らしき声は無い。その体躯が、不意に右腕をゆっくりと持ち上げる。緩慢な動作に、何かが軋むような嫌な音が続くと、
「……来るぞ」
「ヤバい!」
 エクスマリアの指摘に夏子が引き攣った声で答える。巨像のその振り上げた右腕の影が、夏子達を覆っていた。
「手筈通り、散開しましょう」
 アイリスが言うと、ルナールと輪廻も頷く。巨像に向かって左手と右手に地上班が分かれる。
 ……直後、巨像の右腕が夏子らが先ほどまで立っていた地面を殴りつけた。激しい音と衝撃が、イレギュラーズ達を襲う。
「強烈だなあ……」
 ムスティスラーフが口を空けてその様子を眺める。砂埃が舞い、視界がやや悪化していた。
「……うおっ!」
 その様子を眺めていたカイトが突然風圧を感じて声を上げる。竜の呻き声の様な風音がカイトの耳元でなると、真横を巨像の左腕が過ぎていく。すぐさま位置取りを確認し、カイトは巨像の射程外へと移動した。
「……信じられない射程ッスね……」
 クローネも巨像の射程外へと外れる。其処までの位置取りをすると攻撃の手番が限られてしまう筈だが、彼女らには”秘策”があった。


 ルナール、輪廻が巨像の右半身側に。
 エクスマリア、夏子、アイリスが巨像の左半身側へと向かい、二手に分かれた。
「飛行班が発光体を狙いやすいよう精々的になりますよぉ……!」
 ロングスピアを構えた夏子が士気を上げ、巨像の影を屠りながら、上を見上げる。其処には、最適なタイミングを見計らう飛行組の三人。
「―――”衝術ロケット”、か。面白そうだよな!」
 ケラケラと笑うカイトだが、何処か冷や汗が光って見えるのは見間違いだろうか。
「谷の地形が上手く使えなかったのは残念だったけどね。
 でも、射程外から一気に頭頂部に突っ込む作戦、成功させるよ!」
「……あの、やっぱりこれ作戦として……いえ、何でもないです……」
 只でさえ幸薄いクローネの表情が、何時にも増して更に冴えないのも、これまた見間違いだろうか。ムスティスラーフは何とも無さそうだが。
 しかし、巨像の弱点であるかもしれないその発光体へ安全圏から急激に詰めるその戦法は、今回の依頼に於ける虎の子だ。
 だが、その成否は地上部隊が如何に巨像の注意を惹きつけるか、という所に懸かっている。カイトらを見上げていた夏子の視点が、次第に迫りつつある巨像の方へと移る。
「……っ!」
 轟音と震動。巨像の腕が、影ごと潰す様に地面を殴りつけると、輪廻も思わず一瞬動きを止めた。
「大きいというのは、それだけで脅威ね……」
「……全くだな」
 輪廻の言に、ルナールが首肯する。二人は漸くと巨像の足元にまで迫って来ていた。ルナールが反対側の足元へ視線を投げると、
「あちらも上手く進めている様ですね」
 ぱらぱらと巨像の腕から小石が降りしきる中、アイリスがそのルナールの死線を受け止める。

 ―――オオオオオオ――――

 軋み上げる巨像の体躯が、まるで叫びの様に谷を咆哮する。
「動線を確保します、離れてください」
「了解した」
 アイリスの言にエクスマリアが頷き、右方へと逸れる。それを確認し、アイリスのメイジオーブが呼応するかの様に震える。現れたのは、敵を屠る悪夢の霧―――。
「よっし、そんじゃ登らせて貰いますか!」
 複数体の影を纏めて消滅させたアイリスの攻撃で大きく道がひらける。夏子がその機を逃さず巨像の左足へと足を掛け、
「先に行くぞ」
「……って、スゴイねその髪!」
 続いて登り始めたエクスマリアが、己のギフト『神業』を駆使し、夏子を追い抜いていく。
「まさかこんな場所で登山、しかも戦闘付きとはなー……」
 巨像の右足側もほぼ同タイミングで上り始める。ルナールのぼやきに輪廻も頷くが、仮面に隠れている為にその表情は伺えない。

 ―――オオオオオオ――――

「……っ!」
 攀じ登るイレギュラーズを振り払うかのように巨像が大きく動く。ルナールの顔も思わず歪んだ。
「しがみ付いてるのがやっと、という所ですね」
 左半身側の最後尾を上るアイリスも同様に進行を止めている。無理に動けば、地面へと振り落される危険性が大いにあった。

 ―――オオオオオオ――――

 ……やっぱりそれは、叫びだろうか?
 エクスマリアの視線の先。
 無表情の巨像の”貌”は、何も伝えてはくれなかった。
 

「うん、それじゃあそろそろかな」
 ムスティスラーフが言うと、「よしきた!」と威勢よく返すカイト。
「……狙うは巨像の発光部分……。……上手くいって下さいよ……」
「むっちー、クローネ、頼んだぜ!」
 地上班の進行は順調だったが、やはり鬼門は登頂であっただろう。巨像の動き一つ一つが、彼等を振り落す原動力となる。しかし、逆に言えば、飛行班にとって理想的な動きをしていた、ということでもある。巨像の注意は、地上班へと向いていた。
「じゃあ、クローネちゃん。……せーのっ!」
「……マジで頼むッス……!」
 カイトの背後からムスティスラーフとクローネが衝術をカイトへと放ち、カイトはそれを受ける。
「ロケットダッ……う、うおおお……っ!」
 元気よく吹っ飛ばされたカイトは直ぐにその衝撃に表情を変えた。何せ数十メートルを瞬間的に詰めるのである。その影響は小さくないだろう。
 そして、カイトは無事に巨像の発光体付近へと……。
「危ねぇ!」
 カイトの耳に入る、遠くから叫ぶ夏子の声。何とか頑張って目を抉じ開けると、
「―――」
 ―――カイトの躰すれすれに、巨像の目から発せられた、多大な熱量を有する太い光線が過ぎ去っていく。……これが巨像の神秘攻撃なのであろう。
「間一髪だったな……」
 顔に汗を浮かべたカイト。しかし、その巨像の特殊レンジの応戦により、彼の軌道は幾らか逸らせざるを得なかった。
「いやー、危なかったね! それにしても、眼からビーム!
 やっぱりかっこいい!」
「……言ってる場合じゃ無いッスよ……。
 アタシらにまで届く一歩手前だったし……」
「まあまあ。
 さて、間髪入れずに衝術ロケット二発目を撃たなくちゃ」
 ムスティスラーフの言葉に、クローネが心底心配そうな顔をする。焼き鳥にされそうになったカイトを見てしまったのだから余計である。
「……あの、やっぱりこれ作戦として……」
「いくよー、いーち、にー」
「……いえ……時間ありませんしね……」
「―――行ってらっしゃーい!」
 クローネも覚悟を決めた(諦めた?)。
(……蝿叩きにならないことを祈るしかないッスね……。
 ”何”に祈ればいいのかわかりませんが……)
 クローネの背中に、衝撃が走る。
 直後、薄幸吸血鬼は、巨像の発光体へと突き進んでいった。


 イレギュラーズ達の攻撃が熾烈になる中、エクスマリアがいち早く項部分の発光体をその射程へと収めた。
(何らかの操作によって、停止させる事が出来るだろうか……)
 発行体をまじまじと眺める彼女だったが、その手掛かりは得られない。ゆっくりとその部分に触れてみるが、不自然に滑らかな紋章の表面をなぞるだけで、特に変わりも無い。
「では、破壊を試みるぞ」
 エクスマリアが昇りつつ這い上がってきた影に対処している夏子、ルナールへと云うと、「ああ」と両者が頷く。
 レイピアを構えたエクスマリア。
 彼女の有する最大火力の攻撃は、魔力撃による刺突。
「……っ!」
 エクスマリアは力の限り、発光体へとレイピアを突き立てる。
 直後、

 ―――オオオオオオ――――

「くっ……!」
 一際強く、巨像が身を捩じり、その衝撃がイレギュラーズ達を襲った。
「まだ止まらない、のね……っ!」
 巨像の旨辺りで必死に捕まる輪廻が苦しげに言う。
「影共も、しつこいな……!」
 ルナールはほぼ項付近にまで来ている。横に夏子、少し下にアイリスが位置取っていた。両手を塞がれたルナールはランスを十分に扱えないが、アイリスがヴェノムクラウドで始末していく。
 そして、カイトに続いて衝術により距離を詰めたクローネが、今度は上手く項部分へと辿りつき、エクスマリアの隣へと無事着地した。カイトも、既に飛行で此方へと向かっている。
「……やるしかないッスね……」
「ああ。この反応からして、発光体が弱点であることは間違いないだろう。
 しかし、一撃で堕ちる程、ヤワでも無さそうだ」
「……自信は無いッスけど……出来る限りはやってみるッス……」
 揺れる巨像に四苦八苦しながら、クローネはグリモワールを取り出し、神秘術式を展開する。
 
 ―――オオオオオオ――――

 再度、振動。夏子は思わず足を縺れさせ、バランスを崩した。
「ヤバ……っ!」
 しかし突然、何かが彼の躰を支えた。
「だいじょうぶ?」
「ギリギリだったな!」
「……いや、助かった」
 全力移動の飛行で追いついたムスティスラーフとカイトが夏子をフォローする。
「それでは、一気に詰めましょう」
 アイリスが言う。イレギュラーズのほぼ全員が、項周辺に集結していた。
 
 ―――オオオオオオ――――

 劣悪な条件の中、各々が、己の持てる最大の一撃を此処に注ぐ。
「よーし、一発このまま紋章を叩くぜ!」
 カイトが荒海の短剣の短剣を突き立て、
「仕事を果たしましょう―――」
 アイリスが宝珠から鮮やかな火花を散らせ、
「僕の全力の一撃!
 ……本当は、仲良くなれたら良かったんだけどね!」
 ムスティスラーフは仕込み杖の中の刺突剣に魔力を込めて、
「さて、どうにもならないし……。
 壊すとしますかね?」
 ルナールが両手で握るランスを大きく振り払い、
「墜とさせて貰うわよ」
 輪廻が一刀両断を繰り出し、
 ……そして、

 ―――オオオオオオ――――

 嘗てなく激しい咆哮が巨像から撒き散る。
 そんな最悪の状況の中、
「死者が出なきゃ良いってモンじゃない
 帰る家も失なったらどれだけ不安か……っ!
 思い出も何もかも失われた土地に帰るのが、
 どんな気持ちか考えただけでたまんねえってよぉ!」
 盾を振り被り、強烈なシールドバッシュを叩き込み―――。
 


「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」

 今度の其れは、偽らざる”咆哮”だった。
 巨像の封印されていた口腔が解放され、想像とは全く異なる、極めて不愉快な、甲高く錆びついた奇声が谷全体に響き渡り、それが真実、断末魔であることを認識させた。
「な、なんだこれ!」
 カイトが巨像の異変に気が付く。緩やかに動きを停止させた巨像の躰が、ぼこ、ぼこ、と球体で押し潰されるかのように、次第に縮小していく。
 ―――折りたたまれていく。飛行異能を有する三名はともかく、その他のイレギュラーズ達はその急激な変形に耐え切れず地上へと投げ出される。
「痛っ……!」
 輪廻とアイリスがその衝撃に顔を歪めた。そして、横たわった体躯から眺める”空”には、どんどんと小さくなっていく巨像が在って……。

 最後に巨像は、無限に微小な”箱”となって、その姿を霧散させた。

●エピローグ
 ルナールが煙管を咥え溜息を零す。
「やれやれ……結局目的は分らず仕舞いか……。
 ……やっぱり王都が目的地だったって事なのかねぇ……」
 其処には、巨像も、巨像の影も無く。丸で最初から何も無かったかのように只、谷が在るだけで、そして、慣れない戦いに大きく疲労したイレギュラーズ達が居るだけであった。
「……突如現れた巨像……まさか光が屈折して出来た巨像……。
 だった、なんてことはないッスよね……」
「幻覚発生装置って説も考えたんだけどなー。
 突然現れたってのも、何か変だし」
「最後の動きは、確かに変だったけどね。
 でも、光や映像だとしたら、触れない筈だから……」
 クローネとカイトは、輪廻の返答に「……そうッスよね……」「そうだな……」と頷く。
 一方。ムスティスラーフは周囲を色々と探り、
「誰かが操作していた物、っていう訳でもなさそうだなあ」
 と呟く。勿論、”同乗”していかもしれない者が居た可能性も、今と成っては薄いだろう。
「対峙した時の絶望感は、やっぱ『アンタの虚像』並みにハンパなかったわ……」
「マリアには、”ゲーム”と云うのは良く理解できないが」
「あ、んじゃ今度やります?」
 エクスマリアの髪がぴょこぴょこと揺れる。まあ、全く興味が無いという訳でもない……のかもしれない。

 イレギュラーズ達は暫しの休息の後、所轄貴族からの労いを受けてその谷を去る。
 最後尾に立ったアイリス。何気なく振り返り、嘗ての巨像の在りし場所を振り返った。

「それでは、一帯何が『嘘像』だったのでしょうか?」

 その声は虚空に響く。
 誰も答えない。
 其れもその筈か。
 アイリスは瞬きをして、「おーい」と前方で誘っているカイトの声に進路を戻す。

「全て、『嘘像』」

 ぴたり、とアイリスは足を止めた。再度振り返る。
 やっぱり其処には何も無く。
 只、穏やかな風だけが彼女の頬を撫でていった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

皆様の貴重なお時間を頂き、当シナリオへご参加してくださいまして、ありがとうございました。

 ノーマルシナリオと云う事で、素直にオープニングを解釈して頂ければ攻略可能な内容ではありましたが、皆様の様々な不利状況を想定する姿勢、より良く作戦実行できる環境作りへの姿勢、を表現する優れた連携、作戦、プレイングであったと感じました。
 特に、巨像の正体は何か、と云った所の推察に関しては、色々なアイデアがあり、感服しました。シナリオタイトルに引っ掛けるのは私もよくやる手段ですので、近いかもしれませんね。真実は闇ですが、果たして……。
 因みに私には、プレイ経験はございません。

ご参加いただいたイレギュラーズの皆様が楽しんで頂けること願っております。
『虚像・巨像・嘘像』へのご参加有難うございました。

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