シナリオ詳細
<神逐>百鬼、夜を行く
オープニング
●
上天に輝く月光。街よりながめる天守閣には、巨大な一匹の犬がいる。
突如とした起きた異変にに、カムイグラ、京の都の町人たちは、混乱のただなかにあった。
「なんだありゃぁ……」
呆然と、空を見上げるものもいれば。
「この世の終わりか……」
悲嘆にくれうずくまる者もいる。
――その犬の正体は、神威神楽の護り神『黄泉津瑞神』である。犬の姿にて顕現し、時の権力者へと予言とかごを与えるといわれているその神は、今この時、歪んでいた。
今日の都に渦巻く大呪、そして満ちに満ちたけがれの影響を受けた神は、その在り様を大きく変貌させられてしまったのである。
ごう、と神は吠えた。そのたびに、身に満ちたけがれが、呪いが、吐き出されて宙に舞う。降り注ぐ呪いは地に落ちて、その姿を異形の怪物へと変化させた。
それは、呪いが姿を持ったものであったり、怨霊であったりした。そいつらは京の都に落ちて、群れを成し、進み始めた。
目的などない。ただ、目の前にあるを殺し、破壊し、進軍する。
百鬼の夜行、それが今、まかり通ろうとしていた。
「な、なんだ――!?」
鬼人種の男が悲鳴を上げた。行軍に巻き込まれた男は、瞬く間に怪物に群がれ、その無残な屍を晒した。
その様を見せつけられた町人たちに、混乱が伝染した。悲鳴を上げ、都を逃げ惑う町人たち。それをあざ笑うように、怪物たちが襲い掛かる。
食らい、壊し、殺す。欲望のまま衝動のまま、怪物たちが街を練り歩く。
その行く先に破壊と絶望を。その行く後に死と壊滅を。
百鬼が夜を行く。
百鬼が都を、行く。
●
「神使どのたちにござるか!」
奉行所では大勢の同心たちが駆けまわり、都を練り歩く怪異たちの対応と、人々の救出を行っていた。そこに呼ばれた神使――イレギュラーズ達は、街の混乱に改めて緊張感を張り詰める。
「みてのとおり、此方も手一杯でありまして……手短に話させてもらい申す!」
なんでも、現れた『黄泉津瑞神』の影響により、都に大量の妖、呪の類が現れ、破壊活動を開始したのだという。
奉行所も、同心たちを使い民の救助や対処を行っているが、それでも限界があり、未だ逃げ遅れた民――鬼人種や八百万を問わず――たちもいるのだという。
そして、同心たちの決死の捜索により、この百鬼夜行を率いる、群れの長のような怨霊を発見したのだという。
「皆様方には、この長の怨霊を発見し、討伐していただきたいのです! 今は群れとして行動している怪物たちですが、頭を押さえればあとは霧散するだけ……そうなれば、同心たちでも対処は可能にござる」
また、同時に逃げ遅れた民がいれば、奉行所へ向かうよう、伝えて欲しいとの事でもある。今まさに襲われている民もいるだろう。事態は一刻の猶予もない。
「お願いいたし申す! 今日の都を、民たちを守ってくだされ!」
同心が頭を下げるのへ、イレギュラーズ達は力強く頷くと、夜の街へと飛び出した――。
●
都は混乱の最中にある。あちこちに悲鳴が、火の手が上がり、逃げ惑う人々の悲哀と絶望は、街に飛び出したイレギュラーズ達にも伝わった。
月光と、巨大な犬が、その様を見下ろしている。
絶望を、無残を、見下ろしている。
――これ以上の暴虐を、許すわけにはいくまい。
百鬼の行軍を、止めるのだ。
- <神逐>百鬼、夜を行く完了
- GM名洗井落雲
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2020年11月18日 22時20分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●百鬼、夜を行く
「夜が来た、夜が来た」
ごうごう、ごうごう。妖怪たちが声をあげる。
「大願成呪の夜が来た!」
ごうごう、ごうごう。妖怪たちが街を行く。
家屋を壊し、人を食らい――濁流と化した百鬼の夜行。
暗き夜を赤に染めて、鬼たちがまかり通る――。
さて、百鬼夜行の排除を依頼された神使(イレギュラーズ)たちは、奉行所の面々から長の目撃箇所を確認し、街の地図に簡単に印をつけた。それと百鬼夜行の行く先を目安に、長の居場所を割り出そう、という訳だ。
「さて、チームを二つに分けるわけだけれど――」
『ヴァイスドラッヘ』レイリ―=シュタイン(p3p007270)が言った。探索の効率をあげるために、神使たちは、八名を四人ずつの二チームに分けて、二方向から長の予測地点へ向けて探索を行う事に決めていた。
チームに内訳としては、以下のようなものだ。
Aチームは、レイリ―を始めとし、『月夜の蒼』ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)、『紅獣』ルナール・グリムゲルデ(p3p002562)、『白い死神』白夜 希(p3p009099)の四名で構成される。
Bチームは残りのメンバー。チュチュ・あなたのねこ(p3p009231)、不動 狂歌(p3p008820)、『ジュリエット』江野 樹里(p3p000692)、そして『ふゆのこころ』エル・エ・ルーエ(p3p008216)だ。
「くれぐれも、お互い無理はしないようにね?」
レイリ―の言葉に、樹里が応じた。
「ええ、ええ。燃費が悪いのが私の弱点ですがそこはそれ。なるべく低カロリーで、しかしいざという時は全力で。しっかりお役目を果たさせていただきます」
にこり、と微笑み、Bチームの仲間達へと笑いかける。レイリ―はその様子を見て、頷くと、
「では、作戦を開始するわ! 皆、気を付けて。長の所で会いましょう!」
Aチーム、Bチーム、両チームのメンバーが視線を交わし合う。想いは一つ。速やかにこの街の人々を救い出す。
かくして、一行は夜の街へと駆けだした。
さて、Aチームから状況を確認していこう。
「酷いな……どこもかしこも、助けを求める声でいっぱいね……」
レイリ―が思わず顔をしかめた。人助けセンサーを発動してみれば、付近にもすでに、いくつもの助けを求める声が聞こえてくる。
今すぐに飛び出して、全員を助けたい――だが、そうするには、時間も戦力も足りなかった。
「全員を助けるなら、最短距離での突破が必要、だよね?」
ルーキスが言うのへ、仲間達は頷いた。長さえ倒せれば、百鬼夜行は雲散霧消するわけだ。一人一人を救う時間が惜しい今、最優先に考えるべきは、百鬼夜行を消滅させ、被害を少しでも減らす事。
「ちょっと集中するから、ルナは周囲の警戒お願いね」
と、ルーキスは夜目の効く鳥(ファミリアー)を召喚した。それをはばたかせ、空から街を俯瞰する。上空から、長目撃ポイントを調査し、長そのものを発見する、と言う作戦だ。
「警戒役くらいはお安い御用さ」
ルナールがそう言って、周囲の警戒を行う。奉行所、出発地点からさほど離れていないという事もあり、この辺りに百鬼夜行の姿は見えない。とはいえ、警戒しすぎるという事もないだろう。敵と遭遇する確率は、決してゼロではないのだから。
「とりあえず、今のうちに付近の人に、避難を呼びかけなきゃ……」
希はそう言って、仲間達に視線を移す。
「スピーカーボムを使わせて。……もしかしたら、敵を呼び寄せてしまうかもしれない。それでも――」
「いいよ。やろう」
レイリ―が笑った。
「なに、元から斥候と護衛は俺の仕事だからな。遠慮することは無い」
ルナールもそう言って頷く。ルーキスはファミリアーとの視覚共有に集中していたため、言葉こそ発さなかったがそれでも、ゆっくりと頷いてくれた。
「……ありがとう!」
希はすぅ、と息を吸い込んだ。スピーカーボムのスキルを発動して、その声を周囲に響き渡らせる。
「……この辺りは危険だから! 奉行所へ向かって走れーっ!」
今だけは、邪魔しないでくれ、私のギフト。胸中でそう呟きながら。叫ぶ。希のギフトは、他者にその存在を、記憶させづらくするかもしれない。声もまた、届きづらくさせるかもしれない。
それでも。そうだとしても、叫ぶことだけはやめない。助けたいと言う気持に、嘘はつけないから。
「よし、叫びながらだけれど、走れる?」
レイリ―が尋ねるのへ、希は頷いた。
「そうだな、移動しながらの方が効率がいい……ひとまず、目撃地点へ向かって走ろう」
ルナールがそう言って、ルーキスも同意する。叫びながら、皆は走った。声が、思いが、届きますように。
――その声は、確かに届いていた。逃げ惑う人々に、確かに通じていた。
いや、その声は、言葉は、すぐに記憶から薄れてしまうものかもしれない。しかしきっと、ギフトは想いを消し忘れた。
助けたいという願い。助かって欲しいという想い。それは、怯え、逃げ惑う人々の胸に、確かに希望となって届いた。混乱する人々が、確かにその声を受け取った瞬間から、奉行所へ向けて奔りだしたことは、事実だった。
一方、Bチームはさっそく、複数の敵と交戦していた。様々な容姿の、醜く悍ましい『妖怪』達。百鬼の妖がBチームの神使達の行く手を遮る。
「神使が助けに来たわ。皆、奉行所に向かって逃げて。どうか、奉行所に向かって逃げて」
戦いながらも、チュチュはその叫びを周囲に響き渡らせた。その声が敵を呼び寄せてしまうかもしれないリスクは、あえて無視した。
――どのみち、邪魔な相手とは戦うつもりだったのだ。此方に来てくれるなら、それも悪くない。
醜悪なカエルのような容姿の妖が、その口から鞭のようにしなる舌を振るう。ばちん、と音をたてて、地を打ち据える舌。
「ちっ、カムイグラで! 我が物顔で暴れてくれるじゃないか!」
狂歌は手にした剣を振るって、撃ち放たれる鞭の舌を切り裂いた。ぎゃっ、とカエルが悲鳴を上げてひっくり返るのへ、追撃をお見舞いする。じゅわ、と言うような音を立てて、カエルが蒸発するように消えうせた。通常の生き物ではないという事なのだろう。
ぎぎ、ぎぎ、と、犬のような妖怪が襲い掛かってくる。その鋭い爪と牙が、狂歌の腕に傷を作る。
「一匹一匹は確かに大したことは無い! が、数が多いな!」
「封印します。めっ! です!」
エルの放つ封印術式が、犬のような妖怪に直撃する。その口を、封印術式で強制的に閉じられた犬のような妖怪が、うごうごと呻き声をあげた。
「いま、です!」
「おうっ!」
狂歌は手にした刃で、犬のような妖怪に斬りつけた。ぎゃん、と悲鳴を上げて、中空へと溶けていく。
「そっちはどうだ!」
「ええ、なんとか。スキルを使わなくても、一対一ならどうにかなりました」
樹里が微笑む。とはいえ、一対一の状況を維持することはなかなか難しい。自然、少しずつ消耗はして行ってしまう。
「やはり、早く長を見つけて倒したい所ですね……」
樹里の言葉に、仲間達は頷いた。敵の数は膨大だ。出来れば速やかに長を処理したい所だが、此方のチームも、Aチームの方も、まだ長を発見できてはいない。
「ン……待って、だれか、来る……」
チュチュがそう言い、指さす方向へ、仲間達は視線を移す。ほどなくして、幼子を抱きかかえた女性が、息を切らせて走ってきた。
「ああ、お前さん方も逃げて!」
慌てるように叫ぶ女性。チュチュは安心させるように、薄く笑った。
「大丈夫よ。あたしたちは、神使よ」
「その声、さっき奉行所に行くように言ってた……?」
地獄に仏を見たようだ、とはまさにこのことだろうか。女性は些か安心した表情を見せて、しかしすぐに慌てた様子を見せると、後方を指さした。
「あ、あっちででっかい鎧武者が暴れてるのさ! まだ逃げ遅れてる奴らも居るんだ、なんとかしておくれよう!」
「大きい鎧武者……リーダー格の奴か」
狂歌が声をあげるのへ、エルが頷く。
「いきましょう? 皆を見捨てては行けません」
「ええ。ちょうど行き先と同じようです。避けては通れないでしょう」
樹里の言葉に、仲間達が頷く。道行は決まった。
「お姉さん、奉行所の方へ逃げてくださいな。エルが、小石を落としてきたの。白い小石よ。それを探して」
チュチュが言う。確かに足元を見れば、白い小石が点々と続いているのが分かる。それは、チュチュの言った通り、エルが目印にと落としていった、白い小石だ。エルが、こくり、と頷く。
「たどれば、無事に奉行所までいけます。気を付けて、くださいね」
エルの言葉に、女性は頭を下げると、小石を探しながら駆けだした。イレギュラーズ達も、逆方向へと走り出す。ほどなくして、建物を斬りつけるような音と、巨体の鎧武者の姿が見えた。数は一体。だが、その巨体は驚異的だ。
「力を合わせて行きましょう」
樹里の言葉に、仲間達は頷いた。
「俺が前に出る! 援護、頼む!」
狂歌が叫び、飛び出した。
「来いよデカブツ! 俺が相手だ!」
叫び、剣をかざす――大刀を掲げた鎧武者が、狂歌に気づいた。振り下ろされる大刀を、狂歌が受け止める。がぎり、と鈍い音を立てて、刃と刃が交差した。
「いまだ、叩け!」
狂歌の叫びに、チュチュが飛び出した。
「ン……それでは。あたしとあなたで、運比べね?」
手にした『アグロドルチェ』を振るう。放たれた呪術が、鎧武者の両の眼に直撃した! 痛みに身体を揺らせる鎧武者。その隙をついて、狂歌が離脱。
「打ち据えます」
樹里が静かに、声をあげる。掲げた長杖――いや、長銃の先端を鎧武者に向けて引き金を絞れば、放たれた雷が、まさに鎖の鞭のごとく、鎧武者を激しく打ち据えた。
「とどめ、です」
放たれた、エルの術式。『悪意』を抽出して放つその術式が、感電する鎧武者を飲み込んだ。さく裂する悪意の衝撃が、鎧武者を内部より叩く。やがてぐらり、と揺れた鎧武者が、地響きを立てて地に倒れ伏すのに、さほどの時間はかからなかった。
おお、と周囲から歓声が漏れる。逃げ遅れた人たちが、戦いの行く末を見守っていたのだろう。
「皆、奉行所に向かって逃げて」
スキルを使い、自身の声を、チュチュは響き渡らせる。それを受け取った人々が、口々に感謝の言葉と戦いへの称賛の声をあげながら、奉行所へ向かって避難していく。
その時――上空に、紅い信号弾が打ちあがったのを、神使達は確認した。
「あれは……長を発見した合図ですね」
樹里の言葉に、皆が頷いた。
「急ごう! 上手くやれば挟撃できるかもしれない!」
狂歌の言葉を受けて、皆は走り出した。
●百鬼の祭
「大願成呪! 大願成呪!」
「歌いや踊れ、呪いや呪え!」
現場は、さながら祭のような騒々しさに満ちている。神輿のようなものに乗り、騒がしく叫び声をあげるのは、頭の巨大な老人だ。さながら、大呪版ぬらりひょんと言った所だろうか。これが、情報を照合するに、長に間違いない。
「よーし見つけた、大人数で助かるよーと」
ルーキスはくすりと笑う。
「百鬼夜行の長よ! 京を混乱に陥れ、罪なき者を襲う悪鬼よ! ヴァイスドラッヘが止めに来たぞ!」
レイリ―を筆頭に、Aチームは戦闘に突入した。7体の小型妖怪に、3体の大型鎧武者。それに長と言う布陣で、敵はこちらを待ち構えている。四人で戦うには、些か分が悪いか。だが、合流を待っている時間はない。此方が待てば待つだけ、人々の犠牲が増える可能性があるのだ。
名乗りを上げたレイリ―に、小型妖怪の群れが殺到する。カエル、犬、昆虫、様々な外見をした小型妖怪たち。実力はさほど高いとは言えないが、しかし数の多さがじわじわとプレッシャーとなる。
「やあ、良い夜だ、ちょっと遊んでいかない?」
一方、ルーキスはにこり、とわらうと、熱砂の嵐を召喚。その熱く叩きつけられる砂粒で、小型妖怪たちを強かに打ち据えていく。ぎゃ、と声をあげて、2体の小型妖怪が消滅。その嵐から飛び出てきた小型妖怪を、ルナールの赤と黒の銃弾が直撃。ぱん、とはじけて消滅する。
「やあ、攻撃のカバーありがとう、ルナール」
「撃ち漏らしの掃除は俺の役だからな、任せておけ」
ルナールは、ふっ、と微笑を浮かべる。続けざまに放たれた銃弾が、小型妖怪を次々と打ち貫いていった。
「……サポートは任せて。攻撃をお願い……!」
希が歌うのは、耳に残らぬ優しい死神の歌。耳に残らずとも、記憶に残らずとも、優しい旋律が、仲間達の傷を逐一癒していく。
「呪いや呪え! 呪いや呪え!」
長がケタケタと笑いながら、呪いの銃弾を撃ち放つ。黒い呪いが周囲の建物に着弾し、破壊していく。神使たちは跳躍してそれらを回避。
「くっ……長も厄介ね。出来れば早く決着をつけたいけど……」
レイリ―が呟く。長は守られているとはいえ、相応に攻撃能力を有しているらしい。やはりこちらが些か不利か――と、そこへ。
「お待たせしました!」
敵陣営の後方より響き渡る、樹里の声。Bチームのメンバーが、挟み撃ちの形で合流したのだ!
「よーし、いいタイミングだね!」
ルーキスが魔術書を掲げた。そこから解き放たれた鎖の雷が、より武者を激しく叩き、打ち据えた。
「鎧武者はこっちで受け持とう! キミたちは、長に集中攻撃しておくれ。ルナール、ヴァイスドラッヘ、出来るだろうね?」
微笑を浮かべてそう言うルーキスへ、ルナール、そしてレイリ―が頷いた。
「了解だ! さっさと終わらせよう!」
「引き続き盾役は任せて。希殿、援護、お願いする!」
「……わかった! 任せて! 誰も死なせたりなんかしない!」
希が再び死神の歌を歌う。歌詞は分らずとも、曲は覚えずとも、その優しさだけは残る。
「さぁ、改めて名乗ろう! 私はヴァイスドラッヘ! 悪鬼どもを止めに来た!」
白の大盾を片手に。白のランスを片手に。白き龍の如き英雄が、その咆哮をあげる。鎧武者たちが、一斉にその大刀を振り下ろした! その全てを、英雄は盾にて受け止めて見せる!
「この程度では! 倒れない!」
盾を力強く圧して、大刀をはじき返す。
「ルーキス殿! ルナール殿!」
「はーい、任せてよ!」
再び魔術所を掲げる。放たれた雷の鎖が、鎧武者たちをからめとった。縛り上げ、激しいスパークでその身体を焼き上げる。バチバチと火花を散らし、煙をあげながら、しかし鎧武者の行動は止まらない。
「んー、しぶといなあキミ……だけど。任せた、ルナ!」
「任された!」
ルナールが手にした蒼白い槍が、月光を浴びて煌く。突き出される、強烈な一撃! 敵の構えもろとも粉砕する痛打! 鎧武者の鎧をひしゃげさせ、そのどてっぱらに風穴を開けて見せる。
おお、と呻き声をあげて、鎧武者が転倒した。そのまま光の粒子となって、一体の鎧武者が消滅していく。
「残り二体……! 圧して!」
希の言葉に仲間達が頷く。
一方、後方から奇襲を仕掛けたBチームも、長との激しい戦いを繰り広げていた。撃ち放たれる呪いの魔力弾を、受け止め、あるいは避け、接敵する。
「呪いや呪え! 呪いや呪え!」
「クソ、ふざけやがって!」
狂歌が接敵するや、激しい剣の斬撃が、長へ振り下ろされる。長が、手にした杖でそれを受け止めた。
「見た目に反して力があるのか……皆、一気に決めるんだ!」
「はい。エルは怒っています。人を気づける百鬼夜行は、エルは嫌いです。だから、容赦はしません。めっ、です!」
エルは封印術式を撃ち放つ。放たれた光が長の口に飛来し、その口をふさいだ。
「呪え、呪え……むぐぐ」
「ン……呪いがお好き? なら、差し上げるわ」
チュチュの放つ呪術が、長へと突き刺さった。内部から炸裂する呪いが、長を激しく打ち据える!
「ええ、ええ。ここまで来たら、出し惜しみは無しです!」
かしこみかしこみ申し上げます。此れより捧げますは果て無きを求める者の一閃。それは受理の/樹里の、魔砲/魔法。
放たれた魔術砲弾が、一直線に長へと向かい、宙を疾走する。空気を焼いて疾駆する光! それが刹那の内に、長の胸を貫いた――。
ルーキスとルナールのコンビネーション攻撃が、さらにもう一体の鎧武者を打ち倒す。全員がボロボロに近かったが、しかし誰もが戦場を離れることなく、戦線を維持し続けていた。
「残り1体ね……さぁ、来い!」
レイリ―が再び、その白の盾を掲げる――その瞬間に異変は起きた。鎧武者は、突如として脱力。そのままガシャリ、と膝をつくと、光の粒子となって、夜の闇に溶けて消えていく。
あたりを見回してみれば、周囲で、あるいは遠くで、同様に光の粒子が空へと立ち上っていくのが見えた。それが、百鬼夜行の妖怪たちが、消滅している証左だと気づいたとき。
「やった……のね」
レイリ―はふぅ、と深く息を吐いた。
「大丈夫かしら?」
チュチュが、Bチームのメンバーが、此方へと駆けよってくる。
「全員無事だよ。ルナールと、希のおかげで、何とかね」
ルーキスの言葉に、ルナール、そして希が頷いた。
「……何とか、守りきれた、かな」
胸をなでおろす、希。
「きちんと生き残っただけでも僥倖かな。ルナール先生もお疲れ様」
ルーキスが言うのへ、ルナールが頷く。
「まぁ、全滅じゃないだけでもマシだと思う。ルーキスもな、お疲れ様……けど、まだ仕事が残ってるよな」
「そうですね。怪我をしている人や、自力で逃げられなかった人たちが、残っているかもしれません」
樹里の言葉に、エルは頷いた。
「ちゃんと、助けてあげないと、ですね」
「よし、じゃあ最後の一仕事と行くか!」
狂歌の言葉に、仲間達は頷いた。
かくて脅威は去った。
だが、まだもう少しだけ、神使たちの助けを待っている人たちがいる。
その人たちの下へ――神使たちは夜を行く。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
ご参加ありがとうございました。
皆様のおかげで、百鬼夜行は消滅。
被害も最小限に長られたことでしょう。
GMコメント
お世話になっております。洗井落雲です。
京の都に、怪異の群れが現れました。
これを討伐してください。
●成功条件
『百鬼夜行の長』の撃破
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
●状況
夜の京の都に、怪異の群れ、百鬼夜行が現れました。これは『黄泉津瑞神』の影響により、生み出された呪いや怨霊等が具現化した存在です。
現在、百鬼夜行は都内に広く分散し、家屋や町人たちを蹂躙しています。
一刻の猶予もありません。皆さんは夜の都へと突撃し、この百鬼夜行を率いる『百鬼夜行の長』を発見、撃破してください。
もちろん、倒すべき敵は『百鬼夜行の長』だけではありません。『百鬼夜行の長』を捜索する過程で遭遇する敵や、逃げ遅れた町民を襲う敵などと戦う事もあるでしょう。
万全の準備を備え、敵の討伐に向ってください。
作戦決行時刻は夜。フィールドは京の都になります。特に何もしなくても戦闘ペナルティなどは発生しませんが、明かりを用意したり、周囲の建物などを利用する事で、様々な判定に若干のプラス補正がかかることもあります。
●エネミーデータ
百鬼夜行 ×???
妖、呪いの具現化、怨霊などと言った怪物の群れです。様々な種類の妖で構成されているため、これと言った具体的な情報が無いのが難点です。
とはいえ、皆さんよりは格下の相手ですので、充分に蹴散らすことは可能でしょう。
武将の怨霊 ×???
百鬼夜行の群れの中にたまに存在する、小リーダー的な存在です。主に物理属性の近接攻撃に特化した敵で、手にした大刀は高い攻撃力と出血などのBSを誇ります。
数自体は少ないですが、遭遇した場合は少々注意した方がよさそうです。
百鬼夜行の長 ×1
百鬼夜行を率いるリーダー的存在です。この怪異を倒せれば、百鬼夜行は霧散し、消滅するでしょう。
主に神秘属性の遠距離攻撃に特化した存在です。呪殺や火炎系統のBSを付与してきます。
単独で遭遇することはありません。武将の怨霊や、百鬼夜行の妖を護衛につけています。
以上となります。
それでは、皆様のご参加をお待ちしております。
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