PandoraPartyProject

シナリオ詳細

秋と冬の境目に

完了

参加者 : 8 人

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オープニング


「あれ、来ないな」
「来ないね」
「どうしようか」
 ぼそぼそこそこそ、寄り集まって話し合っているのは3人の小人であった。それは精霊とも妖精とも呼ばれる曖昧な存在。そして彼らはここ一帯の秋を司る精でもあった。
 今日は秋と冬の境目、冬の精とバトンタッチ──の予定だったのだが、肝心の相手が来ないのである。
「どうしような」
「どうしようね」
「冬の精は起こされたがらないからなあ」
 いや、だからといって悪いのは向こうだし、こちらから出向いて叩き起こす分には何ら問題ないのである。3人だってそう思う。けれども問題なのは冬の精が用意している使い魔たちであった。
「冬の精しか命令できないからな」
「見境なしだよね」
「敵いっこないぞ」
 冬の精が安眠妨害されないようにと配置した使い魔たちは、例え秋の精たちであっても蹴散らされ追い返される。冬の精の番犬といったところか。
「でもこのままだと冬が来ないよ」
「眠いし」
「眠いねえ」
 目をこすり始める秋の精たち。冬とバトンタッチをした後は彼らも眠りにつくのだ、睡魔が程よく襲ってきても良い頃合いである。
 しかし──秋も冬も眠ってしまったら、どうなるのだろう?
「イレギュラーズを呼ぼうよ」
 1人がそう告げた。森の動物たちが又聞きで教えてくれた存在らしい。その先でも又聞き、その先でまたさらに又聞きと伝言ゲームをしているものだからその噂は曖昧になったり、違う伝わり方をしてしまっているようだが。
「新しい土地をセイハしたとか、悪いものを倒したりとか」
「ふーん」
「ふーん?」
 他の2人は他の2人で、もう眠くて眠くて仕方がないと言わんばかりな目を向けてくる。おそらく話の半分も頭に留まっていないだろう。
 秋の精の1人はその2人を急かすようにして、情報源である森の動物たちへ話を聞きに行ったのだった。



「……で、ここにたどり着いたと」
 『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)はテーブルに腰掛けた精霊に目線を合わせた。その後ろではついてきていた2人の精霊が力尽きてスヤスヤと眠っている。なんでもこの3人、森の動物たちにイレギュラーズへ頼みごとをするにはどうしたら良いのか聞いて回っていたらしい。森に住まう動物たちに『街のどこそこにあるローレットの〜』なんて事細かに知るモノはなかなかいなかっただろう。故に、どうにか近隣まで出てくることができた精霊たちはとあるイレギュラーズに保護されたのだ。
「あまりにもそこの2人が疲労困憊だったのでな」
 そのイレギュラーズ──『焔の因子』フレイムタン(p3n000068)は眠る精霊2人を見る。寝顔に滲んだ疲労はちょっとやそっとじゃ消えないだろう。
「このまま来年の秋まで起きないかも……僕も眠いよぉ」
 起きていた1人もふわぁと欠伸をひとつ。ユリーカがぎょっとそれを見る。
「ね、寝たらまずいのでは!? 早く冬の精の場所を言うのです!」
「う? あー……ええっとねえ、『ビエルの森』トコだよ」
 目をゴシゴシしながら答える精霊。ユリーカとフレイムタンは幻想の地図を開き、件の名を探した。
「あったぞ」
「今すぐイレギュラーズを集めるのです! 精霊さん、まだ寝ないでくださいね!」
 ふわぁい、と返事はひどく眠たげで。これは早急に冬の精を叩き起こし、役目を交代してもらう必要がありそうだった。

GMコメント

●成功条件
 冬の精を起こす

●情報精度
 おねむな精霊によりこのシナリオの情報精度はBとなっています。ちょっと不安ですね。

●エネミー
 冬の精の住処へ近づくと襲いかかってきます。奇襲に警戒する、こちらから仕掛けるなどの工夫が必要です。

・ヒェムウルフ×4
 冷気をまとった狼です。近接アタッカー。すばしっこそうです。
 外見や状態から想定されうるBS攻撃があると思われます。

・ヒェムマン×2
 冷気のオーラで形取られた騎士。物理攻撃が効くか怪しいです。向こうからの攻撃は当たるようですが……。
 耐久力があるようです。前線でタンク的な役目を果たすと想定されます。

・ヒェムフライ×4
 冷気をまとった真白い蝶。飛行能力を持ち、その鱗粉や巻き上がる風は他者を傷つけます。BS攻撃についても警戒が必要でしょう。
 互いにも攻撃は影響するのか、散開する傾向にあります。

●フィールド
 ビエルの森。モンスター等が出ることはなく、その一帯の四季を司る精霊たちが住処にしている場所です。北方の奥に真っ白な大木があります。
 向かうために道すがら、とまではいきませんがさほど苦労しないでしょう。もしかしたら野生動物の姿が見られるかもしれません。

●精霊
・冬の精
 お寝坊さんした精霊です。イレギュラーズの皆様が来るまでぐぅすか眠っているでしょう。寝過ごしたと知れば慌てるはずです。

・秋の精
 3人でひとつらしいです。イレギュラーズとともに森へ戻ってきており、変な場所で寝てしまわないように自分たちの住処へ戻るそうです。

●ご挨拶
 愁です。眠たげな精霊さんから依頼が舞い込みました。
 彼らは森と周囲一帯の季節を司っているようですね。ちゃんと冬が来るようにしてあげましょう。
 それでは、ご縁がございましたらよろしくお願い致します。

  • 秋と冬の境目に完了
  • GM名
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年11月15日 22時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (8人)

杠・修也(p3p000378)
壁を超えよ
ヨハン=レーム(p3p001117)
無限循環
ポシェティケト・フルートゥフル(p3p001802)
謡うナーサリーライム
シャルロット・D・アヴァローナ(p3p002897)
オトモダチ
黎 冰星(p3p008546)
パンドラの色は虹色
ラグラ=V=ブルーデン(p3p008604)
星飾り
黒野 鶫(p3p008734)
希望の星
アンジェリカ(p3p009116)
緋い月の

リプレイ


 森を流れる風は冷たいながらも、まだ『秋』であるのだと感じさせる。この森に木枯らしはまだ吹いていないようだ。
「もう冬の足音が聞こえる頃ですか。やっと、って感じですね」
 『(((´・ω・`)))』ヨハン=レーム(p3p001117)はその風を受けながら呟く。今年は夏が暑くて仕方がなかったから、ヨハンとしてはやっと、ようやくという言葉が出て来る。実際この森に住まう動物たちもまだ冬は来ないのかと思っているかもしれない。そんな中、冬が起きてくるまで頑張っていた秋はと言えば――。
「さあ森の妖精たち、このケージに入るんだ送って進ぜよう」
「う、うそだー!」
「その手に持っているものはなんだ!」
 『星飾り』ラグラ=V=ブルーデン(p3p008604)の用意したケージに妖精たちは飛び跳ね、口々に指摘する。

 例えばふかふかの――燃えやすそうな――藁とか。
 例えば装飾らしい――燃えやすそうな――導火線とか。
 例えば手に持った――燃やすしかない――ライターとか。

「やだなこれは一種の飾りです。ケーキにだって蝋燭たてるでしょう? 怖くないよ」
「「「怖いよ!?」」」
 ぴゃーっと逃げ出し、『パウダー・アクアの拳』黎 冰星(p3p008546)の後ろに隠れる3人。ばいばいと手を振るラグラはすっかり怯えられてしまったようだが、まあ目が覚めたのならそれでよい。ここで皆眠ったらどうなるか分かったものではないのだから。
(ちょっと興味があるけど、大変なことになりそうだし)
 同じことを思った『オトモダチ』シャルロット・D・アヴァローナ(p3p002897)は召喚したシルキーから飴玉を貰う。それを精霊へ差し出すと、その瞳がキラキラ輝いた。
「いいの?」
「ありがとう!」
「どういたしまして。それ食べてもうちょっと頑張って」
「寒いところに行きますから、暖かくした方がよいのでは?」
 毛布を用意してあると言う冰星に秋の精たちはふるふると首を振る。暖かくしたら本当に眠ってしまうかもしれないから、と。
 彼らの為にも早急に冬の精の元へ、つまるところ冬の精の使い魔を退けなければならない。『壁を超えよ』杠・修也(p3p000378)は式神にほんの少し前を先行させ、同時にエネミーサーチで敵疑心を持っている者の探索を行っていた。
(この辺りはまだ大丈夫そうか)
 『脱新人!』黒野 鶫(p3p008734)が見渡す先にはまだ森に住まう動物たちの姿もある。どうやらまだ冬が来ないものだから出てきてしまっているらしい。
「非常に不味いのじゃ。季節が正しく廻っていない」
 既に悪影響は出始めている。この状態が続けばさらに蓄えようとした動物たちによって森の何もかもが狩りつくされるかもしれないし、来年は準備が遅れて冬眠に間に合わないことだってあり得るだろう。四季を司るモノが異常をきたすと全てが狂っていってしまう。
「まあ、来たら来たで酷寒かもしれませんが。しっかり季節を廻らせてあげないとですね」
「ああ。しっかり変われるよう手助けしよう」
 ヨハンに修也は頷く。今でこそ叩き起こす役目を仰せつかっているが、元々四季がある世界から来た身としては色々楽しませてもらっているのだ。春夏秋冬があるからこその楽しみをこの混沌でも味わえるのは、他でもない彼らの力もあるだろう。
「だいぶ、冷えてきてはいるけれど。まだ『秋』なのね」
 鬼灯の燈會で妖精クララシュシュルカと共に暖まる『謡うナーサリーライム』ポシェティケト・フルートゥフル(p3p001802)は辺りへ視線を巡らせる。まだ紅葉に色づいた葉が残っているさまは秋を感じさせるが、しかし冬も近づいてきたという温度だろう。ふわりとFairy starの香りを漂わせ、ポシェティケトは視線を秋の精たちへと向けた。
「ねえ、みなさんは3人でおひとつ、なのよね? 冬の妖精さんも3人でおひとつなのかしら?」
「ううん、違うよ」
「冬は1人」
「秋は忙しいからなんだって」
 3人が口々に言う。秋は実りの季節であり、冬支度の季節でもあり、自然も何かと忙しいらしい。故に秋葉3人。聞いた話だと春も2人くらいいるらしいが、今回は夏の精同様に眠ってしまっているので会うことはできないだろう。
「それじゃあ、もうひとつ。使い魔のみなさんが傷を負うと、冬の妖精さんも傷を負うのかしら?」
「ああ、それは気になりますね。命は奪わない方が良いのでしょうか」
 『緋い月の』アンジェリカ(p3p009116)も口添えするが、これはイレギュラーズの誰もが気になっている事である。その返答次第で手加減するのか否か、倒すか否かも変わってくる。
「きにしなくていいよ」
「あれは元々そのへんを漂うナニカだから」
「あれ、なんだろうね」
 その実、正体は彼らにもわかっていないらしい。口ぶりからすればその辺りを漂う力なき小精霊のようだが、冬の精はそれをなんやかんやして使い魔にしているようだ。
「討伐し終わったあとに起こして怒られませんか?」
 ヨハンの懸念に3人はうーんと顔を見合わせる。判断はつかないが、そもそも悪いのは寝坊した冬の精である。……というのが3人で絞り出した回答だった。
「できる限り穏便に終わらせたいですね」
「そうねぇ。冬の妖精さんがおきて、ひとりぼっちだったらさびしいかも」
 ポシェティケトはまだ見ぬ冬の精を思い浮かべる。寒い中を1人で耐えるのは大変かもしれない。もしかしたらそれを紛らわす為に使い魔を作ったのかも。
「でも、冬の精を殺せば寒さに震える人たちを助けられるかもしれないんですよね」
「「「!!」」」
 ぼそっと呟いたラグラに精霊たちが揃って飛び上がり、
「でもあったかい部屋で食べる氷菓子めちゃ美味しいから来てもらわないと困るんですよ」
 続いた言葉にほっと胸をなでおろす。この怖いお姉さんは寒さに震える人達より暖かい部屋で食べる氷菓子を優先するようだ。よかった。
「フォアグラ、向こうを見てきて!」
 冰星の言葉にファミリアーのリスが反応し、たっと木の枝に登る。その上から索敵するのは小鳥を使役したアンジェリカだ。上空からの視界だと北方にある真っ白な大木も良く見える。周辺を索敵しながら暫し――鶫はより濃くなる冷えに小さく身を震わせた。
「野生動物もとんとみないのぅ。これはそろそろのようじゃ」
「ええ……いました」
 空からの索敵に引っかかったとアンジェリカが告げる。修也は頷くと人型を可能な限りまで先行させた。

 ――ボンッッ!!!

 不意に先行していた修也の式神が音を立てて元に戻る。一同が警戒心を高める中、奥から勢いよく冷気を纏った狼が飛び出してきた。真っすぐに向かってきた狼たちは存外すばしっこく、一気にイレギュラーズたちの懐へ飛び込むと柔らかそうな者たちへ牙を向ける。
「今年の冬にふさわしいか私が見てあげましょう。パンドラを使わせたら合格としてあげます」
 ラグラは自らの腕に食らいついた狼を見据える。アンジェリカは自らの付近で神聖なる光を瞬かせ、噛みついた狼を引きはがした。
「オールハンデット! 行きますよ、皆さん!」
 ヨハンが指揮杖を振って味方の士気を上げる。それを受けたポシェティケトはとん、と足を踏み出した。足元はまだまだ植物が生きているけれど、ふわふわのあしはそれらを傷つけることなくポシェティケトを進ませる。
「ねぇ、鹿と一緒に遊びましょう」
 ようこそいらっしゃい――魔女の領域へ。
 鹿(ポシェティケト)に囚われた敵の奥、鶫は更なる増援を見る。蝶と騎士……いや、冷気で象られたナニカか。
「聞くつもりはないじゃろうが、此方とて大事。罷り通らせて貰うのじゃ!」
 鶫は盾を構えて前進し、声高々に名乗り上げる。集まったところめがけて修也の魔砲が飛ぶ。次いで冰星の苛烈な闘気が火焔になってヒェムウルフへ襲い掛かった。そこへ合わせ、尋常ではない視力のラグラが的確に瞬くジルコンの青を放つ。
「私ちゃん、とっても目がいいんですよ」
 俊敏なる獣であっても逃すことは無い。仮に逃したとしても――この後に最大火力が控えている。シャルロットはヒェムウルフたちへと肉薄し、2振りの妖刀で敵を薙ぎ払った。
 まずは、1匹。けれども味方への注視を越えたヒェムマンがシャルロットを押さえにかかる。すぐさま鶫が再びの名乗り口上で引き付けなおし、その補佐をするようにヨハンがタクトを振った。穏やかに、などと言っている暇はない。敵の数は多く、手加減をしようものならこちらが叩きのめされる。
「まだまだ立て直せます! 全力でいってください!」
 彼の支えと共に敵を叩きのめしていくイレギュラーズたち。しかして不意のかまいたちが仲間たちを傷つける。
「――合格です。けれどここでおしまいですね」
 パンドラの軌跡に身を包んだラグラの放った攻撃に次いで、ヒェムマンの拘束から放たれたシャルロットの高火力が跡形もなく敵の姿を消す。アンジェリカの神気閃光が目を眩ませて敵を傷つける中、鶫はヨハンの支援の下ひたすら耐えながら敵を引き付けていた。
 あとどれだけか。あとどの程度で終わるのか。考えている余裕はなく、ここまで来た仲間を信じるしかない。
「はぁッ!」
 冰星の掌底が最後のヒェムウルフを倒す。同時に自らの傷を修復した冰星は視線を残っている冷気の騎士へ向けた。そこでは必死に引き付け、仲間たちのフォローで立つ鶫がいる。
「儂はまだじゃ……まだ、倒れぬ!!」
 茨の鎧に身を包み、アンデッドのなりかけ――いやなりそこないを盾にして。一刻も早く倒さんとアンジェリカの放つ光が瞬くが、流石は鎧まといし騎士というべきか。されど確実にダメージは受けている。
「畳み込むぞ」
「はい! もう少しですから頑張ってくださいね! 不滅の聖盾! ホーリーシールド!!」
 修也が攻め込み、併せてヨハンも可能な限り鶫を発たせていられるよう鶫へ聖なる盾を付与する。とん、とポシェティケトの足がやわらかく土を踏んだ。
「クララ、踊りましょう」
 ポシェティケトのステップと共に妖精の粉が舞う。それが誘うのは霧満ちる異界の森だ。シャルロットは試しにと紅の一閃を放つ。さてはて、当たるのか当たらないのか――。
「大丈夫そうね」
 普通の攻撃ならばこうはいかなかったかもしれないが、防御を許さぬ攻撃には騎士とて例外ではないらしい。その後ポシェティケトが引き付けを変わったこともあり、ほどなくしてイレギュラーズたちを阻むものはその気配を失くしたのだった。



 冬の精を守りしモノたちを退け、一同は真っ白な大木のふもとまでやってきていた。見上げる程に大きなそれは深緑の大樹ほどではないが、それでもそれなりに強い力を宿しているのだろう。眠くて眠くて仕方がない秋の精たちが四方にこのような木があるのだと教えてくれた。
「もしもし、ねぼすけさん。冬ですよ」
 ポシェティケトがそっと声をかけるが、特に変化は見られない。擽ってしまおうかとも思ったが、冬の精はどこへいるのやら。
「ねぇ、クララ。ねぼすけさん、どこにいるのかしら?」
 傍らをふわふわと漂うクララシュシュルカに問うてみると、妖精はポシェティケトの角にちょんと止まって木を見上げた。
「冬の精霊さーん! 起きてくださーい! お寝坊したから秋の精さんが倒れちゃいましたよ!」
 冰星が声を上げるとどこからかむにゃむにゃと聞こえ始める。どこだ。しびれを切らしたようにシャルロットが木へ呼びかけた。
「起きなさい、あなたの季節よ。起きないと――ここ、切り倒すわよ?」
「まって、まって!!」
 脅し半分、本気半分。その言葉にようやく冬の精がはっきりとした声を上げ、木のどこからか飛び出してきた。アンジェリカが小人のような冬の精へ屈んで優しく問う。
「おはようございます、精霊さん。寝起きのところ申し訳ありませんが、勤めを果たして頂いても?」
「そうですよ、冬が来なくちゃ春も訪れませんからね!」
「ええ! 早くしないと間に合わなくなっちゃう!」
 冰星の言葉に冬の精はひょいと飛び上がり、木の上へ降り立つ。それを興味深げに見ていた修也は、突然の風に腕で顔を覆った。他の者も同様だ。だが――。
「これは……」
「さ、寒いです!」
「木枯らしにしちゃー強風過ぎでは? あなたもそう思いません?」
 修也の言葉にヨハンの悲鳴が被る。ラグラは小さく呟き、そしてあらぬ方向を――読者は視線があったかもしれない――一瞬見る。その間に突風は吹き抜けていき、後には非常に寒がる一同が残された。
(メルヘンちっくな感じだと思ったが……そうでもなかったな)
 ただひたすらに寒かった。これが精霊たちの言う『交代』なのだろうか。御伽噺のおの字も見当たらなかった。
「ひとまずはこれでオッケー! お寝坊しちゃってごめんなさい! あ、貴方たちはだぁれ?」
「僕たちは秋の精に代わって貴方を起こしに来たお手伝いですよ」
 だって近づけないようにしているんだもの、と言えば冬の精がしゅんとうなだれる。鶫は諭すように優しく言葉をかけた。
「季節が廻らねば、人だけでなく自然に住まう多くの者も困ってしまう。わかるじゃろう?」
「ええ……次はちゃんと使い魔たちに『お寝坊したら起こして』って命じておくわ」
 それはつまり、次も寝坊する可能性があるということだが……対策を講じるのであれば良いだろう。来年また泣きつかれないことを祈るばかりだ。
「ふあーあ」
「それじゃあそろそろ、本当に眠らなきゃ……」
 先ほどの突風で秋の精たちも一時的に目覚めたらしい。冰星とシャルロットは彼らへ優しく微笑んだ。
「途中で気が抜けて寝てしまうかもしれませんよ。元いた場所までお送りしましょうか」
「あー、うーん。そのほうがいいかなあ」
 精霊たちもその可能性は否定できないらしい。地図で確認して見れば、そこまで大きく遠回りという訳でもなさそうだ。
「また来年、南瓜や葡萄を楽しみにしているわ」
 シャルロットの言葉に精霊たちは「まかせて」と頷く。そしてまた大きく欠伸を繰り返したのだった。

 後日。ビエルの森を中心として木枯らしが吹いた話が広まっていた。そしてその話を追いかけるように冬の気配がやってきたと言う。
 ――来年の秋まで、おやすみなさい。

成否

成功

MVP

黒野 鶫(p3p008734)
希望の星

状態異常

黒野 鶫(p3p008734) [重傷]
希望の星

あとがき

 お疲れさまでした、イレギュラーズ!
 無事に冬がやってくるようです。皆様もシャイネンナハトに向けて準備ばっちりですか?

 それでは、またのご縁をお待ちしております!

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