シナリオ詳細
<瘴気世界>冒険者の禁忌
オープニング
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冒険者が地上を冒険し命を落とすことはそう珍しいことではない。それが低級でも上級でも、あらゆる不幸や一瞬の判断の間違えで儚く簡単に散ってしまうものだ。少なくとも地上を冒険する彼らはそれを理解しているつもりだが、いざ窮地に陥って冷静な判断ができる冒険者はごく一握りと言っても過言ではない。
「か、かか……囲まれた。もう、もう駄目だ」
「落ち着け、俺が引き付ける。お前は援護に徹してくれ」
イレギュラーズの指南の甲斐もあり見習い冒険者から晴れて冒険者になったラナードは、その実力を認められてE級冒険者に関わらずC級冒険者のパーティーに入ることになった。
それなのに……。
「む、無理だ、もう……」
どうしてこんなことになってしまったのだろう。ラナードを含め五人のうち三人が既に命を落とし、周りは魔獣だらけ。ギルドであれだけ自分はC級なんだと胸を張っていたリーダーは軽いパニック状態に陥ってしまい戦意を喪失してしまっている。
こうなってしまった以上撤退以外の二文字はあり得ないのだが、魔物により退路が断たれていた。
「俺が斬り込んで退路を作るから、お前はそこから逃げろ!」
苦し紛れの中から搾り出た言葉がそれだけだった。C級がどの程度なのか知らなかった俺にも非があり、死んだメンバーには申し訳ないが彼らは正直弱すぎたのである。
冒険者ギルドへ登録をした直後はほとんどE級冒険者から始まり、数度依頼をこなした後にクラスアップという自分の階級を決める審査が行われる。それは俺も例外ではなかったが、大抵の者がDもしくはC級への昇格が限界なため、本来はB級以上の実力をもつにも関わらずそれ未満のパーティーに配属されてしまったのだ。
そのザマがこれだ。
「あ、ああ、ああああああああああああああああああああ!」
「っ……!」
リーダーが絶叫しながら死んだ。必死に退路を作ろうと斬り込んだが、既に生を諦めた者の足が動くわけがなく、無惨に食い千切られた。
「サイアクだ……」
パーティーメンバーが全滅してしまったことも絶望的な状況の一つだが、魔獣は人の核を取り込むことによって知性と力が飛躍的に向上される。ゆえにメンバー一人が魔獣に取り込まれること≒全滅に繋がりやすいのだ。
既に三人が取り込まれてしまい、この状況を打開させるのはほぼ不可能に近かった。
とある禁忌を除いて……。
「S級以上の募集?!」
「ああ、王国から直々の命令だ。E冒険者ラナードが魔獣の核を取り込み暴走、即刻死罪。この情報はB級以下の冒険者に漏らすなよ」
光輝の国、リュミエール王国のギルドは早急にその対処を進めていた。
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「魔獣の核を取り込むことは、この世界の人間にとって禁忌とされているそうです」
いつものように本を広げながら、【境界案内人】イヴ=マリアンヌは集まったイレギュラーズへと説明をしていた。今回も<瘴気世界>だ。
「その理由は人々の前では死ぬからと説明されていますが、一部の冒険者や王族関係者は本当の理由を知っているみたいですね」
魔獣が冒険者を喰らうと知性をもった魔獣が出来上がる。ではその逆はどうか。
答えはいたって簡単、同じだ。
「以前、あなた方に指南をしていただいた冒険者見習いのラナードですが、窮地の末に魔獣の核を喰らい半魔獣になってしまったそうです。国の意向では死刑……なのですが」
基本的に半魔獣化してしまった冒険者を元に戻すことは出来ない。イヴはそう言ったが、正確に言うと半魔獣化させている核を正確に破壊できる冒険者が存在しないのが事実だった。
だが、国で死刑を下された彼は、どの道国に帰れないだろう。
「彼を元に戻した後はそのまま帰還してください。……私に少し考えがあります」
- <瘴気世界>冒険者の禁忌完了
- NM名牡丹雪
- 種別ライブノベル
- 難易度-
- 冒険終了日時2020年11月03日 22時00分
- 参加人数4/4人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 4 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(4人)
リプレイ
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彼は幸せな夢を見ていた
目標だった冒険者になり、地上を冒険する夢
獄炎による圧倒的な力で、この世の全てをねじ伏せる夢
それは甘美なものだった
甘美な……
「う゛う゛う゛う゛う゛!!!」
瘴気に覆われた戦場は地獄と化していた。大量の魔獣が【半魔獣】ラナードを囲むものの、彼が纏う獄炎のオーラにより核も残らない無へと返される。その熱さはイレギュラーズですら近づくことを拒むものだった。
「イヴから聞いてた話と、少し違う……!」
大型狙撃銃D9099を構えながらラナードと一定の距離をとる『白い死神』白夜 希(p3p009099)は、そのスコープで核が存在すると思われた胸を覗き込みながら呟く。
ラナード自身が最初から持つ光の核が心臓部にあたる右側に存在し、飲み込んだ炎の核が第二の核として左側に存在すると聞いていたのだが、彼が装備する胸当てにより完全に隠されてしまっていたのだ。
「そんなに簡単にはいかねぇってことか……。こっちに気付いたみてぇだぞ!」
ある程度の距離を離して様子を伺っていたものの、突然殺気を向けられたことに全員が感知し、『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)が声を上げた。
「あ゛あ゛!!」
大剣を装備しながらも一瞬で希に間合いを詰めようとしたラナードの前に、『青樹護』フリークライ(p3p008595)が庇うように立ち塞がる。だが、それを更に庇うように世界が受け止めた。
「無茶すんな。こんなのまともに喰らったらお陀仏クラスだぞ!」
「スマナイ」
凄まじい熱気と重い一撃をなんとか受け止めた世界は、衝撃波で変わり果ててしまった冒険者を弾き飛ばしながら苦し紛れの笑みを見せた。
「よお、この前ぶりだな。修練場のことでも根に持ってんのか?」
返事は返ってこなかった。今のラナードには何を言っても話が通じないことを理解する。
「胸当てで核が見えないなら、壊すだけだろう」
世界がラナードを突き飛ばした瞬間、飛燕(p3p009098)がラナードの胸当て左側に双刀を突き立てる。半魔獣化による強化は防具にまでは及んでおらず、彼の一撃で破壊には至らずとも大きな傷が付いた。この調子で攻撃を続ければあと数回で穴を開けるまでに至るだろう。
「チッ、こいつ……!」
そのことにラナードも気付いたらしい。彼は飛燕から逃げるように、胸当てへの攻撃を拒むように距離をとった。
「ある程度知能が残ってんのが本当に厄介だ。いやらしいことこの上ないぜ」
「でも、この距離なら私の射程。まずは動きを止める……!」
後方へ移動していた希が再び狙撃銃のスコープを覗くと、冷静にラナードの足に照準を合わし引き金を引く。正確無比、大音量と共に発射された弾丸は、まるで吸い込まれるように彼の足へ。
「うそ……」
命中したという確信と事実が異なっていたことに希は目を丸くする。
スコープで何が起こったのか確認をすれば、少し移動をしたラナードの足元に真っ二つに斬られた弾丸、彼は正確に放たれた弾丸を正確に切り伏せたのだ。
「おい! 後——」
「ぇ……」
世界が希に向かって叫んだころには遅かった。希は咄嗟にスコープを覗いていたが、そこに既にラナードの姿は無かった。
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ああ、なんて気持ちが良いのだろう
魔獣を喰らうだけでこんな力が
もっと沢山の魔獣を喰らって
……すべて壊してしまおうか
「いい加減にしろ! ……って言っても届いてないか」
目まぐるしく攻撃してくるラナードの重い攻撃を全て弾き返しながら世界は苦い表情を浮かべた。決して油断していたわけではないが、一瞬の隙を付かれた希はラナードの重い攻撃をもろに喰らって吹き飛び、意識すら飛んでしまっている。
フリークライが応急処置に当たっているが、このままではジリ貧だ。
「正直、生きたとしてその後にあるだろう逃亡生活を思えば殺すことも慈悲であると思うがな」
世界が攻撃を受け止めた瞬間を狙って胸当てに攻撃を入れようとする飛燕がふと呟いた。彼がいう通り、例えここでラナードを元に戻したとして、死刑になっている彼が暮らせる未来は暗い。
「ああ、それは俺も思うぜ?」
ラナードの強烈な攻撃をいともせず相殺する世界もまた、その言葉に同意見だった。
だが、少し離れたところに倒れている希とそれを治療するフリークライに目をやって、ため息交じりにこう言うのだ。
「正直、生かして連れて帰るのは殺すよりもずっと難易度が高いわけで? 俺としてはサクッと処理してもいいんだが……こいつを知ってる二人もいるし、んなこと言えねぇだろ」
あいつ(イヴ)も簡単に無茶言ってくれるぜとか、そんなことを呟きながら今度はラナードの攻撃を受け止め、大剣をがっちりと掴んだ。
「なるほどな。まぁ不平はない。俺は任務を遂行するのみ。依頼主が生かせと言うのなら、俺は生かすだけだ」
「頼もしいこったな」
動きを一瞬封じられたラナードの胸当てに再び鋭い一撃が叩き込まれる。プレートの傷つき具合から想定して、あと一撃与えれば穴が開く。
だが、それを理解しているのはラナードも同じだ。
「ちっ、流石に切り離したか……」
「あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
彼は大剣を自ら手放し世界と間合いをとると、背を向けて逃げ出すように走り出す。
「っと、それは判断わるいぜ?」
世界が不敵な笑みを浮かべた。瞬間、彼がここに来る前に設置していた精霊爆弾が一斉に作動する。強烈な爆風と共にラナードは空高くに打ち上げられた。
「んじゃ、(防具破壊は)任せた」
「ああ、任された」
さすがのラナードも空中に打ち上げられてしまっては身動きが取れない。その隙に乗じた飛燕が素早く飛び上がると、ラナードの傷ついた胸当てに再び鋭利な一撃を叩き込んだ。
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壊す……壊す、壊す壊ス壊ス壊ス壊ス
自分ヨリ強イ存在ガ憎イ
全テヲ壊シテ、殺シテ……
「……ううん」
「白夜、ダイジョウブ?」
ラナードの強烈な攻撃を受けて少し気絶していた希が目を覚ます。
致命傷にはならなかったものの相応のダメージを受けた彼女は、フリークライの応急手当てを受けて頭を押さえながらも身体を起こした。斬られなかったのが幸いだったが、大剣の峰で受けた一撃で軽い脳震盪を起こしていた。
「痛……っ! 私、どれくらい気絶を……?!」
ぼやけた視力を回復させながら周りを見渡すと、世界と飛燕が二人がかりでラナードを取り押さえようとしているのが見えた。大剣を失ったものの、勢いは失っていない様子だ。
「ホンノ、数十秒。ラナード、二人、戦ッテル。デモ……」
ラナードが最初に纏っていた獄炎が弱くなっている。恐らく、ラナードの生命力に限界が来ているのだろう。彼に与えたダメージは世界が回復をしていたのだが、身から出る獄炎の自傷まで回復できないらしい。このままでは己の炎に焼き尽くされるか、あるいは……。
「早く、核を破壊しないと……」
飛燕が胸当ての一部を綺麗に破損させたおかげで、赤く燃え盛る核が露出している。そこに正確無比、強力な狙撃をすることができれば良いのだが。
「っっ、なんで……照準が」
視界がぼやけるだけでなく、動くラナードが二重に見える。これでは正確な狙撃を行うことができない。
そして、核を貫通させることのできる攻撃ができるのも希だけであった。
「落チ着イテ、焦リ、禁物。絶対、見捨テナイ」
「わかってる……けど、早くしないと」
焦りで腕が震えている。破壊するべき核は第二の核、万が一本来の核を撃ち抜いてしまえば、ラナードの命は無いだろう。
あの様子では、もう他の攻撃をして足止めをする余裕もないし、耐えきれているのは世界が威力の無い衝撃波で攻撃を殺しているから。正直洒落にならない。
「ダイジョウブ、ラナード、救エル。白夜、力有ル」
それでもフリークライは希望を捨てなかった。ラナードを助けるために、白夜が核を撃ち抜く環境を作るべく前線へ戻っていく。
「どうすれば……」
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殺ス……殺……
あ……俺、何してたんだっけ
パーティーメンバーが、死んじまって
魔獣にめちゃくちゃ囲まれて
何、してんだ俺
なんでこいつらを……
やめろ、やめてくれ、誰か……俺を止めてくれ……
殺してくれ……
「ウ゛……」
一瞬ラナードの動きが鈍り、苦しむ様子を見せた。彼を抑えていた世界と飛燕も何が起こったのか分からなかったが、これが好機であることは間違いない。
こちらへ向かってくるフリークライと、遥か後方にいる希を見やって状況を問う。
「おい、そっちは大丈夫か?」
「白夜、狙撃、難シイ。デモ、ラナード、殺ス、不許可。モウ一度、打チ上ゲル」
苦しむラナードに一刻の猶予があるようには見えない。
「打ち上げるたって、設置してた精霊爆弾はもうねえぞ。それに、あいつの身体だって……って、おいー!」
世界の言葉を聞き終わる前に、フリークライは希の方へとんぼ返りしていく。
どうするつもりなのか分からないが、こうなってしまったらやるしかない。
「ああもう、どうなっても知らねえからな!」
足を止めたラナードの下に潜りこむように世界は素早く間合いを詰めると、苦しみよろけた彼の腹部に手をあて、ノーモーションで全力の衝撃波を送り込む。
全身に纏った炎が消えかかっているラナードは真下から強烈な衝撃波を送られ、そのまま十メートルほど打ち上がった。
「白夜、狙撃、チャンス」
「でも……って、何を……?!」
「フリック、白夜、投ゲル」
「わ、ちょっと待っ……うわあ!」
賽は投げられた。フリークライによって力強く投げられた白夜は、打ち上げられたラナードに向かって一直線に飛んでいく。
「っ……やるしかない、失敗できない。戻ってこい、冒険者ラナード!!」
希は高速で近付く的を見て体制を整えながら両手に持っていたスナイパーを構え直す。
そして希とラナードがゼロ距離に達したとき、乾いた大音量が辺りを包んだ。
成否
成功
状態異常
なし
NMコメント
初めましての方は初めまして、牡丹雪と申します。
この物語は<瘴気世界>の続編になりますが、物語は個々で完結する&<前回までのあらすじ>を作るため、前作の確認はあまり必要ありません。
●目的【半魔獣 ラナードを元に戻す】
生き残るために魔獣の核を取り込んだラナードを元に戻すことが今回の目的になります。
魔獣に囲まれてしまった彼は赤い魔獣の核を飲み込み、それは第二の核として彼の胸元に存在しています。それを砕くことができれば元に戻すことができるでしょう。
●敵対NPC
・【冒険者】ラナード(暴走)
身長はやや低め、それよりも大きな大剣を軽々と使いこなす青年です。
仕方ないとはいえ魔獣の核を喰らい暴走状態に陥った冒険者です。破壊衝動に塗りつぶされてしまっている為、イレギュラーズや冒険者にも容赦なく攻撃します。
炎を纏って攻撃をしてくる他、筋力増強の特殊能力を利用します。
●世界観のおさらい
かつて世界の均衡を保っていた6人の精霊たちはあまりの退屈さに人類を生み出し、それを繁栄させた。だが、人類を生み出す過程の中で邪悪な力を持つ魔獣も生み出してしまい、やがて史に残る大戦争が起きてしまう。瘴気により荒廃してしまった跡地から逃れるべく人類は地底へと生活圏を移動した。
そう願った精霊が導いてくれた際に偉人が受け取ったとされる高純度の精霊石を用いた5つの疑似太陽により、まるで地上にいるような生活を送っている。のちにその疑似太陽に惹かれるように人々は巨大なコロニーを築き、5つの国が出来上がった。
人類は精霊に最初に生み出された種族であるため、精霊石の魔力を浴びつつ魔獣の灰を食べながら生きている。
~イヴの本より『世界について分かっていること』
・この世界の人間は息絶えると灰になる
・魔獣には核が存在し、様々な生活に役立っている
・魔獣を狩る冒険者という存在がいる
・六人の精霊のうち、闇の精霊は信仰されなかった
・灰を加工した食品は見た目通りマズい
・人間にも魔獣と同じ核が存在する
・この世界には五つの国が存在する
・冒険者はEからSSの七階級が存在する
・魔獣の核を取り込むのは禁忌とされる
●前回までのあらすじ
・大型魔獣を討伐したことで、イレギュラーズはこの世界でAランクの冒険者として扱われることになりました。
・リュミエール王国の見習い冒険者へ指導を行いました。
・イグニスヴール王国の冒険者ギルドへ諜報を行った結果、近日魔獣の大群が王国へ押し寄せてくることが判明しました。
●アドリブについて
本シナリオではアドリブが多めに含まれることがあります。
アドリブがNGの場合、通信欄かプレイングに一言ご記載いただければ幸いです。
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