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シナリオ詳細

<瘴気世界>オプスキュティオの退屈①

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 その世界にはこんな伝承があった。

『かつて世界の均衡を保っていた六人の精霊たちはあまりの退屈さに人類を生み出し、それを繁栄させた。だが、人類を生み出す過程の中で邪悪な力をもつ魔獣も生み出してしまい、やがて史に残る大戦争が起きてしまう。荒廃してしまった跡地から逃れるべく人類は地底へと生活圏を移動した。
 そう願った精霊石が導いてくれた際に偉人が受け取ったとされる高純度の精霊石を用いた五つの疑似太陽によりまるで地上に居るような生活を送っている。のちにその疑似太陽に惹かれるように人々は巨大なコロニーを築き、五つの国が出来上がった』

 この伝承に何か違和感を覚える者も居るのではないのだろうか。
 そう、世界の均衡を保っていた精霊は六人であるのに関わらずなぜ、出来上がった国は五つなのか。そこには人々に忘れ去られた一人の精霊が関係していた。

「はぁ……超暇」
 瘴気に侵された地上よりも遥か上。人の足では登り切れないほど高い塔のてっぺんで、つまらなそうにオプスキュティオは呟いた。
 少女のような身体つきに漆黒の羽、かつて世界の均衡を保っていた六人の精霊の一人、【闇の精霊】オプスキュティオはまぎれもなく本物だった。
「地上の様子を見るのも、魔獣どうしを遊ばせるのも、石を沢山積み上げてみるのも飽きちゃった……」
 六人の精霊はそれぞれ火、水、風、土、光、闇を司っていたのだが、闇の精霊だけは人々から畏怖こそされても信仰を得られなかったため、拗ねたオプスキュティオは人々に加護を与えずまま塔のてっぺんに引きこもってしまったのだ。
 やがて時が経つと同時にその存在すら忘れ去られ、彼女は憂鬱な日々を送っていた。


「前回調査に行っていただいたイグニスヴール王国は魔獣の大群が攻めてくると言われる大渦への対処に人員を集めていたそうです。万が一、人員が足りなければ出動することになるでしょうね」
 直近、イグニスヴール王国の冒険者ギルドに探りを入れてわかったことに軽く触れたイヴ=マリアンヌはコホンと一息間を置くと、精霊について話し始めた。
「この世界で崇拝されている六人の精霊ですが、どうやらそれぞれ離れた地上より遥か上の塔のてっぺんに存在しているらしいです。彼らは基本的に人々へ無鑑賞らしいのですが、ひとりだけ例外がいまして——」
 まるで厄介者を見つけてしまったような、そんなため息をしながら彼女は話を続ける。
「精霊は全てで火、水、風、土、光、闇を司っていますが、闇の精霊だけ何故か崇拝されずに非常に退屈しているみたいです。このままでは可哀……コホン、地上に魔獣を放ったりなどされては困りますので、何か退屈しのぎになりそうなことをしてきてはもらえないでしょうか?」
 どうやらイヴが精霊の間の手前まで飛ばしてくれるらしいので塔を登る必要はないらしい。
「そういえば、精霊はすごく強いらしいです。私じゃ詳しい力量は測れないのですが、自称チート並みとか何とか……」
 さてはこいつ、精霊と話をしてきたな?

NMコメント

 初めましての方は初めまして、牡丹雪と申します。
 この物語は<瘴気世界>の続編になりますが、物語は個々で完結する&<前回までのあらすじ>を作るため、前作の確認はあまり必要ありません。


●目的【オプスキュティオの遊び相手になる】
 人々の信仰を得ることができなかった可哀想な【闇の精霊】オプスキュティオの遊び相手になってあげてください。その方法は問いませんが、以下に具体例を示します。

①珍しいものを見せる
 精霊は世界のルールにより塔のてっぺんから離れることができません。
 自称全知であると言っていますが、混沌世界のことであれば知らない事の方が多いでしょうね。

②美味しいものを持ってくる
 精霊は食べることを必要としませんが、味覚や嗅覚は存在します。
 この世界には美味しいものが一切存在しない為、きっと喜びます。

③模擬戦闘をする
 自称とっても強い妖精らしいのですが、その力は如何程に?
 ですが、この世界のSS冒険者ですら話にならないのは本当らしいです。

※ワンポイント
 精霊が楽しいと思うことはきっとイレギュラーズも楽しいと思うことです。

●登場NPC
・【闇の精霊】オプスキュティオ
 かつて世界の均衡を保っていた六人の精霊のうちのひとりですが、信仰を得られないまま引き籠ってしまったためとても退屈しています。
 可愛らしい幼女の見た目に反して性格は結構黒く、平然と意地悪したりします。
 それでも世界のバランスを調節していた存在であることは間違いなく、その実力は相当のものです。

※戦闘になった場合
・【闇の精霊】オプスキュティオ(自称戦闘モード)
 HPが高いですが、防御はさほど高くありません。
 妨害と召喚スキルを得意とし、状態異常が一切効きません。
 物理攻撃力も高く、通常攻撃に【防無】が付与されています。


●世界観のおさらい
 かつて世界の均衡を保っていた6人の精霊たちはあまりの退屈さに人類を生み出し、それを繁栄させた。だが、人類を生み出す過程の中で邪悪な力を持つ魔獣も生み出してしまい、やがて史に残る大戦争が起きてしまう。瘴気により荒廃してしまった跡地から逃れるべく人類は地底へと生活圏を移動した。
 そう願った精霊が導いてくれた際に偉人が受け取ったとされる高純度の精霊石を用いた5つの疑似太陽により、まるで地上にいるような生活を送っている。のちにその疑似太陽に惹かれるように人々は巨大なコロニーを築き、5つの国が出来上がった。
 人類は精霊に最初に生み出された種族であるため、精霊石の魔力を浴びつつ魔獣の灰を食べながら生きている。

~イヴの本より『世界について分かっていること』
・この世界の人間は息絶えると灰になる
・魔獣には核が存在し、様々な生活に役立っている
・魔獣を狩る冒険者という存在がいる
・六人の精霊のうち、闇の精霊は信仰されなかった
・灰を加工した食品は見た目通りマズい
・人間にも魔獣と同じ核が存在する
・この世界には五つの国が存在する
・冒険者はEからSSの七階級が存在する

●前回までのあらすじ
・大型魔獣を討伐したことで、イレギュラーズはこの世界でAランクの冒険者として扱われることになりました。
・リュミエール王国の見習い冒険者へ指導を行いました。
・イグニスヴール王国の冒険者ギルドへ諜報を行った結果、近日魔獣の大群が王国へ押し寄せてくることが判明しました。


●プレイングについて
 今回の依頼の主な目的は『オプスキュティオの遊び相手になる』です。
 目的に記載されている行動はあくまで例ですので、その他のアクションを取ることも可能です。楽しい事であれば何でも良いのです。

●アドリブについて
 本シナリオではアドリブが多めに含まれることがあります。
 アドリブがNGの場合、通信欄かプレイングに一言ご記載いただければ幸いです。

  • <瘴気世界>オプスキュティオの退屈①完了
  • NM名牡丹雪
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年11月02日 22時10分
  • 参加人数4/4人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)
月夜の蒼
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
飛燕(p3p009098)
白夜 希(p3p009099)
死生の魔女

リプレイ

「うわぁ、登るのもあほらしく思える塔なんだけど」
 恐ろしいほど高くそびえ立っている塔のてっぺん直前で、大荷物を抱えた何か大荷物を抱えた『白い死神』白夜 希(p3p009099)は文字通り嫌な声を出して呟いた。
 石のような鉄のような不思議素材で構築されている壁の隙間から下を覗けば、遥か下に雲が浮かんでいるのが見える。地上の様子なんてまったく確認できない。
「なんにしろ、登る手間が省けたんだからいいだろ」
 脱力気味な希に『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)は、オプスキュティオがその先にいるだろう扉に手をかけながら言う。実はここまで境界案内人が世界を繋いでくれたため、登る必要がなかったのは幸いである。
「誰も訪れない場所に一人ねえ。少しは退屈しのぎになればいいんだけど」
「全知全能、最強なんて眉唾な存在だがな」
 『月夜の蒼』ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)と飛燕(p3p009098)は、扉の先に明らかな気配を感じ取りながらそれぞれ呟いた。
 全員の準備が整ったことを確認した世界は、そのまま扉を開け——
「やあいらっしゃい。私の名前はオプスキュティオ、闇の精霊オプスキュティオなのだ。呼び方は気軽にティオで構わないよ。先客から話は聞いてるけど特異な存在の集まりでイレギュラーズってなかなか安直だけど面白い存在だよね。キミ達が来るまで待ちきれなくて既に数十体の魔獣が犠牲になったけど本当に来てくれたから私も待った甲斐が……あれ、ちょっとちょっと、なんで扉を閉めようとするの?! 待っ——」
 そして閉めた。


「うう、仮にも世界を守っていた精霊に対してこの仕打ちは酷いのだ」
 【闇の精霊】オプスキュティオことティオは、わざとらしい泣きまねをしながら扉を閉めた世界をぺしぺしと叩き続けていた。背中に漆黒の羽、幼女の姿でありながらどこか強い存在感を放っている彼女が闇の精霊であることは間違いないのだが。
「当然だ。扉を開けてこんな阿呆な存在がいたら俺でも閉める」
 精霊の実力はどれほどのものかと模擬戦闘をしにきた飛燕も軽いため息をついて、本当に強いのだろうかと疑惑の視線を向ける。
 すると、ぺしぺしと地味に痛い攻撃をされていた世界がティオの肩を掴み、飛燕の方へ向けさせた。
「んじゃ、俺たちちょっと準備するから、その間この子の相手をよろしくな!」
「お前、俺にいろいろ押し付けようとしてないか?」

 他のイレギュラーズが準備をしている間、飛燕とティオは模擬戦闘をしていた。
「へぇ、いいね。そこらの冒険者より全然いい線いってるよ。私には到底及ばないけど」
 相応に広い部屋を潤沢に使いながら素早い動きで精霊の後ろに回り込み、鋭い奇襲攻撃をした飛燕。対して、死角からの攻撃をいとも簡単に回避したティオの世界の管理者としての実力は本物だった。
「いい作戦だけど、私に奇襲は効かないのだ。キミたちには感知できないかもしれないけど、音波の様な物で常にあらゆるものの位置を察知できるからね。本当は人にあげる恩恵だったんだけど……」
 飛燕は背後を取って攻撃を繰り返すが、尽く避けられてしまう。恐らくティオにとって見える視界は全方位三百六十度、そして目をつむっていてもそれは同じなのだろう。
「疑ってなかったっていうと嘘になるが、本当に強いんだな」
「わかってもらえた? でも、これで私の実力を測れた……なんて思っちゃ駄目なのだ」
 彼女が人々から信仰を得られなかった理由。その表情はまるで本性を表したかのように歪み被虐的に笑った。
「少しは格の違いってものも見せておかないと……ね」
「っ?!」
 ティオが突然指を鳴らした瞬間、飛燕の視界は突然暗くなり、音も聞こえなくなる。絶えず素早く動いていた飛燕は唐突な出来事に対応しきれず壁に衝突した。そこへ追い打ちをかけるようにティオが一瞬で間合いを詰めると、彼を強烈な衝撃波で天井へ叩きつけようとする。
「はい、そこまで」
 強烈なダメージと共に吹っ飛んだ飛燕を天井付近でルーキスが素早く回収し、追撃を入れようとしたティオの拳を世界が掴んで止めに入った。
「むぅ、もう少し運動したかったけど、仕方ないのだ……」
「痛っ……お前って結構裏表激しいんだな。信仰されない理由がわかった気がするぜ」


「肉です。とりあえず食べてみてください」
 飛燕とティオが模擬戦闘をしている間、ずっとBBQのセットをしていた希は焼き上がった大きな肉を切り分け味付けしたものをティオに渡してそう言った。
 この世界における食は魔獣が残す灰を加工した『灰食品』であるが、あくまでも灰であるため味がないどころかまずい。現地人がどう感じているかわからないが、粉っぽさと口の中に広がる灰の味が最悪である。
「これが食べ物なのだ? 見たことのない食べ物なのだ……」
 彼女にとって謎の物体である肉をつついたりしていたティオだが、怪しみながらも意を決して口の中に入れた。
「…………」
 希の手で美味しく味付けされた焼肉を食べたティオの脳内はしばらく処理落ちすることになる。基本的に食を必要としない存在であるが、口の中で起きた革命に言葉が出なくなってしまったのだ。
「あの、大丈夫です?」
 しばらくモグモグしながら固まっていたティオの顔を心配そうにのぞき込んだ希の顔が見えてようやく彼女は我に返る。しかし処理落ちは直らず、次第にあわあわなる始末だった。
「なんて言うんだっけ。何かを食したのは久々だから、こういう時なんて言うのか忘れちゃったのだ……」
「うーん……、美味しい?」
「そう、それなのだ!」
 モグモグしていた肉をのみこみ、別の味付けが施された肉を食べると幸せそうな表情を浮かべる。ずっとこうしていれば普通に可愛い精霊なのだけど、とか思いながらも希はこの世界の食について尋ねることにした。
「食の文化、やっぱりあった方が良い、と思う。メシマズ世界に……未来は……ない!」
 だが、闇の精霊から返ってきた応えの雲行きはあまり良くなかった。
「それは、この世界を生きる人間の構築の否定になるのだ……。いま食べた肉とやらはキミ達の身体を構築するもので大まかにいえば同じに見える。けど、この世界の人間はそれでできていない。私もまた、灰を生み出すことしかできないのだ」
 つまり、世界を変えるというのはそう簡単にできないということ。そう言い残すと、ティオはルーキスに呼ばれて行ってしまった。


「味の濃い物だらけだと味覚が偏るぞー。甘いものでも如何かな、精霊君?」
「甘い物……なのだ?」
「ありゃ、そこからかあ」
 ルーキスが鉄板で焼いている液状のものが何なのか気になるのか、ティオはちょろちょろと周りを飛んでいる。灰食しかないこの世界では当然か、とかルーキスが考え直しながら焼いていたのは甘いパンケーキである。良い感じに焦げ目がつくまで焼けば、肉とはまた違った良い匂いがしてくるだろう。
「店だったらもうちょっと色々できるんだけどね」
 チョコレートと生クリームをトッピングしてティオの口元へ持っていく。
 ティオは特に疑いもせず一口食べたが、その後ふにゃりと飛行をやめて地面へ倒れてしまった。
「これだけでも美味しいんだけど、異世界の人はいつもこんな美味しいものを食べているのだ……?」
 うつ伏せに倒れているから顔は見えないが、多分顔が引きつっている。そんなことも知らずにルーキスは頷くと、彼女は更に肩を落としてしまった。
「またの機会があれば作ってあげるさ。キミさえ良ければ友達になってくれると嬉しいね」
 手を差し伸べて、もしティオが迷う様子とか見せたら強引にでも友達になるつもりだったらしいが、予想外にも二つ返事で手を掴まれた。孤独を過ごす精霊は寂しそうにこう言うのである。
「私は塔から出れないし、ここに来れる冒険者もいないから……また来てほしいのだ。約束なのだ」
 物理的に登りきることがほぼ不可能な塔から出ることもできず、人々への干渉が実質できないとなればこの反応にも頷ける。
「ふふふ、じゃあ今日は私の世界の話でもしようか。あと、次会えたら何をするか……って話」
 すっかり闇の精霊に懐かれてしまったルーキスは、彼女の頭を撫でてあげながら楽しいお話を始めるのだった。


「で、扉を開けて早々に閉めたキミは私を馬鹿にしているのだ?」
「まだ根に持ってるのかよ……。これもストレスの影響か?」
 運動して、沢山美味しいものを食べて、次は何を見せてくれるのだろうと期待した闇の精霊の口から出たのはただの文句であった。というのも、世界の懐から出てきたのはねこじゃらしとか花とか、謎の石。後者ふたつはまだしも、ねこじゃらしは完全にふざけていたのである。
「ふんす! もっと珍しいものを期待したのだ!」
「そんな性格だから信仰も得られないんだろ……スタータピオカミルクティーとビスケットやるから、さっさと機嫌直してくれ」
「そこまで言うなら直してやるのだ」
 この精霊チョロい。そんなことを思いながらも、美味しそうにタピオカミルクティーを飲んでいるティオに対し、世界は真面目な表情を見せた。
「……んで、結局いつまでこうしているんだよ。ここに籠ってたって、やれることに限度があるだろ。希が案じてたメシマズのことも解決するべきだと俺は思うんだがな」
 真面目な話になることを察していたのか、タピオカを飲みながらもティオは真面目な表情になり自分自身の考えを告げる。
「わかっている。けど、それは精霊六人全員で話をして、初めて変えられること。私だけでは何もできないのだ」
「……そうか、まぁお前の勝手だが、崇拝者一号としてお前の身は案じさせてもらうぜ? すぐに答えを出せとは言わないから、今後どうするとか一回考えておいてくれよな」
「キミ、意外と良い奴なのだな」
「知らん。が、いつか機会があればまた会おう」

成否

成功

状態異常

なし

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