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シナリオ詳細

<マジ卍台風>マジかよコロッケ買ってくる

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●風の強い日は誰でもやっちゃうやつ
「今日は、風が騒がしいな……」
 ざわつく風が本のページを乱雑にめくり、土手の草地に座った紫スーツの男……希望ヶ浜学園校長こと無名偲・無意式(p3n000170)は音を立てて本を閉じた。
 ゆっくりと立ち上がり、遠くの空を見た。
「風が、どうやらよくないものを連れてきてしまったらしい」
 クールに振り返り。
 あなたがいたことに気づき。
 校長は大きな声でオッホンと咳払いをした。

「日本書紀に語られる天目一箇神は鍛冶の神だがこれと習合同一視された妖怪として、江戸時代に編纂された和漢三才図会に一目連というものが記されている。これは片目の潰れた龍神であり伊勢では海難防止のために信仰されていたとも書かれているな。またこの地域の伝承として一目連が神社を出て暴れることで暴風がおきると伝わっている。台風はなにかしら罰当たりなことをして神様を怒らせたと解釈していたんだろう」
 ものすごい早口で台風妖怪豆知識を語る校長。
 つい数分前の出来事を消し去りたいらしい。
「日本は21世紀になって科学信仰が一般化し自然現象を妖怪のせいにすることはなくなったが、この世界……つまりは混沌にはその逆がありうることを知ってると思う。
 例えば、体育祭や修学旅行が近づくたびに『台風来い』と願っててるてる坊主を逆さに吊すような奴が、本当に台風の怪異を呼び寄せてしまうという現象だ」

●台風きたからコロッケ買ってくる
 場所は変わって希望ヶ浜学園校長室。
 生徒の前であろうと構わずブランデーをあけてグラスに注ぎ始めると、校長はそれを半分まで飲んでテーブルにコンと置いた。
「知ってると思うが、希望ヶ浜学園では10月24日にマジ卍体育祭が行われる予定だった」
 だった、と過去形で語ったのはそれが中止になりかけているゆえである。
 テレビをつけると台風のニュースが流れている。台風十四号が日本列島に近づいているというものであり、予報では24日に東京へ直撃するだろうとのことだ。
 さらに街角インタビューではなんか見覚えのある人がインタビューに答え……はじめたところで校長がリモコンでテレビを消した。
「これも知ってると思うが、ここは東京なんかじゃあない。日本でもなければ台風なんてくるはずもない。なにせ練達のドームの中だからな。天候再現はできるが、よほどのことでもなければ台風なんておこさない。俺も面倒はごめんだ」
 体育祭が中止になってくれるのは楽でいいが、と小声で言ったのち、校長は首を振った。
 彼のケースは別だが、怪異を知らず純粋に台風来い台風来いと願った人々の想いが悪性怪異(夜妖)となって希望ヶ浜を台風で荒らし続けるというわけだ。それも、体育祭が二度と再会しなくなるくらい長期的かつ徹底的に。
 そうなればどれだけの被害がでるか想像もつかない。なじみはキレてるしひよのもキレてるし廻はそんな女子たちにビクついてるし特にひよのに至っては校長が『台風の怪異を掃除してきてくれ』と電話した途端『あ゛?』と返したほどである。
「本当に台風が来て貰っても困るんでな。怪異対策チームを複数組んで各所に派遣することにした。既に何チームか向かっているが、お前達にも行って貰う。準備はできてるな?」
 グラスを再び手に取って、ぴっと指をさす。
 いつのまにかテーブルに置かれていた資料へ、である。
「詳細はそこに記した通りだ」

 『怪異番号■■■■:台風コロッケ』
 台風コロッケは台風がくると必ずコロッケを買いに行くというネットミームから発生した怪異です。
 当怪異は高速で周回飛行しつづけるコロッケ群です。
 飛行中のコロッケは異常性を発揮し、物体との激しい衝突、高温による加熱、高速の冷凍、液体の塗布、その他あらゆる方法を用いても損傷をうけず元の状態を維持し続けるようです。
 またこのコロッケは人間(以後対象と呼称)の範囲100mに接近すると対象に向かって高速で接近し、その速度を維持したまま対象に衝突することで物理的なダメージを与えます。
 これには一般的な銃撃、打撃、魔法による砲撃等と同等のダメージがあり、一度に複数のコロッケが衝突することで【火炎】【連】【多重影】効果を持ちます。多重影効果はいちどに集合しているコロッケ固体数により増加するとみられています。
 また、コロッケは『BS耐性』をもっていることが判明しています。
 ですが当コロッケに銃撃や斬撃など一般的な戦闘ダメージを与えた際、一定のダメージに達することで異常性を失い非異常性のコロッケへと変化します。この際付近でもできるだけ安全な場所に透明なプラスチックパックに梱包された状態で着地し、節食に際して害となる汚れや損傷を防ごうとします。
 非異常性コロッケは一般的なスーパーマーケットやコロッケ専門店で販売されているものと全く同じであり、節食した場合多くの対象が美味であると主張します。
 ■■■■年■■月遭遇時、スイーパーによって回収された固体を解剖したところ肉じゃが、ホワイトソースクリーム(海老・蟹・コーンの三種)、メンチ、カボチャ、ポテトサラダ、チーズ、刻んだゆで卵、カレー、枝豆、グラタンなど多様なバリエーションのコロッケが混在していることが判明しました。

 一通り資料を読んだあなたへ、校長はグラスの中身を飲み干して言った。
「つまり、コロッケを倒せ。その気があるなら、食え」

GMコメント

 体育祭が台風で中止になってしまいそうですたすけて!

●成功条件
 コロッケ台風の撃破(あとで食べていいよ)

●コロッケ台風
 OPで説明されたとおりのコロッケ台風です
 場所は希望ヶ浜自然公園。その時点ではまだ風は吹いていますが雨はふっていません。
 仮に皆さんがコロッケに負けるとかいう字面的にすごいことが起きた場合は大雨台風に見舞われるでしょう。
 ですが逆にイレギュラーズがコロッケに勝利するというこれまた字面的におかしなことがおきた場合突如その空間の空だけ晴れ渡り空に虹が架かります。胸にもかかるぜ。

●マジ卍って?
 希望ヶ浜学園の学園祭の総称です。体育祭と文化祭の二つのお祭りを纏めて『マジ卍祭り』と称します。
 そのネーミングはユーザー投票と言う名前の『皆で決めた素敵な名前でしょ!』という勢いのものです。

●希望ヶ浜と学園
詳細はこちらの特設ページをどうぞ
https://rev1.reversion.jp/page/kibougahama

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

 それではみなさん。ねこです。よろしくおねがいします。

  • <マジ卍台風>マジかよコロッケ買ってくる完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年11月09日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

カイト・シャルラハ(p3p000684)
風読禽
ヨハン=レーム(p3p001117)
おチビの理解者
イルミナ・ガードルーン(p3p001475)
まずは、お話から。
ワモン・C・デルモンテ(p3p007195)
生イカが好き
アルヴィ=ド=ラフス(p3p007360)
航空指揮
ニコラス・コルゥ・ハイド(p3p007576)
名無しの
ルツ=ローゼンフェルド(p3p008707)
復讐の焔緋
フラッフル・コンシール・レイ(p3p008875)
屋根裏の散歩者

リプレイ

●コロッケの語源はフランス料理のクロケットだって説があるよ
「うひょー! すげーたくさんのコロッケがとびまわってるぜ!」
 ハッピー! とかいいながらコロッケがヒレをぺちぺちしていた。
 ちがった。子アザラシの『ガトリングだぜ!』ワモン・C・デルモンテ(p3p007195)がペチペチしていた。
「たっべほうだい♪ あ、そーれたっべほうだい♪」
 そのままコロッケ食べ放題音頭を踊り始めるあざらし。
 後ろでは『騎士の忠節』アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)が『コロッケたくさん食べに来ました』のプレートを掲げて満足げに立っていた。
 表情が薄味なのでぱっとみわかんないけどすごいウキウキしてるのは尻尾から充分伝わってくる。具体的にはめっちゃブンブンしてる。
 それは『(((´・ω・`)))』ヨハン=レーム(p3p001117)も同じようで、尻尾(?)のコンセントをもんのすげー勢いでぶるんぶるん回転させていた。
 まってなにその感情表現初めて見た。
「そうそう、このコロッケにはストレートにちからでぶつかるしかないという情報だけは頂いているのでそこに気を付けて頑張りましょう」
 『コロッケを力で行く』という常人が聞いたら確実に首をかしげるようなワードを力強く語るヨハン。
「任せろ」
 『博徒』ニコラス・コルゥ・ハイド(p3p007576)がいつもの剣に寄りかかって不敵に笑うあのポーズで現れた。
 違いは希望ヶ浜の風土に合わせてスーツとハットのカジュアルな着こなしでやってきたことである。
「タダでA5ランクの牛肉の入りコロッケが食えると聞いたが本当に食えるんだろうな?」
「食えるぞ、見ろあれを」
 『風読禽』カイト・シャルラハ(p3p000684)が風を読み取り、建物の影から現れるコロッケ群を指さした。
 空の上でイワシみたいに高速旋回飛行するコロッケの群れをご想像いただけようか?
 この時点で本当に想像できちゃったアナタ。もしかしたら疲れてるかもしれない。
「衣はカリッと、中はドロっと。
 カニクリームも好きだし、牛肉コロッケも捨てがたい。
 なんたって、鳥の口でも食べやすいからコロッケいいよな!」
 コロッケ台風を前にグッと親指を立てるカイト。
 『蒼騎雷電』イルミナ・ガードルーン(p3p001475)が赤フレームの眼鏡をくいっとやった。
「鶏そぼろも、いいッスね……」
「俺の二の腕見ながらいうのやめて?」
「そうそうコロッケ! 学校帰りにお肉屋さんで買うコロッケは素晴らしいッスよね……!
 スーパーで買うお惣菜のコロッケも、お家で作る揚げたてコロッケも……あ、なんだかお腹空いてきたッス!」
「だから俺の脇腹みながら言うのやめろ!?」
「…………」
 その一方、『復讐の焔緋』ルツ=ローゼンフェルド(p3p008707)はコロッケ台風の有様に若干気圧されていた。
「コロッケタダ食いができると聞いたのになんだか思ってたのと違う……。
 どうしてコロッケが台風に……? なぜだか無性にコロッケを買いに行かないといけない気がしてきた」
「まずは怪異を鎮めて、まともなコロッケに戻って貰おうか」
 買いに行くまでもない、と『屋根裏の散歩者』フラッフル・コンシール・レイ(p3p008875)は長く余った袖をくるくるとやって言った。
 轟音を鳴らし、まるで意思でもあるかのように十字路をカーブして迫るコロッケ台風。
 イレギュラーズたちは巨大な台風へ向かって走り出した。
 彼らの胸によぎる一つの想い。
 そうそれは

 ――相手がコロッケじゃなかったら格好いい絵面だったのに

●コロッケにもステーキ以上の高級料理だった時代があったらしい
 これが戦闘する依頼だと主張するかのように、カイトがキュオーンっていいながら大空へと舞い上がっていった。
 イワシめいて旋回飛行するコロッケ群の一部がカイトをみとめ群れを離脱。カイトへの集団体当たりをしかけるが……。
「フッ、遅いぜ! 俺は火傷にもコロッケの具材にもならねーぜ!?」
 華麗なるバレルロールと左右へのランダムなカーブによってコロッケの体当たりをかわすと、空中でインメルマンターンをきめてコロッケの後方をとった。
 慌てて分散を始めるコロッケだが、カイトは冷静のその一部だけをロックオン。翼から離脱した紅蓮の羽が赤い光を発しながらミサイルのようにコロッケへと殺到していく。
 爆発炎上。墜落したコロッケは透明なプラスチックパック(輪ゴムつき)となって民家の屋根へと落ちていった。
 このとき撃墜しなかった一団はといえば……。
「ワモン、そっちへ言ったぞ!」
「うおー! まかせとけー!」
 落ちてきたコロッケをハムッと食べて『イカころっけだ!』と目を輝かせたワモンは民家の屋根の上に陣取りガトリング砲の角度を上げた。
「っつーわけでせんてひっしょー! うなれ! オイラのガトリング!
 うおおお! うつぜー! うつぜー! オイラのガトリングがコロッケをうちぬくぜー!」
 空で大きくカーブを描くコロッケへ、身体ごとぺちぺち回頭しながら銃撃を浴びせていくワモン。
 銃弾を受けたコロッケは次々と煙をふいて墜落していき、路上へ点々とコロッケが積まれていった。
 うっかり踏んづけたりしないようにリュックサックにさくさく詰め込んでいくフラッフル。
 仲間の仇をうちたいのかたまたま目に入っただけなのか、旋回コロッケ群衆が一斉にパッと別々の方向へ分散。その一部がフラッフルのほうへと突っ込んできた。
「群れで迫るコロッケ、視界が悪いな……!」
 咄嗟に腕で顔をガードするも、連続でヒットしジュッと焼けるような熱をもたらすコロッケの体当たりは伊達ではないらしい。集中攻撃を受ければひとたまりもないだろう。
 が、そういう時に頼りになるのがヨハンのタクティカルフィールドである。
 尻尾のコンセントからバチンとスパークを放つと、自分を中心とした十数メートルに青白い半球形のフィールドを展開。
「フラッフルさん、ルツさん、このフィールドの中へ!」
「いいところに」
 ルツにとってヨハンのもたらすバフやヒールは素晴らしく相対効果の高いものだった。
 さらには身を挺してフラッフルたちを庇い始めるヨハン。
 ルツはそれに応えるように、ポール状の武器をライフルのように構え折りたたみハンドルを展開。ハンドル越しに芯へ魔力を流し込むと、圧縮した魔力光線が先端から放たれた。
「どんなにふざけた怪異でもなんとかしないと皆困っちゃうからね。
 皆体育祭楽しみにしてるんでしょ、校長はめんどくさいみたいだけど……」
 直撃をうけたコロッケたちが次々と墜落していく。
 フラッフルはここぞとばかりに『光翼乱破』のフィールドを展開。
 ヨハンのフィールド内へ侵入しぐるぐると狭い周回をかけながらタックルを続けるコロッケたちへ、袖の間から噴出したすみれ色の光が巨大な剣となり、跳躍からの連続回転斬りによってコロッケたちが切り裂かれていく。
 もちろん倒したコロッケは無傷かつパック詰めされるのだが。

 こうしてヨハン周辺がやたらコロッケまみれになっていく一方、イルミナはブロック塀の上にのぼり拳法のような構えをとった。
「さあ、どっからでもかかってくるッス!」
 期待(?)に応えてか四方八方から同時に飛びかかるコロッケたち。
 ピキュンとイルミナの目に光りが走り、まるで手足が無数に分裂したかのような素早さで全方位へ蹴りと手刀を打ち出していった。
 片足立ちで再び拳法めいた構えにもどるイルミナ。彼女の周囲でコロッケたちは停止し、次々と力なく落ちていく。
 アルヴァもまけじとブロック塀へ飛び乗り、かわいいわんこの構えをとった。
「のこのこ食べられに来るなんて生意気ですね。回避を捨ててまで食べに来たのだから、沢山相手してあげますよ!!」
 またも四方八方から飛んでくるコロッケ。しかしアルヴァは一斉攻撃の直前で跳躍。タックルをかわすと、空中で身をひねって拳にオーラを集中させた。
 強烈な打ち下ろしがブロック塀もろとも周辺エリアを破壊。もちろんコロッケも爆発四散した。
「ってか、台風来たからコロッケ買ってくるってなんだよ。普通焼きそばパン買ってこいじゃないのかよ!」
「フッ……勝ったな」
 ニコラスは剣に寄りかかった例の姿勢のまま缶ビールを片手でカシュッてやった。
 ぐびぐびしてからそばの郵便ポストに置き、一緒においといたパックからコロッケを出してかじる。
 うめえうめえとつぶやいてから、死角よりせまるコロッケを指から放つ魔力光線で貫いた。
「冷や飯に熱々のコロッケというのも最高だし、ソースをたっぷりかけたコロッケを頬張り白飯をがっつくのも最高なんだよなぁ」
 などと想像に浸りながら、今度こそ剣を掴み上げ、一斉に迫るコロッケを剣でいっぺんになぎ払った。
「けど今日は、酒とコロッケでシンプルにいっちまうか!」

●お肉屋さんのコロッケって概念が通用しなくなってきた昨今
 所変わってこちらは公園。
 台風を倒したことですっかり空は晴れ渡りぐっしょりしていた地面もなぜかカラッカラである。
 しかも空には虹もかかっていた。
「こんな都合良くいくもんなのか?」
「台風を倒した時点でもうおかしいんだ。深く考えるこたぁねえ」
 真顔で空を見上げるカイトに、ニコラスが缶ビール片手に『ラフにいこうぜ!』と呼びかけた。平日昼間の公園で缶ビール飲み始める26歳にこんなこと言われたらもうなにも言い返せない。無敵である。
「どれを食べるかなー? さっき食べたイカはいってるのねーかな?」
 一方こちらはワクワクフェイスでコロッケをみつめていた。
 よく公園にある木のテーブルにテーブルクロスを敷いて、発泡スチロール製の大皿にコロッケが綺麗に並べられている。並べるっていうか、もうピラミッドみたいに積まれていた。
「お、これは蟹クリームコロッケじゃねーか! 蟹もうめーよなー!
 こっちはエビクリームコロッケだぜ! エビカニ食べ比べとはしゃれてるな!」
 そんな中からランダム上等とばかりにコロッケをつまみ出してはサクサク食べ始める。
 コロッケの食レポとかいらな――パン粉のつぶがたったややざくざく気味の衣に歯を立てるまでもなく香るサッパリした油とパンの香り。いざかじりつくとその熱で一瞬火傷しそうになるが、ほふほふと息をしながら口の中で転がせば熱と共にふくらむホワイトソースのやわらかな味わい。そして混ぜ込まれた蟹の確かな味わいが広がっていく。
 蟹の旨味をより深く閉じ込めるためだろうか。蟹殻を牛乳で煮たものをソースに用いているらしく一口食べただけで既に上品な心持ちにひたることができた。
 それは海老も同様。プーバランという非常に小さい海老を用いたらしいこのコロッケは食べるたびプチッと言う海老独特の歯ごたえと味わいが広がるのだ。
 正直コロッケって脂っこいだけのモンかなとか思っていた層には愕然とするほど繊細かつ上品な料理である。そうコロッケとはピンキリの料理なのだ。
「僕知ってます、こういう変なのだいたい謎に美味しいのだと」
 カニコロをもふもふしながら、ヨハンは混沌慣れしたことを言った。
 いかに再現性東京といえどここは混沌。とんちき生物のひとつやふたつ居てもおかしかねえのだ。今回はただの怪奇現象の一端だけど。
「あ、なるほど、さくさくしているのに柔らかくて不思議な食感だ……おいしい」
 一方こちらはコロッケ初体験っぽいフラッフル。
 令和ではもはやコロッケの代名詞となりつつあるジャガイモ100%の低コストコロッケから手をつけてみたわけだが、これもまたピンキリ料理。油、衣、そして芋の選択と調理法によって天にも昇る洋食となるのだ。
 急に専門的なことをいうと圧力釜と大量の油をつかった圧力ディープフライ方式ってゆーのがあって熱が素早くまんべんなく伝わり衣さっくり中ほくほくのコロッケが容易に作れるのだ。一時期これがグローバルにチェーン展開したのは記憶に新しいところである。
「ふう、しかし……年食うと油がきつくなってくるよな。っておい誰だ『やはり歳か』つったやつ! 26ぞ!? 俺26ぞ!? アニメじゃまだ若者ポジションの歳ぞォ!? このままコロッケの10や20ペロリといけたりするし? …………いけるっつてんだろぉおお!!?」
 かと思えばニコラスが急速に何かの症状を発症していた。
 ちなみにこれは29歳病という。近づくにつれおっさんになってきた気がして焦るが、通り越すと逆に落ち着くという成人あるあるである。
「一人暮らしってやっぱり食べるの面倒くさくなっちゃうんですよね」
 そしてこちらはマイペースにぱくつくアルヴァ15歳。
「ってか、持ち帰れる分は持ち帰るのですがそれでも残ったコロッケはどうするつもりなんでしょう? 放置して腐らせたとか嫌なので、後程スタッフが美味しくいただきましたとかいれといてくださいね??」
 後程スタッフが美味しくいただきました(義務)。
「いや、スタッフというか……持って帰りたいな。しばらくはご飯に困らなそう」
 ルツがコロッケピラミッドを見てぽつりともらした。
 高級コロッケは速攻で急速冷凍すると長持ちするけど一個20円とかの安いやつは油が弱いので残しておくとあとで胃もたれとかするから気をつけよう。
「サクサクあつあつのコロッケ、お腹いっぱい食べて帰りましょうね!
 ……これで各地の台風も消える……んスかね? そしたら体育祭も開催できますよねっ、楽しみッスー!」
「白魚コロッケ、鯖缶コロッケ、鱈コロッケ。魚も合うんだな。
 ネギコロッケ、筍コロッケ、ひよこ豆コロッケ。面白いコロッケもいっぱいだな」
 イルミナとカイトは満足げにコロッケをぱくつき、沢山食べても案外胃もたれしないコロッケに若干感動しつつ、お持ち帰り用をケースに詰めてこの日は大満足大満腹で帰ったのだった。
 めでたしめでたし。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――マジ卍体育祭に、続く!

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