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シナリオ詳細

天義の魔法レッスン

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「色んな国の、色んな魔法使いさんに会って、指南をして貰いたいの」
 ある日、旅人であるアイラ・ディアグレイス(p3p006523)は、そう言いだす。
 混沌へと呼ばれてからとある魔術師に師事し、ローレットに所属した彼女は、様々な依頼をこなすうちにより強くなりたいと願う。
 彼女が好んで使用するのは、魔法、魔術。
 それらを扱い、使いこなすことでアイラは強くなってきた。
「ならば、きっとこれからに役立つことを教えて貰うことだって、できるはずです」
「ふふ、いいね。向上心を持つことは大事だよ」
 アイラにとって共に戦う相棒であり、人生におけるパートナーでもあるラピス・ディアグレイス(p3p007373)も快く了承してくれる。
 2人はまず、頼れるローレットの先輩であるイレギュラーズを頼ることに。
 新たな魔法、魔術について知りたい。そんなアイラの要望を聞いたポテト=アークライト(p3p000294)は小さく唸る。
「なるほどな。……リゲル。誰か宛てはないか?」
 彼女が問いかけるのは夫であるリゲル=アークライト(p3p000442)だ。
「そうだな……俺の出身の天義に名の知られた魔法使いがいるのだけれど、会ってみるかい?」
「是非、お願いします」
 リゲルのそんな一言を受け、アイラを含めたイレギュラーズ達は天義を目指すことに決めた。
「私も同行していいかな」
 メルトリリスも天義出身ということで、その魔法使いの名は聞いたことがあったらしく、この機会に会ってみたいと希望を語る。
「天義の魔法使い……か」
 一方で、シュバルツ=リッケンハルト(p3p000837)は天義の関係者と言うだけでやや苦手意識を持つようだったが、自らの在り方を見直すきっかけも兼ねてアイラ達についていくことに決めたようだ。
 他に、同行を申し出るメンバーの状況を聞きつつ、一行は天義へと向かう馬車へと乗り合わせるのだった。


 天義は現在、『冥刻のエクリプス』事件を経て、国の立て直しをはかっている最中である。
 戦いによって荒れた国内の施設の整備、復興作業。機能しなくなった組織の再編。失われかけた信仰の強化……etc。
 天義の国内はまだ混乱の最中にあり、イレギュラーズ達が尋ねた魔法使いもまた国の助けとなるべく国内のあちこちを奔走しているそうだ。
「すみません。最近はなかなか自宅に戻る暇もなく……。少し待っていてください」
 一見すれば、神官とも思しき姿をしたその魔法使いはヘルヴィ=ラウタヴァーラ。
 性別、年齢共に不詳であり、見た目は長い金髪に金の瞳の人間種であるようだ。
 手早く、埃の溜まっていた室内を掃除したヘルヴィは忙しなく茶を淹れ、イレギュラーズ達をもてなす。
「貴方達のおかげで天義はいい方向に変わろうとしている。本当に良いことです」
 天義の権力争いに関心を持たなかったことで、ヘルヴィは長い間、この家で魔法の研究を続けていたという。
 ただ、ここに来て彼の知名度もあってか、魔法使いとしての力を頼られて傷付く人々の手当て、信仰心を失った人々へと生きる術を説き、学問を志す子供達に魔法の初歩を教えるなどなど、ヘルヴィはほとんど休みなく動いているのだそうだ。
「お忙しいところ、本当に申し訳ありません」
 アイラはそんな中でも時間を割いて自分達に会ってくれたヘルヴィに感謝し、自身の要望を告げる。
「……なるほど、自身が強くなるために魔道の幅を広げたいのですね?」
「はい」
 頷くアイラ。他のメンバー達の反応は様々で、ヘルヴィ自身に関心がある者。彼の魔法使いとしての力量に興味を示す者。相方の為に同行して成り行きを見守る者など。
「最初に断っておきますが、私自身は国を変えるような強い力はありません」
 もし、それだけの力があったなら、あの『冥刻のエクリプス』でも表舞台に姿を現していたことだろう。
 彼はあくまで研究者であり、教師や講師を行う立ち位置。強い力は持つが、それを戦いへと活かす術には長けていない。
「ですが、天義を救ってくれた皆様の頼みです。私で良ければ、できる限り力になりましょう」
 前置きこそあったが、彼は快くイレギュラーズ達の要望を受け、魔法指南を始めるのだった。


 ヘルヴィが教えることができるのは、天義で主に使われている魔法の形態。魔力や紋章の力を行使した神聖魔法、光魔法と呼称されるものだ。
「一般的には神の力の一端とされていますね。あとは……」
 イレギュラーズ達の要望に可能な限り応え、ヘルヴィはしばらく座学や実技によって天義の魔法について語ってくれる。
 そして、ヘルヴィはしばらくしてから、イレギュラーズ達へとこんな要望も行う。
「よろしければ、私と……私達と一戦交えてみませんか?」
 天義を救ったイレギュラーズの力に、ヘルヴィも興味があるとのこと。
 また、イレギュラーズとしても、ヘルヴィがどんなふうに魔法を使うのかを見る機会となる。双方にとってこの模擬戦は大きなプラスとなるはずだ。
「外に広場があります。保護結界はこちらで行いますから、存分に皆様の力を私に見せてください」
 ところで、彼は私達と言った。それがどういう意味かはすぐにイレギュラーズの知る所となる。
 強い光は影を生む。ヘルヴィは光を操ることで、自らの幻影を5体出現させたのだ。
「さあ、行きます。私を失望させないでください……!」
 それまで微笑を浮かべていた彼は表情を引き締め、イレギュラーズ達へと魔法を発してくるのだった。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 今回はリクエスト、並びに挙手に対するご指名ありがとうございます。
 天義の魔法使いとあっていただき、天義の魔術指南を受けて頂ければと思います。

●目的
 天義の魔法使いから教えを乞い、模擬戦を行うこと。

●概要
 天義において知名度の高い魔法使い、ヘルヴィから指南を受けに向かいます。
 天義の魔法も幅広いようですが、やはり正義、信仰といったものを重視していた歴史から、神聖、光といった魔法が多く好まれ、使用されていたようです。
 ヘルヴィもそういったものの研究にも携わっており、そうした魔法、術について指南してくれます。
 また、魔法使いはイレギュラーズの力を見たいとのことで、模擬戦を行うことになりますので準備を願います。

●NPC
〇天義の魔法使い……ヘルヴィ=ラウタヴァーラ
 現状、天義の国の立て直しに奔走している魔法使いです。
 長い金髪に金の瞳の人間種で、中性的な印象を抱かせる年齢不詳の神官と言った風体です。
 今回はイレギュラーズが訪れると知り、自宅で待機してくれていたようです。

 指南パートでは上記の通り、神聖魔法、光魔法をメインに教えてくれます。彼は詠唱と紋章を合わせた魔法を行使でき、高い技術を持ちます。
 実践パートでは、自らの幻影を5体出現させ、6人で相手になります。(追加で2名の方がご参加されても、ヘルヴィは本体と幻影合わせて6体で相手になります)
 一口で神聖、光魔法と言っても、攻撃だけでなく回復支援もこなします。謙遜こそしてはいますが、人間種としての範囲内でかなりの実力を持ちます。
 その戦い方から、皆様が何か学ぶ物があれば幸いです。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • 天義の魔法レッスン完了
  • GM名なちゅい
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年11月09日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ポテト=アークライト(p3p000294)
優心の恩寵
※参加確定済み※
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
※参加確定済み※
シュバルツ=リッケンハルト(p3p000837)
死を齎す黒刃
※参加確定済み※
ノーラ(p3p002582)
方向音痴
アイラ・ディアグレイス(p3p006523)
生命の蝶
※参加確定済み※
メルトリリス(p3p007295)
神殺しの聖女
※参加確定済み※
ラピス・ディアグレイス(p3p007373)
瑠璃の光
※参加確定済み※
メリー・フローラ・アベル(p3p007440)
虚無堕ち魔法少女

リプレイ


 天義へとやってきたイレギュラーズ一行。
「パパとママとお出掛けだー! 違った、魔法のお勉強だー!」
 精霊の子供である『方向音痴』ノーラ(p3p002582)がはしゃいでいるのは、パパ、ママと呼ぶアークライト夫妻と一緒の依頼だからだろう。
「魔法の指南か……」
 その妻である長い茶髪のゆるふわ女性、『優心の恩寵』ポテト=アークライト(p3p000294)は今回の訪問の目的を口にする。
 この国に住む著名な魔法使いはなんでも、光の術を得意としているそうだ。
 小柄な金髪少女、『躾のなってないワガママ娘』メリー・フローラ・アベル(p3p007440)も自分の目的の為、とある攻撃スキルについて聞こうと考えていたようだが、普段、回復専門の立ち回りをするポテトとしても、学ぶところは多いと考えている。
 なお、夫である『白獅子剛剣』リゲル=アークライト(p3p000442)も、天義の著名人との対面を楽しみにしていた。
「2人とも目が輝いているな」
 くすくすと笑うポテトが言う2人とは、優しく撫でるノーラと、片翼の蝶の翅を背に生やす『瑠璃の片翼』アイラ・ディアグレイス(p3p006523)だ。
 夫である瑠璃色の髪と瞳を持つ『藍羅の片翼』ラピス・ディアグレイス(p3p007373)との参加するアイラも、この邂逅を楽しみにしていたようである。
(今でも天義に来ると胸の傷が疼く)
 一方で、鋭い三白眼の目と、その左目を通る傷が印象的な『死を齎す黒刃』シュバルツ=リッケンハルト(p3p000837)は、胸部に手を当てて。
 ――あの日、もっと俺に力があったら。
 幾度となくそう考えるシュバルツとしては、なりふり構っている場合ではない。
(神嫌いな俺が神の力の一端を教えて貰うなんて笑っちまうような状況だが、利用出来るものはなんでも利用してやる)
 次こそは、大切な者を護れるように。
 そんな強い想いを抱く彼は同行の『神威之戦姫』メルトリリス(p3p007295)にちらりと視線を向けた。
 ――しあわせであれば、それでよかったの。
 予知の力を持つメルトリリス……天義の見習い騎士も、物思いに耽っていて。
 ――もう少し、未来がしっかり見られれば、母様はいなくならなかったのかな。
 ――もう少し、予知の回数が増えれば、姉様は、シュバルツさまの前からいなくならなかったのかな。
 傍で見て何かを思い悩むシュバルツもまた、幸せには程遠そうなことをメルトリリスは憂うのだった。

 天義の街外れ、ヘルヴィ=ラウタヴァーラと言う名の魔法使いが居を構える。
「ようこそ、いらっしゃいました」
 金髪金眼で中性的なヘルヴィは少し慌ただしく片付けし、すぐにイレギュラーズ達を室内へと通してくれた。
「初めましてヘルヴィ様」
「ヘルヴィ様にお会いできるどころか、指南まで頂けるとは光栄の極みだ」
 時間を工面してくれただけでなく、魔法について指導してもらうことに、ポテトとリゲルは感謝を示す。
「ヘルヴィさん、此度のご縁に感謝致します」
「此度は魔術の教練にお付き合い頂き、本当にありがとうございます」
 アイラ、続いてラピスもまた挨拶を交わす。
 2人はそれぞれ、自身の戦法を広げる為に何か教授してほしいとのこと。
「ちょっとテンション上がってる子もいますが、宜しくお願いします」
「ノーラです! 宜しくお願いします!!」
 ポテトに促されたノーラも元気よく挨拶すると、ヘルヴィはにこやかに笑って。
「天義を救ってくれた皆様の頼みです。私で良ければ、できる限り力になりましょう」
 その言葉に、メルトリリスは耳を塞いでしまう。
(私は、何もしてない)
 不義の父を屠ったのは兄で、姉を救ったのはシュバルツ。自身は戦場にすらいなかったと彼女は小さく首を振る。
「メルトリリスと申します。本日は護衛のようなものですが、宜しくお願いします」
 眉間に寄りそうなシワを伸ばし、メルトリリスは取ってつけた笑顔を見せていたのだった。


 程なく、ヘルヴィによるレッスンが始まる。
「まずは私の術を披露いたしますね」
 呪文をそらんじるヘルヴィをノーラが見る。
「ヘルヴィ様は、呪文と紋章で魔法使うのか。紋章って誰が決めたんだ?」
 ノーラは気になり、わくわくしながらヘルヴィの手元を覗き込む。
「紋章、僕でも使える? それって魔法によってきまってるのか?」
「私が使う魔法は決まっていますね」
 また、本人の適正など色々あるが、少なくとも前向きに習得するならいずれノーラも覚えることはできるとのこと。
「使えるなら猫のが良い! マシュマロみたいな真っ白ふわふわなの!!」
 創意工夫すれば、ある程度変化するのが魔法である。呪文の文言や紋章を変更すればヘルヴィの使用するものに関しても少し工夫の余地はあるのだとか。
「私は神気閃光を使うのだけれど……」
 そこで、メリーが話を持ちかける。
 中距離から範囲に攻撃する神気閃光は味方を識別、且つ相手にとどめを刺さないという便利な技だが、威嚇術等と違って撃ち放題でないのが残念とのこと。
「だから、燃費よくする方法とかないかなー?」
 ダメ元での問いかけだったが、ヘルヴィは少し考えて。
「そうですね。例えば、充填できる手段を得るとか」
 自らの魔力の能率を高める為のスキルの使用等もヘルヴィは提示する。
「光属性の魔法って使いやすくて、ボクもよく使うんですよね。でも……」
 アイラが尋ねたいのは、魔法のことよりももっと大切なこと。
「魔法を使うときに、大切にしていることは、ありますか?」
 この魔法は誰かの為に。そうあるよう心掛けていることはあるのかとアイラは問いかける。
「自分がいかなる信条を抱いて行使しているか、それを私は意識しています」
 無闇に力を行使することは子供に銃を持たせることにも等しい。強い力を使う為にはそれだけの責任が伴うとヘルヴィは考えているのだ。
 そこで、アイラが思ったのは、傍にいるラピスのこと。
「傍に居てくれる彼の為に、ボクができることは、あるのでしょうか」
「そのまま、傍に居続けてあげてください。彼もまた貴方を頼りにしているのでしょう?」
 一方のラピスも悩みを抱えており、現状は魔法、魔術の知識、技術に疎く、生まれ持った神秘の力を只放出しているのみとのこと。
 しかしながら、アイラを守る為にはそれだけではダメだとラピスは考えていたのだ。
「この力を活かす為の、技が欲しい。僕にも、どうか。護る為に、彼女の為に」
「相手を害することが苦手なら、貴方もまた彼女を支える為の技を修めてはいかがですか?」
 ラピスが望む、護り、助け、癒す為の技。できる限り、それをヘルヴィは教えてくれる。
 そんなアイラとラピス、メリーを見ていたノーラがそこでにこにこと笑って。
「アイラお姉さんとラピスお兄さんは蝶々さん? メリーお姉さんは黄色いお花似合いそうだな!」
 呪文と紋章の魔法はまだ無理でも、いつか使えるようになりたいというノーラは、マシュマロみたいな真っ白な猫がぱんちする魔法なんてすごく可愛いと語る。
 そんな娘にほっこりとしつつ、今度はポテトの番。
「私は主に回復や付与魔法に関して、色々教えて貰いたいな」
 少しでも早く皆に癒しを。少しでも皆が戦いやすいように。
 如何に皆の背中を護り、戦いやすくするかがポテトにとって大切なことなのだ。
 癒しの術は初歩から応用まで幅広いが、回復支援に特化したポテトの術にヘルヴィも目を見張っていた。
 続いて、シュバルツ。なりふり構わずと教えを乞う彼が使う影の術式。それに強い光を持ってして生み出す幻影を使った戦い方について意見を交わしたいと願う。
「私は主に自衛に使っていますが、貴方なら更なる使い方を生み出せるはずです」
 自らの技をどう生かし、幻影を使うか。それはシュバルツ次第だとヘルヴィは説く。
(なんだか居心地悪いな……)
 そんな中、メルトリリスは天義の立て直しに忙しいヘルヴィに対し、ネメシスの街を破壊したロストレイン家に負い目を感じる。
 自らのギフトによる予知をもっと自分の意思で発動できないかと尋ねたかったのだが、なかなか声を掛けられずにいたようだった。

 一通り、希望するメンバーへと個別に指南を行ったヘルヴィはこんな提案をして。
「よろしければ、私と……私達と一戦交えてみませんか?」
 外の広場に向かった一行が前にしたのは、強い光を放ったヘルヴィが出現させた5つの幻影だ。
「最初に確認しておきたいだけど、別に勝つ必要は無いのよね?」
「ええ、ですが、本気で行きます」
 メリーの問いに、力を見せてほしいと言うヘルヴィは天義を救った面々相手とあって、手は抜かないと主張する。
「お勉強の後は実践だー!」
 はしゃぐノーラが騎士盾を手にすると、リゲルも騎士らしく礼を持ってお辞儀をして。
「天義の騎士として、恥じぬ戦いをすべく気合いを入れるぞ!」
「さあ、行きます。私を失望させないでください……!」
 保護結界を張ったヘルヴィは幻影と共に身構える。
(知りたい。魔法を、魔術を使い続けたその果てに何があるのか)
 天義の魔法使いを前にして、アイラは思う。
 魔法の研鑽を続けた先は滅びなのか、或いは。力に溺れるよう振舞うには……。
「ヘルヴィさん。貴方の胸をお借りします。未熟なボクらに、どうか、御指南ください!」
 アイラの一声の後、両者は交錯し始めたのだった。


 ヘルヴィは幻影を散開させつつ、素早く動いて本体の居場所を特定させぬようにする。
 ある程度、相手のスキルを把握していたシュバルツは仲間から離れて立ち回り、自らを強化しつつ相手の出方を窺う。
 リゲルは統率で仲間との連携を強化しつつ、超嗅覚を働かせる。幻影は匂いを発することは無いのだ。
「今回は訓練だ。幻影から倒す形が良いだろう」
 相手が魔法使いなら遠近両用の可能性が高いと踏んでいたリゲルは近場の幻影にアタリをつけ、星凍つる剣の舞を浴びせかける。
「ちゃんと戦うの久しぶりだけど、大丈夫! パパが守ってママが癒してくれるから!」
「ノーラは俺達が守る! 思いっきりぶつかればいい!」
「全力で頑張れ」
 両親の激励を受け、ノーラはハイセンスを働かせてヘルヴィの行動を注視する。リゲルの狙った幻影に狙いを定め、魔弾を叩き込む。
 ヘルヴィもまた光の魔法をこちらへと撃ち込んでくる。
 光の魔法もエネルギーを収束させたものと広範囲を灼くものとを使い分け、抑えとなるリゲルやラピスをメインに浴びせかけていた。
「消費は気にせず、ヘルヴィ様の胸を借りて思いっきりやっておいで」
 体力や気力魔力の回復も請け負うポテトの呼びかけを受け、アイラは歌声を響かせる。
 すぐに冥の蝶がアイラの円舞曲と共に舞い踊り、ヘルヴィ達を攻め立てる。
(ボクだってこれまでの時を、ただ流されるままに生きてきたわけじゃない)
 二人の師匠やラピスとの出逢い。そして、これまで出逢った敵との幾多の戦闘がアイラを強くしている。
 そのアイラの近くに控えるラピスは仲間の為、エスプリやスキルによって多くの仲間を支援してからアイラを光から庇う。
(……彼女は、アイラは強さを求めてる)
 戦場を急ぎ駆けるアイラは鋭く研ぎ澄まされる剣のよう。
 それがどうしようもなく危うく感じていたからこそ、ラピスは彼女の身も、心も、その魂も護れるよう身構えるのだ。
 
 その後、メリーも折角教えを受けた神気閃光でヘルヴィ達を灼く。
 この場ではポテトが仲間達へと気力魔力を振りまいており、メリーも一時その恩恵に預かりつつ更なる光を発していた。
 その最中、心ここにあらずといった態度のメルトリリスが飛んできた光に灼かれ、吐き気を催してしまう。
(気持ち悪い……)
 気づけば、パンドラを使っていた彼女。あまりに眩しすぎるその光はロストレインには早すぎると脳内で考えを巡らしてしまう。
「はわ」
「何考えてるか知らねぇが、大事なのは今だろ?」
 そんなメルトリリスにシュバルツは気づき、彼女の肩へと手を置く。
「んでもって、アリスはアリスだ。一緒に強くなっていこうぜ」
 思わず驚く本名アリスこと、メルトリリスは小さく頷いて。
「シュバルツさま……、そうでしたね。アリスはアリスです! えへへ、また悩んでました」
 しかしながら、折角時間を作ってくれたヘルヴィに失礼だと彼女は思い直して。
「魔法使い殿、失礼しました。もう一度お願いします!」
「ならば、続けましょう」
 再び幻影と散開するヘルヴィに、メルトリリスは神気を発していくのである。


 その後、しばし両者は交戦を続ける。
 仲間の攻撃に続き、アイラが敵陣へと氷の魔力で生み出した雪銀の剣で敵陣へと切りかかり、1体の幻影を消し去ってしまう。
 僅かに眉を顰めたヘルヴィは教えを確認しつつ実行するメリーへと光を放出していく。
 ヤバイという判断が僅かに遅れ、光に呑まれたメリーはパンドラを使って息を保つと、すぐに両手を上げた。
「悪いけど、降参。強い奴とまともにやり合う気は無いのよね」
 メリーの意思を尊重し、広場の外へと彼女が出てから交戦再開。
「この日の為に……人々の盾となり力となる為に、自らの身体を鍛え上げて参りました!」
 幻影に攻撃を仕掛けていたノーラを気遣い、ギフトで剣を光らせたリゲルはヘルヴィへと宣戦布告して。
「どのようなお力であろうとも、耐えきってみせましょう!」
 リゲルは恐れ多くといった態度であったが、相手はそれも受け入れてくれて。
「構いません。全力で結構です」
 眩い光を発するヘルヴィがこちらの目を眩ませてくると、ポテトはすぐさま仲間が十全に立ち回れるよう号令を放つ。
 相手を注視していたが故に一時目を灼かれていたノーラも回復し、放出した魔力をヘルヴィにクリーンヒットさせた。
 ただ、相手は光の魔法のエキスパート。多少の傷の回復など動作でもない。
「あ、ヘルヴィ様簡単に回復された! 負けないぞー!!」
 ノーラはそれになおも奮起していた。

 しかしながら、イレギュラーズの連携は徐々にヘルヴィ達を圧していく。
 アイラの傍で戦っていたラピスは支援とカバーに当たっていたが、時には反撃にも出て。
「僕もまた、力が欲しいんです」
 幻影が発した光に苦悶しながらも、ラピスはその一部を跳ね返す。
 スタースクリーム――瑠璃の紺青に潜む、金なる星の煌めき。
 自らの光に灼かれた幻影はかき消えていった。
 傍ではメルトリリスも光を発する。
「こうして、大切な光が私を守ってくれるから、つまり、とっても暖かくてしあわせなこと」
 暖かな光はヘルヴィの幻影を包み込み、その存在を消してしまう。
「光って、こういう事ですね!」
 迷いを振り払った彼女の表情は実に晴れやかだった。
 さらに、ノーラが後方へと下がったアイラへと攻撃を仕掛けていて。
「アイラお姉さん、一緒に攻撃しよう!!」
「ええ、行きましょう」
 それに応えるアイラは封印付与した1体へと再び束の間の夢幻へと案内する蝶を飛ばす。
 その鱗粉によって力を封じされた幻影を、ノーラが弾丸と化した魔力が穿ち、倒してしまう。
 さらに、前衛では仲間を庇い続けていたリゲルが前線で近距離からワンドに纏わせた光の一撃で応戦していた幻影へと審判の一撃を叩きつけ、畳みかけるように黒の大顎に食らわせてしまった。
 これで残るは本体のみ。
 こちらはシュバルツが引き付けに当たっており、圧倒的な速度で刃を振るっていた。
 押されていたヘルヴィがその手に光を溜めるのを見たシュバルツは光を操って刹那幻影を作り出す。
 それに向かってヘルヴィが光を放出した隙をつき、シュバルツはさらに刃を浴びせかけて。
「つまり、こういう事だろう?」
「見事です……!」
 ここで敗北宣言したヘルヴィへ、シュバルツは刃を収めてから一言。
「参考になった、ありがとな」
「ありがとうございました!」
 そこで、メルトリリスが秘めていた問いかけを行うのだが。
「神のみぞ知る……ですね」
 イレギュラーズではない為、ギフトについての知識は浅く、残念ながら助言できないと天義の魔法使いも首を横に振るのだった。


 模擬戦を終えて。
「ありがとうございました」
 丁重に礼を述べたリゲルはよろしければと、相手に握手を求める。ヘルヴィ様のお心遣いに、そしてこのご縁に感謝を、と。
「リゲルもお疲れ様。みんなを守ってくれて有難う」
 癒しを振りまくポテトも、皆を労う。お陰で、ノーラ達ものびのびと攻撃できたと喜んでいた。
「今日は有難うございました! お勉強面白かった!」
 そのノーラも礼を告げた後で、ヘルヴィにこんな忠言を。
「でもヘルヴィ様、お休みは大事だぞ?」
 いっぱい動けばお腹もすく。ママの作ってくれたお菓子を食べて一休みしようと、彼女は笑顔でカバンから沢山の焼き菓子を取り出す。
「ママのお菓子美味しいぞ!」
「って、ノーラ!?」
 別途、用意していた手土産を差し出すポテトは娘と非礼を詫びる。なお、その土産は日持ちするそうで、後日食べてほしいと願う。
「でも、娘の言うようにお体ご自愛くださいね?」
 忙しい魔法使いの身を案じ、慕う方々の為にも少しは休んでほしいとポテトは話す。
「ふふ、ありがとうございます」
 忙しない日々をまた送るであろうヘルヴィだったが、この出会いに、少なからず元気をもらったようだった。

成否

成功

MVP

アイラ・ディアグレイス(p3p006523)
生命の蝶

状態異常

なし

あとがき

 リプレイ、公開です。
 MVPは幻影討伐に貢献を見せたあなたへ。
 今回はご参加、ありがとうございました!

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