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シナリオ詳細

再現性東京2010:ピリオドの向こう

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 高速道路の壁にバイクの音が反響する。駆け抜けていくエンジンの音はどこか悲しさを纏っていた。
 テールランプが夜の道路にどこまでも続いている。
 まるで、終わりを探すように。長く。長く。

 志々田武裕は希望ヶ浜北地区を拠点とするバイクチーム『ヘブンズドラグーン』のメンバーだった。
 地元のバイク好きが集まって設立された走り屋たちの拠り所(オアシス)。
 カスタムしたバイクを自慢し合う、ぬるま湯のような居心地の良さがそこにはあったのだ。
 時には南地区の『ヴァイパーヘッズ』と喧嘩をすることもあった。
 直接殴り合うような事はしない。ただ、どちらかが速く走れるかの勝負。
 加速するスピードの中で、誰にも追いつけない領域へと駆け抜けていけるのが志々田は好きだった。

「おい、どうなってんだよ」
「済みません」
 志々田がヘブンズドラグーンの拠点へと顔を出した時、その声は聞こえてきた。
 今日はバイクを整備に出しているから徒歩でやってきたのだが、拠点の建物の裏で、誰かが暗がりに隠れて話しているのが聞こえる。
(この声は……ボス?)
 しきりに謝っているのはヘブンズドラグーンのボス諸見川勝一郎だ。
「早く売りさばけよ。金が入んねーだろうが」
「へい。今週中には」
「……ッチ、遅っせえな。これも追加な」
 志々田は見つからない様に二人へ近づいていく。
 壁の死角からこっそりと覗いた。
 ボスが謝っている相手はここ最近ヘブンズドラグーンの拠点に出入りし出した葛城のヤクザだ。
 ヤクザの手には透明な袋に入れられたハーブが握られている。
(まさか、ドラッグか――)
 動揺して頭に血が上った志々田はボスに抗議しようと拳を握り込んだ。
 しかし、葛城のヤクザに目を付けられれば、北地区での活動を妨害されるかもしれない。
 志々田はただ気持ちよく走りたいだけなのだ。
 ぐっと気持ちを抑え込んで志々田はその場を去って行く。

 ――――
 ――

「なあ、勝負しねえのかよ」
「今はそういう気分じゃねえよ」
 数日後、志々田は整備の終わったバイクで遠乗りをしようと南地区へと走った所で、運悪くヴァイパーヘッズの連中に見つかってしまった。
 南地区を通ったのはこちら側からの方が高速道路に乗りやすいからだ。
「逃げんのかよ! 根性なしだな! そのバイクも泣いてるんじゃねぇか? ノロノロ運転ってな」
「はぁ? 今日はやけに突っかかるな」
 ヴァイパーヘッズの岸本は相手を煽って転ばせたり嫌がらせをしたりするタイプの人間だ。
 走り屋として岸本にだけは負けたくないという想いもあった。
「良いぜ、肩慣らしには丁度良い。やってやろうじゃねぇか!!」

 高速道路に入った志々田は車が居ない事に気付いた。
 夜の街は走る車も少ないとはいえ、不自然である。
「勝負は一本! 次の出口までどちらが先に着くかの勝負だ!!」
 そんな思考をさえぎるように岸本が大声を上げた。
 おそらく嫌がらせをしてくるのだろう。
 しかし、そんな嫌がらせをものともしない走りを見せつければいいだけだ。
「よーい!」
 走り出す準備を整える。息を吐いて吸った。
「スタート!」
 軽い走り出しと共にギアを入れ替え速度を上げていく。
 岸本なんて目じゃない。
 どんどん引き離していく志々田に岸本は『笑み』を浮かべた。

 トンネルの出口。
 対向車のライトがやけに眩しい。ハイビームにしているようだ。
 視界が白くなった。
 その瞬間に衝撃を受けて志々田は地面へと転がる。
 志々田は見た。
 支えを失い道路を滑っていくバイクと『自分の身体』を。
 そして、その先に能面のような顔で立ち尽くすボス諸見川勝一郎を。
 血に濡れたヘルメットの中から見たのだ。


「首なしライダーって知ってる?」
 カフェ・ローレットの片隅で椅子にちょこんと座った『真心の花』ハルジオン(p3n000173)がイレギュラーズに問いかける。
 夜の希望ヶ浜の高速道路を走って行くバイクには首なしライダーが乗っている。
 そんな噂を耳にした事があるだろうか。
「一ヶ月前ぐらいに、諸見川勝一郎という男の人が警察に助けてって言ったらしいんだけど」
 警察が言うには諸見川は首なしライダーに追われている保護して欲しいと訴えたらしい。
「でも、警察は男の人が変な事を言ってるって相手にしなかったんだ」
 その諸見川はバイクチーム『ヘブンズドラグーン』のボスだ。
 大方、取り締まれない合法ドラッグでもやってハイになっているのだと、軽くあしらった。
「そしたら、数日後に男の人はひき逃げにあって死んでしまった」
 警察は事故に巻き込まれたとして処理した。
 これで終止符(ピリオド)。物語はおしまい。
 これだけなら、イレギュラーズへと話は流れてこない。
「つまり、まだ首なしライダーってか犯人? が捕まってないってことか」
 伊達 千尋(p3p007569)はハルジオンに訪ねる。
「そう。へんてこな事件だから、こっちに回って来たみたい」

 希望ヶ浜学園が調べた事件の詳細。
 夜になると高速道路で首なしライダーが出るらしい。
 首なしライダーはバイクで走り抜けていくので、それを追いかけて包囲して討伐する。
「追いかけるっていうと、カーチェイスみたいなやつ?」
「うん。バイクとかでもいい。あ、でもラクダは軽車両だから高速道路は乗れないかも」
 ラクダに乗るとどうなるのだろう。「ラクダキッド君だね。当市のルール通り君を免停にします」とかか。
 それはさておき、ハルジオンはリュックの中から太い座布団のようなものを取り出した。
「私も行く。ジュニアシートも持ってきたから」
 確かに普通の子供より随分と小さいハルジオンはジュニアシートが必要だろう。
 もしかしたらバイクの後ろにも着けられるかもしれない。
 ぐっと親指を立てて誇らしげに胸を張るハルジオン。
「私もイレギュラーズだから。役に立ちたい」
 その言葉は普通の子供が発するよりも、重たい意味を持っているように思えた。
 ハルジオンの手を引いて、イレギュラーズはカフェ・ローレットを後にした。

GMコメント

 桜田ポーチュラカです。よろしくお願いします。

■依頼達成条件
 夜妖『首なしライダー』の討伐

■フィールド
 夜の高速道路です。広いです。電灯がありますので、視界に特に問題は在りません。
 カーチェイスで夜妖を指定場所に誘導して討伐します。

■カーチェイスパート
 首なしライダーとカーチェイス、バイクレースをするパートです。
 指定場所までは出口が二箇所あります。逃げられないように挑発しましょう。
 車やバイクはあらかじめ用意してありますが、愛車を持ってきても大丈夫です。

・障害物:指定場所までは車が数台、トラックが数台います。幅寄せや急ブレーキをかけてきます。
・トンネルの出口:首なしライダーの記憶を再現するようにバイクと首が転がっています。血に濡れたピアノ線もあります。気を付けましょう。

■戦闘パート
 カーチェイスを終えた首なしライダーとの戦闘です。
 首なしライダーの心残りは走りたいという想いです。
 カーチェイスパートで最高の走りをして満足していれば弱体化しています。
 バイクで逃げること無く戦うでしょう。

■夜妖『首なしライダー』
 ボスを倒し復讐を果たしたはずの夜妖が彷徨っている状態です。
 バイクを使ったエキセントリックな戦闘を仕掛けてきます。
・体当たり:物至単の攻撃【足止】
・ハイビーム:物遠単の攻撃【怒り】

■NPC『真心の花』ハルジオン(p3n000173)
 自前のジュニアシートを持って来ます。
 イレギュラーズなので一般人よりはタフです。
 簡単な戦闘が出来き、簡単な回復が使えます。

●再現性東京2010街『希望ヶ浜』
 練達には、再現性東京(アデプト・トーキョー)と呼ばれる地区がある。
 主に地球、日本地域出身の旅人や、彼らに興味を抱く者たちが作り上げた、練達内に存在する、日本の都市、『東京』を模した特殊地区。
 ここは『希望ヶ浜』。東京西部の小さな都市を模した地域だ。
 希望ヶ浜の人々は世界の在り方を受け入れていない。目を瞑り耳を塞ぎ、かつての世界を再現したつもりで生きている。
 練達はここに国内を脅かすモンスター(悪性怪異と呼ばれています)を討伐するための人材を育成する機関『希望ヶ浜学園』を設立した。
 そこでローレットのイレギュラーズが、モンスター退治の専門家として招かれたのである。
 それも『学園の生徒や職員』という形で……。

●希望ヶ浜学園
 再現性東京2010街『希望ヶ浜』に設立された学校。
 夜妖<ヨル>と呼ばれる存在と戦う学生を育成するマンモス校。
 幼稚舎から大学まで一貫した教育を行っており、希望ヶ浜地区では『由緒正しき学園』という認識をされいる裏側では怪異と戦う者達の育成を行っている。
 ローレットのイレギュラーズの皆さんは入学、編入、講師として参入することができます。
 入学/編入学年や講師としての受け持ち科目はご自分で決定していただくことが出来ます。
 ライトな学園伝奇をお楽しみいただけます。

●夜妖<ヨル>
 都市伝説やモンスターの総称。
 科学文明の中に生きる再現性東京の住民達にとって存在してはいけないファンタジー生物。
 関わりたくないものです。
 完全な人型で無い旅人や種族は再現性東京『希望ヶ浜地区』では恐れられる程度に、この地区では『非日常』は許容されません。(ただし、非日常を認めないため変わったファッションだなと思われる程度に済みます)

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • 再現性東京2010:ピリオドの向こう完了
  • GM名桜田ポーチュラカ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年10月29日 22時25分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

DexM001型 7810番機 SpiegelⅡ(p3p001649)
ゲーミングしゅぴちゃん
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
アルメリア・イーグルトン(p3p006810)
緑雷の魔女
ルチア・アフラニア(p3p006865)
決死行の立役者
伊達 千尋(p3p007569)
Go To HeLL!
ブラッド・バートレット(p3p008661)
0℃の博愛
ビスコ(p3p008926)
軽快なネイキッド
ラクロス・サン・アントワーヌ(p3p009067)
ワルツと共に

リプレイ


 夜の高速道路は独特の雰囲気に包まれる。
 真っ暗な道に一定間隔で並ぶ電灯と前の車のテールランプ。
 防音壁の上に見えるビルの明かり。

『流麗花月』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)は集合場所のパーキングエリアに一早くやってきた。
「復讐対象を殺して尚、走り続ける、か……」
 日中の日差しは暖かいけれど、夜になれば冷えこんでくる。
 汰磨羈は手を擦り合わせて暖を取っていた。
「なるほど。憎悪や憤怒よりも、やり残した事への未練の方が勝ったケースのようだな」
 ならばやるべき事は一つ。
「その走りへの思いが悪性化しない内に、私達が満足させてやろう!」
 うんと伸びをして気合いを入れる汰磨羈の前にブルブル音をさせながらスクーターがやってくる。
 乗っているのは『シュピーゲル』DexM001型 7810番機 SpiegelⅡ(p3p001649)。
 盛り上がったリーゼントのかつらを被り、白の特攻服が風にバタバタしていた。
「こんばんは、です」
 軽く手を上げたシュピーゲルの胸元にはサラシが巻かれ、木刀を持った電子妖精が傍らを飛ぶ。
 汰磨羈はバイクを注目する。『夜露死苦』とデカデカ書かれた旗を後ろに掲げられていた。
「凄い、気合いの入りようだな」
「ん……」
 こくりと頷いたシュピーゲルのリーゼントがユサユサと揺れる。
 汰磨羈は悟った。シュピーゲルは至極真面目にこの格好をしているのだと!

「最後まで走りたかったんだよね。それをあんな卑劣な手で……許せないね」
 大型のバイクを降りた『貴方の為の王子様』ラクロス・サン・アントワーヌ(p3p009067)はパーキングエリアの出口を見つめた。
「君の無念が少しでも晴らせるのなら、私は努力を惜しまない。
 お手をどうぞプリンセス。今宵私と踊ってくれますか?」
 アントワーヌの美麗な指先にシュピーゲルの手が乗る。
「差し出されたから乗せとかないと駄目かなと思った、です」
 純粋な眼差しがアントワーヌを見つめていた。
「実は練達に来たの初めてなのよ。すごいわね、なんていうか……木々がほとんどないわ」
 次にやってきたのは『緑雷の魔女』アルメリア・イーグルトン(p3p006810)だった。
 際どいコーナリングで駐車場に乗り付けたアルメリアは車のドアをバタンと閉めて微笑む。
「ここまで木が無いと、まさに異世界って感じね」
 深緑産まれのアルメリアは不思議そうにアスファルトをペタペタした。
「チェイス……車両を使った競争ってところかしら? 大急ぎで車の乗り方は覚えたわ。
 屋根がついてるし私は車に乗るわね」
「やほー! 今日のために免許取ってサイドカーをお姉から借りてきた!」
 車体低めのバイクに跨がった『アデプト・ニューアイドル!』ビスコ(p3p008926)はピースサインをしながらやってくる。
「他の人乗せられるよー。乗る人居なかったら荷物も置けるからね」
 一際、いい音をさせながら『Go To HeLL!』伊達 千尋(p3p007569)のバイクがパーキングエリアに入って来た。後ろにはジュニアシートに乗った『真心の花』ハルジオン(p3n000173)が座っている。
「来たきた。それにしても、花ちゃ、いや、ハルジオンちゃん大丈夫……?」
「う?」
 ヘルメットを外しながら首を傾げたハルジオンはビスコを見つめた。
「名前はイレギュラーズとして活動するための芸名かな?」
 ハルジオンの花言葉は追憶の愛。ハルジオンに憑いた夜妖『真心花』を象った花なのだろうとビスコは深いなと感傷に浸る。
「保護されたのめっちゃ最近なのに実戦に出て大丈夫かな……? お姉さんは心配だよ」
「あー、怪我とかは大丈夫だよ、元気」
 事件の後、召喚されイレギュラーズとなった真心は劇的な回復を見せたのだ。
「でも何故そんな姿に?」
「分からない。目が覚めたら変身できるようになってた。不思議」
 ビスコの手をにぎにぎしたハルジオンは少し小難しそうな顔をする。
「この姿だとお父さんとお母さんに会っても分からないから。こっちだと見つかったら気まずい」
 愛らしい人形の様な姿から、一瞬で黒髪のおかっぱ頭に変わるハルジオン。
 ビスコや千尋、アントワーヌが助けた金森真心は確かに黒髪のおかっぱ頭だった。
「きっと神様……ううん。真心花がくれたのかも」
 寂しげに微笑むハルジオンの頭をビスコは撫でる。

「首なしライダーといえば、北方の首なし妖精の仲間でいいのかしらね。あちらは死を予言する存在だったけれど、そういう事しないだけマシと思えばいいのか……」
 カツカツと蹄を鳴らして金属製の機械馬に乗ってやってきた『「Concordia」船長』ルチア・アフラニア(p3p006865)は勢い良く愛馬から飛び降りた。
「とにかく、走ればいいのよね。じゃあ私はウェントゥスで……え、馬力が足りなくてダメ?」
 走りたいのだとウェントゥスもヒヒンといななく。
「映画の撮影とか言えば大丈夫、かも」
「そうね。じゃあそんな感じでいこう」
 希望ヶ浜の住民は非日常を受付けない。
 だから、映画の撮影と言えば大抵の不都合は見なかった事にするのだ。
 ――高速道路に馬が走っていても!

「死んでも尚囚われる程の想いですか……」
 手袋をはめ直しながら『0℃の博愛』ブラッド・バートレット(p3p008661)は呟く。
 首なしライダーの未練。走りたいという思いは彼をこの世に留まらせるのだろう。
「周囲に影響を及ぼす存在は人に限らずなのですね」
「ああ、クソみてえな世の中に嫌気が差してよ、ただただ疾走(はし)る事だけが楽しかった。
 わかるぜ、俺にはよ」
 ブラッドのつぶやきに千尋は同意する。
 走りたかった。ただ其れだけの思い。しかし、強い未練だ。
 千尋はハルジオンをジュニアシートに乗せてヘルメットを渡す。
「ハルジオンちゃんって呼んだ方がいいか? ハルちゃんでもいいけどよ」
「ハルでもハルジオンでも大丈夫」
「メットは被ったか? よし、しっかり捕まってろよ。ちょっとばかり派手に行くからな!」
「被った! 準備マンタン!」
 千尋の声にアルメリアは感心する。
(――千尋、完全に『入ってる』わね。この世界に。元々こういう世界から来たのかしら)
 アルメリアも車に飛び乗り、シートベルトを締めた。
「よーし、行くわよー!」
「行くぞテメーらァァァ!!!!」
「おおおお!」
 フルスロットルで走り出すイレギュラーズ。
 夜の高速道路にエンジンの音が響いた。


 走り抜けるバイクの音が前方から聞こえてくる。
 千尋の視界に前を走っている首無しライダーが見えた。
 加速し、併走しながら千尋は叫ぶ。
「高速で俺の先を行くとはいい度胸じゃねえかオイコラァ! 俺は『悠久ーUQー』の伊達千尋!」
「……面白い。何方が速く走れるか勝負だ」
 一段と加速した首なしライダーは千尋の前に出た。
 千尋も同じように追い縋る。
 前を走る車をスピードを落とさずに車体を倒し回避する。
「わ!」
「俺のベルト持って、タンクを足で挟んでみ。んで、俺と一緒に身体を倒す」
「あい! ……わわ!?」
 トラックの無茶な幅寄せは千尋のバイクの重心を狂わせた。
「っチ。しゃらくせえ!」
 反対側の壁を蹴りつけた反動でバイクの制動を持ち直す千尋。
「舐めんなよ、こちとら踏んでる場数が違えんだ!」
 千尋の叫びが高速道路に響く。

「私もいつの間にか『悠久ーUQー』の一員ってことになってるからね」
 アルメリアは自分が高揚していくのを感じる。仲間をサポートして何かを成し遂げるのは楽しい。
「千尋ッ! ハルジオン落としたら承知しないわよ!」
 アルメリアの応援に千尋は手を振った。
 次々と現れる障害物にシュピーゲルは大声を上げる。
「走り屋はなぁ、魂で走るもんなんだ、です。そいつに野暮な茶々入れるもんじゃねぇ、ですよ」
 参考資料として見ていたドラマの影響でだろうか。いつもとキャラが違う。
 シュピーゲルは幅寄せをしてくるトラックにソニックエッジで威嚇した。
「私の役割は妨害をしてくるトラックの相手だ。煽り運転っていうんだっけ?
 きっと荒っぽい子なんだろうね。それなら先に煽ってしまおうか」
 大型のクルーザーに乗ったアントワーヌはトラックの真横にびったりと近づく。
 トラックの運転席から見えるように、窓ガラス越しに顎でくいっと煽る。
「安っぽい車だね。それで恰好着けてるつもりなのかい」
 青筋を立てたトラックの運転手は入れ墨を見せながら窓を開け放った。
「何ほざいてんだぁ! ひきつぶすぞ!」
「おやおや、口がお上品な方だ」
 アントワーヌはトラックを引きつけ千尋達から遠ざかる。
 身体のラインが出るライダースーツを身に纏い、大排気量のアドベンチャーに乗る汰磨羈。
 アントワーヌが引きつけてくれた邪魔なトラックの横をフルスロットルで一気に追い抜いた。
 しかし、併走する車の車線移動に阻まれバランスを崩す。
「そんな事で私は倒れんよ」
 刀の鞘で地面を突いた汰磨羈は体勢を持ち直した。
「悪いな。使えるモノは全て使うクチでね! 勝負の邪魔などさせん!」
 通り抜けるのに邪魔なサイドミラーは一太刀で切り落とす。

 流石に馬が高速を走り抜けていれば注目を集めてしまうとルチアはビスコのサイドカーに乗る。
「しかしひっきょーなことするなあ、自業自得と言えばそうだけど。ちなみにビスコちゃんは正々堂々戦う派だよ」
 ビスコは免許を持っているが、特殊な技能があるわけではない。
 優良ドライバーとして安全運転で車間距離と取る。
「幅寄せには速度を落としてやり過ごして煽りにはスルーして車線変更で対抗しますよー。
 距離があればどんなのも対応できる!! めっちゃユーロかけたいのは秘密」
 次第に仲間達と離されていくビスコとルチアコンビ。
 ルチアはサイドカーから立ち上がりビスコのバイクに飛び乗る。
「ちょ、えええ!?」
「運転は任せて」
「あ、ちょっと! サイドカー取れちゃう。お姉に怒られるから!」
「大丈夫」
 ルチアは繊細なハンドル裁きで車をギリギリの所で交わした。

 鋭利なボディラインのストリートファイターに跨がるブラッドはトラックの真正面にバイクを走らせる。
「ライダーとの勝負、邪魔はさせませんよ。心残り無く走って貰わなければなりません」
 ブラッドのヘルメットに等間隔で街灯の明かりが流れていた。
 ヘルメットの中の視界にはトラックや車が敵意を持って迫ってくるのが見える。
 一般人が放つ敵意とは全く違う、異質なもの。
「この障害物は『普通の人間』が乗っている訳ではありません! おそらく、幻影のようなものです!」
 周囲の音に掻き消されないように声を張り上げるブラッド。
「なるほど。じゃあ遠慮は要らんな」
 ブラッドの分析に汰磨羈が不敵な笑みを浮かべた。
 幅寄せする車を感知したブラッドはスロットルをひねり速度を上げる。
 その車へと頑丈さを活かして体当たりをするのはアルメリアだ。
「決死のラフプレーを見せてやるってのよッ!!」
 しかし、スピードを出したままだと曲がりきれずに衝突する可能性がある。
「確かこんなやり方があったわ、猛スピードで突っ込んで曲がる直前に一瞬ブレーキして」
 アルメリアの車がタイヤ痕を残しながらカーブを滑り抜けて行く。
「あぁーっ、ちょっとこれ楽しいかもしれないわねーっ!?」

 ――志々田武裕はバイクチーム『ヘブンズドラグーン』のメンバーだった。
 走る事が好きで、来る日も来る日も果てしない道を駆けた。
 その高揚感が、今、イレギュラーズとの走りで最高に高まっている。
 加速していくカーチェイスはトンネルへと突入した。
 出口が見えてくる。だが、そこにはピアノ線が張られている。ここで終わってしまうのか。
 首なしライダーはサイドミラーで後ろを見た。
 なんということだ、彼等はピアノ線なんて気にもせずに走っているではないか。

「行くぜ、しっかり捕まってろよ」
「うん!」
 千尋のベルトをがっちりと掴んだハルジオン。
 バイクの車体が傾き、対向車のハイビームで見えなくなったピアノ線をくぐり抜けていく――
「ッシャア!」
「おお!」
 バイクの重心を起こした千尋はブレーキを掛けて止まる。
 そこには転がったままの首なしライダーのバイクと血まみれのヘルメット。

「ん、あれ。このバイク倒れないな」
 アントワーヌが乗っているのは大型のクルーザーだ。
 重心を横に倒すことは出来ない。
「はて、どうしたものか」
「ワイヤーは見えているなら回避は……ってサイドカーだから車高下げたりできなーい!?
 神気閃光でぶった切るとかできませんかね……? 誰かがぶった切ってくれるのを期待して最後尾で走るしかなーい!」
 アントワーヌの戸惑いとビスコの泣き声に汰磨羈が問題無いと手を振る。
「無粋だな。こんなものは断つに限る!」
 トンネルの出口はまだ遠いが汰磨羈の剣なら届くだろう。
 だが、汰磨羈の剣を受けたピアノ線は瞬時に再生した。
「これは、一緒に通り抜けるしかないですね」
「そのようだ」
 ブラッドの冷静な判断に全員が頷く。

「こんなものにまだ囚われてるのか、です。それとも引っかけたい奴でもいるのか、です。手前ぇを手前ぇで縛るな。前を見ろ。こんな糸屑なんざ構う価値ねぇって事教えてやる」
 シュピーゲルを先頭に猛スピードでトンネルの出口に向かっていくイレギュラーズ。
「行こうじゃねぇか。ピリオドの向こう側って場所(とこ)によ」
 出口を通り抜ける瞬間、汰磨羈とブラッド、シュピーゲルの剣がピアノ線を切り裂いた。
 シュピーゲルは急ブレーキでバイクを止めて首を拾い上げライダーに渡す。
「返すぜ。大事なもんだろう、です」


「ご満足いただいたかしら……ふぅ、私は楽しかったわ」
 アルメリアは車から降りて汗を拭いた。
「メインシステム起動。ステータスオールグリーン。戦闘モードに移行します」
 シュピーゲルが強化外骨格に身を包み、ルチアが構える。

 首無しライダーが亡くなった志々田武裕ならば成仏できない死者である可能性があると、ブラッドは言葉で意思の疎通を図る。
「教えてください、諸見川勝一郎を亡き者にした君が未だ縛られる理由を。君しか知らない真実を」
「ああ……そうだな。俺は最高に気分が良い」
 イレギュラーズが知り得ない情報。葛城のヤクザがボスにドラッグを裁かせていたこと。ヴァイパーヘッズのメンバーを使って志々田を殺したことを語る。
「おう首無し……いや、志々田。
 テメーの疾走(はし)りに敬意を表して俺もコイツに乗ったまま戦うぜ」
「最高だ。やろうぜ」
 千尋の宣言に首なしライダーはバイクに跨がる。
「ハルちゃん、回復頼めるか?」
「まかせて」
 大きなエンジン音が吹き上がった。

「戦闘はハルジオンちゃんと一緒に回復に徹するよ!」
 ビスコはグルグルと真ん中で回る千尋に回復を施して行く。
 アントワーヌは首なしライダーのタイヤを回避し、戦場を駆け回った。
 アルメリアの魔法が車体に被弾する。
 最高の走りを得た首なしライダーは最後の遊戯を楽しんでいるようだった。

「せめて、同じライダーの手で送って貰うといい」
 汰磨羈の攻撃で距離を取った首なしライダー。対角線には千尋の姿が見えた。
「来な、こっちも看板背負ってんだ!」
「――決めろ、千尋!」
 汰磨羈の声が戦場に響き渡る。
 フルスロットルのエンジン音が高速道路を駆け抜けた。
 首なしライダーの体当たりをギリギリの所で避けた千尋はすれ違いざまに蹴りを叩き込む――
 その瞬間、首なしライダーは空気に溶けていった。
 走り去っていく軽快なエンジン音は、どこか楽しげに聞こえたのだ。

 ――――
 ――

「フッ……刺激的な体験だったわ」
 アルメリアは首なしライダーが消えて行った高速道路を眺め微笑んだ。
「あっ、配信するの忘れてた……!! まあ、今回グロだからヨシ!!」
 ビスコの声が辺りに響き、ハルジオンがくすくす笑う。

「聖職者として、彼の死を弔いましょう」
 ブラッドは指を組んで祈りを捧げる。
 志々田の無念は自分達には理解しきれない。けれど、彼が残した情報はもしかしたら何かの役に立つかも知れないとブラッドは心に留めた。
「……さて。ただの喧嘩で、こんな殺人事件が起こるとは思えぬ。匂う所を、調べてみるべきか?」
 ブラッドと一緒に祈りを捧げていた汰磨羈は『事故現場』を隈なく探す。
 道路の片隅にそっと置かれた花はアントワーヌが用意したものだ。
「向こうはこっちとは比べ物にならないくらい広いだろう?存分に走るといいさ」

 タバコにライターで火を付けた千尋は一呼吸だけ肺に吸い込んだ。
 そのタバコを『首』のあった場所に指で弾き飛ばす。
「線香変わりだ。疾風(はや)かったぜ、志々田」
 ゆっくりと上がっていく煙が風に吹かれてかき消えた。

成否

成功

MVP

ラクロス・サン・アントワーヌ(p3p009067)
ワルツと共に

状態異常

DexM001型 7810番機 SpiegelⅡ(p3p001649)[重傷]
ゲーミングしゅぴちゃん
ルチア・アフラニア(p3p006865)[重傷]
決死行の立役者

あとがき

 イレギュラーズの皆さん、お疲れ様でした。
 楽しんで頂けたら幸いです。
 MVPは上手く立ち回った方にお送りします。
 それでは、またのご縁をお待ちしております。

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