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シナリオ詳細

国王陛下の気紛れ鬼ごっこ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●シェフの気紛れサラダの様な。
 荘厳なる王宮の、それも謁見の間への呼び出しとなれば緊張を隠すことが出来ない。
「やあ」
 まるで級友にでも挨拶するように軽く手をひらりと上げて、常と変わらぬ笑みを浮かべているのがこの幻想国の国王陛下――フォルデルマン三世である事が『花の騎士』シャルロッテ・ド・ロレーヌの頭痛の種であった。
「お呼び立てしてしまい誠に申し訳ございません。
 皆様にお願いしたいのは私共と共に陛下の城下視察の護衛をお願いいたしたく……」
 幻想蜂起で厳重体制であると言うのに城下の視察とは暢気なものだとも感じるが、フォルデルマン三世の強い希望なのだとシャルロッテは困った様に言った。
「国内が混乱状態である今、城下の様子を知らないのは王としてどうかと思ってね!
 いいや、必ずや国内の様子を把握すべきだ。しかし、公に騎士を連れていては王であることがばれてしまう――そこで、お忍びで出かけ……いや、視察に行きたく考えている」
 嗚呼、この勢いで捲し立てられてしまったのだろう。
 混乱に乗じて街で遊びたいという放蕩者を止める言葉が思いつかなかったのだろう麗しの花の騎士には同情する。
「ははは、私も王としての責務を果たさねばならないのだ。決して、私の無聊を慰める為の散歩ではないぞ」
「……陛下」
 窘めるシャルロッテの声音にも構わずフォルデルマンは笑い続ける。
 客人に茶の一つもないのかと客間への移動を提案し、シャルロッテに茶の準備をする様にと指示をしたフォルデルマンは特異運命座標たちへと声を潜め囁いた。

「ローレットの精鋭と聞いている」
 ――私の護衛だからな、という言葉は聞かなかったことにしよう。
「シャルロッテが居ては私が外遊できないではないか」
 ――城下の視察ではなかったのか、というつっこみはできない。
「諸君、私からの頼みだ。聞き給え。
 シャルロッテから逃げ、夕刻まで私の無聊を慰めるのだ」

GMコメント

季節は廻れど、夏あかねです。よろしくお願いいたします。
ご存知でしょうか? 幻想国王フォルデルマン三世陛下は楽しいことが大好きです。

●情報確度
 Bです。何故か。シャルロッテも仕事ですから。

●本日はお日柄もよく……
 城下視察に無理矢理繰り出したフォルデルマン三世陛下の護衛役として8名の特異運命座標の皆様は全力で頑張ってください。
 各地で幻想蜂起がおこっていますが城下は比較的安全です。寧ろ本日は危険性がございません。「危険だからおやめください」と進言したところで聞く王ではありません。そういう王様です。
 シャルロッテが目を離した隙にフォルデルマン三世陛下とダッシュで逃げたところからシナリオはスタートです。
 フォルデルマン三世は平民の格好をしていますが、不遜です。王様とばれないようにバックアップしてあげてください。

 オーダーは『夕方までフォルデルマン三世と街で遊ぶ』事です。
 ・シャルロッテに捕まる
 ・王だという事がばれる
 ・フォルデルマン三世が負傷する
 以上3点が失敗条件となります。

 その他は、平和に安全にお過ごしください。
 シャルロッテから隠れる工夫も大事になります。難易度がノーマルですから非戦スキルや所属ギルド、ギフト等を生かして全力で頑張ってください。
 お遊びについてですが近場のカフェやショッピングなど普通にイベントシナリオのようにお楽しみいただけます。ただし、王は無知ですので「なんだこれは?」とよく聞きます。色々教えてあげてください。

●『花の騎士』シャルロッテ
 珍しくブチ切れております。「陛下何処へ行かれました」と食い気味で城下を失踪しております。
 王を王と認識する能力には長けていますのでお気を付けください。見つけたら走ってきます。彼女は空を飛べませんし、馬にも乗っていません。一人で徒歩移動しています。

 正しく混沌。
 皆様の冒険をお待ちしております。

  • 国王陛下の気紛れ鬼ごっこ完了
  • GM名夏あかね
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年05月04日 21時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

鏡・胡蝶(p3p000010)
夢幻泡影
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
桜小路・公麿(p3p001365)
幻想アイドル
ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)
月夜の蒼
赤羽・大地(p3p004151)
彼岸と此岸の魔術師
竜胆 碧(p3p004580)
叛逆の風
奚 子冬 辜(p3p005038)
鼠少女
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ

リプレイ


「へーいーか?」
 嗚呼、そんな声音を出すなんて! 花の騎士らしからぬ!


 眼前には幻想国の国王陛下。麗しの赤毛と軽薄そう――失礼、整ったご尊顔には笑みが浮かんでいる。
(……いやはヤ、この御方が噂の幻想の平価、であらせられるのカ)
 ちらりとフォルデルマン三世の傍らを見遣った『自称、あくまで本の虫』赤羽・大地(p3p004151)。疲労を滲ませる『花の騎士』シャルロッテ・ド・ロレーヌ嬢は今日も頭痛がするという様に頭を抱えている。
「恐れ多い話ではありますな……」
 この危機感のなさ、という言葉はフォルデルマンには聞こえてないだろう。『叛逆の風』竜胆 碧(p3p004580)の言葉に「ははは、謙遜するな」と朗らかに笑う王に危機感の『キ』の字はどこにもない。
 特別に特異運命座標たちを呼び寄せたシャルロッテの表情が堅く、普段の柔らかな笑みが浮かんでいないことに『夢幻泡影』鏡・胡蝶(p3p000010)は「貴女も、大変ね」と慰めるように肩を竦めた。
「大変申し訳ございません。ローレットの特異運命座標」
「構わないわ。まぁ、そうね……息抜きは大事よ。
 私が元居た世界でも将軍やら大名やらが身分を隠して城下町で遊びたがるドラマがあったもの。そういうのは万国共通なのね」
 頭を下げて、恐縮しきった様子のシャルロッテに胡蝶はひらりと手を振った。安心しなさい、そういうものよ、というような彼女の反応を見たフォルデルマンと言えば――「そうであろう、そうであろう! そういうものは万国共通、当たり前に行われる事だ!」と調子に乗っている。
(……うん、いつもの陛下だな)
『銀閃の騎士』リゲル=アークライト(p3p000442)が知っているフォルデルマンはいつだって快活だ。勿論、一国の王ともなれば気苦労は多いはずだ。放蕩王と呼ばれることもあるが、幻想国の腐敗っぷりに心を痛めている……のかもしれない。
「今日の楽しみが、後への活力となりますよう」
「ああ! 私も心が躍ってしまってな。何、平民の作った『ガイドブック』をシャルロッテに用意させたのだ」
 庶民的だな、と大地は『鼠少女』奚 子冬 辜(p3p005038)と顔を見合わせる。
 王族の御守りがオーダーだ。善処しましょうとシャルロッテに告げて『蒼ノ翼』ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)は深い息をついた。
 
 ……のが、数分前の出来事だ。シャルロッテが隣にいればすぐに王だという事が平民にバレてしまうほどに高名な花の騎士様は少しばかり距離を置くことにしていた――のだが。
「陛下!?」
「シャルロッテ君、全力で逃げを打たせてもらうよ! 何、これが公麿☆スペシャルさッ! 花騎士君ッ!」
 王に負けないくらいにキャラが濃い『ジャミーズJr.』桜小路・公麿(p3p001365)の一言が街にこだまする。
 ――上半身の衣服をふわり脱ぎ捨てるステージ技術ッ!
 ――バチコンするよカリスマ☆アイドルスマイルッ!
 ――これぞ公麿真骨頂、究極的薔薇幻想ッ!
「……わあ」
「……アイドルって、そうね、究極的薔薇幻想が使えるわね」
 謎の納得を見せた胡蝶。『すごいいっぱいばらがでる』感じに薔薇が飛び出し、シャルロッテの目の前に赤色が揺れている。
 その瞬間だ。敵襲かと身構えた花の騎士の前には忽然と王の姿はない。
 そう、特異運命座標たちは花の騎士が目を離した隙を付き逃走を図ったのだった。国王陛下の気まぐれ鬼ごっこの開始である。
 
「ふふ、非がないとはいえ、騎士に追われるとか何十年ぶりだか」
「ほう! お前は騎士に追われたことがあるのか? よいぞ、その冒険譚を話してみよ」
 ルーキスの独り言に尊大な態度で告げるフォルデルマン。声が大きいと窘めた『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)に陛下は「おっと」とだけ返した。
「そうだ! ははは、王様もバレてしまわぬようにねッ!」
「桜小路様」
 しい、と辜が窘めるように合図をする。「おっと、いけないね」と言わんばかりの反応を見せた公麿に辜は小さく息をつく。
 咄嗟の行動でひとまずシャルロッテを撒いた一行だがこの調子ではいつ捕まってしまうかがわからない。
「王とバレてはシャルロッテ嬢に簡単に見つかってまずい故、ここから暫くは礼儀は不要であります。
 いいでありますね? 皆、平等であります。対等であります。上も下もない、であります」
「構わない! 無礼講だ!」
 碧は本当にわかっているのだろうかという風に僅かに表情を歪めた。しかし、王と言えどフォルデルマンは気さくな『王様』だ。放蕩王の名は伊達ではないのだろう。
「アッ、そういえば王様呼びじゃあマズイよね。ここはいっそ親しみを込めタロウ君と呼んだらどうかな!」
「タロウ」
 寛治は繰り返した。思わずといった調子だ。「うむ」と頷いたフォルデルマンと寛治の視線がかち合う。
「……タロウ」
「苦しゅうない」
 寛治は思っていた。期せずして王とのコネクションが結ばれたのは最善だ。しかし、その王がこれだ。タロウと呼ばれて「苦しゅうない」とドヤ顔を返してくれる。
「……タロウ?」
「うむ」
「しかしまあ、しょうがないとはいえ、えらくジャポニズムに寄った名前だな……一周回って、ものすごく、高貴な感じすらするぞ」
 頬を掻いた大地の言葉にフォルデルマンは「私を呼ぶ名だ。高貴でないはずがないだろう」と胸を張った。
 

 衣服を変更し化粧で整えて、胡蝶はシャルロッテと会った時とは全く違う姿でタロウの前に立っていた。
 ガイドブック持ちのタロウにどれが興味あるの?と柔らかに問いかける胡蝶。町人風の衣服に帽子も合わせて国王陛下らしからぬ格好を進めるリゲルにタロウは「よいぞ」と快諾していた。
「ソラスは上から、何時も通り宜しくね。エンデは周囲を見といて」
 指示をするルーキスにタロウは「すごい!」と手を叩く。成程、王は普段は外に出ないこともあり、こうした事でも面白みがあるのだろう。
「ところで、この、街歩きの資金というか、飲食代というか……って、こっち持ちなのか? そりゃア、俺が飲み食いする分くらいハ、自分で出すけどヨ」
 ぼそりと呟いた大地の言葉にフォルデルマンは「後でローレットのユリカ嬢に声をかけよう」と此度の依頼での飲食費は勝手にギルド持ちにしていた。
 まずはどこに行こうかと声をかける大地にフォルデルマンは「これはこれは」と幻想国ガイドブックを差し出す。彼にとっては見慣れぬ城下町に大地は「ここならいけるかな」と首を傾いだ。
「ランチじゃなくて食べ歩きなら同じものを毒見してもいいのかしら?」
「ああ、構わぬぞ」
 首を傾げる胡蝶にフォルデルマンは大きく頷く。まずはドーナツでも食べて軽く腹ごしらえし、おもちゃ屋さんを見に行ったのちに、城下町の少しはずれにある噴水でも見に行こうというのだ。ジルバプラッツ通りであれば、危険性が少ないだろうと特異運命座標たちも予測している。
 城下町には『竜の胃袋亭』という大衆向けの食堂も存在しているが今回は王がいる以上あまり向かないだろう。 
 食事はルーキスの経営している喫茶店『Edelstein』に行こうと決めていた。無論、外への警戒を怠らないが知った場所のほうが護衛がしやすいからだ。
「御昼食は如何なされますか?」
「昼下がり、そしてランチタイムと言えば……そんな時にはコレ! 公麿☆ソング!
 アイドルたる僕がお送りするビューティフルソングをBGMに優雅なひと時をどうぞ」
 歌いだす公麿をスルーしてリゲルは「俺はサンドイッチにしておくか」とサンドイッチをセレクトする。
「おっ、結構いけるぞ。陛…ッ、タロウさんもお一つ如何です?」
「変なものは入れてないから、ご自由にどうぞ。もちろん皆もね」
 冗談めかしたルーキスにタロウは大きく頷いた。こうした食事もフォルデルマンにとっては初だろう。あくまで彼の安全がオーダーである以上、食事に何らかの細工がないことを表すようにルーキスもぱくりと口に含んで見せる。
「そういや、陛下……じゃない、タロウ、さんは、何か趣味とか、興味があることあるんですか」
「楽しいことだ」
 ――言葉が通じない男である。

「シャルロッテ様! 探しました。陛下が私の仲間と共に姿を晦ましてしまいまして……」
 肩で息する寛治は困ったという様に肩を竦める。その言葉にシャルロッテはどこか安堵したように「私もです」と頭を垂れた。
「闇雲に騒げば不逞の輩が感づくかもしれません。ポイントを絞り情報通を訪ねましょう。幸い私は街中に知己が多い。ご案内します」
「ええ、ありがとうございます。目撃情報も集められるかもしれませんし……」
 ――その目撃情報がひどいものだという事にまだ、彼女は気づいてはいない……。
「ついさっき異世界みたいな格好した連中と国王陛下に似た男が向こうで歩いていた」
 そう告げた胡蝶がじりじりと後退していく。成程、と頷き寛治を伴って歩き出したシャルロッテに胡蝶はゆっくりと肩を竦めた。
「OK。でも、待って」
 下水道に入り込み息を潜めていたリゲルは深く息をつく。発光を使用し「地上の星みたいでしょう」と冗談めかした彼にタロウは大きく頷いていた。
「どこでしょうか……」
 まだ近くできょろりと周囲を見回すシャルロッテ。寛治と胡蝶は早くこの場を離れなければという様にちらちらと気にしている。
(ハッ! あるじゃあないか足止め出来る方法が! シャルロッテ君は女性、そして僕はスーパーアイドル。
 ――女性=スーパーアイドルに恋する者のはず……ならば! 大声で! 宣言しよう!)
 公麿は、がばりと立ち上がりずんずんと歩み寄っていく。なんだといわんばかりの胡蝶と寛治にバチコーンッとアイドルはウインクを見せた。
「やあ! シャルロッテ君! この僕とお茶でもいかがだいそしてそのままアバンチュールでも!」
「………」
 唐突であった。寛治はすごいなこのアイドルと公麿のことを見ている。この隙を付いてと言うようにルーキスとリゲルが離脱する。
 呆気にとられたシャルロッテはそれには気づいていない。
「逃走の先導は我がします。目が光るでありますよ……!」
 タロウは大いに喜んだ。目が光る碧。それって最高ではないか。碧と入れ替わるように辜は立ち上がる。公麿のそばに行き桜色のペンライトを揺らし始める。
「きゃー! 桜小路様~~! こっちむいてー!」
「ははは、すまないね! 今日は花騎士君とのアバンチュールなんだ!」
 えええ、とわざとらしい辜の声にまだシャルロッテは現実に戻らない。
 その隙を付いて姿を晦ました胡蝶。辜と公麿はシャルロッテが彼らだと気づく前にその姿を晦まし、タロウを連れた一行との集合場所に向かう手筈だ。
 揺れている桜色のペンライト。ああ、目がくらくらするのはこのペンライトのせいだろうか……王よ、どこにいるのか――王よ……。

 ……一方で、普段は優雅なタロウさん。もはやお疲れである。
「陛下がお疲れのようでしたら、我の背に乗って掴まるようにでも。逃避行に肩車、悪くないと思うでありますよ? 我、鉄騎ですので。馬のつもりで」
「なるほど!」
 何が成程なのだ。何が成程なのかは分からないが納得したフォルデルマンは満足げである。
「もうすぐ夕刻。食事もしましたし観光でも致しましょう」
 提案するルーキスに碧はタロウを背負いながら大きく頷いた。
「どこかいきたい所はあるのでありますか?」
「ふむ、そうだな。広場に行こう! 見晴らしがよいのは我が居城であるが、いつも平民が楽しそうだったのだ」
 ちょうど待ち合わせ場所だ。行きましょうかと笑ったリゲルに国王陛下は子供のように「ああ、ああ」と何度も頷いた。

 ちらり、と上空を見遣る寛治。飛ぶのはルーキスの使い魔だ。この先にはフォルデルマン扮するタロウがいるかもしれないと方向転換をしようとした寛治の腕をむんず、とシャルロッテが掴んだ。
「目撃情報を整理して、陛下の行き先を分析しましょう」
「いいえ、こちらです」
 それが彼女の第六感なのだろうか。ぐんぐんと進んでいくシャルロッテに寛治の頭の中で警鐘が鳴り響く。
「シャルロッテ様」
「陛下のことです。広場で何事か民が遊んでいる姿を普段から羨んでおりました」
 母か何かかよと言うようにシャルロッテはフォルデルマンの行動をよく理解している。
 ルーキスの使い魔たる鴉がシャルロッテと寛治の接近に気づきすぐさまにルーキスへと寄っていく。
 大地もその接近に気づき「ヤベェ」と小さく漏らした。陽動がうまく進んでいない。流石は情報確度は嘘をつかない――シャルロッテの『陛下への理解度』がどれほどなのかなど彼女でなければわからないからだ!
(……タロウ様、逃げるよ)
 ぱくぱくと口を動かしたルーキス。大きく頷くがフォルデルマン三世はもはやお疲れだ。
 合流を果たしていた面々も慌てて散り散りに走り出した。
 その先――からからと笑うタロウの姿がシャルロッテの視界に映りこむ。
「……見つけた」
 走り出そうにもお疲れ陛下はとろとろと歩いている。「へーいーかぁ?」と呪いの様な声音が追ってくる。
「陛ッ……タロウさん! ここは私にお任せください!」
 シャルロッテの地鳴りの如き声音を耳にして、リゲルは咄嗟にフォルデルマンを姫抱きにして走り出す。ぐん、と走り出した彼を追いかけんとシャルロッテが寛治から手を離した瞬間、がしりと今度は寛治がシャルロッテを掴む。
「申し訳ありません! これも全て陛下のご下命……!」
「ッ――――ま、まさか!」
 新田様と悲痛な声音が広場に響く。これまでの右往左往。彼との協力の結果は……すべて『フェイク』だったのか!
 組み付かれたシャルロッテの「陛下アアアアア」という声は街中に鋭くこだましていた……。


 ……暮れる夕日が美しい。
 アバンチュールをお断りされた公麿は「花騎士君も照れ屋なんだから!」とポジティブシンキングに笑っている。
「……すごかったです」
 ぽそりと呟いた辜も此度の依頼が特異運命座標としてしっかりと報告書にまとめられる現実に驚いている。
「タロウ……いや、陛下。もう遊びの時間は終わりにしよう。…夜は冷え込むし、何よりも治安が悪くなるかもしれない」
 初夏とは言えど、風は冷たい。タロウ――フォルデルマンへと向き直った大地は肩を竦めゆっくりと変装用サングラスをとった。
 シャルロッテは偽情報に翻弄されながら街を走っているが、そろそろこの場所、願いが叶うというルミネル広場に来る手筈になっている。
 コネクションを利用した寛治の情報群はパンドラ使用しちゃいそうなレベルにシャルロッテを大いに困らせたことだろう。
「陛下、この度は役得――いえ、陛下の騎士殿に組み付くという不敬を……」
「ははは、何、シャルロッテも楽しかったであろうよ」
 花の美貌を讃えたシャルロッテに組み付くというのはある意味で役得中の役得だが、その後の見たこともないようなおぞましい表情は当分忘れる事ができないだろう……。
 遠く、「そちらですか」という声が聞こえる。彼女の発する名はフォルデルマン三世の幼少期の名だろうか――外出先で呼んでも問題がないようにと呼びなおしているのかもしれない。
「へ、陛下」
「ああ、シャルロッテ。此度はお前も楽しんだだろう?」
 辜と碧はその言葉にシャルロッテの額に青筋が浮かんだことに気づく。だが、フォルデルマン三世はマイペースそのものだ。
「うむ、天晴であったぞ。ローレットのイレギュラーズよ。タロウも喜んでいたであろう」
「タロウ……?」
「何、こちらの話よ」
 首を傾げたシャルロッテにからからと笑い、フォルデルマン三世は大地の言葉の通り城へと戻る。
「陛下! 今後俺達に望まれることは何でしょうか……?」
 問いかけたリゲルの言葉にフォルデルマンは楽し気に笑みを零したのみだ。
「また」と彼の王の口が動いたことをリゲルは見逃さなかった――鬼ごっこはフォルデルマンと特異運命座標の勝利である。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お疲れ様です、イレギュラーズ!

初夏の大様台暴走でございました。
リプレイ中に出てくる地名は『盛夏の残照/爽秋の一時』でも登場した場所となります。ご興味があれば其方も合わせてどうぞ。
これにて、一件落着です。
素直に面白かったのでシャルロッテ嬢からあなたへ
present for 桜小路様 称号:『幻想アイドル』

皆様にフォルデルマン陛下よりプレゼントです。
present for irregular's アイテム:『麗しい私のサイン 2018/05』

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