シナリオ詳細
<FarbeReise>エルスとドキドキ迷宮ライブ!
オープニング
●
ステージ。それは誰もが一度は憧れる神聖なるフィールドである。
ただ数メートル、時には数センチ程度立ち位置が異なるだけの場所なぜそこまで求めるのかは、きっとはるか古代巫女と祈祷の文化にまで遡る必要があるのだろうが、そうした議論を生むまでも無く昨今あまたのステージで行われる様々なショーは人々を魅了して止まない。
真面目そうな前置きは、これで全部である。
「みんなー! 来てくれてありがとー!」
チェックのミニスカートにブラウスというある意味コテコテのコスチュームに身を包んだエルス・ティーネ (p3p007325)がマイク片手に観客席へ手を振っている。
「それでは聞いてください。YO HEY GIRLS with Erstineで、『吸血鬼だって恋したい』!」
若干メタルはいったギター演奏と激しいドラムのリズム。まわるミラーボールとどこかアダルトなカラースポットライトを浴びたエルスのライブシーン――を、背景に。
「そろそろ、あたしたちも動かないとダメよねえ」
ファルベライズ遺跡群調査報告――という手紙を手に、男がため息をついていた。
ラサのオアシス街ラブラに構えるライブハウス『ゴールデンゴル』のオーナーにして敏腕音楽プロデューサー、ゴル・ザフラ。それが彼の名前である。
琥珀のような美しい瞳。すらりと背が高く引き締まったボディ。腕や首筋からうかがえるたくましくしなやかな筋肉。見る者が見れば彼が相当な実力者であることが分かるだろうが、それ以上に深い自信と熱意に満ちあふれた音楽プロデューサーとしての気質が彼の印象を決定づけていた。
彼のデビューさせた人物は数知れず。コテコテのアイドルからフォークシンガー、ロックバンドや演歌歌手に至るまで幅広く扱い、その多くで一定のヒットを記録した。
そんな彼もまたラサの連合に所属しており、こたび発見されたファルベライズ遺跡群とそこに眠る色宝(ファグルメント)の確保運動に協力していた。
人脈を用いた情報収集が主で、基本一発勝負になりがちな遺跡探索前にできるかぎり情報を入手するというものだ。
「なんです店長。他の人達みたいにローレットに依頼書を発行するんじゃだめなんですか」
「それがねえ」
ゴルが指でくるんと反転させてみせた調査書を、ライブハウススタッフの青年へと突き出して見せた。
――調査報告765。『デレーマ遺跡』にて非常に強力なモンスターの存在を――
――弱体化方法が判明――
――適切な人材――
といった言葉が並んでいる。
要するに、とゴルはこめかみを人差し指で叩いた。
「歌って踊れてなおかつ戦えるイレギュラーズを選出する必要があるのよ」
「はあ、それはまた困りましたね。せめて最初の一人は適切な人材を確保しておかないと……」
と言いながら、ライブを終えてスタッフ通用口から出てきたエルスと目が合った。
スポーツタオルで汗を拭い、もらったスポーツドリンクの蓋を回し開けている。
「お疲れ様。急なお仕事だっていうから来たけど……今回だけよ? あんなことするのは」
「あらつれない。このままデビューまで一気にいっちゃいましょうよErstineちゃん」
「おことわり。私にだって沢山やることが……」
青年が目でゴルに合図を送り、ゴルも報告書とエルスを交互に見てからじっと顔を近づけた。
「……な、なに?」
このあとどうなるかは、視聴者諸兄がご想像した通りである。
●デレーマ遺跡のシークレットライブ
まずは背景について説明しよう。
願いの叶う宝物こと色宝(ファグルメント)を巡って盗賊団との攻略競争が始まっているこのファルベライズ遺跡群。
各遺跡に眠っている色宝は小さな怪我や病気を治す程度の些細な力しかもたないが多く集まればどんなに歪んだことがおきてもおかしくない。よってローレットによる確保と収容がラサ連合より依頼されたのだ。
「今回攻略して貰うのはココ、デレーマ遺跡よ」
ライブハウスの二階にある個室。料理とドリンクが人数分並べられたテーブルで、ゴルは集まったローレット・イレギュラーズへと説明を続けていた。
デレーマ遺跡は本来、非常に強力なモンスターが封印された遺跡であり色宝を獲得するにはそのモンスターの撃破が必須。
しかしある儀式的手順を用いればモンスターを弱体化することが可能だというのだ。
その手順とは……。
「イッツ――アイドルライブ!」
指をパチンと鳴らしてキメ顔で言うゴル。
スッときびすを返して帰ろうとしたエルスを、素早く駆けつけたスタッフが取り押さえた。
「はなして! もうやらないって言ったでしょ!」
イヤイヤといって首を振るエルスの耳元で、ゴルが囁く。
「ディルクちゃん、喜ぶと思うなぁ」
「――!?」
「このこと教えたら、報告書を楽しみにしてたなぁ」
「――!?!?」
振り返ってビッと親指を立てると、ゴルは説明を再開した。
「遺跡内に建設されたライブステージで演目を披露してもらうわ。歌と踊りが基本ね。多少主旨が変わってもいいだろうけど……」
演目開始と同時に観客席に現れる立体化した影のような人型実態が演目に対して興奮、ないし満足する様子を見せるとシュワシュワと泡立つようなそぶりをみせるという。
一方すべての演目が終了すると同時にステージ地下より巨大な影の恐竜めいたモンスターが出現し、残った影人間たちを食らって巨大化。このとき影人間たちが大きく興奮ないし満足していた場合モンスターがそれに応じて弱体化するということである。
「歌って踊ってモンスター退治。どう? 楽しそうなお仕事じゃない?」
ゴルはウィンクすると、『ここはあたしのオゴリよ』と手を振って部屋を出て行った。
- <FarbeReise>エルスとドキドキ迷宮ライブ!完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別リクエスト
- 難易度-
- 冒険終了日時2020年10月30日 22時15分
- 参加人数8/8人
- 相談8日
- 参加費150RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●遺跡にだって楽屋裏くらいある
はるか古代よりながらく開かれていなかったにも関わらず、その鏡はまるで毎日磨かれ続けたかのように清く透き通っていた。
アーチ状に鏡の上部にかかったライトが、正面に座る『なぁごなぁご』ティエル(p3p004975)の顔を照らし出す。
耳をぴこぴこと動かすと、持ち込んだ化粧ポーチから耳用のブラシを取り出してくいくいとかけはじめた。
「ラサライブ・ファルベライズ特別コラボなご?
それにしても、古の舞台に特殊な性質のモンスターって、古代人からの『エンタメは続いているか!』ってメッセージみたいにゃね?」
「こんな楽屋がわざわざ用意されているくらいだから、当時のひと(?)もだいぶショーが好きだったと見える」
興味深い、とつぶやいて隣の席に座る『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)。
鏡、もとい化粧台は十台ほど向かい合わせに設置されており、この部屋から続く通路の先に例のステージがあるという構造である。
はじめは探索のためにあちこち歩いたり触ったりしてみたが、どうやら準備万端でステージに出るまでその特異性は発現しないようにできているらしい。ステージも観客席もからっぽで静かなものだった。
「以前に地下闘技場でのアイドルを依頼でやったが、中々楽しかったな。
今回は方向性が違うが、もう一度やるなら前より盛り上がるようにしたいね」
鏡の前に座ってみて、あーと低くつぶやいた。
まつげを整えながらちらりと横目で見てくるティエル。
「……メイク、やってあげようか?」
「そうしてくれると助かる」
結構な美人とはいえ、メイクは技術。知るのとやるのとでは違うらしい……と、知識豊かなゼフィラはマスカラ片手に思ったりした。
\躍進!ビスコちゃんねるー!!/
『アデプト・ニューアイドル!』ビスコ(p3p008926)が自撮りしながら化粧台の前で横ピースした。
「今日は遺跡でライブを行っちゃいますよー! ライブといえば古代から蘇ったびーま――」
途中で急にカメラの不具合がおきたらしくスマホをぺちぺち叩くビスコ。
そんなビスコの奥から、『キュート過ぎるアイドル?』エナ・イル(p3p004585)が宇宙フェイスでじーっとビスコの胸部を見つめていた。
「ビスコさんも彼方さんも本当にボクと同い年なんでしょうか? どこがとは言いませんがボクより大きくありませんか? 同い年なのに……」
エナはハッとして首を振ると、スーパーグレートカワイイポーズをとった。
どうやらフォーカスされたことに本能で気づいたらしい。
さすがバラドルの鏡。
「誰がバラドルですかぁ!? アイドル! ボクはアイドルですよ!?」
今にもバラエティ番組に出てきそうな顔でガッて虚空へ振り向くエナ。
そんなバラドル二人の間からにゅっと飛び出す『姫騎士アイドル』海紅玉 彼方(p3p008804)。
「今回はアイドル、カナタちゃんとしての依頼だね! ゴルさんも協力してくれるみたいだし、精一杯がんばるよ!」
みんなもがんばろー! といってグーにした手を突き上げる彼方に、エナとビスコはまぶしさで目をくらませたのであった。
右上に録音マーク(REC●)を想像しながらご覧頂きたい。
「本当に……ほんっとーにディルク様が楽しみだって言ってたの?
依頼が終わって結果を報告する際、確認してもいいかしら?
嘘だったら、今後一切アイドルの仕事は引き受けないからね!」
「ほんとほんと。後で報告するって約束したし」
『清楚にして不埒』ミルヴィ=カーソン(p3p005047)が『笑ってー』て言いながら謎のアイテムを構えていた。
「エルスさまエルスさま。イヤよイヤよも好きのうち、なる言葉がございますわよー」
その一方でエルスにメイクを施す『氷雪の歌姫』ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)。
なんとなくエルスいじりが盛り上がってきたので皆できゃいきゃいやってみたが、ユゥリアリアはふと虚空を見上げて冷たい目をした。
(いつも『彼』は観客席にいてくれたのに……今は……)
「どうかした?」
「……いえいえー」
気を取り直して。
メイクや衣装もばっちり整えた彼女たちは、楽屋を出てステージへ続く通路へと歩き出した。
古代遺跡を舞台にしたライブが、いま始まろうとしているのだ。
●オンステージ
薄暗く照明が整えられたステージ。その周りにはいつの間にか影人間たちがつめかけ、観客席のすべてを埋めていた。
闇に紛れてじゃらんと鳴る弦の音。
それがいかなる楽器でつま弾かれたものか判然とせぬまま、旋律は重なっては別れ、分かれては入れ替わり、そのリズムが高まると共にふたつのスポットライトがゼフィラとユゥリアリアをそれぞれ照らし出した。
パイプ椅子に腰掛け三味線をかきならすゼフィラ。
「さあ、一曲付き合ってもらうよ。異国の風が奏でる一時、楽しんでくれると嬉しいね」
その一方ではユゥリアリアがウクレレをどこか情熱的に奏でていた。
「さあ皆さま、気張っていきましょう。笑顔で、ですわー」
二人の旋律はまるで競争する馬のように主旋律をたくみにそして小刻みに入れ替え続け、やがて二つの旋律が再び重なったところで――。
コンマ五秒の静寂。
動きをぴたりと止める二人。
それを打ち破るように。
おりたスポットライトに照らし出されたティエルが、まるで一撃必殺の奇襲をしかけるかのように情熱的なベリーダンスを踊り始めた。
ダンスの雰囲気に合わせて演奏を再開するゼフィラとユゥリアリア。
「ラサの……白砂の人形使いは楽器はともかく踊りはちょっとしたものよ。本来は人形と共に踊るからにゃ」
と同時に、ステージ上部に煌めく粒子で『エキゾチックウィンド』というユニット名が表示された。
はじめの演奏に思わず息を呑んでいた観客達も解き放たれたかのように歓声をあげ、ヒューという口笛を吹きながら拳を振り上げた。
ベリーダンスは喧噪の中でこそ映える踊りだと誰かが言った。
それはきっと、活気と情熱のなかで生まれた文化だからだろう。
ティエルは興奮する観客たちを煽るかのように、しなやかに身をひねり身体に装着した鈴をしゃなりしゃなりと鳴らしていく。もはやこれもまた一つの楽器だ。
全く別の文化から生まれた三つの楽器が組み合わさり、情熱という一点のみをとってひとつに融合していく。
それは影人間たちを興奮させるのに充分すぎるエモーショナルだった。
はじめからトリッキーかつテクニカルなショーをぶつけられた影人間たちは既に興奮冷めやらぬ様子で次なるショーを待っていた。
またも真っ暗になったステージに期待をこめたまなざしを集めている。
やがてふんわりとやさしくステージが照らし出される……が、そこには何もなかった。しいていうなら大きな穴が三つだけあいているだけ。
おや、と首をかしげそうになったその時。
天井まで吹き上がる激しい噴射型花火と共に三人のアイドルが穴からバネ仕掛けで飛び上がった。
膝を曲げて両手を大きく挙げたファンタスティックなフォームで、彼方、エナ、ビスコの三人がステージへと躍り出たのである。更に空中にピンク色のファンシーなフォントで『アドブラル・マーキュリー』の文字が描き出され、着地した三人は回転しながら飛んできたマイクをキャッチした。
「みんなー! 今日は盛り上がっていくよー!」
平成末期を思わせるエレクトロなアイドルミュージックが流れ出し、三人ぴったり揃ったダンスの中央で彼方が歌い始める。
アイドルの基本は笑顔と言われるように、常人ならへとへとになるような高度な動きで注目を集めながらも彼女たちはキラキラとした笑顔を振りまいていた。
中でも彼方の『偶像性』は群を抜いたものであり、センターで歌って踊る彼方……いやカナタの姿に影人間たちは夢中になってカナタのパーソナルカラーにあわせたサイリウムを振り回し始めた。
曲調が変わり始めた段階で位置を入れ替える三人。
今度はセンターに躍り出たエナがパチンと上目遣いのウィンクをなげかけると、一瞬心を奪われた観客達にリンクするかのように空へと舞い上がっていった。
カナタが王道の偶像性で勝負するアイドルなら、エナは『キャラクターの強さ』で勝負するアイドルだった。
「ボクらの事をもっと好きになってくれてもいいんですよぅ?」
飛び道具キャラ付け何でもござれで完全武装したエナの突き抜けるような主張は見る者すべてに自身という名の翼を授けた。
「かわいいボクを好きになるってことは、ボクの次にカワイイってことですからねぇ!」
振り付けをガン無視する勢いで胸を張り、ビッと観客席に指を指すように見回すエナ。
彼女が急降下着地を果たすと、今度はバチバチ本格的なポーズをキメたビスコがセンターをとっていた。
肉体のしなやかさと生命の躍動を思わせる、一枚も脱いでいないのに性的だと思わせるような、見る者の魂を吸い寄せるポーズ……から、ビスコのソロパートが始まった。
一段階高度なダンスと圧倒的な歌唱力。
一見して飛び道具で勝負しそうなビスコはしかし、実直なまでの実力で勝負を仕掛けたのである。
ある意味鉄板オールドスクール、『力と技』のアイドルである。
「ビスコちゃんのテクが火を噴くぜ!! ついてきてくださいねー!」
個性を活かしたアイドルユニット『アドブラル・マーキュリー』。
ライブが大成功したことは、影人間達の熱狂を見るまでもなく明らかだろう。
こうして迎えた第三ステージ。
影人間たちが今か今かと待ち構える中、ミルヴィとエルスはあくまでシンプルに、そして正々堂々とステージ中央へ背中合わせに現れた。
おりるスポットライトがふたつに別れ、二人はステージ両端へと歩いて行く。
(まぁ引き受けたからには全力よ! ラサの仕事でだらしのない仕事はしないわ!)
マイクを手にしたエルスが歌い始めると、テクノポップ調の音楽が流れはじめミルヴィとのダンスが始まった。
クールに、鋭く、そしてスタイリッシュに踊るエルスとは対照的に、ミルヴィのダンスはセクシーで丸く、そして情熱的にに踊って見せた。
対照的なダンスは斜め下から照らし出されたライトによって壁面に巨大な影が映し出され、ポーズと共に曲調が変化した。
ミルヴィの音楽センスによって整えられた演目にはいくつもの仕掛けが込められている。
「さあ、影のダンスをご覧あれってネ♪」
二人のダンスはステージ両端で対照的に行われているが、ふと影を見ればそれが激しい格闘を繰り広げているように見えるだろう。
さらにはエルスの放ったナイフを軽やかにかわし、キャッチし、更に投げ返したナイフをエルスが弾いて真上へと飛ばした。
回転するナイフは光を乱反射し、二人の間にまっすぐ刺さるように落ちた。
そこからは光と影の反転。つまりはセクシーなダンスをエルスが、クールなダンスをミルヴィが担当しさらなるボルテージを上げていった。
観客席の影人間たちは身を乗り出して握りこぶしを作り、歓喜の叫びをあげるのだった。
●ラストステージ
すべてのショーが終了した時、影人間たちは熱狂のなかにあった。
言葉こそ発しないものの、彼らがエルスたちのショーに感激し、アンコールを求めているのが分かる。会場全体がひとつになったかのような手拍子の中、再びステージにライトが下りた。
歓声、爆発音。そして現れる巨大な恐竜型影モンスター。
恐竜は観客席をぐるりと見回し、そしてどこからともなく尖ったデザインのサングラスをとりだして装着した。
「レディースエーンジェントルメン! 魂だけになっても熱狂を忘れられないソウルメイトたちよ! 現代のステージはどうだ? 満足できたか!?」
イエス! とでもいうような歓声と拍手が沸き起こる。
「オーケー、不満なやつは誰一人いないようだ。それなら、ラストを飾るのはこのショーだ!」
ステージ外壁のボックスが一斉に開き、吹き上がる花火の中を八人のイレギュラーズたちが駆け抜けていく。
「出てきたにゃね、ファルベライズ事務所の用心棒! おさわり厳禁なアイドルを触るお客ゴーストを食べる奴! あらため、食べなかったやつ!」
ティエルは階段を駆け下りる勢いで跳躍。
魔法の糸をあやつるとシルクハットを被ったマジシャン風魔繰人形『ジョーカー』を解き放った。
展開したナイフ。上半身をコマのように高速回転し恐竜を切り裂いていく。
さらにはエルスとミルヴィが同じ階段を駆け下り、大ジャンプによって恐竜の頭上をとった。
「一緒にヤるよ! お客さんを魅せちゃお♪」
「ふふ、ええ! 私の歌で酔わせてあげるわっ♪」
恐竜が口から放った影の炎を、幻影を纏った氷のペンデュラムによって振り払い、ぴったり揃ったダブルキックで恐竜の顔面を蹴り飛ばす。
派手に転倒した恐竜はステージ下からせり上がってきた石のポールを掴んで振り回すが、ゼフィラとユゥリアリアのセッションにエルスたちが歌をあわせる即席のショーによってポールを分解。バラバラの砂となって落ちるポールを見てやれやれと首を振った恐竜――めがけてゼフィラのパンチとユゥリアリアの放つ氷の槍が突き刺さった。
倒れた恐竜の上に飛び乗ってタップダンスを始めるビスコ。
ジャンプと共に両手で指鉄砲をつくると、架空の弓と架空の矢を作ってアイドルビームを発射。回転するように仲間全員とついでに観客達に浴びせると、ハートのオーラが会場全体から湧き上がった。
「恐竜さん! 私に夢中になっちゃえ!」
オーラを纏って急接近する彼方。
スカートの内側に仕込まれたホルスターからデコられたキュートな拳銃を取り出すと至近距離で乱射。恐竜が彼女を振り払おうとした瞬間に飛び退き、もう一丁取り出したハート型の光線銃で射撃を浴びせていった。
「ボクらは歌って踊って戦えるアイドルですからね。こちらのステージも可愛くこなしてみせますとも」
その際天井に上下反転して『着地』していたエナが、ぐっと腰をかがめて勢いをつけた。
「エナちゃん――タックル!!」
会場の上から下への高速垂直タックルによって恐竜どころかステージの床板までもを破壊。
はるか下へと落ちていく恐竜を見下ろし、エナは翼と両手を広げて観客へぐるりとアピールした。
誰もが満足そうに笑っているように、みえた。
古代の誰かが現代に向けた笑顔のようにも、みえた。
そして割れんばかりの拍手が会場中を包み込み、やがてすべてのスポットライトが――消えた。
気づけば、エルスたちは何もないドーム状の空間に立っていた。
ステージも、観客席も、もちろん観客の影人間もいない。
ただひとつ、ドーム中央にふわふわと浮かぶ金色のマイクだけがあった。
「これが、色宝……」
手に取ってみると、側面にピンクのインクで『thank you』と書かれていた。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
――色宝を回収、保管しました。
――こっそり撮影されたライブ映像はゴルのライブハウス『ゴールデンゴル』へ送られ、関係各所(ディルクの個人宅含む)へ複製して配送されました。
このライブDVDはゴールデンゴルにて販売中です
GMコメント
■■■今回の相談会場■■■
・ライブハウス『ゴールデンゴル』
クラブハウスサンドやフライドポテトといったジャンクフードを中心にいくつかの酒とソフトドリンクを扱っています。
VIP用の二階個室からはステージの様子を眺めることができ、今もいくつかのアイドルやバンドがライブを披露しています。
オーナーのオゴリらしいので、好きなメニューを注文して会議のおともにしましょう。
(※当依頼では巡り会った仲間と街角感覚のロールプレイをはさんでの依頼相談をお楽しみ頂けます。
互いのPCの癖や性格も把握しやすくなりますので、ぜひぜひお楽しみくださいませ)
■パート構成
このシナリオは『ライブパート』と『バトルパート』の二つに分かれています
●ライブパート
今回の参加者の中からユニット分けを行い、それぞれパフォーマンスを行ってください。
ギャラリーの影人間たちをいかに興奮させるかが焦点になります。
なお、コスチュームやパフォーマンスについてはゴルの指導と提供によってある程度までフォローされます。
なので経験やスキルといったものは(プラス補正こそあれど)基本の判定基準に問わないものとします。
未経験だからどうしようと思っているそこのアナタ! 今日は思い切ってアイドルライブに挑戦してみましょう!
●バトルパート
ライブのラストを飾るのは恐竜型影モンスターとのバトルです。
影人間たちをちゅるんと食らって(もしくは合体して)現れるこのモンスターは、ライブパフォーマンスに対する満足度や興奮度に応じて弱体化します。
ここで重要なのは弱体化するというところで、『バトルで本領を発揮しよう!』といったプレイスタイルも可能になります。
あんまりお勧めはしませんが、ライブ不参加でバトルに全力をかけるプレイングパターンも一応は可能となっております。
影恐竜の戦闘力は未知数です。自分の得意分野を叩きつけるつもりでバトルプレイングを書いておくとよいでしょう。
■オマケ解説
●ゴル・ザフラ
過去にラサで行われたライブでエルスを見てからスカウトを続けているプロデューサー。未だ成功してはいないが今回のように頼み込んで一曲歌って貰う形のお仕事が通りつつある、らしい。
お仕事を受けたからにはちゃんとやろうとするエルスの真面目さも相まって最近は手応えを感じているとか。
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/2826
■■■アドリブ度■■■
ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用ください。
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